説明

トンネルなどの地中構造物の上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際の施工管理方法

【課題】 トンネルなどの地中構造物の上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際、発泡ウレタンを空隙全体に行き渡らせることができたか否かを容易かつ確実に確認することができる施工管理方法を提供すること。
【解決手段】 熱電対を空隙の上部に位置せしめ、構造物に設けた注入孔から発泡ウレタン液を空隙に注入してこれをその内部で発泡させ、発泡時における発熱を熱電対が感知したことをもって空隙の上部にまで発泡ウレタンが充填されたことを確認することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルなどの地中構造物の上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際の施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトンネルが建設された後、その上方に周囲地山との間で空隙が発生する場合がある。空隙が発生する理由は、建設時の余掘や供用後の湧水の影響など様々であるが、空隙を放置しておくとトンネルの肌面を剥落させるといった危険があるため、空隙に充填材を充填して補修を行う必要が生じる。近年、このような場合に使用する充填材として発泡ウレタンが注目されている(例えば特許文献1を参照のこと)。発泡ウレタンは、例えばポリオールとイソシアネートを混合して調製される発泡ウレタン液を発泡させることによって形成されるものである。従って、トンネルの上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填しようとした場合、トンネルの内側から覆工背面に存在する空隙に発泡ウレタン液を上向きに注入し、これを空隙の内部で発泡させることになるが、空隙への発泡ウレタン液の注入量が少ないと、空隙の上部にまで発泡ウレタンが行き渡らず、空隙が残存してしまうことになり、補修が不完全な結果に終わってしまう。従って、発泡ウレタンを空隙全体に行き渡らせることができたか否かを容易かつ確実に確認するための施工管理方法が必要とされている。しかしながら、覆工背面に存在する空隙の内部における発泡ウレタンの充填の程度をトンネルの内側から把握することは困難であることから、そのような方法は未だ提案されるには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−33697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、トンネルなどの地中構造物の上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際、発泡ウレタンを空隙全体に行き渡らせることができたか否かを容易かつ確実に確認することができる施工管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、発泡ウレタン液の発泡時における発熱反応に着目し、空隙の内部における発泡ウレタンの発熱を熱電対で感知することで、発泡ウレタンを空隙全体に行き渡らせることができたか否かを容易かつ確実に確認する方法を見出した。
【0006】
即ち、本発明のトンネルなどの地中構造物の上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際の施工管理方法は、請求項1記載の通り、熱電対を空隙の上部に位置せしめ、構造物に設けた注入孔から発泡ウレタン液を空隙に注入してこれをその内部で発泡させ、発泡時における発熱を熱電対が感知したことをもって空隙の上部にまで発泡ウレタンが充填されたことを確認することを特徴とする。
また、請求項2記載の施工管理方法は、請求項1記載の施工管理方法において、熱電対を先端に取り付けた棒状部材を構造物に設けた検査孔から空隙の内部に挿入することによって熱電対を空隙の上部に位置せしめることを特徴とする。
また、請求項3記載の施工管理方法は、請求項1または2記載の施工管理方法において、熱電対が100℃以上の温度を感知したことをもって空隙の上部にまで発泡ウレタンが充填されたことを確認することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トンネルなどの地中構造物の上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際、発泡ウレタンを空隙全体に行き渡らせることができたか否かを容易かつ確実に確認することができる施工管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の施工管理方法の一実施形態の概念図である。
【図2】本発明の施工管理方法における熱電対による感知温度のモニタリングパターンの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のトンネルなどの地中構造物の上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際の施工管理方法は、熱電対を空隙の上部に位置せしめ、構造物に設けた注入孔から発泡ウレタン液を空隙に注入してこれをその内部で発泡させ、発泡時における発熱を熱電対が感知したことをもって空隙の上部にまで発泡ウレタンが充填されたことを確認することを特徴とするものである。
【0010】
以下、トンネルの上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際の施工管理方法の一実施形態を、図1を用いて説明する。まず、熱電対を先端に取り付けた例えば金属製の棒状部材を、コンクリート製のトンネル天井壁に設けた検査孔から空隙の内部に挿入し、熱電対を空隙の上部に位置付ける。次に、天井壁に設けた2つの注入孔から発泡ウレタン液を空隙に注入してこれをその内部で発泡させる。空隙に発泡ウレタン液を注入し続けると、発泡ウレタンは空隙の下部から次第に充填され、最終的に上部まで到達すると、熱電対が発泡ウレタンに包囲されてその発熱を感知する。従って、熱電対の感知温度をモニタリングすることで、発泡ウレタンが空隙の上部にまで充填されたことを確認することができる。空隙の上部にまで発泡ウレタンが充填されたことを確認できた後は、空隙への発泡ウレタン液の注入を終了するとともに、熱電対を先端に取り付けた棒状部材を検査孔から引き抜き、注入孔と検査孔を例えば無収縮性モルタルで閉塞して施工を完了する。図2は熱電対による感知温度のモニタリングパターンの一例である。熱電対が感知する発泡ウレタンの発熱温度は発泡ウレタンの種類によって相違があるが、通常、100℃以上である(120〜160℃のものが多い)。図2においては、A点における感知温度の急激な上昇をもって、空隙の上部にまで発泡ウレタンが充填されたことを確認することができる。
【0011】
本発明の施工管理方法を採用することができる発泡ウレタンとしては、例えば発泡時に100℃以上の発熱を生じるものが挙げられる。発泡ウレタンは、地球温暖化を引き起こすことなく環境に優しいノンフロン系発泡ウレタンが望ましい。ノンフロン系発泡ウレタンとしては、ポリオールとイソシアネートから調製される硬質の発泡ウレタンなどが挙げられる(具体的には日本パフテム株式会社のノンフロンポリオールFF5020−UCと同社のイソシアネートNP−90の組み合わせが例示される)。このような発泡ウレタンを用いる場合、施工現場において、ポリオールとイソシアネートを1:0.8〜1.5の重量割合で20℃〜70℃にて要時混合して攪拌し、発泡ウレタン液として空隙に注入する。
【0012】
熱電対を先端に取り付けた棒状部材の中間部に1個以上の熱電対をさらに取り付けてもよい。熱電対を中間部に取り付けることで、その熱電対でもって発泡ウレタンの充填の過程(程度)を知ることができる。また、空隙への発泡ウレタンの充填を多段階で行う場合に各段階における充填の目安とすることもできる。
【0013】
なお、以上の説明は、熱電対を空隙の上部に位置せしめる方法として熱電対を先端に取り付けた棒状部材を構造物に設けた検査孔から空隙の内部に挿入する方法を採用した場合を例にとって行ったが、熱電対を空隙の上部に位置せしめる方法はこの方法に限定されるものではなく、空隙の上面に熱電対を取り付ける方法を採用してもよい。
【0014】
また、以上の説明は、地中構造物としてトンネルを例にとって行ったが、地中構造物はトンネルに限定されるものではなく、大型ボックスカルバートや大口径ヒューム管などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、トンネルなどの地中構造物の上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際、発泡ウレタンを空隙全体に行き渡らせることができたか否かを容易かつ確実に確認することができる施工管理方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルなどの地中構造物の上方に発生した空隙に発泡ウレタンを充填する際の施工管理方法であって、熱電対を空隙の上部に位置せしめ、構造物に設けた注入孔から発泡ウレタン液を空隙に注入してこれをその内部で発泡させ、発泡時における発熱を熱電対が感知したことをもって空隙の上部にまで発泡ウレタンが充填されたことを確認することを特徴とする施工管理方法。
【請求項2】
熱電対を先端に取り付けた棒状部材を構造物に設けた検査孔から空隙の内部に挿入することによって熱電対を空隙の上部に位置せしめることを特徴とする請求項1記載の施工管理方法。
【請求項3】
熱電対が100℃以上の温度を感知したことをもって空隙の上部にまで発泡ウレタンが充填されたことを確認することを特徴とする請求項1または2記載の施工管理方法。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−41697(P2012−41697A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182382(P2010−182382)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(504424454)アップコン株式会社 (4)
【出願人】(501381837)株式会社ジオデザイン (1)
【Fターム(参考)】