説明

トンネル内の覆工コンクリート打設装置

【解決手段】コンクリート打設型枠2に打設孔3a,4a、3b,4b、3c,4c、5を幅方向Xの両側で周方向Yに沿って複数配設している。この各打設孔に電動コンクリートポンプ16を接続している。この各打設孔のうち下側にある打設孔から上側にある打設孔へ順次コンクリートポンプ16からコンクリートを供給する。供給コンクリートの圧力を検出する圧力センサ6a,7a、6b,7b、6c,7cを幅方向Xの両側で周方向Yに沿ってコンクリート打設型枠2に複数配設している。この各圧力センサにより検出された供給コンクリートの圧力に関する検出値が供給コンクリートの圧力に関する異常時設定値を超えた場合に電動コンクリートポンプ16を停止させるように駆動制御する。
【効果】覆工コンクリートの表面を良好な状態に仕上げるとともに、異常圧発生時にコンクリート打設型枠2の破損を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に配設されるコンクリート打設型枠内に打設孔からコンクリートを供給するトンネル内の覆工コンクリート打設装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の覆工コンクリート打設装置において、コンクリートはコンクリート打設型枠内に上側から下側へ流し落とされてコンクリート打設型枠内全体で充填されていた。このように硬化前の練り混ぜられたコンクリートを流し落とすと、コンクリートの成分が分離したりコンクリートに気泡が混入したりするため、覆工コンクリートの表面が不良状態になるおそれがあった。
【0003】
そこで、例えば下記の特許文献1や特許文献2では、トンネル内に配設されるコンクリート打設型枠に打設孔をトンネルの長手方向に対し直交するトンネルの幅方向両側でそれぞれトンネルの周方向に沿って複数配設するとともに、この各打設孔にコンクリートポンプをコンクリート供給切換手段(コンクリート分流機やエレファントノズルなど)を介して接続し、トンネルの幅方向両側にある各打設孔のうち下側にある打設孔から上側にある打設孔へ順次このコンクリートポンプからコンクリートをこのコンクリート供給切換手段により供給するようになっている。このようにコンクリート打設型枠内でコンクリートを下側から順次押し上げて打設すると、覆工コンクリートの表面が良好な状態に仕上がる。
【特許文献1】特開2002−70498号公報
【特許文献2】特開2004−190286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コンクリート打設型枠内の供給コンクリートの圧力に異常圧が発生すると、コンクリート打設型枠が破損するおそれがあった。
この発明は、覆工コンクリートの表面を良好な状態に仕上げるとともに、異常圧発生時にコンクリート打設型枠の破損を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるトンネル内の覆工コンクリート打設装置は、下記のように構成されている。
【0006】
トンネル1内に配設されるコンクリート打設型枠2に打設孔3a,4a、3b,4b、3c,4c、5をトンネル1の長手方向に対し直交するトンネル1の幅方向Xの両側でそれぞれトンネル1の周方向Yに沿って複数配設している。この各打設孔3a,4a、3b,4b、3c,4c、5にコンクリートポンプ16をコンクリート供給切換手段を介して接続している。トンネル1の幅方向Xの両側にある各打設孔3a,4a、3b,4b、3c,4c、5のうち下側にある打設孔から上側にある打設孔へ順次このコンクリートポンプ16からコンクリートをこのコンクリート供給切換手段により供給する。このコンクリート打設型枠2内に各打設孔3a,4a、3b,4b、3c,4c、5から供給された供給コンクリートの圧力を検出する圧力センサ6a,7a、6b,7b、6c,7cをトンネル1の長手方向に対し直交するトンネル1の幅方向Xの両側でそれぞれトンネル1の周方向Yに沿ってこのコンクリート打設型枠2に複数配設している。この各圧力センサ6a,7a、6b,7b、6c,7cにより検出された供給コンクリートの圧力に関する検出値が供給コンクリートの圧力に関する異常時設定値を超えた場合に前記コンクリートポンプ16を停止させるかまたはこのコンクリートポンプ16の吐出圧を低くするように駆動制御するコンクリートポンプ制御手段22を設けている。
【0007】
請求項1の発明では、このコンクリートポンプ制御手段22によりコンクリート打設型枠2内の供給コンクリートの圧力を自動検出して異常圧発生時にコンクリート打設型枠2の破損を防止することができる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記コンクリート打設型枠2には供給コンクリートの実際温度を測定して表示する温度表示手段8,9を設けている。請求項2の発明では、この温度表示手段8,9によりコンクリート打設型枠2の脱枠時期を確認することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、覆工コンクリートの表面を良好な状態に仕上げるとともに、異常圧発生時にコンクリート打設型枠2の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態にかかるトンネル内の覆工コンクリート打設装置について図1を参照して説明する。
トンネル1内に配設されたコンクリート打設型枠2には、トンネル1の長手方向に対し直交するトンネル1の幅方向Xの両側にある打設孔(下段の両打設孔3a,4a、中段の両打設孔3b,4b、上段の両打設孔3c,4c)と、トンネル1の最上部にある天井打設孔5とがそれぞれトンネル1の周方向Yに沿って配設されている。この下段の両打設孔3a,4a、中段の両打設孔3b,4b及び上段の両打設孔3c,4cは、それぞれ、ほぼ同じ高さ位置にある。この下段の両打設孔3a,4a、中段の両打設孔3b,4b及び上段の両打設孔3c,4cの付近で、それぞれ、このコンクリート打設型枠2には、下段の両圧力センサ6a,7a、中段の両圧力センサ6b,7b及び上段の両圧力センサ6c,7cがトンネル1の長手方向に対し直交するトンネル1の幅方向Xの両側でトンネル1の周方向Yに沿って配設されている。この下段の両圧力センサ6a,7a、中段の両圧力センサ6b,7b及び上段の両圧力センサ6c,7cは、それぞれ、ほぼ同じ高さ位置にある。これらの圧力センサ6a,7a、6b,7b、6c,7cは、このコンクリート打設型枠2内に各打設孔3a,4a、3b,4b、3c,4c、5から供給された供給コンクリートの圧力を検出することができる。このコンクリート打設型枠2にはトンネル1の幅方向Xの両側で温度表示手段としての温度計8,9が配設されている。これらの温度計8,9は、このコンクリート打設型枠2内に各打設孔3a,4a、3b,4b、3c,4c、5から供給された供給コンクリートの実際温度を測定して表示することができる。
【0011】
トンネル1内に設置された支持台10にはトンネル1の長手方向へ走行し得る台車11が載設され、その台車11には図示しない油圧シリンダによりトンネル1の長手方向へ移動し得る可動台12が載設されている。この可動台12には油圧シリンダ13により伸縮し得るエレファントノズル14が回動支点部15を中心にトンネル1の幅方向Xを含む面上で回動可能に支持されている。可撓性を有するコンクリート供給ホース17は、支持台10に設置された電動コンクリートポンプ16からトンネル1の長手方向へ延ばされた後に上方へ案内されてこのエレファントノズル14に接続されている。前記下段の両打設孔3a,4a、中段の両打設孔3b,4b、上段の両打設孔3c,4c及び天井打設孔5には、それぞれ、コンクリート打設ホース18,19,20,21の吐出側が接続され、これらのコンクリート打設ホース18,19,20,21の供給口18a,19a,20a,21aが支持台10に固定されて前記エレファントノズル14に面している。前記可動台12が移動するとともにこのエレファントノズル14が回動して伸縮すると、エレファントノズル14はコンクリート供給切換手段としてこれらの供給口18a,19a,20a,21aに接続される。
【0012】
コンクリート打設型枠2に設けられた点検窓(図示せず)によりコンクリート打設型枠2内の供給コンクリートを監視しながら、可動台12の移動位置とエレファントノズル14の回動位置とを切り替え、下段の両打設孔3a,4aのうち一方の打設孔3a、他方の打設孔4a、中段の両打設孔3b,4bのうち一方の打設孔3b、他方の打設孔4b、上段の両打設孔3c,4cのうち一方の打設孔3c、他方の打設孔4c、天井打設孔5の順で、電動コンクリートポンプ16からコンクリート供給ホース17と各コンクリート打設ホース18,19,20,21とを通してコンクリートを供給する。従って、コンクリート打設型枠2内で供給コンクリートはトンネル1の幅方向Xの両側で交互に下側から上側へ順次供給されてコンクリート打設型枠2内全体で充填される。
【0013】
前記各圧力センサ6a,7a、6b,7b、6c,7cはコンクリート打設型枠2内の供給コンクリートの圧力を検出してコンクリートポンプ制御手段としてのコントローラ22に出力する。このコントローラ22は、この供給コンクリートの実際圧力に関する検出値と、予め記憶された供給コンクリートの圧力に関する異常時設定値とを比較し、その検出値が異常時設定値を超えた場合に前記電動コンクリートポンプ16を停止させるように駆動制御する。
【0014】
また、前記温度計8,9によりコンクリート打設型枠2内の供給コンクリートの温度を管理し、コンクリート打設型枠2の脱枠時期の判断を行う。
本実施形態は下記の効果を有する。
【0015】
* コンクリート打設型枠2内でコンクリートを下側から順次押し上げて打設するため、覆工コンクリートの表面を良好な状態に仕上げることができる。
* コンクリート打設型枠2内の供給コンクリートの圧力を自動検出して異常圧発生時にコンクリート打設型枠2の破損を防止することができる。
【0016】
* 温度計8,9によりコンクリート打設型枠2の脱枠時期を確認することができる。
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ コンクリートポンプ制御手段としては、エレファントノズル14に代えてコンクリート分流機を採用する。
【0017】
・ コントローラ22は、供給コンクリートの実際圧力に関する検出値と、予め記憶された供給コンクリートの圧力に関する異常時設定値とを比較し、その検出値が異常時設定値を超えた場合に電動コンクリートポンプ16の吐出圧を低くするように駆動制御する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本実施形態にかかる覆工コンクリート打設装置をトンネル内に設置した状態を正面側から見て概略的に示す断面図であり、(b)(c)はそれぞれ各打設コンクリートホースを示す部分側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1…トンネル、2…コンクリート打設型枠、3a,4a、3b,4b、3c,4c、5…打設孔、6a,7a、6b,7b、6c,7c…圧力センサ、8,9…温度表示手段としての温度計、14…コンクリート供給切換手段の一部であるエレファントノズル、16…電動コンクリートポンプ、22…コンクリートポンプ制御手段としてのコントローラ、X…トンネルの幅方向、Y…トンネルの周方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に配設されるコンクリート打設型枠に打設孔をトンネルの長手方向に対し直交するトンネルの幅方向両側でそれぞれトンネルの周方向に沿って複数配設するとともに、この各打設孔にコンクリートポンプをコンクリート供給切換手段を介して接続し、トンネルの幅方向両側にある各打設孔のうち下側にある打設孔から上側にある打設孔へ順次このコンクリートポンプからコンクリートをこのコンクリート供給切換手段により供給するトンネル内の覆工コンクリート打設装置において、このコンクリート打設型枠内に各打設孔から供給された供給コンクリートの圧力を検出する圧力センサをトンネルの長手方向に対し直交するトンネルの幅方向両側でそれぞれトンネルの周方向に沿ってこのコンクリート打設型枠に複数配設し、この各圧力センサにより検出された供給コンクリートの圧力に関する検出値が供給コンクリートの圧力に関する異常時設定値を超えた場合に前記コンクリートポンプを停止させるかまたはこのコンクリートポンプの吐出圧を低くするように駆動制御するコンクリートポンプ制御手段を設けたことを特徴とするトンネル内の覆工コンクリート打設装置。
【請求項2】
前記コンクリート打設型枠には供給コンクリートの実際温度を測定して表示する温度表示手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル内の覆工コンクリート打設装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−155819(P2009−155819A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332308(P2007−332308)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000158725)岐阜工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】