説明

トンネル内道路構造

【課題】運転者の斜め前方の視界に入る通行人を覆い隠して、運転者の脇見運転を防ぎ、トンネル内の照明をできるだけ採光して通路を明るく照らす構成のトンネル内道路構造を提供する。
【解決手段】トンネル2内に、車道20、通路21、照明23及び目隠しフェンス1を備える。目隠しフェンス1は、通路21の縁部に沿って設置された複数の支柱5と、各支柱5の間に取り付けられたビーム材6と、ビーム材6に取り付けられたフェンスパネル3とで構成されている。フェンスパネル3は、車道20を平面的に見て境界の長手方向へ連続する波形状に設置され、車両22の進行方向において運転者の斜め前方に見える面が無孔面30とされ、車両22が通過して運転者の後方に見える面が多数の孔を有する有孔面31とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル内に、車道と、該車道の側部に車道よりも高く構築された通路と、トンネル内の上方に設置される照明と、通路の縁部に沿って設置される目隠しフェンスとを備えるトンネル内道路構造の技術分野に属し、更に云えば、運転者の斜め前方の視界に入る通行人を覆い隠して(以下、目隠しという。)、運転者の脇見運転を防ぎ、また、トンネル内の照明をできるだけ採光して通路を明るく照らす構成のトンネル内道路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内道路構造は、例えば下記特許文献1及び2に記載されているように、トンネル内に車道と、該車道の側部に車道よりも高く構築された通行人用の通路又は監視員用の通路と、トンネル内の上方に設置される照明とを備えた構成が広く一般的に知られている。前記トンネル内の車道と通路との境界線には、安全用又は転落防止用の手摺りが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−9053号公報
【特許文献2】特開2005−48532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネル内の通路は、普段は人が通らないと思われており、そのような通路に、例えば点検作業中の作業員が歩いていたり、たまたま通行者が歩いていると、運転者はその作業員や通行人に注意をとられ、脇見運転して事故に繋がる危険性が懸念される。しかし、トンネル内の車道と通路の境界に沿って目隠しフェンスを構築し、通路の通行人の人影を運転者の視界から覆い隠して運転者の脇見運転を防止することができるトンネル内道路構造は、未だ見聞されない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、トンネル内に車道と、該車道の側部に車道よりも高く構築された通路と、前記トンネル内の上方に設置される照明と、前記通路の縁部に沿って設置される目隠しフェンスとを備えるトンネル内道路構造とし、通路の通行人の人影を運転者の斜め前方の視界からは覆い隠して運転者の脇見運転を防止することができ、また、暗いトンネル内の照明をできるだけ採光して通路の明かりを確保でき通路の通行人が歩き易く、且つ車道の状況を確認することもでき、更に車道を走る車両が誘発する風圧を遮って通行人の歩行を容易にする構成のトンネル内道路構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るトンネル内道路構造は、
トンネル内に、車道と、該車道の側部に車道よりも高く構築された通路と、前記トンネル内の上方に設置される照明と、前記通路の縁部に沿って設置される目隠しフェンスとを備えるトンネル内道路構造であって、
前記目隠しフェンスはフェンスパネルで構成されており、
前記フェンスパネルは、車道を平面的に見て境界の長手方向へ連続する波形状に設置され、車両の進行方向において運転者の斜め前方に見える面が無孔面とされ、車両が通過して運転者の後方に見える面が多数の孔を有する有孔面とされていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明に係るトンネル内道路構造は、
トンネル内に、車道と、該車道の側部に車道よりも高く構築された通路と、前記トンネル内の上方に設置される照明と、前記通路の縁部に沿って設置される目隠しフェンスとを備えるトンネル内道路構造であって、
前記目隠しフェンスは、通路の縁部に沿って一定の間隔で設置された複数の支柱と、各支柱に支持されて横並びに配置されたフェンスパネルとで構成されており、
前記フェンスパネルは、車道を平面的に見て境界の長手方向へ連続する波形状に設置され、車両の進行方向において運転者の斜め前方に見える面が無孔面とされ、車両が通過して運転者の後方に見える面が多数の孔を有する有孔面とされていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明に係るトンネル内道路構造は、
トンネル内に、車道と、該車道の側部に車道よりも高く構築された通路と、前記トンネル内の上方に設置される照明と、前記通路の縁部に沿って設置される目隠しフェンスとを備えるトンネル内道路構造であって、
前記目隠しフェンスは、通路の縁部に沿って一定の間隔で設置された複数の支柱と、各支柱の間に水平方向の取り付けられたビーム材と、該ビーム材に沿って横並びの配置で同ビーム材に取り付けられたフェンスパネルとで構成されており、
前記フェンスパネルは、車道を平面的に見て境界の長手方向へ連続する波形状に設置され、車両の進行方向において運転者の斜め前方に見える面が無孔面とされ、車両が通過して運転者の後方に見える面が多数の孔を有する有孔面とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した発明に係るトンネル内道路構造において、
フェンスパネルは、車両の進行方向に無孔面と有孔面とが交互に繰り返して配置された構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトンネル内道路構造は、目隠しフェンス1のフェンスパネル3をトンネル2内の車道20を平面的に見て境界の長手方向へ波形状に設置し、車両22の進行方向において運転者の斜め前方に見える面を無孔面30に構成したので、運転者の斜め前方の視界には、通路21の通行人の人影を目隠しすることができ、運転者の脇見運転を防ぐことができる。また、車両22が通過して運転者の後方に見える面を有孔面31に構成したので、暗いトンネル2内でも車道20を照らす照明23を有孔面31から採光して通路21の歩行に支障のない程度の明るさに照らすことができる。一方、通路21の通行人は、前記有孔面31を通じて車道20の状況を確認することができるので、心理的に安心感が得られる。更に車道20を走る車両22が誘発する風圧を遮って通行人の歩行を容易にすることができる。また、有孔面31から適度に通風が可能なので、閉鎖空間であるトンネル2内において更に目隠しフェンス1によって、車道20と通路21を仕切った構成であっても、適度な通風により通路21内の空気のよどみが解消される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】トンネル内道路構造を示す断面図である。
【図2】実施例1に係る目隠しフェンスを示す斜視図である。
【図3】(A)は目隠しフェンスの正面図、(B)は同目隠しフェンスの側面図である。
【図4】実施例1に係る目隠しフェンスの背面図である。
【図5】目隠しフェンスと車両との関係を示す平面図である。
【図6】(A)は図4のVI部拡大図、(B)は(A)の平面図である。
【図7】図4のVII部拡大図である。
【図8】フェンスパネルの異なる形状を示す拡大平面図である。
【図9】(A)は実施例2に係る目隠しフェンスを示す正面図、(B)は同目隠しフェンスの側面図である。
【図10】実施例2に係る目隠しフェンスの背面図である。
【図11】(A)は図10のXI部拡大図、(B)は(A)の平面図である。
【図12】図10のXII部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のトンネル内道路構造は、トンネル2内に、車道20と、車道20の側部に車道20よりも高く構築された通路21と、トンネル2内の上方に設置される照明23と、通路21の縁部に沿って設置される目隠しフェンス1とを備えた構成である。目隠しフェンス1は、通路21の縁部に沿って一定の間隔で設置した複数の支柱5と、各支柱5の間に水平方向の取り付けたビーム材6と、該ビーム材6に沿って横並びの配置で同ビーム材6に取り付けたフェンスパネル3とで構成する。フェンスパネル3は、車道20を平面的に見て境界の長手方向へ連続する波形状に設置し、車両22の進行方向において運転者の斜め前方に見える面が無孔面30とし、車両22が通過して運転者の後方に見える面が多数の孔を有する有孔面31とする。
【実施例1】
【0013】
以下に、本発明に係るトンネル内道路構造を、図示した実施例に基づいて説明する。
本実施例のトンネル内道路構造は、図1及び2に示すように、トンネル2内に、車道20と、該車道20の一方の側部(図1の場合は左側)に車道20よりも1.0〜1.2m程度高く構築された通行人用又は監視員用の通路21と、前記トンネル2内の上方に車道20の長手方向に沿って間隔をあけて複数設置されて同車道20を照らす照明23…と、前記通路21の縁部に沿って設置された目隠しフェンス1とを備えた構成である。図示した実施例のトンネル内道路構造は、高速道路等で見られる2車線の一方通行型である。
【0014】
前記目隠しフェンス1は、図3及び4に示すように、トンネル2内の車道20と通路21の境界に沿って約3mの間隔で設置された複数の支柱5…と、各支柱5の間に水平方向の取り付けられた手摺り7及びビーム材6、6(図示例の場合は2本)と、該ビーム材6に沿って横並びの配置で同ビーム材6に取り付けられたフェンスパネル3とで構成されている。
【0015】
上記フェンスパネル3は、一例として高さが2m程度で、厚さが1.6mm程度の鋼板を台形波状に成形したものが使用されている。前記フェンスパネル3を使用した目隠しフェンスは、図2〜4に示すように、隣合うフェンスパネル3、3のフランジ面32、32の縦縁同士を突き合わせ、同突き合わせた縦縁の上部に、フェンスパネル3の正面側と背面側から巾止金具4を当てがい、同巾止金具4とフランジ面32とに共通に設けた左右の通し孔へ正面側からボルトを通し、背面側で前記ボルトの先端をナットで締め付けて連結することより、車道20を図5に示すように平面的に見て連続する台形波形状に構成されている。前記目隠しフェンス1は、図2〜5に示すように、車両22の進行方向において運転者の斜め前方に見える斜面30と頂面33とを無孔面30で構成し、車両22が通過して運転者の後方に見える斜面31を、多数の縦長孔(一例として縦×横の寸法が50×14mm程度)を上下・左右方向に規則的な行列で設けて30〜40%程度の開口率とした有孔面31で構成している。つまり、1枚の台形波形状のフェンスパネル3の構成として、図2のとおり、無孔面30と有孔面31とが設けられている。
なお、前記フェンスパネル3は、図示した実施例の形状、構成に限定されず、例えば図8に示すように、平面的に見てのこぎり波形状に形成された構成で実施することもできる。また、図示することは省略したが、平面的に見てV字形状又は波形状に形成した構成で実施することもできる。
また、前記目隠しフェンス1は、図8及び図9に示すように、隣合うフェンスパネル3のフランジ面32、32同士を重ね合わせて、両フランジ面32、32に共通に設けた孔へ正面側からボルトを通し、ボルトの先端をナットで締め付けて連結した構成で実施することもできる。
【0016】
上記ビーム材6は、図6(A)、(B)に示すように、アングル材で構成されており、端部を支柱5の側面に溶接等で固定されたL字形状の取付金具51に重ね合わせ、同端部と取付金具51とを左右2個のボルト51a、51aで接合することにより前記支柱5と支柱5の間へ取り付けられている。このビーム材6に沿って横並びに配置された上記構成のフェンスパネル3が、フランジ面32と前記ビーム材6とに共通に設けた連結孔へ正面側から通した2個のボルト6a、6aを背面側からナットで締め付けることにより、同ビーム材6へ取り付けられている。
【0017】
上記手摺り7は、図4及び7に示すように、端部を支柱5の上端面に固定した水平な支持部材50へボルト50aで固定されて前記支柱5と支柱5の間へ取り付けられている。なお、図示することは省略したが、前記フェンスパネル3は、前記手摺り7へ取り付けた構成で実施することもできる。
【0018】
したがって、本実施例の目隠しフェンス1は、フェンスパネル3をトンネル2内の車道20を平面的に見て境界の長手方向へ波形状に設置し、車両22の進行方向において運転者の斜め前方に見える面を無孔面30に構成したので、図5に示すように、運転者の斜め前方の視界には、通路21の通行人の人影を目隠しすることができ、運転者の脇見運転を防ぐことができる。また、車両22が通過して運転者の後方に見える面を有孔面31に構成したので、暗いトンネル2内でも車道20を照らす照明23を有孔面31から採光して通路21に歩行に支障のない程度の明かりを照らすことができる。一方、通路21の通行人は、前記有孔面31を通じて車道20の状況を確認することができるので、心理的に安心感が得られる。更に車道20を走る車両22が誘発する風圧を遮って通行人の歩行を容易にすることができる。また、有孔面31から適度に通風が可能なので、閉鎖空間であるトンネル2内において更に目隠しフェンス1によって、車道20と通路21を仕切った構成であっても、適度な通風により通路21内の空気のよどみが解消される。
【0019】
なお、前記目隠しフェンス1は、図示することは省略したが、支柱5とビーム材6を用いることなく、フェンスパネル3のみで構成し、同フェンスパネル3を通路21の縁部に沿って設置した構成で実施することもできる。この場合、トンネル2内の通路21の縁部に沿って既に設置されている手摺り構造(例えば下記特許文献4および5を参照)に、フェンスパネル3を取り付けた構成としても良い。
【0020】
また、前記フェンスパネル3は、通路21の縁部に沿って一定の間隔で設置された複数の支柱5と、各支柱5に支持されて横並びに配置され、同支柱5に取り付けられたフェンスパネル3とで構成して実施することもできる。
【実施例2】
【0021】
図9〜12に示す実施例2のトンネル内道路構造は、上述した実施例1のトンネル内道路構造とほぼ同様の構成であるが、目隠しフェンス1’の構成が、通路21に設置した支柱5と支柱5との間にフェンスパネル3を横並びの配置で設置した構成である点おいて実施例1のトンネル内道路構造と異なる。
【0022】
具体的には、図10及び図11に示すように、溝形材で構成されたビーム材6が、開口部を通行人側へ向けて配置され、ウェブと支柱5とをボルト50bで接合して同支柱5と支柱5の間へ固定されている。隣合うビーム材6、6は、溝部に共通に設置した連結金具8と各ウェブをボルト8a…で接合することにより連結されている。このビーム材6に沿って横並びに配置されたフェンスパネル3は、同隣合うフェンスパネル3のフランジ面32を重ね合わせ、同フランジ面32、32とビーム材6とに共通に設けられた連結孔へ正面側からボルト6aを通し、背面側でナットを締めつけることにより、ビーム材6へ取り付けられている。
なお、前記支柱5と支柱5の間へ取り付けられた水平方向の手摺り7は、図12に示すように、その端部を支柱5に取り付けられた支持部材50へボルト50aで接合されて同支柱5に取り付けられている。図示することは省略したが、前記フェンスパネル3は、前記手摺り7や支柱5へ取り付けて設置した構成で実施することもできる。
【0023】
以上に実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施形態の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する
【符号の説明】
【0024】
1 目隠しフェンス
2 トンネル
20 車道
21 通路
22 車両
23 照明
3 フェンスパネル
30 無孔面
31 有孔面
5 支柱
6 ビーム材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に、車道と、該車道の側部に車道よりも高く構築された通路と、前記トンネル内の上方に設置される照明と、前記通路の縁部に沿って設置される目隠しフェンスとを備えるトンネル内道路構造であって、
前記目隠しフェンスはフェンスパネルで構成されており、
前記フェンスパネルは、車道を平面的に見て境界の長手方向へ連続する波形状に設置され、車両の進行方向において運転者の斜め前方に見える面が無孔面とされ、車両が通過して運転者の後方に見える面が多数の孔を有する有孔面とされていることを特徴とする、トンネル内道路構造。
【請求項2】
トンネル内に、車道と、該車道の側部に車道よりも高く構築された通路と、前記トンネル内の上方に設置される照明と、前記通路の縁部に沿って設置される目隠しフェンスとを備えるトンネル内道路構造であって、
前記目隠しフェンスは、通路の縁部に沿って一定の間隔で設置された複数の支柱と、各支柱に支持されて横並びに配置されたフェンスパネルとで構成されており、
前記フェンスパネルは、車道を平面的に見て境界の長手方向へ連続する波形状に設置され、車両の進行方向において運転者の斜め前方に見える面が無孔面とされ、車両が通過して運転者の後方に見える面が多数の孔を有する有孔面とされていることを特徴とする、トンネル内道路構造。
【請求項3】
トンネル内に、車道と、該車道の側部に車道よりも高く構築された通路と、前記トンネル内の上方に設置される照明と、前記通路の縁部に沿って設置される目隠しフェンスとを備えるトンネル内道路構造であって、
前記目隠しフェンスは、通路の縁部に沿って一定の間隔で設置された複数の支柱と、各支柱の間に水平方向の取り付けられたビーム材と、該ビーム材に沿って横並びの配置で同ビーム材に取り付けられたフェンスパネルとで構成されており、
前記フェンスパネルは、車道を平面的に見て境界の長手方向へ連続する波形状に設置され、車両の進行方向において運転者の斜め前方に見える面が無孔面とされ、車両が通過して運転者の後方に見える面が多数の孔を有する有孔面とされていることを特徴とする、トンネル内道路構造。
【請求項4】
フェンスパネルは、車両の進行方向に無孔面と有孔面とが交互に繰り返して配置された構成であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載したトンネル内道路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−275741(P2010−275741A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127902(P2009−127902)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(593211636)株式会社ニッケンフェンスアンドメタル (26)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】