説明

トレーラの車軸昇降装置

【課題】トレーラの軸数に拘わらず既存の測定台により連結車両の車両総重量の測定作業を容易に行え、且つ走行時の安全を確保することにある。
【解決手段】昇降式の走行車軸を接地位置と退避位置とに駆動するアクチュエータ48と空気圧タンク54とを接続する空気圧回路55に電磁弁56を設けるとともに、昇降式の走行車軸を支持するサスペンションに設けられた空気ばね44と空気タンク54とを接続する空気圧回路57に電磁弁58を設ける。各電磁弁56,58は電気回路63を開閉する操作スイッチ62により切り換えられ、昇降式の走行車軸の駆動が操作される。また、駐車ブレーキセンサ69からの信号により電気回路63を開閉するリレー66を設け、駐車ブレーキセンサ69によりトレーラの車両停止状態が未検出のときには、昇降式の走行車軸の退避位置への駆動を遮断して昇降式の走行車軸を接地位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
それぞれ走行車輪が設けられた昇降式の走行車軸を、走行車輪が路面に当接する接地位置と走行車輪が路面から離反する退避位置とに駆動するトレーラの車軸昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型のトラックにより運搬可能な貨物はその重量や長さ寸法が制限されており、当該制限重量や制限寸法を超える貨物を運搬する場合には、トラクタとトレーラとの連結車両が用いられる。この連結車両には、トラクタとトレーラとに荷台が設けられたフルトレーラ型と、トレーラのみに荷台が設けられたセミトレーラ型とがある。被牽引車としてのトレーラには駆動車輪が設けられておらず、トレーラは牽引車としてのトラクタにより牽引されて追従走行する。
【0003】
このような貨物車両では、それぞれの車軸にかかる軸重が法律等で規制されており、軸重が制限荷重を超えた状態での走行が禁止されている。そのため、大型のトレーラには、それぞれ走行車輪が設けられた複数の走行車軸が設けられており、車両を複数の走行車軸により支持することで、トレーラに最大重量の貨物が積載された状態のもとで各走行車軸にかかる軸重を制限荷重内に収めることができるようになっている。しかしながら、トレーラに貨物が積載されていない状態や貨物の重量が小さい状態でトレーラが走行する場合に、全ての走行車輪を接地させて走行することは、トラクタの燃費悪化や車輪摩耗の原因となる。
【0004】
そこで、特許文献1には、トレーラに設けられた複数の走行車軸のうち車両後部側に配置された走行車軸を昇降式とし、トレーラに積載される貨物の重量に応じて昇降式の走行車軸を上下駆動させるようにしたトレーラの車軸昇降装置が記載されている。これにより、トレーラに貨物が積載されていない状態で走行する場合などに、昇降式の走行車軸に設けられた走行車輪を路面から離反させた状態で走行することが可能となり、トラクタの燃費向上や車輪摩耗の低減を図ることができる。
【0005】
また、特許文献2には、トレーラを駐車させる際にトレーラの走行車輪に制動力を加えるための駐車ブレーキ装置が記載されている。駐車ブレーキ装置は、スプリングブレーキチャンバー内の圧縮空気を排気することによってコイルばねにより走行車輪に制動力を加える構造をしており、スプリングブレーキチャンバーと空気圧タンクとを接続する空気圧回路に圧力センサが組み込まれている。この圧力センサからなる駐車ブレーキセンサにより、トレーラの駐車ブレーキが作動しているか否かを検出することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−205524号公報
【特許文献2】特開2009−107396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、トレーラに積載された貨物の重量を測定する際には、貨物が積載された状態でトラクタおよびトレーラを測定台に載置して車両総重量を測定し、この車両総重量からトラクタおよびトレーラの車両のみの重量を差し引くことで貨物の重量を測定するようにしている。従来、トレーラは車両後部側の走行車軸が2軸のものが一般的であり、2軸のトレーラに対応させて測定台が形成されている。つまり、既存の測定台の長さは、トラクタの前輪から2軸のトレーラの最後輪までの長さよりも僅かに長く形成されている。
【0008】
しかしながら、近年では、運搬効率の向上のために、より多くの貨物を積載可能な3軸のトレーラが普及してきており、この3軸のトレーラでは2軸のトレーラに対応した既存の測定台に載置することができない。すなわち、3軸のトレーラでは、トラクタの前輪から3軸のトレーラの最後輪までの長さが既存の測定台の長さよりも長く、トレーラの最後輪が測定台からはみ出してしまうこととなる。そのため、3軸のトレーラを用いた場合には、既存の測定台によって連結車両の車両総重量を1度で測定することができず、貨物の重量を測定する作業が煩雑となる。
【0009】
そこで、特許文献1に記載されるような車軸昇降装置により、3軸のトレーラの最後輪を上昇駆動させることでトラクタおよび3軸のトレーラを既存の測定台に載置可能とすることが考えられる。しかしながら、従来の車軸昇降装置は、走行時におけるトラクタの燃費向上や車輪摩耗の低減を図ることを目的としており、トレーラに積載された貨物の重量に応じて昇降式の走行車軸の上下駆動を制御するようにしている。そのため、貨物の重量が大きくトレーラの2軸走行が不可能なときには、3軸のトレーラの最後輪が設けられた昇降式の走行車軸を上昇駆動させることができず、トレーラの最後輪が既存の測定台からはみ出したままとなり、上記課題を解決することができない。一方、貨物の重量が大きくトレーラの2軸走行が不可能なときでも昇降式の走行車軸を上昇可能な構造とすることもできるが、その場合には、3軸のトレーラの最後輪を路面から離反させた状態で走行するおそれがあるため安全上問題である。
【0010】
本発明の目的は、トレーラの軸数に拘わらず既存の測定台により連結車両の車両総重量の測定作業を容易に行え、且つ走行時の安全を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のトレーラの車軸昇降装置は、前輪と後輪が設けられたトラクタにより牽引されて走行するトレーラに設けられ、それぞれ走行車輪が設けられた複数の走行車軸のうち車両後部側に配置される少なくとも1つの昇降式の走行車軸に連結されて、当該昇降式の走行車軸を前記走行車輪が路面に当接する接地位置と前記走行車輪が路面から離反する退避位置とに駆動するトレーラの車軸昇降装置であって、流体圧により進退移動して前記昇降式の走行車軸を前記接地位置と前記退避位置とに駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータと流体圧源とを接続する流体圧回路に設けられ、前記アクチュエータに流体を供給する位置と前記アクチュエータ内の流体を排出する位置とに切り換えられる第1の制御弁と、前記第1の制御弁の切り換えを操作する操作スイッチと、前記トレーラが車両停止状態であるか否かを検出する車両停止検出手段と、前記車両停止検出手段により前記トレーラが車両停止状態であることが未検出のときに、前記昇降式の走行車軸の前記退避位置への駆動を遮断して、前記昇降式の走行車軸を前記接地位置とする制御手段とを有し、前記トラクタおよび前記トレーラを測定台に載置して車両総重量を測定する際に、前記トラクタの前輪からの距離が前記測定台の長さよりも長く前記測定台からはみ出す前記昇降式の走行車軸を前記退避位置に駆動することによって車両総重量を測定可能とすることを特徴とする。
【0012】
本発明のトレーラの車軸昇降装置は、前記昇降式の走行車軸に装着されたサスペンションと流体圧源とを接続する流体圧回路に設けられ、前記昇降式の走行車軸が前記接地位置となるように前記操作スイッチが操作されたときに前記サスペンションに流体を供給する開放位置と、前記昇降式の走行車軸が前記退避位置となるように前記操作スイッチが操作されたときに前記サスペンション内の流体を排出する排出位置とに切り換えられる第2の制御弁と、前記車両検出手段により前記トレーラが車両停止状態であることが未検出の状態のもとで、前記第2の制御弁の前記排出位置への切り換えを遮断して、前記昇降式の走行車軸を前記接地位置とする前記制御手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明のトレーラの車軸昇降装置は、前記車両停止検出手段は前記走行車輪に制動力を加える駐車ブレーキが作動しているか否かを検出する駐車ブレーキセンサであることを特徴とする。
【0014】
本発明のトレーラの車軸昇降装置は、前記車両停止検出手段は前記トレーラの車速を検出する車速センサであることを特徴とする。
【0015】
本発明のトレーラの車軸昇降装置は、電磁弁からなる前記制御弁と電源とを接続する電気回路を開閉する前記操作スイッチを設けることを特徴とする。
【0016】
本発明のトレーラの車軸昇降装置は、前記車両停止検出手段からの信号により前記電気回路を開閉する前記制御手段としてのリレースイッチを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トレーラの複数の走行車軸のうち車両後部側に配置される少なくとも1つの走行車軸を昇降式としたので、昇降式の走行車軸を退避位置に上昇駆動することによって、路面に接地した連結車両の最前輪と最後輪との間の軸間距離が短くなる。これにより、トラクタの前輪からトレーラの最後輪までの軸間距離が既存の測定台の長さよりも長くトレーラの走行車輪が測定台からはみ出すような場合でも、昇降式の走行車軸を退避位置に上昇駆動することでトラクタおよびトレーラを測定台に載置可能となり、連結車両の車両総重量を測定台により容易に測定することができる。このトレーラにおいて、車両停止検出手段によりトレーラが車両停止状態であることが未検出のときに、昇降式の走行車軸の退避位置への駆動を遮断して昇降式の走行車軸を接地位置とする制御手段を設けたので、昇降式の走行車軸が退避位置に駆動された状態で走行することを防止され、走行時の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の車軸昇降装置が設けられたトレーラを示す側面図である。
【図2】トレーラの走行車軸を支持するサスペンションを示す側面図である。
【図3】車軸昇降装置の制御回路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はトラクタ11とトレーラ12との連結車両を示しており、この連結車両はトレーラ12のみに荷台が設けられたセミトレーラ型となっている。トラクタ11はトラクタ車軸13,14を有し、トラクタ車軸13,14の両端部にはそれぞれ左右の前輪15および後輪16が設けられている。トラクタ11に搭載されたエンジンの出力軸は動力伝達機構を介してトラクタ車軸14に連結されており、トラクタ11は後輪16を駆動輪としてトレーラ12を牽引して走行する。
【0020】
トレーラ12は、車両前後方向に延びるシャーシフレーム(トレーラ本体)17を有し、シャーシフレーム17の車両後部に3軸の走行車軸18〜20を備えている。各走行車軸18〜20の両端部には、それぞれ左右の走行車輪21〜23が設けられている。また、トレーラ12は、シャーシフレーム17の車両前部に設けられたキングピン24によりトラクタ11のカプラ25に連結されており、トラクタ11に牽引されて走行車輪21〜23により追従走行するようになっている。このトレーラ12には、生石灰や樹脂パレット等の粉粒体を貨物として積載するためのタンク体26がシャーシフレーム17に一体に形成されている。
【0021】
トレーラ12に設けられる3軸の走行車軸18〜20のうち車両後部に配置される走行車軸20は昇降式となっており、他の走行車軸18,19は非昇降式となっている。それぞれの走行車軸18〜20は、シャーシフレーム17の左右両側に設けられたサスペンションにより支持されている。
【0022】
図2はトレーラの走行車軸を支持するサスペンションを示す側面図であり、シャーシフレーム17の走行方向左側に設けられて、それぞれの走行車軸18〜20を支持するサスペンションが示されている。非昇降式の走行車軸18,19を支持するサスペンション31は、それぞれ走行車軸18,19を支持する軸受ボックス32が取り付けられたリーフスプリング33を有し、リーフスプリング33の一端部とシャーシフレーム17との間には、空気ばね34が装着されている。シャーシフレーム17にはブラケット35が固定されており、リーフスプリング33の他端部はブラケット35にこれを中心に揺動自在に連結されている。ブラケット35と軸受ボックス32との間にはショックアブソーバ36が装着されている。シャーシフレーム18の走行方向右側にも、同様のサスペンション31が設けられている。
【0023】
昇降式の走行車軸20を支持するサスペンション41は、走行車軸20を支持する軸受ボックス42が取り付けられたリーフスプリング43を有し、リーフスプリング43の一端部とシャーシフレーム18との間には、空気ばね44が装着されている。シャーシフレーム17にはブラケット45が固定されており、リーフスプリング43の他端部は、サスペンション31のリーフスプリング33と相違して、ブラケット45に対して上下方向に移動自在に連結されている。ブラケット45と軸受ボックス42との間にはショックアブソーバ46が装着されている。
【0024】
ブラケット45に設けられた取付板47には、アクチュエータ48が取り付けられている。アクチュエータ48は、空気圧により進退移動するプッシュロッド49を有しており、空気圧によりプッシュロッド49を駆動するようにしたタイプである。このアクチュエータ48は、空気圧により弾性変形するダイヤフラムが内部に組み込まれたタイプであり、ダイヤフラムにプッシュロッド49が取り付けられている。アクチュエータ48としては、このタイプに限られず、空気圧により軸方向に往復動するピストンが内部に組み込まれ、ピストンによりプッシュロッド49を駆動するようにしたタイプのものを使用することができる。
【0025】
プッシュロッド49には駆動部材50が連結されており、駆動部材50はリーフスプリング43の他端部に係合している。したがって、アクチュエータ48に圧縮空気を供給するとともに空気ばね44内の圧縮空気を外部に排出すると、プッシュロッド49により駆動部材50を介してリーフスプリング43の他端部が持ち上げられて、昇降式の走行車軸20が退避位置に上昇駆動される。これにより、走行車軸20に設けられた走行車輪23が路面Rから離反した位置となる。図1及び図2においては、走行車輪23が路面Rから離反した状態が示されている。一方、アクチュエータ48内の圧縮空気を外部に排出するとともに空気ばね44に圧縮空気を供給すると、昇降式の走行車軸20が接地位置に下降駆動される。これにより、走行車輪23が走行車輪21,22と同様に路面Rに接地する位置となる。
【0026】
図1に示すように、走行車輪23が路面Rから離反した状態のもとでは、路面Rに接地した連結車両の最前輪と最後輪との間の軸間距離、つまりトラクタ11の前輪15とトレーラ12の走行車輪22との間の軸間距離はL1となる。また、走行車輪23が路面Rに接地した状態のもとでは、路面Rに接地した連結車両の最前輪と最後輪との間の軸間距離、つまりトラクタ11の前輪15とトレーラ12の走行車輪23との軸間距離はL2となる。このように、昇降式の走行車軸20が上昇駆動されて走行車輪23が路面Rから離れたときの軸間距離L1は、昇降式の走行車軸20が下降駆動されて走行車輪23が路面Rに接地したときの軸間距離L2よりも小さくなる。これにより、昇降式の走行車軸20を退避位置に上昇駆動することで、図のように2軸のトレーラに対応させてその長さMが軸間距離L1よりも僅かに長く形成された既存の測定台51に、トラクタ11および3軸のトレーラ12からなる連結車両を載置可能となり、測定台51により連結車両の車両総重量を測定することが可能となる。
【0027】
すなわち、走行車輪23を路面Rに接地させた状態では、路面Rに接地した連結車両の最前輪と最後輪との間の軸間距離L2が測定台51の長さMよりも長く、路面Rに接地した走行車輪23が測定台51からはみ出す。そのため、測定台51により車両総重量を1度で測定することができず、車両総重量を測定する作業が煩雑となる。一方、走行車輪23を路面Rから離反させた状態では、路面Rに接地した連結車両の最前輪と最後輪との間の軸間距離L1が測定台51の長さMよりも短く、トラクタ11およびトレーラ12を測定台51に載置可能となる。このように、トレーラ12の3軸の走行車軸18〜20のうち車両後部側に配置される昇降式の走行車軸20を退避位置に上昇駆動することで、2軸のトレーラに対応した長さMの既存の測定台51により、3軸のトレーラ12を備える連結車両の車両総重量を容易に測定することが可能となる。
【0028】
図3は車軸昇降装置の制御回路を示す概略図である。トレーラ12には圧縮空気を貯留するための空気圧タンク54が搭載されており、流体圧源としての空気圧タンク54にはトラクタ11側から圧縮空気が供給されるようになっている。シャーシフレーム17の左右両側にそれぞれ取り付けられたアクチュエータ48に対して圧縮空気を供給するために、空気圧タンク54とそれぞれのアクチュエータ48とを接続する空気圧回路55が設けられている。この空気圧回路55には第1の制御弁としての電磁弁56が組み込まれており、電磁弁56に送られる信号により電磁弁56が開放位置に切り換えられると、空気圧タンク54内の圧縮空気がそれぞれのアクチュエータ48に供給されてプッシュロッド49が突出される。また、電磁弁56に送られる信号により電磁弁56が排出位置に切り換えられると、空気圧タンク54とそれぞれのアクチュエータ48との連通が遮断されるとともにアクチュエータ48内の圧縮空気が外部に排出される。
【0029】
シャーシフレーム17の左右両側にそれぞれ取り付けられた空気ばね34,44に対して圧縮空気を供給するために、空気圧タンク54とそれぞれの空気ばね34,44とを接続する空気圧回路57が設けられている。非昇降式のサスペンション31に設けられた空気ばね34はそれぞれ空気圧タンク54に直に接続されており、空気ばね34には空気圧タンク54内の圧縮空気が常時供給されてサスペンション31が機能している。一方、昇降式のサスペンション41に設けられた空気ばね44は第2の制御弁としての電磁弁58を介して空気圧タンク54に接続されている。この電磁弁58に送られる信号により電磁弁58が開放位置に切り換えられると、空気圧タンク54内の圧縮空気がそれぞれの空気ばね44に供給されてサスペンション41が機能する。また、電磁弁58に送られる信号により電磁弁58が排出位置に切り換えられると、空気圧タンク54とそれぞれの空気ばね44との連通が遮断されるとともに空気ばね44内の圧縮空気が外部に排出される。
【0030】
これら電磁弁56,58は、トラクタ11側に設けられた電源60にコネクタ61を介して接続されている。トラクタ11の運転席には操作スイッチ62が設けられており、電磁弁56,58と電源60とを接続する電気回路63が操作スイッチ62により開閉される。操作スイッチ62により電気回路63が通電状態に操作されると、電磁弁56が開放位置となるとともに電磁弁58が排出位置となる。これにより、昇降式の走行車軸20がアクチュエータ48によって退避位置に上昇駆動されて、走行車輪23が路面Rから離反した位置となる。また、操作スイッチ62により電気回路63が遮断状態に操作されると、電磁弁56が排出位置となるとともに電磁弁58が開放位置となる。これにより、昇降式の走行車軸20が接地位置に下降駆動されて、走行車輪23が路面Rに接地する位置となる。なお、電気回路63にはヒューズ64やランプ65が設けられており、トラクタ11の運転席のインストルメントパネルに設置されたランプ65により、昇降式の走行車軸20が退避位置となっていることが運転者に表示されるようになっている。
【0031】
この電気回路63には、トレーラ12の走行状況に応じて電気回路63を開閉するリレー66が組み込まれている。制御手段としてのリレー66はトレーラ12側に設けられ、電気回路63を開閉する常開式のスイッチ部66aと、信号を受けてスイッチ部66aを駆動する駆動部66bとを有している。駆動部66bはコネクタ67を介して電源60に接続されており、駆動部66bとコネクタ67との間にはアンプ(増幅器)68が組み込まれている。また、トレーラ12には車両停止検出手段としての駐車ブレーキセンサ69が設けられ、駐車ブレーキセンサ69がアンプ68に接続されている。この駐車ブレーキセンサ69としては、例えば、特許文献2に記載されるように、走行車輪21,22に制動力を加える駐車ブレーキを作動させるための空気圧回路内の圧力を検出して駐車ブレーキが作動しているか否かを検出する圧力センサが用いられる。
【0032】
駐車ブレーキセンサ69により駐車ブレーキが作動していることが検出されて、駐車ブレーキセンサ69からアンプ68に信号が送られると、アンプ68により増幅された信号がリレー66の駆動部66bに送られてスイッチ部66aが閉状態となる。つまり、駐車ブレーキセンサ69によりトレーラ12が車両停止状態であることが検出されると、操作スイッチ62による電磁弁56,58の切り換えが可能となる。これにより、昇降式の走行車軸20を退避位置に上昇駆動して、連結車両の車両総重量を測定台51により測定することが可能となる。一方、駐車ブレーキセンサ69により駐車ブレーキが作動していることが検出されないときには、リレー66が開状態のままとなり、操作スイッチ62による電磁弁56,58の切り換えが遮断される。つまり、駐車ブレーキセンサ69によりトレーラ12が車両停止状態であることが未検出であるときには、昇降式の走行車軸20の退避位置への駆動が遮断されて走行車軸20が接地位置となる。これにより、トレーラ12の走行時には昇降式の走行車軸20が接地位置に強制的に下降駆動され、走行車輪23が路面Rから離反した状態で走行することが確実に防止される。
【0033】
このように、トレーラ12の走行車軸18〜20のうち車両後部側に配置される走行車軸20を昇降式としたので、昇降式の走行車軸20を退避位置に上昇駆動することによって、路面Rに接地した連結車両の最前輪と最後輪との間の軸間距離が短くなる。これにより、トラクタ11の前輪15からトレーラ12の走行車輪23までの軸間距離L2が既存の測定台51の長さMよりも長く走行車輪23が測定台51からはみ出すような場合でも、走行車輪23を路面Rから離反させることで、路面Rに接地したトラクタ11の前輪15からトレーラ12の走行車輪22までの軸間距離L1を測定台51の長さMよりも短くすることができる。したがって、トラクタ11およびトレーラ12を測定台51に載置可能となり、連結車両の車両総重量を測定台51により容易に測定することができる。このトレーラ12において、駐車ブレーキセンサ69によりトレーラ12が車両停止状態であることが未検出のときに、昇降式の走行車軸20の退避位置への上昇駆動を遮断して走行車軸20を接地位置とするリレー66を設けたので、走行車軸20が退避位置に駆動された状態で走行することを防止することができる。これにより、トレーラ12に貨物が積載されてトレーラ12の2軸走行が不可能な場合に、走行車輪23を路面Rから離反した状態で走行することが確実に防止され、走行時の安全を確保することができる。
【0034】
なお、前記実施の形態においては、トレーラ12が車両停止状態であるか否かを検出する車両停止検出手段として駐車ブレーキセンサ69を用いたが、これに限定されることはない。例えば、車両停止検出手段としてトレーラ12の車速を検出する車速センサを用いるようにしても良く、この場合には、トレーラ12の車速約2km/h以上でリレー66を開状態とする制御を行うことが考えられる。この車速センサとしては、ABS(アンチロックブレーキシステム)に設けられたスピードスイッチの出力を利用することも可能である。
【0035】
また、前記実施の形態においては、車両停止検出手段からの信号により電気回路63を開閉するリレー66を制御手段として用いたが、これに限定されることはない。例えば、車両停止検出手段からの信号により空気圧回路55,57を開閉する制御弁を制御手段として設けるようにしても良い。
【0036】
さらに、走行車軸19を昇降式としても良く、その場合には、1軸のトレーラに対応した長さの既存の測定台により連結車両の車両総重量を測定することも可能となる。また、トレーラ12としては3軸に限定されず、2軸や4軸のトレーラにおいても同様の構造によって、トラクタ11の前輪15からトレーラ12の最後輪までの軸間距離よりも長さの短い既存の測定台を用いて、連結車両の車両総重量を容易に測定することが可能となる。つまり、本発明によって、トレーラ12の走行車軸の軸数に拘わらず既存の測定台により連結車両の車両総重量の測定作業を容易に行うことができる。
【0037】
さらに、前記実施の形態においては、電磁弁56を開放位置に切り換えることで昇降式の走行車軸20を退避位置に駆動するようにしたが、電磁弁56を排出位置に切り換えることで昇降式の走行車軸20を退避位置に駆動するようなアクチュエータ48の構造としても良い。
【0038】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、トレーラ12としては、粉粒体を運搬するタンクトレーラに限定されず、他の貨物を運搬するトレーラでも良いことはもちろんである。さらに、前記実施の形態においてはセミトレーラ型の連結車両としたがフルトレーラ型の連結車両としても良く、トラクタ11のトラクタ軸14を2軸や3軸としても良い。
【符号の説明】
【0039】
11 トラクタ
12 トレーラ
13,14 トラクタ車軸
15 前輪
16 後輪
17 シャーシフレーム
18,19 走行車軸(非昇降式)
20 走行車軸(昇降式)
21〜23 走行車輪
24 キングピン
25 カプラ
26 タンク体
31,41 サスペンション
32,42 軸受ボックス
33,43 リーフスプリング
34,44 空気ばね
35,45 ブラケット
36,46 ショックアブソーバ
47 取付板
48 アクチュエータ
49 プッシュロッド
50 駆動部材
51 測定台
54 空気圧タンク
55 空気圧回路
56 電磁弁
57 空気圧回路
58 電磁弁
60 電源
61 コネクタ
62 操作スイッチ
63 電気回路
64 ヒューズ
65 ランプ
66 リレー
66a スイッチ部
66b 駆動部
67 コネクタ
68 アンプ
69 駐車ブレーキセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と後輪が設けられたトラクタにより牽引されて走行するトレーラに設けられ、それぞれ走行車輪が設けられた複数の走行車軸のうち車両後部側に配置される少なくとも1つの昇降式の走行車軸に連結されて、当該昇降式の走行車軸を前記走行車輪が路面に当接する接地位置と前記走行車輪が路面から離反する退避位置とに駆動するトレーラの車軸昇降装置であって、
流体圧により進退移動して前記昇降式の走行車軸を前記接地位置と前記退避位置とに駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータと流体圧源とを接続する流体圧回路に設けられ、前記アクチュエータに流体を供給する位置と前記アクチュエータ内の流体を排出する位置とに切り換えられる第1の制御弁と、
前記第1の制御弁の切り換えを操作する操作スイッチと、
前記トレーラが車両停止状態であるか否かを検出する車両停止検出手段と、
前記車両停止検出手段により前記トレーラが車両停止状態であることが未検出のときに、前記昇降式の走行車軸の前記退避位置への駆動を遮断して、前記昇降式の走行車軸を前記接地位置とする制御手段とを有し、
前記トラクタおよび前記トレーラを測定台に載置して車両総重量を測定する際に、前記トラクタの前輪からの距離が前記測定台の長さよりも長く前記測定台からはみ出す前記昇降式の走行車軸を前記退避位置に駆動することによって車両総重量を測定可能とすることを特徴とするトレーラの車軸昇降装置。
【請求項2】
請求項1記載のトレーラの車軸昇降装置において、前記昇降式の走行車軸に装着されたサスペンションと流体圧源とを接続する流体圧回路に設けられ、前記昇降式の走行車軸が前記接地位置となるように前記操作スイッチが操作されたときに前記サスペンションに流体を供給する開放位置と、前記昇降式の走行車軸が前記退避位置となるように前記操作スイッチが操作されたときに前記サスペンション内の流体を排出する排出位置とに切り換えられる第2の制御弁と、
前記車両検出手段により前記トレーラが車両停止状態であることが未検出の状態のもとで、前記第2の制御弁の前記排出位置への切り換えを遮断して、前記昇降式の走行車軸を前記接地位置とする前記制御手段とを有することを特徴とするトレーラの車軸昇降装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のトレーラの車軸昇降装置において、前記車両停止検出手段は前記走行車輪に制動力を加える駐車ブレーキが作動しているか否かを検出する駐車ブレーキセンサであることを特徴とするトレーラの車軸昇降装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のトレーラの車軸昇降装置において、前記車両停止検出手段は前記トレーラの車速を検出する車速センサであることを特徴とするトレーラの車軸昇降装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のトレーラの車軸昇降装置において、電磁弁からなる前記制御弁と電源とを接続する電気回路を開閉する前記操作スイッチを設けることを特徴とするトレーラの車軸昇降装置。
【請求項6】
請求項5記載のトレーラの車軸昇降装置において、前記車両停止検出手段からの信号により前記電気回路を開閉する前記制御手段としてのリレースイッチを設けることを特徴とするトレーラの車軸昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162128(P2011−162128A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29230(P2010−29230)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000229357)日本トレクス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】