説明

トンネルの覆工コンクリートの養生方法及びこれに用いる養生装置

【課題】トンネルの覆工コンクリートの養生のための透水性マットから垂れた水の前記トンネルの外への排出に要する費用の低減を可能にし、かつ、前記透水性マットの給水源への接続に要する手間や時間を減らして前記覆工コンクリートの効率的な養生を可能にすること。
【解決手段】トンネルの覆工コンクリートの養生のための養生装置は、前記トンネルの軸線方向に移動可能な台車と、該台車の上にあって昇降可能なフレームと、該フレームに支持され、内部に吸水材が配置された透水性マットとを含む。トンネルの覆工コンクリートの養生方法は、内部に吸水材が配置された透水性マットを用意すること、該透水性マットを前記覆工コンクリートに密着させること、前記透水性マットに給水すること、前記透水性マットへの給水を停止すること、前記透水性マットの前記覆工コンクリートへの密着を維持することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの覆工コンクリートの養生方法及びこれに用いる養生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの覆工コンクリートの乾燥を防止するため、前記覆工コンクリートの養生を行う。従来、前記覆工コンクリートの養生のための養生装置には、昇降可能な台車と、該台車に固定されたフレームと、該フレームに支持された透水性マットとを含むものがある(特許文献1参照)。
【0003】
前記覆工コンクリートの養生を行うとき、まず、前記トンネルの中に前記養生装置を配置する。次に、前記透水性マットが前記覆工コンクリートに密着されるように前記台車を上昇させる。その後、前記透水性マットを給水源に接続し、該給水源から前記透水性マットに水を供給する。これにより、前記透水性マットから前記覆工コンクリートに水を与えることができ、前記覆工コンクリートの乾燥を防止することができる。
【0004】
前記覆工コンクリートの養生後、前記透水性マットへの給水を停止し、前記透水性マットの給水源への接続を解除する。次に、前記透水性マットの前記覆工コンクリートへの密着が解除されるように前記台車を下降させる。その後、前記透水性マットがその切羽側へ移動されるように前記台車を前記トンネルの軸線方向に移動させる。その後、既に養生がされた覆工コンクリートの切羽側に位置する覆工コンクリートの養生を行う。このようにして前記透水性マットの移動と前記覆工コンクリートの養生とを繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−231517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、仮に、前記覆工コンクリートの養生中に前記透水性マットへの給水を停止した場合、前記透水性マットは乾燥し、該透水性マットから前記覆工コンクリートに水を与えることはできない。このため、前記覆工コンクリートの養生中、前記透水性マットへの給水を継続しなければならない。前記透水性マットへの給水を継続することにより、前記透水性マットから多量の水が垂れる。このため、前記透水性マットから垂れた水を前記トンネルの外へ排出するために多くの費用を要する。
【0007】
前記覆工コンクリートの養生中に前記透水性マットへの給水を継続しなければならないため、前記透水性マットの移動毎に前記透水性マットの前記給水源への接続をしなければならない。このため、前記透水性マットの前記給水源への接続に多くの手間や時間を要し、前記覆工コンクリートの養生を効率的に行うことができない。
【0008】
本発明の目的は、トンネルの覆工コンクリートの養生のための透水性マットから垂れた水の前記トンネルの外への排出に要する費用の低減を可能にし、かつ、前記透水性マットの給水源への接続に要する手間や時間を減らして前記覆工コンクリートの効率的な養生を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記透水性マットの内部に吸水材が配置されており、前記透水性マットへの給水時に前記吸水材が水を吸い取ることにより前記透水性マットがその内部に水を保持できるようにし、前記透水性マットへの給水を止めても前記透水性マットから前記覆工コンクリートに水を与えられるようにする。これにより、前記透水性マットから垂れる水の量を減らし、前記透水性マットから垂れた水の前記トンネルの外への排出に要する費用を低減する。また、前記透水性マットの移動毎に前記透水性マットの前記給水源への接続をする必要がないようにし、前記透水性マットの給水源への接続に要する手間や時間を減らす。
【0010】
本発明に係る、トンネルの覆工コンクリートの養生のための養生装置は、前記トンネルの軸線方向に移動可能な台車と、該台車の上にあって昇降可能なフレームと、該フレームに支持され、内部に吸水材が配置された透水性マットとを含む。
【0011】
前記覆工コンクリートの養生を行うとき、まず、前記トンネルの中に前記養生装置を配置し、次に、前記透水性マットが前記覆工コンクリートに密着されるように前記フレームを上昇させる。その後、前記透水性マットを給水源に接続し、該給水源から前記透水性マットに給水する。その後、前記透水性マットへの給水を停止し、前記透水性マットの前記覆工コンクリートへの密着を維持する。
【0012】
前記透水性マットへの給水の停止後、前記透水性マットは時間の経過とともに乾燥し始める。前記透水性マットが乾燥し始めると、前記吸水材から水が排出される。これにより、前記透水性マットへの給水の停止後においても、前記透水性マットを湿潤状態に維持することができ、前記透水性マットから前記覆工コンクリートに水を与えることができ、前記覆工コンクリートの乾燥を防止することができる。前記透水性マットへの給水を停止することにより、前記透水性マットから垂れる水の量を減らすことができ、前記透水性マットから垂れた水の前記トンネルの外への排出に要する費用を低減することができる。
【0013】
前記覆工コンクリートの養生後、前記透水性マットの給水源への接続を解除する。その後、前記透水性マットの前記覆工コンクリートへの密着が解除されるように前記フレームを下降させ、前記透水性マットがその切羽側へ移動されるように前記台車を前記トンネルの軸線方向に移動させる。その後、既に養生がされた覆工コンクリートの切羽側に位置する覆工コンクリートの養生を行う。このようにして前記透水性マットの移動と前記覆工コンクリートの養生とを繰り返す。
【0014】
前記透水性マットへの給水の停止後においても前記透水性マットから前記覆工コンクリートに水を与えることができるため、前記透水性マットを移動させる度に前記透水性マットの前記給水源への接続をする必要はない。このため、前記透水性マットの前記給水源への接続に要する手間や時間を減らすことができ、前記覆工コンクリートの養生を効率的に行うことができる。
【0015】
前記透水性マットは、第1水平方向に間隔を置かれた2つの第1部分と、該第1部分の間にある第2部分とを有し、該第2部分の内部に、前記第1水平方向と直交する第2水平方向に伸びる管が配置されており、前記管は、該管の各側部に設けられた少なくとも1つの放水用の貫通穴を有する。
【0016】
本発明に係る、トンネルの覆工コンクリートの養生方法は、内部に吸水材が配置された透水性マットを用意する第1ステップと、前記透水性マットを前記覆工コンクリートに密着させる第2ステップと、前記透水性マットに給水する第3ステップと、前記透水性マットへの給水を停止する第4ステップと、前記透水性マットの前記覆工コンクリートへの密着を維持する第5ステップとを含む。
【0017】
前記養生方法は、前記第5ステップの後に、前記透水性マットの内部に含まれている水の量を調査する第6ステップと、前記水の量に応じて前記透水性マットに給水するか否かを決定する第7ステップと、前記第7ステップにおいて前記透水性マットに給水することを決定した場合に前記第3ステップから前記第5ステップまでを行うこと、前記第7ステップにおいて前記透水性マットに給水しないことを決定した場合に前記第5ステップを行うことを含む。
【0018】
ところで、前記吸水材に吸い取られた水のほぼ全部が前記吸水材から排出されると、前記透水性マットが乾燥しても前記吸水材から水が排出されなくなり、前記透水性マットを湿潤状態に維持できなくなり、前記透水性マットから前記覆工コンクリートに水を与えることができなくなる。前記透水性マットの内部に含まれている水の量を調査し、該水の量に応じて前記透水性マットに給水するか否かを決定することにより、前記透水性マットから前記覆工コンクリートに水を与えることができる程度に前記透水性マットの内部に十分な量の水が含まれていないときにのみ前記透水性マットへの給水をすることができる。これにより、前記透水性マットの乾燥を防止しつつ、前記透水性マットへの給水を過度に行わないようにすることができ、前記透水性マットへの給水を適切に行うことができる。
【0019】
前記養生方法は、前記第1ステップにおいて、前記トンネルの軸線方向に移動可能な台車と、該台車の上にあって昇降可能なフレームと、該フレームに支持された前記透水性マットとを含む養生装置を用意すること、前記第3ステップの前に前記養生装置の重量を測定して第1測定値を得ること、前記第5ステップの後、前記第6ステップの前に前記養生装置の重量を測定して第2測定値を得ること、前記第6ステップにおいて前記第1測定値と前記第2測定値との差を求めることを含むものとすることができる。
【0020】
ところで、一般に、作業員が前記透水性マットに接近することは難しく、前記作業員が前記透水性マットの湿潤状態を目視により又は手で触って確認することは困難である。前記水の量の調査を前記養生装置の重量の測定により行うため、前記作業員は、前記透水性マットに接近することなく、前記透水性マットの湿潤状態を知ることができる。
【0021】
前記養生方法は、前記第1ステップにおいて、前記トンネルの軸線方向に移動可能な台車と、該台車の上にあって昇降可能なフレームと、該フレームに支持された前記透水性マットとを含み、該透水性マットの一部分が他の部分から取外し可能である養生装置を用意すること、前記第3ステップの前に前記透水性マットの前記一部分を前記他の部分から取り外すこと、前記透水性マットの前記一部分の重量を測定して第1測定値を得ること、前記第3ステップの前に前記透水性マットの前記一部分を前記他の部分に取り付けること、前記第5ステップの後、前記第6ステップの前に前記透水性マットの前記一部分を前記他の部分から取り外すこと、前記透水性マットの前記一部分の重量を測定して第2測定値を得ること、前記第6ステップにおいて前記第1測定値と前記第2測定値との差を求めることを含むものとすることができる。
【0022】
前記透水性マットは、第1水平方向に間隔を置かれた2つの第1部分と、該第1部分の間にある第2部分とを有し、該第2部分の内部に、前記第1水平方向と直交する第2水平方向に伸びる管が配置されており、前記管は、該管の各側部に設けられた少なくとも1つの放水用の貫通穴を有し、前記養生方法は、前記第2ステップにおいて前記透水性マットを、前記第1部分及び前記第2部分がそれぞれ前記トンネルの側壁部及びアーチ部に配置されるように前記覆工コンクリートに密着させること、前記第3ステップにおいて、前記貫通穴を経て前記管の中から前記透水性マットへ水が流れるように前記管に給水すること、前記第4ステップにおいて前記管への給水を停止することを含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、覆工コンクリートの養生のための透水性マットの内部に吸水材が配置されているため、前記透水性マットへの給水時に前記吸水材が水を吸い取ることにより前記透水性マットはその内部に水を保持することができ、前記透水性マットへの給水を停止しても前記透水性マットから前記覆工コンクリートに水を与えることができる。これにより、前記覆工コンクリートの養生時に前記透水性マットから垂れる水の量を減らすことができ、前記透水性マットから垂れた水の前記トンネルの外への排出に要する費用を低減することができる。
【0024】
また、前記透水性マットへの給水を停止しても前記透水性マットから前記覆工コンクリートに水を与えることができるため、前記透水性マットの移動と前記覆工コンクリートの養生とを繰り返す場合において前記透水性マットの移動毎に前記透水性マットの給水源への接続をする必要はなく、前記透水性マットの給水源への接続に要する手間や時間を減らすことができる。これにより前記覆工コンクリートの養生を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る養生装置(第2養生装置)の縦断面図。
【図2】図1の線2における第1養生装置の断面図。
【図3】図1の線3における第2養生装置の断面図。
【図4】図3の線4における透水性マットの拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示すように、トンネル10の覆工コンクリート12の養生のために養生設備14が用いられている。養生設備14は、水を与えないで覆工コンクリート12の養生を行う養生装置(第1養生装置)16と、水を与えて覆工コンクリート12の養生を行う養生装置(第2養生装置)18とを含む。覆工コンクリート12は移動式型枠20を用いて形成されている。
【0027】
図2に示すように、第1養生装置16は、トンネル10の軸線方向に移動可能な台車22と、該台車に固定されたフレーム24と、該フレームに固定されたシート受台26と、該シート受台に取り付けられた非透水性シート28とを有する。
【0028】
台車22は、第1水平方向(図2における左右方向)に間隔を置かれた、それぞれが、前記第1水平方向と直交する第2水平方向(図2における奥行き方向)に伸びる一対の水平部材22aと、各水平部材に前記第2水平方向に間隔を置いて取り付けられた複数の車輪22bとを有する。台車22は前記第2水平方向に移動可能である。トンネル10のインバート部10aにおける覆工コンクリート12の上に底部コンクリート30が設けられており、該底部コンクリートの上に、トンネル10の幅方向に間隔を置かれた、それぞれがトンネル10の軸線方向に伸びる一対のレール32が設置されている。台車22の一方の水平部材22aに取り付けられた車輪22bは一方のレール32の上に、他方の水平部材22aに取り付けられた車輪22bは他方のレール32の上にそれぞれ配置されている。
【0029】
フレーム24は、台車22の上に前記第2方向に間隔を置いて配置された、それぞれが台車22に結合された複数のフレーム部材34を有する。各フレーム部材34は、前記第1水平方向に間隔を置かれた一対の柱34aと、該柱を連結する梁34bとを有し、一方の柱34aは台車22の一方の水平部材22aに、他方の柱24bは台車22の他方の水平部材22aにそれぞれ結合されている。各フレーム部材34は、各柱34aに上下方向に間隔を置いて取り付けられた、それぞれが柱34aから前記第1水平方向における外方へ伸びる複数の水平材34cと、梁34bに前記第1水平方向に間隔を置いて取り付けられた、それぞれが梁34bから上方へ伸びる複数の垂直材34dとを有する。
【0030】
シート受台26は、覆工コンクリート12の表面形状に対応する形状を有する。シート受台26は、前記第2水平方向に間隔を置かれた、互いに平行な複数の上方に凸状のアーチ部材26aと、それぞれがアーチ部材26aと直交し、該アーチ部材26aに取り付けられた、互い平行な複数の桁26bとを有する。各アーチ部材26aはフレーム部材34の柱34aと水平材34cと垂直材34dとに結合されている。非透水性シート28は、シート受台26の上に配置されており、アーチ部材26a又は桁26bに固縛されている。非透水性シート28はビニルシートとすることができる。非透水性シート28はシート受台26を介してフレーム24に支持されている。
【0031】
第1養生装置16は、図1に示したように、非透水性シート28の前記第2水平方向における一端部とシート受台26との間に配置され、非透水性シート28の前記一端部と覆工コンクリート12との隙間を閉塞する第1閉塞手段36と、非透水性シート28の前記第2水平方向における他端部とシート受台26との間に配置され、非透水性シート28の前記他端部と覆工コンクリート12との隙間を閉塞する第2閉塞手段38とを有する。第1閉塞手段36及び第2閉塞手段38のそれぞれは、膨張可能なゴム製のバルーンからなる。第1閉塞手段36はシート受台26の一方の最外側のアーチ部材26aに、第2閉塞手段38はシート受台26の他方の最外側のアーチ部材26aにそれぞれ固定されている。
【0032】
図3、4に示すように、第2養生装置18は、トンネル10の軸線方向に移動可能な台車40と、該台車の上にあって昇降可能なフレーム42と、該フレームに支持され、内部に吸水材44が配置された透水性マット46とを有する。
【0033】
台車40は、前記第1水平方向に間隔を置かれた、それぞれが前記第2水平方向に伸びる一対の水平部材40aと、各水平部材に前記第2水平方向に間隔を置いて取り付けられた複数の車輪40bとを有する。台車40は前記第2水平方向に移動可能である。台車40の一方の水平部材40aに取り付けられた車輪40bは一方のレール32の上に、他方の水平部材40aに取り付けられた車輪40bは他方のレール32の上にそれぞれ配置されている。
【0034】
フレーム42は、台車40の上に前記第2方向に間隔を置いて配置された、それぞれが台車40に結合された複数のフレーム部材48を有する。各フレーム部材48は、前記第1水平方向に間隔を置かれた一対の柱48aと、該柱を連結する梁48bとを有し、一方の柱48aは台車40の一方の水平部材40aに、他方の柱48aは台車40の他方の水平部材40aにそれぞれ結合されている。各フレーム部材48は、各柱48aに取り付けられた、該柱から前記第1水平方向における外方へ伸びる水平材48cと、梁48bに前記第1水平方向に間隔を置いて取り付けられた、それぞれが梁48bから上方へ伸びる複数の垂直材48dとを有する。
【0035】
第2養生装置18は、フレーム42に取り付けられたマット受台50を有する。マット受台50は、覆工コンクリート12の表面形状に対応する形状を有する。マット受台50は、トンネル10のアーチ部10bの形状に対応する形状を有する頂部52と、該頂部の一端に枢着された、トンネル10の一方の側壁部10cの形状に対応する形状を有する第1側部54と、頂部52の他端に枢着された、トンネル10の他方の側壁部10cの形状に対応する形状を有する第2側部56とを有する。前記第2水平方向に垂直な面で見て、マット受台50の第1側部54は頂部52の前記一端を中心にして頂部52に対して回転可能であり、マット受台50の第2側部56は頂部52の前記他端を中心にして頂部52に対して回転可能である。マット受台50の頂部52はフレーム42に固定されている。
【0036】
マット受台50は、前記第2水平方向に間隔を置かれた、互いに平行な複数の上方に凸状のアーチ部材50aと、それぞれがアーチ部材50aと直交し、該アーチ部材に固定された、互い平行な複数の桁50bとを有する。各アーチ部材50aはマット受台50の頂部52においてフレーム部材48の柱48aと水平材48cと垂直材48dとに結合されている。
【0037】
第2養生装置18は、一端部がマット受台50の第1側部54に、他端部がフレーム42にそれぞれ取り付けられた、マット受台50の第1側部54を頂部52に対して回転させる第1回転手段58と、一端部がマット受台50の第2側部56に、他端部がフレーム42にそれぞれ取り付けられた、マット受台50の第2側部56を頂部52に対して回転させる第2回転手段60とを有する。第1回転手段58及び第2回転手段60のそれぞれはジャッキである。第1回転手段58及び第2回転手段60は、透水性マット46を覆工コンクリート12に密着させ又はその密着を解除するために使用される。
【0038】
第2養生装置18は、台車40に取り付けられた、該台車を昇降させる昇降手段62を有する。昇降手段62は、台車40の各水平部材40aに前記第2水平方向に間隔を置いて取り付けられた複数のジャッキ62aからなる。各ジャッキ62aは、その上端部が水平部材40aに固定され、その下端部が底部コンクリート30に向けられている。昇降手段62は、第1回転手段58及び第2回転手段60とともに、透水性マット46を覆工コンクリート12に密着させ又はその密着を解除するために使用される。
【0039】
透水性マット46は、マット受台50の上に配置されており、該マット受台に固定されている。透水性マット46のマット受台50への固定は、例えば、クランプのような固定手段(図示せず)によりなされている。透水性マット46はマット受台50を介してフレーム42に支持されている。透水性マット46は、前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの第1部分64と、該第1部分の間にある第2部分66とを有する。一方の第1部分64はマット受台50の第1側部54に、他方の第1部分64はマット受台50の第2側部56にそれぞれ固定されている。第2部分66はマット受台50の頂部52に固定されている。
【0040】
透水性マット46の第2部分66の内部に、前記第2水平方向に伸びる管68が配置されている。管68は、該管の各側部70に設けられた少なくとも1つの放水用の貫通穴72を有する(図4)。管68の各側部70に、前記第2水平方向に間隔を置かれた複数の貫通穴72が設けられていてもよいし、管68の各側部70に1つの貫通穴72が設けられていてもよい。管68は、透水性マット46に水を供給するために使用される。透水性マット46の下に合板のような板材74が配置されている。透水性マット46と板材74との間に該板材への浸水を防ぐ非透水性シート(図示せず)が配置されていてもよいし、透水性マット46と板材74との間に前記非透水性シートが配置されておらず、透水性マット46が板材74に接していてもよい。
【0041】
透水性マット46は不織布からなる。前記不織布は、例えば、長繊維ポリエステル系不織布又は短繊維ポリエステル系不織布である。透水性マット46の厚さは、例えば、1cmから3cmの範囲内である。吸水材44は吸水性樹脂からなる。前記吸水性樹脂は、ポリアクリル酸系樹脂、デンプン系樹脂、ポバール系樹脂、セルロース系樹脂等である。前記吸水性樹脂は、保水性が高く、感温性を有する感温吸排水性樹脂(サーモゲル)(株式会社興人製、商標名)とすることができる。前記吸水性樹脂は、保水性が高く、耐塩性に優れた、変性アクリル系架橋重合体を主成分とするアクアリックCS−6(株式会社日本触媒製、商品名)とすることができる。前記吸水性樹脂は、耐熱性に優れたアクアリックCS−7(株式会社日本触媒製、商品名)とすることができる。透水性マット46は、例えば、粉末状の吸水性樹脂を水に溶かして得られた液を不織布からなるマットの内部に注入することにより製造されたものである。
【0042】
第1養生装置16の長さ76は、図1に示した例では、移動式型枠20の長さと等しく、10.5mであり、第2養生装置18の長さ78は、第1養生装置16の長さ76の2倍であり、21.0mである。第2養生装置18は、長さが等しい前半部80及び後半部82を有する。後半部80は前半部80に連結部材84により連結されている。
【0043】
覆工コンクリート12の養生を行うとき、まず、第1養生装置16と、第2養生装置18とを用意する。次に、図1に示したように、第1養生装置16を移動式型枠20の後方(図面左方)に配置し、ワイヤーロープのような連結手段86により移動式型枠20に連結する。その後、移動式型枠20をトンネル10の第1領域の内部に配置し、該第1領域において移動式型枠20により覆工コンクリート12を形成し、脱型する。その後、第1養生装置16がトンネル10の前記第1領域の内部に配置されるように移動式型枠20をその前方(図面右方)へ移動式型枠20の長さに相当する距離だけ移動させる。これにより、第1養生装置16の台車22がトンネル10の軸線方向に移動されて第1養生装置16の非透水性シート28がその切羽側へ移動される。その後、前記第1領域において第1養生装置16によるトンネル10の覆工コンクリート12の養生を行う。
【0044】
第1養生装置16による覆工コンクリート12の養生を行うとき、まず、非透水性シート28の前記一端部と覆工コンクリート12との隙間及び非透水性シート28の前記他端部と覆工コンクリート12との隙間をそれぞれ第1閉塞手段36及び第2閉塞手段38により閉塞する。このとき、第1閉塞手段36の前記バルーンが非透水性シート28の前記一端部を、第2閉塞手段38の前記バルーンが非透水性シート28の前記他端部をそれぞれ覆工コンクリート12に押し付けるように第1閉塞手段36及び第2閉塞手段38のそれぞれの前記バルーンに空気を注入する。
【0045】
その後、非透水性シート28の各側部と覆工コンクリート12との隙間が閉塞されるように非透水性シート28の各側部の上に複数の錘88を載せる(図2)。錘88は、例えば、木材からなる。このようにして覆工コンクリート12を非透水性シート28で覆い、水を与えないで覆工コンクリート12の養生を行う。これにより、覆工コンクリート12の乾燥を防ぎつつ、覆工コンクリート12の温度を徐々に低下させることができる。これにより、覆工コンクリート12の急激な冷却による覆工コンクリート12のひび割れの発生を防止することができる。水を与えないで覆工コンクリート12の養生を行う時間は24時間から96時間の範囲内とすることが望ましい。
【0046】
第1養生装置16による覆工コンクリート12の養生を行っている間に、トンネル10の前記第1領域の切羽側に位置する第2領域において移動式型枠20により覆工コンクリート12を形成し、脱型する。その後、第1養生装置16による覆工コンクリート12の養生を終了させ、第1養生装置16がトンネル10の前記第2領域の内部に配置されるように移動式型枠20をその切羽側へ移動させる。その後、第2養生装置18の前半部80がトンネル10の前記第1領域の内部に位置するように第2養生装置18をトンネル10の内部に配置する。その後、前記第2領域において第1養生装置16による覆工コンクリート12の養生を行いつつ、前記第1領域において第2養生装置18による覆工コンクリート12の養生を行う。
【0047】
第2養生装置18のトンネル10の内部への配置は、第1回転手段58及び第2回転手段60のそれぞれの前記ジャッキを縮めてマット受台50の第1側部54及び第2側部56のそれぞれをその内方へ頂部52に対して回転させ、かつ、昇降手段62の各ジャッキ62aを縮めて台車40を下降させた状態で行う。第2養生装置18による覆工コンクリート12の養生を行うとき、まず、昇降手段62により台車40を上昇させる。このとき、昇降手段62の各ジャッキ62aと底部コンクリート30上の間に、逆コの字状の縦断面を有する台座90を、該台座がレール32を跨ぐように配置し、その後、各ジャッキ62aが台座90を介して底部コンクリート30から反力を受けるように各ジャッキ62aを伸ばす。台車40の上昇により、フレーム42を上昇させ、透水性マット46の第2部分66を覆工コンクリート12に密着させる。
【0048】
その後、第1回転手段58によりマット受台50の第1側部54をその外方へ頂部52に対して回転させ、第2回転手段60によりマット受台50の第2側部56をその外方へ頂部52に対して回転させる。このとき、第1回転手段58及び第2回転手段60のそれぞれの前記ジャッキを伸ばす。マット受台50の第1側部54及び第2側部56の回転により、透水性マット46の各第1部分64を覆工コンクリート12に密着させる。このように、台車40の上昇と、マット受台50の第1側部54及び第2側部56の回転とにより、透水性マット46の全部を覆工コンクリート12に密着させる。このようにして透水性マット46の第1部分64及び第2部分66はそれぞれトンネル10の側壁部10c、10d及びアーチ部10bに配置される。
【0049】
透水性マット46の覆工コンクリート12への密着後、管68と給水源(図示せず)とを他の管(連結管)により連結することにより、透水性マット46を前記給水源に接続する。その後、前記給水源から前記連結管を経て管68に水を供給する。このとき、貫通穴72を経て管68の中から透水性マット46へ水が流れるようにする。このようにして透水性マット46に給水する。透水性マット46の内部に吸水材44が配置されているため、透水性マット46に水が供給されたとき、前記水の一部は吸水材44により吸い取られ、前記水の他の一部は透水性マット46から覆工コンクリート12に与えられる。吸水材44が水を吸い取ることにより、透水性マット46はその内部に水を保持することができる。透水性マット46から覆工コンクリート12に水が与えられることにより、覆工コンクリート12の水和反応が促進され、覆工コンクリート12は硬化する。このため、覆工コンクリート12に十分な強度を発揮させることができる。
【0050】
透水性マット46の第1部分64及び第2部分66がそれぞれトンネル10の側壁部10c、10d及びアーチ部10bに配置されているため、透水性マット46の第2部分66は第1部分64より高い位置にあり、管68への給水時に該管の中から透水性マット46へ流れた水は透水性マット46の第2部分66から各第1部分64へ流れ落ちる。これにより、透水性マット46の全体に水が供給され、透水性マット46の全体から覆工コンクリート12に水が与えられる。このため、透水性マット46の第1部分64の内部に透水性マット46への給水のための他の管(図示せず)を配置しなくても、覆工コンクリート12の全体に水を与えることができる。
【0051】
ところで、仮に、管68が透水性マット46の上に配置されている場合、管68の中から出た水が、直接、覆工コンクリート12の一部に与えられる。このため、覆工コンクリート12の前記一部が急激に冷却されて覆工コンクリート12にひび割れが発生する可能性がある。また、管68が透水性マット46の上に配置されているため、管68が覆工コンクリート12に当たって該覆工コンクリートに損傷を与える恐れがある。これに対して、管68が透水性マット46の内部に配置されている場合、管68の中から出た水は確実に透水性マット46を経て覆工コンクリート12に与えられる。このため、覆工コンクリート12の一部が急激に冷却されて覆工コンクリート12にひび割れが発生することを防ぐことができる。また、管68が透水性マット46の内部に配置されているため、管68が覆工コンクリート12に当たって該覆工コンクリートに損傷を与えることはない。
【0052】
透水性マット46への給水後、管68への給水を停止することにより、透水性マット46への給水を停止する。その後、透水性マット46の覆工コンクリート12への密着を維持する。透水性マット46への給水の停止後、透水性マット46は時間の経過とともに乾燥し始める。透水性マット46が乾燥し始めると、吸水材44から水が排出される。このため、透水性マット46への給水を停止しても、透水性マット46を長時間に亘って湿潤状態に維持することができ、透水性マット46から覆工コンクリート12に水を与えることができる。透水性マット46への給水を停止することにより、透水性マット46から垂れる水の量を減らすことができ、透水性マット46から垂れた水のトンネル10の外への排出に要する費用を減らすことができる。
【0053】
前記第2領域において第1養生装置16による覆工コンクリート12の養生を行いつつ、前記第1領域において第2養生装置18による覆工コンクリート12の養生を行っている間に、トンネル10の前記第2領域の切羽側に位置する第3領域において移動式型枠20により覆工コンクリート12を形成し、脱型する。その後、第1養生装置16及び第2養生装置18のそれぞれによる覆工コンクリート12の養生を終了させ、第1養生装置16がトンネル10の前記第3領域の内部に配置されるように移動式型枠20をその切羽側へ移動させる。その後、第2養生装置18の前半部80及び後半部82がそれぞれトンネル10の前記第2領域及び前記第1領域の内部に配置されるように第2養生装置18をその切羽側へ移動させる。このとき、第2養生装置18の透水性マット46がその切羽側へ移動されるように第2養生装置18の台車40をトンネル10の軸線方向に移動させる。
【0054】
第2養生装置18の移動前、管68と前記給水源との連結を解除して透水性マット46の前記給水源への接続を解除する。その後、透水性マット46の覆工コンクリート12への密着を解除する。このとき、第1回転手段58の前記ジャッキを縮めてマット受台50の第1側部54をその内方へ頂部52に対して回転させ、第2回転手段60の前記ジャッキを縮めてマット受台50の第2側部56をその内方へ頂部52に対して回転させる。これにより、透水性マット46の各第1部分64の覆工コンクリート12への密着を解除する。その後、昇降手段62の各ジャッキ62aを縮めて台車40を下降させる。これにより、フレーム42を下降させ、透水性マット46の第2部分66の覆工コンクリート12への密着を解除する。第2養生装置18の移動は、自走によるものでもよいし、トラックのような車両(図示せず)に第2養生装置18を牽引させることによるものでもよいし、第2養生装置18を予め第1養生装置16に連結しておき、移動式型枠20を移動させることによるものでもよい。
【0055】
第2養生装置18の移動後、前記第3領域において第1養生装置16による覆工コンクリート12の養生を行いつつ、前記第2領域及び前記第1領域において第2養生装置18による覆工コンクリート12の養生を行う。このようにして、第1養生装置16及び第2養生装置18のそれぞれの移動と、第1養生装置16及び第2養生装置18のそれぞれによる覆工コンクリート12の養生とを繰り返す。
【0056】
第2養生装置18の移動後、第2養生装置18による覆工コンクリート12の養生を行うとき、透水性マット46を覆工コンクリート12に密着させる。その後、透水性マット46への給水をせずに、透水性マット46の覆工コンクリート12への密着を維持する。透水性マット46の覆工コンクリート12への密着を維持している間、透水性マット46は時間の経過とともに乾燥し始める。透水性マット46が乾燥し始めると、吸水材44から水が排出される。このため、透水性マット46への給水をしなくても、透水性マット46から覆工コンクリート12に水を与えることができる。これにより、第2養生装置18の移動毎に透水性マット46の前記給水源への接続をする必要はなく、透水性マット46の前記給水源への接続に要する手間や時間を減らすことができ、覆工コンクリート12の養生を効率的に行うことができる。
【0057】
透水性マット46の覆工コンクリート12への密着を維持した後、透水性マット46の内部に含まれている水の量を調査し、該水の量に応じて透水性マット46に給水するか否かを決定する。前記水の量の調査の結果、透水性マット46から覆工コンクリート12に水を与えることができる程度に透水性マット46の内部に十分な量の水が含まれていない場合、透水性マット46に給水することを決定する。他方、透水性マット46から覆工コンクリート12に水を与えることができる程度に透水性マット46の内部に十分な量の水が含まれている場合、透水性マット46に給水しないことを決定する。
【0058】
ところで、吸水材44に吸い取られた水のほぼ全部が吸水材44から排出されると、透水性マット46が乾燥しても吸水材44から水が排出されなくなり、透水性マット46を湿潤状態に維持できなくなり、透水性マット46から覆工コンクリート12に水を与えることができなくなる。透水性マット46の内部に含まれている水の量を調査し、該水の量に応じて透水性マット46に給水するか否かを決定することにより、透水性マット46から覆工コンクリート12に水を与えることができる程度に透水性マット46の内部に十分な量の水が含まれていないときにのみ透水性マット46への給水をすることができる。これにより、透水性マット46の乾燥を防止しつつ、透水性マット46への給水を過度に行わないようにすることができる。
【0059】
透水性マット46に給水することを決定した場合、透水性マット46に給水する。その後、透水性マット46への給水を停止し、透水性マット46の覆工コンクリート12への密着を維持する。その後、透水性マット46の内部に含まれている水の量を再び調査し、該水の量に応じて透水性マット46に給水するか否かを決定する。他方、透水性マット46に給水しないことを決定した場合、透水性マット46への給水をせずに、透水性マット46の覆工コンクリート12への密着を維持する。その後、透水性マット46の内部に含まれている水の量を再び調査し、該水の量に応じて透水性マット46に給水するか否かを決定する。
【0060】
前記水の量の調査に先立ち、透水性マット46への給水前に第2養生装置18の重量を測定して第1測定値を得、透水性マット46への給水後、透水性マット46の覆工コンクリート12への密着を維持した後に第2養生装置18の重量を測定して第2測定値を得る。前記水の量の調査をするとき、前記第1測定値と前記第2測定値との差を求める。これにより、透水性マット46の内部に含まれている水の量を知ることができ、透水性マット46の湿潤状態を確認することができる。この場合、例えば、第2養生装置18の重量を測定する計器(図示せず)が昇降手段62の近傍に配置され、台車40に取り付けられている。前記計器により透水性マット46への給水前及び透水性マット46の覆工コンクリート12への密着の維持後の第2養生装置18の重量の測定を行う。なお、第2養生装置18の重量の測定は、第2養生装置18の全部の重量を測定することによるものでもよいし、第2養生装置18の一部の重量を測定することによるものでもよい。
【0061】
前記水の量の調査は、第2養生装置18の重量の測定により行う上記の例に代え、マット受台50及び該マット受台の上に配置され透水性マット46の重量の測定により行ってもよい。この場合、例えば、マット受台50及び透水性マット46の重量を測定する計器がマット受台50の近傍に配置され、フレーム42に取り付けられている。マット受台50及び透水性マット46の重量の測定は、マット受台50及び透水性マット46の全部の重量を測定することによるものでもよいし、マット受台50及び透水性マット46の一部の重量を測定することによるものでもよい。
【0062】
ところで、一般に、作業員が透水性マット46に接近することは難しく、前記作業員が透水性マット46の湿潤状態を目視により又は手で触って確認することは困難である。前記水の量の調査を前記計器による第2養生装置18の重量の測定により行うことにより、前記作業員は、透水性マット46に接近することなく、透水性マット46の湿潤状態を知ることができる。
【0063】
前記水の量の調査は、第2養生装置18の重量の測定により行う上記の例に代え、透水性マット46からその一部分をサンプルとして抜き取り、透水性マット46の前記一部分の重量を測定することにより行ってもよい。この場合、透水性マット46の前記一部分は透水性マット46の他の部分から取外し可能である。前記水の量の調査に先立ち、透水性マット46への給水前に透水性マット46の前記一部分を前記他の部分から取り外し、透水性マット46の前記一部分の重量を測定して第1測定値を得る。その後、透水性マット46への給水前に透水性マット46の前記一部分を前記他の部分に取り付ける。その後、透水性マット46の覆工コンクリート12への密着の維持後に透水性マット46の前記一部分を前記他の部分から取り外し、透水性マット46の前記一部分の重量を測定して第2測定値を得る。前記水の量の調査をするとき、前記第1測定値と前記第2測定値との差を求める。これにより、透水性マット46の前記一部分の内部に含まれている水の量を知ることができ、透水性マット46の湿潤状態を確認することができる。
【0064】
なお、透水性マット46の覆工コンクリート12への密着を維持した後、透水性マット46の内部に含まれている水の量を調査し、該水の量に応じて透水性マット46に給水するか否かを決定する上記の例に代え、透水性マット46への給水を停止してから透水性マット46への給水をするまでの時間を予め決めておき、透水性マット46への給水の停止後、予め決められた時間の経過時に透水性マット46への給水をしてもよい。
【0065】
図1に示した例では、第2養生装置18の長さは第1養生装置16の長さの2倍であるため、第2養生装置18による覆工コンクリート12の養生期間は、第1養生装置16による覆工コンクリート12の養生期間の2倍となる。例えば、第1養生装置16による覆工コンクリート12の養生期間が2日であるとき、第2養生装置18による覆工コンクリート12の養生期間は4日である。このように第1養生装置16の長さと第2養生装置18の長さとの比は、水を与えないで覆工コンクリート12の養生を行う期間と水を与えて覆工コンクリート12の養生を行う期間との比に相当する。このため、予め第1養生装置16の長さと第2養生装置18の長さとの比を、水を与えないで覆工コンクリート12の養生を行う日数と水を与えて覆工コンクリート12の養生を行う日数との比にしておくことにより、効率的に覆工コンクリート12の養生を行うことができる。第1養生装置16の長さと第2養生装置18の長さとの比は、水を与えないで覆工コンクリート12の養生を行う期間と水を与えて覆工コンクリート12の養生を行う期間との比に応じて、任意に変更することができる。
【0066】
水を与えて覆工コンクリート12の養生を行うことに先立ち、水を与えないで覆工コンクリート12の養生を行うことにより、覆工コンクリート12に水を与える前に覆工コンクリート12の温度を時間をかけて低下させることができる。これにより、覆工コンクリート12に水を与えたときに覆工コンクリート12が前記水により急激に冷却されることはなく、覆工コンクリート12のひび割れの発生を防止することができる。
【0067】
透水性マット46の覆工コンクリート12への密着及びその解除は、第1回転手段58及び第2回転手段60と昇降手段62との双方を用いて行う図3に示した例に代え、第1回転手段58及び第2回転手段60を用いずに、昇降手段62のみを用いて行ってもよい。この場合、マット受台50の第1側部54及び第2側部56のそれぞれは頂部52に剛に結合され、第2養生装置18は第1回転手段58及び第2回転手段60を有しない。なお、図3に示した例では、透水性マット46の各第1部分64の内部に透水性マット46への給水のための管が配置されていないが、これに代え、透水性マット46に供給する水の量を増すため、透水性マット46の各第1部分64の内部に透水性マット46への給水のための管(図示せず)が配置されていてもよい。
【0068】
第2養生装置18のフレーム42を台車40の昇降によって昇降させる図1に示した例に代え、フレーム42が台車40に昇降可能に取り付けられ、フレーム42を台車40に対して昇降させてもよい。第2養生装置18は、前半部80と後半部82とに分けられている図1に示した例に代え、前半部80と後半部82とに分けられておらず、一体に構成されていてもよい。覆工コンクリート12の養生は、第1養生装置16及び第2養生装置18の双方を用いて行う図1に示した例に代え、第1養生装置16を用いずに、第2養生装置18のみを用いて行ってもよい。覆工コンクリート12は、移動式型枠20を用いて形成されている図1に示した例に代え、移動式型枠20を用いずに形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 トンネル
12 覆工コンクリート
18 養生装置(第2養生装置)
40 台車
42 フレーム
44 吸水材
46 透水性マット
64 第1部分
66 第2部分
68 管
72 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの覆工コンクリートの養生のための養生装置であって、
前記トンネルの軸線方向に移動可能な台車と、
前記台車の上にあって昇降可能なフレームと、
前記フレームに支持され、内部に吸水材が配置された透水性マットとを含む、養生装置。
【請求項2】
前記透水性マットは、第1水平方向に間隔を置かれた2つの第1部分と、該第1部分の間にある第2部分とを有し、該第2部分の内部に、前記第1水平方向と直交する第2水平方向に伸びる管が配置されており、
前記管は、該管の各側部に設けられた少なくとも1つの放水用の貫通穴を有する、請求項1に記載の養生装置。
【請求項3】
トンネルの覆工コンクリートの養生方法であって、
内部に吸水材が配置された透水性マットを用意する第1ステップと、
前記透水性マットを前記覆工コンクリートに密着させる第2ステップと、
前記透水性マットに給水する第3ステップと、
前記透水性マットへの給水を停止する第4ステップと、
前記透水性マットの前記覆工コンクリートへの密着を維持する第5ステップとを含む、養生方法。
【請求項4】
前記第5ステップの後に、前記透水性マットの内部に含まれている水の量を調査する第6ステップと、
前記水の量に応じて前記透水性マットに給水するか否かを決定する第7ステップと、
前記第7ステップにおいて前記透水性マットに給水することを決定した場合に前記第3ステップから前記第5ステップまでを行うこと、
前記第7ステップにおいて前記透水性マットに給水しないことを決定した場合に前記第5ステップを行うことを含む、請求項3に記載の養生方法。
【請求項5】
前記第1ステップにおいて、前記トンネルの軸線方向に移動可能な台車と、該台車の上にあって昇降可能なフレームと、該フレームに支持された前記透水性マットとを含む養生装置を用意すること、
前記第3ステップの前に前記養生装置の重量を測定して第1測定値を得ること、
前記第5ステップの後、前記第6ステップの前に前記養生装置の重量を測定して第2測定値を得ること、
前記第6ステップにおいて前記第1測定値と前記第2測定値との差を求めることを含む、請求項4に記載の養生方法。
【請求項6】
前記第1ステップにおいて、前記トンネルの軸線方向に移動可能な台車と、該台車の上にあって昇降可能なフレームと、該フレームに支持された前記透水性マットとを含み、該透水性マットの一部分が他の部分から取外し可能である養生装置を用意すること、
前記第3ステップの前に前記透水性マットの前記一部分を前記他の部分から取り外すこと、
前記透水性マットの前記一部分の重量を測定して第1測定値を得ること、
前記第3ステップの前に前記透水性マットの前記一部分を前記他の部分に取り付けること、
前記第5ステップの後、前記第6ステップの前に前記透水性マットの前記一部分を前記他の部分から取り外すこと、
前記透水性マットの前記一部分の重量を測定して第2測定値を得ること、
前記第6ステップにおいて前記第1測定値と前記第2測定値との差を求めることを含む、請求項4に記載の養生方法。
【請求項7】
前記透水性マットは、第1水平方向に間隔を置かれた2つの第1部分と、該第1部分の間にある第2部分とを有し、該第2部分の内部に、前記第1水平方向と直交する第2水平方向に伸びる管が配置されており、前記管は、該管の各側部に設けられた少なくとも1つの放水用の貫通穴を有し、
前記第2ステップにおいて前記透水性マットを、前記第1部分及び前記第2部分がそれぞれ前記トンネルの側壁部及びアーチ部に配置されるように前記覆工コンクリートに密着させること、
前記第3ステップにおいて、前記貫通穴を経て前記管の中から前記透水性マットへ水が流れるように前記管に給水すること、
前記第4ステップにおいて前記管への給水を停止することを含む、請求項3ないし6のいずれか1項に記載の養生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−236222(P2010−236222A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84106(P2009−84106)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000158725)岐阜工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】