説明

トンネル掘削機の回収用ガイド装置

【課題】管路を形成しながら所定長のトンネルの掘削後、掘削機本体の外径と管路の内径との間に段差が生じていても、掘削機本体を安定した状態で容易に管路内を通じて回収することができるトンネル掘削機の回収用ガイド装置を提供する。
【解決手段】管路の前端に接続した外殻体1の前胴内に管路の内径よりも小径の掘削機本体Aの内殻体2を引き出し可能に支持させた状態で掘削機本体Aを掘進させ、所定長の管路を形成後、外殻体1の後胴下周部上に、管路の内周面に達する高さを有する基台25とこの基台25の中央部上に掘削機本体Aの内殻体2の下周面に達する高さのスペーサ部材5を配設し、カッタヘッド4を縮径させたのち掘削機本体Aを牽引して、その内殻体2を上記スペーサ部材5上で摺動させながら、掘削機本体Aに装着した前後ガイドローラ6a、6bを基台25から管路上を転動させて回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中にトンネルを掘削しながら管路を形成したのち、該管路内を通じて撤去、回収し、再使用を可能にしたトンネル掘削機において、このトンネル掘削機の回収用ガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に管路を形成するための推進工法やシールド工法によるトンネル築造工事においては、発進立坑側からトンネル掘削機を到達立坑に向かって掘進させ、一定長のトンネルを掘削する毎に該トンネル掘削機に後続させて一定長の埋設管を順次、継ぎ足すことにより管路を形成しており、到達立坑に達したトンネル掘削機は、通常、該到達立坑内から地上に回収しているが、到達側に既存の人孔が設けられている等の事情によって到達立坑が設けられていない場合や、或いは、到達立坑を通じて回収することができない場合には、掘削終了後にトンネル掘削機を解体してトンネル内を通じて発進立坑側に撤去、回収しなければならず、その撤去、回収作業に著しい手間と労力を要するといった問題点がある。
【0003】
このため、特許文献1に記載されているように、地中にトンネルを掘削しながら該トンネル内に管路を形成していくトンネル掘削機において、上記管路の外径と略同一外径を有する円筒形状の外殻体と、この外殻体内に引き出し可能に配設された掘削機本体とからなり、この掘削機本体は上記外殻体内面に着脱自在に係止される円筒形状の内殻体と、この内殻体の前部に一体に設けている隔壁に回転自在に支持され、且つ、外径が縮小可能なカッタヘッドと、このカッタヘッドの駆動手段と、カッタヘッドによって掘削された掘削土砂の排出手段とを備えたシールド掘削機が開発された。
【0004】
そして、このシールド掘削機によって所定長さまでトンネルを掘削すると、上記掘削土砂排出手段を管路内を通じて回収、撤去すると共に該カッタヘッドを上記内殻体の径以下にまで縮小させ、且つ外殻体に対する内殻体の係止を解いたのち、外殻体を掘削壁面に埋め殺し状態で残置させる一方、掘削機本体を管路内を通じて回収、撤去し、再び使用可能にしている。
【特許文献1】特開2001−317285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記シールド掘削機は、外殻体の内周面に周方向に所定間隔毎に複数条の直状溝部を設ける一方、この直状溝部に掘削機本体の内殻体の外周面に突設した複数条の突条部をそれぞれ挿入、係止させて外殻体に掘削機本体を引き出し可能に連結しているため、この掘削機本体を回収したのち再び使用する場合には、掘削機本体の内殻体を上記外殻体と同一径を有する新たな外殻体内に挿入、係止させるようにしなければならず、従って、外殻体の形状や径が制限を受けることになる。さらに、外殻体の内径と管路の内径との差が大きくて外殻体に支持されている内殻体の後端下周部と管路の前端下周部間に段差が形成される場合には、外殻体内から掘削機本体の内殻体を引き出して回収する際に、管路上に同心的に移動させて掘削機本体を安定的に支持させながら回収する作業が困難となる。
【0006】
このような問題点は掘削機本体の長さや径を短くすればする程大きくなり、そのため、掘削機本体の軽量化や搬送等の取扱の容易性等を図ることができず、また、築造すべきトンネル径に応じた外殻体の径の適用範囲を拡げることも困難である。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、外殻体内に挿入、支持されている掘削機本体の内殻体の外径を小径に形成した場合に生じる内殻体の後端下周部と管路の前端下周部間の段差にもかかわらず、掘削機本体を外殻体側から管路側に円滑に移動させることができて回収作業が能率よく行えるようにしたトンネル掘削機の回収用ガイド装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のトンネル掘削機の回収用ガイド装置は、請求項1に記載したように、トンネル掘削機によって地中にトンネルを掘削しながら該トンネル内に所定長の管路を形成したのち、この管路内を通じて上記トンネル掘削機における掘削機本体を回収する際のガイド装置であって、上記トンネル掘削機は管路の前方側に配設された外殻体と、内殻体内に一体に設けた隔壁に外殻体の前方地盤を掘削する外径が縮径可能なカッタヘッドを回転自在に支持させ且つこのカッタヘッドの駆動手段と土砂排出手段を備えている掘削機本体とからなり、上記外殻体の前胴の内径を管路の内径よりも小径に形成してこの前胴内周面に上記掘削機本体の内殻体を後方に向かって引き出し可能に連結、支持させていると共に、外殻体の後胴の下周部内周面上に上端面が前胴の内周面の高さに達するスペーサ部材を設置してこのスペーサ部材上を掘削機本体の内殻体の外周面下周部を管路側に向かって摺動可能とし、さらに、掘削機本体に上記スペーサ部材の両側方を通過可能な間隔を存してガイドローラを装着し、このガイドローラを上記管路の内底面上を転動させながら掘削機本体を回収するように構成している。
【0009】
このように構成したトンネル掘削機の回収用ガイド装置において、請求項2に係る発明は、スペーサ部材を、外殻体の後胴の下周部内周面上に設置されてその両側部上面をガイドローラの転動ガイド面に形成している基台の幅方向の中央部上に配設していることを特徴とし、請求項3に係る発明は、上記スペーサ部材の上端支持面をジャッキによって昇降自在に構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、管路の前端に接続している外殻体の前胴の内径を管路の内径よりも小径に形成してこの前胴内周面に掘削機本体の内殻体を後方に向かって引き出し可能に連結、支持させていると共に、外殻体の後胴の下周部内周面上に上端面が前胴の内周面の高さに達するスペーサ部材を設置してこのスペーサ部材上を掘削機本体の内殻体の外周面下周部を管路側に向かって摺動可能に構成しているので、内殻体の後端下周部と管路の前端下周部との間に管路側に向かって低くなった段差が形成されているにもかかわらず、掘削機本体を回収する際に、該掘削機本体を下方に偏位させることなく、その内殻体の外周面下周部を外殻体の後胴の下周部内周面上に設置したスペーサ部材上に受止させて該スペーサ部材を摺動させながら円滑且つ正確に管路側に回収することができる。
【0011】
さらに、掘削機本体に上記スペーサ部材の両側方を通過可能な間隔を存してガイドローラを装着し、このガイドローラを上記管路の内底面上を転動させながら掘削機本体を回収するように構成しているので、掘削機本体に装着したガイドローラをスペーサ部材に邪魔されることなくこのスペーサ部材の両側方に沿って管路側に移動させることができると共に、管路の前端からこの管路の下周部上に連続的に移載させてこれらのガイドローラにより掘削機本体を安定した状態で支持させながら管路の内周面を損傷させることなく、能率よく掘削機本体を回収、撤去することができる。
【0012】
このように、内殻体の後端下周部と管路の前端下周部との間に管路側に向かって低くなった段差が生じていても、掘削機本体を容易に回収することができるので、掘削機本体の内殻体の径や長さを短くすることができ、従って、掘削機本体の軽量化を図ることができて搬送等の取扱性が容易となると共に、内殻体の外径に対する外殻体の内外径の寸法を広く設定することができて小径のトンネルから大径のトンネルまで比較的、広範囲に亘って築造することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、スペーサ部材を、外殻体の後胴の内周面下周部上に設置されてその両側部上面をガイドローラの転動ガイド面に形成している基台の幅方向の中央部上に配設しているので、掘削機本体の内殻体の下周部外周面をスペーサ部材上を摺動させながら管路側に向かって後退させる際に、ガイドローラを基台の両側部上で転動させて掘削機本体を支持させながら管路上に連続的に移動させて掘削機本体を円滑に回収することができる。
【0014】
さらに、請求項3に記載したように、上記スペーサ部材をジャッキによって昇降自在に構成しておくことによって、掘削機本体を回収する際に外殻体内からこのスペーサ部材上に引き出した該外殻体を簡単に持ち上げることができ、従って、掘削機本体に対するガイドローラの装着作業が容易に行うことができると共に、ガイドローラの装着後、降下させることによって基台上にガイドローラを介して掘削機本体を支持させ、上述したように円滑に回収可能な状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は推進工法によってトンネルTを掘削しながらそのトンネルT内に管体pを推進、埋設することにより管路Pを形成していくトンネル掘削機の簡略縦断側面図であって、外径が全長に亘って形成すべき管路Pの外径に略等しく、且つ内径が管路Pの内径よりも小径に形成されている前胴1aを有する一定長さの外殻体1と、この外殻体1の前胴1a内に配設された掘削機本体Aと、掘削機本体Aによって掘削された土砂を排出する排出手段Bとを備えている。
【0016】
上記掘削機本体Aは、上記管路Pの内径よりも小径に形成されていると共にその外周面を外殻体1の上記前胴1aの内周面に摺接させて後方へ引き出し可能に内嵌、支持されている短尺筒形状の内殻体2と、この内殻体2の長さ方向の中央部内周面に外周面を固着させている隔離3と、この隔壁3の中央部に回転軸24を回転自在に支持させているカッタヘッド4とを備えてなり、このカッタヘッド4はトンネル掘削時にはその外径を外殻体1の外径に略等しくし、掘削機本体Aの回収時にはその外径を管路Pの内径よりも小径に縮小可能に形成されていると共にその縮径したカッタヘッドの外周部に周方向に所定間隔を存して左右一対の前部ガイドローラ6a、6a(図5、図6に示す)を装着可能に構成している。
【0017】
詳しくは、このカッタヘッド4は図1、図2に示すように、その回転軸24の前端を内殻体2の前端から前方に突出させていると共にこの回転軸24の前端から該回転軸24に対して直交する方向(外径方向)に向かって、長さが内殻体2の半径よりも短い複数本(図においては4本)のスポーク体4a1 を放射状に突設し、これらのスポーク体4a1 の前面両側部と中央部とに長さ方向に所定間隔毎に前方に向かって複数本のカッタビット4a2 を突設することによって掘削径が内殻体2の内径よりも小径のカッタヘッド部4aを形成してあり、この小径カッタヘッド4aの全てのスポーク体4a1 の外端面を円形リング体4cの内周面四方部分に一体に固着してこの円形リング体4cによって隣接するスポーク体4a1 、4a1 の外端面間を一体に連結させている。そして、掘削機本体Aの回収時に、この円形リング体4cのに上記前部ガイドローラ6a、6aを装着するように構成している。
【0018】
さらに、上記各スポーク体4a1 の外端面に、前面両側部と中央部とに複数本のカッタビット4b2 を突設している短尺の外周側スポーク体4b1 を継ぎ足すことによって、掘削径が上記外殻体1の外径に達する大径カッタヘッド部4bを形成している。これらのスポーク体4b1 はその内端面を上記円形リング体4cの外周面にボルト・ナットにより着脱自在に固着するように構成している。
【0019】
なお、このカッタヘッド4においては、小径カッタヘッド4aを構成しているスポーク体4a1 に外周側スポーク体4b1 を継ぎ足すことによって外殻体1の前方地盤を全面的に掘削することができる大径のカッタヘッドとし、外周側スポーク体4b1 を取り外すことによって掘削機本体Aと一体に管路P内を通じて発進立坑側に回収可能な小径のカッタヘッド4aとなるようにしているが、上記スポーク体4a1 を中空に形成してこの中空スポーク体内に外側スポーク体を出没自在に収納し、中空スポーク内に設けているジャッキによって中空スポーク体から突出させるように構成しておいてもよい。また、このように外径が縮小可能なスポークタイプのカッタヘッドに形成することなく、面板形状のカッタ板の外周部を着脱自在な部分に形成してその部分を取付けている場合には、カッタ板を外殻体1の外径に略等しい外径とし、取り外した場合には、管路P内を通じて撤去可能な径となるように構成しておいてもよい。
【0020】
上記カッタヘッド4における小径カッタヘッド部4aを形成している各スポーク体4a1 の後面外周部に、後方に向かってアーム部材17を突設し、これらのアーム部材17の後端を円環状枠材18によって一体に連結して該円環状枠体18を上記隔壁3の前面外周部から前方に突出している円筒形状の支持フレーム19の内周面に回転自在に支持させてあり、さらに、この円環状枠体18の後端面に内歯車20を固着している一方、上記隔壁3の後面外周部に駆動モータ21を装着してこの駆動モータ21の回転軸に固着している小歯車22を上記内歯車20に噛合させ、駆動モータ21によってカッタヘッド4を回転させるように構成している。
【0021】
また、上記外殻体1は、外径が全長に亘って管路Pの外径に略等しい径に形成された一定長さの前胴1aと後胴1bとからなり、前胴1aはその内部に内径が上記管路Pの内径よりも小径の内筒部1a1 を配設してこの内筒部1a1 の前後端を円環形状の連結板1c、1dによって前胴1aの前後端部の内周面に一体に固着した二重管構造に形成されている。一方、後胴1bは前胴1aと略同一長さに形成されていると共にその前端部内周面に上記後側の連結板1dの後面に一体的に固着、又は切り離し可能に接合、連結させた環状フレーム7を固着してあり、この環状フレーム7の内周面の数カ所に周方向に一定間隔を存して断面L字状の推力伝達部材8を着脱自在に固定し、該推力伝達部材8の垂直板部8aを掘削機本体Aの内殻体2の後端部内周面に一体に固着している連結環部2aの後面に当接させてボルト・ナット等により切り離し可能に連結し、この推力伝達部材8を介して管路P側からの推進力を掘削機本体A側に伝達するように構成している。
【0022】
そして、この推力伝達部材8を取付けている上記後胴1bを二重管構造に形成することなく、環状フレーム7の後方に管路Pの内径よりも大径の該後胴1bの内周面が露出した空間部9を形成し、この空間部9に周方向に所定間隔毎に、例えば、四方に方向制御ジャッキ10が配設されている。これらの方向制御ジャッキ10の前端は、上記推力伝達部材8の基台部後面に後方に向かって突設しているブラケット11a に軸12a によって回動自在に連結している一方、後端は管路Pを形成している最前側の管体pの前端面に固着した短管13の前端に突設しているブラケット11b に軸12b によって回動自在に連結している。従って、外殻体1の後端はこれらの方向制御ジャッキ10を介して管路Pの前端に連結、支持させている。さらに、上記短管13の外周部から前方に向かって一定長さの支持環部13a を突設してこの支持環部13a 上にシール材16を介して外殻体1の上記外筒部1aの後端部内周面を屈折自在に嵌合させている。
【0023】
また、掘削機本体Aの回収時には、上記環状フレーム7と推力伝達部材8を撤去したのち、この撤去跡に形成された空間部9a(図3に示す)を利用して、推力伝達部材8を固着させていた内殻体2の後端環部2aに周方向に上記前部ガイドローラ6a、6aと同一間隔を存して左右一対の後部ガイドローラ6b、6bを装着すると共に、上記空間部9内、即ち、後胴1bの下周部内周面上に上端部が外殻体1における上記前胴1aの内筒部1a1 の内周面の高さに達するスペーサ部材5を設置して、このスペーサ部材5の上端面上で掘削機本体Aの内殻体2の外周面下周部を受止させ、このスペーサ部材5上で該内殻体2の下周部を摺動させながら管路P側に移動させると共に該スペーサ部材5の両側方を上記前後ガイドローラ6a、6bを通過させながら掘削機本体Aを回収する回収装置を構成するようにしている。
【0024】
このスペーサ部材5を後述するように直接、上記後胴1bの下周部内周面上における上記空間部9内に設置してもよいが、この実施の形態においては図3〜図6に示すように、外殻体1の後胴1bの下周部内周面上に設置された一定厚みを有する基板25の幅方向の中央部上に配設している。基板25は長さが上記空間部9の長さ、即ち、環状フレーム7の後端面と管路Pにおける先端の管体pの前端に固着している短管13間の長さに略等しく、幅はその両側部上面を前後部ガイドローラ6a、6bが転動可能な幅寸法を有する平面矩形状の枠状板からなり、その下面は後胴1bの内周面に接するように湾曲していると共に上面は管路Pの内周面と面一状に連続するように該内周面と同一湾曲度でもって凹円弧状に湾曲している。
【0025】
なお、上記スペーサ部材5は、基板25の上面、即ち、管路Pの内周面と前胴1aの内筒部1a1 の内周面(上面)との高さの差に等しい一定厚みを有する板部材から形成しておいてもよいが、掘削機本体Aの内殻体2を下周部を受止する上面がジャッキ5aによって昇降可能に構成している。
【0026】
また、上記カッタヘッド4の後面と隔壁3の前面間の空間部を、カッタヘッド4によって掘削された土砂を取り込んで一旦滞留させておく土砂室14に形成していると共に隔壁3の下部にはこの土砂室14の下端部内に臨ませている土砂取込み口15を設けてあり、この土砂取込み口15にスクリューコンベアからなる上記土砂排出手段Bの前端開口部を貫通状態に接続して、土砂室14からこの土砂排出手段Bを通じて掘削土砂を後方に排出するように構成している。さらに、上記外殻体1の前端部に掘削地盤側に開口した裏込材注入管23を配設してあり、この裏込材注入管23に掘削機本体A内から供給ホース24を通じて裏込材を供給するように構成している。
【0027】
次に、以上のように構成したトンネル掘削機によって地中に管路Pを施工するには、まず、このトンネル掘削機を発進立坑(図示せず)内に設置すると共に一定長のヒューム管等からなる管体pを方向制御ジャッキ10を介して接続する。この状態にして駆動モータ21を駆動してカッタヘッド4を回転させると共に管体Pの後端面を発進立坑内に配設している複数本の推進ジャッキよりなる推進手段によって押し進めてトンネルを掘進する。
【0028】
そして、トンネル掘削機が発進立坑から地中内に一定長推進すると、管体pの後端に次の管体pの前端を接続させ、この管体pの後端を上記推進手段によって押し進めて、先頭の管体pに該管体pに後続させながらトンネル掘削機をさらにトンネル計画線に沿って掘進させ、以下、トンネル掘削機によって一定長のトンネルが掘削される毎に発進立坑側において管体pを順次、継ぎ足しながら押し進めて管路Pを形成していく。
【0029】
推進手段による推進力は管体pから方向制御ジャッキ10を介して外殻体1に伝達され、さらに、外殻体1の内周面に固着している環状フレーム7上の推力伝達部材8を介してこの推力伝達部材8と連結している掘削機本体A側の内殻体2の連結環部2aに伝達され、掘削機本体Aはカッタヘッド4を切羽地盤に押し付けながら掘削する。カッタヘッド4によって掘削された土砂は土砂室14内に取り込み、土砂排出手段Bによって発進立坑側に排出する。なお、トンネルTの掘進中において、トンネル掘削機の方向を修正したり曲線トンネル部を掘削する場合には、方向制御ジャッキ10を作動させて先頭の管体pに対して外殻体1と一体に掘削機本体Aを所定方向に屈折させることにより行う。
【0030】
次いで、このトンネル掘削機によって所定長のトンネルを掘削して到達立坑Cに連通した管路Pを形成したのち、このトンネル掘削機の掘削機本体Aを発進立坑側に撤去、回収する方法について説明する。トンネル掘削機が到達立坑Cに達すると、まず、トンネル掘削機後方に配設された駆動ユニット台車や裏込み注入台車等の後続台車を管路Pの内底部に敷設された軌条上(図示せず)を移動させながら発進立坑側に回収する。次に、スクリューコンベアからなる土砂排出手段Bを隔壁3から取り外して管路P内を通じて発進立坑側に回収、撤去する(図3参照)。この土砂排出手段Bの回収作業は、管路Pの内底部に予め配設された上記後続台車移動用の軌条上を走行する台車上に載せて行うことができる。また、この軌条の撤去したのちに、管路Pの内底面上を走行するローラ台車上に載せて行ってもよい。そうすることにより移動空間を広くとれ、搬送性がよくなる。
【0031】
さらに、カッタヘッド4をその外径が管路Pの内径よりも小径となるように縮小させる。この際、カッタヘッド4はジャッキによってその外径を拡縮可能に形成している場合には、ジャッキにより縮小させればよいが、小径カッタヘッド4aを構成しているスポーク体4a1 に外周側スポーク体4b1 を継ぎ足してなるカッタヘッド4の場合には、その外周側スポーク体4b1 を取り外すことにより縮径させ、取り外した外周側スポーク体4b1 を隔壁3に設けている出入口(図示せず)を通じて管路P内に搬入して発進立坑側に回収するか、或いは、到達立坑内から地上側に回収する。
【0032】
また、到達立坑C内には外殻体1が突入した状態となっているので、この外殻体1の前胴1aにおける上周部を後胴1bから切り離して到達立坑C内から地上側に回収、撤去する。なお、到達立坑Cが存在しなく、所定長までトンネルを掘削したのち、掘削機本体Aを発進立坑側に回収する場合には、外殻体1全体を管路Pを構成している管体pと共にトンネルの覆工体として残置させておく。この場合には、外殻体1は前胴1aと後胴1bに分断しておく必要はない。
【0033】
さらに、外殻体1の後胴1b上の上記空間部9内に配設されている方向制御ジャッキ10を取り外して撤去すると共に、外殻体1に対する掘削機本体Aの切り離し作業を行う。この作業は、まず、掘削機本体Aの内殻体2における後端連結環部2aと連結している推力伝達部材8を撤去する。この作業は、推力伝達部材8と上記連結環部2aとの連結を解くと共にこの推力伝達部材8を取付けていた環状フレーム7を溶断等によって切除して撤去する。この環状フレーム7と推力伝達部材8の撤去によって上記外殻体1の前胴1aの後部連結板1dの後方側に上記空間部9の前端側に連通した空間部9aが形成されるので、この空間部9aを利用して掘削機本体Aの後端連結環部2aの後端面に後部ガイドローラ6bの装着作業を行うと共に上記空間部9における下周部内に基板25を敷設、固定し、さらにこの基板25の中央部上にスペーサ部材5を設置する。
【0034】
また、掘削機本体Aをより安定した状態で回収することができるように、掘削機本体Aの上周部側にも前後ガイドローラ6a、6bを装着するので、上記空間部9における上周部内にも基板25' を敷設、固定しておく。なお、この基板25' にはスペーサ部材5を設置する必要はない。
【0035】
掘削機本体Aの連結環部2aの後端に対する後部ガイドローラ6b、6bの装着は、これらの後部ガイドローラ6b、6bを周方向に上記スペーサ部材5の幅よりも広く、且つ基板25の両側部上を転動可能な幅間隔を存した状態でその軸受け部26をボルト等によって固着することより行われる。上側の左右一対のガイドローラ6b、6bも同様に基板25' の両側部上を転動可能な幅間隔を存して装着される。
【0036】
こうして、掘削機本体Aの内殻体2の後端部に後部ガイドローラ6b、6bを装着したのち、掘削機本体Aに牽引用ロープ(図示せず)を連結して後方に牽引すると、これらの後部ガイドローラ6b、6bは基板25の前端両側部上に移動して該基板25の両側部上面を転動しながらスペーサ部材5の両側方を通過する(図4参照)。この際、掘削機本体Aの内殻体2の下周部外周面がスペーサ部材5に支持された状態でこのスペーサ部材5上を摺動するが、後部ガイドローラ6b、6bが管路Pの先端の管体pに達するまでは、掘削機本体Aの内殻体2の前端部は外殻体1の前胴1a上に受止されていて重量の大きいカッタヘッド4の存在にもかかわらず、掘削機本体Aを前胴1aと後部ガイドローラ6b、6bを受止している基台25の後端部とで安定した状態で支持しながら掘削機本体Aを後退させ、さらに、後退して掘削機本体Aの内殻体2の前端部が外殻体1の前胴1aの後端から離脱すると、管路Pの前端部上に達した後部ガイドローラ6b、6bと上記スペーサ部材5とによって掘削機本体Aを安定した状態で支持するものである。
【0037】
掘削機本体Aの後端によってカッタヘッド4(縮径した小径カッタヘッド部4a)が図5に示すように推力伝達部材8の撤去後の上記空間部9a上に達すると、掘削機本体Aをその位置で一旦停止させ、その位置で該空間部8aを利用してカッタヘッド部4aの円形リング体4cの上周部と下周部との外周面に周方向に上記後部ガイドローラ6b、6bと同一間隔を存してそれぞれ一対の前部ガイドローラ6a、6aを装着する。この前部ガイドローラ6a、6aの装着時に、掘削機本体Aの内殻体2の前端下周部を支持している上記スペーサ部材5のジャッキ5aを伸長させることにより掘削機本体Aの前端部を僅かに持ち上げ、作業空間を広くして前部ガイドローラ6a、6aの装着作業を容易に行わせるようにする。
【0038】
前部ガイドローラ6a、6aの装着後、掘削機本体Aを僅かに後退させて、これらの前部ガイドローラ6a、6aを基台25の前端両側部上に位置させ、しかるのち、スペーサ部材5のジャッキ5aを収縮させることによって該前部ガイドローラ6a、6aを基台25の前端両側部上に載せ、これらの前部ガイドローラ6a、6aと上記後部ガイドローラ6b、6bとで掘削機本体Aを支持した状態で、掘削機本体Aを後方に牽引することにより、前後ガイドローラ6a、6bを図7に示すように管路P上を転動させながら発進立坑側に向かって掘削機本体Aを後退させ、発進立坑内を通じて回収、撤去するものである。なお、この掘削機本体Aは次のトンネル施工時に、その前後ガイドローラ6a、6bを取り外したのち、外殻体1内に組み込んで再び使用される。
【0039】
図8、図9は本発明の別な実施の形態を示すもので、上記の実施の形態においては、外殻体1の後胴1bの内周面上に形成している上記空間部9に、前後ガイドローラ6a、6bを転動自在に支持する基板25を敷設、固定したが、この実施の形態においては、基板25を設けることなく、スペーサ部材5'のみを配設した構造としている。即ち、このスペーサ部材5'は、その幅が左右のガイドローラの間隔よりも狭く、且つ、長さが上記空間部9の長さに略等しい長さに形成されていると共に、高さは、その下面を後胴1bの内周面上に固定させた時に、上面が外殻体1の内筒部1a1 の内周面に達する高さに形成されている。なお、このスペーサ部材5'もその上面がジャッキ5aによって昇降可能に構成されている。その他の構造については上記実施の形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
このように構成したので、掘削機本体Aの回収時には、上記前胴1aの後方空間部9'を利用して上記実施の形態と同様に掘削機本体Aの連結環部2aの後端両側部に左右一対の後部ガイドローラ6b、6bを装着したのち、掘削機本体Aを後方に牽引すると、この掘削機本体Aの内殻体2の後端部外周面における下周部がスペーサ部材5'の前端部上に乗り上げて該スペーサ部材5'上を摺動しながら後方に移動する。この際、後部ガイドローラ6b、6bはこのスペーサ部材5'の両側方に沿って後方に移動する。
【0041】
掘削機本体Aの後端によってカッタヘッド4(縮径した小径カッタヘッド部4a)が推力伝達部材8の撤去後の上記空間部9a上に達すると、掘削機本体Aをその位置で一旦停止させ、その位置で該空間部9aを利用して上記同様にカッタヘッド部4aの円形リング体4cの上周部と下周部との外周面に周方向に上記後部ガイドローラ6b、6bと同一間隔を存してそれぞれ一対の前部ガイドローラ6a、6aを装着する。この前部ガイドローラ6a、6aの装着時に上記スペーサ部材5'のジャッキ5aを伸長させて掘削機本体A全体を僅かに持ち上げ、作業空間を広くして前部ガイドローラ6a、6aの装着作業を容易に行わせるようにする。
【0042】
前部ガイドローラ6a、6aの装着後、スペーサ部材5'のジャッキ5aを収縮させることによってスペーサ部材5'の上面を管路Pの下周部内周面と同一高さにしたのち、掘削機本体Aを後方に牽引することにより、前後ガイドローラ6a、6bを管路P上を転動させながら発進立坑側に向かって掘削機本体Aを後退させ、発進立坑内を通じて回収、撤去するものである。この際、縮径したカッタヘッド部4aの下周部に前部ガイドローラ6a、6aを装着した場合には、掘削機本体Aの内殻体2の前端がスペーサ部材5'の後端から離脱して管路Pの前端部上に達しても、この前部ガイドローラ6a、6aが管路Pの前端部上に達していないから掘削機本体Aが後部ガイドローラ6b、6bを支点として傾倒することになるので、これを防止するために、スペーサ部材5'の後端から管路Pの前端下周部上にまで補助スペーサ部材5'' を配設しておき、前部ガイドローラ6a、6aが管路Pの前端下周部上に達したのち、補助スペーサ部材5'' から内殻体2が後方に離脱させるように構成しておく。
【0043】
なお、上記いずれの実施の形態においても、前部ガイドローラ6a、6aをカッタヘッド4の縮小したカッタヘッド部4aに装着しているが、掘削機本体Aの内殻体2の前端両側部に装着するように構成しておいてもよい。この場合、掘削機本体Aの回収時に上記補助スペーサ部材5'' を設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】トンネル掘削機の縦断側面図。
【図2】カッタヘッドの正面図。
【図3】到達立坑に到達した後のトンネル掘削機の縦断側面図。
【図4】掘削機本体の後退開始途中の状態を示す縦断側面図。
【図5】掘削機本体を所定長、後退させた位置で停止させた状態の縦断側面図。
【図6】後部ガイドローラの装着状態を示す正面図。
【図7】掘削機本体を回収している状態の縦断側面図。
【図8】本発明の回収装置の別な実施の形態を示す縦断側面図。
【図9】その簡略正面図。
【符号の説明】
【0045】
P 管路
A 掘削機本体
1 外殻体
2 内殻体
4 カッタヘッド
5 スペーサ部材
6a、6b 前後ガイドローラ
8 推力伝達部材
9、9a 空間部
10 方向制御ジャッキ
25 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機によって地中にトンネルを掘削しながら該トンネル内に所定長の管路を形成したのちこの管路内を通じて上記トンネル掘削機における掘削機本体を回収する際のガイド装置であって、上記トンネル掘削機は管路の前方側に配設された外殻体と、内殻体内に一体に設けた隔壁に外殻体の前方地盤を掘削する外径が縮径可能なカッタヘッドを回転自在に支持させ且つこのカッタヘッドの駆動手段と土砂排出手段を備えている掘削機本体とからなり、上記外殻体の前胴の内径を管路の内径よりも小径に形成してこの前胴内周面に上記掘削機本体の内殻体を後方に向かって引き出し可能に連結、支持させていると共に、外殻体の後胴の下周部内周面上に上端面が前胴の内周面の高さに達するスペーサ部材を設置してこのスペーサ部材上を掘削機本体の内殻体の外周面下周部を管路側に向かって摺動可能とし、さらに、掘削機本体に上記スペーサ部材の両側方を通過可能な間隔を存してガイドローラを装着し、このガイドローラを上記管路の内底面上を転動させながら掘削機本体を回収するように構成したことを特徴とするトンネル掘削機の回収用ガイド装置。
【請求項2】
スペーサ部材を、外殻体の後胴の下周部内周面上に設置されてその両側部上面をガイドローラの転動ガイド面に形成している基台の幅方向の中央部上に配設したことを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機の回収用ガイド装置。
【請求項3】
掘削機本体の内殻体の下周部を支持するスペーサ部材の上端面をジャッキによって昇降自在に構成したことを特徴とする請求項2に記載のトンネル掘削機の回収用ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−70872(P2007−70872A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258660(P2005−258660)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年7月5日 有限会社日本プロジェクト・リサーチ発行の「第29回『最新の推進工法施工技術』講習会テキスト“新しい領域を切り開く”推進工法最新技術」に発表
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】