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トロンビンを含まない生物学的接着剤及びその医薬としての使用
説明

トロンビンを含まない生物学的接着剤及びその医薬としての使用

【課題】2つの課題を解決する生物学的接着剤。第1の課題は、生物組織上への塗布前にフィブリンを形成する危険のない、血漿凝固因子を含有するトロンビンフリーの生物学的接着剤を提供することである。第2の課題は、傷害性組織の止血能力を増加させ、更に結合組織の治癒を促進する、かかる接着剤の製造を可能にすることである。
【解決手段】第VIIa因子及びカルシウムイオン源を含んでなる、安定な、トロンビンフリーの、フィブリノーゲンベースの、単一液体製剤の、治療用の生物学的接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性化第VII因子及びカルシウムイオン源を含有するフィブリノーゲンベースの生物学的接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
「生物学的接着剤」とは、組織(皮膚、骨、様々な器官)を結合し、同時に傷害を有する組織における止血に関与し、それにより縫合によるこれらの組織の結合を補強又は完全にさせる物質のことを意味する。
【0003】
血液凝固は、蛋白質分解酵素を介して活性型に変化する血液に存在する各種のプロ酵素及びプロコファクタが関与するカスケード反応によりなされる。この凝固プロセス又はカスケード系は、2つの凝固系(外因性凝固経路及び内因性凝固経路と呼ばれる)に従ってなされ、プロトロンビンがトロンビンに変化する。
【0004】
外因性経路には、血液中に存在する第VII因子の介入が関与する。しかしながら後者は、この凝固カスケードを開始させるための活性化(第VIIa因子)を必要とする。組織傷害の後に放出されるリン脂質性の組織因子と複合体を形成するまで、第VIIa因子は低い酵素活性を有する。それにより、第VIIa因子の複合体は、カルシウムイオンの存在下で第X因子(FX)を第Xa因子(FXa)に変化させる。第Xa因子は次々にプロトロンビンをトロンビンに変化させ、それは第V因子(因子Va)を活性化する。トロンビンはまた、第XIII因子(第XIII因子a)を活性化する。トロンビンは、カルシウム、組織因子、第Va因子の存在下でフィブリンに変化することによって、フィブリノーゲンに作用する。第XIII因子aの存在により、強固な、接着性のメッシュ状のネットワークを有するフィブリンの凝血塊の形成が可能となり、それは強化瘢痕組織(ネットワークがフレームとして用いられる)の凝結によって段階的に、かつ徐々に再吸収される。このクロスリンクフィブリンは不溶性で、少なくとも瘢痕組織を準備する時間、繊維素溶解酵素によって攻撃されることはない。
【0005】
内因性凝固経路にも第VIIa因子(FVIIa)が関与する。この経路には、第XII因子(FXII)を介してトロンビンの活性化に至る反応カスケードが含まれている。後者は、リン脂質組織因子(FT)の存在下で第IX因子(因子IXa−FIXa)を活性化する第XI因子(因子XIa−FXIa)を活性化する。因子IXaは、因子VIIIa、組織因子及びカルシウムイオンの存在下で、第X因子の因子Xaへの活性化に関与する。更にプロトロンビンのトロンビンへの変化を生じさせる。因子Xa又はトロンビンの存在により、第VII因子(第VIIa因子)の活性化が可能となる点に留意する必要がある。
【0006】
ゆえに、第XIIa因子は内因性凝固機構において顕著な役割を演じ、血餅の形成をもたらすと考えられる。それは循環阻害剤(すなわち第VIII因子(FVIII)の活性化を抑制又は阻害する特異抗体)を伴う血友病Aを治療する際に使われる。第VIIa因子は、第VIII因子又はIXの非存在下においても、出血を引き起こしている組織の病巣の後に放出される組織因子の存在下で局所的に活性を発揮できるという利点を有する。
【0007】
しかしながら、損傷、損傷又は外部の外科手術によって生じる出血性組織病変の場合、縫合による組織の修復が、上記で説明した機構に従った、特にフィブリンクロットを形成することによる出血の停止に必要となる。特に高度の外科手術の場合、傷害性組織の止血を促進するのに必要であると判断される場合がある。
【0008】
例えば特許文献1では、トロンビン及び凝固因子フリーの、生物学的適合性を有するビヒクル中に添加された第VIIa因子を含んでなる止血組成物、並びにそれを出血損傷に適用し、止血及びフィブリンクロットの形成を生じさせることに関して記載している。
【0009】
しかしながら、傷害性組織の止血を除いて、組織の結合を行おうとする(縫合された若しくはされない)組織を治癒する固有のプロセスにおいては、生じうる障害を回避し、そのプロセスを加速、補強又は完遂させることが必要となる。これは特に、局所的に生物学的接着剤を塗布することによって可能となる。
【0010】
生物学的接着剤は、血液凝固の循環因子の混合物、特に線維素生成血漿蛋白質、及び第XIII因子から構成される。それらは更に外因のトロンビン(フィブリノーゲンを不用性フィブリンに変えるために必要な酵素)の供給を必要とし、それは第XIII因子とクロスリンクすることができる。更なる成分がフィブリノーゲンの凝固を続けるために必要とされ、例えばカルシウムイオン、CaCl、及びアプロチニン(抗線維素溶解特性のため)が添加される。
【0011】
かかる生物学的接着剤は、多くの刊行物及び特許文献(例えば特許文献2から4)において報告され、また多くの臨床報告(“Fibrinkleber”、ハイデルベルク会議、1976、Ed.Schattauer)においてそれらの適用事例が報告されている。
【0012】
生物学的接着剤はまた、生物組織に多くの種類の生体材料(コラーゲン、アルギン酸塩及びポリ乳酸)を結合させるために用いられる場合もあり、それによりそれらの機械的特性が補強され、同時に生物体の細胞の自然な再成長(例えば人工皮膚)の強化のための下地が準備される。
【0013】
市販の生物学的接着剤は、少なくとも上記の4つの成分を含有する乾燥形態のキットとして供給されており、トロンビン、フィブリノーゲン及び第XIII因子によって凝固されうるタンパク質はトロンビンから隔離させている必要がある。なぜなら、それらの存在によってフィブリンの凝固が生じるからであり、実際、液体中に再調製し、混合した後、数秒というごく短時間のオーダーで凝固が生じる。以上のような理由により、生物学的接着キットは少なくとも2液型の形態で提供される。すなわち、1つはフィブリノーゲン及び第XIII因子をベースとするバッチ、もう1つはトロンビンをベースとするバッチから構成される。生物学的接着剤は、例えばシリンジ及びニードルで両方のバッチの再調製及び混合を行い、更に縫合される組織上に塗布することによって上記の機能を発揮できる。
【0014】
しかしながら、かかる再調製及び混合は比較的複雑で、特に緊急時の場合にはミスの元となる。すなわち、フィブリノーゲンが液体中でトロンビンと接触すると、他の成分の存在下で、フィブリンがほぼ即座に形成されるという事実が存在する。ゆえに、フィブリノーゲン−トロンビンの混合は、損傷又は手術部位への塗布の直前でなければならない。更に、生物学的接着剤を調剤する際に同じ装置を用いる場合には、装置内でフィブリンの凝固が生じる危険性が実際に存在し、それにより調剤及び塗布システムの操作の妨げとなりうる。
【0015】
特許文献5は、特にフィブリノーゲン及び少なくとも1つの活性凝固因子を含有する予め活性化された2成分型の接着剤を記載している。当該凝固因子は第XIIa因子、第XIa因子、第VIIa因子及びカリクレインから選択され、その活性化はカルシウムイオンに依存せず、カルシウムイオンの単純な添加によって凝固し、フィブリンが形成される。フィブリノーゲンを濃縮し、一方でカルシウムイオンの作用下で凝固を可能にするのに必要な活性凝固因子を保持するため、この接着剤は同一のドナーから活性血漿を分画又は濃縮することによって調製される。かかる接着剤には、2液型接着剤に関して上記した欠点、及び混合のほぼ直後にフィブリンクロットを形成するという欠点が存在する。
【0016】
特許文献6は、出血又は内部若しくは外部の損傷によって生じる出血を抑止又は停止させるために有用なFVIIa及びフィブリノーゲンを含有する組成物を記載している。これらの組成物は患者への静脈内への注入用であり、全ての因子及びカルシウムイオンが存在する出血若しくは損傷部位で作用する。かかる組成物の使用に関連する欠点の理由としては、例えば血流内において、当該組成物が損傷又は出血部位から拡散したFTsと相互作用するという事実が挙げられ、更に血液中に元々存在するカルシウムイオンによって、血液に存在する多くの因子を伴って早すぎる凝固を生じさせ、それにより出血領域から離れた部位における凝血塊の形成を生じさせ、更に血栓症の危険性を生じさせる。
【0017】
ゆえに上記の欠点は、操作の迅速性が求められる外科手術及び/又は救急時において問題を生じさせうる。かかる欠点により、組織粘着の前にフィブリン凝集の形成が生じ、それにより組織の不均一な結合に至ることが観察されている。それは最終的には不規則な瘢痕となって残り、deshience(瘢痕の両岸の分離)、及び術後の二次出血をもたらしうる凝血塊の収縮によって更に悪化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第93/06855号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第0305243号公報
【特許文献3】仏国特許第2448900号公報
【特許文献4】仏国特許第2448901号公報
【特許文献5】欧州特許第0850650B1号公報
【特許文献6】国際公開第02/055102A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
これらの欠点を克服するため、2つの課題を解決する生物学的接着剤に関して鋭意研究を行った。第1の課題は、生物組織上への塗布前にフィブリンを形成する危険のない、血漿凝固因子を含有するトロンビンフリーの生物学的接着剤を提供することである。第2の課題は、傷害性組織の止血能力を増加させ、更に結合組織の治癒を促進する、かかる接着剤の製造を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、第VIIa因子及びカルシウムイオン源を含んでなる、安定な、トロンビンフリーの、フィブリノーゲンベースの、単一液体製剤の、治療用の生物学的接着剤に関する。
【0021】
鋭意研究の結果、上記の目的の血漿因子及びカルシウムイオン源を含有する、生物組織、損傷又は生体材料における、止血アジュバント、ドレッシング、治癒アジュバント又は塞栓の形成による塞栓剤として利用可能な新規な薬剤(単一製剤の生物学的接着剤)を見出すに至った。
【0022】
「単一製剤」とは、接着剤を構成する目的の3成分の共同使用のことを意味し、それにより単一の液体混合物を形成するものであり、従来技術の二液型接着剤に相対するものである。
【0023】
ゆえにこれらの3成分は各々液体としての適合性(それらの組み合わせ)を有し、それにより単一製剤システムを形成し、フィブリンの準瞬間的な形成が生じない。これらの成分は、凝集プロセスが早期に開始される危険を伴わずに、使用前の少なくとも24時間、その機能を発揮できる状態で、液体溶媒中で各々が存在するため、単一製剤としてのこの液状接着剤は安定といえる。接着剤のこの安定性は、37℃で24時間のインキュベートの間、フィブリンの形成が観察されないという事実により確認されている。
【0024】
損傷又は血管組織上の生物学的接着剤の接触によって、トロンビンがin situで形成されるため、本発明の生物学的接着剤は、損傷又は血管組織に塗布することにより、組織の修復機能を果たす。
【0025】
実際、このin situのトロンビン形成は第VIIa因子によりなされ、それは全ての血漿成分と接触し、外因性又は内因性の凝固経路の進行を活性化する。上記で説明したように、その生物的活性はリン脂質性の内因性の組織因子との相互作用に依存している。活性化された第VII因子と組織因子との複合体は、カルシウムイオンの存在下で、血漿に存在する第X因子を活性化第X因子に変化させる。それは更にプロトロンビンをトロンビン(フィブリノーゲンの存在下でフィブリンを生成させることによって凝血塊を形成する反応に関与する酵素)に変化させる。
【0026】
次いでフィブリンの形成がなされ、それにより、得られた生物学的接着剤の細胞相互間接着性が補強される。その際、リン脂質細胞成分への曝露により、フィブリンは手術により修復中の損傷又は組織において直接に形成される。
【0027】
フィブリノーゲン及びカルシウムイオンは当然血液に存在するが、それらの関与により、従来技術の接着剤と比較して、本発明の生物学的接着剤によって、更に組織の結合の強化、止血の促進が可能となる。これは、本発明の接着剤の顕著な効果である。
【0028】
本発明の生物学的接着剤には、他の多くの効果がある。その有効性は、特に救急時の場合、従来技術の生物学的接着剤を取り扱い、調製する際の欠点を克服するものであり、組織の接着結合能力を高め、瘢痕の形成のdeshience及び二次出血を防止する。通常、結合プロセスは、1分以内で(例えば30秒以内)効果的になされる。
【0029】
例えば、本発明の接着剤は、損傷部位で見られるフィブリンの「塊」又はクラスターの形成を防止するが、それは接着剤の不均質な分布により説明され、おそらくその理由はフィブリンが接着前に形成されるためであると考えられる。形成された瘢痕は更に明白なラインを有し、一方では、例えばフィブリノーゲンの混合物を主成分とする2成分の生物学的接着剤を用いて、第XIII因子の使用により得られた同じ時間における粘着結合と比較し、カルシウム・トロンビン混合物では上記の効果が観察されない。
【0030】
フィブリンの形成が37℃で24時間のインキュベートにおいて観察されないという意味で、調製が容易で、かつ時間経過における安定性が増加している。例えば、室温で少なくとも24時間(特に48時間)、液体として安定である。
【0031】
本発明の範囲内では、従来技術(好ましくは血漿性)のいかなるフィブリノーゲン及びFVIIaも上記接着剤の調製に適しているが、但し、液体として得られる接着剤のカルシウムイオンと適合性を有し、すなわち、特に使用の24時間前に、それらの接触によってフィブリノーゲンのフィブリンへの凝固が生じない。実際、両方の有効成分(フィブリノーゲン及びFVIIa)は、残余のトロンビン(FIIa)の欠如に加えて、凝固因子が欠如していなければならず、さもないと、カルシウムイオンの存在下で内因性若しくは外因性の凝固カスケードが活性化する。かかる凝固因子は、第II因子(FII)及びFXであり、好ましくはプロトロンビン因子(因子II、VII、IX及びX)である。
【0032】
例えば、フィブリノーゲンの最大許容できるFII及びFXの含有量は、各々約0.1IU/gのフィブリノーゲンである。
【0033】
好ましくは、接着剤中のフィブリノーゲン及びFVIIaは、予め活性化した血漿に由来するものではない。
【0034】
フィブリノーゲン(好ましくはウイルス的に安全な)は、従来技術のあらゆる方法によって血漿から単離してもよい。出願人による仏国特許第0305243号に記載されている方法、又は仏国特許第0506640号を修飾した方法により、フィブリノーゲンを濃縮してもよい。トランスジェニックによるフィブリノーゲンを用いてもよい。
【0035】
第XIII因子(好ましくはウイルス的に安全な)は、あらゆる従来技術の方法により血漿から単離してもよく、好適には、血漿の分画の間、フィブリノーゲンを伴うタンパク質を形成させる。この場合、仏国特許第0506640号に記載されている方法の応用が好適である。トランスジェニックによる第XIII因子を用いてもよい。
【0036】
特に濃縮物としての、好ましくはウイルス的に安全な第VIIa因子の調製も公知である。例えば、仏国特許第346241号を参照。組換え(Novo)又はトランスジェニックによる第VIIa因子を用いてもよい。
【0037】
しかしながら、上記のように、これらの有効成分は、特に特定の他の血漿因子の存在に関して所定の純度基準を満たさなければならない。
【0038】
好ましくは、本発明の接着剤は更に第XIII因子を含んでなる。第XIII因子の外因の供給により、フィブリンネットワークのクロスリンク形成、及びそれによる凝固力及び治癒ポテンシャルを促進する。
【0039】
第XIII因子(特に濃縮された、好ましくはウイルス的に安全)は、従来技術の方法により単離でき、好適には血漿の分画の間、フィブリノーゲンを伴うタンパク質を形成させる。この場合、仏国特許第0506640号に記載されている方法の応用が好適である。トランスジェニックによる第XIII因子を用いてもよい。
【0040】
本発明の接着剤は、2つの利用可能な有効成分(フィブリノーゲン及びFVIIa)及びカルシウムイオンを調製することにより、工業的規模で製造できる。
【0041】
好ましくは、本発明の接着剤は、フィブリノーゲン、FVIIa及びカルシウムイオンのみを有効成分として含有する混合物を含んでなる。これらの3成分のみからなる上記接着剤は、2つの生物学上活性の成分を必要とするだけである点で有利であり、特に、有効かつ最小限の有効成分のみが必要となるため、工業的規模における接着剤の調製コストが低減される。
【0042】
接着剤の構成成分は有効量で存在し、それにより接着剤は治療目的にかなう効果を奏する。
【0043】
しかしながら、両方の有効成分、及びカルシウムイオンの含有が特異的に選択されるときに、上記の所望の効果が最も有効に得られることに留意すべきである。
【0044】
ゆえに、生物学的接着剤は好ましくは、60〜120mg/mL、好適には80〜100mg/mLのフィブリノーゲンを含有する。例えば傷害性組織中では、接着剤のかかるフィブリノーゲン含有が最少の場合でも有効な接着結合を提供し、それにより、特に従来技術の二液型接着剤で125g/cm以上として、接着結合の引裂耐性を示す。
【0045】
好ましくは、50〜500IU/mL、好適には70〜300IU/mL、特に好適には80〜120IU/mLの第VIIa因子、及び4〜30μmole/mL、より好適には8〜20μmole/mLのカルシウムイオン源を含んでなる。
【0046】
第XIII因子は30IU/mL〜700IU/mL、特に好適には100IU/mL〜400IU/mLの量で存在する。
【0047】
濃度及び活性は、最終的な液体状の生物学的接着剤溶液の1mLあたりの数値である。かかる溶液は、好適には凍結乾燥させた成分の再調製によって得られる。上記のように、好ましくはかかる濃度で存在するこれらの血漿因子は、所望の機能性を本発明の生物学的接着剤付与するものである。
【0048】
カルシウムイオン源は水溶性成分であり、臨床用途と適合性を有し、好ましくは、これらの成分は無機塩(例えば塩化カルシウム(CaCl))又はグルコン酸カルシウムである。
【0049】
上記のように、本発明の生物学的接着剤は、使用する全ての成分が均質に混合された、即時使用可能な液体状態である。凍結形態であってもよいが、それにより、解凍後に生じがちなフィブリンの形成の危険性を伴わずに、少なくとも2年間この形態で長期貯蔵が可能となる。単純に室温で再融解するだけで、接着剤を充分に利用することが可能となる。
【0050】
本発明はまた、上記のように第VIIa因子及びカルシウムイオン源を含み、長期の貯蔵に適する凍結乾燥形態の治療用の、トロンビンフリーの、フィブリノーゲンベースの生物学的接着剤の提供に関する。周知の凍結乾燥技術を適用して、液体状態の接着剤を調製してもよい。かかる接着剤の調製は、有効成分とカルシウムイオン源を含有する凍結乾燥させた生成物と、生物学的適合性を有する溶媒又は水性溶媒との単純な混合による再調製のみが必要であるという決定的な利点を有し、安定な液状接着剤を得るために、その使用前にこの調製を行うのが好適である。更に、かかる凍結乾燥させた接着剤は、フィブリンの形成の危険性を生じさせることなく、再調製の後、室温で少なくとも2年間保存することもできる。その後、この接着剤の使用を必要とする患者の身体の部位に塗布して用いる。
【0051】
本発明はまた、凍結乾燥させたフィブリノーゲン血漿因子のバッチ、凍結乾燥させたFVIIa血漿因子のバッチ、粉末状のカルシウムイオン源のバッチ及び水性溶媒を含んでなるパッケージ手段を含んでなる、本発明に係る生物学的接着剤を調製するためのキットにも関する。
【0052】
特にかかるキットには、乾燥形態の個々の3つのバッチ(各々本発明の接着剤を構成する成分の1つを含む)が包含されている。実際、必要に応じて、生物学的適合性を有する溶媒又は水性溶媒(例えば注射可能な純水(PPI))のバッチを吸収し、容易に溶解する濃縮された中間物質を用いて、本発明の安定液体生物学的接着剤を得てもよい。かかるキットを構成することによる効果は、再調製の後にフィブリンの形成が観察されることなく、室温で少なくとも2年間、異なる3つの成分のバッチを長期貯蔵でき、更に単にそれらを溶解させることによって安定な、液体状の生物学的接着剤が得られるということである。
【0053】
実際、パッケージ手段は、接着剤の成分を保存し、更に接着剤の使用の前に接着剤を調製するための手段として機能する。更に好適には、接着剤の少なくとも3つの異なる成分に関して、好適には各々につき少なくとも1つの容器を更に含んでなる。各容器は1つの成分を受容し、更に水性溶媒中に溶解させるために用いる。容器は、様々なガラスタイプ材料、及び生物学的適合性を有するポリマー製のフラスコであってもよい。
【0054】
好ましくは、パッケージング手段は、好適には少なくとも3つの成分を含有する単一の容器である。かかるパッケージは、全成分を単純に溶解させ、即時使用できる液状接着剤を直接的に調製できるという利点がある。
【0055】
好適には、キットはまた、水性溶媒で上記のバッチを溶解して調製した後に、液状接着剤を保持する手段を含んでなる。かかる手段として例えば適切な容量のシリンジ(接着剤の投与量に応じて、通常は2mm、好適には1mm未満の直径のニードルを有するもの)、あるいは従来公知のカテーテルが挙げられる。
【0056】
好ましくは、上記のキットは、前記凍結乾燥させた血漿因子のバッチの2成分バッチ、及び粉末状のカルシウムイオン供給源のバッチの混合物を含んでなる。ゆえにこのキットは、一方では本発明のフィブリノーゲン及びFVIIa血漿因子のバッチの凍結乾燥混合物を含んでなり、一方では粉末状のカルシウムイオン供給源のバッチ(凍結乾燥形態であってもよい)を含んでなり、それらは使用直前に、単に一緒にそれらを混合し、更にPPI水のような水性溶媒と混合して用いるだけでよい。あるいは、当該キットは、血漿因子のバッチの凍結乾燥混合物と、水溶液としてのカルシウムイオン供給源バッチを含んでなってもよい。
【0057】
好ましくは、本発明のキットは、凍結乾燥させたフィブリノーゲン又はFVIIa血漿因子の各バッチ、又は前記凍結乾燥させた血漿因子のバッチ混合物の2成分バッチが、薬学的に許容できる凍結乾燥安定剤の成分を含むという特徴も有する。同じことは、凍結乾燥させた生物学的接着剤にあてはまる。
【0058】
実際、血漿因子を凍結乾燥させた各々の生成物は、血漿因子又はこれらの各々の因子を含有する濃縮液又は溶液を凍結乾燥することにより得られ、それは従来技術によって行ってもよく、又は好適には出願人による仏国特許出願0402001号にて説明したように、凍結乾燥安定剤を含有させて行ってもよい。この場合、安定化剤は好適にはアルギニン、少なくとも1つの疎水性アミノ酸及びクエン酸三ナトリウムの混合物であり、グリシン及び/又はリジンを更に添加してもよい。好適には、各々の添加物の、濃縮タンパク質液1リットルあたりの濃度は、以下の通りである:
・アルギニン(米国特許第5399670号参照):25〜50g/L、好ましくは35〜45g/L、
・クエン酸三ナトリウム:0.5〜約12g/L
・ロイシン、イソロイシン又はそれらの混合物:5〜15g/L、好ましくは9〜11g/L、
・グリシン及び/又はリジン:各々1〜5g/L、好ましくは各々1.5〜2.5g/L。
【0059】
安定化剤には、必要に応じて公知の安定化アジュバントを含有させてもよい。
【0060】
したがって、本発明はまた、生物学的適合性を有する水性溶媒中で、前記キット中の3つのバッチを再調製し、更に必要に応じて凍結させることにより、本発明に係る生物学的接着剤を調製するための、上記キットの使用に関する。
【0061】
本発明はまた、上記の生物学的接着剤の薬剤としての使用にも関する。その場合は、接着剤を凍結形態で保存しておき、使用前にそれを溶解させるだけで十分である。凍結乾燥させた接着剤の場合、生物学的適合性を有する水性溶媒で再調製することにより、所望の効果を発揮させることができる。
【0062】
ゆえに本発明の生物学的接着剤は、止血及び/又は傷害を受けた生物組織(例えば外科手術を受けた皮膚又は器官(脾臓、肝臓、肺、腸その他))治癒を目的とする薬剤の調製に用いられる。かかる組織としては、上記したように、血管組織又は出血損傷などが挙げられ、凝固カスケードのために必要な全ての因子が存在する限り、出血が非常に低く抑えられる。上記接着剤は、血漿の存在下で、例えば軟骨、コラーゲン、骨及び骨粉からなる群から選択される結合組織における、傷害を受けた組織の治療用薬剤を調製するために用いることもできる。
【0063】
更に、血漿の存在下で、ポリ乳酸又はアルギン酸塩からなる群から選択される生体材料を結合させることを目的とする薬剤の調製にも使用できる。したがって血漿の存在は、血漿因子が外因的に供給される特定のケースにおいて凝固カスケードを開始させるために必要とされる。好ましくは、適合性を有するか、若しくは自己由来の血漿である。この供給は、特に口腔病学又は歯科学の従来の外科手術において実施されうる。
【0064】
生物組織は、培養され、分化した幹細胞に由来してもよい。
【0065】
本発明の接着剤は通常外用薬、すなわち上記の通りの損傷又は他の損傷への(特に局所投与用の)ドレッシングであるが、当該薬剤は適切なゼラチンカプセルであってもよく、それは胃腸内で消化耐性があってもなくてもよく、その中に生物学的接着剤が乾燥形態で存在し、摂取された後に消化器官の出血の治療に供される。
【0066】
本発明の接着剤は少なくとも24時間安定であり、それにより流動性が維持され、またそれにより腫瘍標的の栄養血管を塞栓することを目的とする薬剤の調製にも使用することができる。これは好適には、これらの腫瘍標的まで従来のカテーテルを使用して非経口投与され、それにより腫瘍を「枯渇」させる。
【0067】
接着剤を用いることにより、マイクロサージャリ(サンプリング、生検、ポリープ切除その他)による内視鏡システムで止血させてもよい。
【0068】
顕微鏡下の手術(例えば眼科的処置)の場合、本発明の接着剤の流動性は、特にその安定性により、通常は1mm未満の直径、特に好適には0.5mm未満の直径の細針によっても使用可能となる。
【0069】
以下の実施例で本発明を説明するが、本発明はその範囲に限定されない。
【実施例】
【0070】
本発明の生物学的粘着性の試料(サンプルA)2mL(80mg/mLの塩化カルシウム、100IU/mLの第VIIa因子及び5μmole/mLの濃度のフィブリノーゲンを含む)を調製し、一個のシリンジに充填した。
【0071】
また従来技術の標準的な生物学的接着剤(サンプルB)も調製した。1つは80mg/mLの濃度のフィブリノーゲン、及び100IU/mLの第XIII因子を含んでなる混合物B1を、もう1つは500IU/mLのカルシウム・トロンビン混合物を含んでなるB2から構成される接着剤である。それぞれの混合物B1及びB2を2つの異なるシリンジに充填し、それの端部において混合物B1及びB2が混合されるような、一本の針を含む態様で配置した。
【0072】
麻酔したウサギを開腹手術した。肝臓を露出させ、当該器官の第1の切開を行い、このセクションにおける出血を生じさせた。湿布で過剰の血液を軽く拭い取った後、生物学的粘着剤のサンプルBを、B1及びB2の同種の混合物が1つの針によって調製されうるように、両方のシリンジの内容物を同時に射出させ、上記で切開したセクションに直接投与した。損傷のバンクを30秒間固定し、生物学的接着剤を固まらせた。
【0073】
治癒後、形成された瘢痕が不規則であり、目視できるフィブリンが「塊」を形成しているのが観察された。おそらく接着前に形成されるフィブリンのため、これらのクラスターが不均質となったためであると考えられる。
【0074】
第2の切開を、上記と同じ方法で、外科的に治療された肝臓の他の部位で実施した。本発明の生物学的粘着性のサンプルA(一個のシリンジに含まれる)を切開したセクションに塗布し、損傷のバンクを35秒間固定し、生物学的接着剤を固まらせた。
【0075】
治癒後、形成された瘢痕は明白なラインを有し、いかなるdeshienceにも耐性を示した。過剰なフィブリンの痕跡が観察されず、すなわち過剰な接着剤が手術による損傷がない(組織因子が存在しない)場合、凝固しなかったことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロンビンを含まない、フィブリノーゲンベースの、安定な、単一液体製剤の、治療用の生物学的接着剤であって、VIIa因子及びカルシウムイオン源を含有する生物学的接着剤。
【請求項2】
フィブリノーゲン、FVIIa及びカルシウムイオンのみの混合物からなる、請求項1記載の生物学的接着剤。
【請求項3】
最終的な液体状の生物学的接着剤溶液に含まれるフィブリノーゲン含有量が60〜120mg/mLである、請求項1又は2記載の生物学的接着剤。
【請求項4】
最終的な液体状の生物学的接着剤溶液に含まれるフィブリノーゲン含有量が80〜100mg/mLである、請求項3記載の生物学的接着剤。
【請求項5】
最終的な液体状の生物学的接着剤溶液中に含まれる活性化第VII因子が、1mLあたり50〜500IU(50−500IU/mL)である、請求項1から4のいずれか1項記載の生物学的接着剤。
【請求項6】
70〜300IU/mLの活性化第VII因子が含まれる、請求項5記載の生物学的接着剤。
【請求項7】
最終的な液体状の生物学的接着剤溶液中に含まれるカルシウムイオン源が、4〜30μmole/mLの濃度である、請求項1から6のいずれか1項記載の生物学的接着剤。
【請求項8】
前記カルシウムイオン源が、8〜20μmole/mLの濃度である、請求項7記載の生物学的接着剤。
【請求項9】
第XIII因子を更に含んでなる、請求項1から8のいずれか1項記載の生物学的接着剤。
【請求項10】
最終的な液体状の生物学的接着剤溶液中に含まれる前記第XIII因子が、1mLあたり100IU〜400IU(100IU/mL〜400IU/mL)である、請求項9記載の生物学的接着剤。
【請求項11】
長期の貯蔵に適した冷凍形態である、請求項1から10のいずれか1項記載の生物学的接着剤。
【請求項12】
トロンビンを含まない、フィブリノーゲンベースの治療用の生物学的接着剤であって、請求項1から11のいずれか1項記載の第VIIa因子及びカルシウムイオン源を含み、長期の貯蔵に適する凍結乾燥形態である、生物学的接着剤。
【請求項13】
薬学的に許容できる凍結乾燥安定剤としての成分、好ましくはアルギニン、少なくとも1つの疎水性アミノ酸及びクエン酸三ナトリウムの混合物を含んでなる、請求項12記載の生物学的接着剤。
【請求項14】
凍結乾燥させたフィブリノーゲン血漿因子のバッチ、凍結乾燥させたFVIIa血漿因子のバッチ、粉末状のカルシウムイオン源のバッチ、及び水性溶媒を含んでなるパッケージング手段を含んでなる、請求項1から11のいずれか1項記載の生物学的接着剤の調製用のキット。
【請求項15】
前記パッケージング手段が、接着剤の少なくとも3つの異なる成分に関して各々少なくとも1つの容器を更に含んでなる、請求項14記載のキット。
【請求項16】
前記パッケージング手段が少なくとも3つの成分を含有する単一の容器である、請求項14又は15記載のキット。
【請求項17】
前記水性溶媒を用いて前記バッチを溶解させることにより調製した、液状の接着剤を保持する手段を含んでなる、請求項14から16のいずれか1項記載のキット。
【請求項18】
前記凍結乾燥させた血漿因子バッチの混合物の2成分バッチと、粉末状のカルシウムイオン源バッチとを含む、請求項14から17のいずれかに1項記載のキット。
【請求項19】
凍結乾燥させたフィブリノーゲン又はFVIIa血漿因子の各バッチ、又は前記凍結乾燥させた血漿因子のバッチの混合物の2成分バッチが、薬学的に許容できる凍結乾燥安定剤の成分を含んでなる、請求項14から18のいずれか1項記載のキット。
【請求項20】
前記安定剤の成分が、アルギニン、少なくとも1つの疎水性アミノ酸及びクエン酸三ナトリウムの混合物である、請求項19記載のキット。
【請求項21】
生物学的適合性を有する水性溶媒中で、前記キット中の3つのバッチを再調製し、更に必要に応じて凍結させることにより、請求項1から12のいずれか1項記載の生物学的接着剤を調製するための、請求項14から20のいずれか1項記載のキットの使用。
【請求項22】
薬剤として使用するための、請求項1から13のいずれか1項記載の生物学的接着剤。
【請求項23】
止血及び/又は傷害を受けた生物組織の治癒を目的とする薬剤の調製のための、請求項1から13のいずれか1項記載の生物学的接着剤の使用。
【請求項24】
前記傷害を受けた組織が、血管組織又は出血損傷である、請求項23記載の使用。
【請求項25】
前記傷害を受けた組織が、外科的に手術できるあらゆる皮膚又は器官である、請求項23又は24記載の使用。
【請求項26】
前記薬剤は、前記生物学的接着剤が乾燥形態にある局所投与用の塗り薬であるか、又はゼラチンカプセルである、請求項23から25のいずれか1項記載の使用。
【請求項27】
傷害を受けた、軟骨、コラーゲン、骨及び骨粉からなる群から選択される組織を治療することを目的とする薬剤の調製への、血漿及び請求項1から13のいずれか1項記載の生物学的接着剤の使用。
【請求項28】
アルギン酸塩又はポリ乳酸からなる群から選択される生体材料を結合させることを目的とする薬剤の調製への、血漿及び請求項1から13のいずれか1項記載の生物学的接着剤の使用。
【請求項29】
標的腫瘍の栄養血管において塞栓形成させることを目的とする薬剤の調製への、請求項1から13のいずれか1項記載の生物学的接着剤の使用。

【公開番号】特開2013−75906(P2013−75906A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−279119(P2012−279119)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2008−545045(P2008−545045)の分割
【原出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(508168815)ラボラトワール フランセ デュ フラクションヌメント エ デ バイオテクノロジーズ ソシエテ アノニム (5)
【Fターム(参考)】