説明

トンネル掘進機

【課題】取りこぼしずりの発生を極力抑え、機体拘束による推進不能のリスクを可及的に小さくすることのできるトンネル掘進機を提供する。
【解決手段】掘進機本体の胴部に胴外周部へ送水自在とする2箇所の前胴送水口15が配設されていて、前胴送水口15は後方に向けて送水し、後胴6の下部に2箇所の後胴第1送水口16及び2箇所の後胴第2送水口17がそれぞれ配設されるとともに、ずりを胴内へ取り込む取り込み口を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中を掘削し推進するトンネル掘進機に関し、特に、巨礫層や岩盤層での曲線施工を行うトンネル掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘進機としてのシールド掘進機は、その最前端に回転自在に取着されているカッタヘッドを回転させて地山を掘削しながら推進する。巨礫層や岩盤層などの硬い土質を掘削するシールド掘進機においては、図8(a)に示すように、カッタヘッド1には、切羽面に押し付けられながら転動して地山の掘削を行うディスクカッタ3と、これにより生じた掘削ずりを掻き取るスクレーパカッタ2とを有している。掘削時には、カッタヘッド1が回転してディスクカッタ3により巨礫や岩盤を掘削し、スクレーパカッタ2により掘削ずりをスリット孔4に取り込む。図8(b)に示すシールド掘進機の最前部の側面図において、カッタヘッド1が回転するときのディスクカッタ3の外形の包絡線を2点鎖線で示す。この包絡線の外径を以降、直進時掘削外径Ddと呼ぶ。通常、ディスクカッタ3の方がスクレーパカッタ2よりも外方に張り出して装着されている。ディスクカッタ3により掘削された地山のずりは、大部分がカッタヘッド1に設けてある図8(a)に示すスリット孔4からシールド掘進機の内部に取り込まれるが、残りの一部はディスクカッタ3の包絡線とカッタヘッド1の円周面との隙間を通って後方のスキンプレート8と地山間に残される。スキンプレート8は、カッタヘッド1が取り付けられている前胴5の外殻を構成する部材である。
【0003】
曲線施工時には、図9(a)に示すように、シールド掘進機の前胴5は後胴6に対して摺動部7で摺動して屈曲した状態を保持したまま移動し、シールド掘進機の旋回内側及び旋回外側は、内側曲線Pi及び外側曲線Poで示す軌跡を描く。即ち、内側曲線Pi及び外側曲線Poで囲まれる空間は、シールド掘進機が移動するための最低限必要な空間を示している。曲線施工時にシールド掘進機が通過するための空間を確保するためには、内側曲線Piのカッタヘッド1近傍(斜線部で示す)を予め多めに掘削する必要がある。図9(b)に斜線部の詳細を示す。直進時掘削外径Ddからその径方向外方への延長線Rと内側曲線Piとの交点Qと、前胴5の外径であるシールド外径Dsとの距離を多めに掘削する最低限必要な余堀量δとする。シールド掘進機が直線区間から曲線区間にさしかかったら、カッタヘッド1に装着されているディスクカッタ3及びスクレーパカッタ2の位置をずらして、掘削外径及び掻き取り外径を大きくすることによって、曲線区間の施工を行っている。
【0004】
ところで、掘削外径はシールド外径に対し大きめであるため、スクレーパカッタ2によってスリット孔4内に掻き取りきれなかった掘削ずり(いわゆる取りこぼしずり)が発生する。取りこぼしずりは、スキンプレート8と地山との隙間に侵入して堆積し、これによる摩擦抵抗の増大により、必要推進力の増大を引き起こすこととなり、地山内で掘進機が拘束され推進不能となる状況さえ引き起こすこととなる。近年、巨礫層・岩盤層等の難地盤においても急曲線施工の要求が増えてきているが、急な曲線となるほど余堀量δを多くとる必要があり、余堀量δが増えるほど取りこぼしずりによる推進不能のリスクは増大することとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、取りこぼしずりの発生を極力抑え、機体拘束による推進不能のリスクを可及的に小さくすることのできるトンネル掘進機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明によるトンネル掘進機は、
トンネル掘進機において、
掘進機本体の胴部に胴外周部へ送水自在とされた送水口を設けるとともに、胴円周部にずりを胴内へ取り込む取り込み口を設けた
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、胴部の内部から胴外周部へ送水自在とする送水口と、胴円周部にずりを取り込む取り込み口とが設けられており、所定の最大推進力になったときに、作業員は、送水口から胴外周部へ送水し、胴外周部に堆積しているずりを流し易くして取り込み口から胴内部に取り込む。これにより、トンネル掘進機と地山との間に取りこぼしずりが堆積しても、送水によりこれらを清掃して再び十分な空隙を確保することができ、トンネル掘進機の掘削不能を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の全体構成図
【図2】本実施形態における前胴送水口の位置を示す詳細図
【図3】本実施形態における後胴送水口の位置を示す詳細図
【図4】本実施形態における取り込み口の位置を示す詳細図
【図5】本実施形態における取り込み口の詳細図
【図6】本実施形態におけるずり洗浄の説明図
【図7】本実施形態における摺動部洗浄の詳細図
【図8】シールド掘進機のカッタヘッドの説明図
【図9】シールド掘進機の曲線施工時の余堀量の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明によるトンネル掘進機の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以降の図に示す構成要素が、図8,9で説明した構成要素と同一の場合には同一符号を付して説明する。
【0010】
本実施形態は、シールド掘進機の内部から外部に送水し、堆積しているずりを流れ易くしてシールド掘進機内に取り込もうとするものである。図1は、シールド掘進機の側面の透視図であり、その断面AAを図2に示す。前胴5の下部に機内から機外に送水自在とする2個所の前胴送水口15が配設されていて、前胴送水口15は、後方に向けて送水する。また、図1の断面BBを示す図3によると、後胴6の下部に2個所の後胴第1送水口16及び2個所の後胴第2送水口17がそれぞれ配設されている。後胴第1送水口16及び後胴第2送水口17は、前方及び後方に向けてそれぞれ送水自在となっている。図1の断面CCを示す図4は、ずりを機内に取り込む取り込み口18を示す。作業員が開閉する取り込み口18は、前胴5及び後胴6の下部に2個所ずつ合計4個所設けてある。なお、図5は、図4の断面DDで取り込み口18の詳細を示す。取り込み口18は、円形の開閉板19、ボルト20及び水漏れを防止するパッキン21を有し、作業員は、円形の開閉板19を複数のボルト20により前胴5又は後胴6に脱着して取り込み口18を開閉する。なお、パッキン21の代わりにガスケット又はOリング等で水漏れを防止するようにしてもよい。
【0011】
次に、図6,7により、本実施形態の作用及び効果を説明する。シールド掘進機の推進力が所定値よりも大きくなったときに、作業員は、図6に示すように、前胴送水口15,15及び後胴第2送水口17,17から機外に送水する。そして、取り込み口18のボルト20を外して開閉板19を開けてずりを機内に取り込む。ずりが侵入して堆積する前胴5の中間位置から後胴6の後方にかけて、図中の点線のように水と一緒にずりが流れるので、ずりがスキンプレート8と地山の間に堆積しても、これを容易に取り除くことができる。図7は、前胴5が後胴6に対して屈曲するときの摺動部7の洗浄状態を示す。後胴第1送水口16,16から前向きに送水し、摺動部7を洗浄した洗浄水は、前胴5の取り込み口18から機内に取り込まれる。これにより、摺動部7は常に清浄に保持されるので故障の少ないシールド掘進機が得られる。
【0012】
なお、本実施形態においては、ずりは胴部の下方に溜まるという性質があるために前胴送水口15、後胴第1送水口16及び後胴第2送水口17を胴部の下部に設けたが、地山の性質によっては胴部の中央部又は上部に送水口を設けても何ら差し支えない。また、本実施形態では、推進力は所定値よりも大きくなったら、作業員が送水し取り込み口からずりを取り込んでいるが、これらを自動的に行うようにしてもよい。
【0013】
以上説明したように、本発明は、ずりのスリット孔への取り込み効率を向上させると共に、ずりのトンネル掘進機の後方への侵入量を少なくする装置の発明である。即ち、掘進機本体の胴部の下部に胴外周部へ送水する送水口と、胴外周部に侵入したずりの胴内への取り込み口とを設け、胴外周部に送水してずりを流れ易くし、取り込み口から胴内部にずりを取り込む。これにより、トンネル掘進機と地山間におけるずりの堆積量が少ないので、トンネル掘進機と地山間の大きな摩擦抵抗力による掘進不能を防止できる。
【符号の説明】
【0014】
1…カッタヘッド、2…スクレーパカッタ、3…ディスクカッタ、4…スリット孔、5…前胴、6…後胴、7…摺動部、8…スキンプレート、15…前胴送水口、16…後胴第1送水口、17…後胴第2送水口、18…取り込み口、19…開閉板、20…ボルト、21…パッキン、Dd…直進時掘削外径、Pi…内側曲線、Po…外側曲線、Ds…シールド外径、δ…余堀量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘進機において、
掘進機本体の胴部に胴外周部へ送水自在とされた送水口を設けるとともに、胴円周部にずりを胴内へ取り込む取り込み口を設けた
ことを特徴とするトンネル掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−167792(P2009−167792A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63323(P2009−63323)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【分割の表示】特願2000−173482(P2000−173482)の分割
【原出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】