説明

トロスピウムの1日1回剤形

【課題】ヒト患者に投与することによって、それぞれ、約0.5−2.5ng/ml及び約2.0−6.0ng/mlの最小(Cmin)及び最大(Cmax)血中レベルのトロスピウムの平均定常状態血中レベルを生じる、薬学的に許容される塩化トロスピウムの薬学的組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2003年11月4日に提出した仮出願番号60/517,198、及び、2003年11月21日に提出した60/523,968の優先権を主張し、この内容は、その全体が参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、トロスピウムの1日1回剤形を許容する薬学的組成物に向けられる。トロスピウムは、頻尿、尿意切迫、夜間多尿、ならびに、排尿筋不安定、尿意切迫症候群及び排尿筋過反射に関連する切迫性尿失禁の治療に必要とされる。これらの組成物は、1日1回の投与による前述の状態の治療に有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
トロスピウムは、トロピンの第四級アンモニウム誘導体であり、そして、抗コリン特性を有する。分子の親水性は、その不変の陽電荷のために、その脂溶性を制限する。塩化トロスピウムは、ヒト膀胱筋の摘出ストリップ(excised strips)においてアセチルコリンに拮抗することが示されている。抗痙攣作用は膀胱、小腸で、及び、胆嚢の収縮に対して示されている。塩化トロスピウムは、尿生殖路及び消化管にみられるような、平滑筋の緊張を減少することにより副交感神経遮断作用を示す。このメカニズムは、排尿筋を弛緩することを可能にし、そして、膀胱の排出を抑制する。最大排尿筋圧を低下させることは、結果として、膀胱の内容物への排尿筋の適応を改善し、代わりに、膀胱収容能力の増加による向上した膀胱コンプライアンスを導く。
【0004】
塩化トロスピウムは、1967年に鎮痙剤として市場に導入された(ドイツ特許1 194 422)。塩化トロスピウムは、経口的に投与可能な、固体投与形態(錠剤及びドラジェ)で、溶液として静脈注射または筋肉注射において、及び、坐薬として直腸内投与において利用されており、そして、主に、膀胱機能不全(切迫性尿失禁、排尿筋過反射)の治療のために使用されている。製品は、頻尿、尿意切迫、夜間多尿、ならびに、排尿筋不安定、尿意切迫症候群及び排尿筋過反射に関連する切迫性尿失禁を含む特定の治療の必要を示すものに対して、長年、ドイツ及び幾つかのほかのヨーロッパ諸国において市販されている。
【0005】
現在、ヨーロッパ市場において、即時放出型塩化トロスピウム錠剤(Spasmo−lyt(登録商標))があり、これは切迫性尿失禁及び排尿筋過反射の治療のために必要とされ、そして、1日2回摂取する20mg錠剤またはビッド(bid)(1日あたり全投与量40mg)として使用される。他の第四級アンモニウム化合物と共通して、経口投与された塩化トロスピウムはゆっくり吸収され、5−6時間後、最大血中レベルを達成する。経口生物学的利用能は約10%であり、そして、高脂食品の摂食とともに非常に減少する。口渇、頭痛、便秘、消化不良及び腹痛のような、1日2回の塩化トロスピウムレジメンの使用に関連する副作用がある。これらの副作用は、塩化トロスピウムの高血中濃度に関連する。さらに、40mgの即時放出型投与を1日1回与えた実験では、結果として、1日2回与えた20mgと比較して、有害事象の全体的な発生率がより高い。
【0006】
トロスピウムの1日1回投与は、患者の従順及び有害事象の減少の両者について、1日2回投与を越えた利点を有し、このように、塩化トロスピウムを必要とする状態のより良い治療を提供する。
【0007】
トロスピウムの効果的な1日1回形態を提供するために、上述の望ましくない副作用を、除去できなくとも、最小にしながら望ましい治療効果を提供する独特の製剤アプローチの必要性がある。これは、治療期間にわたって、定常状態での最小血中トロスピウム濃度(Cmin)が最小の治療に有効な血中濃度を上回るべきであり、そして、定常状態での最大血中トロスピウム濃度(Cmax)はまた、最大毒性血中濃度を下回るべきである。塩化トロスピウム及び他の四級アンモニウム化合物は、1日1回組成物を処方するための大きな課題である、ヒト消化管における限られた吸収ウィンドウを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の要約
任意の薬学的に許容できるトロスピウム塩、典型的には塩化トロスピウムの薬学的組成物(これは1日1回与えられ得、さらに、その抗痙攣作用から恩恵を受ける疾患及び状態の治療または予防に必要である定常状態血中レベルを満たし得る)を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような疾患または状態は、切迫性尿失禁または排尿筋過反射、夜間多尿、及び頻尿のような膀胱機能不全を含み、そして、本発明は主にこれらに向けられる。
【0010】
このようなトロスピウム塩の1日1回組成物は、結果として、それぞれ約0.5−2.5ng/ml及び約2.0−6.0ng/mlの最小(Cmin)及び最大(Cmax)血中レベルを示すトロスピウムの平均定常状態血中レベルにあることを目的とし、この血中レベルは安全及び効果的であることが示されている。定常状態血中レベルは、20mgビッドレジメンに一致する本発明の剤形において、好ましくはCmin約0.75ng/mlとCmax約5.0ng/mlの間の平均にある。
【0011】
本発明の一つの側面において、徐放放出型(XR)薬学的組成物が提供され、これは、1日1回のまたはqd投与のための約25mgと約60mgの間の塩化トロスピウムを含有し、そしてこれは、リン酸緩衝液(pH7.5)溶解メディウムにおける以下のin vitro放出プロフィール:約1時間に約0−40%放出され、約4時間で約20−85%放出され、そして約12時間で70%より多くが放出される、を有することにより特徴付けられる。
【0012】
さらに、本発明の他の側面において、遅延放出型(DR)薬学的組成物が提供され、これは、遅延フェーズの長さに依存して、1日1回のまたはqd投与のための約25mgと約80mgの間の塩化トロスピウムを含有する。in vivoでの該放出の遅延は、固有の適用に応じて合わせられ得るが、一般的には、約0.5時間から約6時間、さらに好ましくは約2.5時間から約5時間であり、この時間は、たとえあるとしても、血中の最小の検出可能なトロスピウムがある。このような製剤のin vitro放出プロフィールは、一般的に2時間以内に酸性媒体に約10%未満が放出され、及び、1時間以内にpH6.8以上の緩衝液媒体に約80%以上放出されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の側面において、即時放出型(IR)組成物が提供され、これは、実施例のDR2組成物のような、pH約7.0で(例えば、消化管の下部で)溶解するように設計された遅延放出型組成物と組み合わされた、約20mg以下の活性薬剤を含有し、全量約80mg薬剤を含む単一の1日1回塩化トロスピウム製剤を形成する。
【0014】
本発明の他の側面は、塩化トロスピウムの1日1回投与による、頻尿、尿意切迫、夜間
多尿、ならびに、排尿筋不安定、尿意切迫症候群及び排尿筋過反射に関連する切迫性尿失禁の治療方法を提供することである。
【0015】
また、本発明の他の側面は、その半減期(t1/2)程度で短い半減期を備えた薬剤のさらなる放出、またはパルス(pulse)を可能にする単回剤形を提供する。薬剤が、消化管上部の決められた吸収領域を有する、トロスピウムのようなものであり、及び、消化管下部(例えば回腸領域及び結腸)においてさらに乏しく吸収される場合、このような剤形は、開発する意味のある課題である。
【0016】
本発明はまた、有効量のトロスピウム塩(例えば、塩化トロスピウム)を含む薬学的組成物の腸内投与方法に向けられ、ここで、改善は、前記トロスピウム塩の遅延放出型製剤を含むことを包含し、これは、pH7.0程度でトロスピウムを放出する。本発明の他の実施形態において、方法は、有効量のトロスピウム塩(例えば、塩化トロスピウム)を含む薬学的組成物の腸内投与を提供し、ここで、改善は、前記トロスピウム塩の遅延放出型製剤を含有することを包含し、これは、小腸下部において、好ましくは結腸においてトロスピウムを放出する。従って、本発明はさらに、前記トロスピウム塩の少なくとも一部分が遅延放出型製剤に含まれる少なくとも一つの活性薬学的成分としてトロスピウム塩(好ましくは、塩化トロスピウム)を含有する薬学的組成物に向けられ、これは、pH7.0程度でトロスピウムを放出する。他の実施形態において、本発明はさらに、前記トロスピウム塩の少なくとも一部分が遅延放出型製剤に含まれる少なくとも一つの活性薬学的成分としてトロスピウム塩(好ましくは塩化トロスピウム)を含有する薬学的組成物に向けられ、これは小腸下部、結腸または両者でトロスピウムを放出する。
【0017】
最後に、本発明の他の側面は、本発明の1日1回組成物の調製プロセス及びこれらを使用する治療方法を提供することである。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は主に、トロスピウムの1日1回の経口投与可能な形態に向けられ、これは、その荷電した特性のために、通常は塩、典型的には塩化トロスピウムの形態で見出される。恐らく、塩化トロスピウムには、その高い溶解性及び限られた吸収ウィンドウのために課題があるため、このような製剤はこれまでに知られていない。さらに、これまでの研究者は、限られた吸収領域のために、従来の改良放出型剤形は実用可能とは考えられていなかったということに気付いている。例えば、Schroder, S. et al. (Institute for Pharmacology, Clinical Pharmacology, University of K In and Madaus AG, Koln, Germany)を参照。しかし、本発明者は経口剤形を発見し、これは1日1回与えられ得、その抗痙攣作用から恩恵を受ける疾患または状態の治療または予防に必要である定常状態血中レベルを満たし得る。
【0019】
本発明は、1日2回レジメンに匹敵する薬剤の特定の定常状態血中レベルを提供するよう設計され、好ましくは何らかの改良を伴い、さらに哺乳動物、好ましくはヒトが1日に1回のみの投与を受けることを必要とする製剤にある、トロスピウムの経口投与組成物を提供することにより達成される。トロスピウムの好ましい血中レベルは、定常状態で約0.5と約6.0ng/mlの間である。好ましくは、該血中レベルは、一連の治療において、1日1回の投与で、好ましい血中レベル内に留まる。さらに好ましくは、該血中レベルは、定常状態で約0.5ng/mlと5.0ng/mlの間である。さらに、より好ましくは、適した1日1回製剤が、対応する1日2回製剤(典型的に1回20mgIRを1日2回であるが、上下に変動(titrate)され得る)の平均Cmaxの80から120%以内のCmax及び前記1日2回レジメンの平均Cminの80と120%の間のCminを示す。
【0020】
本発明のコンセプトは、同様に、トロスピウムと類似の溶解性、限られた吸収ウィンドウ及び生物学的利用能特性を示す治療的活性剤を含有する制御放出型組成物を処方するために使用され得る。このような化合物の例は、例えば、プロパンテリン、エメプロニウム(emepronium)、クリジニウム、及びグリコピロレートを含み、これらはすべて第四級アンモニウム化合物である。
【0021】
ここで使用する場合、「約」は、活性のある薬学的成分の量に関して、米国薬局方(USP−NF 21)、2003 Annual Editionにみられる、または、www.usp.orgで利用できる薬学的に許容される制限内であることを意味する。血中レベルに関して、「約」はFDAの許容するガイドライン内であることを意味する。
【0022】
本発明の組成物は、とりわけ、顆粒剤、錠剤(マトリックスまたはオスモティックを含む)、ペレット、散剤、サシェ、カプセル剤、ゲル、分散剤、液剤または懸濁剤の形態であり得る。唯一の要求は、剤形が、ここで記載のプロフィールを達成するような方法で構成されることである。
【0023】
1日1回投与における治療的な要求を満たすための時間にわたる適切な血中(または、さらに詳細には血漿)濃度レベルを提供する塩化トロスピウムのin vivoプロフィールは、本発明において決定された。血漿濃度測定のためにここで使用した方法は、液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー/マススペクトロメトリーまたはLC/MS/MS法であった。この技術に関して、トロスピウムは固相抽出手順を使用して血漿の一部分から抽出した。そして、この抽出物は、検出器としてマススペクトロメーターを備えたHPLCを使用して分析した。これらのプロフィールは、平均血中塩化トロスピウムレベルが頻尿、尿意切迫、夜間多尿ならびに排尿筋不安定、尿意切迫症候群及び排尿筋過反射に関連する切迫性尿失禁のような状態の治療のための有効量の薬剤を、また、即時放出型製剤の複数回投与に伴う血漿濃度のスパイク(spikes)に典型的に関連する有害な副作用の発生を最小限にするための上限内で提供するものである。時間プロフィールに対する血中塩化トロスピウム濃度は、約0.5から約1.5ng/mlの定常状態のCmin、及び、約2.0から約6.0ng/mlの定常状態のCmaxにより特徴付けられる。
【0024】
本発明に関して、驚くべきことに、遅延放出型製剤における塩化トロスピウムの1日1回投与は要求される血中プロフィールを提供することを見出した。さらに、驚くべきことに、即時放出型および遅延型コンポーネントの組み合わせを含む投与単位による1日1回投与は、望ましい治療血中プロフィールを提供することを見出した。またさらに、徐放放出型調製物における塩化トロスピウムの1日1回投与もまた、望ましい治療的に有効な血中プロフィールを提供することを発見した。
【0025】
このように、本発明において、定常状態での有効な血中塩化トロスピウム濃度は、いくつかの発明の方法で塩化トロスピウムを処方することにより達成され得るということを見出した。このような投与単位は、徐放放出型、遅延放出型、または即時型、徐放型及び遅延放出型形態の様々な組み合わせの形態である。
【0026】
即時放出型組成物
「即時放出型組成物」により、促進、遅延または徐放放出効果を伴うことなく投与時にすべての活性成分を実質的に放出するために処方される剤形を意味される。本発明の目的のこのような組成物は、少なくとも最初に、ペレット(「ビード(bead)」または「ビードレット(beadlet)」と相互に変換して使用される用語)の形態である。即時放出型ペレットは、剤形の複数のコンポーネントの1つのコンポーネントであり得る。
即時放出型ペレットはまた、徐放または遅延放出型ペレットの前駆物質として役立ち得る

【0027】
このような即時放出型ペレットを調製するための非活性成分及びプロセスは当業者に周知であり、また、本発明はこれらの側面に制限されない。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, A. Gennaro, Ed., Mack Pub. Co. (Easton, PA 1990) Chapters 88-91を参照し、この全体はこれより参考として援用される。
【0028】
例えば、即時放出型ペレットは、トロスピウム塩(塩化トロスピウム)をバルキング剤と混合することにより調製され得る。さらに、あるものは、製剤に崩壊剤、抗粘着剤及びグリダントを添加し得る。
【0029】
これらの組成物において使用され得るバルキング剤は、とりわけ:微結晶性セルロース、例えばAVICEL(登録商標)(FMC Corp.)またはEMCOCEL(登録商標)(Mendell Inc.)、これはまた、バインダー特性も有する;リン酸ジカルシウム、例えばEMCOMPRESS(登録商標)(Mendell Inc.);硫酸カルシウム、例えばCOMPACTROL(登録商標)(Mendell Inc.);及びスターチ、例えばStarch 1500;及びポリエチレングリコール(CARBOWAX(登録商標))から選択され得る。このようなバルキング剤は典型的に、約5%から約75%(w/w)の範囲の量で、約25%から約50%(w/w)のより好ましい範囲で存在する。
【0030】
適切な崩壊剤は、制限されないが、:架橋ソディウムカルボキシメチルセルロース(AC−DI−SOL(登録商標))、ソディウムスターチグリコレート(EXPLOTAB(登録商標)、PRIMOJEL(登録商標))、及び架橋ポリビニルポリピロリドン(Plasone−XL)を含む。崩壊剤は、投与時にペレットの崩壊を促進するために使用され、そして、典型的に約3%から15%(W/W)の量で、約5から約10%(W/W)の好ましい範囲で存在する。
【0031】
このような製剤に用いられる抗粘着剤及びグリダントはタルク、コーンスターチ、二酸化珪素、ラウリル硫酸ナトリウム、コロイド状二酸化珪素(silica dioxide)及び金属ステアラート(metallic stearate)、及び他のものを含み得る。
【0032】
さらに、即時放出型組成物は、ペレットに結着性を与えるために一つ以上の結合剤を含み得る。このような結合剤は当業者に周知であり、そして、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、スターチ、マルトリン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スクロース溶液、デキストロース溶液、アカシア、トラガントガム及びローカストビーンガムのような物質を含み、これらはウェットで適用され得る。結合剤は、約0.2wt%から約20wt%、好ましくは約5wt%から約15wt%の量で組成物に存在し得る。
【0033】
ペレットは、例えば、湿式造粒または乾式造粒のような単純な造粒とそれに続くふるい分け;押し出し及びマルメライゼーション(marumerization)(球状化);回転造粒(rotogranulation);または、結果として妥当な大きさ及びローバスト性(robustness)のペレットを生じる任意の凝集プロセスにより作製され得る。押し出し及びマルメライゼーションに関して、薬剤及び他の添加剤は、結合剤溶液の添加により造粒される。湿った塊を特定のサイズのふるいを備えた押し出し器に通し、そして、押し出されたものはマルメライザーで球状にする。得られたペレットは乾燥させ、そしてさらなる適用のためにふるいにかける。
【0034】
また高剪断造粒機(high−shear granulation)を使用し得、ここで、薬剤及び他の添加剤は乾式混合され、そして、高剪断造粒機/混合機に結合剤溶液を添加することにより混合物を湿らせる。混合及びミリングの複合作用により湿らせた後に、粒状物を混練する。結果として生じた顆粒またはペレットは乾燥させ、そしてさらなる適用のためにふるいにかける。
【0035】
あるいは、そして好ましくは、即時放出型ビードレットまたはペレットは、溶液または懸濁液層状化により調製され得、これによって、結合剤及び必要に応じてタルクのようなアンチタッキング剤を伴っても伴わなくても、薬剤溶液または分散液が、流動層プロセッサーまたは他の適した装置において、コアまたは開始シード(調製されたものか市販の製品のいずれか)上に噴霧される。コアまたは開始シードは、例えば、シュガー球体(sugar sphere)または微結晶性セルロースからなる球体であり得る。製剤中の結合剤は、重量で約0%から約5%、好ましくは重量で約0.5%から約2%の範囲の量で存在し得る。使用されるアンチタッキング剤の量は、重量で約0%から約5%、好ましくは重量で約0.5%から約2%であり得る。このように薬剤は開始シードの表面に被覆される。望ましい場合には、該薬剤はまた、上述の薬剤含有ペレット上に層状化され得る。薬剤の層状化後、生じた薬剤を充填したペレットは、さらなる適用のために乾燥する。
【0036】
保護層またはオーバーコーティングは、薬剤を充填したペレットが、プロセス中または保存時に凝集しないことを確実にするために望ましいかもしれない。保護コーティング層は、水または適した有機溶剤中のポリマー溶液を使用するパンコーティング(pan coating)または流動層コーティングのような従来のコーティング技術により、または、水性ポリマー分散液を使用することにより、コア、薬剤含有コアと薬剤層状化コアのいずれか、のすぐ外側に適用され得る。OPADRY(登録商標)、OPADRY II(登録商標)(Colorcon)及びColorconからの対応するカラー及びカラーレスグレードは、ペレットが粘着性になることから保護するために及び製品に色を提供するために使用され得る。保護的なまたはカラーコーティングの推奨されているレベルは、約1%から約6%、好ましくは約2%から約3%(W/W)である。多くの成分は、例えば迅速な即時放出を提供するために、可塑剤:アセチルトリエチルシトレート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート;セバシン酸ジブチル、トリアセチン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール及び他のもの;滑沢剤:タルク、コロイド状二酸化珪素(silica dioxide)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、二酸化チタン、珪酸マグネシウムなどのような、オーバーコーティング配合物(overcoating formula)に混合され得る。
【0037】
即時放出型ペレットは、単一の剤形において徐放放出型ペレット及び/または遅延放出型ペレットと組み合わせで使用されることが意図される。
【0038】
徐放放出型組成物(XR)
塩化トロスピウム徐放放出型ペレットは、例えば、放出制御ポリマーで薬剤層状化不活性ペレットを被覆することにより調製され得る。上述のように、最初、不活性ペレットは薬剤層で被覆されるか、または、薬剤を充填した顆粒が調製される。そして、活性な(薬剤を充填した)ペレットは放出制御高分子膜で被覆される。放出制御被覆層は、水または適した有機溶剤中のポリマー溶液を使用する、パンコーティングまたは流動層コーティングのような従来のコーティング技術により、あるいは、水性ポリマー分散液を使用することにより、コア(薬剤含有コアか薬剤層状化コアのいずれか)のすぐ外側に適用され得る。代替の実施形態として、放出制御膜は、コア上にさらなる薬剤層を;例えば、放出制御物質で被覆した後に、分離し得、別の薬剤層を適用し得、これは、他の放出制御層などが続く。放出制御層に適する物質は、EUDRAGIT(登録商標)RL、EUDRAGIT(登録商標)RS、エチルセルロース水性分散物(AQUACOAT(登録商標)、SURELEASE(登録商標))、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー、OPADRY(登録商標)などのセルロース誘導体を含む。被覆の厚みは、放出プロフィールに影響を与えるため、このパラメータは該プロフィールをカスタマイズするために使用され得る。推奨される被覆レベルは、約1から約40%、好ましくは約5から約30%(w/w)そして最も好ましい実施形態として約20または約25%である。20%w/wのコーティングは、摂取後3.5時間で塩化トロスピウムの約80%を放出し、そして、25%w/wのコーティングは、摂取後4.5時間で塩化トロスピウムの約80%を放出する結果である。
【0039】
徐放放出型ペレットは、約25と約60mgの間の塩化トロスピウムを含み、そして、単独で、または1日1回剤形を構築するために、即時放出型または遅延放出型ペレットを組み合わせて使用され得る。
【0040】
遅延放出型組成物(DR)
遅延放出型コンポーネントは、投与後の特定の期間、ペレットからの薬剤の放出を遅らせる活性ペレットの表面に適用される被覆を有する。この遅延放出は、腸溶性物質の被覆を適用することにより達成される。「腸溶性物質」は、胃の酸性環境で実質的に不溶性であるが、様々な特定のpHで腸液に主に溶解するポリマーである。腸溶性物質は毒性がなく、薬学的に許容されるポリマーであり、そして、例えば、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシナート、セルロースアセテートスクシナート、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレート、セルロースプロピオナートフタレート、メチルメタクリル酸とメチルメタクリレートのコポリマー、メチルアクリレート、メチルメタクリレート及びメタクリル酸のコポリマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー(Gantrez ES series)、エチルメチルアクリレート−メチルメタクリレート−クロロトリメチルアンモニウムエチルアクリレートコポリマー、ゼイン、シェラック及びコパールコロホリウム(copal collophorium)のような天然樹脂、カルボキシメチルエチルセルロース、例えば、EUDRAGIT(登録商標)L12.5、L100、または、EUDRAGIT(登録商標)S12.5、S100の商品名で知られている物質のような共重合されたメタクリル酸/メタクリル酸メチルエステル、及び、幾つかの市販の入手可能な腸溶性ディスパージョンシステム(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L30D55、EUDRAGIT(登録商標)FS30D、EUDRAGIT(登録商標)L100−55、EUDRAGIT(登録商標)S100(ロームファルマ(Rohm Pharma))、KOLLICOAT(登録商標)MAE30D及び30DP(BASF)、ESTACRYL(登録商標)30D(エストマンケミカル(Estman Chemical))、AQUATERIC(登録商標)及びAQUACOAT(登録商標)CPD30(FMC))を含有する。上記は、可能な物質のリストであるが、当業者は、周囲のpH環境、経時的考慮及びほかの要因に基づいて、見合うように作成された放出を含む遅延放出プロフィールを提供する本発明の目的に合致するような他の物質があるということを認識する。
【0041】
これらの被覆物質は、ペレット組成物の約1.0%(W/W)から約50%(W/W)の範囲で表面を被覆することに使用され得る。好ましくは、これらの被覆物質は、約20パーセントから約40パーセント(W/W)の範囲内である。該ペレットは、例えば従来の方法では、流動層装置またはパンコーティングにおいて被覆され得る。
【0042】
腸溶性被覆ペレットに関して、pH約4.5以下の酸性胃環境においてトロスピウムの
実質的な放出はない。特定の遅延時間後、または該ユニットが胃を通過した後、pH感受性腸溶性層が消化管におけるより高いpHで溶解した時、トロスピウムは利用可能になる。好ましい遅延時間は約0.5から約6時間の範囲であるが、さらに好ましくは約0.5から約4時間である。
【0043】
さらに詳細には、好ましいDRペレットは、Eudragit(登録商標)L30D−55で被覆されたもの(これは、pH5.5−6.0程度で、すなわち小腸上部において、溶解する)、及び、Eudragit FS30Dで被覆された他のもの(これは、pH7.0程度、すなわち小腸下部及び結腸において溶解する)である。
【0044】
この実施形態のバリエーションに関して、DRペレットは、保護(XR)または放出制御(DR)層により分離され、必要に応じてIR層で取り囲まれた、トロスピウムの層を含有し、これは結果としてパルス(pulsed)用量送達;言い換えると、同じペレットにおけるDRとIRまたはXRの組み合わせを生じる。このような剤形は、本発明の放出プロフィールの血中レベルの要求を満たす他の方法と同様に製造され、これは、同じカプセルにおけるIR/XRとIR/DRペレットを分離することに匹敵し得る。
【0045】
好ましくは、DRペレットはXRペレットとの組み合わせにおいて使用されるが、IRペレット、または、3つすべての組み合わせでもまた使用され得る。
【0046】
即時放出型(IR)/遅延放出型(DR)投与単位
パルス状(pulsatile)薬剤放出は、単一の剤形において、即時放出型と遅延放出型コンポーネントの組み合わせにより達成される。例えば、ここに記載する即時放出型(IR)ペレットと遅延放出型(DR)ペレットの組合せたものが使用され得る。このアプローチに関して、腸溶性ポリマーで被覆されたペレット(DRペレット)は、薬剤被覆ペレット(IRペレット)と組み合わせて、トロスピウムのパルス(pulsed)放出が続く即時放出を提供する。IR部分が、血漿時間プロフィールにおける最初の上昇を提供するが、DR部分は効果的な血漿レベルが長期間にわたり、好ましくは24時間の期間維持されることを確実にする事を助ける。
【0047】
即時放出型コンポーネントと遅延放出型コンポーネント間の比は、in vitro薬剤放出プロフィール及びin vivo血中濃度プロフィールを調整するために使用され得る。さらに、該プロフィールは、遅延放出型コーティングの特性により操作され得る。本発明に従う望ましい薬剤放出プロフィールを提供することにより、組成物はその日の第2の投与の必要性を排除する。さらに、トロスピウムの全投与量は、望ましくない副作用を避けるために、好ましくは80mgまたは未満であるが、望ましい鎮痙効果を達成するために30mgより多い。
【0048】
即時放出型(IR)/徐放放出型(XR)投与単位
他の実施形態に関して、1日1回投与単位は、1日2回のレジメンと実質的に等しい、あるいは最低限の副作用で安全及び有効である1日1回剤形を提供するように設計された割合で、IRとXRペレットの組み合わせを含み得る。
【0049】
即時放出部分は、早い時点で有効血漿レベルを提供するように設計される。剤形の徐放放出部分は、24時間の期間を通して有効血中レベルを維持するように設計され、そして、24時間の範囲を提供する。IR部分は、有効な血中ベルを提供するが、血漿プロフィールにおけるスパイク(spikes)に関する副作用を避ける20mg以下程度のトロスピウムを提供する。徐放放出部分は、徐放放出型形態において、約20mgから60mgの塩化トロスピウム、より好ましくは約20から約40mgを提供する。
【0050】
即時放出型(IR)/遅延放出型(DR)/徐放放出型(XR)投与単位
また、本発明の他の実施形態は多粒子剤形であり、これは、3つのタイプのペレットを併用する。このタイプの投与単位は、複数の薬剤放出パルス(pulses)を提供し、許容可能な範囲内で、トロスピウムの事実上持続した血中レベルである効果を伴う。
【0051】
この組み合わせに関して、IR部分は摂取後すぐに有効血中レベルを提供するように設計され、これは、DRとXRの組合わせにより維持される。DR部分は、遅延の後、即時放出を提供する。XR部分は、その日のうち全体を通してトロスピウムの有効血中レベルを維持する徐放放出プロフィールを提供する。この組成物におけるトロスピウムの全投与量は、トータルで最大約20mgを占めるIR部分とともに、80mg以下、好ましくは60mg以下である。DR及びXR部分は、XRとDRの比が約1:10から約10:1の範囲で組み合わされた10mgから60mgを占める。
【0052】
遅延放出型(DR)/徐放放出型(XR)投与単位
また、本発明の他の実施形態は多粒子剤形であり、これは、徐放放出型ペレットと遅延放出型ペレットを組み合わせる。XR部分が持続した血中プロフィールを提供する一方で、DR部分は後の時間の時点で有効レベル未満にある血中レベル形態を妨げる。XRは、10mgから40mgの間、好ましくは20mgから40mgの間、さらに好ましくは30mgの塩化トロスピウムを提供するように設計される。DR部分は好ましくは約2−4時間の遅延を備えたより長い遅延放出型であり、約10mgと40mgの間、好ましくは20mgと40mgの間、さらに好ましくは30mgの塩化トロスピウムを提供する。
【0053】
剤形
ここでこれまでに記載するように、本発明の組成物は、錠剤、散剤、分散液、液剤など、のような多数の異なる形態であり得る。該組成物は、好ましくはペレット/ビードレット形態であり、これは、さらなる賦形剤を伴うか単独で、ハードゼラチンまたは他の種類のカプセルに取り込まれ得る。カプセル製剤に添加される典型的な賦形剤は、制限されないが、微結晶セルロース、ソイポリサッカライド、リン酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、スクロース、ソルビトールのようなフィラー(fillers)、または任意の他の不活性フィラーを含む。さらに、ヒュームド二酸化珪素、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムのような流動補助剤または良好な流動特性を与える任意の他の物質であり得る。望ましい場合には、ポリエチレングリコール、ロイシン、グリセリルベヘネート(glyceryl behenate)、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムのような、滑沢剤もまた添加し得る。多粒子カプセルは、錠剤とは反対に、それらがより広い表面部分を提供するために、好ましい(これはより良好な放出プロフィールそして従って生物学的利用能を許容する)。
【0054】
しかし、上述のペレットは、特に錠剤マトリックスに取り込まれることにより、錠剤に取り込まれ得、これは摂取後、粒子をすばやく分散させる。これらの粒子をこのような錠剤に取り込むために、フィラー/結合剤は、錠剤化プロセスのあいだ、ペレットの破壊を許容しない錠剤化プロセスにおいて使用されなければならない。この目的に適する物質は、制限されないが、微結晶セルロース(AVICEL(登録商標))、ソイポリサッカライド(EMCOSOY(登録商標))、α化スターチ(STARCH(登録商標)1500、NATIONAL(登録商標)1551)、及びポリエチレングリコール(CARBOWAX(登録商標))を含む。これらの物質は約5%−75%(W/W)の範囲で、好ましくは約25%−50%(W/W)の間で存在すべきである。
【0055】
さらに、いったん錠剤が摂取されると、ビーズ(beads)を分散するために、崩壊剤を錠剤に添加する。適した崩壊剤は、制限されないが:架橋ソディウムカルボキシメチルセルロース(AC−DI−SOL(登録商標))、ソディウムスターチグリコレート(
EXPLOTAB(登録商標)、PRIMOJEL(登録商標))、及び架橋ポリビニルポリピロリドン(Plasone−XL)を含む。これらの物質は約3%−15%(W/W)の範囲で、好ましくは約5%−10%(W/W)の範囲で存在すべきである。
【0056】
滑沢剤もまた、適当な錠剤化を行うために添加され、そして、これらは制限されないが:ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ロイシン、グリセリルベヘネート、及び水素添加植物性油を含む。これらの滑沢剤は約0.1%−10%(W/W)の量で、好ましくは約0.3%−3.0%(W/W)の範囲で存在すべきである。
【0057】
錠剤は例えば次のように形成される。ペレットをAVICEL(登録商標)、崩壊剤及び滑沢剤と共にブレンダーに導入し、設定した数の時間(分)で混合し、均一ブレンドを提供し、次いで、これは錠剤が圧縮される錠剤プレスのホッパーに入れられる。使用される圧縮力は錠剤を形成するために十分である;しかし、ビードレットまたはコーティングを砕くには十分ではない。
【0058】
前記ヒト患者における頻尿、尿意切迫、夜間多尿、ならびに、排尿筋不安定、尿意切迫症候群及び/または排尿筋過反射に関する切迫性尿失禁の効果的な治療のための塩化トロスピウムの送達のための薬学的製剤は、ヒト患者に経口投与で徐放放出を提供する徐放放出型組成物及び薬学的に許容される担体を含む;ここで薬学的製剤は、塩化トロスピウムのさらなる投与を伴うことなく少なくとも12時間にわたって該患者に塩化トロスピウムの有効量を維持するために十分である。塩化トロスピウムの全投与量は、約30,000pg−Hr/mlから約80,000pg−Hr/mlの曲線下面積を有する時間曲線に対する血漿濃度を患者に生じる、約30mgから70mgであり得る。該血漿濃度は、最大濃度約1.5ng/mlから約6.0ng/mlを有し得る。該血漿濃度は、最小濃度約0.5ng/mlから約1.5ng/mlを有し得る。該血漿濃度曲線の値の最大濃度には、経口投与後、約3から約24時間で到達し得る。
【0059】
ヒト患者における頻尿、尿意切迫、夜間多尿、ならびに、排尿筋不安定、尿意切迫症候群及び/または排尿筋過反射に関する切迫性尿失禁の効果的な治療のための塩化トロスピウムの送達のための薬学的製剤は、前記患者に経口投与で遅延放出型を提供する徐放放出型組成物と薬学的に許容される担体を含む;ここで薬学的製剤は、塩化トロスピウムのさらなる投与を伴うことなく少なくとも12時間にわたって患者に塩化トロスピウムの有効レベルを維持するために十分である。塩化トロスピウムの全投与量は、約30,000pg/mlhrから約80,000pg/mlhrの曲線下面積を有する時間曲線に対する血漿濃度をヒト患者に生じる、約30mgから70mgであり得る。該血漿濃度は、最大濃度約1.5ng/mlから約6.0ng/mlを有し得る。該血漿濃度は、最小濃度約0.5ng/mlから約1.5ng/mlを有し得る。該血漿濃度曲線の値の最大濃度には、経口投与後、約3から約24時間で到達し得る。
【0060】
ヒト患者における頻尿、尿意切迫、夜間多尿、ならびに、排尿筋不安定、尿意切迫症候群及び/または排尿筋過反射に関する切迫性尿失禁の効果的な治療のための塩化トロスピウムの送達のための薬学的製剤は、前記患者に経口投与で即時放出型及び/または徐放放出型を提供する即時放出型及び/または徐放放出型組成物と前記患者に経口投与で遅延放出型を提供する遅延放出型組成物と、薬学的に許容可能な担体を含む;ここで薬学的製剤は、塩化トロスピウムのさらなる投与を伴うことなく少なくとも12時間にわたって患者に塩化トロスピウムの有効量を維持するために十分であり、前記遅延放出型組成物の放出後に到達する塩化トロスピウムの血漿濃度のピークが、前記即時放出型組成物及び/または徐放放出型組成物の放出後にあらかじめ到達していた血漿濃度のピークを超える。塩化トロスピウムの全投与量は、約30,000pg/mlhrから約80,000pg/
mlhrの曲線下面積を有する時間曲線に対する血漿濃度を患者に生じる約30mgから70mgであり得る。該血漿濃度は、最大濃度約1.5ng/mlから約6.0ng/mlを有し得る。該血漿濃度は、最小濃度約0.5ng/mlから1.5ng/mlを有し得る。該血漿濃度曲線の値の最大濃度には、経口投与後、約3から約24時間で到達し得る。
【0061】
塩化トロスピウムの1日1回薬学的製剤は遅延放出型組成物と組み合わせた即時放出型または徐放放出型組成物を含み、ここで、該製剤組成物はヒト患者において経口投与の約1〜3時間以内に約500pg/mLから約800pg/mLの平均血漿トロスピウム濃度を得るのに十分な塩化トロスピウムを含有する;前記1日1回製剤の時間に対する血漿濃度は、約30,000pg/mlhrから約80,000pg/mlhrの曲線下面積を有する。前記血漿濃度曲線の最大濃度は、約1.5ng/mLから約6.0ng/mLである。Tmaxは約5から約6時間である。全塩化トロスピウム投与量は、投与あたり約30mgから80mgである。950ml 50mM リン酸緩衝液中の50RPM、6.8と7.5の間のpH、37℃で、USP Apparatus IIを使用するin vitro溶解試験において測定すると、即時放出型または徐放放出型組成物は、2時間以内の全投薬含量が約5%から約20%に等しい塩化トロスピウムの放出を有する。遅延放出型組成物と組み合わせた前記即時放出型または徐放放出型組成物は、単一のユニット(unit)または分離したユニット(units)にあり得る。前記ユニット(単数又は複数)は、浸食性マトリックスシステム、被覆システム、浸透性システムまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0062】
本発明は、各粒子が1以上の塩化トロスピウム放出制御物質を含んでいる、ある量の固体の、塩化トロスピウム−保有粒子を含む塩化トロスピウムの1日1回投与に適した薬学的組成物を意図し、これにより前記薬学的組成物の1日1回投与は、定常状態(すなわち、単回投与ではなく、少なくとも数日の投与の後、または約72時間から約120時間の継続的な1日1回投与の間の開始時)の血中レベルのトロスピウムを提供し、これは、もし前記固体の塩化トロスピウム−保有粒子が、即時放出型物質から排他的に(exclusively)選択される塩化トロスピウム放出制御物質を含まない場合には、利用可能な20mgの即時放出型塩化トロスピウム錠剤の1日2回投与で達成されるトロスピウムの定常状態血中レベルに実質的に等しい。
【0063】
本発明の好ましい実施形態において、制御放出型薬学的組成物の1日1回投与は、約0.5ng/mlから約6.0ng/mlの範囲になる、好ましくは、塩化トロスピウムの20mgの1日2回(bid)レジメンに一致する投与レベルのために、約0.75ng/mlから約3.0ng/mlの範囲になるトロスピウムの定常状態血中レベルを提供する。患者が従来の20mgの1日2回(bid)レジメン塩化トロスピウム投与量から上下に変動され得ることは、臨床医及び他の当業者により理解され、この場合、本発明の投与単位はそれに応じて調整される。本発明の製剤の薬剤濃度の範囲は、このような調整を説明し、好ましい薬剤の範囲は、典型的な20mgの1日2回(bid)投与レジメンにほぼ一致すると理解される。
【0064】
本発明はまた、1日1回投与が、約2.5ng/mlから約4.5ng/mlの範囲になるトロスピウム定常状態血中Cmaxレベル及び約0.5ng/mlから約1.5ng/mlの範囲になるトスロピウムのCminレベルを提供する薬学的組成物を提供することを意図する。さらに、本発明は、1日1回投与が約30から約60ng/mlhrの範囲になる、好ましくは、約35から約45ng/mlhrの範囲になる定常状態曲線下面積を提供する。
【0065】
本発明の具体的な実施形態において、1日1回投与が約80から約120の範囲になる
、好ましくは約90から約110の範囲になる定常状態%F(すなわち、相対的生物学的利用能)値を提供する薬学的組成物が提供される。
【0066】
従って、本発明は、1以上の塩化トロスピウム放出制御物質の広い選択が、例えば、塩化トロスピウムの即時型放出、遅延型放出、徐放型放出、またはpH感受性放出を提供する物質から選択される1以上の塩化トロスピウム放出制御物質を含む、固体の、塩化トロスピウム−保有粒子に含まれるように選択されることを意図し、仮に即時放出型物質が選択された場合には、薬学的組成物はまた1以上の遅延放出型、徐放放出型、pH感受性放出型物質またはこれらの組合せを含む。
【0067】
実施例においてさらに詳細に記載する、具体的な実施形態は、ほんの少し例を挙げると、DR1、DR2、XR、XR1−1、XR1−2、XR1+DR2及びIR/DR2と指定された製剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0068】
本発明はまた、20mgビッド(bid)即時放出型塩化トロスピウム錠剤(または対応して変動された(titrated)投与量)の1日2回投与で達成されるトロスピウムの定常状態血中レベルと実質的に等しく、そして副作用を減らす、トロスピウムの定常状態血中レベルを提供する有効量の塩化トロスピウムの1日1回製剤を、それを必要とする哺乳動物への投与を含む、有効量の塩化トロスピウムの1日1回投与から恩恵を受ける状態に苦しむ哺乳動物の治療方法を意図する。本発明は、特に以下で説明する実施例について記載する;しかし、本発明の範囲は以下の例示の実施形態に制限されることを意図せず、また制限されるべきではない。
【0069】
本発明は、塩化トロスピウムの許容される1日1回投与レジメンを作製するプロフィールを提供する。塩化トロスピウムは、500mg/mlの飽和溶解度を備えた高水溶性化合物である。この発明は、徐放放出型製剤における、活性薬学的成分としての高水溶性薬剤により課せられる課題を克服する。1日1回投与は、例えば、患者の従順の割合を増加する、複数回投与以上の明らかな利点を有する。また、制御放出型製剤を伴う1日1回投与は、血漿濃度のスパイク(spike)に関する副作用(これは、即時放出型製剤の複数回投与量の投与の結果として生じる)を軽減する。
【0070】
このように、本発明はまた、本発明に従う組成物を1日1回投与すること(これは、最小約0.5ng/ml及び最大約6.0ng/ml、好ましくは約0.75ng/mlと約5.0ng/mlの間のトロスピウムの平均定常状態血中レベルを与える)による哺乳動物、特にヒトの治療方法に向けられる。この出願で記載する任意の様々な組成物は、これまで達成は可能であると考えられていなかった、これらの血中レベルを達成し得る。Schroder, S. et al.参照。
【0071】
その他の点で定義されていなくとも、ここで使用される全て技術及び科学用語は、この発明の属する当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。ここで言及する全ての刊行物、特許出願、特許及び他の引用文献は、その全体が参考として援用される。争いがある場合、定義を含めて、本発明の明細書が支配する。さらに、物質、方法、及び実施例は単に例証するだけであり、制限することを意図しない。
【実施例】
【0072】
実施例
実施例1:塩化トロスピウム即時放出型ペレット
塩化トロスピウム即時放出型(IR)ペレットは、Glatt’s(登録商標)GPCG−1流動層コーター内で塩化トロスピウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP E5、結合剤)、タルク(アンチタッキング剤)及び水からなるコーティング
分散液からの塩化トロスピウムで30/35−メッシュシュガー球体を被覆することにより製造された。表1は、改良された放出型組成物と同様に、塩化トロスピウムIRカプセルの配合組成を提供し、そして、表2は、該ペレットの組成を記載する。薬剤層状化分散液は、水中にHPMCE5を溶解し、その中に塩化トロスピウムを溶解し、そして、タルクを分散させ、そして、20分間撹拌することにより調製する。生じた分散液はコーティングコンポーネントの沈降を防止するためにコーティングプロセスを通して撹拌した。Glatt’s(登録商標)GPCG−1におけるコーティングパラメーターを表3に示す。生じたペレットは、約20%W/Wの塩化トロスピウムを含んでいた。
【0073】
溶解プロフィールを決定するに行う手順は:
図1:USP Apparatus II、50RPM.Media: 950ml 0.1N HCl、pH1.1
図2:USP Apparatus II、50RPM.Media: 950ml 50mM リン酸緩衝液、pH7.5
図3:USP Apparatus II、50RPM.Media: 最初の2時間は750ml 0.1N HCl pH1.1、そしてリン酸緩衝液を使用して2時間で媒体をpH6.8に調整した(全媒体容量=950ml)
図4:USP Apparatus II、50RPM.Media: 950ml 50mM リン酸緩衝液、pH7.5
図5:USP Apparatus II、50RPM.Media: 950ml 50mM リン酸緩衝液、pH7.5
図6:USP Apparatus II、50RPM.Media: 最初の2時間は750ml 0.1N HCl pH1.1、そしてリン酸緩衝液を使用して2時間で媒体pH6.8に調整した(全媒体容量=950ml)
図7:USP Apparatus II、50RPM.Media: 最初の2時間は750ml 0.1N HCl pH1.1、そしてリン酸緩衝液を使用して2時間で媒体をpH7.5に調整した(全媒体容量=950ml)
図8:USP Apparatus II、50RPM.Media: 最初の2時間は750ml 0.1N HCl pH1.1、そしてリン酸緩衝液を使用して2時間で媒体をpH7.5に調整した(全媒体容量=950ml)
図1は、0.1N HCl、pH1.1における即時放出型塩化トロスピウムペレット
の溶解プロフィールを示す。該プロフィールは約15分間で90%より多くの放出を示す。
【0074】
図2は、リン酸緩衝液、pH6.8における徐放放出型塩化トロスピウムペレットの溶解プロフィールを示す。該プロフィールは、約4時間で約25%と約80%の間、約8時間で約50%と約95%の間、約12時間で約70%と約98%の間、及び、約24時間で約90%と約100%の間の放出を示す。
【0075】
図3は、0.1N HCl及びリン酸緩衝液、pH6.8における遅延放出型塩化トロスピウムペレットの溶解プロフィールを示す。該プロフィールは、酸性媒体中1%以下の放出、及び、pH変化後約15分で約90%より多い放出を示す。
【0076】
図4は、リン酸緩衝液、pH6.8における徐放放出型50mg塩化トロスピウムペレットの平均溶解プロフィールを示す。該プロフィールは、約2時間で10%より少ない、約4時間で約20%と約30%の間、約8時間で約50%と約60%の間、約12時間で約70%と約80%の間、及び、約24時間で約90%と約100%の間の放出を示す。
【0077】
図5は、リン酸緩衝液、pH6.8における徐放放出型40mg塩化トロスピウムペレットの平均溶解プロフィールを示す。該プロフィールは、約2時間で10%より少ない、約2時間で約20%と約30%の間、約4時間で約40%と約60%の間、約8時間で約80%と約90%の間、及び、約12時間で約90%と約100%の間の放出を示す。
【0078】
図6は、0.1N HCl及びリン酸緩衝液、pH6.8における遅延放出型35mg塩化トロスピウムペレットの平均溶解プロフィールを示す。該プロフィールは、酸性媒体中1%以下の放出、及び、pH変化後約15分で約40%より多い、pH変化後30分で80%より多い、そして、pH変化後1時間で90%より多い放出を示す。
【0079】
図7は、0.1N HCl及びリン酸緩衝液、pH6.8における遅延放出型35mg塩化トロスピウムペレットの平均溶解プロフィールを示す。該プロフィールは、酸性媒体中1%以下の放出、及び、pH変化後約30分で約30%より多い放出、pH変化後約60分で60%より多い放出、pH変化後1時間で80%より多い放出、そしてpH変化後約4時間で90%より多い放出を示す。
【0080】
図8は、0.1N HCl及びリン酸緩衝液、pH6.8における徐放放出型/遅延放出型60mg塩化トロスピウムペレットの平均溶解プロフィールを示す。該プロフィールは、酸性媒体中で最初の2時間の間に約10%と約20%の間の放出、及び、pH変化後約30分で30%と40%の間の放出、pH変化後約1時間で60%と70%の間の放出、pH変化後約2時間で60%と80%の間の放出、pH変化後約4時間で70%と80%の間の放出、pH変化後約6時間で80%と90%の間の放出、pH変化後約8時間後90%より多い放出を示す。
【0081】
全ての溶解プロフィールは37℃で得られる。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
実施例2:塩化トロスピウム徐放放出型ペレット
塩化トロスピウムXRペレット充填カプセルの組成は表1に提供する。塩化トロスピウムXRペレットは、塩化トロスピウム即時放出型ペレットを、Glatt(登録商標)流動層コーターを使用して、Surelease(登録商標)Clearコーティング分散液で被覆することにより製造された。Surelease(登録商標)Clearは、Colorcon(West Point、PA)により供給される25%w/w水性分散液である。Surelease(登録商標)Clear被覆分散液は、Surelease(登録商標)Clearの20%w/w分散液に達成するために、水をSurelease(登録商標)Clearに添加し、20分間撹拌することにより調製された。この20%w/wSurelease(登録商標)Clear分散液は、コーティングのために使用された。生じた分散液は、コーティングコンポーネントの沈降を防止するためにコーティングプロセスを通して撹拌された。Surelease(登録商標)Clearの様々な被覆レベルは、コーティングの溶解を遅らせる様々な程度を伴う徐放放出型ペレットを達成する目的において試験し、これは表4に示される。図2は、エチルセルロース被覆塩化トロスピウムペレットの溶解プロフィールを示す。
【0087】
【表5】

【0088】
実施例3:塩化トロスピウム遅延放出型ペレット
塩化トロスピウムDRペレット充填カプセルの組成を表1に提供する。表2は、遅延放出型ペレットの組成を提供する。塩化トロスピウム即時放出型ペレットは、Glatt(登録商標)流動層コーターを使用して、Eudragit(登録商標)L30D55、トリエチルシトレート(可塑剤)、タルク(アンチタッキング剤)、及び水からなるコーティング分散液からのEudragit(登録商標)L30D55で被覆した。Eudragit(登録商標)L30D55は、ロームアメリカ(Rohm America)(ピスカタウェイ、NJ)により供給された30%w/w水性分散液である。Eudragit(登録商標)L30D55コーティング分散液は、タルクを水に分散させ、そして、少なくとも20分間混合することにより調製した。Eudragit(登録商標)L30D55分散液は、80−メッシュのふるいを通してふるいにかけた。トリエチルシトレートは、Eudragit(登録商標)L30D55分散液に添加し、そして少なくとも30分間混合した。そして、タルク分散液を、Eudragit(登録商標)L30D55/TEC分散液にゆっくりと注ぎ、次いで、少なくとも30分間混合した。生じた分散液(11.7%w/w Eudragit(登録商標)L30D55水性分散液)を、80−メッシュのふるいを通してろ過し、そしてコーティングコンポーネントの沈降を防止するためにコーティングプロセスを通して撹拌した。酸耐性コーティングを達成することを目的として、Eudragit(登録商標)L30D55の様々な被覆レベルを試験した。図3は、塩化トロスピウム遅延放出型ペレットの溶解プロフィールを示す。
【0089】
実施例4−組み合わせXR/DR
徐放放出型ペレットは、SURELEASE(登録商標)の15% w/wコーティングを使用して、実施例2のように調製した。遅延放出型ペレットは、実施例3と同様の方法で、即時放出型ペレットをEudragit FS30Dで被覆することにより製造した。Eudragit(登録商標)FS30Dは、ロームアメリカ(ピスカタウェイ、NJ)により供給された30%w/w水性分散液である。Eudragit(登録商標)FS30Dコーティング分散液は、18%w/w Eudragit(登録商標)FS30Dである。腸溶性被覆ペレットは、XRペレットとDRペレット比1:1で、徐放放出型ペレットと組合せ、全塩化トロスピウム量60mgを達成する。
【0090】
実施例5.35mg量(strength)の塩化トロスピウム遅延放出
実施例3に記載のように、即時放出型ペレットをEudragit(登録商標)L30D55で被覆することにより製造した遅延放出型ペレットを、充填重量で、カプセル投与単位に35mgの塩化トロスピウムを提供するようカプセルに充填した。
【0091】
実施例6− 単回投与のヒト薬物動力学的研究
4つの制御放出型製剤のヒト試験を行った。該研究は、上述する実施例に記載した4つの制御放出型投与単位(DR1 40mg、DR2 40mg、XR 40mg、及び20mgのIR:120mgのDR2の混合物)を、1日1回の単回投与を与える40mgIRカプセル及び20mgIR錠剤(Spasmo−Lyt(登録商標)、Madaus)(これは、12時間間隔で1日2回与える)と比較した。
【0092】
図4は、2つの即時放出型産物に対する4つの1日1回制御放出型組成物の薬物動力学的プロフィールを示す。図5は、比較を容易にするために離した製剤Dと同じデータを示す。これらのデータは、DR1、XR1及びIR/DR2の組合せが、市販のIRの1日2回製品と類似の薬物動力学的プロフィール及びパラメータを生み出すことを実証する(図4及び5)。
【0093】
表5は、%F(これはバイオイクイバレンスの測定値)を含む、即時放出型産物(20mgビッド(bid))及び制御放出型産物(40mgDR1、40mgXR1、及び20mg/120mg IR/DR2の組合せ)の与えられた期間(0−24時間及び0−72時間)にわたる曲線下面積(AUC)の単回投与データを示す。少なくともDR1及びXRの制御放出型産物がAUCデータを提供することが認識でき、これは、1日2回投与される20mg即時放出型塩化トロスピウムで得たものに匹敵する。
【0094】
【表6】

【0095】
実施例7− 定常状態ヒト薬物動力学的研究
第2のヒト試験は、表1bに記載した4つの制御放出型製剤と20mgのIR錠剤(Spasmo−Lyt(登録商標)、Madaus)(これは、12時間間隔で1日2回与えられる)との比較を行った。表6は、前段落で議論した様々な塩化トロスピウム製剤の投与から得たAUC(72時間にわたる)、Cmax、Cmin及び%Fの定常状態データを示す。
【0096】
【表7】

【0097】
実施例8−塩化トロスピウム薬学的組成物の腸溶性投与
本発明の方法に従う遅延放出型製剤は、遅延放出型コーティングを使用して、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物のような、トロスピウム塩を使用して調製し、これは約pH7.0でトロスピウムを放出する。例えば、活性成分を中性pH付近(これは消化管下部(例えば小腸下部、結腸または両者)のpHに実質的に一致する)で放出させるために、適切なEUDRAGIT放出制御層を選択する。他の放出制御層もまた、少なくとも一つの活性成分としてトロスピウムを含む薬学的化合物を提供することを目的として選択され、これは、かなりの量のトロスピウムを送達/吸収する役割を担わないと以前に想定されていた消化管の部位でトロスピウムを放出する。例えば、Schroder, S et al., in International Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics, Vol. 42-No. 10/ 2004 (543-549) 参照。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、0.1N HCl、pH1.1における即時放出型塩化トロスピウムペレットの溶解プロフィールを示す。該プロフィールは約15分間で終了に到達した放出を示す。
【図2】図2は、エチルセルロース被覆した(徐放放出型または「XR」)トロスピウムペレットの溶解プロフィールを示す。
【図3】図3は、塩化トロスピウム遅延放出型(「DR」)ペレットの溶解プロフィールを示す。
【図4】図4は、50mgの塩化トロスピウムXR1−2ペレットの平均溶解プロフィールを示す。
【図5】図5は、40mgの塩化トロスピウムXR1−1ペレットの平均溶解プロフィールを示す。
【図6】図6は、35mgの塩化トロスピウムDR1ペレットの平均溶解プロフィールを示す。
【図7】図7は、40mgの塩化トロスピウムDR2ペレットの平均溶解プロフィールを示す。
【図8】図8は、60mgの塩化トロスピウムXR1/DR2ペレットの平均溶解プロフィールを示す。
【図9】図9は、2つの即時放出型製品に対する4つの例示的に制御された放出組成物の薬物動力学的プロフィールを示す。
【図10】図10は、比較を容易にするために離した製剤Dに関して図4で説明した同じデータを示す。
【図11】図11は、4つの塩化トロスピウムの制御放出型製剤の定常状態薬物動力学的プロフィールを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1日1回用量が最小約0.5ng/ml及び最大約6.0ng/mlのトロスピウムの定常状態血中レベルを与える、トロスピウムを含有する経口薬学的組成物。
【請求項2】
1日1回用量で、定常状態において約0.5と約1.5ng/mlの間のトロスピウムの最小血中レベル(Cmin)と約2.0と約6.0ng/mlの間の最大血中レベル(Cmax)を与える、請求項1の組成物。
【請求項3】
定常状態血中レベルが、約1.0ng/mlと約5.0ng/mlの間である、請求項2の組成物。
【請求項4】
25mgと80mgの間の塩化トロスピウムが存在する、請求項1の組成物。
【請求項5】
約20mg以下の塩化トロスピウムを含有する即時放出型コンポーネントを含む、請求項1の組成物。
【請求項6】
約25と約60mgの間の塩化トロスピウムを含有する徐放放出型コンポーネントを含む、請求項1の組成物。
【請求項7】
約25と約80mgの間の塩化トロスピウムを含有する遅延放出型コンポーネントを含む、請求項1の組成物。
【請求項8】
IR塩化トロスピウムコンポーネントとDR塩化トロスピウムコンポーネントの組み合わせである、請求項1の組成物。
【請求項9】
該IR塩化トロスピウムコンポーネントが約20mg以下の塩化トロスピウムを含有し、及び、塩化トロスピウムの全投与量が約80mg未満である、請求項8の組成物。
【請求項10】
XR塩化トロスピウムコンポーネントとDR塩化トロスピウムコンポーネントの組み合わせである、請求項1の組成物。
【請求項11】
XRコンポーネントが約10から約40mgの間の塩化トロスピウムを含有し、及び、DRコンポーネントが約10mgから約40mgの間の塩化トロスピウムを含有する、請求項10の組成物。
【請求項12】
XRコンポーネントが約30mgの塩化トロスピウムを含有し、及び、DRコンポーネントが約30mgの塩化トロスピウムを含有する、請求項11の組成物。
【請求項13】
IR塩化トロスピウムコンポーネントとXR塩化トロスピウムコンポーネントの組み合わせである、請求項1の組成物。
【請求項14】
IRコンポーネントが約20mg以下の塩化トロスピウムを含有し、及び、XRコンポーネントが約20mgから約60mgの塩化トロスピウムを含有する、請求項13の組成物。
【請求項15】
XRコンポーネントが約20mgから約40mgの塩化トロスピウムを含有する、請求項14の組成物。
【請求項16】
IR塩化トロスピウムコンポーネント、XR塩化トロスピウムコンポーネント、及び、
DRトロスピウムコンポーネントの組み合わせである、請求項1の組成物。
【請求項17】
IRコンポーネントが約20mg以下の塩化トロスピウムを含有し、ならびに、組み合わせたXR及びDRコンポーネントが約10mgと約60mgの間の塩化トロスピウムを含有し、及び、1:10から10:1のXR:DRの比率である、請求項16の組成物。
【請求項18】
顆粒剤、錠剤、ペレット、散剤、サシェ、カプセル剤、ゲル、分散剤、液剤または懸濁剤の形態である、請求項1の組成物。
【請求項19】
カプセルに含有されたペレットの形態である、請求項1の組成物。
【請求項20】
錠剤に圧縮されたペレットの形態である、請求項1の組成物。
【請求項21】
層状錠剤であり、ここで各層が該コンポーネントの一つを含有する、請求項8−17の組成物。
【請求項22】
層状ペレットであり、ここでDR及び/またはXR部分がペレットのコアを構成し、ならびに、IR部分が該コアを取り囲む、請求項8−17の組成物。
【請求項23】
少なくとも、疾患または状態を改善するのに十分な時間の間、哺乳動物に請求項1に従う日用量のトロスピウム組成物を投与することを含む、哺乳動物における尿失禁疾患または状態の治療方法。
【請求項24】
該哺乳動物がヒトである、請求項23の方法。
【請求項25】
25と80mgの間の塩化トロスピウムが該組成物中に存在する、請求項23の方法。
【請求項26】
約60mgの塩化トロスピウムが該組成物中に存在する、請求項23の方法。
【請求項27】
組成物が、約20mg以下の塩化トロスピウムを含有する即時放出型コンポーネントを含む、請求項23の方法。
【請求項28】
組成物が、約25と約60mgの間の塩化トロスピウムを含有する徐放放出型コンポーネントを含む、請求項23の方法。
【請求項29】
組成物が、約25と約80mgの間の塩化トロスピウムを含有する遅延放出型コンポーネントを含む、請求項23の方法。
【請求項30】
組成物が、IR塩化トロスピウムコンポーネント及びDR塩化トロスピウムコンポーネントの組み合わせである、請求項23の方法。
【請求項31】
該IRコンポーネントが約20mg以下の塩化トロスピウムを含有し、及び、塩化トロスピウムの全投与量が約80mg未満である、請求項30の方法。
【請求項32】
組成物が、XR塩化トロスピウムコンポーネント及びDR塩化トロスピウムコンポーネントの組み合わせである、請求項23の方法。
【請求項33】
該XRコンポーネントが約10から約40mgの間の塩化トロスピウムを含有し、及び、該DRコンポーネントが約10mgと約40mgの間の塩化トロスピウムを含有する、請求項32の方法。
【請求項34】
該XRコンポーネントが約30mgの塩化トロスピウムを含有し、及び、該DRコンポーネントが約30mgの塩化トロスピウムを含有する、請求項33の方法。
【請求項35】
組成物が、IR塩化トロスピウムコンポーネント及びXR塩化トロスピウムコンポーネントの組み合わせである、請求項23の方法。
【請求項36】
該XRコンポーネントが約20mg以下の塩化トロスピウムを含有し、及び、該XRコンポーネントが約20mgから約60mgの塩化トロスピウムを含有する、請求項35の方法。
【請求項37】
該XRコンポーネントが約20mgから約40mgの塩化トロスピウムを含有する、請求項36の方法。
【請求項38】
組成物が、IR塩化トロスピウムコンポーネント、XR塩化トロスピウムコンポーネント及びDRトロスピウムコンポーネントの組み合わせである、請求項23の方法。
【請求項39】
IRコンポーネントが約20mg以下の塩化トロスピウムを含有し、ならびに、組み合わせたXR及びDRコンポーネントが約10mgと約60mgの間の塩化トロスピウムを含有し、及び、1:10から10:1のXR:DRの比率である、請求項38の方法。
【請求項40】
塩化トロスピウムを含有する薬剤溶液を不活性コア上にスプレーすることを含み、それにより該コア上に薬剤の層を形成する、トロスピウムを含有する即時放出型薬学的組成物を調製するためのプロセス。
【請求項41】
結合剤及び抗タッキング剤もまた該薬剤溶液中にある、請求項40のプロセス。
【請求項42】
さらに薬剤−層状コアに高分子組成物の保護被覆を適用することを含む、請求項40のプロセス。
【請求項43】
薬剤層状コアまたは薬剤充填グラニュール得ること、及び、放出制御ポリマーの前記コアまたはグラニュール上に被覆を適用することを含む、塩化トロスピウムの徐放放出型組成物を調製するためのプロセス。
【請求項44】
薬剤層状化コアまたは薬剤層状化グラニュール得ること、及び、腸溶性物質の前記コアまたはグラニュール上に被覆を適用することを含む、遅延放出型塩化トロスピウム組成物を調製するためのプロセス。
【請求項45】
カプセル中に、約20mg以下の塩化トロスピウムを含有する即時放出型ペレットと約20mgから約60mgの塩化トロスピウムを含有するXRペレットとを組み合わせることを含む、最小約0.5ng/ml及び最大約6.0ng/mlのトロスピウムの定常状態血中レベルを与える、塩化トロスピウムの1日1回用量単位を調製するためのプロセス。
【請求項46】
該XRペレットが、約20mgと約40mgの間の塩化トロスピウムを含有する、請求項45のプロセス。
【請求項47】
組み合わせの前投与量が約80mg未満となるように、カプセル中に、約20mg以下の塩化トロスピウムを含有する即時放出型ペレットとDRペレットを組み合わせることを含む、最小約0.5ng/ml及び最大約6.0ng/mlのトロスピウムの定常状態血中レベルを与える、塩化トロスピウムの1日1回用量単位を調製するためのプロセス。
【請求項48】
カプセル中に、約10mgと約40mgの間の塩化トロスピウムを含有する徐放放出型ペレットと約10mgと約40mgの間を含有するDRペレットとを組み合わせることを含む、最小約0.5ng/ml及び最大約6.0ng/mlのトロスピウムの定常状態血中レベルを与える、塩化トロスピウムの1日1回用量単位を調製するためのプロセス。
【請求項49】
XRとDRペレットのそれぞれが約30mgの塩化トロスピウムを含有する、請求項48のプロセス。
【請求項50】
定常状態で血中レベルが約1.0ng/mlと約5.0ng/mlの間である、請求項40−49のプロセス。
【請求項51】
約35mgのトロスピウムが存在し、及び、該DRコンポーネントがpH5.5−6.0で溶解する高分子物質で被覆される、請求項7の組成物。
【請求項52】
該放出制御被覆が3.5時間のin vivo放出プロフィールを与える、請求項15の組成物。
【請求項53】
該XRコンポーネントが、約50mgの塩化トロスピウムを含有し、及び、該放出制御被覆が4.5時間のin vivo放出プロフィールを与える、請求項14の組成物。
【請求項54】
複数の固体の塩化トロスピウム保有粒子を含ム1日1回投与に好適な薬学的組成物であって、前記複数が徐放放出型、遅延放出型またはこれらの組み合わせ、あるいは、いずれかと即時放出型粒子の組み合わせであり、前記薬学的組成物の1日1回投与が20mgの即時放出型塩化トロスピウム錠剤の1日2回投与により達成されるトロスピウムの定常状態血中レベルと実質的に等価のトロスピウムの定常状態血中レベルを提供する、組成物。
【請求項55】
前記制御放出薬学的組成物の1日1回投与が、約0.5ng/mlから約6.0ng/mlの範囲になるトロスピウムの定常状態血中レベルを提供する、請求項54の組成物。
【請求項56】
前記制御放出薬学的組成物の1日1回投与が、約1.0ng/mlから約5.0ng/mlの範囲になるトロスピウムの定常状態血中レベルを提供する、請求項55の組成物。
【請求項57】
前記制御放出薬学的組成物の1日1回投与が、約2.5ng/mlから約4.5ng/mlの範囲になるトロスピウムの定常状態血中Cmaxレベル、及び、約0.5ng/mlから約1.5ng/mlの範囲になるトロスピウムのCminレベルを提供する、請求項55の組成物。
【請求項58】
前記制御放出薬学的組成物の1日1回投与が、約30から約60ng/mlhrの範囲になる定常状態曲面下面積(AUCs)を提供する、請求項55の組成物。
【請求項59】
前記制御放出薬学的組成物の1日1回投与が、約35から約45ng/mlhrの範囲になる定常状態曲面下面積を提供する、請求項58の組成物。
【請求項60】
前記制御放出薬学的組成物の1日1回投与が、約80から約120の範囲になる単回用量%F値を提供する、請求項54の組成物。
【請求項61】
前記制御放出薬学的組成物の1日1回投与が、約90から約110の範囲になる単回用量%F値を提供する、請求項60の組成物。
【請求項62】
前記複数の粒子が、遅延放出型または徐放放出型のこれら単独または組み合わせ、あるいは、即時放出形粒子との単独または組み合わせから選択される、請求項54の組成物。
【請求項63】
該粒子が全て遅延放出型製剤である、請求項62の組成物。
【請求項64】
該粒子が全て、摂取後3.5時間で約80%の塩化トロスピウムの放出を可能にする徐放放出型製剤である、請求項62の組成物。
【請求項65】
該粒子が全て、摂取後4.5時間で約80%の塩化トロスピウムの放出を可能にする徐放放出型製剤である、請求項62の組成物。
【請求項66】
該粒子が全て、摂取後3.5時間で約80%の塩化トロスピウムの放出を可能にする徐放放出型製剤、及び、遅延放出型粒子を含む、請求項62の組成物。
【請求項67】
該遅延放出型粒子が、pHが約7である消化管の領域に到達する時に塩化トロスピウムを放出するものである、請求項66の組成物。
【請求項68】
20mg即時放出型塩化トロスピウム錠剤の1日2回投与により達成されるトロスピウムの定常状態血中レベルと実質的に等価のトロスピウムの定常状態血中レベルを提供し、及び、副作用の減少を伴う、有効量の塩化トロスピウムを含む1日1回製剤を、これを必要とする哺乳動物に投与することを含む、有効量の塩化トロスピウムの1日1回投与から恩恵を受ける状態に苦しむ哺乳動物の治療方法。
【請求項69】
対応する1日2回レジメン(regimen)と等価の単回投与プロフィールを結果として生じ
る塩化トロスピウムの1日1回剤形。
【請求項70】
対応する1日2回レジメンが1日あたり40mgに等しい、請求項69の剤形。
【請求項71】
対応する1日2回レジメンが1日あたり20mgに等しい、請求項70の剤形。
【請求項72】
対応する1日2回レジメンが1日あたり80mgに等しい、請求項71の剤形。
【請求項73】
改良が塩化トロスピウムの遅延放出型製剤を含有することを包含し、pH約7.0で塩化トロスピウムを放出する、有効量の塩化トロスピウムを含む薬学的組成物の腸内投与方法。
【請求項74】
改良が塩化トロスピウムの遅延放出型製剤を含有することを包含し、小腸下部で塩化トロスピウムを放出する、有効量の塩化トロスピウムを含む薬学的組成物の腸内投与方法。
【請求項75】
改良が塩化トロスピウムの遅延放出型製剤を含有することを包含し、結腸で塩化トロスピウムを放出する、有効量の塩化トロスピウムを含む薬学的組成物の腸内投与方法。
【請求項76】
前記塩化トロスピウムの少なくとも一部分がpH約7.0で塩化トロスピウムを放出する遅延放出型製剤に含有される、少なくとも一つの活性薬学的成分として塩化トロスピウムを含む薬学的組成物。
【請求項77】
前記塩化トロスピウムの少なくとも一部分が小腸下部、結腸または両者で塩化トロスピウムを放出する遅延放出型製剤に含有される、少なくとも一つの活性薬学的成分として塩化トロスピウムを含む薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−144577(P2012−144577A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−104795(P2012−104795)
【出願日】平成24年5月1日(2012.5.1)
【分割の表示】特願2006−538425(P2006−538425)の分割
【原出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(506339316)スパーナス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】