説明

トンネル建設の際に事前探査するための方法および装置

【課題】トンネルの建設の際に事前探査するための改善された方法を提供すること。
【解決手段】地震波の伝播モデルは、トンネル壁部(3)における表面波(O)の特性に基づいており、これらの表面波は、地震波の発生の際に励起装置(10)からトンネルの切羽領域(4)へ伝播しおよび/または地震波の受信の際には切羽領域(4)からセンサ装置(20)へ伝播する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル建設の際に事前探査するための、例えば、取分け硬い底層、例えば岩盤において地質構造を検出するための方法、特に、請求項1の前提部分の特徴を有する方法に関する。更に、本発明は、トンネル建設の際に事前探査するための装置、特に、請求項13の前提部分の特徴を有する装置に関する。
【0002】
地表、孔またはトンネルを前提として、例えば研究の目的および探査の目的で、地質構造を検出するための、地震の測定を利用することは知られている。この場合、出来る限り高エネルギの音響的な振動の、探査される物質への導入後に、この物質の振動応答の数値、方向および相が、ジオホーンまたは加速度計によって確定される。深さにおける岩盤の特性を探査する際に、実体波が重要である。或る固体内で伝播することができる圧力波および剪断波が区別される。圧力波は垂直方向波である。圧力波は、他の波型に比較して、最大の伝播速度を有するので、一次波(P波)と呼ばれる。圧力波の伝播速度は、理想的に弾性的な固体において、弾性的な物質パラメータ、例えば、弾性係数(E係数)、横弾性係数(G係数)および密度に依存している。剪断波は横波である。剪断波は、常に、P波よりも緩慢であるので、二次波(S波)と呼ばれる。剪断波の伝播速度は、理想的に弾性的な固体において、弾性的な物質パラメータ、横弾性係数(G係数)および密度に依存している。
【0003】
建設中のトンネルの掘進領域で地質構造を検出するために、地震源によって、地震波が掘進領域へ導入され、地震用のセンサによって、掘進領域で反射された波が検出される。現在知られた事前探査方法では、P波および/またはS波が励起されかつ評価される。この場合、従来では、地震源およびセンサが、トンネルの切羽の出来る限り近くに設けられる。その目的は、掘進方向に出来る限り遠方に届く応答信号を受け取るためである。
【背景技術】
【0004】
波伝播の方向および種類を一定程度仮定しつつ、地震波の伝播時間から、掘進領域における地質構造への伝播時間従ってまた地質構造の個所を確定することが知られている(非特許文献1および非特許文献2を参照せよ)。波の伝播に関して従来用いられたモデルの場合に、実体波が、岩盤を通って、ほぼ直線的に、地震源から地質構造へ伝播しかつ地震用のセンサへ戻ることが仮定される。実体波の伝播時間からおよび各々の岩盤に特徴的な速度から、地質構造への伝播距離を、直接算定することができる。
【0005】
実際に、従来の事前探査技術が、低い信頼性を有することが明らかになった。例えば、掘進領域における岩盤の不均質のような地質構造が、地震源または地震用のセンサの種々の位置で検出されたとき、掘進領域からの振動応答の評価により、地質構造の種々の位置が生じた。従って、事前に探査するための従来の方法の利用は、掘進領域での少ない距離に限定されている。
【0006】
従来の事前探査の少ない再現可能性に関する原因は、従来の地震源の励起パラメータの低い調整可能性および再現性に見出された。しかし、複数の励起パラメータの調整の精度および再現性に関して最適化されている複数の地震源の、その利用(例えば、特許文献1および特許文献2)も、地震の事前探査の低い改善しか供しない。
【0007】
従来の事前探査では、他の問題は、硬岩盤用のトンネルボーリングマシン(硬岩盤用のTBM)のカッティング・ヘッドへの例えば地震源の組込みにある。地震源の確実な作動の維持は、工事現場の条件(振動、埃、水)の下で非常に困難である。問題は、特に、TBMのカッティングホイールの領域で、生じる。他の困難性は、地震源を切羽に従来通りに結合することの実現にある。この切羽は、地震源を平坦に押圧することを不可能にする大きな凹凸を有することがある。
【0008】
地震学的な事前探査方法は、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、特許文献3および特許文献4にも記載されている。これらの事前探査方法は、岩盤において実体波を励起しかつ評価することに基づいている。
【特許文献1】DE 199 44 032 A1
【特許文献2】DE 101 41 518 A1
【特許文献3】DE 198 52 455 C2
【特許文献4】DE 198 42 975 B4
【非特許文献1】" G. Borm et al. 2003 “Integrated Seismic Imaging System for Geological Prediction During Tunnel Construction” in ISRM-2003 Technology Roadmap for Rock Mechanics, South African Institute of Mining and Metallurgy, Johannisburg Symposium Series S 33, pp 137-142
【非特許文献2】R. Giese et al. “In situ seismic investigations of fault zones in the Leventina Gneiss Complex of the Swiss Central Alps“ in “Petrophysical Properties of Crystalline Rocks (SP 240)”,“Journal of the Geological Society (UK)”, 2005, pp.15-24
【非特許文献3】L. Petronio et al. “Geophysics“ Bd. 67(6), 2002, pp 1798-1809
【非特許文献4】G. Nord et al. “Tunnelling and Underground Space Technology“ Bd.7(3), 1992, pp 237-242
【非特許文献5】S. S. Choi et al. “Tunnelling and Underground Space Technology“ Bd.19, 2004, p 533
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、トンネルの建設の際に事前探査するための改善された方法を提供することである。この方法で、従来の技術の欠点が解消され、トンネルの掘進領域における地質構造の正確なかつ再現可能な突き止めが可能となる。この方法は、掘進領域の深さへ拡大された層準を有する地質構造の改善された検出を可能にすることが意図される。
【0010】
本発明の課題は、また、トンネルの建設の際に事前探査するための改善された装置を提供することであり、この装置によって、従来の事前探査装置の欠点が解消される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、請求項1の特徴を有する方法または請求項13の特徴を有する装置によって解決される。本発明の好都合な実施の形態および使用は、複数の従属請求項から明らかである。
【0012】
方法に関しては、本発明は、トンネルの建設における予備探査の際に、励起装置によってトンネル内で発生され、かつ掘進領域での反射または散乱後にセンサ装置によってトンネル内で検出される地震信号を、以下の前提の下で、すなわち、地震信号が、側方のトンネル壁部では表面波としておよび掘進領域では実体波として伝播する地震波によって、発生されるという前提の下で、評価に晒すという一般的な技術的教示に基づいている。励起装置によって、まず、トンネルの切羽領域において実体波に変換される表面波が、トンネル壁部に励起される。掘進領域において所定の地質構造で反射される実体波は、トンネルの切羽領域へ戻り、そこで、センサ装置によって検出される反射された表面波に、変換される。本発明では、評価装置によって、地震信号の確定された伝播時間の評価がなされる。この評価の際に、センサ装置からの地震信号から確定される伝播時間から、地震波の伝播距離が算定される。この場合、トンネル壁部における表面波の特性が考慮される。
【0013】
発明者は、実体波が励起の個所から地質構造へ実質的に直線的に伝播しかつセンサ装置へ戻るという以前の仮定と異なって、実際には、まず、励起装置から切羽領域へのおよび切羽領域から地質構造へのおよび地質構造からセンサ装置への地震波のリニアな伝播が与えられていることを確認した。トンネル内での複数の励起兼センサ装置の位置に従って、トンネル壁部における地震波の伝播距離の割合は、全伝播距離への所定の寄与を果たす。この寄与は、従来の事前探査方法では、正確に考慮されなかった。更に、励起の際に形成される地震エネルギの大部分が、通常の地震源において、表面波の形態で継続されることが確認された。表面波のエネルギ密度が、伝播路に比例して減少し、他方、実体波の振幅低下はその伝播路の二乗に比例している。
【0014】
従来の地震学的な方法は、地震波から1つまたは複数のセンサへ直接伝播する実体波による、またはトンネルの掘進領域にある障害におけるこれらの実体波の反響(反射)による音響伝達に基づく。これらの方法とは反対に、本発明に係わる方法で、側方のトンネル壁部に沿って伝播する表面波が適切に励起される。表面波は、トンネルの切羽で、例えば剪断波に変換され、かくて、掘進領域の反射法地震学的な分析のために適切である。
【0015】
従って、本発明では、モデルパラメータまたは方法パラメータ(評価パラメータ)として少なくとも1つのトンネル壁部における表面波の特性を含む、地震波の伝播モデルによって地震信号を評価してなる事前探査方法が提供される。地震信号は、表面波の特性に従って、すなわち、表面波の出現および表面波の特性を考慮しつつ評価される。伝播モデルを用いて、特に、地震波の確定された伝播時間の評価が可能となる。この評価の場合には、センサ装置の地震信号から確定される伝播時間から、地震波の伝播距離がトンネル壁部における表面波の特性に従って算定される。
【0016】
装置に関して、本発明は、本発明に係わる方法に対応して、トンネル建設の際に事前探査するための装置を提供するという一般的な技術的教示に基づいている。この事前探査装置は、センサ装置からの地震信号を評価するための評価装置を有する。トンネル壁部における表面波の特性に基づく伝播モデルを用いて信号を評価するための評価装置が設けられている。評価装置は、表面波としてトンネル壁部に沿っておよび実体波として切羽領域から掘進領域へ伝播する際の、特に、地震波の伝播距離を算定するために、設けられている。評価装置によって、地震波の伝播距離が、トンネル壁部における表面波の特性を考慮しつつ算定される。
【0017】
従来の技術と異なり、吸振の諸問題が波の長い伝播路によって生じることなく、励起兼センサ装置を、切羽領域から間隔をあけてトンネルに設けることができることは好都合である。地震源も複数のセンサも、切羽従ってまたTBMの穿孔ヘッドの直ぐ近くに設けられている必要がない。TBMへの地震源の組込みおよび切羽への地震源の結合の際の以前の諸問題が、防止される。励起は、凹凸のない加工された壁部を有するトンネル領域でなされることができる。それ故に、地震源の平坦な押圧が改良される。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態では、伝播モデルは、評価パラメータとして、励起装置からトンネルの切羽領域へのおよび/または切羽領域からセンサ装置への表面波の路長を有する。従って、励起装置から掘進領域における地質構造を介してセンサ装置への地震波の伝播距離を、トンネル壁部に沿う表面波の双方の(entsprechenden)部分距離および地質構造と切羽領域との二重距離の合計として、算定することができる。励起装置から切羽領域へ伝播しおよび切羽領域からセンサ装置へ戻る表面波の路長が知られているので、地質構造と切羽領域との距離を、非常な精度で確定することができることは好都合である。更に、従来の事前探査方法との比較で、地質構造を、切羽領域からのより大きな間隔で確実に検出することができる。
【0019】
信号評価の精度を一層改善することができることは好都合であるのは、表面波の他の特別な性質、特に、トンネル壁部における表面波の速度が、伝播距離の算定の際に考慮される場合である。この目的のために、伝播モデルは、評価パラメータとしては、トンネル壁部の表面波の速度を含む。表面波は、例えば、実体波として伝播する剪断波の速度の約92%の速度で移動する。表面波速度を測定し、あるいは、所定の岩盤に対して使用可能である場合に、一覧表(Tabellenwerke)から推測することができることは一般的である。表面波速度を考慮して、地震波の全伝播時間への表面波の寄与をより正確に検出することができることは好都合である。それ故に、地質構造と切羽領域との求められる距離も、非常な精度および再現性をもって確定することができる。
【0020】
本発明の他の利点は、種々の型の励起装置による地震波の発生の際の大きな可変性にある。パルスによる励起によって、伝播時間の容易な測定に関する利点が生じる。パルスによる励起のためには、例えば、DE 119 44 032 A1に記載されている衝撃ハンマーが用いられる。この代わりに、スタック可能な信号の検出従ってまた信号対雑音比の改善に関する特別な利点を達成する周期的な正弦励起がなされる。周期的な正弦励起のための励起装置としては、DE 101 41 518 A1に記載されている磁気ひずみバイブレータを使用することは好ましい。衝撃ハンマーまたは磁気ひずみバイブレータの、励起装置としての使用は、これらの装置によって優先的に表面波が励起されるという利点を有する。表面波の全波エネルギの約75%ないし80%が、切羽領域へ伝播する。また、前記励起装置は、励起源、振動源または、パルス源で構成されることができ、この場合には、前記トンネル内に分布された複数の励起源、振動源または、パルス源を有することが好ましい。
【0021】
本発明では、地震波を200Hzないし600Hzの周波数範囲で発生および/または測定することは好ましい。発明者は、この周波数範囲では表面波の主信号エネルギがトンネル壁部にあるので、信号評価の高い感受性が達成されることを確認した。
【0022】
本発明の他の実施の形態では、トンネル壁部の複数の励起位置において地震波が発生されるとき、信号評価の精度および再現性を高めることができることは好都合である。複数の励起位置は、切羽領域からの種々の間隔を特徴とする。各々の励起位置にために、地震波の伝播距離および特に地質構造と切羽領域との距離に関する値を確定することができる。平均された間隔値は、地質構造の位置に関するより正確な情報を提供する。
【0023】
本発明の特に好ましい実施の形態では、事前探査方法は、トンネルの切羽領域の種々の掘進位置で幾度も繰り返される。各々の測定が、連続的なトンネル建設中に、所定の掘進位置に対し、地質構造と切羽領域との相応の距離を提供する。一連の(少なくとも2つの)間隔からおよび励起兼センサ装置と切羽領域との相対位置に関する知られた情報から、三角関係によって、空間内の地質構造の位置を検出することができる。
【0024】
反射された表面波を受信するために、切羽領域からの種々の間隔をあけてトンネル内で配設されている複数のセンサを用いることは好ましい。これらのセンサが非常な精度で伝播時間値を供給することは好都合である。その結果、それに従って、地震波の伝播距離をより正確に検出することができる。
【0025】
励起装置による地震波の発生は、例えば、切羽領域からの、2mよりも小さい間隔で、なされる。励起装置は、例えばトンネルボーリングマシン(TBM)に固定される。従って、トンネル壁部に沿っての伝播の際に、表面波の吸振を減じることができることは好都合である。しかしながら、好ましい変形例では、励起装置による地震波の発生は、切羽領域からの、2mよりも大きい、特に5mよりも大きい間隔で、なされる。従って、励起装置およびトンネルボーリングマシンの作動中に、相互の障害が全然生じないことが達成できないのは好都合である。更に、センサ装置を、切羽領域からの、5mよりも大きい間隔で、位置決めすることは好ましい。複数の励起兼センサ装置の間の相互の間隔で、センサ装置による測定の妨げを、励起装置の作動によって減じることができる。2つの励起兼センサ装置を、トンネル切羽の少なくとも5m後方でトンネル壁部に固定または作動させることは特に好ましい。しかし、表面波がこの配置の際に励起されることが好ましいにも拘わらず、反射された剪断波が評価される。これらの剪断波は、励起された表面波からの変換によって、切羽に直接に発生される。
【0026】
表面波は楕円形の振動軌道を有する。この場合、最大の偏向は、トンネル壁部の表面に対し垂直方向に与えられている。従って、反射された表面波を受信するためには、振動成分、特に、トンネル壁部に対し垂直方向に整列された振動成分を測定するだけで十分である。この目的のためには、地震用のセンサが、振動成分に対応する方向感受性を有するただ1つのセンサ要素を有することだけで十分ある。しかしながら、センサ装置によって、複数の空間方向、特に、3つのすべての空間方向の振動成分を検出することは好ましい。この目的のために、センサは、互いに垂直方向にある方向感受性を有する3つのセンサ要素を具備する。この場合、センサが、技術的な理由から、トンネル壁部に対し最適には方向づけされていないときでも、表面波を非常な精度で測定することができる。例えば、複数のセンサを収容するための複数の孔を形成するための、TBMに取着されたドリルが、トンネル壁部に対し径方向に(垂直方向に)方向づけられていない複数の孔を穿つことができることも可能である。これに従って、センサは、トンネル壁部に斜角で挿入されていることが可能である。このとき、求められる径方向の振動成分を、センサ要素によって記録される3つの振動成分から、算定することができる。
【0027】
本発明に係わる方法の利用は、地質構造(掘進領域における音響インピーダンスの変化)の出現の検出のみに向けられている。しかしながら、地質構造の空間的な分布の再構成がなされることは好ましい。
【0028】
本発明の他の重要な特徴は、地震信号の評価の際に、励起信号と反射信号の分離がなされることにある。この分離は、地震源の型に従って、時間空間または周波数空間における濾過に基づいている。
【0029】
本発明の他の詳細および利点は、添付した図面を参照した、本発明の好ましい実施の形態の記載から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1には、側方のトンネル壁部3を有する建設中のトンネル1が示されている。このトンネル1の切羽4がTBM40によって掘進されてなる掘進領域2は、掘進方向に、地質障害(geologische Stoerung)6を有する。トンネル1では、励起位置5には、励起装置として、少なくとも1つの地震源10が設けられている。この地震源は、例えば、衝撃ハンマーおよび/または磁気性の振動発生器を有する。複数の地震源が設けられているとき、これらの地震源は、トンネル1内の、種々の、知られたかつ再現可能な励起位置に設けられている。トンネル壁部3には、複数の地震用のセンサ21からなるセンサ装置20が設けられている。地震源10およびセンサ装置20は、評価装置30に接続されている。評価装置は、トンネル1内にまたはトンネル1の外側に設けられていてもよい。
【0031】
評価装置30は、例えば、表面波の特性に従って地震波の伝播距離を算定するために、トンネル壁部3に設けられている。表面波は、地震波の発生の際には、励起装置10から切羽4へおよび地震波の受信の際には、切羽4からセンサ装置20へ伝播する。
【0032】
図2には、複数のセンサ21の高さで切り開かれた、トンネル壁部3の切取り部分が示されている。トンネル壁部3へは、直径bおよび深さcの複数の孔3.1が、所定間隔aをあけて穿孔されている。複数のセンサ21が取着されるのは、複数の孔3.1がトンネルの掘進中に径方向にトンネル壁部3へ穿孔され、かつ必要な場合には複数の壁部アンカーおよび/またはセンサ21を有することによってである。これらの地震用のセンサ21の棒の端部が、孔3.1へ挿入され接着される。接着剤としては、例えば接着用アンカーの使用の際に用いられる2成分系接着剤(例えばエポキシ樹脂接着剤)が用いられる。センサ21の、孔3.1でのしっかりした結合は、2成分系接着剤によってなされる。この2成分接着剤は、接着用アンカーを接着用カートリッジと共に挿入する際と同様に、棒を回転しながら棒を挿入する際に、混合される。この目的のために、センサ21の前面が斜面を有する。
【0033】
前記所定の間隔aは、所望の空間的な解像度および測定のコストに従い、通常、5mと20mの間である。直径bは、使用されたセンサ装置の最大限の外径、センサ棒の長さ、穿孔技術、岩盤の物質、物質の圧搾可能性に従って、選択される。この直径は、通常、センサの最大限の直径よりも約10mmよりも大きく選択される。その目的は、センサを取着するための接着剤のコストを制限し、接着剤の混合を保証するためである。複数の孔の深さcは、トンネル壁部の解し領域および好ましくは波の測定される種類に従う。深さは、例えば0.2mと4mの間にある。
【0034】
地震用の複数のセンサ21は、測定技術的に従ってセンサ装置を形成する。それ故に、場合によっては、地震源10の種々の励起位置と組み合わせて、地質障害6の空間的な応答信号を検出することができる。
【0035】
図3は、地震用のセンサ21の前部の構造を示す。このセンサは、複数のセンサ要素22として、複数のジオホーンおよび/または加速度計を有する。図示した例では、3つのジオホーン22が、受感軸をx方向、y方向およびz方向(互いに90°の角度にある)に夫々向けて、本体23に挿入して接着されている。
【0036】
本発明に係わる方法を実施するために、地震源10によって、パルス状のおよび/または正弦状の励起が発生される。その結果、表面波O(図1を参照せよ)が切羽4まで伝播する。表面波Oは、比較的少ない減衰で、トンネル壁部3に伝播する。実体波と反対に、表面波O(例えばレイリー波)または界面波は、表面または界面の周囲にのみ伝播することができる。これらの波は、表面または界面の下の深さが増大するにつれて、指数的に増大する関数の経過と共に、減衰される。
【0037】
切羽4に達する際に、表面波Oは、優先的にS波およびP波も含む実体波Rへ変換する。実体波Rは、掘進領域2において、伝播し続ける。この実体波は、地質障害6において、部分的に反射される。このことによって、戻る波R´の一部分は再度切羽4に達する。そこでは、反射された表面波O´への変換が再度なされる。反射された表面波O´は、複数のセンサ21からなるセンサ装置20によって記録される。
【0038】
センサ装置20の複数のセンサ21は、地震波の伝播距離の算出のために評価手続きがなされる地震信号を供給する。評価のためには、地震波の測定された伝播時間から掘進領域2における反射点への逆放射を可能にする如何なる方法も適切である。かような方法は、例えば、古典的なキルヒホフ移動の構想(J. Schleicher et al. “Geophysics” Bd. 58, 1993, pp 1112-1126を参照せよ)に基づく。この場合、反射された実体波の同一伝播時間の面(アイソクロン)を算出するための理論的な速度モデルが用いられる。これらのアイソクロンに沿って、測定された地震増幅が格子点に割り当てられる。アイソクロンの形状は、地震源点および受信点の空間的位置および地震波の用いられた伝播モデルに従う。
【0039】
本発明では、伝播モデルは、地震波が表面波としてトンネル壁部3に沿って励起装置10から切羽4へ伝播しおよび/または地震波の受信の際には切羽4からセンサ装置20へ伝播するほどに、変更される。切羽4の位置は、実体波の二次地震源として用いられる。更に、伝播モデルは、切羽4では、表面波から実体波への変換または実体波から表面波への変換がなされ、変換された波が地質構造すなわち地質障害6へ伝播し、あるいはこの地質構造から戻ることに基づいている。アイソクロン(すなわち、同一伝播時間の面)は、切羽4における表面波から実体波への変換の点を中心とする球の形状を有する。反射の画像は、今や、複数のセンサ21で測定される増幅の、各々のアイソクロンへの割り当てである。切羽の位置で測定を実行する際に、映し出された反射体の、トンネル掘進方向への入射角度を規定することを妨げる空間的なぼやけが生じる。空間的なぼやけは、切羽の種々の位置で測定を実行すること従ってまた増幅を反射体の実際の位置に構造的にオーバーレイすることによって解消される。従って、掘進方向に対する地質障害の入射角度を確定し、従ってまた、トンネル予定線と、障害との交点を予測することが可能である。
【0040】
図1は、地質構造6に対する励起位置5の点線を示す。従来のモデルでは、波の伝播が点線に沿ってなされることが前提となった。これに対し、励起位置5から切羽4を経て地質構造6への実際の道程は、点線よりも長い。従って、本発明で用いられる伝播モデルは、実際の状況にもっと良く適合されている。
【0041】
本発明では、例えば、励起装置すなわち地震源10から掘進領域2を経てセンサ装置20へ伝わる地震波の伝播時間が確定され、地震波の対応の伝播距離が、伝播時間に従って算定される。地震波の伝播距離の算定は、トンネル壁部3に沿っての表面波O,O´の経路および速度に従って、なされる。
【0042】
三次元での地質構造6の完全な画像のために、地震波の励起、反射された波の受信、トンネルボーリングマシンの種々の掘進位置に従う、掘進領域2における地震波の伝播距離の算定、というステップが繰り返される。例えば24時間当たり20ないし30mの掘進速度および0.8mないし1.5mのTBMのボーリングサイクルで、一日当たり、例えば15の測定が実行される。掘進領域2における地震波の15の伝播距離が確定され、掘進領域から、トンネルボーリングマシンの種々の掘進位置に従って、空間における地質構造6の位置が算定される。特に、例えば、トンネル軸を交差する障害区域の、その傾斜角度を、従ってまた切羽4と、障害区域へのトンネルの貫通孔との距離を算定することができる。
【0043】
地質構造を検出しかつ突き止めた後に、続いて、探査の穿孔を適切に試みることができる。他の探査法から、既に、予期される構造に関する地質学的な事前情報が提供されている場合、本発明に係わる方法で、構造の幾何学的な記述を明確に規定することができる。
【0044】
本発明の、記述、図面および請求項に開示された特徴は、単独でおよぶ組合せで、種々の実施の形態で本発明を実現するためには重要である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】建設中のトンネルの断面略図を示す。
【図2】複数のセンサがトンネル壁部に位置決めされている図を示す。
【図3】複数の振動成分を検出するための3つのセンサ要素を有するセンサの略図を示す。
【符号の説明】
【0046】
1 トンネル
2 掘進領域
3 トンネル壁部
4 切羽領域
5 励起位置
6 地質構造、地質障害
10 励起装置、地震源
20 センサ装置
21 センサ
30 評価装置
O 表面波。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル(1)の建設の際に事前探査するための方法であって、
励起装置(10)を用いて前記トンネル(1)の掘進領域(2)に地震波を発生させ、
前記掘進領域(2)において反射された前記地震波を、センサ装置(20)によって受信し、
前記励起装置(10)から前記掘進領域(2)を経て前記センサ装置(20)へ伝わる前記地震波の所定の伝播モデルを用いて、前記センサ装置(20)からの地震信号を評価するステップを有する方法において、
前記地震波の伝播モデルは、トンネル壁部(3)における表面波(O)の特性に基づいており、これらの表面波は、前記地震波の発生の際に前記励起装置(10)から前記トンネルの切羽領域(4)へ伝播しおよび/または前記地震波の受信の際には前記切羽領域(4)から前記センサ装置(20)へ伝播することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記伝播モデルは、評価パラメータとして、前記励起装置(10)から前記トンネル(1)の前記切羽領域(4)へおよび前記切羽領域(4)から前記センサ装置(20)へ伝播する前記表面波(O)の波長を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記伝播モデルは、評価パラメータとして、前記トンネル壁部(3)における前記表面波(O)の速度を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面波(O)の励起による前記地震波の発生は、パルスによる励起または周期的な正弦励起を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載の方法。
【請求項5】
前記地震波は、200Hzないし600Hzの周波数範囲で発生されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1に記載の方法。
【請求項6】
前記地震波の発生は、前記トンネル壁部(3)の複数の励起位置(5)でなされることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
前記地震波の発生は、前記トンネル(1)の前記切羽領域(4)の種々の掘進位置で、繰り返しなされることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1に記載の方法。
【請求項8】
前記センサ装置(20)は、前記トンネル内に分配された多数のセンサ(21)を有し、これらのセンサは、前記切羽領域(4)から前記センサ装置(20)へ伝播する前記表面波(O)を受信するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1に記載の方法。
【請求項9】
前記地震波の発生は、前記切羽領域(4)から2m以上の間隔で、なされることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1に記載の方法。
【請求項10】
前記地震波の受信は、前記切羽領域(4)から5m以上の間隔で、なされることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1に記載の方法。
【請求項11】
前記センサ装置(20)により、前記切羽領域(4)から前記センサ装置(20)へ伝播する前記表面波(O)の振動成分が、種々の空間方向で検出されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1に記載の方法。
【請求項12】
前記センサ装置(20)からの信号の評価は、地質構造(6)の出現の検出および/またはこの地質構造(6)の空間的な分布の再構成を含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1に記載の方法。
【請求項13】
トンネル(1)の掘進領域(2)に地震波を発生させるための励起装置(10)と、
前記掘進領域(2)において反射された地震波を受信するためのセンサ装置(20)と、
このセンサ装置(20)の地震信号を評価するための評価装置(30)とを具備し、この評価装置(30)は、前記励起装置(10)から前記掘進領域(2)を経て前記センサ装置(20)への前記地震波の伝播を記述する所定の伝播モデルを含む、前記トンネル(1)の建設の際に事前探査する装置において、
前記地震波の伝播モデルは、トンネル壁部(3)における表面波(O)の特性に基づいており、これらの表面波は、前記地震波の発生の際に前記励起装置(10)から前記トンネルの切羽領域(4)へ伝播しおよび/または前記地震波の受信の際には前記切羽領域(4)から前記センサ装置(20)へ伝播することを特徴とする事前探査装置。
【請求項14】
前記励起装置(10)は、前記切羽領域(4)から、2m以下の間隔で設けられていることを特徴とする請求項13に記載の事前探査装置。
【請求項15】
前記励起装置(10)は、前記トンネル内に分布された複数の励起源を有することを特徴とする請求項13または14に記載の事前探査装置。
【請求項16】
前記励起装置(10)は、パルス源または振動源を有することを特徴とする請求項13ないし15のいずれか1に記載の事前探査装置。
【請求項17】
前記励起装置(10)は、トンネルボーリングマシンに設けられていることを特徴とする請求項13ないし16のいずれか1に記載の事前探査装置。
【請求項18】
前記励起装置(10)は、200Hzないし600Hzの周波数範囲で前記地震波を励起するように設けられることを特徴とする請求項13ないし17のいずれか1に記載の事前探査装置。
【請求項19】
前記センサ装置(20)は、前記切羽領域(4)から5m以上の間隔で設けられていることを特徴とする請求項13ないし18のいずれか1に記載の事前探査装置。
【請求項20】
前記センサ装置(20)は、前記トンネル内に分布されておりかつ前記表面波を受信するための複数のセンサ(21)を有することを特徴とする請求項13ないし19のいずれか1に記載の事前探査装置。
【請求項21】
前記評価装置(30)は、前記前記掘進領域(2)において地質構造(6)の空間的な分布を検出および/または再構成するように設けられることを特徴とする請求項13ないし20のいずれか1に記載の事前探査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−231729(P2007−231729A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50187(P2007−50187)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(500427660)ゲオフォルシュンクスツェントルム・ポツダム・シュティフトゥング・デス・エッフェントリヒェン・レヒツ (1)
【氏名又は名称原語表記】GeoForschungsZentrum Potsdam Stiftung des Oeffentlichen Rechts
【Fターム(参考)】