説明

トンネル支保工誘導建て込み方法

【課題】支保工を円滑に所定の位置に誘導できるようにし、支保工建て込みの作業効率の向上を図りつつ、支保工建て込みの位置精度の向上を図るための方法を提供する。
【解決手段】支保工4L、4Rをエレクタ装置1の把持部により把持してトンネルの切羽5近くに誘導し建て込むトンネル支保工誘導建て込み方法であって、エレクタ装置1の把持部にエレクタターゲットE1、E2を取り付けると共に、支保工4L、4Rの上端部と下端部に支保工ターゲットS1〜S4を取り付け、エレクタターゲットE1、E2の位置を計測してエレクタターゲットE1、E2の位置に基づきエレクタ装置1を制御して支保工4L、4Rを切羽5近くに誘導した後、支保工ターゲットS1〜S4の位置を計測して支保工4L、4Rの上端部または下端部の支保工ターゲットS1〜S4の位置に基づきエレクタ装置1を制御して支保工4L、4Rを設計位置に誘導し建て込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支保工をエレクタ装置の把持部により把持してトンネルの切羽近くに誘導し建て込むトンネル支保工誘導建て込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NATM(New Austrian Tunneling Method)は、地山の持つ支保能力、強度を有効に利用してトンネルの安定を保つという考え方のもとに、吹き付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工等の支保材を適宜に用いて、地山と一体化したトンネル構造物を建設する工法である。
【0003】
トンネル断面の崩落を防ぎ、断面を安定に支保する支保工は、半馬蹄形に分割された一対のH鋼からなり、その建て込み作業が切羽近くで行われる。トンネル支保工建て込み作業では、支保工を把持して切羽に向けて移動させるエレクター装置を備えた作業車が用いられる。
【0004】
従来、作業車に一対のターゲットを設置し座標既知地点からレーザ測距機によりそれぞれ視準して、ターゲット座標値を求め、支保工の設置座標値に設置する設置方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このトンネル支保工の設置方法では、ターゲット座標値と支保工の設置座標値とに基づきエレクター装置の移動量を設定することにより一対の支保工を中央部で相互に連結するように切羽近くに設置する。この方法によれば、支保工の正確な建て込み、危険な作業の排除、重機の移動回数の低減、施工能率と安全性の向上を図れるとされている。
【0005】
また、支保工の左、右および上中央の3箇所にターゲットを取り付け、トータルステーションによりターゲットを自動追尾して、エレクター装置により支保工を設計値に調整する建て込み方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このトンネル支保工の建て込み方法では、3箇所のターゲットのそれぞれについてトンネル中心からの距離を測量して予め入力したターゲットの設置高さ分を差し引いて支保工の設計値と比較してその誤差をモニタに表示する。このモニタの表示を見ながら、エレクター装置の操縦者が設定値以下の誤差になるようにハンドを動かし支保工の位置を調整する。この方法によれば、支保工が傾いたりローリングしても、所定のトンネル内空断面を確保でき、トンネル中心からの距離(半径)が全周にわたり設計通りになり、誤差のない支保工を施工できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3381606号公報
【特許文献2】特許第4559346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のトンネル支保工の設置方法では、エレクター装置が支保工を毎回同じ条件で把持することが難しくムラがあり、さらに支保工の把持状態にずれを生じることがあり、ターゲットの位置と支保工の実際の位置との位置関係が固定しない。そのため、ターゲットの位置が支保工ごとに大きく異なったり、途中でずれてしまい、レーザ測距機により測量したターゲット座標値と支保工の実際の位置との対応がとれず、支保工の設置位置が大きくずれるなどの問題がある。
【0008】
また、上記従来の建て込み方法は、上記トンネル支保工の設置方法の問題を解決するものとして提案されたものであるが、左右の支保工を組み立ててアーチ形の支保工とし支保工の左、右および上中央の3箇所にターゲットを取り付け、左右のハンドで支保工を保持して3箇所のターゲットを自動追尾するので、測量、演算の負荷が大きく、支保工の位置の調整にも時間がかかるなどの問題がある。
【0009】
すなわち、3箇所のターゲットを自動追尾してそれぞれの測量を行って演算を行い、設計値との誤差を求めるので、1、2箇所のターゲットを自動追尾するよりも演算処理の負担が大きくなる。さらに、アーチ形に組み立てた支保工をエレクター装置の左右のハンドで把持し、操縦者は、モニタに表示された誤差を見ながら、誤差が設定値以下になるように左右のハンドを操作しなければならず、操縦者の負担も大きい。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するものであって、支保工を円滑に所定の位置に誘導できるようにし、支保工建て込みの作業効率の向上を図りつつ、支保工建て込みの位置精度の向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために本発明は、支保工をエレクタ装置の把持部により把持してトンネルの切羽近くに誘導し建て込むトンネル支保工誘導建て込み方法であって、前記把持部にエレクタターゲットを取り付けると共に、前記支保工の上端部と下端部に支保工ターゲットを取り付け、前記エレクタターゲットの位置を計測して前記エレクタターゲットの位置に基づき前記エレクタ装置を制御して前記支保工を前記切羽近くに概略誘導した後、前記支保工ターゲットの位置を計測して前記支保工ターゲットの位置に基づき前記エレクタ装置を制御して前記支保工を設計位置に詳細誘導し建て込むことを特徴とする。
【0012】
さらに、前記支保工の仮置き場で前記支保工の上端部と下端部に支保工ターゲットを取り付けたとき、前記支保工のセンターライン、上端、下端からのオフセット量を管理コンピュータに入力することを特徴とし、前作業として、前記エレクタ装置の把持部に前記支保工を把持した状態における前記エレクタターゲットおよび前記支保工ターゲットの位置を計測して前記支保工との位置関係を求めた後、前記概略誘導することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支保工の上端部、下端部に支保工ターゲットを取り付けると共に、支保工を把持し誘導するエレクタ装置の把持部にもエレクタターゲットを取り付けて、支保工をエレクタターゲットの位置に基づき建て込む切羽近くまで概略誘導するので、支保工を切羽近くまで速やかに誘導することができる。また、トータルステーションにより2つのエレクタターゲットを計測して座標を求め、誘導を行うので、管理コンピュータによる演算処理の負荷を軽減し、誘導作業も軽減することができる。さらに、切羽近くまで概略誘導した支保工を支保工ターゲットの位置に基づき設計位置に詳細誘導するので、設計位置への誘導を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るトンネル支保工誘導建て込み方法の実施形態を説明する図である。
【図2】本発明に係るトンネル支保工誘導建て込み作業全体の手順を説明する図である。
【図3】支保工誘導建て込み作業に先立つ前作業の手順を説明する図である。
【図4】支保工誘導建て込み作業の詳細な手順を説明する図である。
【図5】支保工ターゲットのオフセット量とその入力画面の例を示す図である。
【図6】支保工誘導建て込み作業時のターゲット位置計測画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係るトンネル支保工誘導建て込み方法の実施形態を説明する図である。図中、1はエレクタ装置、2−1、2−2はトータルステーション、3−1、3−2は基準ターゲット、4L、4Rは支保工、5は切羽、11はエレクタ台車、12L、12Rはブーム、S1〜S4は支保工ターゲット、E1、E2はエレクタターゲットを示す。
【0016】
図1において、エレクタ装置1は、自走するエレクタ台車11にブーム12L、12Rを備えたものである。ブーム12L、12Rは、それぞれ伸縮機構、傾動機構、揺動機構、回動機構を有するブームであって、先端に把持部を支持している。ブーム12Lに支持された把持部は左支保工4Lを把持し、ブーム12Rに支持された把持部は右支保工4Rを把持するものであり、それぞれの把持部にはエレクタターゲットE1、E2が取り付けられる。このエレクタ装置1において、エレクタ台車11の走行、ブーム12L、12Rの伸縮、傾動、揺動、回動を制御して、左右の支保工4L、4Rを設計位置に誘導し建て込む。
【0017】
トータルステーション2−1、2−2は、レーザ測距、測角によりプリズムや反射シートなどのターゲットを取り付けた位置の座標測定を行うものであり、レーザ照射、視準、視準の自動追尾、自動整準補正などの機能を備える。トータルステーション2−1は、切羽5の後方、支保工4L、4Rの建て込み位置よりもトンネルの坑口側の位置に、例えば壁面に固定設置される。トータルステーション2−2は、切羽5の後方、支保工4L、4Rの建て込み位置よりもトンネルの坑口側の位置に、例えば三脚などの支持部材の上に適宜移動可能に設置される。
【0018】
基準ターゲット3−1、3−2は、トンネルの坑口側の既知座標位置に設置される。トータルステーション2−1、2−2は、これら2点の基準ターゲット3−1、3−2が視準可能な位置に設置される。トータルステーション2−1、2−2の自己設置位置の3次元座標(x,y,z)は、これら2点の基準ターゲット3−1、3−2を視準して測距、測角データを取得し、後方交会法により求められる。
【0019】
支保工4L、4Rは、馬蹄形(円弧状、アーチ状)のH鋼が分割された一対の鋼材であり、切羽5の近傍に誘導し中央上部で相互に連結して設計位置に建て込み設置される。支保工4Lは、切羽5に向かって左側の分割された鋼材であって、設計位置に誘導し建て込むため、位置を計測する支保工ターゲットS1が下端部に、支保工ターゲットS2が上端部にそれぞれ取り付けられる。同様に支保工4Rは、切羽5に向かって右側の分割された鋼材であって、設計位置に誘導し建て込むため、位置を計測する支保工ターゲットS4が下端部に、支保工ターゲットS3が上端部にそれぞれ取り付けられる。
【0020】
支保工ターゲットS1〜S4は、トータルステーション2−1、2−2により支保工4L、4Rの位置を計測するためそれぞれの上端部と下端部に取り付ける、例えばマグネット付プリズムである。マグネット付プリズムを用いた支保工ターゲットS1〜S4は、底部を磁石で構成することにより、鋼材の支保工4L、4Rに吸着し簡便に着脱が可能になっている。また、エレクタターゲットE1、E2は、ブーム12L、12Rに支持された把持部に取り付ける、例えばプリズムである。
【0021】
エレクタ装置1およびトータルステーション2−1、2−2の制御と測距、測角データの演算、演算結果の表示を行う管理コンピュータは、図示しないが、エレクタ装置1のエレクタ台車11の操作台やエレクタ操作室に配置される。管理コンピュータには、トンネ
ル線形情報やトンネル断面情報その他の設計情報に関するデータが格納され、それらの情報、エレクタ装置1およびトータルステーション2−1、2−2の制御、計測情報に基づき作業に必要な情報が演算され、モニタに表示される。管理コンピュータによるエレクタ装置1およびトータルステーション2−1、2−2の制御は、それぞれに無線装置を内臓して無線通信機能を持たせることにより遠隔操作を可能にする。機器間の相互の通信は勿論、無線または有線のいずれであってもよい。
【0022】
本実施形態のトンネル支保工誘導建て込み方法においては、例えば仮置き場に仮置きされている状態の支保工4L、4Rに対して、誘導建て込み作業に先立って支保工ターゲットS1〜S4が取り付けられる。その支保工4L、4Rが、エレクタ装置1のブーム12L、12Rに支持された把持部により把持され、切羽5の近傍まで概略誘導され、さらに設計位置に詳細誘導され建て込まれる。
【0023】
また、トータルステーション2−1、2−2においては、基準ターゲット3−1、3−2を計測して管理コンピュータにより演算して、自己の設置位置の3次元座標(x,y,z)を求める。その後、支保工の仮置き場においてエレクタ装置1のブーム12L、12Rに支持された把持部により支保工4L、4Rを把持すると、支保工ターゲットS1〜S4、エレクタターゲットE1、E2を計測して管理コンピュータにより演算し、支保工ターゲットS1〜S4、エレクタターゲットE1、E2と支保工4L、4Rの位置関係を求める。
【0024】
これらの位置関係に基づきエレクタターゲットE1、E2の位置につき目標位置を設定して、トータルステーション2−1、2−2の視準をエレクタターゲットE1、E2にロックする。このロックにより、トータルステーション2−1、2−2がエレクタターゲットE1、E2を視準、自動追尾して、それらの座標を求め、エレクタターゲットE1、E2の位置を目標位置まで誘導することにより支保工4L、4Rの概略誘導を行う。
【0025】
支保工4L、4RをエレクタターゲットE1、E2に基づき概略誘導すると、支保工4L、4Rの上端部の支保工ターゲットS2、S3または下端部の支保工ターゲットS1、S4につき目標位置を設定する。さらに、トータルステーション2−1、2−2の視準をを支保工4L、4Rの上端部の支保工ターゲットS2、S3または下端部の支保工ターゲットS1、S4にロックする。また、概略誘導によりエレクタ、エレクタターゲットE1、E2は目標位置にあるので、エレクタの位置を固定にする。
【0026】
そして、トータルステーション2−1、2−2により支保工4L、4Rの上端部の支保工ターゲットS2、S3または下端部の支保工ターゲットS1、S4を視準、自動追尾して、それらの座標を求め、支保工4L、4Rの上端部の支保工ターゲットS2、S3または下端部の支保工ターゲットS1、S4の位置を目標位置まで誘導することにより支保工4L、4Rの詳細誘導を行う。このとき、エレクタは、その位置が固定されているので、支保工4L、4Rはエレクタの位置を中心に回転操作される。
【0027】
このようにエレクタターゲットE1、E2を視準、自動追尾して概略誘導を行い、続けて支保工4L、4Rの上端部の支保工ターゲットS2、S3または下端部の支保工ターゲットS1、S4を視準、自動追尾して詳細誘導を行うことにより支保工4L、4Rを設計位置に誘導して建て込む。
【0028】
本実施形態によれば、まず、エレクタターゲットE1、E2による支保工4L、4Rの概略誘導の目標位置を設定し、2つのエレクタターゲットE1、E2を視準、自動追尾してそれらの座標に基づき概略誘導する。したがって、トータルステーション2−1、2−2により座標計測を行う処理負担を軽減して迅速に効率よく設計位置近傍まで支保工4L
、4Rを誘導することができる。
【0029】
次に、目標位置の設定をエレクタターゲットE1、E2に対する概略誘導の目標位置から支保工ターゲットS2、S3または支保工ターゲットS1、S4に対する詳細誘導の目標位置に切り替え、支保工4L、4Rの上端部の支保工ターゲットS2、S3または下端部の支保工ターゲットS1、S4を視準、自動追尾してそれらの座標に基づき支保工4L、4Rを設計位置に詳細誘導する。したがって、設計位置に精度よく支保工4L、4Rを誘導し建て込むことができ、作業効率を高めつつ、作業精度を高めることができる。
【0030】
さらに、具体的な作業手順により本実施形態のトンネル支保工誘導建て込み方法を説明する。図2は本発明に係るトンネル支保工誘導建て込み作業全体の手順を説明する図、図3は支保工誘導建て込み作業に先立つ前作業の手順を説明する図、図4は支保工誘導建て込み作業の詳細な手順を説明する図、図5は支保工ターゲットのオフセット量とその入力画面の例を示す図、図6は支保工誘導建て込み作業時のターゲット位置計測画面の例を示す図である。
【0031】
トンネル支保工誘導建て込み作業全体の手順は、例えば図2に示すように仮置き場で誘導建て込み対象の支保工4L、4Rに対するターゲットの取り付け、オフセット量その他誘導に必要な設定データの入力などの前作業を行い(ステップst11)、しかる後、支保工4L、4Rをエレクタ装置1のブーム12L、12Rに支持された把持部により把持して仮置き場から概略誘導、詳細誘導の切り替えを行って切羽5の近傍の設計位置までの誘導建て込み作業を行う(ステップst12)。
【0032】
前作業は、誘導建て込み対象とする左右の支保工4L、4Rの上端部と下端部のそれぞれに支保工ターゲットS1〜S4を取り付ける毎に行う作業である。なお、支保工4L、4Rの形状や誘導作業の際に目標となる支保工4L、4Rの設計位置、その他の各支保工4L、4Rの誘導建て込みに共通する情報は、基本データとして前作業の実行に先立って既に管理コンピュータに入力されている。
【0033】
ステップst11の前作業の具体的な手順では、例えば図3に示すように仮置き場で誘導建て込み対象とする左右の支保工4L、4Rの上端部と下端部のそれぞれに支保工ターゲットS1〜S4を取り付ける(ステップst21)。そして、ターゲット取り付け位置の位置出しをしてオフセット量を入力する(ステップst22)。さらに、上げ越し、広げ越し、サーチ範囲などの初期設定値を入力する(ステップst23)。それらの入力画面の例を示したのが図5であり、支保工のセンターラインCLからターゲットまでの寸法A、C、端部からの寸法B、上げ越し量、広げ越し量、サーチ範囲を入力した画面の例である。
【0034】
ステップst12の誘導建て込み作業の具体的な手順では、例えば図4に示すようにエレクタ装置1のブーム12L、12Rに支持された把持部により支保工4L、4Rを把持して(ステップst31)、把持状態でのエレクタターゲットE1、E2、支保工ターゲットS1〜S4をトータルステーション2−1、2−2により計測してそれぞれの位置座標を求める(ステップst32)。さらに、求めたエレクタターゲットE1、E2、支保工ターゲットS1〜S4の位置関係とオフセット量に基づき支保工4L、4Rの誘導建て込み設計位置におけるエレクタターゲットE1、E2、支保工ターゲットS1〜S4の位置を概略誘導、詳細誘導を行うときの目標位置として求める(ステップst33)。
【0035】
エレクタ装置1のブーム12L、12Rに支持された把持部により左右の支保工4L、4Rを把持したときの状態は、いつも同じではなく把持ムラがあり把持毎に違う。そこで、本実施形態では、トータルステーション2−1、2−2により計測し管理コンピュータ
によりエレクタターゲットE1、E2、支保工ターゲットS1〜S4、支保工4L、4Rの位置関係を演算処理している。なお、先に述べたように支保工4L、4Rのセンターライン、上端、下端と支保工ターゲットS1〜S4との位置関係(オフセット量)は前処理作業により入力されている。
【0036】
次に、ステップst33により求めたエレクタターゲットE1、E2の位置を目標位置として設定し(ステップst34)、支保工4L、4Rの概略誘導としてエレクタターゲットE1、E2の位置を目標位置に誘導する(ステップst35、st36)。この概略誘導では、支保工ターゲットS1〜S4の位置、支保工4L、4Rの把持姿勢に関係なく、これらを無視して、エレクタターゲットE1、E2の位置が目標位置にくるように把持部の位置が移動操作される。
【0037】
しかる後、エレクタの位置を固定にして、ステップst33により求めた下端部の支保工ターゲットS1、S4の位置を目標位置として設定し(ステップst37)、支保工4L、4Rの下端部の詳細誘導として、エレクタの位置を固定するモードで、下端部の支保工ターゲットS1、S4の位置を目標位置に誘導する(ステップst38、st39)。この詳細誘導では、エレクタの位置を支点として、下端部の支保工ターゲットS1、S4の位置が目標位置にくるように支保工4L、4Rが回転操作される。
【0038】
この支保工4L、4Rの下端が設計位置に詳細誘導された状態で、まず、支保工4L、4Rの下端部にコンクリートを吹き付けて下端部を固定する(ステップst40)。そして、ステップst33により求めた上端部の支保工ターゲットS2、S3の位置を目標位置に設定して(ステップst41)、上端部の支保工ターゲットS2、S3の位置が目標位置にあるか否かを判定する(ステップst42)。
【0039】
ステップst42による判定の結果、上端部の支保工ターゲットS2、S3の位置が目標位置にあるときは、4L、4Rの誘導作業を終了する。ステップst38、st39により、下端部の支保工ターゲットS1、S4の位置を目標位置に誘導すると、通常は、先に概略誘導によりエレクタの位置が目標位置に誘導された固定されているので、もう一方の上端部の支保工ターゲットS3、S4の位置もその目標位置に誘導される。
【0040】
しかし、上端部の支保工ターゲットS2、S3の位置に目標位置からのずれが生じてしまったときは、ステップst42による判定の結果、さらに、支保工4L、4Rの上端部の詳細誘導として、エレクタの位置の固定を解除し、上端部の支保工ターゲットS2、S3の位置を目標位置に誘導して(ステップst43、st44)、4L、4Rの誘導作業を終了する。
【0041】
概略誘導、詳細誘導では、トータルステーション2−1、2−2によりエレクタターゲットE1、E2、支保工ターゲットS1〜S4の計測を行い管理コンピュータにより演算したそれぞれの位置と目標位置との差、支保工4L、4Rの位置と設計位置との差を適宜モニタに表示する。トータルステーション2−1、2−2によりエレクタターゲットE1、E2、支保工ターゲットS1〜S4の計測を行い管理コンピュータにより演算してそれぞれのデータを表示する位置計測表示画面の例を示したのが図6である。
【0042】
本実施形態によれば、まず、トンネル線形情報やトンネル断面情報その他の設計情報に関するデータに加え、支保工4L、4Rの上端部、下端部に支保工ターゲットS1〜S4を取り付けて、支保工4L、4Rのセンターライン、上端、下端からのオフセット量が管理コンピュータに入力される。
【0043】
さらに、エレクタ装置1のブーム12L、12Rに支持された把持部により支保工4L
、4Rを把持した状態でトータルステーション2−1、2−2により支保工ターゲットS1〜S4、エレクタターゲットE1、E2を計測しコンピュータにより演算処理して、支保工4L、4R、支保工ターゲットS1〜S4、エレクタターゲットE1、E2の位置関係の情報が求められる。
【0044】
これらの情報を利用して、概略誘導によりエレクタターゲットE1、E2の位置に基づきエレクタ装置1を制御して仮置き場から切羽5の近傍の目標位置まで支保工4L、4Rを誘導するので、管理コンピュータによる演算処理の負荷を軽減し、それぞれの支保工4L、4Rに対してエレクタターゲットE1、E2の位置に基づき操作することで誘導作業も軽減することができる。
【0045】
そして、詳細誘導により目標位置に誘導したエレクタを固定にして支保工4L、4Rの下端部の支保工ターゲットS1、S4の位置に基づきエレクタ装置1を制御して設計位置に支保工4L、4Rを誘導し建て込みを行うので、作業を単純化して支保工4L、4Rを設計位置へ精度よく誘導することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施形態では、エレクタターゲットE1、E2の位置を概略誘導した後、下端部の支保工ターゲットS1、S4の位置を詳細誘導した後、さらに上端部の支保工ターゲットS2、S3の位置を目標位置にあるか否かの確認を行ったが、高い制御精度で詳細誘導ができるエレクタ装置1である場合には、ステップst41以降の作業を省くこともできる。この場合には、上端部の支保工ターゲットS2、S3の位置に代えて下端部の支保工ターゲットS1、S4の位置を詳細誘導してもよい。また、エレクタ装置1のブーム12L、12Rに支持された把持部による把持毎に支保工4L、4Rの把持状態が違う点に鑑み、その把持状態でのエレクタターゲットE1、E2、支保工ターゲットS1〜S4の位置関係に基づき概略誘導における目標位置を求めた(ステップst33)。しかし、把持ムラを許容する値により支保工4L、4Rの設計位置に基づき概略誘導における目標位置を設定して、基本データと共に前作業の実行に先立って入力しておいてもよい。また、トータルステーション2−1は、壁面に固定配置され、トータルステーション2−2は、移動可能に配置されているが、それらは移動可能な配置または固定配置のいずれの配置であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…エレクタ装置、2−1、2−2…トータルステーション、3−1、3−2…基準ターゲット、4L、4R…支保工、5…切羽、11…エレクタ台車、12L、12R…ブーム、S1〜S4…支保工ターゲット、E1、E2…エレクタターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支保工をエレクタ装置の把持部により把持してトンネルの切羽近くに誘導し建て込むトンネル支保工誘導建て込み方法であって、前記把持部にエレクタターゲットを取り付けると共に、前記支保工の上端部と下端部に支保工ターゲットを取り付け、前記エレクタターゲットの位置を計測して前記エレクタターゲットの位置に基づき前記エレクタ装置を制御して前記支保工を前記切羽近くに概略誘導した後、前記支保工ターゲットの位置を計測して前記支保工の上端部または下端部の支保工ターゲットの位置に基づき前記エレクタ装置を制御して前記支保工を設計位置に詳細誘導し建て込むことを特徴とするトンネル支保工誘導建て込み方法。
【請求項2】
前記支保工の仮置き場で前記支保工の上端部と下端部に支保工ターゲットを取り付けたとき、前記支保工のセンターライン、上端、下端からのオフセット量を管理コンピュータに入力することを特徴とする請求項1に記載のトンネル支保工誘導建て込み方法。
【請求項3】
前作業として、前記エレクタ装置の把持部に前記支保工を把持した状態における前記エレクタターゲットおよび前記支保工ターゲットの位置を計測して前記支保工との位置関係を求めた後、前記概略誘導することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のトンネル支保工誘導建て込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−197559(P2012−197559A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60729(P2011−60729)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(599098127)株式会社ソーキ (28)
【出願人】(000237813)富士物産株式会社 (2)
【Fターム(参考)】