説明

トンネル切開き構造

【課題】高い断面力を有し、躯体との接続部に特殊な接合構造を必要とせず、セグメント同士の接合に高い接合強度の必要な部位は、大きな接合強度を有するトンネル切開き構造を提供する。
【解決手段】シールドトンネル5は、複数のセグメントにより構成される。シールドトンネル5と躯体3との接続部9には、鉄製セグメント10が設けられる。鉄製セグメント10には、それぞれ合成セグメント50が接合される。鉄製セグメント10及び合成セグメント50以外の部位には合成セグメント30が設けられる。鋼製セグメント10と合成セグメント50との接合部の厚さは、他の部位の厚さよりも、セグメントの厚さが厚い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルと躯体とを接続することによりトンネルを拡幅し形成される、トンネル切開き部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル切開き部の施工は、トンネルと躯体とを接続し、トンネルと躯体とが面する部位のセグメントを撤去して行われる。このため、トンネル切開き部では、大きな断面力が要求される。
【0003】
また、通常、トンネル内周面には、耐火被覆が施される。このため、トンネル内面はできるだけ平滑であることが望ましい。従って、従来から使用されている鋼殻(鉄鋼系セグメント)に代えて、合成セグメント等が使用される場合がある。合成セグメント等によれば、従来の鉄鋼系セグメントよりも低い桁高さであっても、強度が大きく、また、内面がスキンプレートで覆われているため、耐火被覆を数cm程度行えばよいため効率がよい。
【0004】
このような強度等を考慮したトンネル切開き部としては、例えば、トンネル同士の接続部のみを鋼製セグメントとし、その他の部位を合成セグメント等とするとともに、トンネルの部位に応じて適切な耐力を得るために、セグメントの板厚を変化させるセグメントリング構造がある(特許文献1)。
【0005】
また、トンネルを構築するセグメントの継手部に発生する曲げモーメントの大きな部位のセグメントの桁高さを、他の部位よりも小さくするセグメント構造がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−41900号公報
【特許文献2】特開2004−204545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のセグメントリング構造は、内部構造とセグメントとの接続部にも合成セグメント等が使用されるため、コンクリート構造である内部構造とセグメントとの接続部に特殊な構造を要するという問題がある。また、セグメントと内部構造との接続部近傍は、大きな接合強度が必要であるが、セグメントと内部構造との接続部近傍での接合強度については一切考慮していないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のセグメント構造は、接合強度が考慮されておらず、特にセグメントと内部構造との接続部近傍は、高い接合強度が必要であるが、セグメントの接合部の桁高さが低いため、高い接合強度を得るためには、特殊な構造が必要であるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、高い断面力を有し、躯体との接続部に特殊な接合構造を必要とせず、セグメント同士の接合に高い接合強度の必要な部位は、大きな接合強度を有するトンネル切開き構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明は、トンネルと、前記トンネルに隣接する躯体とが接続されたトンネル切開き構造であって、前記トンネルは、複数のセグメントにより形成され、前記躯体と面する位置のセグメントが撤去され、前記トンネルと前記躯体との接続部には、鉄鋼系セグメントが設けられ、前記鉄鋼系セグメントには、鋼コンクリート合成セグメント、鉄筋コンクリートセグメント及びコンクリート中詰め鋼製セグメントのいずれかのセグメントが接合されることを特徴とするトンネル切開き構造である。
【0010】
前記鉄鋼系セグメントには、鋼コンクリート合成セグメント、鉄筋コンクリートセグメント及びコンクリート中詰め鋼製セグメントのいずれかの第1のセグメントが接合され、前記鉄鋼系セグメント及び前記第1のセグメント以外は、鋼コンクリート合成セグメント、鉄筋コンクリートセグメント及びコンクリート中詰め鋼製セグメントのいずれかの第2のセグメントが設けられてもよい。また、前記鉄鋼系セグメントと前記第1のセグメントとの接合部は、前記第1のセグメントと前記第2のセグメントとの接合部、及び前記第2のセグメント同士の接合部と比べて、接合強度が大きくてもよい。この場合、前記第1のセグメントは、前記鉄鋼系セグメントとの接合部の厚さが、前記第2のセグメントとの接合部の厚さよりも厚くてもよい。
【0011】
また、前記第1のセグメントの前記鉄鋼系セグメントとの接合部には、ねじ部を有する埋設アンカが埋設され、前記鉄鋼系セグメントと前記第1のセグメントとは、前記埋設アンカとボルトによって接合されてもよく、または、前記第1のセグメントの前記鉄鋼系セグメントとの接合部には、前記第1のセグメントの厚さ方向に板部材が設けられ、前記板部材には、ねじ部を有するインサートが設けられ、前記鉄鋼系セグメントと前記第1のセグメントとは、前記インサートとボルトによって接合されてもよい。また、前記鉄鋼系セグメントと前記第1のセグメントは、前記トンネルの軸方向に対して、千鳥状に設けられてもよい。
【0012】
本発明によれば、トンネルを構成するセグメントの大部分が合成セグメント等であるためトンネルの断面力が大きく、かつ、合成セグメント等の内面が平滑であるため、トンネル内面の耐火被覆が容易であり、また、躯体との接続部には鉄製セグメントが設けられるため、躯体とセグメントとの接合が容易で特殊な構造を必要とせず、さらに、最も大きな強度を要する、躯体との接続部近傍に設けられる合成セグメントと鉄鋼系セグメントとの接合部の接合強度が大きいトンネル切開き構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い断面力を有し、躯体との接続部に特殊な接合構造を必要とせず、セグメント同士の接合に高い接合強度の必要な部位は、大きな接合強度を有するトンネル切開き構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態にかかるトンネル切開き構造1について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかるトンネル切開き構造1を示す図である。
【0015】
トンネル切開き構造1は、シールドトンネル5の側方に躯体3が接続されるように設けられる。躯体3は、下底版4、側壁6、上底版8等から構成され、鉄筋コンクリート製のコの字状の構造物である。なお、躯体3の形状としては、図1に示したようなコの字型以外にも、二つのシールドトンネルを接合するような、両側に開口した形状等であってもよい。躯体3のその他の形状については後述する。
【0016】
シールドトンネル5は、複数のセグメントにより構成される。シールドトンネル5と躯体3との接続部9(シールドトンネル5の一部が躯体3に埋め込まれる部分)には、鉄鋼系セグメントとして、鋼製セグメント10が設けられる。すなわち、鋼製セグメント10の一部は、上底版8及び下底版4にそれぞれ埋め込まれる。ここで、鉄鋼系セグメントとしては、鋼製セグメントの他にダクタイルセグメント等が使用できる(以下の説明においては、鋼製セグメントの例を示す)。上底版8及び下底版4に埋め込まれた鋼製セグメント10には、それぞれ合成セグメント50が接合される。鋼製セグメント10及び合成セグメント50以外の部位には合成セグメント30が設けられる。ここで、合成セグメント30、合成セグメント50は鋼コンクリート合成セグメントを指すが、鋼コンクリート合成セグメントに代えて、鉄筋コンクリートセグメント、またはコンクリート中詰めセグメント等を使用することもできる(以下の説明においては、鋼コンクリート合成セグメントセグメントの例を示す)。なお、シールドトンネル5の内面には、図示を省略した耐火被覆が施される。
【0017】
シールドトンネル5の躯体3と面する部位には、撤去セグメント7が設けられる。撤去セグメント7は、躯体3が構築された後に撤去される。なお、撤去セグメント7は、鋼製セグメント10であっても、合成セグメント30、50であってもよいが、撤去セグメント7は、躯体3が構築されるまでの間にシールドトンネル5を維持できる程度の強度を有すれば良く、また撤去作業の容易さを考慮すると、簡易な鋼製セグメント10が用いられることが望ましい。
【0018】
シールドトンネル5を構成する各セグメントの厚さ(各セグメントの桁高さ)は、セグメントの種類によって異なる。すなわち、合成セグメント50の厚さは、シールドトンネル5の強度が確保できるだけの厚さであれば良いが、躯体3との接続部9の近傍には、周囲の土砂等からの力を受け、より高い強度が必要となる。特に、セグメント同士の接合部は強度的に弱いため、大きな接合強度(セグメント同士を接合する強度)が要求される。
【0019】
すなわち、シールドトンネル5と躯体3との接続部9近傍に位置する、鋼製セグメント10と合成セグメント50との接合部はより大きな接合強度が要求される。このため、より高い接合強度を得るために、鋼製セグメント10と合成セグメント50との接合部の厚さは、他の部位(合成セグメント50の鋼製セグメント10との接合部以外の部位、及び合成セグメント30)の厚さよりも、セグメントの厚さが厚いことが望ましい。鋼製セグメント10と合成セグメント50との接合部については後述する。
【0020】
次に、各セグメントの構造について詳細を説明する。図2は、鋼製セグメント10を示す斜視図である。鋼製セグメント10は、主に、スキンプレート11、側板13、縦リブ15および継手板19等から構成される。トンネル外周面に相当するスキンプレート11は、トンネル外径に対応して湾曲した形状となっている。スキンプレート11の長辺側の両端にはトンネル内方向へ向けて側板13が設けられる。また、スキンプレート11の短辺側の両端には、側板13と同方向に向けて継手板19が設けられる。すなわち、スキンプレート11と側板13と継手板19により、箱型の形状となる。
【0021】
側板13と略垂直方向には、一定間隔で縦リブ15が設けられる。側板13には、トンネルの軸方向の他のセグメント同士を接合するための継手穴17が設けられる。また、継手板19には、セグメント同士を周方向に接合するための継手穴21が設けられる。すなわち、鋼製セグメント10の一方の継手板19には、撤去セグメント7が設けられ、他方の継手板19には合成セグメント50が接合される。なお、各部材は鋼製であり、それぞれ溶接によって接合されている。
【0022】
鋼製セグメント10と躯体3とを接続するためには、まず、鋼製セグメント10のスキンプレート11が取り外される。スキンプレート11が取り外されることで、鋼製セグメント10は梯子状となり、シールドトンネル5の内外部が空間的につなげられる。次いで、縦リブ15の中央部近傍が切断される。切断は、躯体3内に埋め込まれる補強鉄筋等との干渉を避けるためである。更に、必要に応じてシアコネクタ等を接合して、躯体3に埋め込まれる。このため、鋼製セグメント10と躯体3との接続部9には、特殊な構造が必要なく、容易に鋼製セグメント10と躯体3とを接続することができる。
【0023】
図3は、合成セグメント30を示す斜視図である。合成セグメント30は、主に外側スキンプレート33、内側スキンプレート31、側板35、継手板37等から構成される。外側スキンプレート33と内側スキンプレート31とは互いに向かい合って設けられ、スキンプレートの内側には図示を省略したジベルが設けられる。外側スキンプレート33と内側スキンプレート31は、側板35及び継手板37により接合され箱状となる。なお、外側スキンプレート33は、トンネル外周面に相当する部位であり、内側スキンプレート31は、トンネル内周面に相当する部位である。
【0024】
側板35には、注入孔47が設けられる。注入孔47は、合成セグメント30内部にコンクリートを注入するための穴である。すなわち、合成セグメント30内には、後述する継手ボックス39、43以外は、コンクリート49が打設される。
【0025】
側板35には、トンネルの軸方向の他のセグメント同士を接合するための継手穴41が設けられる。継手穴41に該当する部位には、継手ボックス39が設けられる。また、継手板37には、セグメント同士を周方向に接合するための継手穴45が設けられる。継手穴45に該当する部位には、継手ボックス43が設けられる。継手ボックス39、43は、継手穴41、45でのセグメント同士の接続作業を行うための箱状の部位である。
【0026】
セグメント30の継手板37には、合成セグメント30または合成セグメント50が接合される。なお、各部材は鋼製であり、それぞれ溶接によって接合されている。
【0027】
図4は、合成セグメント50を示す図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。合成セグメント50は、接合部51を除き、合成セグメント30と同様の構造である。従って、合成セグメント30と同様の機能および構造を有する構成要素は、図3と同じ付番を付して、重複する説明を避ける。
【0028】
合成セグメント50の一方の端部は、合成セグメント30と同様に、継手穴45を有する継手板37が設けられる。継手板37において合成セグメント50と合成セグメント30とが接合される。
【0029】
合成セグメントの50の他の端部には、接合部51が設けられる。接合部51は、鋼製セグメント10との接合部である。すなわち、シールドトンネル5において、接合部51は、躯体3と鋼製セグメント10との接続部9近傍に位置する。
【0030】
接合部51は、他の部位よりも厚さが厚い。接合部51の端面は継手板52が設けられる。継手板52の内部には、埋設アンカ55が埋設されている。埋設アンカ55にはねじ53が設けられており、ボルト等の接合部品で鋼製セグメント10と接合される。
【0031】
接合部51の厚さを厚くすることで、より太いボルト等(埋設アンカ55)が使用でき、また、埋設アンカ55の埋設本数を多くすることができる。また、接合部51には、継手ボックスのような構造がないため、内部は全てコンクリート49で充填される。このため、接合部51自体の強度を高めることができ、セグメント10との接合強度を高めることができる。
【0032】
図5は、接合部51近傍の拡大図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は接合部51近傍の断面図である。なお、図5は、上底版8と鋼製セグメント10との接続部9を示すが、下底版4と鋼製セグメント10との接続部9も同様の構造であるため、以後の説明において、下底版4と鋼製セグメント10との接続部9近傍の説明は省略する。
【0033】
前述の通り、鋼製セグメント10は躯体3と接続部9で接続される。この際、鋼製セグメント10のスキンプレート11は取り外されている。合成セグメント50の接合部51と鋼製セグメント10とは、鋼製セグメント接合部61で接合される。合成セグメント50の他方の端部は合成セグメント接合部63で合成セグメント30と接合される。
【0034】
図5(b)に示すように、鋼製セグメント10の継手板10と合成セグメント50の継手板52とが合わせられ、継手穴21を貫通するボルト65がねじ53に固定され、合成セグメント50と鋼製セグメント10とが接合される。
【0035】
なお、ボルト65の本数は、図5(b)に示すように、上下2段には限られない。例えば、接合部51の厚さをより厚くすることで、3段以上設けても良い。また、鋼製セグメント10は、全て同厚さとしたが、前述のように、鋼製セグメント接合部65近傍の厚さが十分に厚ければ、その他の部位の厚さをより薄くしても良い。すなわち、合成セグメント50と同様に、鋼製セグメント10も、セグメントの厚さを変化させても良い。
【0036】
図6は、トンネル切開き構造1の外観を示す斜視図である。躯体3に接続される鋼製セグメント10aは、シールドトンネル5の周方向に合成セグメント50aと接合される。鋼製セグメント10aは、シールドトンネル5の軸方向に鋼製セグメント10bと接合され、更に鋼製セグメント10c、10dが接合される。同様に、合成セグメント50aは、シールドトンネル5の軸方向に合成セグメント50bと接合され、更に合成セグメント50c、50dが接合される。
【0037】
図6に示すように、鋼製セグメント10a、10b、10c、10dは、シールドトンネル5の軸方向に千鳥状に設けられる。従って、合成セグメント50a、50b、50c、50dもシールドトンネル5の軸方向に千鳥状に設けられる。すなわち、鋼製セグメント10a、10b、10c、10dと、合成セグメント50a、50b、50c、50dとのそれぞれの接合部である、鋼製セグメント接合部61a、61b、61c、61dは、シールドトンネル5の軸方向に一直線に並ぶことはなく千鳥状となる。
【0038】
このように、本実施の形態にかかるトンネル切開き構造1によれば、十分に高い強度を有するトンネル切開き構造を得ることができる。特に、躯体3と鋼製セグメント10との接続部9近傍まで、合成セグメント30または合成セグメント50が設けられるため、十分な強度を有するとともに、内面への耐火被覆が容易である。例えば、鋼製セグメント10へ耐火被覆を行うと、鋼製セグメントの厚さ分(例えば40cm)だけの被覆を行う必要があるが、合成セグメントの内面は平滑であるため、例えば3cm程度の被覆で、全体を覆うことができる。
【0039】
また、躯体3とシールドトンネル5との接続部9には鋼製セグメント10が設けられるため、鋼製セグメント10の縦リブ15(または別途設けられるシアコネクタ)等が躯体3に埋設されることで、躯体3と確実に接続することができ、特殊な接合構造を要しない。
【0040】
また、合成セグメント50の接合部51の厚さが厚いため、鋼製セグメント10と合成セグメント50との接合部の厚さが高く、このため、埋設アンカ55の大きさや本数を増すことができるため、鋼製セグメント10と合成セグメント50との接合強度を高めることができる。特に、合成セグメント50の接合部51には、継手ボックス等の構成が無く、内部にコンクリート49が全面に充填されているため、接合部51の強度が高い。
【0041】
また、鋼製セグメント接合部61は、シールドトンネル5の軸方向に一直線状に並ばずに、千鳥状になるため、特に強度的に問題となる、鋼製セグメント接合部61がシールドトンネル5の同一箇所に集中しない。このため、より強度の高いトンネル切開き構造が得ることができる。
【0042】
次に、第2の実施の形態にかかる合成セグメント70について説明する。図7は、合成セグメント70を示す図で、図7(a)は斜視図、図7(b)は板部材71を示す図、図7(c)は、図7(a)のB−B断面図である。なお、以下の実施の形態において、図4に示す合成セグメント50と同一の機能を果たす構成要素には、図4と同一番号を付し、重複した説明を避ける。
【0043】
合成セグメント70は、合成セグメント50とほぼ同一の構造であるが、接合部51の構造が異なる。すなわち、合成セグメント70は接合部51の内部に、板部材71が設けられる。板部材71は、継手板52とほぼ垂直に、外側スキンプレート33と内側スキンプレート31との間に設けられる。板状部材71と内側スキンプレート31及び外側スキンプレート33とは溶接等により接合される。板状部材71には、切り欠き75が設けられる。切り欠き部71には、ねじ53を有する棒状のインサート73が設けられる。板状部材71とインサート73とは溶接等により接合される。
【0044】
第2の実施の形態にかかる合成セグメント70によれば、合成セグメント50と同様の効果を得ることができる。また、インサート73は板部材71と溶接されるため、インサート73の軸方向への引張力に対して、インサート73が合成セグメント70より抜けることがない。また、板部材71は、直接内側スキンプレート31、外側スキンプレート33と接合されるため、他のセグメントとの接合によりインサート73に伝達された応力が、コンクリート49を介さずに直接スキンプレートへ伝達される。このため、より高い接合強度を得ることができる。なお、前述の通り、合成セグメント70は、鋼コンクリート合成セグメントであるが、コンクリート中詰めセグメントとすることもできる。
【0045】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0046】
例えば、躯体3は図1に示した形状には限られない。図8は、躯体3と異なる形状の実施例を示す図である。図8(a)に示すように、二つのシールドトンネル5a、5bの間を切拡げる場合には、躯体3aのように両側に開口したような形状とすることもできる。また、図8(b)に示すように、シールドトンネル5の一部拡幅するようなC字状の躯体3bとすることもできる。更に、シールドトンネル5に設けられた開口部への窓形状とすることもできる。いずれの場合でも、躯体3a、3b、3cとシールドトンネル5との接合部には鉄鋼系セグメントが使用され、他の部位には合成セグメント等が使用されればよい。
【0047】
また、シールドトンネル5の断面形状も、円形状には限られない。例えば、図9(a)に示すような楕円形状のように、扁平した形状のシールドトンネル形状であっても良く、また、図9(b)に示すように、ほぼ矩形形状となるようなシールドトンネル形状であっても良い。本発明によれば、あらゆる形状のシールドトンネルに適用することができる。
【0048】
なお、本発明において、最も強度の必要と考えられる、鋼製セグメント10と合成セグメント50との接合部の接合強度を得るため、接合方法やセグメントの厚さを変化させたが、接合強度が十分であれば、鋼製セグメント10と合成セグメント50との接合部の厚さは、他の部位と同じであっても良い。この場合、シールドトンネル5は全周に亘り略同一厚さとなる。また、鋼製セグメント10と合成セグメント50との接続方法は、接合強度が十分であれば、接合部51のような構造ではなく、一般の継手ボックス43と同一の構造とすることもできる。すなわち、場合によっては、合成セグメント50(70)を使用せずに、合成セグメント30と鋼製セグメント10のみでシールドトンネル5を構成することも可能である。躯体3とシールドトンネル5との接続部には鋼製セグメント1(鉄鋼系セグメント)が使用され、他の部位には合成セグメント等が使用されればよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】トンネル切開き構造1を示す図。
【図2】鋼製セグメント10を示す斜視図。
【図3】合成セグメント30を示す斜視図。
【図4】合成セグメント50を示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A断面図。
【図5】鋼製セグメント接合部61近傍を示す図で。(a)は正面図、(b)は接合部51の断面図。
【図6】鋼製セグメント接合部61が千鳥状に設けられた状態を示す、トンネル切開き構造1の斜視図。
【図7】合成セグメント70を示す図で、(a)は斜視図、(b)は板状部材71の斜視図、(c)は(a)のB−B断面図。
【図8】躯体3の形状を示す図で、(a)は躯体3aを示す図、(b)は躯体3bを示す図、(c)は躯体3cを示す図、(d)は躯体3cの斜視図。
【図9】シールドトンネル5の形状を示す図で、(a)はシールドトンネル5aを示す図、(b)はシールドトンネル5bを示す図。
【符号の説明】
【0050】
1………トンネル切開き構造
3………躯体
4………下底版
5………シールドトンネル
6………側壁
7………撤去セグメント
8………上底版
9………接続部
10………鋼製セグメント
11………スキンプレート
13………側壁
15………縦リブ
17………継手穴
19………継手板
21………継手穴
30………合成セグメント
31………内側スキンプレート
33………外側スキンプレート
35………側板
37………継手板
39………継手ボックス
41………継手穴
43………継手ボックス
45………継手穴
49………コンクリート
50………合成セグメント
51………接合部
52………継手板
53………ねじ
55………埋設アンカ
57………ジベル
61………鋼製セグメント接合部
63………合成セグメント接合部
65………ボルト
70………合成セグメント
71………板部材
73………インサート
75………切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルと、前記トンネルに隣接する躯体とが接続されたトンネル切開き構造であって、
前記トンネルは、複数のセグメントにより形成され、
前記躯体と面する位置のセグメントが撤去され、
前記トンネルと前記躯体との接続部には、鉄鋼系セグメントが設けられ、
前記鉄鋼系セグメントには、鋼コンクリート合成セグメント、鉄筋コンクリートセグメント及びコンクリート中詰め鋼製セグメントのいずれかのセグメントが接合されることを特徴とするトンネル切開き構造。
【請求項2】
前記鉄鋼系セグメントには、鋼コンクリート合成セグメント、鉄筋コンクリートセグメント及びコンクリート中詰め鋼製セグメントのいずれかの第1のセグメントが接合され、
前記鉄鋼系セグメント及び前記第1のセグメント以外は、鋼コンクリート合成セグメント、鉄筋コンクリートセグメント及びコンクリート中詰め鋼製セグメントのいずれかの第2のセグメントが設けられることを特徴とする請求項1記載のトンネル切開き構造。
【請求項3】
前記鉄鋼系セグメントと前記第1のセグメントとの接合部は、
前記第1のセグメントと前記第2のセグメントとの接合部、及び前記第2のセグメント同士の接合部と比べて、接合強度が大きいことを特徴とする請求項2記載のトンネル切開き構造。
【請求項4】
前記第1のセグメントは、
前記鉄鋼系セグメントとの接合部の厚さが、前記第2のセグメントとの接合部の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項2または請求項3記載のトンネル切開き構造。
【請求項5】
前記第1のセグメントの前記鉄鋼系セグメントとの接合部には、
ねじ部を有する埋設アンカが埋設され、
前記鉄鋼系セグメントと前記第1のセグメントとは、前記埋設アンカとボルトによって接合されることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載のトンネル切開き部。
【請求項6】
前記第1のセグメントの前記鉄鋼系セグメントとの接合部には、前記第1のセグメントの厚さ方向に板部材が設けられ、
前記板部材には、ねじ部を有するインサートが設けられ、
前記鉄鋼系セグメントと前記第1のセグメントとは、前記インサートとボルトによって接合されることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載のトンネル切開き部。
【請求項7】
前記鉄鋼系セグメントと前記第1のセグメントは、
前記トンネルの軸方向に対して、千鳥状に設けられることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載のトンネル切開き部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−155998(P2009−155998A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338753(P2007−338753)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(505389695)首都高速道路株式会社 (47)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】