説明

トレーリングアームの取付構造

【課題】 四輪駆動車用のトレーリングアームおよび前輪駆動車用のトレーリングアームを共通の支持ブラケットで支持可能にしながら、上記何れの場合に入力される荷重にも耐え得るように支持ブラケットの剛性を高める。
【解決手段】 サイドシル11の後部に設けた支持ブラケット23に四輪駆動車用および前輪駆動車用のトレーリングアーム17を選択的に取り付け可能な二つの第1取付部23a,23bを設けたので、2種類の支持ブラケット23を準備する必要をなくしてコストダウンに寄与することができる。しかもリヤサイドフレーム12と交差して車幅方向外側に延びるクロスメンバ27の端部のクロスメンバ延長部28の高さが車幅方向外側に向かって増加し、そのクロスメンバ延長部28を支持ブラケット23に結合したので、支持ブラケット23の剛性を高めてトレーリングアーム17を強固に支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後方向に延びるサイドシルの後部に設けた支持ブラケットにリヤサスペンション装置のトレーリングアームの前端を取り付けるトレーリングアームの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リヤサスペンション装置のサスペンションブラケットの車幅方向内側の取付座を上方に延出せしめた延出部をリヤサイドフレームの外側面に結合するとともに、クロスシル(クロスメンバ)から車幅方向外側下向きに突設したサイドステーの先端の支持座を、リヤサスペンション装置のサスペンションブラケットの車幅方向外側の取付座に結合することで、サスペンションブラケットの車幅方向の剛性を高めるものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−335448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、共通の車体フレームを四輪駆動車および前輪駆動車に共用する場合、前輪駆動車の従動輪である後輪を支持するリヤサスペンション装置と、四輪駆動車の副駆動輪である後輪を支持するリヤサスペンション装置とでは、そのトレーリングアームの取付位置の高さが異なることがある。このような場合、四輪駆動車用のトレーリングアームを車体に支持するための支持ブラケットと、前輪駆動車用のトレーリングアームを車体に支持するための支持ブラケットとの形状が異なるため、2種類の支持ブラケットを準備することが必要になり、部品の種類が増加してコストアップの要因となる可能性がある。
【0005】
このような問題に対処するために、四輪駆動車用のトレーリングアームの支持ブラケットと前輪駆動車用のトレーリングアームの支持ブラケットとを共通化することで、部品点数を削減してコストダウンを図ることが考えられるが、四輪駆動車用のトレーリングアームから入力される荷重と前輪駆動車用のトレーリングアームから入力される荷重とでは、それらの荷重の入力方向や入力位置が異なるため、何れの場合にも耐えられるようにトレーリングアームの支持部の剛性を充分に高めることが必要となる。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、四輪駆動車用のトレーリングアームおよび前輪駆動車用のトレーリングアームを共通の支持ブラケットで支持可能にしながら、上記何れの場合に入力される荷重にも耐え得るように支持ブラケットの剛性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車体前後方向に延びるサイドシルの後部に設けた支持ブラケットにリヤサスペンション装置のトレーリングアームの前端を取り付けるトレーリングアームの取付構造であって、車体前後方向に延びるリヤサイドフレームと交差して車幅方向外側に延びるクロスメンバの端部の前後側面に上下方向の高さが車幅方向外側に向かって増加する前部側壁部および後部側壁部を形成し、前記前部および後部側壁部を前記支持ブラケットの車幅方向内面に結合し、前記支持ブラケットに四輪駆動車用の前記トレーリングアームおよび前輪駆動車用の前記トレーリングアームを選択的に取り付け可能な二つの第1取付部を設けたことを特徴とするトレーリングアームの取付構造が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記クロスメンバは前記リヤサイドフレームとの交差部から前記サイドシルに向かって車体後方に屈曲しており、前記前部側壁部が前記リヤサイドフレームの長手方向に延びる稜線に接続される部分は、円錐台の側面の一部を切り取った部分円錐台形状部を成し、前記部分円錐台形状部は前記前部側壁部側から前記稜線側に向かって先細に形成されることを特徴とするトレーリングアームの取付構造が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記部分円錐台形状部の先端部は前記稜線の曲率半径よりも大きい曲率半径を有することを特徴とするトレーリングアームの取付構造が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記サイドシルの後部と前記リヤサイドフレームとをアウトリガーで接続し、前記前部および後部側壁部の上端を前記アウトリガーの下面に接続したことを特徴とするトレーリングアームの取付構造が提案される。
【0011】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記サイドシルの後部に支持壁を形成し、前記支持壁に前記第1取付部と協働して前記トレーリングアームを取り付ける第2取付部を形成したことを特徴とするトレーリングアームの取付構造が提案されるが提案される。
【0012】
尚、実施の形態の四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔11eおよび前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔11fは本発明の第2取付部に対応し、実施の形態のリヤクロスメンバ14は本発明のクロスメンバに対応し、実施の形態の四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23aおよび前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23bは本発明の第1取付部に対応し、実施の形態の前壁29aは本発明の前部側壁部に対応し、実施の形態の後壁30bは本発明の後部側壁部に対応する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、車体前後方向に延びるサイドシルの後部に設けた支持ブラケットに四輪駆動車用のトレーリングアームおよび前輪駆動車用のトレーリングアームを選択的に取り付け可能な二つの第1取付部を設けたので、共通の支持ブラケットに四輪駆動車用および前輪駆動車用のトレーリングアームの何れをも取り付け可能となり、2種類の支持ブラケットを準備する必要をなくしてコストダウンに寄与することができる。しかも車体前後方向に延びるリヤサイドフレームと交差して車幅方向外側に延びるクロスメンバの端部の前後側面に上下方向の高さが車幅方向外側に向かって増加する前部側壁部および後部側壁部を形成し、前部および後部側壁部を支持ブラケットの車幅方向内面に結合したので、支持ブラケットの剛性をクロスメンバの前部および後部側壁部で効率的に高め、トレーリングアームを強固に支持することができる。
【0014】
また請求項2の構成によれば、クロスメンバはリヤサイドフレームとの交差部からサイドシルに向かって車体後方に屈曲しているので、トレーリングアームから入力する荷重がクロスメンバの前記屈曲部をその角度が増減するように変形させようとしても、クロスメンバの前部側壁部がリヤサイドフレームの長手方向に延びる稜線に接続される部分は、円錐台の側面の一部を切り取った部分円錐台形状部を成し、部分円錐台形状部は前部側壁部側からリヤサイドフレームの稜線側に向かって先細に形成されるので、クロスメンバの屈曲部の近傍の剛性を部分円錐台形状部で効果的に高めて前記変形を抑制することができる。
【0015】
また請求項3の構成によれば、クロスメンバの前壁部の部分円錐台形状部の先端部はリヤサイドフレームの稜線の曲率半径よりも大きい曲率半径を有するので、部分円錐台形状部をプレス成形する際に、その先端部の曲率半径が極端に小さくなるのを防止して亀裂の発生を回避することができる。
【0016】
また請求項4の構成によれば、サイドシルの後部とリヤサイドフレームとをアウトリガーで接続し、クロスメンバの前部および後部側壁部の上端をアウトリガーの下面に接続したので、トレーリングアームの支持部の剛性を大幅に高めることができる。
【0017】
また請求項5の構成によれば、サイドシルの後部に支持壁を形成し、支持壁に支持ブラケットの第1取付部と協働してトレーリングアームを取り付ける第2取付部を形成したので、トレーリングアームに入力される荷重を第1取付部から支持ブラケットに伝達するとともに第2取付部からサイドシルの支持壁に伝達することで、支持ブラケットが分担する荷重を低減してその小型軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自動車の後部車体フレームの下面図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】図1の3方向矢視図。
【図4】図3に対応する分解斜視図。
【図5】図2の5方向矢視図。
【図6】図2の6−6線断面図。
【図7】図5の7−7線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
先ず、本明細書における前後方向、左右方向(車幅方向)および上下方向は、運転席に着座した乗員を基準として定義される。また本明細書におけるT面、B面およびH面は、以下のように定義される。図1、図3および図4に示すように、T面とは、前後方向軸に直交する面であり、例えば車体前面あるいは車体後面がこれに対応する。B面とは、左右方向軸に直交する面であり、例えば車体左側面あるいは車体右側面がこれに対応する。H面とは、上下方向軸に直交する面であり、例えば車体天井面あるいは車体床面がこれに対応する。但し、T面には、前後方向軸に直交する面に対して45°未満の角度で傾斜する面が含まれ、B面には、左右方向軸に直交する面に対して45°未満の角度で傾斜する面が含まれ、H面には、上下方向軸に直交する面に対して45°未満の角度で傾斜する面が含まれるものとする。
【0021】
図1は自動車の後部車体フレームの平面図であって、車体前後方向に延びる左右一対のサイドシル11,11の車幅方向内側に車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム12,12が配置されており、リヤサイドフレーム12,12の後部はサイドシル11,11の後端を超えて車体後方に延出する。左右のサイドシル11,11の後端とリヤサイドフレーム12,12とが、左右一対のアウトリガー13,13で接続される。リヤサイドフレーム12は、車幅方向内側の内壁12aと、車幅方向外側の外壁12bと、底壁12cとを備えて上向きに開放するU字状断面に構成されており、車体前方から後方に向かって傾斜するキックアップ部が車幅方向に延びるリヤクロスメンバ14で接続されるとともに、キックアップ部よりも後方部分が車幅方向に延びるエンドクロスメンバ15で接続される。
【0022】
左右の後輪W,Wを懸架するリヤサスペンション装置16は、いわゆるHビーム型サスペンション装置であり、車体前後方向に延びる左右一対のトレーリングアーム17,17と、それれらを車幅方向に接続するトーションビーム18とがH形を成すように一体に形成されており、トレーリングアーム17,17の前端がゴムブッシュジョイント19,19を介してサイドシル11,11およびリヤクロスメンバ14間に支持されるとともに、トレーリングアーム17,17の後端に左右の後輪W,Wが支持される。トレーリングアーム17,17の後端は、サスペンションスプリング20,20およびダンパー21,21を介して車体に接続される。
【0023】
次に、リヤサスペンション装置16のトレーリングアーム17の先端の車体取付部の構造を説明する。
【0024】
図2〜図5に示すように、サイドシル11は、上壁11a、下壁11bおよび側壁11cを備えて車幅方向外側に開放するコ字状の断面を有するもので、その後端には車幅方向内側に向かって延びる支持壁11dが形成される。支持壁11dには、上側の四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔11eと、下側の前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔11fとが上下に並んで形成される。
【0025】
アウトリガー13は板状の部材であって、その第1〜第3接合フランジ13a〜13cがサイドシル11の側壁11cにB面内で溶接W1され、その第4〜第6接合フランジ13d〜13fがリヤサイドフレーム12のキックアップ部にB面内およびH面内で溶接W2され、その第7、第8接合フランジ13g,13hがフロアパネル22(図3および図4参照)の下面にH面内で溶接W3される。
【0026】
サイドシル11の側壁11cには、板状の支持ブラケット23の前端がB面内で溶接W4される。支持ブラケット23はサイドシル11の支持壁11dと平行に延びており、支持壁11dおよび支持ブラケット23の相互に対向する面は、コ字状の補強ブラケット24で接続されて補強される。
【0027】
支持ブラケット23および補強ブラケット24には上側の四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23a,24aと、下側の前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23b,24bとが上下に並んで形成される(図4および図6参照)。支持ブラケット23および補強ブラケット24間には上部ナット25および下部ナット26が挟持されており、上部ナット25の軸線は四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23a,24aの軸線に一致し、下部ナット26の軸線は前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23b,24bの軸線に一致している。
【0028】
リヤクロスメンバ14は、リヤサイドフレーム12,12よりも車幅方向内側に位置するクロスメンバ本体部27と、クロスメンバ本体部27の車幅方向外側に接続される左右一対のクロスメンバ延長部28,28とで構成される。クロスメンバ本体部27は、前壁27a、後壁27bおよび底壁27cを有して上面が開放するコ字状断面の部材である。クロスメンバ延長部28は、リヤサイドフレーム12を跨いで車幅方向外側に延びる外端が支持ブラケット23の車幅方向内面に接続されており、クロスメンバ本体部27に対して車体後方側に屈曲している。
【0029】
クロスメンバ延長部28は、フロントメンバ29およびリヤメンバ30に分割されている。フロントメンバ29は前壁29aと、第1〜第7接合フランジ29b〜29hと、部分円錐台形状部29iとを備え、またリヤメンバ30は底壁30aと、後壁30bと、第1〜第6接合フランジ30c〜30hとを備える。
【0030】
フロントメンバ29の前壁29aは、リヤサイドフレーム12から車幅方向外側に張り出す部分が略三角形を成し、車幅方向外側に向かって上下方向の高さが次第に増加する(図2参照)。リヤメンバ30の後壁30bは、リヤサイドフレーム12から車幅方向外側に張り出す部分が略三角形を成し、車幅方向外側に向かって上下方向の高さが次第に増加する(図3参照)。従って、クロスメンバ延長部28がリヤサイドフレーム12から車幅方向外側に張り出す部分は、その上下方向の高さが車幅方向外側に向かって次第に増加することになる。
【0031】
フロントメンバ29およびリヤメンバ30は、第1接合フランジ29bおよび底壁30aをH面内で溶接W5することで一体化され、かつクロスメンバ延長部28の車幅方向内端部はクロスメンバ本体部27の車幅方向外端部に溶接W6により結合される。
【0032】
フロントメンバ29の第2接合フランジ29cはフロアパネル22の下面にH面内で溶接W7され、フロントメンバ29の第3接合フランジ29dはリヤサイドフレーム12の内壁12aにB面内で溶接W8され、フロントメンバ29の第4接合フランジ29eはリヤサイドフレーム12の底壁12cにH面内で溶接W9され、フロントメンバ29の第5接合フランジ29fはフロアパネル22の下面にH面内で溶接W10され、フロントメンバ29の第6、第7接合フランジ29g,29hは支持ブラケット23の車幅方向内面にB面内で溶接W11される。
【0033】
リヤメンバ30の第1接合フランジ30cはフロアパネル22の下面にH面内で溶接W12され、リヤメンバ30の第2接合フランジ30dはリヤサイドフレーム12の内壁12aにB面内で溶接W13され、リヤメンバ30の第3接合フランジ30eはリヤサイドフレーム12の底壁12cにH面内で溶接W14され、リヤメンバ30の第4接合フランジ30fはアウトリガー13にT面内で溶接W15され、リヤメンバ30の第5接合フランジ30gは支持ブラケット23の車幅方向内面にB面内で溶接W16され、リヤメンバ30の第6接合フランジ30hはフロントメンバ29の第7接合フランジ29hと重ねられて支持ブラケット23の車幅方向内面にB面内で溶接W11される。
【0034】
更に、支持ブラケット23の第1、第2接合フランジ23c,23dが、アウトリガー13の上面にH面内で溶接W17される。
【0035】
ところで、本実施の形態の車体フレームは四輪駆動車および前輪駆動車に共用されるものであるが、四輪駆動車および前輪駆動車ではリヤサスペンション装置16の構造が異なっており、更にリヤサスペンション装置16のトレーリングアーム17のゴムブッシュジョイント19の取付位置の高さも異なっている。
【0036】
図5および図7に示すように、リヤクロスメンバ14のクロスメンバ延長部28のフロントメンバ29がリヤサイドフレーム12と交差する部分、つまりフロントメンバ29がリヤサイドフレーム12の内壁12aに溶接W8される第3接合フランジ29dと、フロントメンバ29がリヤサイドフレーム12の底壁12cに溶接W9される第4接合フランジ29eとの間に、リヤサイドフレーム12の内壁12aおよび底壁12c間の稜線12dを覆うように部分円錐台形状部29iが形成される。
【0037】
部分円錐台形状部29iは鎖線で示す円錐台の一部を2本の母線で切り取ったような形状を有しており、フロントメンバ29の前壁29a側からリヤサイドフレーム12の稜線12d側に向かって先細に形成される。図5に網掛けして示すように、部分円錐台形状部29iの先端部には切欠き29jが形成されており、この切欠き29jによって部分円錐台形状部29iの先端の曲率半径が増加し、リヤサイドフレーム12の稜線12dとの間に隙間α(図7参照)が形成される。
【0038】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0039】
図3および図6に示すように、前輪駆動車のリヤサスペンション装置16のトレーリングアーム17のゴムブッシュジョイント19は、サイドシル11の支持壁11dの下側の前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔11fと、支持ブラケット23の下側の前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23bとに挿通されて下部ナット26に螺合するボルト31により取り付けられる。
【0040】
一方、図6に鎖線で示すように、四輪駆動車のリヤサスペンション装置16のトレーリングアーム17のゴムブッシュジョイント19は、サイドシル11の支持壁11dの上側の四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔11eと、支持ブラケット23の上側の四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23aとに挿通されて上部ナット25に螺合するボルト31により取り付けられる。
【0041】
このように、サイドシル11の支持壁11dに四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔11eおよび前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔11fを設けるとともに、サイドシル11に固定した支持ブラケット23に四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23aおよび前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔23bを設けたので、2種類の支持ブラケット23を準備する等の設計変更を施すことなく、四輪駆動車用のリヤサスペンション装置16および前輪駆動車用のリヤサスペンション装置16を選択的に取り付けることが可能になってコストダウンに寄与することができる。
【0042】
また四輪駆動車用のリヤサスペンション装置16と前輪駆動車用のリヤサスペンション装置16とでは、そこから車体フレームに入力される荷重の態様が異なるため、その何れにも耐え得るようにトレーリングアーム17の取付部の強度を高める必要がある。
【0043】
本実施の形態によれば、サイドシル11の側壁11cに溶接W4された支持ブラケット23が、リヤクロスメンバ14のクロスメンバ延長部28に接続されて補強されるが、その際に、車体前後方向に延びるリヤサイドフレーム12と交差して車幅方向外側に延びるクロスメンバ延長部28の前壁29aおよび後壁30bが、上下方向の高さが車幅方向外側に向かって増加する三角形状に形成されており、その三角形状の幅広になった部分が支持ブラケット23に溶接W10,W11,W16されるので、支持ブラケット23の剛性をクロスメンバ延長部28で効率的に高め、リヤサスペンション装置16のトレーリングアーム17を強固に支持することができる。
【0044】
しかもトレーリングアーム17に入力される荷重をサイドシル11の支持壁11dおよび支持ブラケット23の両方に配分することができるので、支持ブラケット23が分担する荷重を低減してその小型軽量化を図ることができる。
【0045】
また図1から明らかなように、リヤクロスメンバ14のクロスメンバ延長部28は、車幅方向に延びるクロスメンバ本体部27に対して車体後方に角度βだけ屈曲しているため、リヤサスペンション装置16のトレーリングアーム17から入力する荷重がリヤクロスメンバ14の前記屈曲部をその角度βが増減するように変形させようとする(図1の矢印参照)。
【0046】
しかしながら本実施の形態によれば、リヤクロスメンバ14のクロスメンバ延長部28のフロントメンバ29の前壁29aがリヤサイドフレーム12の長手方向に延びる稜線12dに接続される部分が、円錐台の側面の一部を切り取った部分円錐台形状部29iを成し、部分円錐台形状部29iはフロントメンバ29の前壁29a側からリヤサイドフレーム12の稜線12d側に向かって先細に形成されるので、リヤクロスメンバ14の前記屈曲部の近傍の剛性を部分円錐台形状部29iで効果的に高めて前記変形を抑制することができる。
【0047】
その際に、フロントメンバ29の前壁29aの部分円錐台形状部29iの先端側の曲率半径が小さいと、そのフロントメンバ29をプレス成形する際に亀裂が発生し易くなって成形性が悪くなる問題があるが、本実施の形態によれば、フロントメンバ29の部分円錐台形状部29iの先端部はリヤサイドフレーム12の稜線12dの曲率半径よりも大きい曲率半径を有するので、部分円錐台形状部29iの先端部に亀裂がの発生するを回避することができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0049】
例えば、本発明のリヤサスペンション装置は実施の形態のHビーム型サスペンション装置に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
11 サイドシル
11d 支持壁
11e 四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔(第2取付部)
11f 前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔(第2取付部)
12 リヤサイドフレーム
12d 稜線
13 アウトリガー
14 リヤクロスメンバ(クロスメンバ)
16 リヤサスペンション装置
17 トレーリングアーム
23 支持ブラケット
23a 四輪駆動車用トレーリングアーム取付孔(第1取付部)
23b 前輪駆動車用トレーリングアーム取付孔(第1取付部)
29a 前壁(前部側壁部)
29i 部分円錐台形状部
30b 後壁(後部側壁部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びるサイドシル(11)の後部に設けた支持ブラケット(23)にリヤサスペンション装置(16)のトレーリングアーム(17)の前端を取り付けるトレーリングアームの取付構造であって、
車体前後方向に延びるリヤサイドフレーム(12)と交差して車幅方向外側に延びるクロスメンバ(14)の端部の前後側面に上下方向の高さが車幅方向外側に向かって増加する前部側壁部(29a)および後部側壁部(30b)を形成し、前記前部および後部側壁部(29a,30b)を前記支持ブラケット(23)の車幅方向内面に結合し、前記支持ブラケット(23)に四輪駆動車用の前記トレーリングアーム(17)および前輪駆動車用の前記トレーリングアーム(17)を選択的に取り付け可能な二つの第1取付部(23a,23b)を設けたことを特徴とするトレーリングアームの取付構造。
【請求項2】
前記クロスメンバ(14)は前記リヤサイドフレーム(12)との交差部から前記サイドシル(11)に向かって車体後方に屈曲しており、前記前部側壁部(29a)が前記リヤサイドフレーム(12)の長手方向に延びる稜線(12d)に接続される部分は、円錐台の側面の一部を切り取った部分円錐台形状部(29i)を成し、前記部分円錐台形状部(29i)は前記前部側壁部(29a)側から前記稜線(12d)側に向かって先細に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のトレーリングアームの取付構造。
【請求項3】
前記部分円錐台形状部(29i)の先端部は前記稜線(12d)の曲率半径よりも大きい曲率半径を有することを特徴とする、請求項2に記載のトレーリングアームの取付構造。
【請求項4】
前記サイドシル(11)の後部と前記リヤサイドフレーム(12)とをアウトリガー(13)で接続し、前記前部および後部側壁部(29a,30b)の上端を前記アウトリガー(13)の下面に接続したことを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のトレーリングアームの取付構造。
【請求項5】
前記サイドシル(11)の後部に支持壁(11d)を形成し、前記支持壁(11d)に前記第1取付部(23a,23b)と協働して前記トレーリングアーム(17)を取り付ける第2取付部(11e,11f)を形成したことを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のトレーリングアームの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−18383(P2013−18383A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153625(P2011−153625)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】