説明

トンネル坑門の施工方法

【課題】 張出足場の整備や組み換え作業を少なくすることにより、工期の短縮を図るとともに、高い安全性を得ることができるトンネル坑門の施工方法を提供する。
【解決手段】 トンネル坑門を施工するにあたり、まず、張出足場32に乗った作業員Mが外型枠2を施工する。次に、外型枠1の内側から、外型枠2の内側面に沿って鉄筋3を配筋する。このとき、鉄筋3は、棒状部材4に接合することによって配筋する。続いて、外型枠2の内側に内型枠1を施工する。その後、張出足場32に乗った作業員Mが外型枠2の外側から、外型枠2と内型枠1との間にコンクリートCを流し込み、コンクリートを打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネルなどのトンネル坑門を施工する際のトンネル坑門の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルなどの出入り口には、トンネル坑門が施工されていることが多い。このトンネル坑門の施工方法として、従来、外型枠と内型枠とを用いた方法がある(たとえば、特許文献1参照)。このトンネル坑門の施工方法では、図5に示す手順に沿って施工が行われる。
【0003】
このトンネル坑門の施工方法では、まず、図5(a)に示すように、トンネルの坑口に内型枠61を設置する。このとき、内型枠の外側位置に仮設足場51を立設しておく。次に、図5(b)に示すように、内型枠61の周囲に鉄筋62を組み立てる。このとき、仮設足場51に張出足場52を取り付け、この張出足場52の上に作業員Mが乗って、鉄筋の組立作業を行う。
【0004】
続いて、図5(c)に示すように、鉄筋62を挟んだ内型枠61の外側に外型枠63を組み立てる。外型枠63の組立作業についても、仮設足場51に取り付けられた張出足場52に作業員Mが乗って作業を行う。それから、図5(d)に示すように、張出足場52に乗った作業員Mが、外型枠63と内型枠61との間にコンクリートCを流し込み、養生することによってトンネル坑門の施工が完了する。
【特許文献1】特開2004−124641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されたトンネル坑門の施工方法では、内型枠61の外側で鉄筋62の組立作業が行われる。このため、鉄筋62の組立が進むにつれて、張出足場52を組み替える必要が生じる。また、内型枠61と鉄筋62との間の隙間を埋めるための張出足場52も必要となる。このため、張出足場52の整備や組み換え作業が多くなり、その分施工が長期化してしまうという問題があった。さらには、内型枠61と鉄筋62との間の隙間から、作業員が転落してしまうおそれがあるなど、高い安全性が得られないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、張出足場の整備や組み換え作業を少なくすることにより、工期の短縮を図るとともに、高い安全性を得ることができるトンネル坑門の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係るトンネル坑門の施工方法は、トンネルの坑口に形成されるトンネル坑門の施工方法であって、トンネル坑門を施工する際の型枠となる外型枠を形成し、外型枠の内側面に沿ってトンネル坑門の鉄筋を配筋し、外型枠の内側に内型枠を形成した後、外型枠と内型枠との間にコンクリートを打設することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るトンネル坑門の施工方法では、外型枠を最初に形成し、外型枠の内側に鉄筋を配筋した後、内型枠を形成するようにしている。このため、内型枠を施工した後に内型枠の外側に鉄筋を配筋する作業が必要なくなるので、張出足場の整備や組み換え作業を少なくすることができる。その結果、工期の短縮を図ることができる。
【0009】
ここで、外型枠の内側に向けて棒状部材が設けられており、鉄筋を棒状部材に接合して、鉄筋を配筋する態様とすることができる。
【0010】
外型枠の内側に鉄筋を配筋する際には、外型枠に鉄筋を保持させる必要が生じる。このとき、外型枠の内側に向けて棒状部材が設けられていることにより、外型枠に鉄筋を容易に保持させることができる。
【0011】
また、外型枠は、側板と天端板とを備えており、トンネルの坑口に側板を立設し、立設された側板の天端部に天端板を取り付けて、外型枠を形成する態様とすることができる。
【0012】
このように、外型枠は、側板と天端板とを備えており、トンネルの坑口に側板を立設し、立設された側板の天端部に天端板を取り付けて、外型枠を形成することにより、内型枠を設ける前段階において、外型枠を容易に施工することができる。
【0013】
さらに、トンネルを施工する際、トンネルの延在方向に走行可能なシート台車が用いられており、シート台車を用いて、鉄筋の配筋作業を行う態様とすることができる。
【0014】
このように、トンネルを施工する際に用いるシート台車によって鉄筋の配筋作業を行うことにより、鉄筋の配筋作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るトンネル坑門の施工方法によれば、張出足場の整備や組み換え作業を少なくすることにより、工期の短縮を図るとともに、高い安全性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。図1は本実施形態に係るトンネル坑門の施工方法に用いられた主要部材を示す正面図、図2は外型枠の分解斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るトンネル坑門の施工方法では、内型枠1と、外型枠2とを用いている。この内型枠1と外型枠2との間は、鉄筋3が配筋されている。さらに、内型枠1と外型枠2との間は、図示しないセパレータが掛け渡されている。
【0018】
内型枠1は、トンネル本体の覆工を行う際に用いられるセントルが用いられ、床版Rの上に載置されている。内型枠1は、脚部11を備えており、脚部11には、梁部材12および柱部材13が取り付けられている。また、梁部材12と柱部材13の端部には、内型枠本体部14が取り付けられている。
【0019】
外型枠2は、図2に示すように、2つの下側外型枠21および上側外型枠22が1組となった外型枠ブロック23が、トンネルの掘削方向に沿って並設されて形成されている。このうち、下側外型枠21と上側外型枠22とが連結されて外型枠ブロック23が形成され、複数の外型枠ブロック23が並設された外型枠2が形成される。また、下側外型枠21が本発明の側板となり、上側外型枠22が本発明の天端板となる。
【0020】
並設された外型枠ブロック23同士は、それぞれボルトによって固定されている。また、外型枠ブロック23は、その正面視した形状が略半長円形状をなしている。下側外型枠21は半長円形状の直線部から曲線部に掛かるまでの位置を構成し、上側外型枠22は、半長円形状の先端曲線部の位置を構成する。
【0021】
下側外型枠21は、床版Rの側面側からボルトBによって固定されており、直線部が鉛直方向に沿って配置されている。この2つの下側外型枠21の先端に、上側外型枠22の先端部が接続されている。このため、下側外型枠21を立設した後、上側外型枠22を下側外型枠21に取り付けることにより、外型枠2が形成される。このように、外型枠2は容易に形成することができる。
【0022】
内型枠1と外型枠2との間には、鉄筋3が配筋されている。図1では、鉄筋は簡略化して示しているが、実際には、複数の鉄筋が所定の位置に配筋されている。さらに、外型枠2には、鉄筋を保持するための棒状部材4が配設されている。棒状部材4は、外型枠2の内側に向けて設けられ、棒状をなしており、鉄筋3を配筋する際の各鉄筋の配筋の際に利用される。
【0023】
次に、本実施形態に係るトンネル坑門の施工方法について、図3および図4を参照して説明する。本実施形態に係るトンネル坑門の施工方法では、トンネル本体の施工と同時に、またはトンネル本体の施工が済んだ後、トンネル坑門の施工に入る。
【0024】
まず、図3(a)に示すように、外型枠2の立設を行う。外型枠2を形成する際には、まず、床版Rの側面に下側外型枠21をボルト等によって固定し、下側外型枠21を立設する。このとき、トンネルの掘削方向に沿って複数の下側外型枠21を並設して立設する。下側外型枠21の立設と同時に、下側外型枠21の外側位置に仮設足場31を組み立て、この仮設足場31に対して張出足場32を組み付ける。
【0025】
張出足場32の組付けが済んだら、張出足場32に作業員Mが乗るとともに、上側外型枠22を図示しないクレーンで吊るして、下側外型枠21の上方に搬送する。それから、作業員Mが上側外型枠22を下側外型枠21の上端部に誘導し、下側外型枠21の上端部に上側外型枠22の先端部を固定する。
【0026】
他方、トンネル内では、防水工などの際にシート台車40が用いられるが、防水工が終了した後にトンネル坑門の施工を行うことにより、シート台車40をトンネル坑門の施工に用いることができる。本実施形態では、外型枠2を施工している間に、シート台車40を予めトンネル坑門の施工位置まで移動させておく。また、張出足場32は、外型枠2の施工が済んだ後においても解体することなく、そのまま仮設足場31に取り付けた状態としておく。
【0027】
こうして、外型枠2の施工が済んだら、図1に示す棒状部材4を外型枠2に取り付ける。続いて、図3(b)に示すように、鉄筋3の組立作業を行う。このとき、作業員Mがシート台車40に乗って、鉄筋の組立作業を行う。また、外型枠2には、棒状部材4が取り付けられており、この棒状部材4に鉄筋を針金で巻きつけること等によって鉄筋3の配筋を行うことができる。また、鉄筋3の配筋は、作業員Mがシート台車40に乗って、外型枠2の内側から行うことができるので、仮設足場31に対する張出足場32の張出足場の整備や組み換え作業を大幅に省略することができる。
【0028】
鉄筋3の配筋が済んだら、図4(a)に示すように、内型枠1の施工を行う。内型枠1の施工の際には、シート台車40を撤去し、代わりにセントル台車を外型枠2の内側まで移動させて内型枠1をセットする。続いて、内型枠1と外型枠2との間にセパレータを設置して、型枠間を固定する。
【0029】
こうして、内型枠1の施工が済んだら、図4(b)に示すように、内型枠1と外型枠2との間にコンクリートを打設する。コンクリートをする際には、作業員Mが張出足場32の上に乗り、内型枠1と外型枠2との間にコンクリートCを流し込んで打設する。ここで、仮設足場31および張出足場32としては、外型枠2を施工した際に設けたものをそのまま用いることができる。このため、別途足場を組む必要はない。
【0030】
その後、コンクリートを養生し、養生が済んだら、内型枠1および外型枠2を取り外す。こうして、トンネル坑門が完成する。
【0031】
このように、本実施形態に係るトンネル坑門の施工方法では、外型枠2を施工した後、鉄筋3を配筋し、続いて内型枠1の施工を行っている。このため、鉄筋3を配筋する際に作業員Mが張出足場32に乗ることなく、鉄筋3の配筋を行うことができるので、張出足場32の整備や組み換え作業を少なくすることができる。その結果、工期の短縮を図ることができる。
【0032】
また、鉄筋3を配筋するにあたり、外型枠2には、棒状部材4が外型枠2の内側に向けて取り付けられている。このため、鉄筋3を棒状部材4に接合することができるので、鉄筋3の配筋作業を容易なものとすることができる。さらに、外型枠2は、下側外型枠21と上側外型枠22とを備えており、下側外型枠21の先端部に上側外型枠22の端部を合わせて取り付けるだけで外型枠2の施工を行うことができる。したがって、外型枠2を容易に施工することができる。さらに、鉄筋3の配筋作業の際にシート台車40を用いているので、鉄筋3の配筋作業を容易に行うことができる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記各実施形態では、外型枠として、下側外型枠と上側外型枠とを備えている型枠を用いているが、その他の型枠を用いる態様とすることもできる。また、上記実施形態では、シート台車40を用いて鉄筋3の配筋作業を行っているが、鉄筋3の配筋作業を行う際におけるシート台車40の使用は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係るトンネル坑門の施工方法に用いられた主要部材を示す正面図である。
【図2】外型枠の分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係るトンネル坑門の施工方法の工程を示す工程図である。
【図4】図3に続く工程を示す工程図である。
【図5】従来のトンネル坑門の施工方法の工程を示す工程図である。
【符号の説明】
【0035】
1…内型枠
2…外型枠
3…鉄筋
4…セパレータ
11…脚部
12…梁部材
13…柱部材
14…内型枠本体部
21…下側外型枠
22…下側外型枠
22…上側外型枠
23…外型枠ブロック
31…仮設足場
32…張出足場
40…シート台車
51…仮設足場
52…張出足場
61…内型枠
62…鉄筋
63…外型枠
B…ボルト
C…コンクリート
M…作業員
R…床版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの坑口に形成されるトンネル坑門の施工方法であって、
前記トンネル坑門を施工する際の型枠となる外型枠を形成し、
前記外型枠の内側面に沿って前記トンネル坑門の鉄筋を配筋し、
前記外型枠の内側に内型枠を形成した後、
前記外型枠と前記内型枠との間にコンクリートを打設することを特徴とするトンネル坑門の施工方法。
【請求項2】
前記外型枠の内側に向けて棒状部材が設けられており、
前記鉄筋を前記棒状部材に接合して、前記鉄筋を配筋する請求項1に記載のトンネル坑門の施工方法。
【請求項3】
前記外型枠は、側板と天端板とを備えており、
前記トンネルの坑口に前記側板を立設し、立設された前記側板の天端部に前記天端板を取り付けて、前記外型枠を形成する請求項1または請求項2に記載のトンネル坑門の施工方法。
【請求項4】
前記トンネルを施工する際、前記トンネルの延在方向に走行可能なシート台車が用いられており、
前記シート台車を用いて、前記鉄筋の配筋作業を行う請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のトンネル坑門の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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