説明

トンネル用セグメントの止水構造およびトンネル用セグメント

【課題】セグメント本体部に止水溝を形成する必要がなく、かつ、良好な止水性能を安定して得ることができる、トンネル用セグメントの止水構造およびトンネル用セグメントを提供する。
【解決手段】トンネル用セグメント10の連結の際に向かい合う軸方向接合面12Eのうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材20がトンネルの周方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材20を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材20が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材22が、該止水用シール材20が配設された位置と対応して、トンネルの周方向の端から端まで配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法等によりトンネルを構築する際に使用されるトンネル用セグメントの止水構造およびトンネル用セグメントに関し、特に、セグメント本体部である軸方向継手壁および周方向継手壁に止水溝を形成する必要のないトンネル用セグメントの止水構造およびトンネル用セグメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は軟弱地盤であっても掘り進むことができる工法であり、日本では都市部のトンネルの多くがこのシ−ルド工法で造られている。日本の都市部の多くが、地盤が軟弱で地下水位が高い沖積平野に立地しているためである。
【0003】
シールド工法による工事では、図29(特許文献1において従来技術として記載されている図11)に示す、円筒状に組み立てられたセグメント202(トンネル覆工200)を反力に取って、推進用ジャッキでシールド掘進機を前面の地盤に押しつけながら掘り進み、シールド掘進機が前進した後に、セグメント202の軸方向継手壁204どうし、周方向継手壁206どうしをボルト・ナットで組み立ててトンネル覆工200として延長していき、セグメント202の幅(例えば1m)づつトンネルを掘り進める。組み立てられたセグメント202はトンネル断面を確保するトンネル覆工200となるため、土圧と水圧に耐えられることが必要である。したがって、セグメント202には、大きな土圧と水圧に耐えられる強度、正確に組み立てることができる寸法精度、組み立て後の継手部の止水性が要求される。なお、図29に示すセグメント202は鋼製であるが、鉄筋コンクリート製セグメントや、鋼板とコンクリートを一体化させた合成セグメントについても要求される性能は同様である。
【0004】
組み立て後の継手部の止水性を確保するための従来技術としては、鋼製セグメントの場合、図30、図31(特許文献1において従来技術として記載されている図12、図13)に示すように、セグメント202の軸方向継手壁204の接合面および周方向継手壁206の接合面において、それぞれ軸方向継手壁および周方向継手壁の長手方向全体にわたって、幅10〜30mm程度、深さ2〜3mm程度の止水溝208を形成しておき、この止水溝208に止水体210を嵌合した上で、軸方向継手壁204どうし、周方向継手壁206どうしをボルト・ナット212で締め付けることにより、水の侵入を防ぐ方法が一般的にとられている。
【0005】
接合面に止水溝208が形成された軸方向継手壁204は、予め所定の大きさの溝の付いた平鋼板をロールベンダー等により所定の曲率に曲げ加工することにより、作製されている。接合面に止水溝208が形成された周方向継手壁206には、溝の付いた平鋼板が用いられている。
【0006】
接合面に止水溝208が形成された軸方向継手壁204の作製において、予め所定の大きさの溝の付いた、幅の大きい平鋼板を曲げ加工する場合、通常のロールベンダーが使用できない等の設備上の問題や、曲げ加工時に鋼板が局部座屈を起こす等の加工上の問題がある。このため、通常の平鋼板をガス切断等による切り板加工によって所定形状に製作した後、グラインダー等による切削加工によって接合面に溝を形成することもある。
【0007】
実際、セグメントの厚さがある程度以上厚くなって、溝の付いた平鋼板の幅がある程度以上大きくなると、溝の付いた平鋼板の曲げ加工は、設備上や加工上の問題により不可能となる場合が多く、このためグラインダー等による切削加工によって溝を形成することが少なくない。しかしながら、この切削加工は一般に作業工数が多くかかり、セグメントの製作コストの上昇を招きやすい。また、作業環境の面でも切削の際に生じる粉塵や振動等、人体に与える影響等を考慮すると、量産には不向きである。
【0008】
さらに、継手接触面鋼板(軸方向継手壁204、周方向継手壁206)を強度部材とする場合には、切削による断面欠損が問題となることも考えられる。また、止水溝208をプレス加工によって形成することも考えられるが、この場合、大規模なプレス機が必要となる問題のほか、溝形成時に鋼板が絞られるため、ひび割れの発生や、事前に切り板加工した継手接触面鋼板(軸方向継手壁204、周方向継手壁206)に変形が生じて寸法誤差等の問題が生じることが懸念される。
【0009】
これらの問題点の解決を目指した技術として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の技術は、図32(軸方向継手壁の斜視図)、図33(図32のA−A断面図)に示すように、曲げ加工または切断によって所定の形状に加工した複数の鋼板220、222を、止水溝として必要な間隔を開けた状態で並列させて配置し、鋼板220、222間に裏から当て板224を添接し、溶接228等により接合して止水溝226を形成する技術である。図32、図33は軸方向継手壁に止水溝を形成した場合である。周方向継手壁に止水溝を形成する場合は、鋼板220、222は平鋼板となる。
【0010】
当て板224の接合後、並列する複数の鋼板220、222は継手接触面を構成し、並列する複数の鋼板220、222の間に、当て板224を底部とする止水溝226が形成される。このため、セグメントの厚さが厚くなって、溝の付いた平鋼板の幅が大きくなった場合でも、継手接触面の止水溝を、従来の設備で安価に形成することができる。また、並列する複数の鋼板220、222の間隔や板厚を変えることにより、溝の幅や深さを変えることができ、種々の溝形状に容易に対応することができる。
【0011】
また、接合面に止水溝を必要としない止水構造についての技術として、特許文献2に記載の技術がある。特許文献2に記載の技術においては、図34(止水構造が設けられた接合面の斜視図)、図35(隣接するセグメントが圧着する前の断面図)、図36(隣接するセグメントが圧着した後の断面図)に示すように、隣接するセグメント300の対向する接合面300A、300Bのうちの一方の接合面300Aに、水膨潤性の止水用シール302が帯状に張り付けられるとともに、この止水用シール302の両側に沿って非膨潤性の防護用シール304が2列に張り付けられ、隣接するセグメント300の接合面300A、300Bどうしが圧着された際、圧着される2つの接合面300A、300Bと、止水用シール302の両側に沿って張り付けられた2列の非膨潤性の防護用シール304と、によって、水膨潤性の止水用シール302を収容する空間が形成されるようになっている。
【0012】
【特許文献1】特開平5−280292号公報
【特許文献2】特開平10−88988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、止水溝の形成を必要とする特許文献1に記載の技術には以下の課題がある。
【0014】
(1)止水溝を、軸方向継手壁の欠損により形成させる構造であるため、断面性能が止水溝を設けることにより低下する。たとえ、当て板を補強材として加味したとしても、荷重を負担する桁となる軸方向継手壁が偏心構造となるため、変形しやすい。
【0015】
(2)比較的厚い板で構成される軸方向継手壁の材片数が増加し、溶接長も長くなるため、加工費が嵩む。
【0016】
(3)桁を構成する軸方向継手壁を溶接により形成するため、入熱により、残留応力が大きくなる。また、溶接変形に対する精度確保が困難である。
【0017】
(4)所定の形状に加工された複数の鋼板220、222と当て板224で止水溝が形成されているが、止水溝の一般的な高さから見て、鋼板220、222の厚さは薄く、2〜3mm程度と考えられる。この程度の厚さでは、長年に渡る地山からのずれ応力などに対応できず、トンネル覆工にゆがみ等が生じると考えられ、止水性能も悪化すると考えられる。
【0018】
(5)複数の鋼板220、222と当て板224が必要となるため、軸方向継手壁は、円弧状の部材片の数が多くなり、加工費が増す。また、個々の部材の円弧切片長が長く、曲線加工が行える大きな設備が必要となるため、加工費が増す。
【0019】
一方、特許文献2に記載の技術は、セグメント本体部(軸方向継手壁および周方向継手壁)に止水溝を形成することを必要としない技術であり、セグメント本体部に止水溝を形成することに伴って生じる問題は生じないが、良好な止水性能をさらに安定して得ることが求められている。
【0020】
本発明は、かかる従来の問題点を解決するべくなされたもので、セグメント本体部に止水溝を形成する必要がなく、かつ、良好な止水性能を安定して得ることができる、トンネル用セグメントの止水構造およびトンネル用セグメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、以下のようにして前記課題を解決したものである。
【0022】
即ち、本発明に係るトンネル用セグメントの止水構造の第一の態様は、トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントの止水構造であって、前記連結の際に向かい合う前記軸方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの周方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの周方向の端から端まで配設されていることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るトンネル用セグメントの止水構造の第二の態様は、トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントの止水構造であって、前記連結の際に向かい合う前記周方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの軸方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの軸方向の端から端まで配設されていることを特徴とする。
【0024】
本発明に係るトンネル用セグメントの止水構造の第三の態様は、トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントの止水構造であって、前記連結の際に向かい合う前記軸方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの周方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの周方向の端から端まで配設され、前記連結の際に向かい合う前記周方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの軸方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの軸方向の端から端まで配設されていることを特徴とする。
【0025】
前記止水用シール材は、接着剤によって貼り付けられて配設されていることが、安価である点、施工が容易である点、鋼板との密着性が向上する点で好ましい。
【0026】
前記区切り構造部材には、例えば金網を用いることができる。該金網としては、織金網またはエキスパンドメタルのように、構成要素である線状体が、全体構造の厚さ方向に蛇行しているものを用いることが好ましい。
【0027】
前記トンネル用セグメントが連結される際、前記区切り構造部材が過剰に圧縮されることが防止されるように、該区切り構造部材が配設される前記接合面にプレートが設けられていることが好ましい。
【0028】
本発明に係るトンネル用セグメントの第一の態様は、トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントであって、前記一対の軸方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの周方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの周方向の端から端まで配設されていることを特徴とする。
【0029】
本発明に係るトンネル用セグメントの第二の態様は、トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントであって、前記一対の周方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの軸方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの軸方向の端から端まで配設されていることを特徴とする。
【0030】
本発明に係るトンネル用セグメントの第三の態様は、トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントであって、前記一対の軸方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの周方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの周方向の端から端まで配設され、前記一対の周方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの軸方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの軸方向の端から端まで配設されていることを特徴とする。
【0031】
前記止水用シール材は、接着剤によって貼り付けられて配設されていることが、安価である点、施工が容易である点、鋼板との密着性が向上する点で好ましい。
【0032】
前記区切り構造部材には、例えば金網を用いることができる。該金網としては、織金網またはエキスパンドメタルのように、構成要素である線状体が、全体構造の厚さ方向に蛇行しているものを用いることが好ましい。
【0033】
前記トンネル用セグメントが連結される際、前記区切り構造部材が過剰に圧縮されることが防止されるように、該区切り構造部材が配設される前記接合面にプレートが設けられていることが好ましい。
【0034】
本発明に係るトンネル用セグメントの第一、第二、第三の態様において、前記トンネル用セグメントとして、例えば、トンネルの軸方向に所定の間隔を開けて設けられ、トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向継手壁と、トンネルの周方向に所定の間隔を開けて設けられ、トンネルの周方向と直交する一対の周方向継手壁と、前記一対の軸方向継手壁および前記一対の周方向継手壁それぞれの外周側の辺に4辺を接合された外周板と、を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向継手壁の前記軸方向接合面および前記周方向継手壁の前記周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するものを用いることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、水膨張性の止水用シール材が区切り構造部材によって所定の形状および大きさに区切られるので、該止水用シール材は、水分を吸収して膨張する際、その周囲を該区切り構造部材によって拘束される。このため、止水用シール材は、十分な圧力で圧縮され、良好な止水性能を発揮しやすくなる。
【0036】
また、本発明は止水溝を形成する必要がないので、コストのかかる鋼板切削が不要であるとともに、セグメント本体部を切削する必要がなく、セグメント本体部の断面性能を損なわない。
【0037】
また、止水溝の中に止水用シール材を配設して止水する従来の方法は線的な止水方法であるが、本発明では面的に止水するため、セグメント本体部の製作精度(平坦度)の影響を受けにくく、止水効果が高い。止水構造部のセグメント本体部の製作精度(平坦度)に高い水準が要求されないので、製作コストを低減することができる。
【0038】
また、区切り構造部材に金網を用いた場合、金網は加工しやすいので、セグメント本体部への配設が容易であり、製作性が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明の第1実施形態に係るトンネル用セグメント10を示す斜視図である。ただし、図示の都合上、図1においては、トンネル用セグメント10の本体部11のみを描いている。トンネル用セグメント10の本体部11は、一対の軸方向継手壁12と、一対の周方向継手壁14と、外周板16と、内周板18とからなる。トンネル用セグメント10においては、この本体部11に加えて、一対の軸方向継手壁12の外面(軸方向接合面12E)のうちの一方の面に止水用シール材20(図6、図7参照)が配置され、他方の面に止水用シール材20を区分けする区分け構造部材22(図6、図8参照)が配置され、一対の周方向継手壁14の外面(周方向接合面14E)のうちの一方の面に止水用シール材24(図10、図11参照)が配置され、他方の面に止水用シール材24を区分けする区分け構造部材26が配置されている(図10、図12参照)。
【0041】
セグメント10の大きさは、例えば、幅が1m程度、長さが4m程度、厚さが0.5m程度である。セグメント10がトンネルの周方向および軸方向に複数並べられて互いに連結されて、円筒状のトンネル覆工が形成される。この円筒状のトンネル覆工の外径は例えば12.5m程度である。トンネル覆工には、一般に上載荷重、水圧、土圧等の外力やトンネル覆工自身の自重が作用する。これらの力は、外周板16を通じて、軸方向継手壁12に伝達され、支持される。
【0042】
軸方向継手壁12は、セグメント10同士をトンネルの軸方向(長手方向)に連結する際の継手板の役割を担うとともに、前記荷重を支持し、曲げモーメント、せん断力、および軸力等の力を支持する主部材として、トンネルの断面形状を保持する役割を担っている。軸方向継手壁12は、図2(平面図)に示すように、円弧状の外周辺12Aおよび内周辺12Bと、トンネルの半径方向に向かう直線の辺12C、12Dとを有してなる円弧状の平板であり、外面は軸方向接合面12Eとなっており、板厚は例えば30〜110mm程度である。外周辺12Aの長さは例えば4m程度であり、直線の辺12C、12Dの長さは例えば0.5m程度である。複数のセグメント10が組み立てられて円筒状のトンネル覆工になると、軸方向継手壁12は円環板状に連結される。
【0043】
周方向継手壁14は、セグメント10同士を周方向に繋ぐ際の継手板の役割を担っており、周方向に軸力を伝える。周方向継手壁14は、図3(平面図)に示すように、直線の外周辺14Aおよび内周辺14Bと、これらの辺と直交してトンネルの半径方向に向かう直線であって軸方向継手壁12の辺12C、12Dと同じ長さである辺14C、14Dとを有してなる長方形の平板であり、外面は周方向接合面14Eとなっている。板厚は例えば50〜100mm程度である。直線の外周辺14Aおよび内周辺14Bの長さは例えば1m程度であり、直線の辺14C、14Dの長さは例えば0.5m程度である。
【0044】
外周板16は、軸方向継手壁12に外力を伝えるとともに、土留め、止水の役割を担っている。外周板16は、所定の厚さ(例えば6mm程度)を有する板状体を厚さ方向に、軸方向継手壁12の外周辺に沿うように円弧状に丸めた曲面板であり、図4(平面図)に示すように、軸方向継手壁12の円弧状の外周辺12Aに沿う円弧辺16A、16Bと、周方向継手壁14の外周辺14Aに沿う直線の辺16C、16Dとを有してなる。
【0045】
内周板18は、対向する2つの軸方向継手壁12の内周辺12Bにそれぞれ連結されるとともに、対向する2つの周方向継手壁14の内周辺14Bにそれぞれ連結されて、セグメント10の内形を形成し、セグメント10全体の構造を安定させる役割を有する。内周板18は、所定の厚さ(例えば6mm程度)を有する板状体を厚さ方向に、軸方向継手壁12の内周辺に沿うように円弧状に丸めた曲面板であり、図5(平面図)に示すように、軸方向継手壁12の円弧状の内周辺12Bに沿う円弧辺18A、18Bと、周方向継手壁14の内周辺14Bに沿う直線の辺18C、18Dとを有してなる。なお、内周板18を備えさせなくてもセグメント10全体の構造が安定しているのであれば、内周板18は省略してもよい。
【0046】
以上説明した、軸方向継手壁12と、周方向継手壁14と、外周板16と、内周板18とが組み合わされて、セグメント10の本体部11が形作られている。外周板16の4辺16A、16B、16C、16Dは、一対の軸方向継手壁12のそれぞれの外周辺12Aおよび一対の周方向継手壁14のそれぞれの外周辺14Aに接合され、内周板16の4辺18A、18B、18C、18Dは、一対の軸方向継手壁12のそれぞれの内周辺12Bおよび一対の周方向継手壁14のそれぞれの内周辺14Bに接合されて、セグメント10の本体部11が組み立てられている。
【0047】
軸方向継手壁12の外面である軸方向接合面12Eには、図6(図1のA−A線断面図)、図7(図6のC方向から見た平面図)、図8(図6のD方向から見た平面図)に示すように、一対の軸方向継手壁12の軸方向接合面12Eの一方の面の全面に止水用シール材20が配置され、他方の面の全面に止水用シール材20を区分けする区分け構造部材22が配置されている。そして、セグメント10が軸方向に連結される際には、図9(模式的な断面図)に示すように、止水用シール材20が配置された軸方向接合面12Eと、区分け構造部材22が配置された軸方向接合面12Eとが、向き合うように押し付けられて密着し、セグメント10は軸方向に連結される。
【0048】
また、周方向継手壁14の場合も軸方向継手壁12の場合と同様に、その外面である周方向接合面14Eには、図10(図1のB−B線断面図)、図11(図10のE方向から見た平面図)、図12(図10のF方向から見た平面図)に示すように、一対の周方向継手壁14の周方向接合面14Eの一方の面の全面に止水用シール材24が配置され、他方の面の全面に止水用シール材24を区分けする区分け構造部材26が配置されている。そして、セグメント10が周方向に連結される際には、図13(模式的な断面図)に示すように、止水用シール材20が配置された周方向接合面14Eと、区分け構造部材22が配置された周方向接合面14Eとが、向き合うように押し付けられて密着し、セグメント10は周方向に連結される。
【0049】
止水用シール材20、24は、水膨張性であり、水分を吸収すると膨張する性質を有する。止水用シール材20は、水分を吸収した際、向かい合う軸方向接合面12Eの間の隙間、および区分け構造部材22と軸方向接合面12Eとの間の隙間を埋めることができるように膨張できればよく、止水用シール材24は、水分を吸収した際、向かい合う周方向接合面14Eの間の隙間、および区分け構造部材26と周方向接合面14Eとの間の隙間を塞ぐことができるように膨張できればよい。止水用シール材20、24の膨張率は特に限定されず、例えば膨張率が200〜300%程度である通常の止水用シール材を止水用シール材20、24として用いることができる。また、水分を吸収した際の膨張率が500〜600%の止水用シール材を止水用シール材20、24として用いることもできる。さらに、水分を吸収した際の膨張率が500〜600%よりも大きい止水用シール材を止水用シール材20、24として用いることもできる。
【0050】
止水用シール材20が配置された軸方向接合面12Eと、区分け構造部材22が配置された軸方向接合面12Eとが、向き合うように押し付けられて密着した状態で、止水用シール材20が水分を吸収して膨張しようとすると、止水用シール材20は、向き合う軸方向接合面12Eに挟まれて圧縮されて、軸方向接合面12Eと平行な方向に膨張しようとする。しかし、止水用シール材20は区分け構造部材22によって所定の形状・大きさに区切られ、その周囲を拘束され、区切られた形状・大きさを越えて軸方向接合面12Eと平行な方向に膨張することはできない。このため、止水用シール材20には、十分な圧力が加わる。
【0051】
同様に、止水用シール材24が配置された周方向接合面14Eと、区分け構造部材26が配置された周方向接合面14Eとが、向き合うように押し付けられて密着した状態で、止水用シール材24が水分を吸収して膨張しようとすると、止水用シール材24は、向き合う周方向接合面14Eに挟まれて圧縮されて、周方向接合面14Eと平行な方向に膨張しようとする。しかし、止水用シール材24は区分け構造部材26によって所定の形状・大きさに区切られ、その周囲を拘束され、区切られた形状・大きさを越えて周方向接合面14Eと平行な方向に膨張することはできない。このため、止水用シール材24には、十分な圧力が加わる。
【0052】
止水用シール材20、24に求められる好ましい性質としては、水分を吸収した際の膨張性の他に、経年劣化しない耐久性、弾性反発性、復元性、追随性等がある。また、軸方向接合面12Eおよび周方向接合面14Eへの接着が容易であるとともに、接着後は施工時に剥がれにくいといった良好な作業性を有することが好ましい。
【0053】
また、止水用シール材20、24を接合面12E、14Eに配設する際には、止水用シール材20、24を接合面12E、14Eに接着剤で接着して配設することが、安価である点、施工が容易である点、鋼板との密着性が向上する点で好ましい。接着剤には、例えばエポキシ系接着剤を用いることができる。
【0054】
区分け構造部材22、26は、線状体が縦横に配置されて、所定の形状・大きさの貫通開口が多数形成されている平板状の部材であり、止水用シール材20、24を、所定の形状・大きさに区分けする役割を有する。具体的には、止水用シール材20が水を吸収して膨張して、向かい合う軸方向接合面12Eに挟まれて圧縮された際、および、止水用シール材24が水を吸収して膨張して、向かい合う周方向接合面14Eに挟まれて圧縮された際、止水用シール材20、24が接合面12E、14Eと平行な方向に過度に押し広げられないように周囲を拘束して、止水用シール材20、24に十分な圧力が加わるようにする役割を有する。
【0055】
水分を吸収して膨張した止水用シール材20の周囲が区分け構造部材22により拘束されて、止水用シール材20に十分な圧力が加わることにより、向かい合う軸方向接合面12Eの間の隙間、および軸方向接合面12Eと区分け構造部材24との間の隙間に止水用シール材20が入り込んで該隙間を塞ぐとともに、止水用シール材20が軸方向接合面12Eに十分に押し付けられて密着性が良好となる。また、水分を吸収して膨張した止水用シール材24の周囲が区分け構造部材26により拘束されて、止水用シール材24に十分な圧力が加わることにより、向かい合う周方向接合面14Eの間の隙間、および周方向接合面14Eと区分け構造部材26との間の隙間に止水用シール材24が入り込んで該隙間を塞ぐとともに、止水用シール材24が周方向接合面14Eに十分に押し付けられて密着性が良好となる。
【0056】
止水用シール材20、24の周囲が拘束されていないと、止水用シール材20、24が水分を吸収して膨張した際、接合面12E、14Eと平行な方向に過度に押し広げられてしまい、止水用シール材20、24に十分な圧力が加わりにくくなる。このため、向かい合う軸方向接合面12Eの間および向かい合う周方向接合面14Eの間において隙間が残りやすくなるとともに、止水用シール材20と軸方向接合面12Eとの間の密着性、および止水用シール材24と周方向接合面14Eとの間の密着性が悪くなり、止水性能が低下しまうおそれがある。この点、特許文献2に記載の技術では、止水用シール材は2方向からしか拘束されておらず、かつ、所定の形状・大きさに区切られておらず、1つの止水用シール材が大面積に広がっている。このため、特許文献2に記載の技術では、止水用シール材に十分な圧力が加わりにくくなり、十分な止水性能を得られにくくなるおそれがある。
【0057】
区分け構造部材22、26としては、例えば各種の金網を用いることができる。金網は加工しやすいので、セグメント本体部への配設が容易であり、製作性が良好となる。具体的には、例えば図14に示すような、直径3〜5mmの丸鋼(線状体)30を5cmピッチで編んだ織金網32を用いることができる。このような織金網32を区分け構造部材として用いた場合、止水用シール材20、24は、1辺5cm程度の正方形に区分けされる。織金網32の接合面12E、14E上への配設は、例えば点付け溶接、全辺溶接を用いることができるが、接合面12E、14E上への配設という目的を達するためには点付け溶接で十分である。なお、図14は、向かい合う軸方向接合面12Eの間、または向かい合う周方向接合面14Eの間に、織金網32が挟まれている状況を模式的に示す断面図であるが、図示の都合上、止水用シール材20、24は記載していない。
【0058】
止水用シール材20、24が十分な圧力で圧縮されることにより、図15(図14のK−K線断面を模式的に示す断面図)に示すように、向かい合う軸方向接合面12Eの間の隙間、および軸方向接合面12Eと区分け構造部材24との間の隙間、ならびに向かい合う周方向接合面14Eの間の隙間、および周方向接合面14Eと区分け構造部材26との間の隙間には、止水用シール材20、24があまねく入り込み、トンネル覆工内部と外部をつなぐ水の道を塞ぐことができる。また、止水用シール材20、24が十分な圧力で圧縮されることにより、止水用シール材20と軸方向接合面12Eとの間、止水用シール材24と周方向接合面14Eとの間に十分な圧力をあまねく加えることができ、トンネル覆工内部に浸入しようとする水を遮断する働きの弱い密着性の悪い部分をなくすことができる。
【0059】
ここで、区分け構造部材22、26に、図14に示す織金網32を用いた場合、丸鋼(線状体)30が接合面12E、14Eと密着している密着部位34、35については、丸鋼(線状体)30と接合面12E、14Eとの間の隙間の幅がわずかであるため、止水用シール材20、24が水分を吸収して膨張しても、止水用シール材20、24が丸鋼(線状体)30と接合面12E、14Eとの間の隙間に入り込まず、隙間が残ってしまい、止水ができないおそれがあるのではないかということが懸念される。しかし、図14に示すように、織金網32において丸鋼(線状体)30は編まれているため、密着部位34、35は連続せず、密着部位34、35による隙間が残ったとしても、その隙間は止水用シール材20、24により囲まれて密閉される。このため、密着部位34、35による隙間は、セグメント10の厚さ方向に貫通する隙間とはならない。したがって、向かい合う軸方向接合面12Eに挟まれた止水用シール材20、および向かい合う周方向接合面14Eに挟まれた止水用シール材24が水分を吸収して膨張することにより、セグメント10の外側から内側へ浸入しようとする水を止水することが可能となる。
【0060】
したがって、区分け構造部材22、26としては、図14に示す織金網32のように、構成要素である線状体(丸鋼30)が、全体構造の厚さ方向に蛇行している平板状の部材を用いるのが好ましい。このような部材を区分け構造部材22、26として用いれば、線状体(丸鋼30)が接合面12E、14Eと密着する部位は連続しないので、止水用シール材20、24が水分を吸収して膨張した際、接合面12E、14Eと区分け構造部材22、26との密着部位34、35に隙間が残ったとしても、その隙間はセグメント10の厚さ方向に貫通しない。また、区分け構造部材22、26の構成要素である線状体(丸鋼30)が、全体構造の厚さ方向に蛇行している方が、まっすぐな場合よりも、所定の形状・大きさに区分けした止水用シール材20、24の周囲を拘束する効果が大きく、高い止水効果が得られる。
【0061】
構成要素である線状体が全体構造の厚さ方向に蛇行している平板状の部材であって、区分け構造部材22、26として用いるのに好ましい部材としては、織金網32以外に、例えばエキスパンドメタル等がある。
【0062】
一方、例えば、図16に示すように、まっすぐな丸鋼36が縦横に配置され、その交点が溶接された溶接金網38を区分け構造部材22、26として用いた場合、丸鋼36が接合面12E、14Eと密着している密着部位40、41は、溶接金網38を配置した区間内で連続し、該区間を貫通する。このため、向かい合う接合面12Eの間または向かい合う接合面14Eの間には、止水用シール材20、24が水分を吸収して膨張した後でも、セグメント10の厚さ方向に貫通する隙間が残るおそれがある。このため、区分け構造部材22、26として溶接金網38を用いる場合、用いる止水用シール材20、24が、密着部位40、41において、丸鋼36と接合面12E、14Eとの間の隙間に十分に入り込んで隙間を塞ぐことができることを確認しておくことが必要である。
【0063】
他方、止水用シール材20、24、区分け構造部材22、26は、軸方向接合面12E、周方向接合面14Eの全面に設けなくてもよく、図17(図1のA−A線断面図)、図18(図17のG方向から見た平面図)、図19(図17のH方向から見た平面図)、図20(図1のB−B線断面図)、図21(図20のI方向から見た平面図)、図22(図20のJ方向から見た平面図)に示すように、軸方向接合面12Eであればトンネル周方向の端部から端部までつながるように設ければよく、周方向接合面14Eであればトンネル軸方向の端部から端部までつながるように設ければよい。止水用シール材20、24および区分け構造部材22、26をこのように設けた場合、止水用シール材20、24および区分け構造部材22、26を接合面12E、14Eの全面に配置しなくても、止水用シール材20、24が水分を吸収して膨張したとき、接合面12Eの間および接合面14Eの間には、セグメント10の厚さ方向に貫通する隙間は残らない。
【0064】
なお、セグメント10を周方向に連結すると円筒状になるため、セグメント10の周方向の長さは、止水用シール材24と区分け構造部材26とからなる止水構造の厚さも考慮して設計することが好ましい。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態に係るトンネル用セグメントについて説明する。図23(A)、(B)は、第2実施形態のトンネル用セグメントの軸方向継手壁をそれぞれ外側から見た平面図であり、図24(A)、(B)は、第2実施形態のトンネル用セグメントの周方向継手壁をそれぞれ外側から見た平面図である。第2実施形態のトンネル用セグメント50においては、図23(A)に示すように、区分け構造部材62が配置された軸方向継手壁52の接合面52Eの上端部および下端部に円弧プレート56が取り付けられ、図23(B)に示すように、止水用シール材60が配置された軸方向継手壁52の接合面52Eでは、円弧プレート56と接触しない中央部のみに止水用シール材60が配置されている。また、図24(A)に示すように、区分け構造部材66が配置された周方向継手壁54の接合面54Eの上端部および下端部にフラットバー58が取り付けられ、図24(B)に示すように、止水用シール材64が配置された周方向継手壁54の接合面54Eでは、フラットバー58と接触しない中央部のみに止水用シール材64が配置されている。そして、セグメント50が軸方向に連結される際には、図25(模式的な断面図)に示すように、区分け構造部材62とともに円弧プレート56が配置された軸方向接合面52Eと、止水用シール材60が配置された軸方向接合面52Eとが、向き合うように押し付けられて密着し、セグメント50は軸方向に連結される。なお、セグメント50が周方向に連結される場合も同様であり、この場合の図示は省略する。
【0066】
円弧プレート56は、ジャッキ推力等により、区分け構造部材62が向かい合う軸方向接合面52Eに挟まれた際、過剰に圧縮されて潰されることを防止する役割を有し、フラットバー58は、区分け構造部材66が向かい合う周方向接合面54Eに挟まれた際、過剰に圧縮されて潰されることを防止する役割を有する。区分け構造部材62、66が潰されて平坦化してしまうと、止水用シール材60、64が膨張するのに必要な空隙が得られなくなるとともに、水分を吸収して膨張する止水用シール材60、64の周囲を拘束する効果が小さくなり、止水性能が十分に得られにくくなる。円弧プレート56、フラットバー58の厚さとしては、止水用シール材60、64が膨張するのに必要な空隙が得られ、かつ、止水用シール材60、64の周囲を拘束する効果を十分に発現させるのに必要な高さを区分け構造部材62、66に確保させる厚さが必要である。区分け構造部材62、66が必要な高さを確保できるのであれば、円弧プレート56、フラットバー58の厚さは区分け構造部材62、66の当初の高さよりも小さくてもよい。一方、円弧プレート56、フラットバー58の厚さが厚くなりすぎると、止水用シール材60、64が水分を吸収して膨張しても、軸方向接合面52Eの間および周方向接合面54Eの間においてセグメント50の厚さ方向に貫通する隙間が残ってしまうおそれがあるので、この点留意する必要がある。なお、円弧プレート56を配置する代わりに、長さの短いフラットバーを円弧状に組み合わせて配置してもよい。
【0067】
次に、本発明の第3実施形態に係るトンネル用セグメントについて説明する。図26(A)、(B)は、第3実施形態のトンネル用セグメントの軸方向継手壁をそれぞれ外側から見た平面図であり、図27(A)、(B)は、第3実施形態のトンネル用セグメントの周方向継手壁をそれぞれ外側から見た平面図である。第3実施形態のトンネル用セグメント70は、第2実施形態に係るトンネル用セグメント50のフラットバー56、58を、セグメント継手用ボルト孔のダブリングを兼ねたダブリングプレート76、78に替えた実施形態であり、図26(A)に示すように、フラットバー56に替えて、区分け構造部材82が配置された軸方向継手壁72の接合面72Eの幅方向中央部にダブリングプレート76が設けられ、図27(A)に示すように、フラットバー58に替えて、区分け構造部材86が配置された周方向継手壁74の接合面74Eの幅方向中央部にダブリングプレート78が設けられている。第3実施形態のトンネル用セグメント70では、ダブリングプレート76、78を設けることにより、区分け構造部材82、86が潰されて平坦化してしまうことを防止している。
【0068】
また、図26(B)に示すように、止水用シール材80が配置される軸方向継手壁72の接合面72Eでは、向かい合う接合面72Eのダブリングプレート76と接触しない領域のみに止水用シール材80が配置されている。また、図27(B)に示すように、止水用シール材84が配置される周方向継手壁74の接合面74Eでは、向かい合う接合面74Eのダブリングプレート78と接触しない領域のみに止水用シール材84が配置されている。また、ダブリングプレート76、78は中央部に貫通孔76A、78Aが設けられたドーナツ形であり、向かい合う軸方向継手壁72のどちらにおいても、配置されるダブリングプレート76の中央部の貫通孔76Aに対応する位置にボルト孔72Fが設けられ、向かい合う周方向継手壁74のどちらにおいても、配置されるダブリングプレート78の中央部の貫通孔78Aに対応する位置にボルト孔74Fが設けられている。そして、セグメント70が軸方向に連結される際には、図28(模式的な断面図)に示すように、向かい合う軸方向継手壁72のそれぞれのボルト孔72Fおよびダブリングプレート76の貫通孔76Aを貫通するようにボルト76Bが配置され、ナット76Cで固定されて、向かい合う軸方向継手壁72が接合される。なお、セグメント70が周方向に連結される場合も同様であり、この場合の図示は省略する。
【0069】
以上説明したように、本発明の実施形態では、水膨張性の止水用シール材20、24、60、64、80、84が区切り構造部材22、26、62、66、82、86によって所定の形状および大きさに区切られるので、止水用シール材20、24、60、64、80、84は、水分を吸収して膨張する際、その周囲を区切り構造部材22、26、62、66、82、86によって拘束される。このため、止水用シール材20、24、60、64、80、84は、十分な圧力で圧縮され、良好な止水性能を発揮しやすくなる。
【0070】
また、本発明の実施形態は止水溝を形成する必要がないので、コストのかかる鋼板切削が不要であるとともに、セグメント本体部を切削する必要がなく、セグメント本体部の断面性能を損なわない。
【0071】
また、止水溝の中に止水用シール材を配設して止水する従来の方法は線的な止水方法であるが、本発明の実施形態では面的に止水するため、セグメント本体部の製作精度(平坦度)の影響を受けにくく、止水効果が高い。止水構造部のセグメント本体部の製作精度(平坦度)に高い水準が要求されないので、製作コストを低減することができる。
【0072】
また、区切り構造部材に織金網32を用いた場合、織金網32は加工しやすいので、セグメント本体部への配設が容易であり、製作性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態に係るトンネル用セグメントを示す斜視図
【図2】前記トンネル用セグメントの軸方向継手壁を示す平面図
【図3】前記トンネル用セグメントの周方向継手壁を示す平面図
【図4】前記トンネル用セグメントの外周板を示す平面図
【図5】前記トンネル用セグメントの内周板を示す平面図
【図6】図1のA−A線断面図
【図7】図6のC方向から見た平面図
【図8】図6のD方向から見た平面図
【図9】前記セグメントが軸方向に連結される際の状況を模式的に示す断面図
【図10】図1のB−B線断面図
【図11】図10のE方向から見た平面図
【図12】図10のF方向から見た平面図
【図13】前記セグメントが周方向に連結される際の状況を模式的に示す断面図
【図14】前記セグメントの向かい合う接合面が密着して、その接合面の間に織金網が挟まれている状況を模式的に示す断面図
【図15】図14のK−K線断面を模式的に示す断面図
【図16】前記セグメントの向かい合う接合面が密着して、その接合面の間に溶接金網が挟まれている状況を模式的に示す断面図
【図17】図1のA−A線断面図
【図18】図17のG方向から見た平面図
【図19】図17のH方向から見た平面図
【図20】図1のB−B線断面図
【図21】図20のI方向から見た平面図
【図22】図20のJ方向から見た平面図
【図23】(A)、(B)本発明の第2実施形態に係るトンネル用セグメントの軸方向継手壁をそれぞれ外側から見た平面図
【図24】(A)、(B)本発明の第2実施形態に係るトンネル用セグメントの周方向継手壁をそれぞれ外側から見た平面図
【図25】前記セグメントが軸方向に連結される際の状況を模式的に示す断面図
【図26】(A)、(B)本発明の第3実施形態に係るトンネル用セグメントの軸方向継手壁をそれぞれ外側から見た平面図
【図27】(A)、(B)本発明の第3実施形態に係るトンネル用セグメントの周方向継手壁をそれぞれ外側から見た平面図
【図28】前記セグメントが軸方向に連結される際の状況を模式的に示す断面図
【図29】円筒状に組み立てられたセグメント(従来例)を示す斜視図
【図30】図29のD−D線断面図
【図31】図29のE−E線断面図
【図32】特許文献1に記載の技術で、軸方向継手壁に止水溝を形成した場合を示す斜視図
【図33】図32のA−A断面図
【図34】特許文献2に記載の止水構造が設けられた接合面の斜視図
【図35】特許文献2に記載の止水構造の断面図(隣接するセグメントが圧着する前)
【図36】特許文献2に記載の止水構造の断面図(隣接するセグメントが圧着した後)
【符号の説明】
【0074】
10、50、70…トンネル用セグメント
11…本体部
12、52、72…軸方向継手壁
14、54…周方向継手壁
16…外周板
18…内周板
12A、14A…外周辺
12B、14B…内周辺
12C、12D、14C、14D、16C、16D、18C、18D…直線の辺
12E、52E、72E…軸方向接合面
14E、54E…周方向接合面
16A、16B、18A、18B…円弧辺
20、24、60、64、80、84…止水用シール材
22、26、62、66、82、86…区分け構造部材
30…丸鋼
32…織金網
34、35…密着部位
36…丸鋼
38…溶接金網
40、41…密着部位
56…円弧プレート
58…フラットバー
72F、74F…ボルト孔
76、78…ダブリングプレート
76A、78A…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントの止水構造であって、
前記連結の際に向かい合う前記軸方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの周方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの周方向の端から端まで配設されていることを特徴とするトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項2】
トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントの止水構造であって、
前記連結の際に向かい合う前記周方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの軸方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの軸方向の端から端まで配設されていることを特徴とするトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項3】
トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントの止水構造であって、
前記連結の際に向かい合う前記軸方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの周方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの周方向の端から端まで配設され、
前記連結の際に向かい合う前記周方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの軸方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの軸方向の端から端まで配設されていることを特徴とするトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項4】
前記止水用シール材が接着剤によって貼り付けられて配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項5】
前記区切り構造部材が金網であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項6】
前記金網が、織金網またはエキスパンドメタルであることを特徴とする請求項5に記載のトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項7】
前記トンネル用セグメントが連結される際、前記区切り構造部材が過剰に圧縮されることが防止されるように、該区切り構造部材が配設される前記接合面にプレートが設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項8】
トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントであって、
前記一対の軸方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの周方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの周方向の端から端まで配設されていることを特徴とするトンネル用セグメント。
【請求項9】
トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントであって、
前記一対の周方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの軸方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの軸方向の端から端まで配設されていることを特徴とするトンネル用セグメント。
【請求項10】
トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向接合面およびトンネルの周方向と直交する一対の周方向接合面を有し、トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向接合面および周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成するトンネル用セグメントであって、
前記一対の軸方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの周方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの周方向の端から端まで配設され、
前記一対の周方向接合面のうちの一方の面に、水膨張性の止水用シール材がトンネルの軸方向の端から端まで配設され、他方の面に、該止水用シール材を所定の形状および大きさに区切って、該止水用シール材が水分を吸収して膨張する際、その周囲を拘束する区切り構造部材が、該止水用シール材が配設された位置と対応して、トンネルの軸方向の端から端まで配設されていることを特徴とするトンネル用セグメント。
【請求項11】
前記止水用シール材が接着剤によって貼り付けられて配設されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のトンネル用セグメント。
【請求項12】
前記区切り構造部材が金網であることを特徴とする請求項8〜11いずれかに記載のトンネル用セグメント。
【請求項13】
前記金網が、織金網またはエキスパンドメタルであることを特徴とする請求項12に記載のトンネル用セグメント。
【請求項14】
前記トンネル用セグメントが連結される際、前記区切り構造部材が過剰に圧縮されることが防止されるように、該区切り構造部材が配設される前記接合面にプレートが設けられていることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載のトンネル用セグメント。
【請求項15】
前記トンネル用セグメントは、
トンネルの軸方向に所定の間隔を開けて設けられ、トンネルの軸方向と直交する一対の軸方向継手壁と、
トンネルの周方向に所定の間隔を開けて設けられ、トンネルの周方向と直交する一対の周方向継手壁と、
前記一対の軸方向継手壁および前記一対の周方向継手壁それぞれの外周側の辺に4辺を接合された外周板と、
を有し、
トンネルの周方向及び軸方向に複数並んで、前記軸方向継手壁の前記軸方向接合面および前記周方向継手壁の前記周方向接合面を介して、互いに連結して、トンネル覆工を形成することを特徴とする請求項8〜14のいずれかに記載のトンネル用セグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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