説明

トレーリングアーム取付部車体構造

【課題】トレーリングアームをリヤサイドメンバに連結する部位の車体剛性を向上することが可能なトレーリングアーム取付部車体構造を提供する。
【解決手段】リヤサイドメンバ1の窪み部2の下面にトレーリングアームブラケット5を取付け、そのトレーリングアームブラケット5にトレーリングアーム4を連結する場合、床上ブラケット11とリヤフロアパネル9とリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3とを接合してリヤサイドメンバ1の窪み部2とリヤフロアパネル9の凹部10と床上ブラケット11の平坦部12とで上下二段の閉断面を形成することにより、トレーリングアームブラケット5が取付けられるリヤサイドメンバ1の上部車体剛性が向上する。床上ブラケット11にはリヤシートクッションの車両幅方向外側端部を支持するリヤフロアエクステンションを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造に関し、特にリヤサスペンションのトレーリングアームを連結する部位の車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなリヤサスペンションのトレーリングアーム連結部分の車体構造としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この車体構造は、例えばリヤサイドメンバの窪み部に開口部を形成し、この開口部に上端部が収まるようにしてトレーリングアームの車両前方連結部を配置し、トレーリングアームとリヤサイドメンバとを連結すると共に、当該開口部の上方には蓋を接合している。この車体構造によれば、リヤサイドメンバとトレーリングアームとが車両上下方向に離れてしまわないので、サスペンションの横力をリヤサイドメンバで直接的に受けることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−114789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載されるトレーリングアーム取付部車体構造では、強度部材であるリヤサイドメンバに開口部を形成する必要から、当該リヤサイドメンバ自体の衝突強度が低下する。リヤサイドメンバに開口部を形成せず、トレーリングアームをリヤサイドメンバに連結するためには、リヤサイドメンバの下方にトレーリングアームを連結するためのトレーリングアームブラケットを接合する必要があり、そうした場合に強度部材であるリヤサイドメンバ中心とトレーリングアーム回転中心軸とが離れてしまい、リヤサイドメンバにサスペンションからの横力が応力として大きく作用してしまう。その結果、断面変形を引き起こして振動性能を悪化させる恐れがある。そのため、トレーリングアームをリヤサイドメンバに連結する部位の車体剛性の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、トレーリングアームをリヤサイドメンバに連結する部位の車体剛性を向上することが可能なトレーリングアーム取付部車体構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、発明の実施態様は、リヤサスペンションのトレーリングアームを連結する部位の車体構造であって、前記トレーリングアームを連結するためのトレーリングアームブラケットが下方に凸の窪み部の下面に取付けられるリヤサイドメンバと、前記トレーリングアームブラケットの車両幅方向外側部及びリヤサイドメンバの車両幅方向外側部が接合され且つサイドシル断面を形成するリヤコンパートメントパネルと、前記リヤサイドメンバの上方に配置され且つ当該リヤサイドメンバの窪み部の上部では他の部分より低い凹部が形成されているリヤフロアパネルと、前記リヤフロアパネルの凹部の上方で且つ前記トレーリングアームブラケットへのトレーリングアーム連結部位の上方に配置され且つ車両幅方向内側から外側に向けて所定位置まで略一定の高さの平坦部を備え且つ前記平坦部より車両幅方向外側に向けて次第に低くなる床上ブラケットとを備え、前記床上ブラケットとリヤフロアパネルとリヤサイドメンバ又はリヤコンパートメントパネルとを接合して前記リヤサイドメンバの窪み部とリヤフロアパネルの凹部と床上ブラケットの平坦部とで上下二段の閉断面を形成したことを特徴とするトレーリングアーム取付部車体構造である。
【0007】
また、別の実施態様は、前記リヤサイドメンバを挟んだ車両幅方向外側と内側との夫々で前記床上ブラケットをリヤフロアパネル及びリヤサイドメンバ又はリヤコンパートメントパネルと3枚打ちスポット溶接したことを特徴とするトレーリングアーム取付部車体構造である。
また、別の実施態様は、前記床上ブラケットの車両後方端側がリヤサイドメンバとクロスメンバとの結合部位まで延長され、当該リヤサイドメンバとクロスメンバとの結合部位で床上ブラケットの車両後方端部と前記リヤフロアパネルとを接合したことを特徴とするトレーリングアーム取付部車体構造である。
【0008】
また、別の実施態様は、前記床上ブラケットの車両後方端部とリヤフロアパネルとの接合部以外の部位は互いに上下方向に離れており、両者及び両者の接合部で閉断面を形成したことを特徴とするトレーリングアーム取付部車体構造である。
また、別の実施態様は、前記床上ブラケットはリヤシートクッションの車両幅方向外側端部を支持するリヤフロアエクステンションであることを特徴とするトレーリングアーム取付部車体構造である。
【発明の効果】
【0009】
而して、発明の実施態様では、床上ブラケットとリヤフロアパネルとリヤサイドメンバ又はリヤコンパートメントパネルとを接合してリヤサイドメンバの窪み部とリヤフロアパネルの凹部と床上ブラケットの平坦部とで上下二段の閉断面を形成したことにより、トレーリングアームが連結されたトレーリングアームブラケットの上部の車体剛性が向上し、トレーリングアームをリヤサイドメンバに連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
【0010】
また、リヤサイドメンバを挟んだ車両幅方向外側と内側との夫々で床上ブラケットをリヤフロアパネル及びリヤサイドメンバ又はリヤコンパートメントパネルと3枚打ちスポット溶接したことにより、剛性の高いリヤサイドメンバの上部車体剛性を更に高めてトレーリングアームをリヤサイドメンバに連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
また、リヤサイドメンバとクロスメンバとの結合部位で床上ブラケットの車両後方端部とリヤフロアパネルとを接合したことにより、トレーリングアーム連結部からクロスメンバまでのリヤサイドメンバの上部車体剛性を向上することができ、トレーリングアームをリヤサイドメンバに連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
【0011】
また、床上ブラケットの車両後方端部とリヤフロアパネルとの接合部以外の部位は互いに上下方向に離れており、両者及び両者の接合部で閉断面を形成したことにより、トレーリングアーム連結部からクロスメンバまでのリヤサイドメンバの上部車体剛性を向上することができ、トレーリングアームをリヤサイドメンバに連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
また、床上ブラケットがリヤシートクッションの車両幅方向外側端部を支持するリヤフロアエクステンションであることにより、既存の又は必要な部材を用いてトレーリングアームをリヤサイドメンバに連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のトレーリングアーム取付部車体構造の第1実施形態を示すリヤサイドシル及びリヤフロアの斜視図である。
【図2】図1のリヤサイドシル及びリヤフロアの組立説明図である。
【図3】図2の組立説明図の側面図である。
【図4】図1のリヤサイドシル及びリヤフロアの車両前面視縦断面図である。
【図5】本発明のトレーリングアーム取付部車体構造の第2実施形態を示すリヤサイドシル及びリヤフロアの斜視図である。
【図6】図5のリヤサイドシル及びリヤフロアの組立説明図である。
【図7】図6の組立説明図の側面図である。
【図8】図5におけるリヤサイドメンバとクロスメンバの結合部の説明図である。
【図9】図8のリヤサイドメンバとクロスメンバの結合部に接合されたシートベルトレインフォースの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のトレーリングアーム取付部車体構造の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示す説明図であり、図1は本実施形態のリヤサイドシル及びリヤフロアの斜視図、図2は図1のリヤサイドシル及びリヤフロアの組立説明図、図3は図2の組立説明図の側面図、図4は図1のリヤサイドシル及びリヤフロアの車両前面視縦断面図である。
【0014】
図中の符号1は、車両後方で車両幅方向両側に配置されるリヤサイドメンバであり、図は車両後方の左側下部に配置されるリヤサイドメンバ1を示している。リヤサイドメンバ1は、周知のように強度部材であり、車両前端部が下方に位置し、後方にいくにつれて上昇し、後方部はほぼ水平に配置され、剛性を高めるために下方に凸の窪み部2が形成されている。この窪み部2の車両前方部の車両幅方向外側には、リヤサイドシル断面を形成するリヤコンパートメントパネル3が接合される。
【0015】
このリヤコンパートメントパネル3との接合部における車両後方端部のリヤサイドメンバ1の窪み部2の下面には、図4に示すように、トレーリングアーム4の車両前方連結部を連結するためのトレーリングアームブラケット5が取付けられる。つまり、トレーリングアームブラケット5はリヤコンパートメントパネル3の車両幅方向内側でリヤサイドメンバ1の窪み部2の下面に取付けられる。このトレーリングアームブラケット5は、リヤコンパートメントパネル3の車両幅方向内側面とリヤサイドメンバ1の窪み部2の下面に接合されるトレーリングアームアウトサイドブラケット6と、リヤサイドメンバ1の窪み部2の車両幅方向内側面に接合されて下方に延長されるトレーリングアームインサイドブラケット7と、リヤサイドメンバ1の窪み部2の下面とトレーリングアームインサイドブラケット7の垂下部の車両幅方向外側面に接合される補強部材としてのトレーリングアームブラケットレインフォース8を備えて構成される。本実施形態では、トレーリングアームアウトサイドブラケット6とトレーリングアームブラケットレインフォース8の間にトレーリングアーム4の車両前方連結部を挿入し、トレーリングアームブラケット5に対してトレーリングアーム4を車両上下方向に回転自在に連結する。
【0016】
車両幅方向両側に配置されるリヤサイドメンバ1の上方には、リヤシートクッションから車両後方にかけて広い範囲を覆うリヤフロアパネル9が配置され、リヤサイドメンバ1やリヤコンパートメントパネル3に接合される。なお、リヤサイドメンバ1には、車両幅方向に長手な強度部材であるクロスメンバが結合され、リヤフロアパネル9は当該クロスメンバの上方にも配置され、接合されるのであるが、その詳細については後述する。
【0017】
リヤフロアパネル9のうち、リヤサイドメンバ1の窪み部2の車両前方部の上部は、他の部分よりも低い凹部10となっている。この凹部10は、リヤフロアパネル9とリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3の接合によって形成される車両前方視縦断面の閉断面の剛性を確保するために、リヤサイドメンバ1の窪み部2からリヤフロアパネル9が遠すぎないようにするために設けられている。
【0018】
本実施形態では、前記リヤフロアパネル9の凹部10の上方に床上ブラケット11が配置され、リヤフロアパネル9やリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3と接合されている。この床上ブラケット11は、リヤシートクッションの車両幅方向外側端部を支持するリヤフロアエクステンションである。そのため、車両幅方向内側から外側に向けて所定位置までリヤフロアパネル9と同等の略一定の高さの平坦部12を備え、この平坦部12でリヤシートクッションの車両幅方向外側端部を支持し、その平坦部12より車両幅方向外側に向けて次第に低くなり、車両幅方向外側端部がリヤフロアパネル9に接触する。なお、床上ブラケット11の平坦部12とリヤフロアパネル9の凹部10との隙間はハーネスマウントを担う。
【0019】
この床上ブラケット11は、リヤフロアパネル9との接触部において当該リヤフロアパネル9と2枚打ちスポット溶接で接合されるが、その接触部のうち、リヤフロアパネル9がリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3と接触している部分では、床上ブラケット11とリヤフロアパネル9とリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3とを3枚打ちスポット溶接で接合している。具体的には、図4に示すように、リヤサイドメンバ1の車両幅方向内側では床上ブラケット11はリヤフロアパネル9とリヤサイドメンバ1と3枚打ちスポット溶接で接合され、リヤサイドメンバ1の車両幅方向外側では床上ブラケット11はリヤフロアパネル9とリヤコンパートメントパネル3と3枚打ちスポット溶接で接合されている。
【0020】
この床上ブラケット11とリヤフロアパネル9とリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3との接合により、図4に示すように、リヤサイドメンバ1の窪み部2とリヤフロアパネル9の凹部10と床上ブラケット11の平坦部12とで略日の字状の上下二段の閉断面が形成されており、これによりリヤサイドメンバ1の上部車体剛性が向上している。前述のようにリヤサイドメンバ1の窪み部2の下面にはトレーリングアームブラケット5が取付けられ、そのトレーリングアームブラケット5にトレーリングアーム4が連結されるので、トレーリングアーム4をリヤサイドメンバ1に連結する部位の上部車体剛性が向上している。
【0021】
リヤフロアパネル9は、パネル自体に高い剛性が必要とされず、またパネルの重量軽減のために、薄い板材が用いられている。一方、リヤサイドメンバ1は強度部材であるから、厚い板材が用いられている。例えば、前記床上ブラケット11がない、又は床上ブラケット11とリヤフロアパネル9とで閉断面が形成されない場合、リヤサイドメンバ1の窪み部2の上面には薄いリヤフロアパネル9が接合されているだけである。その状態で、サスペンションの横力がリヤサイドメンバ1に作用すると、トレーリングアーム4がリヤサイドメンバ1から上下方向に離れている分、大きな応力が作用し、トレーリングアームブラケット5は形状を保ったまま、リヤサイドメンバ1の断面がねじれ、当該リヤサイドメンバ1の窪み部2の上部側壁が開くように変形が生じる。
【0022】
この変形を抑制するためには、例えば以下の2つの方法が考えられる。1つは、リヤフロアパネル9の凹部10をなくし、床上ブラケット11の平坦部12と同様に、リヤフロアパネル9の車両幅方向外側端部を平坦に延ばし、そこから次第に低くしてリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3と接合し、閉断面を形成する方法である(床上ブラケットなし)。この方法では、閉断面の断面二次モーメントは向上するものの、リヤサイドメンバ1の窪み部2とリヤフロアパネル9とが遠くなり過ぎ、リヤサイドメンバ1のねじれに対して閉断面が変形しやすく、有効でない上にサイドメンバの断面が大型化することによる大きな重量増を伴う。もう1つは、リヤフロアパネル9の板材の厚さを厚くすることである。しかしながら、リヤフロアパネル9は大きな板材であり、その大きな板材の厚さを厚くすると、重量増が避けられない。
【0023】
本実施形態では、トレーリングアームブラケット5によって連結されているトレーリングアーム4の連結部の上方で、床上ブラケット11とリヤフロアパネル9とリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3とを接合し、リヤサイドメンバ1の窪み部2とリヤフロアパネル9の凹部10と床上ブラケット11の平坦部12とで上下二段の閉断面が形成されているため、リヤフロアパネル9の板材の厚さを厚くすることなく、小さな部材である床上ブラケット11の重量増だけで二次断面モーメント向上してトレーリングアーム4の連結部上方の剛性が向上し、サスペンションからの横力に対してリヤサイドメンバ1の変形を効果的に抑制防止することができる。また、リヤサイドメンバ1の窪み部2とリヤフロアパネル9の凹部10と床上ブラケット11の平坦部12との略日の字閉断面でリヤフロアパネル9がブレース(節)の役割をすることで、断面のねじれを抑制することもできる。
【0024】
このように本実施形態では、床上ブラケット11とリヤフロアパネル9とリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3とを接合してリヤサイドメンバ1の窪み部2とリヤフロアパネル9の凹部10と床上ブラケット11の平坦部12とで上下二段の閉断面を形成したことにより、トレーリングアーム4が連結されたトレーリングアームブラケット5の上部の車体剛性が向上し、トレーリングアーム4をリヤサイドメンバ1に連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
【0025】
また、リヤサイドメンバ1を挟んだ車両幅方向外側と内側との夫々で床上ブラケット11をリヤフロアパネル9及びリヤサイドメンバ1又はリヤコンパートメントパネル3と3枚打ちスポット溶接したことにより、剛性の高いリヤサイドメンバ1の上部車体剛性を高めてトレーリングアーム4をリヤサイドメンバ1に連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
【0026】
また、床上ブラケット11がリヤシートクッションの車両幅方向外側端部を支持するリヤフロアエクステンションであることにより、既存の又は必要な部材を用いてトレーリングアーム4をリヤサイドメンバ1に連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
【0027】
次に、本発明のトレーリングアーム取付部車体構造の第2実施形態について説明する。図5〜図9は、本実施形態を示す説明図であり、図5は本実施形態のリヤサイドシル及びリヤフロアの斜視図、図6は図5のリヤサイドシル及びリヤフロアの組立説明図、図7は図6の組立説明図の側面図、図8は図5におけるリヤサイドメンバとクロスメンバの結合部の説明図、図9は図8のリヤサイドメンバとクロスメンバの結合部に接合されたシートベルトレインフォースの説明図である。
【0028】
本実施形態は、前記第1実施形態に類似している。そのため、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態の第1実施形態との相違点は、前記床上ブラケット11の車両後方端部13をクロスメンバ14とリヤサイドメンバ1の結合部位まで延長し、そのリヤサイドメンバ1とクロスメンバ14との結合部位で床上ブラケットの車両後端部13とリヤフロアパネル9とを接合した点にある。
【0029】
前述したように、クロスメンバ14は車両幅方向に長手な強度部材であり、本実施形態では図8に示すように、クロスメンバ14の車両幅方向外側端部をリヤサイドメンバ1の窪み部2の下面に2枚打ちスポット溶接で接合している。更に、本実施形態では、前記リヤサイドメンバ1とクロスメンバ14の結合部で当該リヤサイドメンバ1の窪み部2内に補強部材であるシートベルトアンカーレインフォース15が3枚打ちスポット溶接で接合されている。このシートベルトアンカーレインフォース15及びクロスメンバ14の上方にリヤフロアパネル9が接合される。そして、床上ブラケット11の車両後方端部13は前記シートベルトアンカーレインフォース15の上方、つまりリヤサイドメンバ1とクロスメンバ14の結合部位まで延長され、車両幅方向外側の2カ所がリヤフロアパネル9と2枚打ちスポット溶接で接合され、車両幅方向内側の1カ所がリヤフロアパネル9及びクロスメンバ14と3枚打ちスポット溶接で接合されている。ちなみに、床上ブラケット11の車両後方端部13とリヤフロアパネル9は接合部を除いて上下方向に少し離れており、床上ブラケット11とリヤフロアパネル9を接合すると、両者及び両者の接合部によって閉断面が形成される。
【0030】
これにより、本実施形態では、トレーリングアームブラケット5の取付部上部、つまりトレーリングアーム4をリヤサイドメンバ1に結合する部位が、床上ブラケット11によって、リヤサイドメンバ1とクロスメンバ14の結合部に、閉断面を介して接続される。前述したサスペンションからの横力によるリヤサイドメンバ1断面のねじれ変形は、クロスメンバ14との結合部から遠ざかるように発生する。従って、トレーリングアーム4をリヤサイドメンバ1に結合する部位を剛性の高い閉断面によってリヤサイドメンバ1とクロスメンバ14の結合部に接続することができれば、トレーリングアーム4をリヤサイドメンバ1に結合する部位の上部車体剛性を向上することができ、サスペンションからの横力によるリヤサイドメンバ1断面のねじれ変形をより一層抑制防止することができる。
【0031】
このように本実施形態では、前記第1実施形態の効果に加えて、リヤサイドメンバ1とクロスメンバ14との結合部位で床上ブラケット11の車両後端部13とリヤフロアパネル9とを接合したことにより、トレーリングアーム4連結部からクロスメンバ14までのリヤサイドメンバ1の上部車体剛性を向上することができ、トレーリングアーム4をリヤサイドメンバ1に連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
【0032】
また、床上ブラケット11の車両後端部13とリヤフロアパネル9との接合部以外の部位は互いに上下方向に離れており、両者及び両者の接合部で閉断面を形成したことにより、トレーリングアーム4連結部からクロスメンバ14までのリヤサイドメンバ1の上部車体剛性を向上することができ、トレーリングアーム4をリヤサイドメンバ1に連結する部位の上部車体剛性を向上することができる。
なお、前記実施形態では、リヤフロアパネル9を一枚の大きなパネル材としたが、例えば車両前方部と車両後方部とに分割し、それを互いに接合してリヤフロアパネルとするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1はリヤサイドメンバ
2は窪み部
3はリヤコンパートメントパネル
4はトレーリングアーム
5はトレーリングアームブラケット
6はトレーリングアームアウトサイドブラケット
7はトレーリングアームインサイドブラケット
8はトレーリングアームブラケットレインフォース
9はリヤフロアパネル
10は凹部
11は床上ブラケット(リヤフロアエクステンション)
12は平坦部
13は車両後方端部
14はクロスメンバ
15はシートベルトアンカーレインフォース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤサスペンションのトレーリングアームを連結する部位の車体構造であって、前記トレーリングアームを連結するためのトレーリングアームブラケットが下方に凸の窪み部の下面に取付けられるリヤサイドメンバと、前記トレーリングアームブラケットの車両幅方向外側部及びリヤサイドメンバの車両幅方向外側部が接合され且つサイドシル断面を形成するリヤコンパートメントパネルと、前記リヤサイドメンバの上方に配置され且つ当該リヤサイドメンバの窪み部の上部では他の部分より低い凹部が形成されているリヤフロアパネルと、前記リヤフロアパネルの凹部の上方で且つ前記トレーリングアームブラケットへのトレーリングアーム連結部位の上方に配置され且つ車両幅方向内側から外側に向けて所定位置まで略一定の高さの平坦部を備え且つ前記平坦部より車両幅方向外側に向けて次第に低くなる床上ブラケットとを備え、前記床上ブラケットとリヤフロアパネルとリヤサイドメンバ又はリヤコンパートメントパネルとを接合して前記リヤサイドメンバの窪み部とリヤフロアパネルの凹部と床上ブラケットの平坦部とで上下二段の閉断面を形成したことを特徴とするトレーリングアーム取付部車体構造。
【請求項2】
前記リヤサイドメンバを挟んだ車両幅方向外側と内側との夫々で前記床上ブラケットをリヤフロアパネル及びリヤサイドメンバ又はリヤコンパートメントパネルと3枚打ちスポット溶接したことを特徴とする請求項1に記載のトレーリングアーム取付部車体構造。
【請求項3】
前記床上ブラケットの車両後方端側がリヤサイドメンバとクロスメンバとの結合部位まで延長され、当該リヤサイドメンバとクロスメンバとの結合部位で床上ブラケットの車両後方端部と前記リヤフロアパネルとを接合したことを特徴とする請求項1又は2に記載のトレーリングアーム取付部車体構造。
【請求項4】
前記床上ブラケットの車両後方端部とリヤフロアパネルとの接合部以外の部位は互いに上下方向に離れており、両者及び両者の接合部で閉断面を形成したことを特徴とする請求項3に記載のトレーリングアーム取付部車体構造。
【請求項5】
前記床上ブラケットはリヤシートクッションの車両幅方向外側端部を支持するリヤフロアエクステンションであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のトレーリングアーム取付部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254748(P2012−254748A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129770(P2011−129770)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】