説明

トンネル掘削工法

【課題】スパイラルトンネルを効果的に応用して鉄道トンネルの駅部や道路トンネルの分岐・合流部及び両トンネルの待機部等を少ない工期と工費で構築することができるトンネル掘削工法を提供する。
【解決手段】親トンネル掘削機により本トンネル10を掘削する第1の工程と、前記本トンネルの発進部11から子トンネル掘削機12を本トンネル外に発進させる準備をする第2の工程と、前記発進部から子トンネル掘削機を発進させ、本トンネルを囲繞するように螺旋状に掘進してスパイラルトンネル13を掘削する第3の工程と、前記子トンネル掘削機が本トンネルの到達部から本トンネル内に到達する第4の工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本トンネル掘削後に当該本トンネルを囲繞するように螺旋状にスパイラルトンネルを掘削するトンネル掘削工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道トンネルの駅部や道路トンネルの分岐・合流部及び両トンネルの待機部等を構築する際には、既設トンネルの断面を拡幅させる必要がある。この拡幅工法として、立坑の構築や地上からの補助工法を必要とせずにトンネル断面を変化させるトンネル掘削工法が、従来、種々提案されている。
【0003】
そして、近年では、特許文献1等で、地中空洞の構築方法として、スパイラルトンネルを掘削する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1によれば、地中に空洞を構築する→この地中空洞の外周に、地中空洞を取囲む状態で、らせん状のトンネルを構築する→このスパイラルトンネルの一箇所から、スパイラルトンネルの他の個所に向けて連結孔を構築する→この連結孔から地中に向けて補強材または止水材を敷設する→この補強材または止水材の敷設後に、空洞を構築するあるいはスパイラルトンネルの構築と平行して行うことで、スパイラルトンネルの間隔が広い場合にも、充分で確実な補強あるいは止水を行うことができる、とある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−106299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1には、従来公知の各種のトンネル掘削機を用いた水平スパイラルによる地中空洞が記載されているが、これを応用して重力方向に逆らう上下スパイラルの地中空洞(シールドトンネル)を構築する場合は、従来公知の各種のトンネル掘削機の使用方法を変更する、例えば泥水式シールド掘削機における送泥管と排泥管を交互に使用する等の必要があるが、上下スパイラルに適したトンネル掘削機の開発も要求される。そこで、本出願人は後述する発明を実施するための最良の形態において、上下スパイラルに適したトンネル掘削機も提案している。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑み提案されたもので、上述したスパイラルトンネルを効果的に応用して鉄道トンネルの駅部や道路トンネルの分岐・合流部及び両トンネルの待機部等を少ない工期と工費で構築することができるトンネル掘削工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる目的を達成するための本発明に係るトンネル掘削工法は、
親トンネル掘削機により本トンネルを掘削する第1の工程と、
前記本トンネルの発進部から子トンネル掘削機を本トンネル外に発進させる準備をする第2の工程と、
前記発進部から子トンネル掘削機を発進させ、本トンネルを囲繞するように螺旋状に掘進してスパイラルトンネルを掘削する第3の工程と、
前記子トンネル掘削機が本トンネルの到達部から本トンネル内に到達する第4の工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記第4の工程後、前記スパイラルトンネルを支保工として拡幅部のトンネルを掘削し、前記本トンネルを撤去・取壊しする第5の工程を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記第5の工程後、前記拡幅部のトンネル内を連結工を介して立坑と連結し駅部等の構築を完了する第6の工程を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、前記第5の工程に先立って、スパイラルトンネルから注入又は凍結工法により止水する第7の工程を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、前記子トンネル掘削機は、並列的に複数台設けられ各々で掘削領域の全域を掘削することを特徴とする。
【0013】
また、前記子トンネル掘削機は、単列で複数台設けられ各々が掘削領域を分担して掘削することを特徴とする。
【0014】
また、前記スパイラルトンネルのピッチは、土質に応じて変化されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るトンネル掘削工法によれば、子トンネル掘削機によるスパイラルトンネルは直進トンネルの場合のような幾度もある発進・到達の段取りが不要であると共に、本トンネルからの発進・到達であるため大規模な立坑の構築や地上設備の設置等を必要とせず、工期及び工費の短縮化が図れる。また、子トンネル掘削機の掘進半径を変えることで、必要なトンネル断面の確保が自由にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るトンネル掘削工法を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1を示すトンネル掘削工法の概念図、図2は子トンネル掘削機の発進部の説明図、図3は子トンネル掘削機の発進から到達までの軌跡を示す説明図、図4はスパイラルトンネルのピッチ(間隔)を示す説明図、図5はトンネル掘削工法の工程図、図6はトンネル掘削工法の工程図、図13は子トンネル掘削機の断面図、図14は図13のB−B線断面図、図15は図13のC−C線断面図、図16は後続台車の平面図、図17は後続台車の側面図、図18は後続台車のカーブ移動時の要部側面図、図19は図17のD−D線断面図、図20は図17のE−E線断面図、図21は別の子トンネル掘削機の断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、図示しない親トンネル掘削機により例えば鉄道トンネルの本トンネル10が掘削された後、この本トンネル10の発進部11において予め発進準備されていた後述する子トンネル掘削機12が本トンネル10外に発進され、本トンネル10を囲繞するように螺旋状に本トンネル10の長さ方向に掘進してスパイラルトンネル13が掘削される。このスパイラルトンネル13の掘削後、子トンネル掘削機12は本トンネル10の到達部にて本トンネル10内に到達される。
【0019】
前記本トンネル10の発進部11においては、複数個(図示例では隣り合う2個)の既設セグメントS1に亙って予めボルト止めされていた複数分割(図示例では2分割)の発進用セグメントS2を取り外すことで子トンネル掘削機12が発進される。即ち、発進用セグメントS2と子トンネル掘削機12のカッタヘッドとは略同じ大きさに形成されるのである。
【0020】
図1では、子トンネル掘削機12が並列的に2台設けられ、各々で後述する駅部に相当する掘削領域の全域を掘削するようになっているが、図3及び図4に示すように、1台でも良い。図3において、子トンネル掘削機12は12−1→12−2→12−3→12−4→12−5→12−6の順で掘進してスパイラルトンネル13を掘削し、駅部における必要な断面を確保しうるようになっている。また、図4に示すように、スパイラルトンネル13の間隔Cは、子トンネル掘削機12の直径Hが例えばH=2000mmの場合はC=1000mmが好適であるが、これは土質に応じて変更される。
【0021】
次に、図5及び図6を用いて、本トンネルの掘削から駅部の構築までのステップを詳述すると、先ず、第1ステップで例えば泥水式シールド掘削機からなる親トンネル掘削機により鉄道トンネルの本トンネル10が掘削される(第1の工程)。図中15a,15bは上,下2線の鉄道車両を示す。
【0022】
次に、第2ステップで本トンネル10内であらかじめ発進準備された例えば泥水式シールド掘削機からなる子トンネル掘削機12が本トンネル10外に発進されて本トンネル10を囲繞するようにして螺旋状にスパイラルトンネル13が掘削される(第2の工程,第3の工程)。
【0023】
次に、第3ステップで子トンネル掘削機12が本トンネル10内へ到達されてスパイラルトンネル13の掘削が完了する(第4の工程)。この後、帯水層の場合は、スパイラルトンネル13から注入又は凍結工法により止水される(第7の工程)。
【0024】
次に、第4ステップで、本トンネル10内からスパイラルトンネル13内へと土砂搬出管16が設置される等の切り拡げ(拡幅部の)トンネルの掘削準備がなされた後、前記スパイラルトンネル13を支保工(骨組み)として逆巻き工法(図中Lの掘削レベル参照)で切り拡げトンネルの一次掘削が行われる(第5の工程)。
【0025】
次に、第5ステップから第7ステップで切り拡げトンネルの二次掘削から四次掘削が行われ、本トンネル10が撤去・取り壊しされる(第5の工程)。即ち、第5ステップでは切り拡げトンネル内に上,下2線の鉄道車両15c,15dが増加されるべく駅中間杭(深礎)や柱等の鉄骨構造17が構築され、第6ステップでは側壁18が構築されると共に本トンネル10の撤去・取り壊しが開始され、第7ステップでは底盤19が構築されると共に本トンネル10が完全に撤去・取り壊しされるのである。
【0026】
次に、第8ステップで底床版20とホーム21が構築された後、第9ステップで切り拡げトンネル内が連結工22を介して立坑23と連結される。そして、第10ステップで軌道階と安全区画と避難設備を備えた駅部の構築が完了する(第6の工程)。
【0027】
本実施例で説明する子トンネル掘削機12は、図13乃至図15に示すように、切羽及びチャンバ内に泥水を供給し、泥水圧で土圧及び水圧に対向しながら掘削土砂を泥水と共に排泥することで、切羽の安定化を図りながらトンネルを構築する泥水式シールド掘削機である。
【0028】
即ち、掘削機本体30は前胴30aと後胴30bとに分割形成される。そして、前胴30aの後部と後胴30bの前部とは図示しない複数本の中折れジャッキにて結合され、首振りしたい軸に近い中折れジャッキを油圧でロックしてそれ以外の両者間に架設された図示しない中折れジャッキの伸縮により、前胴30aが3次元方向に首振り(中折れ)可能になっている。尚、図13中31は後胴30bの前面部に付設した球面継手で、この球面継手31に前胴30aの後部が嵌合している。また、図13及び図14中32は前胴30aと後胴30bとの間に架設されて前胴30aの抜け出しを防止する4本の連結ジャッキであるが、これは特に設けなくても良い。
【0029】
前胴30aの前部には隔壁33が設けられ、この隔壁33の中心部に回転可能に支持されて前胴30aの前方に設けられたカッタヘッド34との間でチャンバ室35を画成している。このチャンバ室35には送泥管36と排泥管37が連通接続され、チャンバ室35内に送泥管36より泥水が供給される一方、チャンバ室35内の掘削土砂は泥水と共に排泥管37より排出されるようになっている。図13中38は送泥管36と排泥管37のバイパス管である。
【0030】
カッタヘッド34の前面には多数のカッタビット39が取り付けられると共に、側面からは余掘り用のコピーカッタ40が必要に応じて突出可能になっている。カッタヘッド34の後面には、カッタヘッド34の回転によりチャンバ室35内の掘削土砂を泥水とともに攪拌するアジテータ41が取り付けられている。また、カッタヘッド34は、隔壁33に支持された図中上下二つの駆動モータ42によりギア機構43を介して回転駆動されるようになっている。
【0031】
後胴30bの前部にはフランジ板(補強版)44が設けられ、このフランジ板44には周方向に所定間隔離間して8本のシールドジャッキ45が取り付けられている。また、フランジ板44には駆動モータ46が取り付けられ、この駆動モータ46にギア機構47を介して回転駆動される旋回リング48が後胴30bの前部において円周方向に等配された4つのローラ49により回転可能に支持されている。前記旋回リング48にはセグメントSを組み立てるエレクタ装置50が取り付けられる。
【0032】
従って、カッタヘッド34の回転駆動下でシールドジャッキ45が既設のセグメントSに反力をとって伸長することで、掘削機本体30(厳密には前胴30a)が掘進される一方、その後シールドジャッキ45を収縮してできたスペースに新しいセグメントSが組み立てられることで、スパイラルトンネル13が掘削されることになる。
【0033】
この際、子トンネル掘削機12は螺旋状にスパイラルトンネル13を掘削するので、姿勢において上下(天地)方向が逆になることがあるが、本実施例ではアジテータ41がカッタヘッド34に設けられているので、送泥管36と排泥管37の上下(天地)方向の位置が逆になっても掘削土砂を泥水と共に良好に攪拌して排出することができる。
【0034】
また、子トンネル掘削機12としては、図21に示すように、隔壁33にアジテータ41を排泥管37の開口部に近接させて支持させた場合に、掘削機本体30の前胴30aに対し隔壁33を支持ブラケット52及びベアリング53を介して駆動モータ55により回転可能でかつ所定の回転位置で固定可能に支持させて、排泥管37の開口部及びアジテータ41を常に上下(天地)方向の下方位置に位置させるようにしてもよい。尚、図中54はシール部材である。
【0035】
そして、前記子トンネル掘削機12の油圧機器に油圧を供給する油圧ユニットや電気機器に電気を供給する電気ユニット等は、図16乃至図20に示す複数台(図示例では5台)の後続台車51a〜51eにそれぞれ搭載される。
【0036】
5台の後続台車51a〜51eは、それぞれ上下一対の牽引ジャッキ52a,52bで連結されると共に、六角筒状に形成された本体部53の前,後両部に位置して上下に2個宛設けた車輪54がスパイラルトンネル13の内面に敷設したレール55上を転動するようになっている。尚、図19中56は台車組付時に、車輪54をレール55上に押し付けるための着脱可能な押付ジャッキである。
【0037】
そして、5台の後続台車51a〜51eは、一台目と五台目の後続台車51a,51eの後面に取り付けた反力用クランプ57と推進用ジャッキ58との協働で所謂尺取り虫のように前進可能になっている。また、六角筒状に形成された本体部53内をセグメントSが通過可能にもなっている。
【0038】
このようにして本実施例では、子トンネル掘削機12によりスパイラルトンネル13を掘削し、このスパイラルトンネル13を支保工として鉄道トンネルの駅部等の拡幅部のトンネルを掘削するようにしたので、子トンネル掘削機により複数本の直進トンネルを掘削し、この複数本の直進トンネルを支保工として鉄道トンネルの駅部等の拡幅部のトンネルを掘削する場合に比べて、子トンネル掘削機の幾度もある発進・到達の段取りが不要であると共に、本トンネル10からの発進・到達であるため大規模な立坑の構築や地上設備の設置等を必要とせず、工期及び工費の短縮化が図れる。
【0039】
また、子トンネル掘削機12の掘進半径を変えることで、必要なトンネル断面の確保が自由にできる。また、子トンネル掘削機12の直径Hが例えばH=2000mmと大きいため、スパイラルトンネル13から注入又は凍結工法により止水する場合は、スパイラルトンネル13内に作業者が入って行えるため、地盤改良及び連結掘削等の空間構築作業等がより確実でかつ容易に行えると共に、より一層のコストダウンが図れる。
【実施例2】
【0040】
図7は本発明の実施例2を示すトンネル掘削工法の概念図、図8は子トンネル掘削機による掘削方法の説明図、図9は図8のA部詳細図、図10は子トンネル掘削機による別の掘削方法の説明図である。
【0041】
これは、道路トンネルの分岐・合流部等の拡幅部のトンネルを掘削する場合に本発明を適用した例であり、図7に示すように、本線トンネル60と分岐トンネル61の内の分岐トンネル61を本トンネル10として子トンネル掘削機12を発進・到達させてスパイラルトンネル13を構築するようにした例である。図7(a)は掘削開始時、図7(b)は掘削到達時、図7(c)は本線トンネル60と分岐トンネル61を撤去・取壊した状態の拡幅部のトンネルをそれぞれ示す。勿論、この場合、本線トンネル60と分岐トンネル61の内の本線トンネル60を本トンネル10として子トンネル掘削機12を発進・到達させてスパイラルトンネル13を構築するようにしても良い。
【0042】
また、子トンネル掘削機12によりスパイラルトンネル13を構築する際は、図8に示すように、子トンネル掘削機12を並列的に複数台(図示例では6台)設け、掘削領域の全域を掘削する方法がある。また、この際、図9に示すように、スパイラルトンネル13の間隔(ピッチ)を相互に隣接する各々の裏込め部62がラップするように設定すれば良い。
【0043】
この際用いられる子トンネル掘削機12は、図22乃至図24に示すように、切羽及びチャンバ内に泥水を供給し、泥水圧で土圧及び水圧に対向しながら掘削土砂を泥水と共に排泥することで、切羽の安定化を図りながらトンネルを構築する泥水式シールド掘削機である。
【0044】
即ち、掘削機本体70は前胴70aと後胴70bとに分割形成される。そして、前胴70aの後部と後胴70bの前部とは複数本(図示例では12本)の中折れジャッキ71にて結合され、首振りしたい軸に近い中折れジャッキ71を油圧でロックしてそれ以外の両者間に架設された中折れジャッキ71の伸縮により、前胴70aが3次元方向に首振り(中折れ)可能になっている。図示例では、後胴70bの前部に球面継手80が付設され、この球面継手80に前胴70aの後部が嵌合している。
【0045】
前胴70aの前部には隔壁72が設けられ、この隔壁72の中心部に回転可能に支持されて前胴70aの前方に設けられたカッタヘッド73との間でチャンバ室74を画成している。このチャンバ室74には送泥管75と排泥管76が連通接続され、チャンバ室74内に送泥管75より泥水が供給される一方、チャンバ室74内の掘削土砂は泥水と共に排泥管76より排出されるようになっている。尚、図24中76aは排泥予備管である。
【0046】
カッタヘッド73の前面にはカッタビットを含む各種ビット77a〜77dが取り付けられると共に、側面からは余掘り用のコピーカッタ78が必要に応じて突出可能になっている。また、カッタヘッド74は、隔壁72に支持された複数の油圧駆動モータ78によりギア機構79を介して回転(旋回)駆動されるようになっている。
【0047】
後胴70bの前部(厳密には球面継手80)にはフランジ板(補強版)81が設けられ、このフランジ板81には周方向に所定間隔離間して8本の主シールドジャッキ82が取り付けられている。また、主シールドジャッキ82の外側に位置したフランジ板81とこのフランジ板81の後方に位置して後胴80bに付設したドーナツ状の妻枠83との間には周方向に所定間隔離間して12本の副シールドジャッキ84が架設される。
【0048】
また、フランジ板81には図示しない油圧駆動モータが取り付けられ、この油圧駆動モータにギア機構85を介して回転駆動される旋回リング86が後胴80bの前部において円周方向に等配された4つのローラ87により回転可能に支持されている。前記旋回リング86には前記妻枠83の内周に沿ってセグメントSを組み立てるエレクタ装置88が取り付けられる。
【0049】
従って、カッタヘッド83の回転駆動下で主シールドジャッキ82が既設のセグメントSに、また副シールドジャッキ84が妻枠83にそれぞれ反力をとって伸長することで、掘削機本体80(厳密には前胴80a)が掘進される一方、その後主シールドジャッキ82及び副シールドジャッキ84を収縮してできたスペースに新しいセグメントSが組み立てられると共に妻枠83後方に裏込め剤が注入されることで、スパイラルトンネル13が掘削されることになる。
【0050】
この際、スパイラルトンネル13の間隔(ピッチ)が相互に隣接する各々の裏込め部62がラップするように設定されているので、子トンネル掘削機12はカッタヘッド73の外周部で既設のスパイラルトンネル13の裏込め部62の外周部を削り取ることになる(図9参照)。
【0051】
また、他の掘削方法として、図10に示すように、子トンネル掘削機12を単列で複数台(図示例では6台)設け、各々が掘削領域を分担して掘削する方法もある。
【実施例3】
【0052】
図11は本発明の実施例3を示すトンネル掘削工法の概念図である。
【0053】
これは、道路トンネルの分岐・合流部等の拡幅部のトンネル63を本トンネル10から発進する複数台(図示例では4台)の子トンネル掘削機12によるスパイラルトンネルで構築し、これに続く二つの分岐トンネル64a,64Bも、拡幅部のトンネル63に用いた子トンネル掘削機12を二手に分けるなどして、複数台(図示例では2台宛)の子トンネル掘削機12によるスパイラルトンネルで構築するようにした例である。
【実施例4】
【0054】
図12は本発明の実施例4を示すトンネル掘削工法の概念図である。
【0055】
これは、鉄道トンネルの駅部等の拡幅部のトンネルを構築する際に、本トンネル10から発進して本トンネル10に到達する図示しない子トンネル掘削機(図1の子トンネル掘削機12参照)によるスパイラルトンネルで第1番目のトンネル65を構築した後、同じく子トンネル掘削機によるスパイラルトンネルで第2番目のトンネル66を構築し、最後に同じく子トンネル掘削機によるスパイラルトンネルで第3番目のトンネル67を構築するようにした例である。この際、第2番目のトンネル66と第3番目のトンネル67の切り拡げの土砂は本トンネル10に備えた図示しない土砂搬出管(図5の土砂搬出管16参照)を介して搬出される。
【0056】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることはいうまでもない。また、本発明は、トンネルの通常断面は円形に限らないと共に縮幅等変更する新断面もD型に限らずその他の形状のものにも適用できる。さらに、本発明は、泥水式シールド掘削機を用いる例を示したが、土圧式シールド掘削機を用いて良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1を示すトンネル掘削工法の概念図である。
【図2】子トンネル掘削機の発進部の説明図である。
【図3】子トンネル掘削機の発進から到達までの軌跡を示す説明図である。
【図4】スパイラルトンネルのピッチ(間隔)を示す説明図である。
【図5】トンネル掘削工法の工程図である。
【図6】トンネル掘削工法の工程図である。
【図7】本発明の実施例2を示すトンネル掘削工法の概念図である。
【図8】子トンネル掘削機による掘削方法の説明図である。
【図9】図8のA部詳細図である。
【図10】子トンネル掘削機による別の掘削方法の説明図である。
【図11】本発明の実施例3を示すトンネル掘削工法の概念図である。
【図12】本発明の実施例4を示すトンネル掘削工法の概念図である。
【図13】子トンネル掘削機の断面図である。
【図14】図13のB−B線断面図である。
【図15】図3のC−C線断面図である。
【図16】後続台車の平面図である。
【図17】後続台車の側面図である。
【図18】後続台車のカーブ移動時の要部側面図である。
【図19】図17のD−D線断面図である。
【図20】図17のE−E線断面図である。
【図21】別の子トンネル掘削機の断面図である。
【図22】さらに別の子トンネル掘削機の断面図である。
【図23】カッタヘッドの正面図である。
【図24】図22のG−G線及びF−F線断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 本トンネル
11 発進部
12 子トンネル掘削機
13 スパイラルトンネル
15a〜15d 鉄道車両
16 土砂搬出管
17 鉄骨構造
18 側壁
19 底盤
20 底床版
21 ホーム
22 連結工
23 立坑
60 本線トンネル
61 分岐トンネル
62 裏込め部
63 拡幅部のトンネル
64a,64b 分岐トンネル
65 第1番目のトンネル
66 第2番目のトンネル
67 第3番目のトンネル
S1 既設セグメント
S2 発進用セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親トンネル掘削機により本トンネルを掘削する第1の工程と、
前記本トンネルの発進部から子トンネル掘削機を本トンネル外に発進させる準備をする第2の工程と、
前記発進部から子トンネル掘削機を発進させ、本トンネルを囲繞するように螺旋状に掘進してスパイラルトンネルを掘削する第3の工程と、
前記子トンネル掘削機が本トンネルの到達部から本トンネル内に到達する第4の工程と、
を備えたことを特徴とするトンネル掘削工法。
【請求項2】
前記第4の工程後、前記スパイラルトンネルを支保工として拡幅部のトンネルを掘削し、前記本トンネルを撤去・取壊しする第5の工程を備えたことを特徴とする請求項1記載のトンネル掘削工法。
【請求項3】
前記第5の工程後、前記拡幅部のトンネル内を連結工を介して立坑と連結し駅部等の構築を完了する第6の工程を備えたことを特徴とする請求項2記載のトンネル掘削工法。
【請求項4】
前記第5の工程に先立って、スパイラルトンネルから注入又は凍結工法により止水する第7の工程を備えたことを特徴とする請求項2記載のトンネル掘削工法。
【請求項5】
前記子トンネル掘削機は、並列的に複数台設けられ各々で掘削領域の全域を掘削することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のトンネル掘削工法。
【請求項6】
前記子トンネル掘削機は、単列で複数台設けられ各々が掘削領域を分担して掘削することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のトンネル掘削工法。
【請求項7】
前記スパイラルトンネルのピッチは、土質に応じて変化されることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載のトンネル掘削工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−264047(P2009−264047A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117044(P2008−117044)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(507137634)三菱重工地中建機株式会社 (25)
【出願人】(303059071)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (64)
【出願人】(508130454)株式会社 レールウェイエンジニアリング (1)
【出願人】(000228811)日本シビックコンサルタント株式会社 (8)
【Fターム(参考)】