説明

トロイダル型無段変速機の試験方法及び試験装置

【課題】安価で小型に構成できるトロイダル型無段変速機用試験装置を実現する。
【解決手段】評価対象であるトロイダル型無段変速機19aと、このトロイダル型無段変速機19aの回転軸22に連結される駆動源23とを備える。試験運転時には、一方のキャビティ38bの各パワーローラ6、6の傾転角と、他方のキャビティ38aの各パワーローラ6、6の傾転角とを、互いに異ならせる。そして、この様に傾転角を異ならせる事により、上記トロイダル型無段変速機内19aで循環する動力を発生させる。この様に動力循環型のトロイダル型無段変速機用試験装置を実現でき、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用自動変速装置を構成するトロイダル型無段変速機の性能評価を行なう為の試験方法及び試験装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速装置として、図6〜7に示す様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究され、一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、ダブルキャビティ型と呼ばれるもので、特許請求の範囲に記載した回転軸に相当する入力回転軸1の両端部周囲に、それぞれが特許請求の範囲に記載した外側ディスクに相当する、1対の入力側ディスク2a、2bを、ボールスプライン3、3を介して支持している。従ってこれら両入力側ディスク2a、2bは、互いに同心に、且つ、同期した回転を自在に支持されている。又、上記入力軸1の中間部周囲に出力歯車4を、この入力軸1に対する相対回転を自在として支持している。そして、この出力歯車4の中心部に設けた円筒部の両端部に、それぞれが特許請求の範囲に記載した内側ディスクに相当する、1対の出力側ディスク5a、5bをスプライン係合させている。従ってこれら両出力側ディスク5a、5bは、上記出力歯車4と共に、同期して回転する。
【0003】
又、上記各入力側ディスク2a、2bと上記各出力側ディスク5a、5bとの間には、それぞれ複数個ずつ(通常2〜3個ずつ)のパワーローラ6、6を挟持している。これら各パワーローラ6、6は、それぞれが特許請求の範囲に記載した支持部材に相当するトラニオン7、7の内側面に、支持軸8、8及び複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持されている。上記各トラニオン7、7は、それぞれの長さ方向(図6の表裏方向、図7の上下方向)両端部に、これら各トラニオン7、7毎に互いに同心に設けられた枢軸9、9を中心として揺動変位自在である。これら各トラニオン7、7を傾斜(傾転)させる動作は、油圧式のアクチュエータ10、10によりこれら各トラニオン7、7を上記枢軸9、9の軸方向に変位させる事により行なう。
【0004】
尚、上記アクチュエータ10、10への圧油の給排状態は、制御弁11により制御される。又、上記各トラニオン7、7の動きを、上記アクチュエータ10を構成するロッド12並びにプリセスカム13、リンク腕14を介して、上記制御弁11にフィードバックする様に構成している。又、総てのトラニオン7、7の傾斜角度(傾転角度)は、油圧式及び機械式に互いに同期させている。
【0005】
上述の様なトロイダル型無段変速機の運転時には、エンジン等の動力源に繋がる駆動軸15により一方(図6の左方)の入力側ディスク2aを、ローディングカム式の押圧装置16を介して回転駆動する。この結果、前記入力回転軸1の両端部に支持された1対の入力側ディスク2a、2bが、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、上記各パワーローラ6、6を介して上記各出力側ディスク5a、5bに伝わり、前記出力歯車4から取り出される。
【0006】
又、上記各アクチュエータ10、10への圧油の給排に基づき、上記各トラニオン7、7を上記枢軸9、9の軸方向に変位させると、上記各パワーローラ6、6の周面と上記入力側、出力側各ディスク2a、2b、5a、5bの内側面との転がり接触部(トラクション部)に作用する、接線方向の力の向きが変化(転がり接触部にサイドスリップが発生)する。そして、この力の向きの変化に伴って、上記各トラニオン7、7が上記枢軸9、9を中心に揺動(傾斜、傾転)し、上記各パワーローラ6、6の周面と上記入力側、出力側各ディスク2a、2b、5a、5bの内側面との接触位置が変化する。
【0007】
上記各パワーローラ6、6の周面を、図6に示す様に、上記入力側ディスク2a、2bの内側面の径方向内寄り部分と、上記出力側ディスク5a、5bの内側面の径方向外寄り部分とに転がり接触させれば、上記両ディスク2a、2b、5a、5b同士の間の変速比が減速側になる。これに対して、上記各パワーローラ6、6の周面を、図6に示した状態とは逆に、上記入力側ディスク2a、2bの内側面の径方向外寄り部分と、上記出力側ディスク5a、5bの内側面の径方向内寄り部分とに転がり接触させれば、上記両ディスク2a、2b、5a、5b同士の間の変速比が増速側になる。
【0008】
ところで、上述の様なトロイダル型無段変速機の特性を求める為の試験装置として、例えば特許文献1、2に記載されたものが知られている。図8は、これら特許文献1、2に記載された、従来からトロイダル型無段変速機の開発に使用されている試験装置を示している。この試験装置は、第一の(駆動側若しくは入力側)ダイナモ17と第二の(吸収側若しくは出力側)ダイナモ18との間に、トロイダル型無段変速機19とトルク計20とを、上記第一のダイナモ17の側から順に、互いに直列に設けている。又、上記第二のダイナモ18にはフライホイール21を接続して、上記トロイダル型無段変速機19の出力側に、実際の車両に見合う程度の慣性質量を結合自在としている。そして、上記第一のダイナモ17部分、或はこの第一のダイナモ17と上記トロイダル型無段変速機19との間部分で、このトロイダル型無段変速機19に入力(又は出力)される動力のトルクと回転速度とを測定自在としている。又、上記トルク計20部分で、上記トロイダル型無段変速機19から出力(又は入力)される動力のトルクと回転速度とを測定自在としている。
【0009】
この様な試験装置を使用して、トロイダル型無段変速機19の性能評価を行なう場合、上記第一、第二のダイナモ17、18並びにフライホイール21により、車両搭載環境と同様の環境を造りだす。但し、この様な試験装置(所謂ダイナモ試験装置)の場合、第一、第二ダイナモ17、18に大電力を供給する必要がある他、装置全体として高価になる可能性がある。又、試験準備のロードが大きくなる他、装置全体として大型のものになり、大きな設置スペースが必要になる。この為、例えば数多くの試験装置を導入する場合には、コストの面からだけでなく、設置スペースの面からも、容易に行なえない(面倒になる)可能性がある。
尚、歯車の試験装置として、例えば非特許文献1等に記載されている様に、動力循環式歯車試験装置、FZG型動力循環式歯車試験装置等が、従来から知られている。
【0010】
【特許文献1】特開2004−184160号公報
【特許文献2】特開2004−340180号公報
【非特許文献1】社団法人自動車技術会、「自動車技術ハンドブック <第3分冊> 試験・評価編」、1991年6月1日発行、p95
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、安価で小型に構成できるトロイダル型無段変速機用試験装置並びにその試験方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のトロイダル型無段変速機の試験方法及びトロイダル型無段変速機用試験装置は、トロイダル型無段変速機の性能評価を行なう為のものである。
このうちの請求項1に記載した試験方法により試験(評価)されるトロイダル型無段変速機(試験対象)は、1対の外側ディスクと、(1対、又は、一体型の)内側ディスクと、複数のパワーローラとを備える。
このうちの各外側ディスクは、回転軸を介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合されたものである。
又、上記内側ディスクは、上記両外側ディスク同士の間に、これら両外側ディスクと同心に、且つ、これら両外側ディスクとは独立した回転を自在として支持されたものである。
又、上記各パワーローラは、上記内側ディスクの両側面と上記両外側ディスクの側面との間にそれぞれ複数個ずつ挟持されて、これら内側ディスクと外側ディスクとの間で動力を伝達するものである。
そして、本発明のトロイダル型無段変速機の試験方法にあっては、上記1対の外側ディスクのうちの一方の外側ディスクの側面と上記内側ディスクの側面との間に存在する一方のキャビティの各パワーローラの傾転角と、同じく他方の外側ディスクの側面と上記内側ディスクの側面との間に存在する他方のキャビティの各パワーローラの傾転角とを互いに異ならせる(微小な差を生じさせる、差が生じる方向に変化させる)事により、上記回転軸を捻り方向に弾性変形させた状態のまま(出力側に負荷があるのと同視し得る弾性変形をさせた状態のまま)、上記トロイダル型無段変速機内で動力が循環する状態で運転を行なう。
【0013】
又、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機用試験装置は、トロイダル型無段変速機(評価対象)と、このトロイダル型無段変速機の回転軸に連結される駆動源(モータ、ダイナモ、エンジン等)とを備える。
又、上記トロイダル型無段変速機は、1対の外側ディスク(例えば入力側ディスク)と、(1対、又は、一体型の)内側ディスク(例えば出力側ディスク)と、複数のパワーローラと、複数個の支持部材と、アクチュエータと、制御ユニットとを備える。
このうちの各外側ディスクは、上記回転軸を介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合されたものである。
又、上記内側ディスクは、上記両外側ディスク同士の間に、これら両外側ディスクと同心に、且つ、これら両外側ディスクとは独立した回転を自在として支持されたものである。
【0014】
又、上記各パワーローラは、上記内側ディスクの両側面と上記両外側ディスクの側面との間にそれぞれ複数個ずつ挟持されて、これら内側ディスクと外側ディスクとの間で動力を伝達する。
又、上記各支持部材は、上記各パワーローラを回転自在に支持するものである。
又、上記アクチュエータは、上記各支持部材を、それぞれの両端部に設けた枢軸の軸方向に変位させて上記各パワーローラの傾転角を変化させるものである。
又、上記制御ユニットは、上記各パワーローラの傾転角を所望値にする為に、上記アクチュエータの変位方向及び変位量を制御する為のものである。
【0015】
特に、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機用試験装置に於いては、上記アクチュエータを、第一、第二両アクチュエータにより構成する。
このうちの第一アクチュエータは、上記1対の外側ディスクのうちの一方(例えば駆動源側を前方とした場合の後方)の外側ディスクの側面と上記内側ディスクの側面との間に存在する一方(例えば後方)のキャビティの各パワーローラの傾転角を変化させる為のものとする。
又、上記第二アクチュエータは、同じく他方(例えば駆動源側を前方とした場合の前方)の外側ディスクの側面と上記内側ディスクの側面との間に存在する他方(例えば前方)のキャビティの各パワーローラの傾転角を変化させる為のものとする。 そして、これら第一、第二両アクチュエータを、それぞれ独立して制御自在とすると共に、これら第一、第二両アクチュエータを独立して制御する事で、上記一方(例えば後方)のキャビティの各パワーローラの傾転角と上記他方(例えば前方)のキャビティの各パワーローラの傾転角とを互いに異ならせる(微小な差を生じさせる、差が生じる方向に変化させる)事により、上記回転軸を捻り方向に弾性変形させた状態で(出力側に負荷があるのと同視し得る弾性変形をさせた状態で)、上記トロイダル型無段変速機内で動力を循環させる。
【0016】
この場合により好ましくは、請求項3に記載した様に、第一、第二両アクチュエータを油圧式のものとする。そして、このうちの第一アクチュエータを構成する1対の油圧室に、それぞれ圧力調整弁(例えば電磁比例弁、サーボ弁、ソレノイド弁)を介して圧油を導入自在とする事により、これら1対の油圧室同士の間の差圧を調節自在とする。又、これと共に、駆動部材(例えばステッピングモータ)により切換状態が変更される制御弁により、上記第二アクチュエータに導入する圧油の給排を自在とする。この場合に、この第二アクチュエータの動きは、例えばプリセスカム、センサ(並びにステッピングモータ)等を介して、上記制御弁にフィードバックする様に構成する。又、上記第二アクチュエータを、例えば直動アクチュエータにより構成する事もできる。何れにしても、上記圧力調整弁による上記第一アクチュエータの差圧の調節(必要な差圧を与える事)に基づいて、上記一方(例えば後方)のキャビティの各パワーローラの傾転角と他方(例えば前方)のキャビティの各パワーローラの傾転角とを互いに異ならせる(異なる方向に変化させる)。
【発明の効果】
【0017】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機の試験方法及び試験装置によれば、試験装置を安価で小型に構成できる。
即ち、前述した従来の試験装置(例えば前述の図8に示した試験装置)の場合には、出力側{出力歯車側、伝達軸(カウンターシャフト)側}に吸収用モータ(第二のダイナモ)を取り付ける必要がある。又、各パワーローラの傾転角を変化させる為のアクチュエータを、両キャビティで互いに同期させている。従って、駆動源(第一のダイナモ)から回転軸に入力された動力は、1対の外側ディスク、各パワーローラ、内側ディスクの順に伝達される(流れていく)。これに対して、本発明の場合には、試験運転時に、一方(例えば駆動源側を前方とした場合の後方)のキャビティの各パワーローラの傾転角と他方(同じく前方)のキャビティの各パワーローラの傾転角とを互いに異ならせ(微小な差を生じさせ、差を生じる方向に変化させ)、上記回転軸を捻る(出力側に負荷があるのと同視し得る弾性変形をさせる)。そして、この様に回転軸を捻ったまま運転する事により、トロイダル型無段変速機内で動力を循環させる。
【0018】
この様にトロイダル型無段変速機内を循環する動力の方向は、例えば一方(例えば後方)のキャビティの各パワーローラを傾転させる方向(増速側か、或は、減速側か)に応じて変化させられる。例えば、第一アクチュエータ(の各油圧室同士の間の差圧)を、上記各パワーローラが増速側(high側)に傾転する方向に変化(変位)させる(必要な差圧を与える)と、上記動力は、回転軸、一方(後方)の外側ディスク、一方(後方)のキャビティの各パワーローラ、内側ディスク、他方(前方)のキャビティの各パワーローラ、他方(前方)の外側ディスク、上記回転軸の順に循環する。これに対して、上記第一アクチュエータ(の各油圧室同士の間の差圧)を、上記各パワーローラが減速側(low 側)に傾転する方向に変化(変位)させる(必要な差圧を与える)と、上記動力は、上記回転軸、他方(前方)の外側ディスク、他方(前方)のキャビティの各パワーローラ、内側ディスク、一方(後方)のキャビティの各パワーローラ、一方(後方)の外側ディスク、上記回転軸の順に循環する。
【0019】
上記トロイダル型無段変速機を循環する上記動力の大きさは、上記一方(例えば後方)のキャビティの各パワーローラを支えるアクチュエータの変化量(油圧室同士の間の差圧の大きさ)に応じて変化させられる。又、上記トロイダル型無段変速機内を動力が循環している状態では、この循環する動力が回転軸に戻るまでに動力が損失{転がり接触部(トラクション部)での損失、内側ディスクを支持する転がり軸受での損失、パワーローラを支持する転がり軸受での損失等}する。上記回転軸を回転駆動する為の駆動源(例えばモータ)は、この損失分を補填できるものであれば良く(吸収用モータを回転させる力を必要としない為)、この駆動源を小型、且つ、小出力のものにできる。又、上記トロイダル型無段変速機を通過する動力の大きさは、例えば回転軸に取り付けた歪ゲージの測定値から、或は、上記第一、第二各アクチュエータの油圧室同士の間の差圧から、それぞれ求める事ができる(或は、推定できる)。
【0020】
要するに、本発明の試験方法及び試験装置によれば、上述の様に回転軸を回転駆動する駆動源(例えばモータ)を、小型、小出力のものにできる他、上述の様にしてトロイダル型無段変速機内で動力を循環させる為、前述した従来構造の様な吸収用モータ(第二のダイナモ)やブレーキ等を必要としない。この為、試験装置全体として小型に構成できる(省スペース化を図れる)と共に、省エネルギー化、低コスト化も図れ、車両搭載環境下を再現した試験を数多くこなす事ができる。又、一般の動力循環式の試験装置の場合、変速比が限られる(固定される)が、本発明の試験方法及び試験装置の場合には、トロイダル型無段変速機が実現できる変速比内の何れの値でも、動力を循環させる事ができる。又、運転中に動力の循環方向や循環量を変化させる事もでき、加速、減速の繰り返しを考慮したサイクル試験を行なう事も可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1〜5は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例のトロイダル型無段変速機用試験装置は、トロイダル型無段変速機19aの性能評価を行なう為のものであり、このトロイダル型無段変速機19a(評価対象)と、このトロイダル型無段変速機19aの回転軸22に連結される駆動源23(本例の場合はモータ)と、これら回転軸22と駆動源23との間に設けられて、上記トロイダル型無段変速機19aに入力されるトルクを測定するトルク計24とを備える。このうちのトロイダル型無段変速機19aは、前述の図6に示したダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機19と略同様のもので、1対の外側ディスク25a、25bと、1対の内側ディスク26a、26bと、複数のパワーローラ6、6と、それぞれが特許請求の範囲に記載した支持部材に相当する、複数個のトラニオン7、7と、(第一、第二各)アクチュエータ27、28と、制御ユニット29とを備える。
【0022】
このうちの各外側ディスク25a、25bは、上記回転軸22を介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合されている。又、上記各内側ディスク26a、26bは、上記両外側ディスク25a、25b同士の間にこれら両外側ディスク25a、25bと同心に且つこれら両外側ディスク25a、25bとは独立した回転を自在として支持されている。又、上記各パワーローラ6、6は、上記内側ディスク26a、26bの両側面と上記両外側ディスク25a、25bの側面との間にそれぞれ複数個ずつ挟持されて、これら内側ディスク26a、26bと外側ディスク25a、25bとの間で動力を伝達する。又、上記各トラニオン7、7は、上記各パワーローラ6、6を回転自在に支持するものである。又、上記(第一、第二各)アクチュエータ27、28は、上記各トラニオン7、7を、それぞれの両端部に設けた枢軸9、9の軸方向に変位させて、上記各パワーローラ6、6の傾転角を変化させるものである。又、上記制御ユニット29は、上記各パワーローラ6、6の傾転角を所望値にする為に、上記(第一、第二各)アクチュエータ27、28の変位方向及び変位量を制御する為のものである。
【0023】
更に、本例の場合には、上記アクチュエータ27、28を、第一、第二両アクチュエータ27、28により構成している。このうちの第一アクチュエータ27、27は、上記1対の外側、内側両ディスク25a、25b、26a、26bのうちの、一方{駆動源23側を前方とした場合の後方で、図1(B)、2、4、5の右方}の外側ディスク25bの側面と、同じく一方(後方、右方)の内側ディスク26bの側面との間に存在する、一方(後方、右方)のキャビティ38bの各パワーローラ6、6の傾転角を変化させる為のものである。又、上記第二アクチュエータ28は、同じく他方{駆動源側を前方とした場合の前方で、図1(B)、2、4、5の左方}の外側ディスク25aの側面と同じく他方(前方、左方)の内側ディスク26aの側面との間に存在する、他方(前方、左方)のキャビティ38aの各パワーローラ6、6の傾転角を変化させる為のものである。
【0024】
そして、これら第一、第二各アクチュエータ27、28を、それぞれ独立して制御自在としている。この為に、本例の場合には、これら第一、第二両アクチュエータ27、28を油圧式のものとしている。そして、このうちの第一アクチュエータ27、27を構成する1対の油圧室30a、30bに、それぞれ圧力調整弁31、31を介して圧油を導入自在とする事により、これら1対の油圧室30a、30b同士の間の差圧を調節自在としている。尚、上記各圧力調整弁31、31は、上記各油圧室30a、30b内に導入する油圧の大きさを所望の値に調節できるものとし、例えば電磁比例弁、サーボ弁、ソレノイド弁等により構成できる。
【0025】
又、上記第二アクチュエータ28に導入する圧油は、駆動部材であるステッピングモータ32により切換状態が変更される制御弁33を通じて、給排自在としている。尚、上記第二アクチュエータ28の動きは、プリセスカム34(や必要に応じて図示しないセンサ並びにステッピングモータ32等)を介して、上記制御弁33にフィードバックする様に構成している。尚、図示は省略するが、上記第二アクチュエータ28を、例えば直動アクチュエータにより構成する事もできる。何れにしても、上記第一、第二両アクチュエータ27、28に導入される圧油の調節を行なう為の、上記各圧力調整弁31、31、上記制御弁33(を切り換えるステッピングモータ32)は、図示しない制御器の制御信号に基づいて、それぞれ独立して制御される。
【0026】
本例の場合は、試験運転時に、上記制御器の制御信号に基づいて、上記第一、第二両アクチュエータ27、28を独立して制御する(同期させずに変位させる)事により、上記一方(後方、右方)のキャビティ38bの各パワーローラ6、6の傾転角と、上記他方(前方、左方)のキャビティ38aの各パワーローラ6、6の傾転角とを、互いに異ならせる(微小な差を生じさせる、差が生じる方向に変化させる)。この場合に、例えば、上記各圧力調整弁31、31により、上記第一アクチュエータ27、27の各油圧室30a、30bのみに必要な差圧を付与する(第二アクチュエータ28、28の差圧はそのままとする)事により、それぞれのキャビティ38a、38bで傾転角を異ならせる(異なる方向に変化させる)。そして、この様に傾転角を異ならせる(異なる方向に変化させる)事により、前記回転軸22を捻る(出力側に負荷があるのと同視し得る弾性変形をさせる)。そして、この様に回転軸22を捻ったまま運転する事により、上記トロイダル型無段変速機内19aで動力を循環させる。
【0027】
例えば、上記第一アクチュエータ27、27の各油圧室30a、30bの差圧を、上記一方(後方、右方)のキャビティ38bの各パワーローラ6、6が増速側(high側)に傾転する方向に変化(変位)させると、上記動力は、図4に示す様に、回転軸22、一方(後方、右方)の外側ディスク25b、一方(後方、右方)のキャビティ38bの各パワーローラ6、内側ディスク26b、26a、他方(前方、左方)のキャビティ38aの各パワーローラ6、他方(前方、左方)の外側ディスク25a、上記回転軸22の順に循環する。これに対して、上記第一アクチュエータ30、30の各油圧室32a、32bの差圧を、上記一方(後方、右方)のキャビティ38bの各パワーローラ6、6が減速側(low 側)に傾転する方向に変化(変位)させると、上記動力は、図5に示す様に、上記回転軸22、他方(前方、左方)の外側ディスク25a、他方(前方、左方)のキャビティ38aの各パワーローラ6、内側ディスク26a、26b、一方(後方、右方)のキャビティ38bの各パワーローラ6、一方(後方、右方)の外側ディスク25b、上記回転軸22の順に循環する。
【0028】
上述の様な本例の試験装置によりトロイダル型無段変速機19aの性能評価(試験運転)を行なう場合には、駆動源23により回転軸22を回転駆動しつつ、上述の様にそれぞれのキャビティ38a、38bで各パワーローラ6、6の傾転角を互いに異ならせ(微小な差を生じさせ、差が生じる方向に変化させ)、上記トロイダル型無段変速機19a内で動力を循環させつつ運転する。又、この様な試験運転中は、計測器36により各部の状態量(P:油圧、N:回転速度、T:トルク)を測定しつつ、所望の運転状況を造り出す。尚、上記トロイダル型無段変速機19aを循環する上記動力の大きさは、例えば上記一方(後方、右方)のキャビティ38bの各パワーローラ6、6を支える第一アクチュエータ27、27の変化量(差圧の大きさ)に応じて変化させられる。又、上記トロイダル型無段変速機19aを通過する動力の大きさは、例えば上記回転軸22に取り付けた歪ゲージの歪量から、或は、上記第一、第二各アクチュエータ27、28の油圧室32a、32b同士の間の差圧から、それぞれ求める事ができる(或は推定できる)。
【0029】
上述の様に構成する本例の場合には、トロイダル型無段変速機用試験装置を安価で小型に構成できる。
即ち、前述した従来の試験装置(例えば前述の図8に示した試験装置)の場合には、出力側{出力歯車4(図6参照)側、伝達軸(カウンターシャフト)37側}に吸収用モータ(第二のダイナモ18)が取り付ける必要があった。又、各パワーローラ6、6の傾転角を変化させる為のアクチュエータ10(図7参照)を、両キャビティ38a、38bで互いに同期させている。従って、駆動源(第一のダイナモ17)から入力回転軸1に入力された動力は、1対の入力側ディスク2a、2b、各パワーローラ6、6、各出力側ディスク5a、5b(図6参照)の順に伝達される(流れていく)。これに対して、本例の場合には、試験運転時に、一方(後方、右方)のキャビティ38bの各パワーローラ6、6の傾転角と他方(前方、左方)のキャビティ38aの各パワーローラ6、6の傾転角とを異ならせ(微小な差を生じさせ、差を生じる方向に変化させ)て上記回転軸22を捻り(出力側に負荷があるのと同視し得る弾性変形をさせ)、更にこの回転軸22を捻ったまま運転する事により、トロイダル型無段変速機19a内で動力を循環させる。
【0030】
このトロイダル型無段変速機19a内を動力が循環している状態では、この循環する動力が上記回転軸22に戻るまでに動力が損失する。この損失は、転がり接触部(トラクション部)での損失、各内側ディスク26a、26bを支持する転がり軸受39、39での損失、各パワーローラ6、6を支持する転がり軸受40、40での損失等に相当するものである。上記回転軸22を回転駆動する為の駆動源23は、この損失分を補填できるものであれば良く(吸収用モータを回転させる力を必要としない為)、この駆動源23を小型、且つ、小出力のものにできる。しかも、上述の様にトロイダル型無段変速機19a内で動力を循環させる為、前述した従来構造の様な吸収用モータ{第二のダイナモ18(図8参照)}やブレーキ等を必要としない。この為、試験装置全体として小型に構成できる(省スペース化を図れる)と共に、省エネルギー化、低コスト化も図れ、車両搭載環境下を再現した試験を数多くこなす事ができる。又、一般の動力循環式の試験装置の場合、変速比が限られる(固定される)が、本例の試験装置の場合には、トロイダル型無段変速機19aが実現できる変速比内の何れの値でも動力を循環させる事ができる。又、運転中に動力の循環方向や循環量を変化させる事もでき、車両が加速と減速とを繰り返しつつ走行する状況を想定したサイクル試験を行なう事も可能である。
【0031】
又、前述した従来の試験装置の場合には、出力歯車4(図6参照)側から{吸収用モータである第二のダイナモ18(図8参照)に}動力を取り出していた為、次の様な不都合を生じる事があった。即ち、トロイダル型無段変速機19の変速比を減速側(low 側)にした状態で、従来の試験装置により耐久試験を行なうと、このトロイダル型無段変速機19の構成部材のうちで、出力歯車4が最も早く損傷していた。この為、試験中にこの出力歯車4の交換を頻繁に行なう必要があり、試験効率が悪かった。これに対して、本例の試験装置の場合には、動力取り出し用の歯車35を動力が通過しない(歯車35を介して動力を取り出さない)為、従来装置の様な歯車の交換を行なう必要がなく、試験効率を良好に確保できる。
【0032】
以下に、トロイダル型無段変速機を動力が循環する状態を、図9を用いて、より詳しく説明する。
先ず、通常のトロイダル型無段変速機の使用状態では、図9の(A)に示す様に、1対の外側ディスク25a、25bに入力された動力が、各パワーローラ6、6を介して各内側ディスク26a、26aに伝達され、これら各内側ディスク26a、26aと同期して回転する出力歯車4を通じて、上記動力が取り出される。この様な場合に、上記外側、内側各ディスク25a、25b、26a、26bの各側面と各パワーローラ6、6の各周面との転がり接触部{図9(A)のα、β、γ、δ部分}に於ける、これら各部材25a、25b、26a、26b、6の周速の関係は、次の通りになる。
【0033】
(1)一方(左方、前方)の外側ディスク25aの側面と各パワーローラ6の周面との転がり接触部{図9(A)のα部分}
一方の外側ディスク25aの側面の周速>各パワーローラ6の周面の周速
(2)一方の内側ディスク26aの側面と各パワーローラ6の周面との転がり接触部{図9(A)のβ部分}
各パワーローラ6の周面の周速>一方の内側ディスク26aの側面の周速
(3)他方(右方、後方)の内側ディスク26bの側面と各パワーローラ6の周面との転がり接触部{図9(A)のγ部分}
各パワーローラ6の周面の周速>他方の内側ディスク26bの側面の周速
(4)他方の外側ディスク25bの側面と各パワーローラ6の周面との転がり接触部{図9(A)のδ部分}
他方の外側ディスク25bの側面の周速>各パワーローラ6の周面の周速
【0034】
この場合に、上記一方のキャビティ38aの各パワーローラ6の傾転角と上記他方のキャビティ38bの各パワーローラ6の傾転角とが同じである(同期させている)為、上記(2)、(3)の各内側ディスク26a、26bの周速は同じになる。又、上記(1)、(4)の各外側ディスク25a、25bの周速も同じになり、これら両外側ディスク25a、25bの回転に位相差を生じない為、上記各内側ディスク26a、26aと同期して回転する上記出力歯車4を通じて、動力が取り出される(伝達される)。尚、上記(1)〜(4)の各転がり接触部(トラクション部)での各部材の周速の差は、トラクション部の微小滑り(クリープ)として表す事ができる{Cr=(U−u)/U、Cr:クリープ、U:駆動部材の周速、u:被駆動部材の周速、通常はCr=1〜2%}。そして、動力の伝達時には(トラクションドライブ状態では)、転がり接触部(トラクション部)で挟持されるトラクションオイルを介して、この転がり接触部(トラクション部)で微小滑り(クリープ)が生じつつ、動力の伝達が行なわれる。この様な微小滑り(クリープ)は、グロススリップと呼ばれる有害な滑り(過度の滑り)とは異なるものである。
【0035】
一方、本例の動力循環式のトロイダル型無段変速機の試験装置の運転時に、例えば図9の(B)に示す様に、他方のキャビティ38bの各パワーローラ6のみを減速側(low 側)に傾転させるべく、第一両アクチュエータ27、27の各油圧室30a、30b(図1、3参照)に差圧を発生させた状態を考える。この様な状態で、外側、内側各ディスク25a、25b、26a、26bの各側面と各パワーローラ6、6の各周面との転がり接触部{図9(B)のα、β、γ、δ}に於ける、これら各部材25a、25b、26a、26b、6の周速の関係は、次の通りになる。
【0036】
(1)一方の外側ディスク25aの側面と各パワーローラ6の周面との転がり接触部{図9(B)のα部分}
一方の外側ディスク25aの側面の周速>各パワーローラ6の周面の周速
(2)一方の内側ディスク26aの側面と各パワーローラ6の周面との転がり接触部{図9(B)のβ部分}
各パワーローラ6の周面の周速>一方の内側ディスク26aの側面の周速
(3)他方の内側ディスク26bの側面と各パワーローラ6の周面との転がり接触部{図9(B)のγ部分}
他方の内側ディスク26bの側面の周速>各パワーローラ6の周面の周速
(4)他方の外側ディスク25bの側面と各パワーローラ6の周面との転がり接触部{図9(B)のδ部分}
各パワーローラ6の周面の周速>他方の外側ディスク25bの側面の周速
【0037】
この場合に、上記(1)、(4)の各外側ディスク25a、25bの周速は異なるが、これら各外側ディスク25a、25bの回転速度に差が生じるのではなく、これら各外側ディスク25a、25bの回転に位相差が生じる(回転する位相に差が生じる)。そして、上記(1)〜(4)の各転がり接触部(トラクション部)では、前述の図9(A)に示した様な動力が入力されつつ運転されている状況と同様に、微小滑り(クリープ)が生じつつ運転される(クリープの範囲内で運転される)。又、前記他方のキャビティ38bの各パワーローラ6は、前述の様に第一両アクチュエータ27、27の各油圧室30a、30同士の間に発生させた差圧に基づき、中立位置から枢軸9、9(図1、3参照)の軸方向に変位する傾向となり、これら各パワーローラ6に、減速側に傾転する方向のサイドスリップ力が加わる。一方、これら各パワーローラ6の傾転に基づいて発生する、トロイダル型無段変速機内を循環する動力(トルク)に基づき、上記各パワーローラ6には、これら各パワーローラ6を中立位置に戻す力も加わる。そして、この様に循環する動力に基づく力と上記差圧とが釣り合った状態で、上記各パワーローラ6が中立位置のまま(且つ、各キャビティ38a、38b同士の間で傾転角に微小な差が生じた状態で)、上記トロイダル型無段変速機内を動力が循環しつつ運転される。従って、上述の様に他方のキャビティ38bの各パワーローラ6を傾転させるべく、上記第一両アクチュエータ27、27に差圧を発生させても、これら各パワーローラ6が減速側に傾転し続ける事はない。
【0038】
又、各キャビティ38a、38b同士の間で各パワーローラ6、6の傾転角に微小な差が生じる方向に、第一両アクチュエータ27、27の各油圧室30a、30bに差圧を与えた状態では、この差圧に対応する大きさのトルクが、前述の図9の(A)の矢印で示す様に通過する状況と同視し得る状態となる。要するに、本発明の場合には、転がり接触部(トラクション部)で微小滑り(クリープ)が生じる(グロススリップは生じない)範囲内で、上述の様に各キャビティ38a、38b同士の間で、各パワーローラ6、6の傾転角に微小な差が生じる方向に、第一両アクチュエータ27、27の油圧室30a、30bに差圧を与える。そして、この様に差圧を与える事により、出力側に抵抗(負荷)がないにも拘わらず、この抵抗がある状態(負荷運転状態)と同視し得る状態を造り出せる様にしている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す断面図で、(A)は、(B)のイ−イ断面に相当する図で、(B)は、試験装置全体を示す部分断面図。
【図2】図1(B)の部分拡大断面図。
【図3】図1(A)の拡大断面図。
【図4】一方のキャビティの各パワーローラを増速側に変化させる場合の、トロイダル型無段変速機内を循環する動力の方向説明する為の半部略断面図。
【図5】同じく減速側に変化させる場合の、トロイダル型無段変速機内を循環する動力の方向説明する為の半部略断面図。
【図6】試験対象となるトロイダル型無段変速機の断面図。
【図7】図6のロ−ロ断面図。
【図8】従来から知られているトロイダル型無段変速機用試験装置の1例を示す正面図。
【図9】トロイダル型無段変速機内を動力が通過又は循環する状態を説明する為の模式図。
【符号の説明】
【0040】
1 入力回転軸
2a、2b 入力側ディスク
3 ボールスプライン
4 出力歯車
5a、5b 出力側ディスク
6 パワーローラ
7 トラニオン
8 支持軸
9 枢軸
10 アクチュエータ
11 制御弁
12 ロッド
13 プリセスカム
14 リンク腕
15 駆動軸
16 押圧装置
17 第一のダイナモ
18 第二のダイナモ
19、19a トロイダル型無段変速機
20 トルク計
21 フライホイール
22 回転軸
23 駆動源
24 トルク計
25a、25b 外側ディスク
26a、26b 内側ディスク
27 (第一)アクチュエータ
28 (第二)アクチュエータ
29 制御ユニット
30a、30b 油圧室
31 圧力調整弁
32 ステッピングモータ
33 制御弁
34 プリセスカム
35 歯車
36 計測器
37 伝達軸
38a、38b キャビティ
39 転がり軸受
40 転がり軸受
41 中空回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合された1対の外側ディスクと、
これら両外側ディスク同士の間にこれら両外側ディスクと同心に且つこれら両外側ディスクとは独立した回転を自在として支持された内側ディスクと、
この内側ディスクの両側面と上記両外側ディスクの側面との間にそれぞれ複数個ずつ挟持されて、これら内側ディスクと外側ディスクとの間で動力を伝達する複数のパワーローラと
を備えたトロイダル型無段変速機の性能評価を行なう為のトロイダル型無段変速機の試験方法であって、
上記1対の外側ディスクのうちの一方の外側ディスクの側面と上記内側ディスクの側面との間に存在する一方のキャビティの各パワーローラの傾転角と、同じく他方の外側ディスクの側面と上記内側ディスクの側面との間に存在する他方のキャビティの各パワーローラの傾転角とを互いに異ならせる事により、上記トロイダル型無段変速機内で動力が循環する状態で運転を行なう
トロイダル型無段変速機の試験方法。
【請求項2】
回転軸を介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合された1対の外側ディスクと、
これら両外側ディスク同士の間にこれら両外側ディスクと同心に且つこれら両外側ディスクとは独立した回転を自在として支持された内側ディスクと、
この内側ディスクの両側面と上記両外側ディスクの側面との間にそれぞれ複数個ずつ挟持されて、これら内側ディスクと外側ディスクとの間で動力を伝達する複数のパワーローラと、
これら各パワーローラを回転自在に支持した複数個の支持部材と、
これら各支持部材を、それぞれの両端部に設けた枢軸の軸方向に変位させて上記各パワーローラの傾転角を変化させるアクチュエータと、
この傾転角を所望値にする為にこのアクチュエータの変位方向及び変位量を制御する為の制御ユニットと
を備えたトロイダル型無段変速機の性能評価を行なう為、
このトロイダル型無段変速機と、このトロイダル型無段変速機の上記回転軸に連結される駆動源とを備えたトロイダル型無段変速機用試験装置に於いて、
上記アクチュエータは、第一、第二両アクチュエータから成り、このうちの第一アクチュエータは、上記1対の外側ディスクのうちの一方の外側ディスクの側面と上記内側ディスクの側面との間に存在する一方のキャビティの各パワーローラの傾転角を変化させる為のものであり、上記第二アクチュエータは、同じく他方の外側ディスクの側面と上記内側ディスクの側面との間に存在する他方のキャビティの各パワーローラの傾転角を変化させる為のものであり、これら第一、第二両アクチュエータをそれぞれ独立して制御自在とすると共に、これら第一、第二両アクチュエータを独立して制御する事で、上記一方のキャビティの各パワーローラの傾転角と上記他方のキャビティの各パワーローラの傾転角とを互いに異ならせる事により、上記トロイダル型無段変速機内で動力を循環させる
事を特徴とするトロイダル型無段変速機用試験装置。
【請求項3】
第一、第二両アクチュエータは油圧式のものであり、このうちの第一アクチュエータを構成する1対の油圧室に、それぞれ圧力調整弁を介して圧油を導入自在とする事により、これら1対の油圧室同士の間の差圧を調節自在とすると共に、駆動部材により切換状態が変更される制御弁により、上記第二アクチュエータに導入する圧油の給排を自在としており、上記圧力調整弁による上記第一アクチュエータの差圧の調節に基づいて、一方のキャビティの各パワーローラの傾転角と他方のキャビティの各パワーローラの傾転角とを互いに異ならせる、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機用試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−74951(P2009−74951A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244669(P2007−244669)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】