説明

トンネル内の路側構造物及びその構築方法

【課題】トンネル内の防護壁に、歩廊及び配線・配管類を配設するピット構造の機能を合わせ持った路側構造物を、少ない工程で、工期を短縮して構築する。
【解決手段】方形板状のプレキャスト部材で形成された側壁部材を、トンネル覆工体1の長手方向に沿って複数個連接させて防護側壁11を立設し、防護側壁11と覆工体1内側壁との間に設けた間隔保持材によって防護側壁11のトンネル中心側への倒れを抑制しつつ、床版上面から側壁部材上端より所定高さ下がった位置までコンクリート材を打設して防護床壁31を形成し、側壁部材の上端部に形成された蓋部材取付部と、トンネル覆工体1内側壁に形成された蓋部材取付部との間に、蓋部材21を着脱自由に取りつけ、蓋部材21下面と防護床壁31上面との間の空間に配線・配管類収納用のピット構造51を形成し、蓋部材21の上面に歩廊を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の側部に構築される路側構造物及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用トンネルにおいては、特許文献1に示すように、トンネル内部を複数に区分して配線・配管類のスペース、避難路等を配設している。
ところで、トンネル内の路側(道路の側部)には、自動車衝突時にトンネル覆工体の損傷を回避するための防護壁が立設される。この防護壁とトンネル覆工体内側壁との間に、トンネル内の電気系統の配線・配管類を配設するピット構造のスペースを設置し、その上に蓋をして歩廊として用いるような路側構造物を構築する場合、従来方法では次のような作業工程が必要となる。
【0003】
まず、地覆部に上方に突出するアンカー筋を一体に配設しておき、該アンカー筋に鉄筋を連結後、該鉄筋よりトンネル中心寄りの床版上に型枠を設置する。
次に、該型枠および支保工を設置後、コンクリート材を地覆上面から型枠上端までの間の所定高さまで打設する。
打設したコンクリートが固化して防護床壁が形成された後、鉄筋を挟んでトンネル覆工体内側壁寄りに型枠を設置し、該型枠と、トンネル中心側の型枠との間に、コンクリートを打設する。
【0004】
コンクリートが固化した後、支保工を外し、これら両側の型枠を外して、防護側壁を形成する。
防護壁の上端部に蓋材取付構造を形成し、トンネル覆工体内側壁との間に蓋材を取り付け、防護床壁との間の空間を配線・配管類を配設するためのピット構造とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3458176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる従来の路側構造物の構築方法では、鉄筋の組立、コンクリートの打設をするために型枠の設置及び撤去など工程数が増大し、かつ、防護床壁を形成するため打設されたコンクリート材の固化を待って、防護側壁形成用のコンクリートの打設を開始する必要があることなどにより、工期が長引く。
また、トンネル覆工体の長手方向に沿ってコンクリートを打設すると、乾燥収縮等によって、ひび割れが発生して防護機能が損なわれる可能性が高い。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、地覆上部の蓋部材と防護床壁との間に配線・配管類を配設するためのピット構造となる空間を形成した構造物を、工程数が少なく工期を短縮できると共に、乾燥収縮等によるひび割れの発生を回避でき、耐久性に優れたトンネル内の路側構造物として提供すると共に、該路側構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明に係るトンネル内の路側構造物は、
トンネル覆工体の内側壁からトンネル中心側に所定量離間した地覆上面位置に、予め製造された方形板状またはL型状の側壁部材を、トンネル覆工体の長手方向に沿って複数個連接させて立設され、該側壁部材の上端部に蓋部材取付部を備えた防護側壁と、
前記防護側壁と前記覆工体内側壁との間に、前記地覆上面から前記側壁部材上端より所定高さ下がった位置までコンクリート材を打設して形成された防護床壁と、
前記防護側壁上端部の蓋部材取付部と、前記覆工体の内側壁に形成された蓋部材取付部との間に着脱自由に装着される蓋部材と、
前記蓋部材の下面と前記防護床壁の上面との間の空間に形成されるピット構造と、
を含んで構成される。
【0009】
また、本発明に係るトンネル内の路側構造物の構築方法は、
トンネル覆工体の内側壁からトンネル中心側に所定量離間した地覆上面位置に、予め製造された方形板状またはL型状の側壁部材を、該側壁部材に形成された蓋部材取付部を上端に位置させつつ覆工体の長手方向に沿って複数個連接させて防護側壁を立設し、
前記防護側壁と前記覆工体内側壁との間に、該防護側壁のトンネル中心側への倒れを抑制しつつ、前記床版上面から該側壁部材上端より所定高さ下がった位置までコンクリート材を打設して防護床壁を形成し、
前記側壁部材の蓋部材取付部と、前記覆工体内側壁に形成された蓋部材取付部との間に、蓋部材を着脱自由に取りつけて、前記蓋部材下面と前記防護床壁上面との間の空間にピット構造を形成する
工程を含んで構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地覆上部の蓋部材と防護床壁との間に配線・配管類を配設するためのピット構造となる空間を形成したトンネル内の路側構造物を構築するに際して、予め製造された側壁部材を用いることにより、型枠の設置及び撤去等を省略することができるため、工程数を削減でき、工期を短縮できる。
側壁部材に予め蓋部材取付部が形成されているため、蓋部材を容易に取付られる。
【0011】
また、側壁部材は、所定の大きさに分割されて、十分な高剛性を持たせて形成することが容易にできるため、自動車等の衝突に対して十分な防護機能を維持でき、ひび割れ等の発生も回避され、高耐久性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る路側構造物が構築された自動車用トンネルの内部構造を示す断面図。
【図2】前記路側構造物の詳細を示す断面図。
【図3】前記路側構造物における複数の側壁部材の連接構造を示す平面図及び正面図。
【図4】前記路側構造物の構築方法の第1工程を示す図。
【図5】前記路側構造物の構築方法の第2工程を示す図。
【図6】前記路側構造物の構築方法の第3工程を示す図。
【図7】前記路側構造物の構築方法の第4工程を示す図。
【図8】前記側壁部材の上端部に形成される蓋取付部の第2の例を示す図。
【図9】前記側壁部材の上端部に形成される蓋取付部の第3の例を示す図。
【図10】前記側壁部材の上端部に形成される蓋取付部の第4の例を示す図。
【図11】前記路側構造物の側壁部材と防護床壁とのコンクリート定着性を改善する実施形態を示す断面図。
【図12】前記路側構造物の間隔保持材構造の別の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る路側構造物が構築された自動車用トンネルの内部構造を示す。
本トンネルは地下に形成され、地中を円筒状に掘削したトンネル穴の周囲が、鉄筋コンクリート製のトンネル覆工体1によって覆われている。トンネル覆工体1で囲まれたトンネル内部は、鉄筋コンクリート製の床版2によって上下に区画され、床版2の上面に車道3(本例では、車Cが紙面手前から奥側に向かう方向を走行する車道)が形成されている。
【0014】
床版2は、両側端下部がトンネル覆工体1と一体に打設された床版側壁4,5によって、強固に支持されている。
前記床版側壁4,5のトンネル覆工体1側の上端部は、地覆4a,5aとして、車道3より所定量(10cm程度)高く形成されており、これら地覆4a,5aの上面、つまり車道3の路側に本発明に係る構造物(路側構造物)6,7が構築されている。なお、床版の両側端部がトンネル覆工体付近まで延びているものもあり、この場合は、床版両側部の車道より高く形成された地覆の上面に、本発明に係る路側構造物が構築されることになる。
【0015】
図2は、図1で左側に構築された路側構造物6の詳細を示す。
トンネル覆工体1の内側壁からトンネル中心側に所定量離間した地覆4a上面位置に、工場で予め製造された方形板状の側壁部材11aを、トンネル覆工体1の長手方向に沿って複数個連接して立設することにより、防護側壁11が築造されている。
側壁部材11aは、方形板状の鉄筋コンクリート板又はコンクリート板のプレキャスト部材で形成され、十分な高剛性を持たせて形成されている。また、側壁部材11aの上端部には、後述する蓋部材21の側壁部材11a側の側縁部を取り付けるための蓋部材取付具12の一部として、内周面にネジ孔を形成した筒状のインサート部材12aが埋設されている。
【0016】
側壁部材11aは、上記プレキャスト部材の他、鋼製部材で形成されてもよい。また、方形状板の代わりにL型状の形状としてもよい。
蓋部材取付具12は、以下のように構成されている。L型鋼部材12bのL型をなす水平な平坦部を上側に位置させ、垂直な平坦部に形成された通し穴を、前記インサート部材12aのトンネル覆工体1側に向けられた開口端に重合し、その上からボルト12cを通してインサート部材12aのネジ孔に締結している。
【0017】
L型鋼部材12bの水平な平坦部上面には、下側開放のコ字型鋼部材12dの下端に溶接された平板12eが重合され、該重合部相互がボルト・ナット12fによって締結されている。そして、コ字型鋼部材12dの上壁にネジ孔が形成され、該ネジ孔にネジ12g通して蓋部材21の側壁部材11a側の側縁部が着脱自由に締結されている。
一方、前記側壁部材11a側の蓋部材取付具12に対向するトンネル覆工体1内側壁の高さ位置には、蓋部材21のトンネル覆工体1側の側縁部を取り付けるための蓋部材取付具13が固定されている。該蓋部材取付具13は、以下のように構成されている。L型ブラケット13aのL型をなす一方の平坦部をトンネル覆工体1の内側壁に接合し、通し孔を通した2本のアンカー部材13bによってトンネル覆工体1に固定されている。L型ブラケット13aのL型をなす他方の平坦部は、垂直方向に指向し、該垂直な平坦部と下側開放のコ字型鋼部材13cに溶接されて垂直方向に指向する平板13dとが、重合してボルト・ナットに13eより締結されている。コ字型鋼部材13cの上壁にネジ孔が形成され、該ネジ孔にネジ13fを通して蓋部材21のトンネル覆工体1側の側縁部が着脱自由に締結されている。
【0018】
蓋部材21は、トンネル覆工体1の長手方向に沿って複数に分割されて方形状に形成され、上面が縞状の凹凸を有する縞状鋼板21aの下面に、補強部材21bが縦横にネジ止めにより固定されている。なお、前記蓋部材取付具12,13のコ字型鋼部材12d,13c及びこれに溶接された平板12e,13dは、蓋部材21を取り付けた状態で、蓋部材21の補強部材としての機能も有する。
【0019】
また、側壁部材11aには、間隔保持材22の側壁部材11a側の端部を取り付けるための間隔保持材取付具14が固定されている。間隔保持材22は、後述する防護床壁31を形成するためのコンクリート材打設時に側壁部材11aがトンネル中心側へ倒れることを防止するため配設される。
間隔保持材取付具14は、前記蓋部材取付具12と同様、予め側壁部材11aに埋設されたインサート部材14aとL型鋼部材14bを有するが、L型鋼部材14bの水平な平坦部を下側に位置させ、垂直な平坦部をボルト14cでインサート部材14aに締結した構成を有している。
【0020】
一方、前記側壁部材11a側の間隔保持材取付具14に対向するトンネル覆工体1内側壁の高さ位置には、間隔保持材22のトンネル覆工体1側の端部を取り付けるための間隔保持材取付具15が固定されている。該間隔保持材取付具15は、L型ブラケット15aのL型をなす一方の平坦部をトンネル覆工体1の側壁に接合し、通し孔を通したアンカー部材15bによってトンネル覆工体1に固定した構成を有している。なお、L型ブラケット15aのL型をなす他方の平坦部は、垂直方向に指向する。
【0021】
前記間隔保持材取付具14,15に、ロッド状の間隔保持材22の両端部が固定されている。詳細には、側壁部材11a側の間隔保持材取付具14のL字鋼部材14b水平な平坦部と、トンネル覆工体1側の間隔保持材取付具15のL字型ブラケット15aの垂直な平坦部とに、間隔保持材22の両端部がそれぞれ溶接等によって固定される。
側壁部材11aの下端部は、側壁部材取付具16を介して地覆4a上に固定されている。該側壁部材取付具16は、前記間隔保持材取付具14と同様、予め側壁部材11aに埋設されたインサート部材16aとL型鋼部材16bを有し、L型鋼部材16bの垂直な平坦部をボルト16cでインサート部材16aに締結すると共に、水平な平坦部を下側の床版2上面に接合させてアンカー16dで固定した構成を有している。また、L型状の側壁部材を用いる場合は、L型をなす一方の平坦部を地覆4a上面に水平に設置し、かつ、該平坦部のトンネル中心側の端部から他方のL型をなす他方の平坦部が垂直方向に延びて防護側壁を形成するように設置して、下端部を同様に固定する。
【0022】
そして、間隔保持材22、間隔保持材取付具14,15及び側壁部材取付具16の側壁部材11a及びトンネル覆工体1内側壁から突出した部分を含んで、地覆4aと、トンネル覆工体1内側壁と、側壁部材11aとで挟まれた部分に、地覆4a上面から側壁部材4a上端より所定高さ下がった位置まで、コンクリート材が打設されて、防護床壁31が形成されている。ここで、防護床壁31の高さは、防護床壁31として必要な高さとして、さらに配線・配管類配設用のピット構造として必要な高さを足して側壁部材4aの高さとすることができる。
【0023】
または、歩廊として必要な高さからピット構造として必要な空間の高さを引いて防護床壁の高さとすることができる。望ましくは、側壁部材の50%〜90%である。
防護床壁31上方の開口部が、前記蓋部材21によって閉塞される。また、側壁部材11aの上面には、手摺41(図1参照)のポール41a下端が固定され、蓋部材21の縞状鋼板21aの上面は、歩廊として使用される。
【0024】
一方、蓋部材21の下面と防護床壁31上面との間に形成される空間は、配線・配管類を配設するピット構造51として使用される。詳細には、図1に示すように、床版2下方のコンクリート支持壁4側面に連結されたラック8上に、トンネル覆工体1長手方向に沿ってトンネル内照明等の各種電気配線、通信線、水道配管などの主配線・配管9が配設されている。該主配線・配管9から分岐し、コンクリート支持壁4、地覆4a、防護床壁31内に埋設されて立ち上がる分岐配線・配管9aが前記ピット構造51内に至り、該ピット構造51内をトンネル覆工体1の長手方向に沿って、所定の必要箇所まで引き回して配設される。
【0025】
側壁部材11aは、上述したようにトンネル覆工体1の長手方向に沿って複数個連接され、該連接部は、例えば、図3に示すように、一方の側壁部材11aの端面に形成した突起11bと他方の側壁部材11aの端面に形成した溝11cとを係合させる。さらに、双方に跨るブラケット11dを介して締結されている。但し、側壁部材11aは、コンクリート製の防護床壁31と一体化して強固に連結され、隣接する側壁部材11a相互を連結する力は十分に確保されているので、ブラケット11dは省略してもよい。突起11bと溝11cとの係合によって、防護床壁31築造時のコンクリート材の漏れを防止することができる。
【0026】
かかる構成の路側構造物6によれば、基本的な機能として、十分な高剛性を有する側壁部材11aで形成された防護側壁11及び該防護側壁11と一体に十分な高さを有して形成されたコンクリート製の防護床壁31とによって、車両衝突時の衝撃を十分に吸収緩和することができ、トンネル覆工体1の損傷を良好に防止することができる。
また、トンネル内で事故を発生したときには、蓋部材21の上面を歩廊として使用できる。
【0027】
また、蓋部材21と防護床壁31との間に形成される空間を、配線・配管類を配設するピット構造51として使用することができる。ここで、蓋部材21は、着脱自由に取り付けられるので、蓋部材21を外してピット構造51内に入って、配線・配管類を点検・修理することができる。
次に、上記路側構造物6の構築方法について図4〜図7に従って説明する。
【0028】
まず、側壁部材11aをトンネル覆工体1側壁から所定距離離れた所定の位置に配置し、側壁部材11aのトンネル覆工体1に対向する下端部を、前記側壁部材取付具16を介して地覆4aに固定する(図4参照)。
次に、間隔保持材22を、トンネル覆工体1側及び側壁部材11a側の間隔保持材取付具14,15を介して取り付ける(図5参照)。
【0029】
間隔保持材22の取り付け後、地覆4aと、トンネル覆工体1内側壁と、側壁部材11aとで囲まれた凹状部分に、側壁部材11aの所定の高さまで、コンクリート材を打設する。該コンクリート材が固化されて防護床壁31が形成される(図6参照)。
なお、側壁部材4aの妻側には適宜、型枠を設置してコンクリート材を打設するものとする。
【0030】
また、分岐配線・配管類9aが防護床壁31に埋設される箇所においては、予め、分岐配線・配管類9aを防護床壁形成高さより高位置に引き上げておいてから、コンクリート材を打設し、固化した後、屈曲してトンネル覆工体長手方向に沿って配設する。
次に、トンネル覆工体1側及び側壁部材11a側の蓋部材取付具12,13を固定した後、これら蓋部材取付具12,13に、蓋部材21を着脱自由に取り付ける(図7参照)。
【0031】
かかる構築方法による作用・効果を、従来の構築方法と比較しつつ説明する。
本実施形態の方法では、側壁部材11aを地覆4aに固定し、1本の間隔保持材22を取り付けるだけの簡易な処理後、コンクリート材を打設するだけで側壁部材11aと一体化した防護床壁31を形成することができる。また、蓋部材の防護側壁への取り付けについても、本実施形態では、蓋部材取付具12の一部(インサート部材)が予め側壁部材11aに形成されているため、容易に防護側壁11へ取り付けられる。なお、側壁部材11aは、蓋部材取付構造その他床版への取付構造や間隔保持材取付構造も含め、本トンネルの構築工事と平行して工場で製造することができるから、工期を増大させずに済む。
【0032】
一方、従来方法では、防護側壁形成のため、予め地覆に埋設して上方に突出させたアンカー筋に、鉄筋を固定し、その外側(トンネル中心側)に型枠を設置した後、防護床壁埋設部分の間隔保持材を取り付けた後、初めてコンクリート材の打設を開始される。そして、該コンクリート材を防護床壁の高さ位置まで打設した後、その固化を待ってから鉄筋を挟んでトンネル覆工体内側壁寄りに型枠を設置し、該型枠と、トンネル中心側の型枠との間に、コンクリート材を打設する。
【0033】
コンクリート材が固化した後、これら両側の型枠を外して、ようやく防護側壁の形成が完了する。
さらに、蓋部材の防護側壁への取り付けについても、従来方法では、コンクリート材の固化を待って形成された防護側壁に蓋部材の取付構造を形成してから、蓋部材を取り付ける必要がある。
【0034】
このように、従来方法では、アンカー、鉄筋の取付、型枠の設置及び取り外し、間隔保持材取付本数、切断工程の増加、固化待ちが必要な2段階のコンクリート材打設、防護側壁への蓋部材取付構造の形成などを要し、かかる従来方法に比較し、上記本実施形態に係る方法は、大幅に工程数を減少し、工期を短縮することができることが明らかである。
また、従来方法では、トンネル覆工体の長手方向に沿って連続して防護側壁を打設すると、乾燥収縮等によってコンクリートのひび割れが発生する可能性が高い。
【0035】
これに対し、本実施形態ではトンネル覆工体の長手方向に沿って所定長に分割された側壁部材を用いるため、側壁部材として上記のように鉄筋コンクリート板又はコンクリート板製のプレキャスト部材を用いた場合でも、ひび割れの発生を回避でき、耐久性を維持できる。この効果は、本発明に係る路側構造物の構築方法の効果であると同時に、路側構造物の効果でもある。
【0036】
上記実施形態では、側壁部材11aに蓋部材取付具のうち、インサート部材12aのみを予め埋設したものを示したが、図8に示すように、インサート部材12aに予めL型鋼部材12bをボルト12cで締結した状態まで予め取り付けておく構成としてもよい。さらに、図9に示すように、下側開放のコ字型鋼部材12d及びこれに溶接した平板12eをL型鋼部材12bにボルト・ナット12fで締結した状態、すなわち、蓋部材取付具12の略全体を取り付けておく構成としてもよい。間隔保持材取付具14、側壁部材取付具16についても同様に、工場で予めL型鋼部材14b,16bをボルト14c,16cで締結しておいてもよい。このようにすれば、工期をさらに短縮することが可能となる。
【0037】
なお、蓋部材取付具、間隔保持材取付具、側壁部材取付具の構成は、上記実施形態に示した構成に限定されるものではなく、より簡易な構成とすることもできる。
図10は、側壁部材11aに形成される蓋部材取付構造の別の例を示し、側壁部材11aの頂壁に、蓋部材21の位置ズレを防止しつつ、蓋部材21の側縁部と係合する係合溝11eを形成したものである。この構造では、特別な締結具が不要となり形成が容易である。
【0038】
また、図11に示すように、側壁部材11aの防護床壁31との接合面を、凹凸を有した目粗し面11fに形成すれば、防護床壁31のコンクリート材への定着力が強化され、接合面の剥離を防止することができる。なお、目粗し面11f以外の露出される外表面は、滑らかな仕上げ面11gとしておく。また、側壁部材11aに、防護床壁31側に突出するアンカーを埋設しておいて、防護床壁31のコンクリート材への定着力を高めるように構成することもできる。
【0039】
また、図12に示すように、蓋部材取付具12を用いて間隔保持材22’を連結する構成とすることもでき、防護床壁31形成後に間隔保持材22’を取り外して蓋部材21を取り付ければよく、専用の間隔保持材取付具を省略することができる。あるいは、間隔保持材を少し低位置に設置し、間隔保持材を残したまま、その上に蓋部材を設置する構成としてもよく、このようにすれば、間隔保持材が蓋部材の補強部材としての機能も有する。
【0040】
また、防護床壁用のコンクリート材打設時における側壁部材の倒れ防止は、前記間隔保持材による他、トンネル中心側から側壁部材を押さえて支持する方法もあり、この場合、間隔保持材は省略できる。
図1で車道右側に構築される路側構造物7も、手摺を有しない点が相違するが、それ以外の基本的な構造は上記路側構造物と同様であり、構築方法も同様であるので、説明を省略する。
【符号の説明】
【0041】
1…トンネル覆工体
2…床版
3…車道
6,7…路側構造物
9a…分岐配線・配管類
11…防護側壁
11a…側壁部材
12…側壁部材側の蓋部材取付具
12a…インサート部材
12c…ボルト
12d…コ字型鋼部材
12e…平板
12f…ボルト・ナット
12g…ネジ
13…トンネル覆工体側の蓋部材取付具
13a…L型ブラケット
13b…アンカー部材
13c…コ字型鋼部材
13d…平板
13e…ボルト・ナット
13f…ネジ
14…側壁部材側の間隔保持材取付具
15…トンネル覆工体側の間隔保持材取付具
16…側壁部材取付具
21…蓋部材
21a…縞状鋼板
22,22’…間隔保持材
31…防護床壁
51…ピット構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の路側に構築される構造物であって、
トンネル覆工体の内側壁からトンネル中心側に所定量離間した地覆上面位置に、予め製造された方形板状またはL型状の側壁部材を、トンネル覆工体の長手方向に沿って複数個連接させて立設され、該側壁部材の上端部に蓋部材取付部を備えた防護側壁と、
前記防護側壁と前記覆工体内側壁との間に、前記地覆上面から前記側壁部材上端より所定高さ下がった位置までコンクリート材を打設して形成された防護床壁と、
前記防護側壁上端部の蓋部材取付部と、前記覆工体の内側壁に形成された蓋部材取付部との間に着脱自由に装着される蓋部材と、
前記蓋部材の下面と前記防護床壁の上面との間の空間に形成されるピット構造と、
を含んで構成されるトンネル内の路側構造物。
【請求項2】
前記側壁部材は、コンクリート又は鉄筋コンクリート製のプレキャスト部材、または鋼製部材である請求項1に記載のトンネル内の路側構造物。
【請求項3】
前記側壁部材の蓋部材取付部は、前記蓋部材を取り付けるため予め前記側壁部材に連結された取付具、又は該取付具を連結するため予め前記側壁部材に形成された取付構造である請求項1又は請求項2に記載のトンネル内の路側構造物。
【請求項4】
前記防護床壁は、前記コンクリート材の打設による前記側壁部材のトンネル中心側への倒れを防止するため、該埋設前に覆工体の内側壁と側壁部材との間に連結される間隔保持材を一体に含む請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のトンネル内の路側構造物。
【請求項5】
前記側壁部材は、前記プレキャスト部材であり、防護床壁のコンクリート材との接合面が、凹凸を有した目粗し面に形成されている請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載のトンネル内の路側構造物。
【請求項6】
前記蓋部材は、人が歩けるような剛性を持たせることで歩廊となる請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のトンネル内の路側構造物。
【請求項7】
トンネル内の路側に構造物を構築する方法であって、
トンネル覆工体の内側壁からトンネル中心側に所定量離間した地覆上面位置に、予め製造された方形板状またはL型状の側壁部材を、該側壁部材に形成された蓋部材取付部を上端に位置させつつ覆工体の長手方向に沿って複数個連接させて防護側壁を立設し、
前記防護側壁と前記覆工体内側壁との間に、該防護側壁のトンネル中心側への倒れを抑制しつつ、前記床版上面から該側壁部材上端より所定高さ下がった位置までコンクリート材を打設して防護床壁を形成し、
前記側壁部材の蓋部材取付部と、前記覆工体内側壁に形成された蓋部材取付部との間に、蓋部材を着脱自由に取りつけて、前記蓋部材下面と前記防護床壁上面との間の空間にピット構造を形成する
工程を含んで構成されるトンネル内の路側構造物構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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