説明

トレーラ及びその荷役方法

【課題】大型鋼板等の荷幅が道路交通法等の規制を越える荷を搬送するためのチルトフレームを備えたトレーラにおける、荷役作業時に掛かるの荷重の不均衡を軽減する。
【解決手段】伸縮ボルスタ24の伸張側に位置するランディングギヤ26Bが、車幅方向中心位置Cを基準として、他方の側のランディングギヤ26Aに対し車幅方向外側の位置に設けられている。チルトフレーム16が水平状態にあるときに荷役作業を行うことで、規制幅を超える幅広の荷Wの重心位置Gが、トレーラ10の車幅方向の中心位置Cに対し車幅方向外側へと大きく外れた状態となっても、ランディングギヤ26の接地時における、ランディングギヤ26A、26Bの荷重負担の不均衡を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の傾斜角度に設定し、固定されるチルトフレームを備えたトレーラ及びその荷役方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶やプラント等に用いられる、荷幅が道路交通法等の規制値を超える大型鋼板を陸送する場合、従来は、規制緩和措置が適用される深夜帯に、予め届け出がされたルートに沿って搬送することが行なわれていた。しかしながら、そのような搬送方法の非効率性や手続の煩雑さを解消するため、所定の傾斜角度に固定されるチルトフレームにより荷台が構成されたトレーラが開発されている。
このトレーラ10は、図3、図4に示されるように、前後方向に回転軸が延びるチルトヒンジ12によりシャシフレーム14に軸支されたチルトフレーム16と、チルトフレーム16の傾斜角度を変更させる駆動手段である油圧式のチルトシリンダ18と、チルトフレーム16の傾斜角度の検出手段20と、チルトフレーム16の傾斜角度が所定の角度にあるとき、チルトフレーム16の傾斜角度を固定する固定手段22とを備えている。
又、トレーラ10はいわゆるセミトレーラであり、シャシフレーム14の比較的前方寄りには、トラクタと連結していない状態で車体前方の荷重を受けるためのランディングギヤ26が設けられている。このランディングギヤ26は、トレーラ10のキングピン28がトラクタのカプラーに対して連結された後に脚長を縮め、走行時には非接地状態とする。
【0003】
なお、図3、図4の例では、チルトヒンジ12は、チルトフレーム16の車幅方向左端部の近傍に配置されており、チルトフレーム16が水平状態にあるときは、チルトフレーム16は、シャシフレーム14上に載置される。一方、チルトフレーム16が傾斜する際には、チルトヒンジ12を中心にチルトフレーム16が回転し、チルトフレーム16の幅方向右端部が上方へと持ち上がる。なお、図2において、チルトフレーム16は、傾斜角度θ=0°を、チルトフレーム16’は傾斜角度θ=34°位置を、チルトフレーム16”は傾斜角度θ=39.5°位置を、チルトフレーム16’”は傾斜角度θ=45.5°位置を、夫々示している。
又、チルトフレーム16の幅方向右端部から、車幅方向へと伸縮自在、かつ、格納状態又は所定の突出量にて位置固定可能な、複数の伸縮ボルスタ24が設けられている。チルトフレーム18及び伸縮ボルスタ24は、トレーラ10の荷台を構成するものであり、荷幅が道路交通法等の規制幅を越える大型鋼板を、チルトフレーム16及び伸縮ボルスタ24によって、確実に固定することが可能となっている。なお、伸縮ボルスタ24の伸縮動作は、チルトフレーム16が水平状態にあるときに、手動により行うことが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特許第4110423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このトレーラ10によれば、幅広の荷Wを荷台に固定して荷台を傾斜させることで、見かけ上の荷幅を規制値内に収め、時間やルートに規制されることなく効率的に大型鋼板を搬送することが可能となる。しかしながら、チルトフレーム16が水平状態にあるときに荷役作業を行うと(図1(b)参照)、伸縮ボルスタ24をチルトフレーム16の幅方向一端部から伸張させて荷台の幅を広げる構造上、幅広の荷Wの重心位置が、トレーラ10の車幅方向の中心位置Cに対し車幅方向外側へと大きく外れた状態となり、トレーラ10の、伸縮ボルスタ24の伸張側に荷重が集中することとなる。その結果、トレーラ10がトラクタに連結され、ランディングギヤ26が格納された状態では、第五輪(トレーラ10のキングピン28及びトラクタのカプラー)に左右不均一な荷重が加わることとなる。また、ランディングギヤ26を接地させた状態では、一方のランディングギヤ26に幅広の荷Wの荷重が集中することとなる。
【0006】
このような、荷Wの重心位置Gと、トレーラ10の車幅方向の中心位置Cとが大きくずれた状態は、チルトフレーム16を所定の角度に傾斜させることによって、荷Wの重心位置Gがトレーラ10の中心位置Cへ向けて移動して解消されるものである。しかしながら、一時的にせよ、トレーラ10の一端側に負荷が集中することに対応する強度保証対策は必要不可欠であり、トレーラ10の重量増加等を来たす一因ともなっている。
本発明は、以上のように、大型鋼板等の荷幅が道路交通法等の規制を越える荷を搬送するためのチルトフレームを備えたトレーラにおける、荷役作業時に掛かるの荷重の不均衡を軽減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0008】
(1)シャシフレームと、車幅方向の一側端寄りに配置され回転軸が前後方向に延びるチルトヒンジにより前記シャシフレームに軸支されたチルトフレームと、前記チルトフレームの幅方向一端部から車幅方向へと伸縮自在、かつ、格納状態又は所定の突出量にて位置固定可能な複数の伸縮ボルスタとを含む荷台を有し、規制幅を超える幅広の荷の荷幅に応じて前記伸縮ボルスタを伸張させ、かつ、前記荷台を傾斜させることで、前記荷台に積み込まれる荷の見かけ上の荷幅を規制幅内に収めて搬送することが可能なトレーラであって、左右一対のランディングギヤのうち、前記伸縮ボルスタの伸張側に位置するランディングギヤが、車幅方向中心位置を基準として、他方の側のランディングギヤに対し車幅方向外側の位置に設けられているトレーラ(請求項1)。
【0009】
本項に記載のトレーラは、チルトフレームが水平状態にあるときに荷役作業を行うことで、規制幅を超える幅広の荷の重心位置が、トレーラの車幅方向の中心位置に対し車幅方向外側へと大きく外れた状態となっても、伸縮ボルスタの伸張側に位置するランディングギヤが、車幅方向中心位置を基準として、他方の側のランディングギヤに対し車幅方向外側の位置に設けられていることにより、ランディングギヤ接地時における、荷重負担の左右不均衡を減少させるものである。
なお、伸縮ボルスタの伸張側に位置するランディングギヤは、当然に車両全幅の規制値を超えない範囲内で設けられるものであるが、必要に応じ、荷役作業に伴う接地時にのみ、車両全幅の規制値を超える外側へと突出する構造を採用することも可能である。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記左右一対のランディングギヤの、荷重を担持する構造部分は左右で対称形をなしており、前記シャシフレームに前記左右一対のランディングギヤを固定する左右のブラケットのうち、前記伸縮ボルスタの伸張側のランディングギヤに係るブラケットは、これと反対側のランディングギヤに係るブラケットに対して、車幅方向外側への突出量が大きく形成されているトレーラ(請求項2)。
本項に記載のトレーラは、シャシフレームに前記左右一対のランディングギヤを固定する左右のブラケットの、車幅方向外側への突出量に違いを与えることで、荷重を担持する構造部分は左右で対称形をなしている一対のランディングギヤを、上記位置に設けるものである。
【0011】
(3)上記(1)、(2)項記載のトレーラに対し前記規制幅を超える幅広の荷の積み下ろしを行う際に、前記トレーラをトラクタに連結し、なおかつ、前記ランディングギヤを接地させるトレーラの荷役方法(請求項3)。
本項に記載のトレーラの荷役方法は、前記トレーラをトラクタに連結して行うことで、トラクタから、チルトフレームの傾斜角度を変更する変更手段への動力供給を受ける。また、ランディングギヤを接地させて荷役作業を行うことで、ランディングギヤによって荷重を受け、第五輪に左右不均一な荷重が加わることなく荷役作業を行うものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明はこのように構成したので、大型鋼板等の荷幅が道路交通法等の規制を越える荷を搬送するためのチルトフレームを備えたトレーラにおける、荷役作業時に掛かる荷重の不均衡を軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、従来技術と同一部分、若しくは、相当する部分については同一符号で示す。
本発明の実施の形態に係るトレーラ10は、図1(a)に示されるように、シャシフレーム14と、車幅方向の一側端寄りに配置され回転軸が前後方向に延びるチルトヒンジ12によりシャシフレーム14に軸支されたチルトフレーム16と、チルトフレーム16の幅方向一端部から車幅方向へと伸縮自在、かつ、格納状態又は所定の突出量にて位置固定可能な複数の伸縮ボルスタ24とを含む荷台を有している。シャシフレーム14は、車幅方向の中心位置Cに対し、左右対称の位置でトレーラ10の前後方向に延びる一対のメインフレーム30と、一対のメインフレーム30を連結するサブフレーム32とを備えている。
【0014】
そして、左右一対のランディングギヤ26のうち、伸縮ボルスタの伸張側に位置するランディングギヤ26Bが、車幅方向中心位置Cを基準として、他方の側のランディングギヤ26Aに対し、車両全幅の規制値を超えない範囲内で、車幅方向外側の位置に設けられている(A<B)。
又、シャシフレーム14に左右一対のランディングギヤ26を固定する左右のブラケット34のうち、伸縮ボルスタ24の伸張側のランディングギヤ26Bに係るブラケット34Bは、これと反対側のランディングギヤ26Aに係るブラケット34Aに対して、車幅方向外側への突出量が大きく形成されている。
【0015】
一方、左右一対のランディングギヤ26は、図2に示される構造を有している。まず、車体の上下方向に延びるようにしてシャシフレーム14に固定されるアウターパイプ36と、アウターパイプ36の内壁に沿って摺動案内されるインナーパイプ38とを備え、インナーパイプ38の下端部に、接地手段であるパッド40が軸着されている。このように、ランディングギヤ26の、荷重を担持する構造部分は左右で対称形をなしている。
そして、アウターパイプ36の下端からのインナーパイプ38の突出量を調整するための駆動手段を構成するギヤボックス42が、ランディングギヤ26Bに設けられており、駆動ロッド44を介して、左右のランディングギヤ26の伸縮動作が連動するようになっている。なお、図示の例ではギヤボックス42に設けられたアーム46を用いて、ランディングギヤ26の伸縮作業を手動で行い、不使用時のアーム46はハンガー48によってランディングギヤ26Bに固定される構造となっているが、電動モータ等を用いた自動式のランディングギヤの採用も可能である。
【0016】
更に、図示の例では、左右一対のランディングギヤ26は、補強ロッド50によってサブフレーム32に固定され、なおかつ、連結ロッド52によって左右が互いに連結されている。
そして、トレーラ10に対し規制幅を超える幅広の荷Wの積み下ろしを行う際には、トレーラ10をトラクタに連結し、なおかつ、ランディングギヤ26を接地させて荷役作業を行うことが望ましい。
【0017】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。
まず、本発明の実施の形態に係るトレーラ10は、伸縮ボルスタ24の伸張側に位置するランディングギヤ26Bが、車幅方向中心位置Cを基準として、他方の側のランディングギヤ26Aに対し車幅方向外側の位置に設けられていることにより、図1(a)に示されるように、チルトフレーム16が水平状態にあるときに荷役作業を行うことで、規制幅を超える幅広の荷Wの重心位置Gが、トレーラ10の車幅方向の中心位置Cに対し車幅方向外側へと大きく外れた状態となっても、ランディングギヤ26の接地時における、ランディングギヤ26A、26Bの荷重負担の不均衡を減少させることができる。
【0018】
さて、本発明の実施の形態との比較例として、図1(b)には、左右一対のランディングギヤ26の、車幅方向の中心位置Cを基準とする距離ABが同一距離である場合(従来)のトレーラ10が示されている。この例では、幅広の荷Wの重心位置は伸縮ボルスタ24の伸張側に位置するランディングギヤ26Bのほぼ直上に位置しており、本発明の実施の形態と比較して、ランディングギヤ26Bの負担する荷重が大きくなることは明らかである。
【0019】
又、シャシフレーム14に左右一対のランディングギヤ26を固定する左右のブラケット34A、34Bの、車幅方向外側への突出量に違いを与える(ブラケット34Bの方がブラケット34Aよりも大きく突出している)ことで、荷重を担持する構造部分が左右で対称形をなしている一対のランディングギヤ26A、26Bを、上記位置に設けることができる。
なお、本発明の実施の形態では、図1(b)に示された従来例との比較において、ブラケット34A、34Bの突出量の差に合せて、補強ロッド50A、50Bも長さを変えている(補強ロッド50Bの方が補強ロッド50Aよりも長い)と共に、連結ロッド52も延長している。
【0020】
そして、本発明の実施の形態に係るトレーラ10に対し規制幅を超える幅広の荷Wの積み下ろしを行う際には、トレーラ10をトラクタに連結し、なおかつ、ランディングギヤ26を接地させて荷役作業を行うことで、トラクタから、トレーラ10のチルトフレームの傾斜角度を変更する変更手段への動力供給を受けることができる。また、ランディングギヤ26を接地させることでランディングギヤ26によって荷重を受け、第五輪に左右不均一な荷重が加わることなく荷役作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るトレーラのランディングギヤを示す図であって、(a)は図3(b)のD−D線における断面に相当するものであり、(b)は比較例として示した従来技術の同一部分における断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るトレーラのランディングギヤを示すものであり、(b)は図1(a)と同一方向視図、(a)、(c)は(b)の左右側面図である。
【図3】従来のトレーラの概略図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】従来のトレーラの後面図である。
【符号の説明】
【0022】
10:トレーラ、12:チルトヒンジ、14:シャシフレーム、16:チルトフレーム、18:チルトシリンダ、20:チルトフレームの傾斜角度の検出手段、22:固定手段、 24:伸縮ボルスタ、26:ランディングギヤ、28:キングピン、30:メインフレーム、32:サブフレーム、34:ブラケット、36:アウターパイプ、38:インナーパイプ、40:パッド、42:ギヤボックス、44:駆動ロッド、46:アーム、48:ハンガー、50:補強ロッド、52連結ロッドC:車幅方向の中心位置、G:荷の重心位置、W:幅広の荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャシフレームと、車幅方向の一側端寄りに配置され回転軸が前後方向に延びるチルトヒンジにより前記シャシフレームに軸支されたチルトフレームと、前記チルトフレームの幅方向一端部から車幅方向へと伸縮自在、かつ、格納状態又は所定の突出量にて位置固定可能な複数の伸縮ボルスタとを含む荷台を有し、規制幅を超える幅広の荷の荷幅に応じて前記伸縮ボルスタを伸張させ、かつ、前記荷台を傾斜させることで、前記荷台に積み込まれる荷の見かけ上の荷幅を規制幅内に収めて搬送することが可能なトレーラであって、
左右一対のランディングギヤのうち、前記伸縮ボルスタの伸張側に位置するランディングギヤが、車幅方向中心位置を基準として、他方の側のランディングギヤに対し車幅方向外側の位置に設けられていることを特徴とするトレーラ。
【請求項2】
前記左右一対のランディングギヤの、荷重を担持する構造部分は左右で対称形をなしており、前記シャシフレームに前記左右一対のランディングギヤを固定する左右のブラケットのうち、前記伸縮ボルスタの伸張側のランディングギヤに係るブラケットは、これと反対側のランディングギヤに係るブラケットに対して、車幅方向外側への突出量が大きく形成されていることを特徴とする請求項1記載のトレーラ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトレーラに対し前記規制幅を超える幅広の荷の積み下ろしを行う際に、前記トレーラをトラクタに連結し、なおかつ、前記ランディングギヤを接地させることを特徴とするトレーラの荷役方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−100212(P2010−100212A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274571(P2008−274571)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】