説明

トンネル用セグメント

【課題】 トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができるトンネル用セグメントを提供する。
【解決手段】 トンネル用セグメントに形成されたグラウト注入孔におけるトンネル内面側には、グラウト注入口12が設けられている。グラウト注入が終了した後、グラウト注入口12には、蓋部材20が取り付けられる。グラウト注入口12には、雌ネジ部13が形成され、蓋部材20には、雌ネジ部13にねじ込まれる雄ネジ部21が設けられている。また、雄ネジ部21におけるネジ山23には、振動吸収部材となる樹脂層24が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル用セグメントに係り、特に、把持孔やグラウト注入孔を塞ぐ蓋部材を有するトンネル用セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルに用いられるトンネル用セグメントには、裏込め注入を行う際のグラウト注入孔が形成されている。このグラウト注入孔は、グラウト注入終了後に蓋部材によって塞がれることが多い。このように蓋部材によってグラウト注入孔を塞ぐ際、グラウト注入孔におけるグラウト注入口部をセラミックスで構成するとともにグラウト注入口部に雌ネジを形成しておき、この雌ネジ部にねじ込まれる雄ネジを有する封止プラグを用いる技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、トンネル用セグメントには、トンネル用セグメントを組み立てる際にエレクタに把持される把持孔が形成されている。この把持孔についても、トンネル用セグメントの組立終了後、蓋部材によって塞がれることが多い。この蓋部材によって把持孔を塞ぐ際、把持孔にセラミックス製であり、雌ネジが形成された連結部材を埋設し、連結部材の雌ネジ部にねじ込まれる雄ネジを有する封止プラグを用いる技術が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−177547号公報
【特許文献2】特開2007−162432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のシールドトンネルが道路用や鉄道用として施工される場合、施工完了後に、車両等の通過による振動が大きくトンネル用セグメントに作用する。ここで、上記各特許文献に開示された封止プラグ(蓋部材)は、いずれもセラミックス製の雌ネジにねじ込まれているのみである。このため、トンネル用セグメントに作用する振動が大きくなると、この振動によって封止プラグが緩んだり、さらには脱落したりする可能性があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができるトンネル用セグメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係るトンネル用セグメントは、セグメント本体の内面側に孔部が形成され、孔部を塞ぐ蓋部材が孔部に取り付けられているトンネル用セグメントであって、孔部に雌ネジ部が形成されるとともに、蓋部材に、雌ネジ部にねじ込まれる雄ネジ部が形成されており、孔部と蓋部材との間に、振動吸収部材が介在されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るトンネル用セグメントにおいては、孔部と蓋部材との間に、振動吸収部材が介在されている。このため、セグメント本体に振動が生じた場合でも、その振動を振動吸収部材で吸収することができるので、蓋部材への伝達を抑制することができる。したがって、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0009】
ここで、蓋部材がセラミック製である態様とすることができる。
【0010】
セラミックスは、硬度が高く、脆性的であるため、蓋部材がセラミックスである場合には、振動が生じた場合の緩みや脱落の問題が大きくなる。この点、孔部と蓋部材との間に、振動吸収部材を介在し、セグメント本体に振動を振動吸収部材で吸収することにより、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0011】
また、振動吸収部材が、金属、樹脂、またはゴムである態様とすることができる。
【0012】
このように、振動吸収剤としては、弾塑性材料である金属、樹脂、またはゴムなどを好適に用いることができる。
【0013】
さらに、雄ネジ部におけるネジ山の頂部およびネジ山間の谷部の少なくとも一方に振動吸収部材が介在されている態様とすることができる。
【0014】
このように、雄ネジ部におけるネジ山の頂部およびネジ山間の谷部の少なくとも一方に振動吸収部材が介在されていることにより、振動吸収部材を雌ネジ部と雄ネジ部との間に容易に介在させることができる。
【0015】
あるいは、雄ネジ部に切り込み部が形成され、切り込み部に振動吸収部材が配設されている態様とすることができる。
【0016】
このように、切り込み部に振動吸収部材が配設されている場合でも、振動吸収部材を雌ネジ部と雄ネジ部との間に容易に介在させることができる。
【0017】
また、蓋部材は、雄ネジ部と、雄ネジ部が取り付けられた頭部とを備え、セグメント本体における雌ネジ部の周囲には、蓋部材における頭部の雄ネジ部が取り付けられた側の面に対向する対向面が形成されており、頭部と対向面との間に振動吸収部材が介在されている態様とすることができる。
【0018】
このように、雄ネジ部における頭部とセグメント本体における雌ネジ部の周囲に形成された対向面との間に振動吸収部材を介在させることにより、雌ネジ部に対する雄ネジ部のねじ込みによる振動吸収部材の磨耗を防止することができる。
【0019】
さらに、振動吸収部材は、蓋部材における雄ネジ部を貫通するリング部材を有し、リング部材における蓋部材の頭部側の面と蓋部材の頭部とに対して、蓋部材の回転を振動吸収部材に伝達する回転伝達部が形成されている態様とすることができる。
【0020】
このように、振動吸収部材が、蓋部材における雄ネジ部を貫通するリング部材を有し、リング部材が蓋部材の回転を振動吸収部材に伝達する回転伝達部を備えることにより、振動吸収部材を容易に蓋部材の頭部と対向面との間に振動吸収部材を容易に介在させることができる。
【0021】
そして、蓋部材は、雄ネジ部と、雄ネジ部が取り付けられた頭部とを備え、セグメント本体における孔部の周囲には、蓋部材における頭部の側面に対向する側方対向面が形成されており、蓋部材における頭部の側面とセグメント本体における側方対向面との間に振動吸収部材が介在されている態様とすることができる。
【0022】
このように、蓋部材における頭部の側面とセグメント本体における側方対向面との間に振動吸収部材が介在させる態様によっても、振動を好適に吸収することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るトンネル用セグメントによれば、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るトンネル用セグメントの側断面図、(b)は、その要部拡大側断面図である。
【図2】蓋部材が取り付けられたグラウト注入口の側断面図である。
【図3】第2の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材が取り付けられたグラウト注入口の側断面図である。
【図4】第3の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材が取り付けられたグラウト注入口の側断面図である。
【図5】(a)は、第4の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の斜視図、(b)は、その底面図である。
【図6】第5の実施形態に係るトンネル用セグメントの要部拡大側断面図である。
【図7】(a)は、第6の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の要部分解斜視図、(b)は、蓋部材の底面図である。
【図8】(a)は、第7の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の平面図、(b)は、その斜視図である。
【図9】(a)は、第8の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の平面図、(b)は、その斜視図である。
【図10】(a)〜(d)は、いずれも第9の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の斜視図である。
【図11】第10の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の平面図である。
【図12】把持孔に蓋部材が取り付けられた状態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0026】
〔第1の実施形態〕
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係るトンネル用セグメントの側断面図、(b)は、その要部拡大側断面図、図2は、蓋部材が取り付けられたグラウト注入口の側断面図である。
【0027】
図1に示すように、トンネル用セグメント1は、地山Tの構築されるシールドトンネルに用いられる。このトンネル用セグメント1は、定型に形成されたコンクリート層10を備えている。コンクリート層10には、内側面と外側面との間を貫通するグラウト注入孔11が形成されている。
【0028】
グラウト注入孔11におけるトンネル内面側には、グラウト注入口12が設けられている。グラウト注入口12は、金属製またはアルミナ、ジルコニア、ムライト、コーディライト、ステアタイト等のセラミックスによって構成されている。また、グラウト注入口12には、雌ネジ部13が形成されている。
【0029】
さらに、グラウト注入口12には、セラミックス製の蓋部材20が取り付けられている。蓋部材20は、図2にも示すように、ボルト状をなしており、雄ネジ部21と、雄ネジ部21の一端側に接続された頭部22とを備えている。これらの雄ネジ部21と頭部22とは一体的に形成されており、たとえばアルミナ、ジルコニア、ムライト、コーディライト、ステアタイト等のセラミックスによって構成されている。
【0030】
雄ネジ部21におけるネジ山23は、幅広とされている。この雄ネジ部21は、グラウト注入口12に形成された雌ネジ部13に対してねじ込み可能とされている。頭部22は円盤状をなしており、グラウト注入口12における雌ネジ部13に対して蓋部材20の雄ネジ部21を最大にねじ込むと、頭部22の一面がコンクリート層10の内面側およびグラウト注入口12の一部に当接する。
【0031】
さらに、雄ネジ部21における幅広のネジ山23の頂部には、振動吸収部材となる樹脂層24が形成されている。このため、グラウト注入口12に蓋部材20がねじ込まれた際には、グラウト注入口12における雌ネジ部13と蓋部材20における雄ネジ部21との間に樹脂層24が介在されることとなる。樹脂層24としては、たとえば、エポキシ、ウレタン、ナイロン(ポリアミド)などが用いられる。
【0032】
また、樹脂層24を形成する態様として、樹脂製塗料材料を塗布したり、溶着したりすることができる。あるいは、接着剤を封入したマイクロカプセルを混ぜた塗料を用いることもできる。さらには、樹脂製のシートを巻きつけることによって樹脂層24を形成することもできる。
【0033】
次に、本実施形態に係るトンネル用セグメント1の作用効果について説明する。本実施形態に係るトンネル用セグメント1においては、トンネル用セグメント1の組立が終了した後、グラウト注入口12から裏込め用のグラウト材を注入する。その後、グラウト材の注入が済んだら、グラウト注入口12に蓋部材20を取り付けた状態として維持しておく。この蓋部材20は、シールドトンネルの施工が完了した後も、グラウト注入口12に取り付けられた状態となっている。この蓋部材20によって、グラウト注入口12を介した地下水などの浸入などが防止されている。
【0034】
たとえば、シールドトンネルに道路などが設けられる場合、道路を車両が走行すると、シールドトンネルに振動が発生する。この振動がコンクリート層10から蓋部材20に伝達されると、蓋部材20が緩んだり、さらには脱落したりする問題が生じる。また、シールドトンネルが道路以外の用途に用いられる場合でも、シールドトンネルの用途に応じた振動や地震などの振動によって同様の問題が生じる。特に、蓋部材20がセラミックスで形成されており、硬度が高く脆性的である。このため、塑性変形させることが困難であることから、振動の吸収が難しくなっている。
【0035】
ここで、本実施形態に係るトンネル用セグメント1では、蓋部材20における雄ネジ部21のネジ山23の頂部に樹脂層24が形成され、グラウト注入口12の雌ネジ部13と蓋部材20における雄ネジ部21との間に樹脂層24が形成された状態となっている。コンクリート層10に振動が生じた際、この樹脂層24が振動を吸収することとなり、蓋部材20に対する振動が抑制される。したがって、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第1の実施形態と比較して、樹脂層の形成位置が異なっている。図3は、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材が取り付けられたグラウト注入口の側断面図である。
【0037】
図3に示すように、本実施形態に係るトンネル用セグメントは、上記第1の実施形態と同様のグラウト注入口12がコンクリート層10(図1)における内側面に設けられている。また、グラウト注入口12には蓋部材20が取り付けられている。グラウト注入口12には、雌ネジ部13が形成されているとともに蓋部材20には、雄ネジ部21が設けられている。
【0038】
さらに、雄ネジ部21には、頭部22が接続されている。さらに、雄ネジ部21におけるネジ山23,23間に、樹脂層24が設けられている。その他の点は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。このように、雄ネジ部21におけるネジ山23,23の間に樹脂層24が形成されていることにより、グラウト注入口12における雌ネジ部13に対して蓋部材20の雄ネジ部21がねじ込まれた後は、雌ネジ部13における凸部と雄ネジ部21における凹部との間に樹脂層24が形成される。
【0039】
このように、本実施形態に係るトンネル用セグメントでは、雄ネジ部21におけるネジ山23,23間に、樹脂層24が設けられ、雌ネジ部13における凸部と雄ネジ部21における凹部との間に樹脂層24が形成される。このような態様によっても、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。さらにはネジ山23,23間に樹脂層24を形成するので、樹脂層24を安定した状態で形成することができる。
【0040】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第1の実施形態と比較して、樹脂層の形成位置が異なっている。図4は、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材が取り付けられたグラウト注入口の側断面図である。
【0041】
図4に示すように、本実施形態に係るトンネル用セグメントは、上記第1の実施形態と同様のグラウト注入口12がコンクリート層10(図1)における内側面に設けられている。また、グラウト注入口12には蓋部材20が取り付けられている。グラウト注入口12には、雌ネジ部13が形成されているとともに蓋部材20には、雄ネジ部21が設けられている。
【0042】
さらに、雄ネジ部21には、頭部22が接続されている。さらに、雄ネジ部21における表面全体に樹脂層24が設けられている。その他の点は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。このように、雄ネジ部21における表面全体に樹脂層24が設けられていることにより、グラウト注入口12における雌ネジ部13に対して蓋部材20の雄ネジ部21がねじ込まれた後は、雌ネジ部13と雄ネジ部21との間で全体的に樹脂層24が形成される。
【0043】
このように、本実施形態に係るトンネル用セグメントでは、雌ネジ部13と雄ネジ部21との間で全体的に樹脂層24が形成される。このような態様によっても、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0044】
また、本実施形態では、樹脂層24が雄ネジ部21における表面全体に形成されている。このため、雄ネジ部21に対して樹脂層24を形成する位置を選択する必要がなく、たとえば含浸処理などによって形成することができるので、樹脂層24を容易に形成することができる。
【0045】
〔第4の実施形態〕
さらに、本発明の第4の実施形態について説明する。図5(a)は、第4の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の斜視図、(b)は、その底面図である。図5に示すように、本実施形態のトンネル用セグメントにおける蓋部材20は、雄ネジ部21と頭部22とを備えている点において、上記第1の実施形態に係るトンネル用セグメントと共通する。
【0046】
また、本実施形態に係る雄ネジ部21では、ネジ山23に切り込み部23Aが形成されている。切り込み部23Aは、雄ネジ部21の軸方向に沿ってネジ山23に形成されている。この切り込み部23Aに樹脂層24が設けられている。その他の点については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0047】
このように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおいては、雄ネジ部21におけるネジ山23に切り込み部23Aが形成されており、切り込み部23Aに樹脂層24が設けられている。この樹脂層24が設けられていることにより、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0048】
また、本実施形態に係るトンネル用セグメントでは、樹脂層24がネジ山23における切り込み部23Aに形成されている。このため、雄ネジ部21と、雄ネジ部21がねじ込まれる雌ネジ部13(図2)との間に樹脂層を形成する隙間を考慮する必要がなくなるので、雄ネジ部21と雌ネジ部13との製造が容易となる。
【0049】
〔第5の実施形態〕
続いて、本発明の第5の実施形態について説明する。図6は、本発明の第5の実施形態に係るトンネル用セグメントの要部拡大側断面図である。図6に示すように、本実施形態に係るトンネル用セグメント1は、上記第1の実施形態におけるトンネル用セグメントと同様の雌ネジ部13が形成されたグラウト注入口12と、雄ネジ部21が形成された蓋部材20とを備えている。
【0050】
また、蓋部材20における雄ネジ部21には、頭部22が接続されている。蓋部材20における雄ネジ部21をグラウト注入口12の雌ネジ部13にねじ込んだ際、グラウト注入口12における雌ネジ部13の周囲には、蓋部材20における頭部22の雄ネジ部21が取り付けられた側の面に対向する対向面14が形成されている。
【0051】
さらに、蓋部材20における頭部22とグラウト注入口12における対向面14との間には、樹脂層24が形成されている。樹脂層24は、リング状をなしており、蓋部材20における雄ネジ部21を貫通して配設されている。その他の点は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0052】
このように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおいては、蓋部材20における頭部22とグラウト注入口12における対向面14との間に樹脂層24が形成されている。このため、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおいては、樹脂層24が蓋部材20における頭部22とグラウト注入口12における対向面14との間に配置されている。このため、グラウト注入口12における雌ネジ部13と蓋部材20における雄ネジ部21との間に樹脂層が形成されていないので、雌ネジ部13に雄ネジ部21をねじ込む際に、樹脂層が磨耗することを防止することができる。
【0054】
〔第6の実施形態〕
さらに、本発明の第6の実施形態について説明する。図7(a)は、本発明の第6の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の要部分解斜視図、(b)は、蓋部材の底面図である。図7に示すように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材20は、上記第1の実施形態と同様の雄ネジ部21および頭部22を備えている。また、頭部22における雄ネジ部21が取り付けられている側である裏面側には、4つの嵌合孔22Aが形成されている。これらの嵌合孔22Aは、頭部22の中心点を取り囲む位置において、互いに等間隔となるように配置されている。
【0055】
さらに、蓋部材20の頭部22における背面側には、リング部材25が嵌め込まれている。リング部材25は、樹脂製であり、本発明の振動吸収部材となる。リング部材25は、円盤状のリング部材本体25Aを備えている。リング部材本体25Aの表面側には、4つの突起部25Bが設けられている。これらの突起部25Bは、リング部材本体25Aの中心点を取り囲む位置において、互いに等間隔となるように配置されている。
【0056】
また、突起部25Bは、頭部22に形成された4つの嵌合孔22Aにそれぞれ対応する位置に形成されており、4つの突起部25Bが4つの嵌合孔22Aに対してそれぞれ同時に嵌合可能とされている。これらの嵌合孔22Aおよび突起部25Bによって回転伝達部が形成されている。
【0057】
さらに、リング部材本体25Aにおける裏面側には、緩衝用突起部25Cが形成されている。緩衝用突起部25Cは、リング部材本体25Aの裏面側全域にわたって複数形成されている。この緩衝用突起部25Cは、グラウト注入口12における雌ネジ部13に対して蓋部材20の雄ネジ部21がねじ込まれた際に、蓋部材20における頭部22とグラウト注入口12における対向面14(図6)との間に介在される。その他の点は、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0058】
かかる構成を有する本実施形態に係るトンネル用セグメントでは、蓋部材20における頭部22とグラウト注入口12における対向面14との間に樹脂製のリング部材25が介在されている。このため、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0059】
また、蓋部材20とグラウト注入口12との間に振動吸収作用を持たせるにあたり、リング部材25を介在させるだけでよいので、汎用性に富むものとなる。さらに、蓋部材20における頭部22およびリング部材25には、それぞれ嵌合孔22Aおよび突起部25Bが形成されている。このため、蓋部材20における雄ネジ部21をグラウト注入口12における雌ネジ部13に回転させながらねじ込む際に、リング部材25を蓋部材20の回転に追従させて移動させることができる。したがって、蓋部材20における頭部22とリング部材25との密着性を良好な状態で維持することができる。
【0060】
〔第7の実施形態〕
続いて、本発明の第7の実施形態について説明する。図8(a)は、本発明の第7の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の平面図、(b)は、その斜視図である。図8に示すように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材20は、上記第1の実施形態と同様の雄ネジ部21を備えている。また、雄ネジ部21の一端側には、頭部22が接続されているが、この頭部22は、平面視した形状が正六角形状をなしている。さらに、頭部22における周囲には、羽根部材26が取り付けられている。羽根部材26は、頭部22に嵌め込まれる中心盤26Aと、中心盤26Aの周囲に取り付けられる複数の羽根26Bを備えている。中心盤26Aと複数の羽根26Bとは一体的に成形されており、羽根部材26は、樹脂製であり、振動吸収部材を構成している。
【0061】
複数の羽根26Bは、蓋部材20における頭部22の半径方向から傾いており、雄ネジ部21を雌ネジ部13にねじ込むために回転させる際に追従する方向を向いて取り付けられている。さらに、グラウト注入口12における雌ネジ部13の入口部には、頭部22の周面を取り囲む側方対向面となる取囲孔が形成されている。グラウト注入口12における雌ネジ部13に対して蓋部材20の雄ネジ部21がねじ込まれた際には、羽根部材26における羽根26Bが、グラウト注入口12における取囲孔に対して折り込まれた状態で接触する。その他の点については上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0062】
このように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおいては、蓋部材20における頭部22とグラウト注入口12における取囲孔との間に樹脂製の羽根部材26が介在されている。このため、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0063】
また、本実施形態に係るトンネル用セグメントでは、振動吸収部材となる羽根部材26が蓋部材20における頭部22の側面に設けられている。このため、グラウト注入口12における雌ネジ部13に対して蓋部材20の雄ネジ部21をねじ込むにあたって、振動吸収部材を考慮する必要がなくなる。
【0064】
さらに、羽根部材26は、雄ネジ部21を雌ネジ部13にねじ込むために回転させる際に追従する方向を向いて取り付けられている。このため、雄ネジ部21を雌ネジ部13にねじ込む際に、羽根部材26が邪魔とならないようにすることができるとともに、雄ネジ部21を雌ネジ部13にねじ込んだ後は、羽根部材26が安定した状態では取囲孔に当接した状態となるようにすることができる。
【0065】
〔第8の実施形態〕
さらに、本発明の第8の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第7の実施形態と比較して、羽根部材26に代えて、糸状バネ部材が用いられている点において異なっており、その他の点については、上記第7の実施形態と同様とされている。図9(a)は、本発明の第8の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の平面図、(b)は、その斜視図である。
【0066】
図9に示すように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材20は、上記第7の実施形態と同様の雄ネジ部21および頭部22を備えている。この頭部22には、糸状バネ部材27が取り付けられている。糸状バネ部材27は、頭部22に嵌め込まれる中心盤27Aと、中心盤26Aの周囲に取り付けられる糸状バネ27Bを備えている。中心盤27Aおよび糸状バネ27Bは、いずれも樹脂製であり、糸状バネ部材27は振動吸収部材を構成している。
【0067】
このように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおいては、蓋部材20における頭部22とグラウト注入口12における取囲孔との間に樹脂製の糸状バネ部材27が介在されている。このため、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0068】
また、本実施形態に係るトンネル用セグメントでは、振動吸収部材となる糸状バネ部材27が蓋部材20における頭部22の側面に設けられている。このため、グラウト注入口12における雌ネジ部13に対して蓋部材20の雄ネジ部21をねじ込むにあたって、振動吸収部材を考慮する必要がなくなる。
【0069】
さらに、糸状バネ部材27における糸状バネ27Bは、可とう性に富むものである。このため、雄ネジ部21を雌ネジ部13にねじ込む際に、糸状バネ部材27が邪魔とならないようにすることができるとともに、雄ネジ部21を雌ネジ部13にねじ込んだ後は、糸状バネ部材27における糸状バネ27Bが安定した状態では取囲孔に当接した状態となるようにすることができる。
【0070】
〔第9の実施形態〕
続いて、本発明の第9の実施形態について説明する。図10(a)〜(d)は、いずれも本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の斜視図である。図10(a)に示すように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材20は、上記第1の実施形態と雄ネジ部21と頭部22とを備えている。頭部22には、棒状の樹脂部材28が頭部22を貫通する状態で取り付けられている。また、樹脂部材28は、その両端部が頭部22の側面から若干突出する状態で取り付けられており、振動吸収部材を構成している。
【0071】
さらに、グラウト注入口12(図1)における雌ネジ部13の入口部には、上記第7の実施形態と同様、頭部22の周面を取り囲む側方対向面となる取囲孔が形成されている。グラウト注入口12における雌ネジ部13に対して蓋部材20の雄ネジ部21がねじ込まれた際には、樹脂部材28の先端部が、グラウト注入口12における取囲孔に対して接触する。その他の点については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。また、図10(b)〜(d)に示す例は、本実施形態の変形例である。
【0072】
このように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材20においては、頭部22を貫通する棒状の樹脂部材28が設けられており、グラウト注入口12における雌ネジ部13に対して蓋部材20の雄ネジ部21がねじ込まれた際には、樹脂部材28が、グラウト注入口12における取囲孔に接触する。このため、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る蓋部材20では、樹脂部材28の数は設置態様を種々の態様とすることができる。たとえば、図10(b)に示すように、2本の樹脂部材28を並設することもできるし、図10(c)に示すように、2本の樹脂部材28をクロスさせた状態でも受けることもできる。さらに、図10(d)に示すように、樹脂部材28を蓋部材20の頭部22に貫通させることなく、頭部22の側面に取り付ける態様とすることもできる。
【0074】
なお、本実施形態では、樹脂部材28の先端部が円筒状とされているが、その先端部の形状は限定されず、三角形、台形、矩形、円形など種々の形状とすることができる。
【0075】
〔第10の実施形態〕
次に、本発明の第10の実施形態について説明する。図11は、本発明の第10の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材の平面図である。図11に示すように、本実施形態に係る蓋部材20は、上記第1の実施形態と同様の頭部22を備えている。頭部22の側面には、振動吸収部材となるリング状の環部材29が取り付けられている。
【0076】
環部材29は、環部材本体29Aと、環部材本体29Aから放射状に突出する複数の突起部29Bとを備えている。環部材29は、金属製であり、環部材本体29Aと突起部29Bとが一体的に形成されている。
【0077】
環部材29を蓋部材20の頭部22に取り付けるにあたり、環部材本体29の径が頭部22よりも若干小径の環部材29を用意し、環部材29を高温化に曝すことによって大径化する。この状態で、環部材29を蓋部材20の頭部22に取り付けた後、急冷させることによって蓋部材20に頭部22に環部材29を固定する。こうして、環部材29は、いわゆる「焼きばめ」によって蓋部材20に取り付けられている。その他の点については、上記第9の実施形態と構成とされている。
【0078】
このように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材20では、頭部22の側面に環部材29が取り付けられている。このため、トンネル用セグメントに大きな振動が作用した場合であっても、把持孔やグラウト注入孔からの蓋部材の緩みや脱落を防止することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る蓋部材20では、環部材29が焼きばめによって取り付けられている。このため、蓋部材20の頭部22と環部材29とを強固に一体化することができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、樹脂層24、リング部材25、羽根部材26、糸状バネ部材27、および樹脂部材28として樹脂を用いているが、これらを金属またはゴムなどで形成する態様とすることもできる。特に、第5の実施形態では、スプリングワッシャ、ゴム質のリング部材を用いることができる。
【0081】
また、上記実施形態では、蓋部材20をグラウト注入口12に設けるようにしているが、図12に示すように、セグメントを搬送する際に用いられるセグメント把持孔2を塞ぐ際に蓋部材20を用いる態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0082】
1…トンネル用セグメント
2…セグメント把持孔
10…コンクリート層
11…グラウト注入孔
12…グラウト注入口
13…雌ネジ部
14…対向面
20…蓋部材
21…雄ネジ部
22…頭部
22A…嵌合孔
23…ネジ山
23A…切り込み部
24…樹脂層
25…リング部材
25A…リング部材本体
25B…突起部
25C…緩衝用突起部
26…羽根部材
26A…中心盤
26B…羽根
27…糸状バネ部材
27A…中心盤
27B…糸状バネ
28…樹脂部材
28…両端部
29…環部材
29A…環部材本体
29B…突起部
T…地山


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメント本体の内面側に孔部が形成され、前記孔部を塞ぐ蓋部材が前記孔部に取り付けられているトンネル用セグメントであって、
前記孔部に雌ネジ部が形成されるとともに、前記蓋部材に、前記雌ネジ部にねじ込まれる雄ネジ部が形成されており、
前記穴部と前記蓋部材との間に、振動吸収部材が介在されていることを特徴とするトンネル用セグメント。
【請求項2】
前記蓋部材がセラミック製である請求項1に記載のトンネル用セグメント。
【請求項3】
前記振動吸収部材が、金属、樹脂、またはゴムである請求項2に記載のトンネル用セグメント。
【請求項4】
前記雄ネジ部におけるネジ山の頂部および前記ネジ山間の谷部の少なくとも一方に前記振動吸収部材が介在されている請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のトンネル用セグメント。
【請求項5】
前記雄ネジ部に切り込み部が形成され、前記切り込み部に前記振動吸収部材が配設されている請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のトンネル用セグメント。
【請求項6】
前記蓋部材は、前記雄ネジ部と、前記雄ネジ部が取り付けられた頭部とを備え、
前記セグメント本体における前記雌ネジ部の周囲には、前記蓋部材における前記頭部の前記雄ネジ部が取り付けられた側の面に対向する対向面が形成されており、
前記頭部と前記対向面との間に前記振動吸収部材が介在されている請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のトンネル用セグメント。
【請求項7】
前記振動吸収部材は、前記蓋部材における前記雄ネジ部を貫通するリング部材を有し、前記リング部材における前記蓋部材の前記頭部側の面と前記蓋部材の前記頭部とに対して、前記蓋部材の回転を前記振動吸収部材に伝達する回転伝達部が形成されている請求項6に記載のトンネル用セグメント。
【請求項8】
前記蓋部材は、前記雄ネジ部と、前記雄ネジ部が取り付けられた頭部とを備え、
前記セグメント本体における前記孔部の周囲には、前記蓋部材における前記頭部の側面に対向する側方対向面が形成されており、
前記蓋部材における頭部の側面と前記セグメント本体における前記側方対向面との間に前記振動吸収部材が介在されている請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のトンネル用セグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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