説明

トロイダル型無段変速機およびその製造方法

【課題】回転バランスに優れた高性能なトロイダル型無段変速機およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態では、例えば釣合い試験機200を用いて、トロイダル型無段変速機を構成する回転体、例えば入力軸、ディスク、パワーローラに対してJIS B0905に基づくG100以下の釣合い良さ等級を設定している。すなわち、入力軸、ディスク、パワーローラを含む回転体を所定の釣合い良さ規格にしたがって形成するようにしている。そのため、回転バランスに優れた高性能なトロイダル型無段変速機を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図2および図3に示すように構成されている。図2に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁(中間壁)13に対しアンギュラ玉軸受107を介して支持されるとともに、この仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図3参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図2中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図2の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
【0006】
図2のA−A線に沿う断面図である図3に示すように、ケーシング50の内側であって、出力側ディスク3,3の側方位置には、両ディスク3,3を両側から挟む状態で一対のヨーク23A,23Bが支持されている。これら一対のヨーク23A,23Bは、鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。そして、後述するトラニオン15の両端部に設けられた枢軸14を揺動自在に支持するため、ヨーク23A,23Bの四隅には、円形の支持孔18が設けられるとともに、ヨーク23A,23Bの幅方向の中央部には、円形の係止孔19が設けられている。
【0007】
一対のヨーク23A,23Bは、ケーシング50の内面の互いに対向する部分に形成された支持ポスト64,68により、支持ポスト64,68を支点として揺動できるように支持されている。これらの支持ポスト64,68はそれぞれ、入力側ディスク2の内側面2aと出力側ディスク3の内側面3aとの間にある第1キャビティ221および第2キャビティ222にそれぞれ対向する状態で設けられている。
【0008】
したがって、ヨーク23A,23Bは、各支持ポスト64,68に支持された状態で、その一端部が第1キャビティ221の外周部分に対向するとともに、その他端部が第2キャビティ222の外周部分に対向している。
【0009】
第1および第2のキャビティ221,222は同一構造であるため、以下、第1キャビティ221のみについて説明する。
【0010】
図3に示すように、ケーシング50の内側において、第1キャビティ221には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸(傾転軸)14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図3においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、その本体部である支持板部16の長手方向(図3の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0011】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0012】
また、前述したように、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図3の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。前述したように、各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受(傾転軸受)30を介して揺動自在(傾転自在)に支持されている。また、前述したように、ヨーク23A,23Bの幅方向(図3の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、支持ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0013】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図3で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0014】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0015】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0016】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図3の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(枢軸14から延びる軸部)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0017】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、駆動軸22の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2および入力軸1に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
【0018】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位(オフセット)する。例えば、図3の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
【0019】
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0020】
ところで、上記構成のトロイダル型無段変速機においては、入力軸1、入力側ディスク2、出力側ディスク3、パワーローラ11といった回転体が存在するが、一般に、回転体にアンバランスがあると、回転に伴って遠心力が発生する。そして、このアンバランス量による遠心力が大きいほど、振動、騒音の増加、荷重変動増加による軸受への負担が増加し、耐久性の低下に繋がる。また、遠心力は回転数の2乗に比例するため、高速回転であるほど上記のような影響が顕著に現れる。
【0021】
このような問題点に対し、高速回転する工作機械の主軸などにあっては、例えば特許文献1に開示されるように、アンバランスの修正面を設け、上記のような問題を解決する手法がとられている。
【0022】
【特許文献1】特開2003−127041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、今後、航空機部品などの高性能部品のように、自動車部品にもより高い性能(例えば高速回転、低騒音)が求められると、バランスに関する部品精度もより上のランクが必要になると考えられることから、加工後に単にアンバランスを修正するだけではその要求に応えることは難しく、回転バランスに関して早急且つ抜本的な対策が望まれるところである。
【0024】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、回転バランスに優れた高性能なトロイダル型無段変速機およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するために、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機は、エンジンからの回転力を伝える駆動軸と、駆動軸から回転力を受ける入力軸に結合され且つ入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、入力側ディスクとの間に設けられたパワーローラを介して入力側ディスクの回転力を所定の変速比で受ける出力側ディスクとを備えて成るトロイダル型無段変速機において、前記入力軸、前記ディスク、前記パワーローラを含む回転体に対してJIS B0905に基づくG100以下の釣合い良さ等級が設定されていることを特徴とする。
【0026】
また、請求項2に記載のトロイダル型無段変速機の製造方法は、エンジンからの回転力を伝える駆動軸と、駆動軸から回転力を受ける入力軸に結合され且つ入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、入力側ディスクとの間に設けられたパワーローラを介して入力側ディスクの回転力を所定の変速比で受ける出力側ディスクとを備えて成るトロイダル型無段変速機の製造方法において、前記入力軸、前記ディスク、前記パワーローラを含む回転体を所定の釣合い良さ規格にしたがって形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、回転バランスに優れた高性能なトロイダル型無段変速機およびその製造方法を提供することができる。すなわち、例えば、上記構成のトロイダル型無段変速機がFR車に搭載される場合には、通常、運転席と助手席との間に設置されることから、JIS B0905に基づくG100以下の釣合い良さ等級にしたがって回転体のバランス性能が向上すると、トランスミッションからの振動が減少する。また、FR車の場合、乗員席付近で振動が減少することにより、車室内雑音(ノイズ)が減り、乗り心地の向上が図れる。更に、回転体のバランス性能向上による余分な振動の軽減によって、トランスミッション内の他部品の寿命も向上させることができる。また、振動による発熱が減ることから、トランスミッション効率が上昇し、結果として、燃費も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の特徴は、回転体のバランス精度を高めるための手段にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図2および図3と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
【0029】
本発明の実施形態では、入力軸1、ディスク2,3、パワーローラ11を含む回転体に対してJIS(日本工業規格)B0905に基づくG100以下の釣合い良さ等級が設定されている。すなわち、入力軸1、ディスク2,3、パワーローラ11を含む回転体を所定の釣合い良さ規格にしたがって形成するようにしている。
【0030】
ここで、釣合い良さとは、剛性ロータの釣合い程度を示す量であって、比不釣合いと、ある指定された角速度との積(mm/s)である。すなわち、比不釣合いの大きさをe(mm)とし、ロータの実用最高角速度をω(rad/s)とすると、釣合い良さは以下のように表わされる。
釣合い良さ=eω
また、ωの代わりに、回転速度n(min−1)を用いれば、釣合い良さは以下のように表わすこともできる。
釣合い良さ=en/9.55
なお、釣合い良さ等級G100は、釣合い良さの上限値が100となる等級値のことである。また、比不釣合いとは、剛性ロータにおいて、静不釣合いをロータの質量で割った量(=U/W;Uはアンバランス量(=質量×回転軸からの半径)、Wは回転体の質量)であり、これはロータの質量中心の軸中心線からの偏りに等しい。
【0031】
本実施形態では、一例として、バランス量を16g・mm以下、ワーク(ロータ)重量を0.92kg、入力回転数を9000rpm(パワーローラ39000rpm)とし、したがって、釣合い良さを、en/9.55=16(g・mm)/0.92(kg)×39000(min−1)/9.55=71.0(G100以下)に設定する。
【0032】
また、本実施形態では、釣合い良さ等級をG100以下に設定するため、すなわち、入力軸1、ディスク2,3、パワーローラ11を含む回転体を所定の釣合い良さ規格にしたがって形成するために、例えば図1に示すような釣合い試験機200が使用される。このような釣合い試験機200は、回転体(本実施形態では、ディスク2,3)のアンバランス量を計測・修正して回転時の振れやうなり音を低減させる機能を有していることが好ましく、例えば、計測工程、位置決め工程、修正工程の3つの工程で構成される。計測工程では、実際にワーク(加工対象物・・・本実施形態ではディスク2,3)を回転させてワークの振れ回りを電磁ピックアップで計測し、影響係数法と呼ばれる方法でアンバランス量を算出する。影響係数法とは、ワークのアンバランスが振れ回りに及ぼす影響度合いを予め求めておき、これをもとに計測した振れ回りからアンバランス量を求めるものである。計測が終わったワークは、位置決め工程にてアンバランスの存在する位置に位置決めし、修正工程にてドリルやカッタでアンバランスを除去する。アンバランス量の単位は、g・cmやg・mmを使用することが多く、本実施形態では、アンバランス量が16.0g・mm以下に設定されることが好ましい。
【0033】
具体的に、釣合い試験機200は、図1に示すように、駆動モータ201と、仕様上の回転数に合わせるための駆動プーリ202と、ロータ(ワーク)207と、ロータ207の回転数に同期した信号を取り出し且つ不釣合い角度をロータ207と対応させる検出器203と、不釣合いによる力を電気的出力に変換するピックアップ204と、ロータ207を支持する軸受205と、ロータ207が搭載される架台206と、ベッド208と、操作盤209と、ロータ207に回転力を与える駆動ベルト210と、制御筐体211と、修正面上の不釣合いをそれぞれ独立に測定する演算回路212と、角度メータ213と、量メータ214とを備えている。
【0034】
以上のように、本実施形態では、入力軸1、ディスク2,3、パワーローラ11を含む回転体に対してJIS B0905に基づくG100以下の釣合い良さ等級を設定しているので、すなわち、入力軸1、ディスク2,3、パワーローラ11を含む回転体を所定の釣合い良さ規格にしたがって形成するようにしているので、回転バランスに優れた高性能なトロイダル型無段変速機を得ることができる。具体的には、例えば、前記回転体を備えるトロイダル型無段変速機がFR車に搭載される場合には、通常、運転席と助手席との間に設置されることから、JIS B0905に基づくG100以下の釣合い良さ等級にしたがって回転体のバランス性能が向上すると、トランスミッションからの振動が減少する。また、FR車の場合、乗員席付近で振動が減少することにより、車室内雑音(ノイズ)が減り、乗り心地の向上が図れる。更に、回転体のバランス性能向上による余分な振動の軽減によって、トランスミッション内の他部品の寿命も向上させることができる。また、振動による発熱が減ることから、トランスミッション効率が上昇し、結果として、燃費も向上する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機の他、トラニオンが無いフルトロイダル型無段変速機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】釣合い試験機の概略構成図である。
【図2】従来から知られているトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 入力軸
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
22 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの回転力を伝える駆動軸と、駆動軸から回転力を受ける入力軸に結合され且つ入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、入力側ディスクとの間に設けられたパワーローラを介して入力側ディスクの回転力を所定の変速比で受ける出力側ディスクとを備えて成るトロイダル型無段変速機において、
前記入力軸、前記ディスク、前記パワーローラを含む回転体に対してJIS B0905に基づくG100以下の釣合い良さ等級が設定されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
エンジンからの回転力を伝える駆動軸と、駆動軸から回転力を受ける入力軸に結合され且つ入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、入力側ディスクとの間に設けられたパワーローラを介して入力側ディスクの回転力を所定の変速比で受ける出力側ディスクとを備えて成るトロイダル型無段変速機の製造方法において、
前記入力軸、前記ディスク、前記パワーローラを含む回転体を所定の釣合い良さ規格にしたがって形成することを特徴とするトロイダル型無段変速機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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