説明

トンネル掘削機及びトンネル掘削機におけるカッタ駆動部の組立・解体方法

【課題】組立・解体が容易なカッタ駆動部を備えたトンネル掘削機及びトンネル掘削機におけるカッタ駆動部の組立・解体方法を提供する。
【解決手段】カッタヘッド13の中間ビーム14を掘削機本体10のバルクヘッド12に対しスラストシールパッキン49と内,外周シールパッキン40,42を介してベアリング16により回転自在に支持してなるカッタ駆動部を備えたトンネル掘削機において、ベアリング16と該ベアリング16に連繋するカッタ駆動モータ21を支持するベアリングハウジング23をバルクヘッド12に着脱可能となすと共に、内,外周シールパッキン40,42を組立・解体する際に、中間ビーム14をバルクヘッド12に対して交互に仮固定する内周シールパッキン用の第1治具60と外周シールパッキン用の第2治具61を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立・解体が容易なカッタ駆動部を備えたトンネル掘削機及びトンネル掘削機におけるカッタ駆動部の組立・解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シールド掘削機は、円筒形状をなす掘削機本体の前部に円盤形状をなすカッタヘッドが回転自在に装着され、このカッタヘッドがカッタ駆動部により駆動回転される一方、掘削機本体の後部には掘削機本体を前進させる多数のシールドジャッキと既設トンネルの内壁面にセグメントを組み付けるエレクタ装置が装着されて構成される。
【0003】
従って、カッタ駆動部によりカッタヘッドを回転させながらシールドジャッキを伸長させると、既設セグメントからの掘進反力を得て掘削機本体が前進し、カッタヘッドに取り付けられた多数のカッタビットが前方の地盤(切羽)を掘削して、トンネルを形成することができる。
【0004】
このようなシールド掘削機を用いて所定の工事区間にトンネルを構築する場合、この工事区間に発進立坑と到達立坑を予め掘削しておき、発進立坑内にシールド掘削機を搬入し、この発進立坑内で掘進反力を確保した状態で、発進口から地山へ貫入し所定のルートに沿って掘削を行う。そして、シールド掘削機が到達立坑まで掘進すると、予め形成された到達口よりシールド掘削機を到達立坑内に引き出す。このようにして所定の位置にトンネルを構築する。
【0005】
そして、到達立坑内に引き出されたシールド掘削機は、解体されて一部が地上に回収される一方、残りはトンネルの構造体として地中に埋設される。即ち、シールド掘削機は、まず、カッタヘッドがガス切断機により小さく分断されてクレーンにより到達立坑を通して地上に引き上げられる。次に、カッタヘッドのカッタ駆動部が同様にガス切断機により小さく分断され、クレーンにより到達立坑を通して地上に引き上げられる。最後に、シールドジャッキやエレクタ装置、排土装置(送泥管、排泥管、アジテータ、スクリューコンベヤ等)などが掘削機本体から取り外されてクレーンにより地上に引き上げられる。そして、残った掘削機本体がトンネル構造体の一部として既設セグメントに連結して埋設される。尚、分断されて地上に引き上げられたカッタヘッドやその駆動装置などはスクラップ処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3439745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、カッタヘッドにおけるカッタ寿命の延命等に基因して1台のトンネル掘削機で掘削できる工事区間の増長により、カッタヘッドのカッタ駆動部を構成するベアリング(カッタ駆動モータと連繋するリングギア付き三軸コロ軸受)や土砂シール(中間リング支持部における内周シールパッキンと外周シールパッキン)等を工事区間途中で交換する必要性が生じている。また、逆に短い工事区間であるため、ベアリングや土砂シール等がまだ十分使用可能である場合もあり、このような時はベアリングや土砂シール等は非常に高価であるため、トンネル掘削機の製造コストの面でも、再利用することが望まれている。
【0008】
ところが、従来のカッタヘッドのカッタ駆動部は、図7に示すように、カッタヘッドの中間リング100にベアリング取付ボルト101により取り付けられたベアリング102とこのベアリング102に連繋するカッタ駆動モータ103とを支持するベアリングハウジング104をバルクヘッド105や掘削機本体106に溶接等で固定的に取り付けられていたため、ベアリング102や中間リング100部に装着された内周シールパッキン107と外周シールパッキン108を交換或いは再利用するには、ガス切断機等によるベアリングハウジング104の大掛かりな解体作業が必要となるので、特に、大口径のシールド掘削機においては非常に困難を来たしていた。
【0009】
また、例えベアリングハウジング104を解体してベアリング102を取り外せたとしても、その後に内周シールパッキン107と外周シールパッキン108を取り外す際には、単にそのまま取り外すことはできない。即ち、内周シールパッキン107又は外周シールパッキン108の何れか一つをそのまま取り外すと、中間リング100がバルクヘッド105(のリング状の嵌合孔105a)に対して遊嵌された状態となり、中間リング100が中間ビーム109を介してカッタヘッド毎バルクヘッド105から離脱する虞が有るのである。これは、特にカッタ駆動部を工事区間途中で交換する場合やカッタ駆動部を掘削機前方から取り出すことができない状態下で再利用する場合には、中間ビーム取付フランジ部109aにおけるスラストシールパッキン110が機能しなくなることから当該部から泥水が機内に浸入するという大きな問題点を抱えているのである。
【0010】
尚、特許文献1では、到達立坑等が掘削できない状態下で、掘削機を再利用のために回収すべく発進立坑を利用する技術が開示されている。しかしながら、この技術は掘削機本体を構成する外胴から内胴を離脱させ、この内胴を、推進ジャッキを掘進時とは反対に反力受部材に対して押し付けるのではなく引くことで、発進立坑側に移動させるもので、移動させた後内胴からカッタ駆動部を解体することになり、依然として解体作業が大掛かりになると共に、カッタ駆動部を再利用できても交換することができないという不具合があった。
【0011】
そこで、本発明は、組立・解体が容易なカッタ駆動部を備えたトンネル掘削機及びトンネル掘削機におけるカッタ駆動部の組立・解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
斯かる目的を達成するための本発明に係るトンネル掘削機は、
カッタヘッドの中間ビームを掘削機本体のバルクヘッドに対してスラストシールパッキンと内,外周シールパッキンを介してベアリングにより回転自在に支持してなるカッタ駆動部を備えたトンネル掘削機において、
前記ベアリングと該ベアリングに連繋するカッタ駆動モータを支持するベアリングハウジングをバルクヘッドに着脱可能となすと共に、前記内,外周シールパッキンを組立・解体する際に、前記中間ビームをバルクヘッドに対して交互に仮固定する内周シールパッキン用の第1治具と外周シールパッキン用の第2治具を備えたことを特徴とする。
ことを特徴とする。
【0013】
また、
前記内周シールパッキン用の第1治具と外周シールパッキン用の第2治具の仮固定用ボルトは、少なくとも前記中間ビームに前記ベアリングを取り付けるベアリング取付ボルトのボルト穴を共用していることを特徴とする。
【0014】
また、
前記バルクヘッドは、前記内周シールパッキン用の第1治具と外周シールパッキン用の第2治具に加えて中間ビーム取付フランジ部の外周部を把持する仮固定用ジャッキを予め内蔵していることを特徴とする。
【0015】
斯かる目的を達成するための本発明に係るトンネル掘削機におけるカッタ駆動部の組立・解体方法は、
前記トンネル掘削機を用いてカッタ駆動部の組立・解体を行う際に、
バルクヘッドに対してベアリングハウジングを着脱する工程と、
バルクヘッドに対してベアリングを取付・取外す工程と、
内周シールパッキンと外周シールパッキンを交互に取付・取外す際に、中間ビームをバルクヘッドに対して交互に仮固定する工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るトンネル掘削機及びトンネル掘削機におけるカッタ駆動部の組立・解体方法によれば、カッタ駆動部におけるベアリング及び内,外周シールパッキンの組立・解体を泥水の浸入を回避しつつ機内から容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す泥土圧式シールド掘削機におけるカッタ駆動部の断面図である。
【図2】ベアリングの解体工程図である。
【図3】内,外周シールパッキンの解体工程図である。
【図4】内,外周シールパッキンの組立工程図である。
【図5】泥土圧式シールド掘削機の全体構成図である。
【図6】治具の配置を示す模式図である。
【図7】従来のカッタ駆動部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るトンネル掘削機及びトンネル掘削機におけるカッタ駆動部の組立・解体方法を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は本発明の一実施例を示す泥土圧式シールド掘削機におけるカッタ駆動部の断面図、図2はベアリングの解体工程図、図3は内,外周シールパッキンの解体工程図、図4は内,外周シールパッキンの組立工程図、図5は泥土圧式シールド掘削機の全体構成図、図6は治具の配置を示す模式図である。
【0020】
図5に示すように、泥土圧式シールド掘削機(トンネル掘削機)の筒状をなす掘削機本体10のバルクヘッド12には、カッタヘッド13が中間ビーム14及び中間リング(カッタドラム)15を介してベアリング16により回転自在に装着される。このベアリング16はカッタヘッド13に作用する負荷の内のスラスト力とラジアル力とモーメント力の三軸方向の荷重を担持するリングギア付き三軸コロ軸受からなる。
【0021】
カッタヘッド13の前面にはその回転中心部から放射状をなして複数本のカッタスポーク17がその各々の間に面盤(図示せず)を配して固定される。このカッタスポーク17及び面盤には多数のカッタビット18が取着される。また、カッタヘッド13の回転中心部にはフィッシュテールカッタ19が取着される。さらに、カッタスポーク17及び面盤にはカッタヘッド13の径方向へ油圧ジャッキ11により伸縮(出没)可能に、適当数のコピーカッタ20が装着される。
【0022】
そして、前記ベアリング16のリングギア部16aには、複数個からなるカッタ駆動(旋回)モータ21の駆動ギア22が噛み合っている。従って、カッタ駆動モータ21を稼働して駆動ギア22を回転駆動すると、ベアリング16のリングギア部16aを介してカッタヘッド13が回転される。このベアリング16とカッタ駆動モータ21はベアリングハウジング23を介してバルクヘッド12と掘削機本体10に支持される。また、ベアリング16とカッタ駆動モータ21と前記中間リング15等でカッタ駆動部が構成され、その具体的な取付構造は後述する。
【0023】
また、前記バルクヘッド12の中央部には、ロータリジョイント24が組み付けられ、このロータリジョイント24を介して前記コピーカッタ20の油圧ジャッキ11等に対し図示しない油圧源からの圧油の給,排が行われるようになっている。
【0024】
また、前記掘削機本体10の内部にはスクリューコンベヤ25が配設され、カッタヘッド13で掘削された土砂をトンネルの後方へ排出可能になっている。即ち、スクリューコンベヤ25の前端部(取出口)がバルクヘッド12の下部を貫通して前記カッタヘッド13とバルクヘッド12とで画成されたチャンバ室26に開口すると共に、後下部に設けた排出口(ジャッキ27駆動のゲート28で開閉される)がトンネル内の長手方向に配設された図示しないベルトコンベア上に対向するのである。このスクリューコンベヤ25は、後上がりに傾斜して配置された円筒管25aの内部に、駆動モータ25bによって回転可能にスクリュー翼25cが装着されてなる。
【0025】
前記掘削機本体10の内周部には、覆工部材としてトンネルの内周面に構築された(組み立てられた)既設のセグメントSに対し伸縮し得る推進ジャッキ29が円周方向へ所定間隔離間して多数本配設される。また、掘削機本体10の後端部(スキンプレート)は、テールシール30を介して前記既設セグメントSの外周に嵌合している。また、掘削機本体10の後部には前記セグメントSを組み立てるエレクタ31と後方張出台32が組み付けられ、この後方張出台32上に、組み立てたセグメントSの真円保持を行うセグメントアジャスタ33が装備される。
【0026】
前述したカッタ駆動部は、図1に示すように、中間リング15がバルクヘッド12のリング状の嵌合孔35に、内周シールパッキン40及び内周シールパッキン当て板41と外周シールパッキン42及び外周シールパッキン当て板43を介して、回転自在に嵌合されている。前記嵌合孔35は、バルクヘッド12の後面に形成された筐体状の補強壁部44に形成される。
【0027】
図中45は中間リング15の後端面にねじ込まれる内周シールパッキン取付ボルトで、46は補強壁部44の中間リング内周側取付部44aにねじ込まれる内周シールパッキン当て板取付ボルトであり、47は中間リング15の後端面にねじ込まれる外周シールパッキン取付ボルトで、48は補強壁部44の中間リング外周側取付部44bにねじ込まれる外周シールパッキン当て板取付ボルトである。
【0028】
また、中間リング15の前端面にボルト結合される中間ビーム取付フランジ部14aとバルクヘッド12の前面との間にはスラストシールパッキン49が介装される。そして、中間リング15の後端面にベアリング16の可動部(リングギア部16a)が第1ベアリング取付ボルト50で連結される一方、ベアリング16の固定部が第2ベアリング取付ボルト51でベアリングハウジング23に連結される。
【0029】
前記ベアリングハウジング23は、カッタ駆動モータ取付ボルト52とカッタ駆動モータ取付ピン53でカッタ駆動モータ21を取り付けた状態で、第1ベアリングハウジング取付ボルト54により補強壁部44の中間リング内周側取付部44aに連結されると共に第2ベアリングハウジング取付ボルト55により補強壁部44の中間リング外周側取付部44bに連結される。尚、図中56はベアリングハウジング23の掘削機本体10との溶接部でこれは特に無くても良い。
【0030】
前述した各種ボルト45〜48,50,52,54,55及びピン53は周方向に複数個設けられる。例えば、図6の治具の配置を示す模式図のように、内,外周シールパッキン40,42の組立・解体時に用いられる内周シールパッキン用の第1治具60を取り付ける第1治具取付ボルト60aと外周シールパッキン用の第2治具61を取り付ける第2治具取付ボルト61aのねじ穴を共用する第1ベアリング取付ボルト50は周方向等配で12本設けられ、同じく内周シールパッキン用の第1治具60を取り付ける第1治具取付ボルト60bのねじ穴を共用する第1ベアリングハウジング取付ボルト54は周方向等配で6本設けられる。さらに、外周シールパッキン用の第2治具61を取り付ける第2治具取付ボルト61bのねじ穴を共用する外周シールパッキン当て板取付ボルト48は周方向等配で6本設けられる。
【0031】
このように構成されるため、泥土圧式シールド掘削機による掘削にあたっては、先ず、全ての推進ジャッキ29が縮んだ初期位置(図5の状態)で、カッタ駆動モータ21を稼働させてカッタヘッド13を回転させる。
【0032】
次に、前記状態から全て又は任意の推進ジャッキ29を伸ばして掘削機本体10を1ストローク推進(前進)させる。この際、推進反力は既設セグメントSで受ける。そして、この推進により、カッタヘッド13に装着された多数のカッタビット18が前方の地盤を掘削する。掘削された土砂はチャンバ室26からスクリューコンベヤ25等によって外部に排出される。
【0033】
次に、カッタヘッド13の旋回を止めた状態で、推進ジャッキ29を部分的に順次縮めてエレクタ31及びセグメントアジャスタ33によりセグメントSを組み立てると共にその真円保持を行う。以降、前述した工程を繰り返して、所定長さのトンネルを掘削・形成していく。
【0034】
そして、本実施例では、前述したカッタ駆動部におけるベアリング16と内,外周シールパッキン40,42が必要に応じて機内から組立・解体が可能になっている。内,外周シールパッキン40,42の組立・解体時には、前述した内,外周シールパッキン用の第1,第2治具60,61が用いられる。
【0035】
具体的には、例えば図1に示すカッタ駆動部の状態からベアリング16を解体する際は、カッタ駆動モータ取付ボルト52とカッタ駆動モータ取付ピン53を外してカッタ駆動モータ21をベアリングハウジング23から取り外した後、図2に示す工程に移行する。
【0036】
即ち、先ず、ベアリングハウジング23の掘削機本体10との溶接部56が有れば、これをガス切断機で切断した後、第2ベアリング取付けボルト51と第1ベアリングハウジング取付ボルト54と第2ベアリングハウジング取付ボルト55を外してベアリングハウジング23をベアリング16とバルクヘッド12(補強壁部44の中間リング内周側取付部44aと中間リング外周側取付部44b)から取り外す(図2の(a)参照)。
【0037】
次に、第1ベアリング取付けボルト50を外してベアリング16を中間リング15から取り外すと(図2の(b)参照)、ベアリング16の解体が完了する(図2の(c)参照)。尚、ベアリング16を組み立てる際は、前述した工程の逆の方法で行うのは自明であるので、詳細な説明は省略する。
【0038】
そして、内,外周シールパッキン40,42を解体する際には、前述した図2の(c)の状態から図3に示す工程に移行する。
【0039】
先ず、中間ビーム14(厳密には中間リング15)を把持(仮固定)するための内周シールパッキン用の第1治具60を第1治具取付ボルト(仮固定用ボルト)60a,60bで中間リング15とバルクヘッド12の中間リング内周側取付部44aに取り付ける(図3の(a)参照)。
【0040】
この際、図6に示すように、第1治具取付ボルト60aは第1ベアリング取付ボルト50のボルト穴を共用し、第1治具取付ボルト60bは第1ベアリングハウジング取付ボルト54のボルト穴を共用する。また、内周シールパッキン用の第1治具60と後述する外周シールパッキン用の第2治具61に加えて、バルクヘッド12に予め複数本の仮固定用ジャッキ62を内蔵しておき、内,外周シールパッキン40,42の解体時には、仮固定用ジャッキ62を伸長させて中間ビーム取付フランジ部14aの外周部を把持するようにしても良い。
【0041】
次に、外周シールパッキン取付ボルト47を外して外周シールパッキン42を取り外した後、外周シールパッキン当て板取付ボルト48を外して外周シールパッキン当て板43を取り外す(図3の(b)参照)。
【0042】
次に、中間ビーム14(厳密には中間リング15)を把持(仮固定)するための外周シールパッキン用の第2治具61を第2治具取付ボルト(仮固定用ボルト)61a,61bで中間リング15とバルクヘッド12の中間リング外周側取付部44bに取り付けた後、内周シールパッキン用の第1治具60を取り外す。(図3の(c)参照)。この際、図6に示すように、第2治具取付ボルト61aは第1ベアリング取付ボルト50のボルト穴を共用し、第2治具取付ボルト61bは外周シールパッキン当て板取付ボルト48のボルト穴を共用する。
【0043】
次に、内周シールパッキン取付ボルト45を外して内周シールパッキン40を取り外した後、内周シールパッキン当て板取付ボルト46を外して内周シールパッキン当て板41を取り外す(図3の(d)参照)。
【0044】
そして、外周シールパッキン用の第2治具61を取り外せば、内,外周シールパッキン40,42の解体が完了する(図3の(e)参照)。この際、前述した仮固定用ジャッキ62を内蔵していれば、これを収縮する。
【0045】
一方、内,外周シールパッキン40,42を組み立てる際には、前述した図3の(e)の状態から図4に示す工程に移行する。
【0046】
先ず、中間ビーム14(厳密には中間リング15)を把持(仮固定)するための外周シールパッキン用の第2治具61を第2治具取付ボルト61a,61bで中間リング15とバルクヘッド12の中間リング外周側取付部44bに取り付ける(図4の(a)参照)。
【0047】
この際、第2治具取付ボルト61aは第1ベアリング取付ボルト50のボルト穴を共用し、第2治具取付ボルト61bは外周シールパッキン当て板取付ボルト48のボルト穴を共用することは前述したとおりである。また、外周シールパッキン用の第2治具61と後述する内周シールパッキン用の第1治具60に加えて、バルクヘッド12に予め複数本の仮固定用ジャッキ62を内蔵しておき、内,外周シールパッキン40,42の組立時には、仮固定用ジャッキ62を伸長させて中間ビーム取付フランジ部14aの外周部を把持するようにしても良いことは前述したとおりである。
【0048】
次に、中間リング15に内周シールパッキン40を内周シールパッキン取付ボルト45で取り付けた後、中間リング内周側取付部44aに内周シールパッキン当て板41を内周シールパッキン当て板取付ボルト46で取り付ける(図4の(b)参照)。
【0049】
次に、中間ビーム14(厳密には中間リング15)を把持(仮固定)するための内周シールパッキン用の第1治具60を第1治具取付ボルト60a,60bで中間リング15とバルクヘッド12の中間リング内周側取付部44aに取り付けた後、外周シールパッキン用の第2治具61を取り外す(図4の(c)参照)。この際、図6に示すように、第1治具取付ボルト60aは第1ベアリング取付ボルト50のボルト穴を共用し、第1治具取付ボルト60bは第1ベアリングハウジング取付ボルト54のボルト穴を共用する。
【0050】
次に、中間リング15に外周シールパッキン42を外周シールパッキン取付ボルト47で取り付けた後、外周シールパッキン当て板43を外周シールパッキン当て板取付ボルト48でバルクヘッド12の中間リング内周側取付部44aに取り付ける(図4の(d)参照)。
【0051】
そして、内周シールパッキン用の第1治具60を取り外せば、内,外周シールパッキン40,42の組立が完了する(図4の(e)参照)。この際、前述した仮固定用ジャッキ62を内蔵していれば、これを収縮する。
【0052】
このようにして本実施例によれば、掘削機本体10のカッタ駆動部を組立・解体する際は、ベアリングハウジング23をバルクヘッド12の補強壁部44に対して、第1,第2ベアリングハウジング取付ボルト54,55を介して着脱することで、先ずベアリング16の組立・解体が機内から容易に行える。即ち、従来のようにガス切断機等によるベアリングハウジングの大掛かりな解体作業等が不要となり、大口径のシールド掘削機においては非常に有利となるのである。
【0053】
そして、内,外周シールパッキン40,42を組立・解体する際は、前述したベアリングハウジング23がバルクヘッド12の補強壁部44から離脱した状態下で、内周シールパッキン用の第1治具60と外周シールパッキン用の第2治具61を用いて、カッタヘッド13の中間ビーム14(厳密には中間リング15)をバルクヘッド12の補強壁部44における中間リング内周側取付部44aと中間リング外周側取付部44bに対して交互に仮固定(把持)しながら内,外周シールパッキン40,42を組立・解体することができるので、その作業が容易かつ円滑に行える。
【0054】
即ち、中間ビーム取付フランジ部14aにおけるスラストシールパッキン49の機能が維持されて当該部から泥水が機内に浸入することが防止されると共に、内,外周シールパッキン40,42が無い状態下で中間リング15が中間ビーム14を介してカッタヘッド13毎バルクヘッド12のリング状の嵌合孔35から離脱することが防止され、かつ組立時にはその装着スペースが十分に確保されるのである。
【0055】
また、前述した中間ビーム14(厳密には中間リング15)の仮固定の際には、内周シールパッキン用の第1治具60の第1治具取付ボルト60a,60bと外周シールパッキン用の第2治具61の第2治具取付ボルト61a,61bのボルト穴が、中間リング15における第1ベアリング取付ボルト50と中間リング内周側取付部44aにおける第1ベアリングハウジング取付ボルト54と中間リング外周側取付部44bにおける外周シールパッキン当て板取付ボルト48のボルト穴と共用しているので、カッタ駆動部における加工数削減によりコストダウンが図れると共に、カッタ駆動部及び治具の汎用性が高められる。また、仮固定用ジャッキ62を用いることで、中間ビーム14(厳密には中間リング15)をバルクヘッド12の補強壁部44に対してより堅固に仮固定(把持)することができる。
【0056】
このようにして、カッタ駆動部におけるベアリング16及び内,外周シールパッキン40,42の組立・解体を泥水の浸入を回避しつつ機内から容易に行えるので、特にカッタ駆動部を工事区間途中で交換する場合やカッタ駆動部を掘削機前方から取り出すことができない状態下で再利用する場合に有効である。
【0057】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、内,外周シールパッキン用の第1,第2治具における形状、数量、取付位置の変更等各種変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るトンネル掘削機は、泥土圧式シールド掘削機に限らず、泥水式シールド掘削機やトンネルボーリングマシーン(TBM)等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 掘削機本体
11 油圧ジャッキ
12 バルクヘッド
13 カッタヘッド
14 中間ビーム
14a 中間ビーム取付フランジ部
15 中間リング(カッタドラム)
16 ベアリング
16a リングギア部
17 カッタスポーク
18 カッタビット
19 フィッシュテールカッタ
20 コピーカッタ
21 カッタ駆動(旋回)モータ
22 駆動ギア
23 ベアリングハウジング
24 ロータリジョイント
25 スクリューコンベヤ
26 チャンバ室
27 ジャッキ
28 ゲート
29 推進ジャッキ
30 テールシール
31 エレクタ
32 後方張出台
33 セグメントアジャスタ
35 嵌合孔
40 内周シールパッキン
41 内周シールパッキン当て板
42 外周シールパッキン
43 外周シールパッキン当て板
44 補強壁部
44a 中間リング内周側取付部
44b 中間リング外周側取付部
45 内周シールパッキン取付ボルト
46 内周シールパッキン当て板取付ボルト
47 外周シールパッキン取付ボルト
48 外周シールパッキン当て板取付ボルト
49 スラストシールパッキン
50 第1ベアリング取付ボルト
51 第2ベアリング取付ボルト
52 カッタ駆動モータ取付ボルト
53 カッタ駆動モータ取付ピン
54 第1ベアリングハウジング取付ボルト
55 第2ベアリングハウジング取付ボルト
56 ベアリングハウジングの掘削機本体との溶接部
60 内周シールパッキン用の第1治具
60a,60b 第1治具取付ボルト
61 外周シールパッキン用の第2治具
61a,61b 第2治具取付ボルト
62 仮固定用ジャッキ
S セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタヘッドの中間ビームを掘削機本体のバルクヘッドに対してスラストシールパッキンと内,外周シールパッキンを介してベアリングにより回転自在に支持してなるカッタ駆動部を備えたトンネル掘削機において、
前記ベアリングと該ベアリングに連繋するカッタ駆動モータを支持するベアリングハウジングをバルクヘッドに着脱可能となすと共に、前記内,外周シールパッキンを組立・解体する際に、前記中間ビームをバルクヘッドに対して交互に仮固定する内周シールパッキン用の第1治具と外周シールパッキン用の第2治具を備えたことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】
前記内周シールパッキン用の第1治具と外周シールパッキン用の第2治具の仮固定用ボルトは、少なくとも前記中間ビームに前記ベアリングを取り付けるベアリング取付ボルトのボルト穴を共用していることを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記バルクヘッドは、前記内周シールパッキン用の第1治具と外周シールパッキン用の第2治具に加えて中間ビーム取付フランジ部の外周部を把持する仮固定用ジャッキを予め内蔵していることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれか一つに記載のトンネル掘削機を用いてカッタ駆動部の組立・解体を行う際に、
バルクヘッドに対してベアリングハウジングを着脱する工程と、
バルクヘッドに対してベアリングを取付・取外す工程と、
内周シールパッキンと外周シールパッキンを交互に取付・取外す際に、中間ビームをバルクヘッドに対して交互に仮固定する工程と、
を有することを特徴とするトンネル掘削機におけるカッタ駆動部の組立・解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104283(P2013−104283A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251189(P2011−251189)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(309036221)三菱重工メカトロシステムズ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】