説明

トンネル内道床部の構築方法及びその道床部

【課題】本発明は、簡便な施工で、構築中の道床部区間に工事車両等が安全に通行できる通路を確保可能なトンネル内道床部の構築方法及びその道床部を提供する。
【解決手段】本発明に係るトンネル内に道床部を構築する方法は、トンネル内の底部中央に、所定高さに所定幅の上面を有する台座部材14を、トンネル軸方向に、上面が略水平になるように連続して設置する台座部材設置工程S20と、連続して設置された台座部材14の両側のトンネル10の底部の空間に、埋め戻し材を敷設して埋め戻す埋め戻し工程S30とを含み、連続して設置された台座部材14の上面を、構築中の前記道床部区間を移動するための通路として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に道床部を構築する技術に係り、特に構築中の道床部区間に工事車両等が安全に通行可能な通路を確保する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トンネル内の道床部の構築とトンネルの掘削とを同時に並行して施工するにあたり、構築中の道床部区間を、掘削先端部への資材の搬入や掘削先端部からの土砂の搬出等の際の移動経路として利用できるようにするため、当該道床部の構築区間に、例えば、工事車両等が通行可能な仮設の橋を設置する方法や、特許文献1に開示されるような道床部を構築する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、トンネル内底部の片側に道床部の一部を先行してコンクリート等を打設することにより、その道床部が硬化するまで、他方側のトンネル底面を工事車両等の通路として使用しておき、道床部の硬化後は、当該道床部上を通路に変更して他方側の残りの道床部を構築する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−138886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の仮設の橋を設置する方法では、その設置や取替えの作業に手間、施工時間、及び施工コストがかかる。
【0005】
また、後者の特許文献1に記載される道床部の構築方法では、例えば、トンネル底面の曲率が大きい場合には、先行して構築される道床部を必要最小幅に設定しても、他方側のトンネル底面の傾斜が急峻になって、例えば、土砂運搬車等が走行するときに、横方向に傾いて積載する土砂等がこぼれたり、安全に走行できなかったりするおそれがある。また、トンネルの幅が、工事車両同士が離合できないような狭小である場合には、この道床部の構築方法は利用できない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡便な施工で、構築中の道床部区間に工事車両等が安全に通行できる通路を確保可能なトンネル内道床部の構築方法及びその道床部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、トンネル内に道床部を構築する方法であって、
前記トンネル内の底部中央に、所定高さに所定幅の上面を有する台座部材を、前記上面が略水平になるようにトンネル軸方向に連続して設置する台座部材設置工程と、
前記連続して設置された台座部材の両側の前記トンネル底部の空間に、埋め戻し材を敷設して埋め戻す埋め戻し工程とを含み、
前記連続して設置された台座部材の上面を、前記構築中の道床部区間を移動するための通路として用いることを特徴とする(第1の発明)。
本発明のトンネル内道床部の構築方法によれば、台座部材の上面を、構築中の道床部区間を移動するための通路として用いることにより、工事車両等を安全に通行させることができる。
【0008】
また、トンネルの幅が狭小であっても、少なくとも1台の車両が通行可能な幅を有していれば、構築中の道床部区間を通行させることができる。
また、台座部材は、その上面が通路に利用されるだけでなく、道床部の一部となるので、敷設すべき埋め戻し材の量を低減できる。
また、台座部材の設置後、埋め戻し工程を施工する間に、台座部材上の通路を、掘削先端部への工事車両等の資材や廃材の搬入出に利用できるので、トンネル内の道床部の構築とトンネルの掘削とを同時に並行して施工することができ、工期短縮に寄与できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記台座部材設置工程の前に、前記トンネルの内周底面に、上面に略水平部を有する構造物をトンネル軸方向に連続して設置する水平部形成工程を含み、前記台座部材設置工程では、前記台座部材を、前記水平部形成工程で形成された前記構造物の上面に、トンネル軸方向に連続して設置することを特徴とする。
本発明のトンネル内道床部の構築方法によれば、台座部材を、水平部形成工程で形成された略水平部の上に安定させて設置できる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記構造物は、略平面状の上面と、前記トンネルの内周底面に対応する形状を有する下面とを有する敷材を敷設することにより構築されることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、前記敷材として、インバートブロックを用いることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第1〜4の何れかの発明において、前記通路に軌道を敷設して、前記軌道上を移動する貨車を設置し、前記貨車を、資材や廃材を搬送する搬送手段として用いることを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第1〜5の何れかの発明において、前記埋め戻し材として、砕石及び流動化処理土を用いることを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、第1〜5の何れかの発明において、前記埋め戻し材の少なくとも一部として、前記トンネルを掘削した際に発生した掘削土に、前記掘削土を固化させるための固化材を混合したもの、又は前記掘削土を脱水したものを用いることを特徴とする。
本発明のトンネル内道床部の構築方法によれば、トンネルを掘削した際に発生した掘削土を、道床部を構築するための材料として有効活用することにより、掘削土をトンネル外に搬出する手間を軽減できるとともに、道床部を構築する材料のコスト及び材料を搬入する手間も軽減できる。
【0015】
第8の発明は、トンネル内に構築される道床部であって、前記トンネル内の底部中央に、所定高さに所定幅の上面を有する台座部材を、前記上面が略水平になるようにトンネル軸方向に連続して設置し、前記連続して設置された台座部材の両側の前記トンネル底部の空間に、埋め戻し材を敷設してなることを特徴とする。
【0016】
第9の発明は、第8の発明において、前記台座部材は、カルバートであることを特徴とする。
本発明のトンネル内に構築される道床部によれば、安価に台座部材を調達できる。
また、カルバートは内部が中空になっているので、トンネル施工時の掘削先端部への材料搬入路、又はトンネル供用時の配線路、排水路、或いは点検や非常時の通路等として使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡便な施工で、構築中の道床部区間に工事車両等が安全に通行できる通路を確保可能なトンネル内道床部の構築方法及びその道床部を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るトンネル内に道床部を構築する工程を示す工程図である。
図1に示すように、道床部は、インバート構築工程S10、台座部材設置工程S20、及び埋め戻し工程S30からなる施工により構築される。
【0019】
図2は、インバート構築工程S10及び台座部材設置工程S20の詳細を説明するための図であり、同図(a)はトンネル延長方向の縦断面図、同図(b)は同図(a)におけるA−A横断面図、同図(c)は同図(a)におけるB−B横断面図を示す。
図2(a)に示すように、本実施形態は、本発明が例えば掘削及び覆工(図中左側)を妨げることなく、トンネル内に道床部の構築する場合に適用されたものである。
【0020】
先ず、インバート構築工程S10では、例えば、トンネル10の底部中央にインバートブロック12をトンネル軸方向に連続して敷設することにより、トンネル10の底部中央にインバート部(水平面)を構築する。
【0021】
インバートブロック12は、略平面状の上面と、セグメント13の内周面に対応する形状の下面とを有するプレキャストコンクリート材である。インバートブロック12は、その上面が、後述する台座部材14が載置できる程度の幅を有するように設計されている。
【0022】
インバートブロック12は、後述する台座部材設置工程S20で敷設済みの台座部材14上を移動する貨車18(例えば、貨車)によりトンネル10の坑口側からインバートブロック12の設置位置付近まで運搬され、資材搬送用クレーン16によりトンネル10の底面中央に設置される(図2(b)参照)。
【0023】
なお、インバート構築工程S10では、トンネル10の底部中央にインバート部(水平面)を構築するにあたりインバートブロック12を用いているが、これに限らず、例えば、トンネル10の底部に直接コンクリートを打設したり、予めインバート部を有するセグメントをトンネル覆工時にトンネル10の底部に配置してもよい。
【0024】
台座部材設置工程S20では、インバート構築工程S10で設置されたインバートブロック12の上に、台座部材14をトンネル軸方向に連続して敷設する。
【0025】
台座部材14には、例えば、断面が矩形状を有し内部が中空である、ボックス(箱形)又は門形のカルバートを用いる。ただし、台座部材14は、インバートブロック12上に載置された際に、その上面が水平になり、かつ貨車18が移動するために必要な幅を有するとともに、上面を通行する、資材等を積載した貨車18の重量を支持できる強度を有していれば、矩形状に限らず、台形形状等であってもよい。台座部材14の高さは、例えば、インバートブロック12上に載置された台座部材14の上面が、トンネル10内に構築する道床部の高さになるように設定する。
【0026】
台座部材14もインバートブロック12と同様に、既に敷設された台座部材14上を移動する貨車18により敷設領域付近まで運搬され、資材搬送用クレーン16によりインバートブロック12上に設置される(図2(c)参照)。
【0027】
連続設置された台座部材14上には、貨車18を走行させるための軌道20が敷設される。貨車18は、前述のインバートブロック12並びに台座部材14以外に、例えば掘削に使用される資材や覆工用のセグメント13等の運搬に用いられる。また、軌道20は、軌道20上も走行可能なダンプトラック(以下、軌陸車22という)の走行路としても使用される。なお、台座部材14上の幅が充分に大きい場合には、軌道20を敷設することなく、そのまま工事車両等を走行させてもよい。
【0028】
図3は、埋め戻し工程S30の詳細を説明するための図であり、同図(a)はトンネル延長方向の縦断面図、同図(b)は同図(a)におけるC−C横断面、図(c)は同図(a)におけるD―D横断面図、図(d)は同図(a)におけるE―E横断面図である。
【0029】
図3に示すように、埋め戻し工程S30では、連続して敷設された台座部材14の両側の、トンネル10の底部の埋め戻し領域X,Yに、埋め戻し材を敷設する(同図(b)〜(d)参照)。
【0030】
埋め戻し工程S30では、例えば、砕石24を敷設するステップS310と、砕石層の上に流動化処理土を打設するステップS320と、流動化処理土層の上に再度砕石を敷設するステップS330とにより領域X,Yを埋め戻していく。
【0031】
ステップS310では、例えば、軌道20を走行する軌陸車22により埋め戻し領域X,Yまで運搬した砕石24を、台座部材14上から底部に投入する。なお、軌陸車22は横方向に荷台が傾斜して砕石24を両側の埋め戻し領域X,Yに投入できるようになっている。領域X,Yの底部に投下された砕石24は、振動ローラ26等を用いて締め固めながら整地していく。
【0032】
ステップS320では、一度に又は領域によっては複数回に分けて流動化処理土28を打設する(図3では2回に分けている)。
【0033】
流動化処理土28は、泥水にセメントを混合した埋め戻し材である。流動化処理土28は、既に構築された道床部32やトンネル10の外部又は内部に設置されたプラント等で混合処理されて、埋め戻し領域X,Yまで打設管30を通じて圧送される。打設管30は、台座部材14上や、既に固化した流動化処理土28上を用いて領域X,Yまで延長させる。また、埋め戻し工程S30は、領域X,Yにおいて同時に施工してもよく、また別々に施工してもよい。
【0034】
ステップS330では、流動化処理土28が充分に養生固化した後、台座部材14上の軌道20や固化した流動化処理土28上を、軌陸車22やその他ダンプトラック等を通行させて砕石24を運搬し、流動化処理土28上に敷設する。整地作業は、上記ステップS310と同様にして行う。そして、砕石24の表面が台座部材14の上面と同レベルになるまで砕石24を敷設して整地することにより、道床部32の構築が完了する。
【0035】
以上説明した本実施形態の道床部を構築する方法によれば、トンネル内の底部中央に、台座部材14をトンネル軸方向に、上面が水平になるように連続して設置する台座部材設置工程S20と、台座部材14の両側のトンネル10の底部の空間X,Yに、埋め戻し材を敷設して埋め戻す埋め戻し工程S30とを含み、台座部材14の上面を、構築中の道床部区間を移動するための通路として用いることにより、工事車両等を安全に通行させることができる。
【0036】
また、トンネル10の幅が狭小であっても、少なくとも1台の車両が通行可能な幅を有していれば、構築中の道床部区間を通行させることができる。
【0037】
また、台座部材14は、その上面が通路に利用されるだけでなく、道床部の一部となるので、敷設すべき埋め戻し材の量を低減できる。
【0038】
また、台座部材14の設置後、埋め戻し工程S30を施工する間に、台座部材14上の軌道20を、掘削先端部への工事車両等の資材や廃材の搬入出に利用できるので、トンネル内の道床部の構築とトンネル10の掘削とを同時に並行して施工することができ、工期短縮に寄与できる。
【0039】
また、台座部材14を、インバート構築工程S10により構築されたインバート部(水平部)の上に設置することにより、台座部材14を安定させることができる。
【0040】
さらに、台座部材14として、ボックスカルバート又は門形カルバートを用いることにより、安価に台座部材14を調達できる。また、カルバートは内部が中空になっているので、トンネル施工時の掘削先端部への材料搬入路、又はトンネル供用時の配線路、排水路、或いは点検や非常時の通路等として使用することができる。
【0041】
なお、本実施形態の台座部材設置工程S20では、インバート構築工程S10によってインバート部(水平面)を構築し、その後インバート部上に台座部材14を設置するとしているが、これに限らず、セグメント13が台座部材14を直に載置できるように形成されている場合には、本インバート構築工程S10は省略してもよい。
【0042】
また、台座部材14には、カルバートに限らず、所定の高さに所定幅の上面を有し、その上を通行する工事車両等の重量を支持する強度を備えるものであればよい。
【0043】
また、本実施形態の埋め戻し工程S30では、埋め戻し材として砕石24及び流動化処理土28を用いたが、この流動化処理土28の原材料として、トンネル10を掘削した際に発生した掘削土を用いてもよい。また、流動化処理土28に限らず、掘削土に、掘削土を固化させるための固化材を混合したもの(例えば、セメント)、又は掘削土を脱水したものを用いてもよい。このようにすれば、掘削土をトンネル10外に搬出する手間を軽減できるだけでなく、道床部32を構築する材料のコスト及び材料を搬入する手間も軽減できる。なお、この場合、掘削土に砕石24が含まれていれば、上記説明した道床部32の底部や表面に別途敷設する砕石24は用いなくてもよい。
【0044】
また、本実施形態の道床部を構築する方法の説明は、シールドトンネル内での施工としたが、山岳トンネルにおいても適用してもよい。また、トンネル断面は、円形に限らず、楕円形、矩形でも適用できることは勿論である。なお、トンネル断面が矩形である場合は、その底面形状にあわせて平面状の下面を有するインバートブロック12を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に係るトンネル内に道床部を構築する工程を示す工程図である。
【図2】インバート構築工程S10及び台座部材設置工程S20の詳細を説明するための図である。
【図3】埋め戻し工程S30の詳細を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
10 トンネル
12 インバートブロック
13 セグメント
14 台座部材
16 資材搬送用クレーン
18 貨車
20 軌道
22 軌陸車
24 砕石
26 振動ローラ
28 流動化処理土
30 打設管
32 道床部
S10 インバート構築工程
S20 台座部材設置工程
S30 埋め戻し工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に道床部を構築する方法であって、
前記トンネル内の底部中央に、所定高さに所定幅の上面を有する台座部材を、前記上面が略水平になるようにトンネル軸方向に連続して設置する台座部材設置工程と、
前記連続して設置された台座部材の両側の前記トンネル底部の空間に、埋め戻し材を敷設して埋め戻す埋め戻し工程とを含み、
前記連続して設置された台座部材の上面を、前記構築中の道床部区間を移動するための通路として用いることを特徴とするトンネル内道床部の構築方法。
【請求項2】
前記台座部材設置工程の前に、前記トンネルの内周底面に、上面に略水平部を有する構造物をトンネル軸方向に連続して設置する水平部形成工程を含み、
前記台座部材設置工程では、前記台座部材を、前記水平部形成工程で形成された前記構造物の上面に、トンネル軸方向に連続して設置することを特徴とする請求項1に記載のトンネル内道床部の構築方法。
【請求項3】
前記構造物は、略平面状の上面と、前記トンネルの内周底面に対応する形状を有する下面とを有する敷材を敷設することにより構築されることを特徴とする請求項2に記載のトンネル内道床部の構築方法。
【請求項4】
前記敷材として、インバートブロックを用いることを特徴とする請求項3に記載のトンネル内道床部の構築方法。
【請求項5】
前記通路に軌道を敷設して、前記軌道上を移動する貨車を設置し、
前記貨車を、資材や廃材を搬送する搬送手段として用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか記載のトンネル内道床部の構築方法。
【請求項6】
前記埋め戻し材として、砕石及び流動化処理土を用いることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のトンネル内道床部の構築方法。
【請求項7】
前記埋め戻し材の少なくとも一部として、前記トンネルを掘削した際に発生した掘削土に、前記掘削土を固化させるための固化材を混合したもの、又は前記掘削土を脱水したものを用いることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のトンネル内道床部の構築方法。
【請求項8】
トンネル内に構築される道床部であって、
前記トンネル内の底部中央に、所定高さに所定幅の上面を有する台座部材を、前記上面が略水平平面になるようにトンネル軸方向に連続して設置し、
前記連続して設置された台座部材の両側の前記トンネル底部の空間に、埋め戻し材を敷設してなることを特徴とするトンネル内の道床部。
【請求項9】
前記台座部材は、カルバートであることを特徴とする請求項8に記載のトンネル内の道床部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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