説明

トロリ線接続金具

【課題】 突き合わせたトロリ線の端部同士をパンタグラフ摺動面に段差なく接続して、集電性能の悪化原因を解消する。
【解決手段】 トロリ線接続金具1は、延線方向に突き合わせた隣接するトロリ線Tの端部同士をそれぞれ把持可能な一対のイヤー2,2と、これらの両イヤー2,2にわたりイヤー2の両側面にあてがわれる一対の接続板3,3と、これらの接続板3,3をイヤー2もろとも貫通し、ナット5で締め込み、両イヤー2,2を固定するボルト4とを具備する。接続板3は、両イヤー2の側部にわたり、一方のイヤー2のボルト挿通孔6cに対応するボルト挿通孔3aを、他方のイヤー2のボルト挿通孔6cに対応する縦方向の長孔3bを備える。両イヤー2を並べて接続板3,3で接続するとき、一方のイヤー2に対する他方のイヤー2の上下位置を長孔3bの範囲で自由に変更でき、摩耗程度が異なるトロリ線同士を段差無く接続できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接するトロリ線の端部同士を突き合わせて相互間を接続するためのトロリ線接続金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トロリ線接続金具には、突き合わせた隣接する両トロリ線の端部にわたりこれらを延線方向両側から挟み込む対向する一対のイヤー片を備えたイヤーの長手方向複数位置にボルトを挿通しナットで締め付けて、一体に直接把持するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-205688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のトロリ線接続金具においては、隣接するトロリ線の端部同士を単体のイヤーで把持するため、既設のトロリ線を張り替える場合などに、パンタグラフの摺動接触によるトロリ線の摩耗程度によって、新設のトロリ線と隣接する既存のトロリ線とのパンタグラフ摺動面の上下位置が異なり、新設のトロリ線と既設のトロリ線との接合位置でパンタグラフ摺動面に段差が生じてしまい、パンタグラフの円滑な通過が妨げられ、集電能力の悪化原因となるなど、機械的、電気的なダメージを受ける。
そこで、本発明は、トロリ線同士を接続する際に、パンタグラフ摺動面の高さ位置を合致させ、段差による集電性能の悪化等を解消するトロリ線接続金具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のトロリ線接続金具1においては、延線方向に互いに突き合わせた隣接するトロリ線T1,T2の端部を延線方向両側から挟んで対向する一対のイヤー片6,6によりそれぞれ把持可能な一対のイヤー2,2と、これら両イヤー2,2にわたってこれらを延線方向両側から挟み込む対向する一対の接続板3,3と、接続板3をイヤー2もろとも貫通するボルト4及びこれに締め込むナット5とで構成する。接続板3には、両イヤー2,2の少なくとも一方の固定位置を上下方向に変更できるようにボルト4を挿通させる縦方向の長孔3bを設け、両イヤー2,2を上下方向に互いに異なる把持位置で接続できるものとした。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、互いに突き合わせた隣接するトロリ線の端部を一対のイヤーでそれぞれ把持し、これらを接続板で挟み、ボルト、ナットにより締め付けて接続するが、接続板にボルトを挿通する縦方向の長孔を設けたため、接続するトロリ線の摩耗程度によってパンタグラフ摺動面の上下位置が異なっても、イヤーの一方を他方のそれに合致させるべく長孔の範囲で自由にイヤーの固定位置を上下に調整できるので、トロリ線を段差なく接続することができ、パンタグラフを円滑に通過させ、機械的衝撃及び集電能力の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るトロリ線接続金具の分解斜視図である。
【図2】図1のトロリ線接続金具の正面図である。
【図3】図1のトロリ線接続金具の平面図である。
【図4】図1のトロリ線接続金具の側面図である。
【図5】摩耗状態の異なるトロリ線を接続した状態のトロリ線接続金具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の一形態を図面を参照して説明する。
図1ないし図4において、トロリ線接続金具1は、延線方向に互いに突き合わせた隣接するトロリ線Tの端部同士をそれぞれ把持可能な一対のイヤー2,2と、これらのイヤー2,2の両方にわたって両側面にあてがわれる一対の接続板3と、これらの接続板3,3をイヤー2もろとも貫通し、ナット5により締め込み、両イヤー2,2を固定するボルト4とを具備する。
【0009】
イヤー2は、トロリ線Tの端部を両側から挟んで把持するように対向する一対のイヤー片6,6を備えている。イヤー片6は、トロリ線Tの軸線方向に沿って長い短冊状金属板で構成される。イヤー片6の下縁部には、トロリ線T1(T2)を挟むべく向き合わせた相手側に突出してトロリ線T1,T2の両側対称位置の係合溝に噛み合う係合歯6aを備える。イヤー片6の上縁部には、トロリ線T1(T2)を挟むべく向き合わせた相手側のそれに接する当接面6bを備える。イヤー片6には長手方向前後2箇所にボルト4を貫通させるボルト挿通孔6cを備える。
【0010】
接続板3は、両イヤー2の側部にわたる長尺金属板で構成され、一方のイヤー2のボルト挿通孔6cの対応位置にボルト4を貫通させるボルト挿通孔3aを、他方のイヤー2のボルト挿通孔6cの対応位置にボルト4を貫通させる縦方向の長孔3bを備えている。横に並べた両イヤー2を両側方から接続板3で挟み、ボルト挿通孔3a,6c及び長孔3bにボルト4を挿通させると、一方のイヤー2が位置決めされる一方、他方のイヤー2の上下位置が長孔3bの範囲で変更できる。
【0011】
このトロリ線接続金具1においては、トロリ線T1,T2の端部をイヤー2で両側方からそれぞれ挟み係合歯6aをトロリ線T1,T2の係合溝に噛ませた状態で、これらのイヤー2を互いに突き合わせるように並べて、イヤー2,2にわたり両側方から接続板3をあてがい、ボルト挿通孔3a,6c及び長孔3bにボルト4を挿通し、ナット5で締め付け固定する。このとき、一方のイヤー2に対する他方の上下位置を長孔3bの範囲で変更できるので、既設の隣接トロリ線の一方を新たなトロリ線に張り替えるなどの場合に、図5に示すような接続する隣接トロリ線T1,T2相互の摩耗程度が異なり、パンタグラフ摺動面の上下位置が互いに異なっても、長孔3b内でボルト4の位置を調整して、パンタグラフ摺動面を合致させ、トロリ線T1,T2をパンタグラフ摺動面に段差なく連続して接続できる。
【符号の説明】
【0012】
1 トロリ線接続金具
2 イヤー
3 接続板
3a ボルト挿通孔
3b 長孔
4 ボルト
5 ナット
6 イヤー片
6a 係合歯
6c ボルト挿通孔
T1 トロリ線
T2 トロリ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を延線方向に互いに突き合わせた隣接するトロリ線を接続するトロリ線接続金具であって、
前記トロリ線を延線方向両側から挟んで対向する一対のイヤー片にボルトを貫通させてナットにより締め付けてトロリ線の端部をそれぞれ把持可能な一対のイヤーと、
これらの両イヤーにわたり延線方向両側からイヤーを挟み込んで、前記イヤー片もろとも前記ボルトを貫通させて前記ナットにより締め付け、両イヤーを接続する対向する一対の接続板とを具備し、
前記接続板には、前記イヤーの少なくとも一方の固定位置を上下方向に変更するための、前記ボルトを挿通させる縦方向の長孔を具備し、
前記両イヤーを上下方向に互いに異なる把持位置で接続できることを特徴とするトロリ線接続金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−192795(P2012−192795A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57139(P2011−57139)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)