説明

トンネル掘削装置の絶縁構造

【課題】放電用電極に8kV〜20kVのような高電圧を印加して放電を行うと、上述した支保工、走行レールのようなトンネル掘削装置周りの金属環境に大電流が流れる可能性があり、作業者に危険を及ぼす可能性がある。
【解決手段】トンネル掘削装置2が、先頭部には穿孔機械5及び放電用電極6を備え、放電用電極の後方には電源装置8を備え、電源装置の近傍には絶縁トランス10を備えるとともに、電源装置及び絶縁トランスを搭載する電源部搭載車11と、電源部搭載車11の後方に繋がれて電源部搭載車を掘削進行方向に移動させるための運転車13とを備え、掘削した孔の絶縁トランスより切羽側に位置するトンネル掘削装置周りの切羽側金属環境と絶縁トランスより坑口側に位置するトンネル掘削装置周りの坑口側金属環境との間に絶縁物を設けることで坑口側に切羽側金属環境と電気的に絶縁された避難場所101を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電用電極に8kV〜20kVの高電圧を印加して放電を行なわせることでトンネルを掘削する場合において、安全に作業を行えるようにしたトンネル掘削装置の絶縁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
岩石やコンクリート等の破壊対象物を破砕するために放電破砕装置を用いた放電破砕方法が知られている。例えば図6に示すように、破壊対象物60に予め放電用孔61を形成し、この放電用孔61内に水などの電解液63を注入してこの電解液63中に放電破砕装置50Aの放電用電極70を挿入し、放電用電極70に8kV〜20kVの高電圧を印加して放電を行なわせる。この放電エネルギーにより衝撃波が発生し、この衝撃波で放電用孔61の周囲を破砕することで、破壊対象物60を破砕する。放電破砕装置50Aは、大容量(例えば約500kJ)のコンデンサ82及びスイッチ83,84を備えた回路で構成されたパルスパワー源80と、コンデンサ82の一方の極82aに接続されるとともにコンデンサ82の他方の極82bにスイッチ83を介して接続された発電機等の電源部81と、コンデンサ82の一方の極82aに接続された一方電極とコンデンサ82の他方の極82bにスイッチ84を介して接続された他方電極とこれら一方電極と他方電極とを絶縁する絶縁体とで形成された放電用電極70とを備える。図示しないが、パルスパワー源80の回路は接地(アース)されている。放電用電極70は、例えば、+電極のような一方電極としての棒状の内部導体73と、内部導体73の外周囲を被覆する筒状の絶縁体74と、絶縁体74の外周囲に設けられた−電極のような他方電極としての外部導体75とにより構成される。すなわち、放電用電極70は、内部導体73と絶縁体74と外部導体75とが同軸状に配置された構成の同軸電極である。外部導体75は、内部導体73の中心線に沿った方向に間隔を隔てて設けられた複数の浮遊電極76;76・・・を構成する。浮遊電極とは、電源側と電気的に絶縁された電極のことである。絶縁体74の先端74tより突出して露出する内部導体73の先端部73tとこの先端部73tに最も近い浮遊電極76の先端部76tとで放電を生じさせる先端側放電ギャップ77が形成され、互いに対向する浮遊電極76同士の端部76sと端部76sとで放電を生じさせる中間側放電ギャップ78が形成される。中間側放電ギャップ78は複数形成される。先端側放電ギャップ77と複数の中間側放電ギャップ78とにより放電部79が形成される。スイッチ84及びスイッチ83の非導通の状態で、破壊対象物60の放電用孔61内の電解液63中に放電用電極70を挿入した後に、スイッチ83を導通してコンデンサ82に電源部81からの電荷を蓄積させる。そしてスイッチ84を導通して、コンデンサ82に蓄えられた電荷がケーブル71及びコネクタ72を介して放電用電極70に印加されると、先端側放電ギャップ77で放電を生じ、この放電エネルギーによって衝撃波を発生する。同様に、複数の中間側放電ギャップ78で放電を生じ、この放電エネルギーによって衝撃波を発生する。これら衝撃波により破壊対象物60が破砕する。
【特許文献1】特開2003−311175号公報
【特許文献2】特開2003−320268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した放電破砕方法を使用してトンネルを掘削することが考えられる。この場合に用いるトンネル掘削装置としては、例えば、放電用孔を形成するための穿孔機械と放電用電極とを先頭に有し、穿孔機械の後方には放電用電極に電線を介して大電流を供給する電源装置を備えた構成が考えられる。そして、電源装置を搭載した車を掘削進行方向に移動させるため金属製の走行レールを設け、地山に掘削進行方向に向けて放電用孔を形成し、放電用孔内に放電用電極を挿入して放電を行うことで地山を破砕して掘削し、この掘削した孔の内側に地山を支える金属製の支保工を設置していくようにしてトンネルを掘削していくことが考えられる。しかしながら、放電用電極に8kV〜20kVのような高電圧を印加して放電を行うと、上述した支保工、走行レールのようなトンネル掘削装置周りの金属環境に大電流が流れる可能性があり、作業者に危険を及ぼす可能性があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明は、トンネル掘削対象部にトンネルの掘削進行方向に延長する放電用孔を形成し、放電用孔内に放電用電極を設けてこの放電用電極の放電部での放電により衝撃波を発生させ、この衝撃波でトンネル掘削対象部を破砕してトンネルを掘削していく方法に使用するトンネル掘削装置の絶縁構造であって、トンネル掘削装置が、先頭部にはトンネル掘削対象部に放電用孔を形成するための穿孔機械及び放電用電極を備え、放電用電極の後方には放電用電極に高電圧を印加する電源装置を備え、電源装置の近傍には電源装置より放電用電極に供給される電流が変電所に流れることを防止する絶縁トランスを備えるとともに、電源装置及び絶縁トランスを搭載する電源部搭載車と、電源部搭載車の後方に繋がれて電源部搭載車を掘削進行方向に移動させるための運転車とを備え、掘削した孔の絶縁トランスより切羽側に位置するトンネル掘削装置周りの切羽側金属環境と絶縁トランスより坑口側に位置するトンネル掘削装置周りの坑口側金属環境との間に絶縁物を設けることで坑口側に切羽側金属環境と電気的に絶縁された避難場所を設けたことを特徴とする。
金属環境が電源搭載車及び運転車のための走行レールであり、走行レールが複数の単位レールにより形成され、複数の単位レールが単位レールの端部間に絶縁物を挟んで互いに接続されたことも特徴とする。
金属環境が掘削後の孔の内側に設置されて地山を支える支保工であり、支保工が掘削進行方向に沿って所定の間隔を隔てて形成された支保工柱を連結部材で連結したことにより形成され、支保工柱と連結部材との連結部に絶縁物が設けられたことも特徴とする。
金属環境が電源搭載車及び運転車のための走行レール及び掘削後の孔の内側に設置されて地山を支える支保工であり、走行レールが複数の単位レールにより形成され、複数の単位レールが単位レールの端部間に絶縁物を挟んで互いに接続され、支保工が掘削進行方向に沿って所定の間隔を隔てて形成された支保工柱を連結部材で連結したことにより形成され、支保工柱と連結部材との連結部に絶縁物が設けられたことも特徴とする。
走行レールの長さは電源部搭載車及び運転車を掘削進行方向に移動可能な長さであり、掘削進行に伴って運転車を掘削進行方向に移動した場合に、当該移動前の運転車を搭載していた単位レールを取り外しておき、この取り外しておいた単位レールを、次に運転車を掘削進行方向に移動する場合の走行レールの先頭部分として使用したことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、掘削した孔の絶縁トランスより切羽側に位置するトンネル掘削装置周りの切羽側金属環境と絶縁トランスより坑口側に位置するトンネル掘削装置周りの坑口側金属環境との間に絶縁物を設けることで坑口側に切羽側金属環境と電気的に絶縁された避難場所を設けたことにより、放電用孔に対する放電用電極の設定を終了した後に人が避難場所に避難してから放電用電極への放電を行うようにすることで、感電の危険性を少なくできる。
電源搭載車及び運転車のための走行レールを複数の単位レールにより形成し、複数の単位レールが単位レールの端部間に絶縁物を挟んで互いに接続された構造としたことで、絶縁トランスより坑口側に、走行レールを経由する電流経路を遮断した避難場所を形成できる。
掘削後の孔の内側に設置されて地山を支える支保工を掘削進行方向に沿って所定の間隔を隔てて形成された支保工柱を連結部材で連結したことにより形成し、支保工柱と連結部材との連結部に絶縁物を設けた構造としたことで、絶縁トランスより坑口側に、支保工を経由する電流経路を遮断した避難場所を形成できる。
走行レール及び支保工を上述の構成とすることで、絶縁トランスより坑口側に、走行レール及び支保工を経由する電流経路を遮断した避難場所を形成できるので、感電の危険性をより少なくでき、また、掘削が進行するに伴って、絶縁トランスの後部に位置する走行レール及び支保工の絶縁構造(絶縁部)が坑口側より掘削進行方向側に移動していくので、切羽面から避難場所までの距離は変わらず、掘削が進行するほど避難場所までの距離が長くなるようなことがなくなるため、掘削が進行するほど避難場所までの距離が長くなって避難が面倒になるというようなことを少なくできる。
古い走行レールの後端部の単位レールを古い走行レールの先端部に移設することで新しい走行レールを形成することにより、掘削進行に伴って掘削進行方向に運転車及び電源部搭載車を移動できる走行レールを、少ない数の単位レールで構築でき、経済的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1〜図5は本発明の最良の形態を示し、図1はトンネル掘削装置、トンネル掘削装置周りの金属環境、及びその金属環境を絶縁したトンネル掘削装置の絶縁構造を示し、図2は走行レールを上方から見て示し、図3は走行レールの移設構築方法を示し、図4は支保工を坑口側から示し、図5は図4のA−A断面図による支保工の構造を示す。
【0007】
図1において、1は掘削中のトンネルの孔、2はトンネル掘削装置である。トンネル掘削装置2は、トンネル掘削対象部としての地山21の側面や切羽面3に掘削進行方向Xに延長する放電用孔4を形成するための穿孔機械5、放電用孔4内に挿入されて放電による衝撃波を発生させるための放電用電極6、放電用電極6に電線ケーブル7を介して8kV〜20kVの高電圧を印加する電源装置8、電線ケーブル7の巻取り巻出し装置9、電源装置8から放電用電極6に供給されて電源装置8に戻る電流が電源供給源である変電所100に流れることを防止するための絶縁トランス10、電源装置8と巻取り巻出し装置9と絶縁トランス10とを搭載する電源部搭載車11、電源部搭載車11を掘削進行方向Xに押したり坑口12側に牽引したりするための運転車13を備える。すなわち、トンネル掘削装置2は、放電用孔4を形成するための穿孔機械5と放電用電極6とを先頭に有し、穿孔機械5の後方には放電用電極6に電線ケーブル7を介して高電圧を供給する電源装置8を備え、電源装置8の後方に絶縁トランス10を備える。絶縁トランス10には変電所100からの三相200V、単相100Vの電源が電線ケーブル14を介して供給され、絶縁トランス10からの電源が電線ケーブル15を介して電源装置8に供給される。穿孔機械5には電線ケーブル16を介して駆動電源が供給される。すなわち、変電所100からの電気が供給されるドラムコンセント17に電線ケーブル14;16の電源プラグ14a;16aを接続することで、放電用電極6に通常8kV〜20kVのような高電圧を供給可能となり、穿孔機械5に駆動電源を供給可能となる。
【0008】
トンネル掘削装置周りの金属環境は、電源部搭載車11及び運転車13を移動させるための金属製の走行レール20、及び、掘削中のトンネルの孔1の内側に設けられて地山21を支える金属製の支保工22である。
【0009】
トンネル掘削装置の絶縁構造について説明する。まず、最初のトンネル掘削対象部となる地山21の側面からトンネルの掘削進行方向Xに延長する放電用孔4を穿孔機械5で形成する。そして、放電用孔4内に水などの電解液63と放電用電極6とを入れて放電させてトンネル掘削対象の地山21の岩盤を破砕する。この際、掘削進行方向Xとは反対方向となる穿孔機械5の後方における地面31に走行レール20を設置する。走行レール20は数m程度の単位レール25を複数本繋ぎ合わせて形成する。図2に示すように、単位レール25は2つのレール部材23とこれらレール部材23を平行に連結する連結部24とで形成される。単位レール25を繋ぎ合わせる部分の下には杭26などの固定材で木製の枕木27を地面23に固定し、単位レール25の端部28に設けられた取付フランジ29をねじ30などの固定材で枕木27に固定することで単位レール25を地面31に設置する。この際、繋ぎ合わされる単位レール25の端部28;28同士の間にFRP板やゴム板などの絶縁物32を挟んだ状態に設定してから単位レール25を枕木27に固定する。この単位レール25間に設けられた絶縁物32により、走行レール20の絶縁構造54が構築される。
【0010】
例えば、図3に示すように、電源部搭載車11が単位レール25を2本繋いだレールの上に載る長さであり、運転車13が1本の単位レール25上に載る長さであるとすれば、まず、実線のように3本の単位レール25を繋ぎ合わせて、前方の2つの単位レール25;25の上に電源部搭載車11を載せ、後方の1つの単位レール25の上に運転車13を載せる。その後、放電破砕による掘削の進行に伴い、想像線aのように前方に単位レール25を1つ繋ぎ合せることで、合計4つの単位レールによって走行レール20を構築する。走行レール20を構築した後に運転車13を運転して想像線矢示bのように電源部搭載車11を単位レール25の1つ分の長さだけ前方に移動させる。そして、最後尾の単位レール25を取り外し、この取り外した単位レール25を想像線矢示c及び想像線bのように次に前方に繋ぎ合せる単位レール25として使用する。すなわち、運転車13を運転して電源部搭載車11を1つの単位レール25のレールの長さ分だけ進行させる毎に最後尾の単位レール25を取り外して次の最先端の単位レール25として用いることにより、4つの単位レール25で電源部搭載車11を前方に移行させるための走行レール20を構築できるようになり、走行レール20を構築するために必要な単位レール25の数を少なくでき、経済的に有利となる。尚、走行レール20を構築する単位レール25の数は4つ以外でも良いことはもちろんである。すなわち、走行レール20の長さが、電源部搭載車11及び運転車13を掘削進行方向Xに移動可能な長さであり、掘削進行に伴って運転車13を掘削進行方向Xに移動した場合に、当該移動前の運転車13を搭載していた走行レール20の最後尾の単位レール25を取り外しておき、この取り外しておいた単位レール25を前方に移設し、次に運転車13を掘削進行方向Xに移動する場合の走行レール20の先頭部分として使用することにより、少ない数の単位レール25で走行レール20を構築でき、経済的に有利となる。換言すれば、古い走行レール20の後端部の単位レール25を古い走行レール20の先端部に移設することで新しい走行レール20を形成することにより、掘削進行に伴って掘削進行方向Xに運転車13及び電源部搭載車11を移動可能とする走行レール20を少ない数の単位レール25で構築でき、経済的に有利である。また、図示しないが、運転車13や電源部搭載車11の車輪33と走行レール20との係合状態は、例えば電車の車輪と電車レールとの係合状態と同様であり、運転車13や電源部搭載車11の車輪33が走行レール20上を回転することで運転車13や電源部搭載車11が走行レール20上を走行可能である。即ち、レール部材23の断面が例えばI形状であり、車輪33がI形状のレール部材23の上面を滑走する車輪部を備えるととともに脱輪防止部を備え、脱輪防止部が車輪部の内側に設けられた車輪部と同軸で大径の輪により形成されてI形状のレール部材23の上面の内側側面に対向して脱輪を防止する構造である。
【0011】
掘削した孔1の内側には地山21を支えるための支保工22が設けられる。支保工22は、図4;5に示すように、上部が湾曲形状に形成された2本の鋼支柱35の上端同士をボルトナットなどによる固定具35Aによって接合してアーチ状に形成された支保工柱36が、掘削進行方向Xに沿って所定の間隔を隔てて順次設けられ、これら支保工柱36が鋼製の連結パイプ37で互いに連結され、連結パイプ37で繋がれた支保工柱36と支保工柱36との間の外側に土留材38を設けてなる。支保工柱36の鋼支柱35はH形鋼やI形鋼のような鋼材よりなり、2つの板材40;40が平行に対向するように連結板41で連結された構成である。連結板41には連結孔42が形成され、連結孔42に連結パイプ37の端部のねじ部43が挿入され、連結板41とねじ部43とがナット44;45で締結される。この際、連結孔42内には連結板41と連結パイプ37とを絶縁するための絶縁筒50aが配置され、この絶縁筒50a内に連結パイプ37の端部のねじ部43が挿入される。また、ナット44;45と連結板41との間にも絶縁筒51が設けられ、この絶縁筒51内に連結パイプ37の端部のねじ部43が挿入される。そして、連結パイプ37のねじ部43にナット44;45を締結することで支保工柱36の連結板41と連結パイプ37とを絶縁筒50a;51;51による絶縁構造53によって絶縁状態に連結できる。すなわち、連結部材としての連結パイプ37と支保工柱36との連結部52に絶縁筒50a;51;51(絶縁物)が設けられた構造である。
【0012】
以上のようにして、図1に示すように、掘削進行に伴って掘削後の孔1の内側に支保工22を構築していき、そして、孔1内に走行レール20が構築されてきた場合に、支保工22の絶縁構造53と走行レール20の絶縁構造54とによる絶縁部55が形成され、この絶縁部55より坑口12側を、放電用電極6、電源装置8、電源部搭載車11の金属部、走行レール20を経由する電流経路の遮断された避難場所101とできる。従って、放電用孔4に対する放電用電極6の設定を終了した後に人が避難場所101に避難してから放電用電極6への放電を行うことで、感電の危険性を少なくできる。すなわち、掘削した孔1の絶縁トランス10より切羽側に位置するトンネル掘削装置周りの切羽側金属環境を形成する放電用電極6、電源装置8、電源部搭載車11の金属部、走行レール20、支保工22と、絶縁トランス10より坑口側に位置するトンネル掘削装置周りの坑口側金属環境を形成する運転車13、支保工22との間に絶縁部55を設けたことで、切羽側の走行レール20及び支保工22を経由する電流経路が絶縁部55で遮断される。つまり、絶縁部55によって、坑口側に切羽側金属環境と電気的に絶縁された避難場所101を形成したので、感電の危険性をより少なくできる。そして、掘削が進行するに伴って、絶縁部55は坑口12側より掘削進行方向X側に移動していくので、切羽面3から避難場所101までの距離は変わらず、掘削が進行するほど避難場所101までの距離が長くなるようなことがなくなる。よって、切羽面3から避難場所101までの距離は変わらないので、避難動作をコンスタントに行うことが可能となり、掘削が進行するほど避難場所までの距離が長くなって避難が面倒になるというようなことを少なくできる。避難場所101の地面31の上に図外のゴムシートなどの絶縁シートを敷いて、放電時に人が絶縁シートの上に避難するようにすれば、感電の危険性をより少なくでき、安全に作業を行える。
【0013】
尚、図1に示すように、放電用孔4内に充填したり、穿孔機械5による穿孔中において穿孔機械5の切削部の磨耗抑止用に切削部位に供給したりする水を導くための配水管56として例えばゴムホースなどの絶縁性ホースを使用したり、支保工22に電灯57を吊るすための番線58としてFRP製のものを用いれば、感電の危険性をより少なくできる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
放電用電極6としては、図6に示した同軸構造の放電用電極70、あるいは、ワイヤを切断して放電用ギャップを形成した図外の放電用電極、その他の構造の放電用電極を用いることができる。トンネル掘削装置2の絶縁構造を、支保工22の絶縁構造53のみとしたり、レール20の絶縁構造54のみとしても、感電の危険性を少なくできる。トンネル掘削装置周りの金属環境として、走行レール20、支保工22を例示したが、その他のトンネル掘削装置周りの金属環境にも本発明の絶縁構造を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】トンネル掘削装置、トンネル掘削装置周りの金属環境、及びその金属環境を絶縁したトンネル掘削装置の絶縁構造を示す図(最良の形態)。
【図2】走行レールを上方から見た図(最良の形態)。
【図3】走行レールの移設構築方法を示す図(最良の形態)。
【図4】支保工を坑口側から見た図(最良の形態)。
【図5】図4のA−A断面図(最良の形態)。
【図6】従来の放電破砕装置及び電極を示す図。
【符号の説明】
【0016】
1 孔、2 トンネル掘削装置、3 切羽面、4 放電用孔、5 穿孔機械、
6 放電用電極、8 電源装置、10 絶縁トランス、11 電源部搭載車、
12 坑口、13 運転車、20 走行レール(金属環境)、21 地山、
22 支保工、36 支保工柱、37 連結パイプ(連結部材)、
50a;51 絶縁筒(絶縁物)、52 連結部、100 変電所、
101 避難場所、X 掘削進行方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削対象部にトンネルの掘削進行方向に延長する放電用孔を形成し、放電用孔内に放電用電極を設けてこの放電用電極の放電部での放電により衝撃波を発生させ、この衝撃波でトンネル掘削対象部を破砕してトンネルを掘削していく方法に使用するトンネル掘削装置の絶縁構造であって、トンネル掘削装置が、先頭部にはトンネル掘削対象部に放電用孔を形成するための穿孔機械及び放電用電極を備え、放電用電極の後方には放電用電極に高電圧を印加する電源装置を備え、電源装置の近傍には電源装置より放電用電極に供給される電流が変電所に流れることを防止する絶縁トランスを備えるとともに、電源装置及び絶縁トランスを搭載する電源部搭載車と、電源部搭載車の後方に繋がれて電源部搭載車を掘削進行方向に移動させるための運転車とを備え、掘削した孔の絶縁トランスより切羽側に位置するトンネル掘削装置周りの切羽側金属環境と絶縁トランスより坑口側に位置するトンネル掘削装置周りの坑口側金属環境との間に絶縁物を設けることで坑口側に切羽側金属環境と電気的に絶縁された避難場所を設けたことを特徴とするトンネル掘削装置の絶縁構造。
【請求項2】
金属環境が電源搭載車及び運転車のための走行レールであり、走行レールが複数の単位レールにより形成され、複数の単位レールが単位レールの端部間に絶縁物を挟んで互いに接続されたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削装置の絶縁構造。
【請求項3】
金属環境が掘削後の孔の内側に設置されて地山を支える支保工であり、支保工が掘削進行方向に沿って所定の間隔を隔てて形成された支保工柱を連結部材で連結したことにより形成され、支保工柱と連結部材との連結部に絶縁物が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削装置の絶縁構造。
【請求項4】
金属環境が電源搭載車及び運転車のための走行レール及び掘削後の孔の内側に設置されて地山を支える支保工であり、走行レールが複数の単位レールにより形成され、複数の単位レールが単位レールの端部間に絶縁物を挟んで互いに接続され、支保工が掘削進行方向に沿って所定の間隔を隔てて形成された支保工柱を連結部材で連結したことにより形成され、支保工柱と連結部材との連結部に絶縁物が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削装置の絶縁構造。
【請求項5】
走行レールの長さは電源部搭載車及び運転車を掘削進行方向に移動可能な長さであり、掘削進行に伴って運転車を掘削進行方向に移動した場合に、当該移動前の運転車を搭載していた単位レールを取り外しておき、この取り外しておいた単位レールを、次に運転車を掘削進行方向に移動する場合の走行レールの先頭部分として使用したことを特徴とする請求項2又は請求項4に記載のトンネル掘削装置の絶縁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−154510(P2007−154510A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350939(P2005−350939)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(502281127)株式会社ファテック (83)
【Fターム(参考)】