説明

トンネル内部の構築装置

【課題】 作業員の安全性を向上させるとともに、工期の短縮を実現することができるトンネル内部の構築装置を提供する。
【解決手段】 構築装置Mは、床版組立装置1およびブラケット組立装置2を有しており、床版組立装置1は、側壁ブラケットBおよび増設ブラケットG上に立てられた脚部12を備えるメインフレーム10を有している。また、ブラケット組立装置2は、側壁ブラケットBおよび増設ブラケットGに掛け渡されたベース部材上に設けられている。床版組立装置1は、プレキャストC1を立設して中壁Cを構築し、プレキャスト床版R1を設置してスラブRを構築する。ブラケット組立装置2は、増設ブラケットGを側壁ブラケットBに増設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内周をセグメントによって覆工し、底面に中壁を配設するとともに、中壁上に床版を設置するトンネル内部の構築装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路やライフラインとして掘進されたシールドトンネルにおいては、たとえば、トンネルの高さ方向略中央付近に床版(スラブ)を配設し、床版の上部空間を道路として使用する一方、下部空間に排水路、電気線、ガス管などが設けて使用されている。また、床版の下部空間には、たとえば中壁を立設して2つの空間に仕切り、それぞれの空間で目的に応じた使用が行われることもある。
【0003】
さらに、近年の工期短縮の要請から、シールド掘進機によるシールドトンネルの掘進と並行して、床版や中壁などのトンネル内部の構築が行われる。このようにシールドトンネルの掘進とトンネル内部の構築が並行して行われる際には、両者の施工を分離することで施工の効率化が図られている。たとえばシールドトンネルの資材の搬送を床版の下部空間で行い、トンネル内部の構築用資材の搬送を床版の上部空間で行うようにしている。シールドトンネルの施工は、シールド掘進機におけるエレクタなどを用いて行われているが、床版や中壁などのトンネル内部の構築は、主に作業員の手作業によって行われている。
【特許文献1】特開平5−133193号公報
【特許文献2】特開平5−133194号公報
【特許文献3】特開2002−89195号公報
【特許文献4】特開2003−64994号公報
【特許文献5】特開2004−285758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の工法では、それぞれの施工が分離されてはいるものの、中壁を構築する際には、シールドトンネルを構築するための資材搬送を行っている場所に中壁を構築する必要がある。また、床版を設置する際にも、作業員は、既設の床版よりも下側に立って長時間の作業を行う必要がある。このため、シールドトンネルの資材を搬送するスペースと作業員とが交錯してしまい、作業の安全性に課題があった。また、作業員による作業では、工期短縮を図った場合でも限界があるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、作業員の安全性を向上させるとともに、工期の短縮を実現することができるトンネル内部の構築装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明に係るトンネル内部の構築装置は、側壁ブラケットを有する側壁一体型セグメントを含む複数のセグメントによって覆工され、側壁一体型ブラケットが両側に配置されたトンネルにおける側壁ブラケット上にそれぞれ配置される一対の脚部を含むメインフレームを有し、側壁ブラケットに掛け渡される床版を設置して、スラブを構築する床版組立装置が設けられているものである。
【0007】
本発明に係るトンネル内部の構築装置においては、床版組立装置を用いて床版の組立を行っている。このため、作業員による作業と比較して、工期の短縮を図ることができる。ここで、床版組立装置を設けるとしても、スラブよりもトンネルの下側に床版組立装置を設けると、シールドトンネルの資材を搬送するスペースと、床版組立装置とが交錯してしまう。この点、本発明に係るトンネル内部の構築装置における床版組立装置は、側壁ブラケットに掛け渡される一対の脚部を含むメインフレームを有し、側壁ブラケットに掛け渡される床版を設置してスラブを構築する。このため、シールドトンネルの資材を搬送するスペースを避けて床版組立装置を設置することができるので、当該スペースとの交錯を起こさないようにすることができる。また、床版組立装置を設けることにより、作業員がスラブの下側にいる時間をなくすか、非常に短時間とすることができるので、作業員の安全性を向上させることができる。
【0008】
ここで、床版の裏面には、凹部が形成されており、床版組立装置は、凹部に挿入されるフォークフレームを有しており、フォークフレームを上下動させる昇降装置と、フォークフレームをトンネルの掘削方向に移動させるフォークフレーム移動装置とを備える態様とすることができる。
【0009】
このように、凹部に挿入されるフォークフレームを有しており、フォークフレームを上下動させる昇降装置と、フォークフレームをトンネルの掘削方向に移動させるフォークフレーム移動装置とを備えることにより、床版を容易に構築することができる。
【0010】
また、側壁ブラケットを有する側壁一体型セグメントを含む複数のセグメントによって覆工され、側壁一体型ブラケットが両側に配置されたトンネルにおける側壁ブラケット上にそれぞれ配置される一対の脚部を含むメインフレームを有し、トンネルの底面に配設される中壁を構成するプレキャスト板を立設させる中壁立設装置が設けられている態様とすることもできる。
【0011】
本発明に係るトンネル内部の構築装置においては、中壁組立装置を用いて中壁の組立を行っている。中壁組立装置は、上記の床版組立装置と同様、側壁ブラケットに掛け渡される一対の脚部を含むメインフレームを有し、前記トンネルの底面に配設される中壁を構成するプレキャスト板を立設させる。このため、シールドトンネルの資材を搬送するスペースを避けて中壁組立装置を設置することができるので、当該スペースとの交錯を起こさないようにすることができる。また、中壁組立装置を設けることにより、作業員がスラブの下側にいる時間をなくすか、非常に短時間とすることができるので、作業員の安全性を向上させることができる。
【0012】
このとき、中壁立設装置は、プレキャスト板を把持する中壁把持装置を有しており、中壁把持装置をトンネルの掘削方向に移動させる中壁把持移動装置と、プレキャスト板が既設床版よりも低い位置となるまで中壁把持装置を下降させることができる中壁把持昇降装置とを備える態様とすることができる。
【0013】
このように、プレキャスト板を把持する中壁把持装置を有しており、中壁把持装置をトンネルの掘削方向に移動させる中壁把持移動装置と、プレキャスト板が既設床版よりも低い位置となるまで中壁把持装置を下降させることができる中壁把持昇降装置とを備えることにより、容易にプレキャスト板を立設し、中壁を構築することができる。
【0014】
さらに、脚部には、側壁ブラケット上を走行する走行装置が設けられている態様とすることができる。このような走行装置が設けられていることにより、施工が進むにつれて、メインフレームや各装置などを容易に切羽側に移動させることができる。
【0015】
また、一対の脚部が、互いに独立して伸縮可能とされている態様とすることができる。このように、一対の脚部が、互いに独立して伸縮可能とされていることにより、両側壁ブラケットの高さ位置が変わった場合であっても、メインフレームおよび各装置を水平な状態に維持することができる。したがって、その分床版や中壁を落とす事態などを防止することができ、安全性の向上に寄与することができる。
【0016】
さらに、側壁ブラケットに増設ブラケットが取り付けられており、脚部は、増設ブラケットを介して側壁ブラケット上に配置される態様とすることもできる。このように、脚部が増設ブラケットを介して側壁ブラケット上に配置されることにより、脚部をより安定した状態で配置することができる。
【0017】
また、上記課題を解決した本発明に係るトンネル内部の構築装置は、側壁ブラケットを有する側壁一体型セグメントを含む複数のセグメントによって覆工され、側壁一体型ブラケットが両側に配置されたトンネルにおける側壁ブラケット上に増設ブラケットが取り付けられ、既設の増設ブラケット上に設けられる架台を有し、架台上に、既設の側壁ブラケットが配置された位置よりも切羽側における側壁ブラケットに増設ブラケットを取り付ける増設ブラケット取付装置が設けられているものである。
【0018】
本発明に係るトンネル内部の構築装置は、既設の増設ブラケット上に設けられる架台を有し、架台上に、既設の側壁ブラケットが配置された位置よりも切羽側における側壁ブラケットに増設ブラケットを取り付ける増設ブラケット取付装置が設けられている。このため、シールドトンネルの資材を搬送するスペースを避けて増設ブラケット取付装置を設置することができるので、当該スペースとの交錯を起こさないようにすることができる。また、増設ブラケット取付装置を設けることにより、作業員がスラブの下側にいる時間をなくすか、非常に短時間とすることができるので、作業員の安全性を向上させることができる。
【0019】
また、側壁ブラケットを有する側壁一体型セグメントを含む複数のセグメントによって覆工され、側壁一体型ブラケットが両側に配置されたトンネルにおける側壁ブラケット上に増設ブラケットが取り付けられ、既設の増設ブラケット上に設けられる架台を有し、架台上に、既設の側壁ブラケットが配置された位置よりも切羽側における側壁ブラケットに増設ブラケットを取り付ける増設ブラケット取付装置が設けられ、メインフレームよりも切羽側に増設ブラケット取付装置が配置されており、メインフレームには、増設ブラケットを切羽側に搬送する増設ブラケット搬送手段が設けられている態様とすることができる。
【0020】
このように、床版組立装置または中壁組立装置のメインフレームよりも切羽側に増設ブラケット取付装置が配置されている場合に、メインフレームには、増設ブラケットを切羽側に搬送する増設ブラケット搬送手段が設けられていることにより、増設ブラケット取付装置による増設ブラケットの取付を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るトンネル内部の構築装置によれば、作業員の安全性を向上させるとともに、工期の短縮を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。図1はトンネル内部の構築装置の平面図、図2はトンネル内部の構築装置の側面図、図3はトンネル内部の構築装置の正面図である。
【0023】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る構築装置Mは、床版組立装置1およびブラケット組立装置2を備えている。構築装置Mは、トンネルTの内部に設けられる。トンネルTは、道路用として構築されたシールドトンネルであり、図3に示すように、トンネルTはセグメントSによって覆工されており、その側壁部には、セグメントSとして、内側部に側壁ブラケットBを有するブラケット一体型のセグメント(以下「一体型セグメント」という)S1が用いられている。
【0024】
また、トンネルTの底部には、複数のプレキャストインバートが敷設されてインバートNが構築されている。さらに、インバートNの上には、複数のプレキャスト板C1が立設されて、中壁Cが構築されており、トンネルTの高さ方向略中央部には、複数のプレキャスト床版R1が配設されてスラブRが構築されている。また、一体型セグメントS1における側壁ブラケットBの一方には、増設ブラケットGが取り付けられている。側壁ブラケットBに増設ブラケットGが取り付けられることにより、ブラケットの上面の面積が増加する。
【0025】
これらの中壁CおよびスラブRは、トンネルTの坑口側から順次それぞれプレキャスト板C1およびプレキャスト床版R1をトンネルTの掘進方向に沿って連続的に配設される。また、既設の中壁CおよびスラブRにプレキャスト板C1、プレキャスト床版R1をそれぞれ継ぎ足すことによって中壁CおよびスラブRが形成される。また、増設ブラケットGも同様に、トンネルTの坑口側から増設ブラケットGを継ぎ足すことによってトンネルTの掘進方向に沿って連続的に形成される。図3に示すように、本実施形態で施工されるトンネルTでは、一側部では、側壁ブラケットBに増設ブラケットGが増設されることなく側壁ブラケットBが露出しており、他側部では、側壁ブラケットBに増設ブラケットGが増設されている。
【0026】
床版組立装置1は、中壁Cを構成するプレキャスト板C1およびスラブRを形成するプレキャスト床版R1の施工を行う。床版組立装置1は、本発明の床版組立装置とともに、中壁立設装置をも構成している。また、ブラケット組立装置2は、増設ブラケットGの施工を行う。
【0027】
床版組立装置1は、メインフレーム10を備えている。メインフレーム10は、上部に配置された平面視した形状が矩形をなす天井フレーム11を有している。天井フレーム11の四隅には、鉛直方向に立設される4本の脚部12が取り付けられている。脚部12は、側壁ブラケットBおよび増設ブラケットG上に立てられており、これらの脚部12によって、メインフレーム10は、側壁ブラケットBおよび増設ブラケットGに掛け渡されている。脚部12には、いずれもボールねじ機構12Aが設けられており、それぞれ独立して延伸可能とされている。
【0028】
また、天井フレーム11の後方(坑口側)には、床版組立装置となるフォークフレーム20が設けられている。フォークフレーム20は、図4および図5に示すように、第一フォークロッド21および第二フォークロッド22を備えており、第一フォークロッド21の先端には、第一爪部材23が取り付けられ、第二フォークロッド22には、第二爪部材24が取り付けられている。フォークロッド21,22は、天井フレーム11に固定され、フォークロッド21,22には、それぞれボールねじ機構が設けられている。これらのボールねじ機構により、爪部材23,24の高さ位置を独立して調整可能とされている。また、プレキャスト床版R1における幅方向に離間した2箇所には、凹部が形成されている。フォークフレーム20における爪部材23,24は、これらの凹部に挿入可能とされている。フォークロッド21,22は、爪部材23,24を上下動させる昇降装置、および側壁ブラケットB上を走行する走行装置を構成する。
【0029】
さらに、天井フレーム11の後方には、昇降フレーム13が設けられており、昇降フレーム13には、中壁設置装置(中壁立設装置)30が取り付けられている。昇降フレーム13は、電動シリンダによって天井フレーム11に対して相対的に昇降可能とされている。中壁設置装置30は、昇降フレーム13に固定されたレール部材31を備えている。また、中壁設置装置30は、中壁を吊持する吊持フレーム32を備えており、吊持フレーム32は、ローラ33を介してレール部材31に取り付けられている。このローラ33を転動させることにより、吊持フレーム32は、レール部材31および昇降フレーム13に対して相対的に昇降可能とされている。これらの昇降フレーム13および吊持フレーム32によって、プレキャスト板C1が既設スラブRよりも低い位置となるまで中壁把持装置34を下降させることができる中壁把持昇降装置が構成される。
【0030】
また、吊持フレーム32は、側面視した形状が略三角形状をなすとともに、正面視した形状が棒状をなす。この吊持フレーム32は、正面視してフォークフレーム20の爪部材23,24の間に配置されており、昇降フレーム13およびローラ33によって吊持フレーム32を下降させた際、吊持フレーム32は爪部材23,24の間に進入する。
【0031】
さらに、吊持フレーム32には、中壁把持装置34が設けられている。中壁把持装置34は、図6(a)に示すように、把持シリンダ35の先端に膨張ゴムからなるパッカー36が取り付けられて形成されている。パッカー36を介した把持シリンダ35の先端(下端)には、パッカー押し座37が設けられている。中壁を構成するプレキャスト板C1には、吊持孔が形成されており、吊持フレーム32を下降させて、把持シリンダ35をプレキャスト板C1の吊持孔に挿入すると、パッカー押し座37が吊持孔の孔底に当接し、図6(b)に示すように、把持シリンダ35が収縮してパッカー36が膨張する。このパッカー36の膨張により、パッカー36とプレキャスト板C1における吊持孔との摩擦力によって、プレキャスト板C1が中壁把持装置34に把持される。
【0032】
また、図1および図3に示すように、4本の脚部12には、それぞれ走行ローラ14が取り付けられている。増設ブラケットが取り付けられていない側の側壁ブラケットBおよび増設ブラケットGには、それぞれレールLが敷設されており、この走行ローラ14がレールL上を走行することによって、メインフレーム10がトンネルTの掘進方向に移動可能とされている。さらに、メインフレーム10には、ガイドロッド15が設けられている。ガイドロッド15は、レールLの挟み込み位置に配置されている。ガイドロッド15がレールLを挟み込むことによりメインフレーム10の走行方向を案内している。走行ローラ14は、爪部材移動装置および中壁把持移動装置を構成する。
【0033】
さらに、メインフレーム10には、増設ブラケット搬送手段となるブラケット移載装置40が設けられている。ブラケット移載装置40は、トンネルTの掘進方向に延在し、メインフレーム10に固定されたガイドフレーム41と、このガイドフレーム41に沿ってトンネルTの掘削方向に移動する移動フレーム42を備えている。また、移動フレーム42には、移動フレーム42に対して相対的に移動可能な移動架台42Aを備えている。移動架台42Aには、シザース機構43が設けられており、シザース機構43の先端に、増設ブラケットGを把持する1組のブラケット把持装置44が設けられている。シザース機構43は、図7に示すように、上下に配置されたガイドフレーム45およびこれらのガイドフレーム45に取り付けられたレール部材46を備えている。これらのガイドフレーム45の間には、リンク機構47が配置されている。リンク機構47は、十字状に配置された2本のリンク部材からなり、互いの中央部分で回動可能に枢着されている。これらの各リンク部材の先端には、それぞれレール部材46に沿って移動可能なローラ48が取り付けられている。また、ガイドフレーム45には、リンク機構47を開閉移動させるシリンダ49が設けられている。シリンダ49によってリンク機構47を開閉移動させると、ローラ48がレール部材46に沿って転動する。こうして、リンク機構47が開閉し、ガイドフレーム45間の離間距離が調整され、ブラケット把持装置44の高さ位置が調整される。また、ブラケット把持装置44は、中壁把持装置34と同様の構成を有している。ブラケット把持装置44は、シザース機構43によって高さ位置が調整可能とされている。
【0034】
メインフレーム10が設けられている位置よりも切羽側には、ブラケット組立装置2が設けられている。ブラケット組立装置2は、図8および図9に示すように、ブラケット移動装置50および増設ブラケット取付装置60を備えている。ブラケット移載装置40は、メインフレーム10における坑口側端部から、ブラケット組立装置2におけるブラケット移動装置50まで増設ブラケットGを移載可能とされている。
【0035】
ブラケット移動装置50は、本発明の架台となる皿状のベース部材51を備えている。ベース部材51は、トンネルTの両側部にそれぞれ形成された側壁ブラケットBおよび増設ブラケットGに掛け渡されて載置されている。ベース部材51上には、複数のブラケット載置パネル52が設けられている。また、ベース部材51には、パネル移動装置53が設けられており、このパネル移動装置53により、複数のブラケット載置パネル52をベース部材51上でいわゆるパズル式に所望の位置に移動可能とされている。
【0036】
さらに、ベース部材51には、走行装置54が設けられている。走行装置54は、ローラ55を有しており、ローラ55が側壁ブラケットBまたは増設ブラケットGに敷設されたレールL上を走行することにより、ブラケット移動装置50は、トンネルTの掘進方向に移動可能とされている。
【0037】
ベース部材51における切羽側端部には、増設ブラケット取付装置60が配設されている。増設ブラケット取付装置60は、略円柱形状の本体部61を備えている。本体部61は、高さ方向に伸縮可能とされており、本体部61の上端部には、アーム62が取り付けられている。このアーム62には、シリンダ機構が組み込まれており、伸縮可能とされている。アーム62の先端部には、ブラケット把持装置63が取り付けられている。
【0038】
ブラケット把持装置63は、回転機構を介してアーム62の先端に取り付けられている。このため、ブラケット把持装置63は、回転軸X1を中心として回転可能とされている。ブラケット把持装置63には、ブラケット移載装置40におけるブラケット把持装置44と同様の把持装置が取り付けられている。さらに、ブラケット把持装置63は、伸縮シリンダ64を介してアーム62の先端に取り付けられている。この伸縮シリンダ64を伸縮させることにより、ブラケット把持装置63が上下方向に昇降される。
【0039】
また、本体部61には、回転機構が設けられており、回転軸X2を中心としてアーム62が回転可能とされている。また、本体部61にもシリンダ機構が設けられており、本体部61が高さ方向伸縮可能とされている。本体部61および伸縮シリンダ64をもっとも低い高さに位置させることにより、ブラケット把持装置63は、把持した増設ブラケットGが側壁ブラケットBの高さ位置となる高さに位置される。
【0040】
さらに、ベース部材51上には、トンネルTの幅方向に延在する横レール65が設けられており、増設ブラケット取付装置60には、横レール65上を走行する走行機構が設けられている。この走行機構によって横レール65上を走行することにより増設ブラケット取付装置60は、トンネルTの左右いずれの位置にも移動可能とされている。なお、増設ブラケットGを一側の側壁ブラケットBにのみ増設する場合には、この横レールを設けることなく、トンネルTの一側に増設ブラケット取付装置60を固定して設ける態様とすることもできる。
【0041】
以上の構成を有する本実施形態に係るトンネル内部の構築装置Mにおけるトンネル内部の構築手順について説明する。トンネル内部の構築を行う際には、切羽に近い側で側壁ブラケットに増設ブラケットを組み立てる作業を行う。それとは別に、既に増設ブラケットが組み立てられた坑口側の位置で、中壁を構成するプレキャスト板C1を立設させ、次に、スラブRを構成するプレキャスト床版R1を設置する作業を行う。以下、施工順に従い、増設ブラケットGの組立作業について図10および図11を主に参照して説明する。また、トンネル内部の構築を行うにあたり、既設スラブRは道路となることから、カント(片勾配)が付されていることから、構築装置Mに対する角度や相対的な高さ位置が変動する。
【0042】
増設ブラケットGの組立作業を行うにあたり、まず、既設スラブR上で別途設けられた図示しない搬送手段によって、立坑から床版組立装置1の位置まで増設ブラケットGを搬送する。次に、図10(A)に示すように、床版組立装置1の位置まで搬送された増設ブラケットGを、ブラケット移載装置40におけるブラケット把持装置44によって把持する。増設ブラケットGには、プレキャスト板C1と同様の吊持孔が形成されており、ブラケット把持装置44を下降させて、パッカー36を膨張させることにより、増設ブラケットGを把持する。ここで、増設ブラケットGは、既設スラブR上に載置されており、ブラケット把持装置44に対する高さが変動する。そこで、シザース機構43によってブラケット把持装置44の高さ位置を微調整して、増設ブラケットGを把持する。
【0043】
増設ブラケットGを把持したら、シザース機構43を折り畳むことにより、増設ブラケットGを上昇させる。この状態で、図10(B)に示すように、移動フレーム42をガイドフレーム41に沿ってトンネルTの切羽方向に移動させる。続いて、図10(C)に示すように、移動フレーム42に対して移動架台42Aを切羽方向に移動させ、もっとも切羽側に移動させることにより、増設ブラケットGがブラケット移動装置50のベース部材51上に搬送される。このとき、増設ブラケットGが搬送されてくる位置には、ブラケット載置パネル52を予め待機させておく。それから、そのままシザース機構43を拡げて、増設ブラケットGを下降させ、ブラケット載置パネル52上に載置する。
【0044】
続いて、図11(A)に示すように、ブラケット移動装置50におけるパネル移動装置53によって、搬送された増設ブラケットGが載置されたブラケット載置パネル52を増設ブラケット取付装置60の位置まで移動させる。ここでは、増設ブラケットGは、トンネルTの片側にのみ取り付けられるので、増設ブラケット取付装置60は、増設ブラケットGを取り付ける側に配置しておく。
【0045】
増設ブラケットGが載置されたブラケット載置パネル52が増設ブラケット取付装置60の位置まで搬送されたら、増設ブラケット取付装置60におけるアーム62を増設ブラケットGの上に配置する。それから、伸縮シリンダ64を伸長させて、ブラケット把持装置63を下降させて、ブラケット把持装置63によって増設ブラケットGを把持する。
【0046】
増設ブラケットGを把持したら、図11(B)に示すように、伸縮シリンダ64を収縮させて、ブラケット把持装置63および増設ブラケットGを上昇させる。それから、図11(C)に示すように、回転軸X2周りにアーム62を回転させ、アーム62を伸長させる。その後、図9に仮想線で示すように、本体部61および伸縮シリンダ64を収縮させて、増設ブラケットGをスラブRの高さよりも低い位置まで下降させ、アーム62を収縮させることにより、既設の増設ブラケットGに隣接する位置に増設ブラケットGを案内する。この位置で増設ブラケットGを側壁ブラケットBに取り付けることによって増設ブラケットGの組立作業が完了する。
【0047】
こうして、増設ブラケットGの組立作業が完了したら、増設した増設ブラケットGの上にレールLを延長して敷設する。それから、レールL上をブラケット組立装置2における走行装置54が走行することによりブラケット組立装置2を切羽側に移動させる。
【0048】
次に、中壁を構成するプレキャスト板C1を立設する手順について主に図11を参照して説明する。中壁を立設するにあたり、図5に示すように、床版組立装置1の手前位置まで、プレキャスト板C1およびプレキャスト床版R1を図示しない搬送装置で搬送し、プレキャスト床版R1の上にプレキャスト板C1を載置した状態としておく。
【0049】
この状態から、プレキャスト板C1を立設させ、昇降フレーム13によって中壁設置装置30を下降させる。そして、中壁把持装置34をプレキャスト板C1に形成された把持孔に挿入することにより、中壁把持装置34によってプレキャスト板C1を把持する。それから、図12(A)に示すように、昇降フレーム13を上昇させることにより、中壁設置装置30およびプレキャスト板C1を上昇させる。
【0050】
次に、図12(B)に示すように、走行ローラ14にレールL上を切羽方向に向けて走行させ、床版組立装置1の全体を切羽方向に移動させる。床版組立装置1全体の移動により、中壁設置装置30およびプレキャスト板C1も切羽方向に移動する。床版組立装置1を移動させるにあたり、脚部12にはボールねじ機構12Aが設けられ、その長さが調節可能とされている。このため、スラブRにつけるカントのために床版組立装置1が立設される側壁ブラケットBおよび増設ブラケットGの高さ位置が異なる場合でも、ボールねじ機構12Aによって脚部12の長さを調節することにより、床版組立装置1を水平に保持することができる。
【0051】
その後、昇降フレーム13を下降させるとともに、吊持フレーム32を昇降フレーム13に対して下降させる。昇降フレーム13を下降させるのみでは、プレキャスト板C1は、スラブRの高さ位置までしか下降させることができないが、吊持フレーム32を昇降フレーム13に対して下降させることにより、プレキャスト板C1がスラブRよりも低い位置まで下降させられる。
【0052】
それから、図12(C)に示すように、走行ローラ14にレールL上を坑口方向に向けて走行させ、床版組立装置1の全体を坑口方向に移動させる。床版組立装置1を坑口方向に移動させることにより、プレキャスト板C1は、既設の中壁Cに沿った位置に配置される。その後、中壁把持装置34における把持状態を解除し、プレキャスト板C1の設置が完了する。
【0053】
続いて、プレキャスト床版R1の設置手順について主に図13を参照して説明する。プレキャスト床版R1を設置する際には、まず、プレキャスト床版R1における凹部と同じ高さ位置に、フォークフレーム20における爪部材23,24を対向させる。このとき、スラブRには、カントが付いている場合には、フォークロッド21,22の高さを独立して微調整することにより、プレキャスト床版R1における凹部と同じ高さ位置に、フォークフレーム20における爪部材23,24を同じ高さで対向させることができる。
【0054】
この状態で、走行ローラ14にレールL上を坑口方向に向けて走行させ、床版組立装置1を坑口側に移動させることにより、図13(A)に示すように、爪部材23,24をプレキャスト床版R1の凹部に進入させる。
【0055】
爪部材23,24をプレキャスト床版R1の凹部に進入させたら、フォークロッド21,22を収縮させ、爪部材23,24を上昇させる。この爪部材23,24の上昇に伴い、爪部材23,24に持ち上げられるプレキャスト床版R1が上昇する。なお、プレキャスト床版に凹部が形成されていない場合には、プレキャスト床版を棒状の台座に乗せるなどすることにより、フォークフレーム20によって容易に持ち上げることができる。それから、図13(B)に示すように、走行ローラ14にレールL上を切羽方向に向けて走行させ、床版組立装置1の全体を切羽方向に移動させる。こうして、プレキャスト床版R1が、既設のスラブRのもっとも切羽に近い位置よりもわずかに切羽側に位置するようにする。
【0056】
それから、フォークロッド21,22を伸長させ、爪部材23,24およびプレキャスト床版R1を下降させる。爪部材23,24およびプレキャスト床版R1を下降させることにより、プレキャスト床版R1がスラブRと同一高さ位置に配置される。その後、走行ローラ14にレールL上を坑口方向に向けて走行させ、床版組立装置1を坑口側に移動させることにより、図13(C)に示すように、スラブRにプレキャスト床版R1が押し付けられて配設される。こうして、プレキャスト床版R1の設置が完了する。
【0057】
このように、増設ブラケットG、プレキャスト板C1、およびプレキャスト床版R1を設置するにあたり、本実施形態に係る構築装置Mは、側壁ブラケットBおよび増設ブラケットG上に設置されている。このため、増設ブラケットGやプレキャスト板C1を実際に設置するとき以外には、既設スラブRよりも下側のスペースに構築装置Mが張り出さないようにすることができる。したがって、既設スラブRの下側におけるシールドトンネルの資材を搬送するスペースを広く保つことができ、当該スペースとの交錯を起こさないようにすることができる。また、構築装置Mを設けることにより、作業員がスラブの下側にいる時間をなくすか、非常に短時間とすることができるので、作業員の安全性を向上させることができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態に係る構築装置Mでは、床版組立装置1およびブラケット組立装置2を有しているが、床版組立装置1またはブラケット組立装置2のみとする態様とすることもできる。また、床版組立装置1は、中壁Cとなるプレキャスト板C1の立設およびスラブRとなるプレキャスト床版R1の組立の両方を行うが、これらの一方のみを行う態様とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】トンネル内部の構築装置の平面図である。
【図2】トンネル内部の構築装置の側面図である。
【図3】トンネル内部の構築装置の正面図である。
【図4】床版組立装置の平面図である。
【図5】床版組立装置の側面図である。
【図6】中壁把持装置を示す斜視図であり、(A)はパッカーを収縮させた状態、(B)はパッカーを膨張させた状態を示す。
【図7】シザース機構の側面図である。
【図8】ブラケット組立装置の平面図である。
【図9】ブラケット組立装置の側面図である。
【図10】増設ブラケットの組立工程を側面から見た工程図である。
【図11】図10に続く工程図である。
【図12】プレキャスト板の組立工程を側面から見た工程図である。
【図13】プレキャスト床版の組立工程を側面から見た工程図である。
【符号の説明】
【0060】
1…床版組立装置
10…メインフレーム
11…天井フレーム
12…脚部
13…昇降フレーム
14…走行ローラ
15…ガイドロッド
20…フォークフレーム
21,22…フォークロッド
23,24…爪部材
30…中壁設置装置
31…レール部材
32…吊持フレーム
33…ローラ
34…中壁把持装置
35…把持シリンダ
36…パッカー
37…パッカー押し座
40…ブラケット移載装置
41…ガイドフレーム
42…移動フレーム
42A…移動架台
43…シザース機構
44…ブラケット把持装置
45…ガイドフレーム
46…レール部材
2…ブラケット組立装置
50…ブラケット移動装置
51…ベース部材
52…ブラケット載置パネル
60…ブラケット取付装置
61…本体部
62…アーム
63…ブラケット把持装置
B…側壁ブラケット
C…中壁
C1…プレキャスト板
G…増設ブラケット
L…レール
M…構築装置
R…スラブ
R1…プレキャスト床版
S…セグメント
S1…一体型セグメント
T…トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁ブラケットを有する側壁一体型セグメントを含む複数のセグメントによって覆工され、前記側壁一体型ブラケットが両側に配置されたトンネルにおける前記側壁ブラケット上にそれぞれ配置される一対の脚部を含むメインフレームを有し、
前記側壁ブラケットに掛け渡されるプレキャスト床版を設置して、スラブを構築する床版組立装置が設けられていることを特徴とするトンネル内部の構築装置。
【請求項2】
前記床版の裏面には、凹部が形成されており、
前記床版組立装置は、前記凹部に挿入される爪部材と、前記爪部材を上下動させる昇降装置と、前記爪部材を前記トンネルの掘削方向に移動させる爪部材移動装置とを備える請求項1に記載のトンネル内部の構築装置。
【請求項3】
側壁ブラケットを有する側壁一体型セグメントを含む複数のセグメントによって覆工され、前記側壁一体型ブラケットが両側に配置されたトンネルにおける前記側壁ブラケット上にそれぞれ配置される一対の脚部を含むメインフレームを有し、
前記トンネルの底面に配設される中壁を構成するプレキャスト板を立設させる中壁立設装置が設けられていることを特徴とするトンネル内部の構築装置。
【請求項4】
前記中壁立設装置は、前記プレキャスト板を把持する中壁把持装置を有しており、前記中壁把持装置を前記トンネルの掘削方向に移動させる中壁把持移動装置と、前記プレキャスト板が既設床版よりも低い位置となるまで前記中壁把持装置を下降させることができる中壁把持昇降装置とを備える請求項3に記載のトンネル内部の構築装置。
【請求項5】
前記脚部には、前記側壁ブラケット上を走行する走行装置が設けられている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載のトンネル内部の構築装置。
【請求項6】
前記一対の脚部が、互いに独立して伸縮可能とされている請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項に記載のトンネル内部の構築装置。
【請求項7】
前記側壁ブラケットに増設ブラケットが取り付けられており、前記脚部は、前記増設ブラケットを介して前記側壁ブラケット上に配置される請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項に記載のトンネル内部の構築装置。
【請求項8】
側壁ブラケットを有する側壁一体型セグメントを含む複数のセグメントによって覆工され、前記側壁一体型ブラケットが両側に配置されたトンネルにおける前記側壁ブラケット上に増設ブラケットが取り付けられ、既設の増設ブラケット上に設けられる架台を有し、
前記架台上に、前記既設の側壁ブラケットが配置された位置よりも切羽側における前記側壁ブラケットに増設ブラケットを取り付ける増設ブラケット取付装置が設けられていることを特徴とするトンネル内部の構築装置。
【請求項9】
側壁ブラケットを有する側壁一体型セグメントを含む複数のセグメントによって覆工され、前記側壁一体型ブラケットが両側に配置されたトンネルにおける前記側壁ブラケット上に増設ブラケットが取り付けられ、既設の増設ブラケット上に設けられる架台を有し、
前記架台上に、前記既設の側壁ブラケットが配置された位置よりも切羽側における前記側壁ブラケットに増設ブラケットを取り付ける増設ブラケット取付装置が設けられ、
前記メインフレームよりも切羽側に前記増設ブラケット取付装置が配置されており、
前記メインフレームには、増設ブラケットを切羽側に搬送する増設ブラケット搬送手段が設けられている請求項1〜請求項7のうちのいずれか1項に記載のトンネル内部の構築装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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