説明

トンネル用セグメント

【課題】 火災等によってトンネルの内側が高温となった場合に、セグメント本体の奥深くまでの温度上昇を防止し、セグメント本体の補修部分の増加を防止することができるトンネル用セグメントを提供する。
【解決手段】 トンネル用セグメントには、孔部となる内側空間が形成された把持部材11が設けられている。把持部材11には、セラミックス製の蓋部材20が取り付けられている。把持部材11の内側空間には、詰物23が設けられている。この詰物23により、把持部材11の内側空間における空気の対流に伴う熱の伝達が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル用セグメントに係り、特に、把持部材における孔部やグラウト注入孔を塞ぐ蓋部材を有するトンネル用セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルに用いられるトンネル用セグメントには、裏込め注入を行う際のグラウト注入孔が形成されている。このグラウト注入孔は、グラウト注入終了後に蓋部材によって塞がれることが多い。このように蓋部材によってグラウト注入孔を塞ぐ際、グラウト注入孔におけるグラウト注入口部をセラミックスで構成するとともにグラウト注入口部に雌ネジを形成しておき、この雌ネジ部にネジ込まれる雄ネジを有する封止プラグを用いる技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、トンネル用セグメントには、トンネル用セグメントを組み立てる際にエレクタに把持される把持孔が形成されている。この把持孔についても、トンネル用セグメントの組立終了後、蓋部材によって塞がれることが多い。この蓋部材によって把持孔を塞ぐ際、把持孔にセラミックス製であり、雌ネジが形成された連結部材を埋設し、連結部材の雌ネジ部にねじ込まれる雄ネジを有する封止プラグを用いる技術が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−177547号公報
【特許文献2】特開2007−162432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のシールドトンネルの内側で火災が発生した場合等は、火災による熱がトンネル用セグメントに伝達する。ここで、上記各特許文献に開示されたトンネル用セグメントでは、封止プラグがセラミックス製であり、セラミックスは耐熱性能に優れることから、封止プラグが火災によって破損する心配は小さい。
【0006】
しかしながら、火災によって孔部の温度が上昇すると、孔部の温度の上昇に伴い、セグメント本体の厚さ方向奥深くまで高温となってしまうこととなる。一般に、セグメント本体はコンクリートで製造されており、所定温度、たとえば500℃以上となる温度まで上昇すると、強度が低下し、補修を余儀なくされることとなる。
【0007】
このため、上記各特許文献に開示されたトンネル用セグメントでは、トンネルの内側で火災が発生した場合にはセグメント本体の奥深くまで温度が上昇してしまい、補修部分が多くなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、火災等によってトンネルの内側が高温となった場合に、セグメント本体の奥深くまでの温度上昇を防止し、セグメント本体の補修部分の増加を防止することができるトンネル用セグメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係るトンネル用セグメントは、セグメント本体の内面側に孔部が形成され、孔部を塞ぐ蓋部材が孔部に取り付けられているトンネル用セグメントであって、蓋部材がセラミック製であり、トンネルの内側から、蓋部および孔部を介してセグメント本体に伝達される熱の伝達を抑止する熱伝達抑止構造が形成されていることを特徴とする。
【0010】
トンネルの内側が高温となると、セグメント本体のトンネル内側表面よりも、孔部を介してセグメント本体の内側に伝達される熱量が多い。そこで、本発明に係るトンネル用セグメントにおいては、トンネルの内側から、蓋部および孔部を介してセグメント本体に伝達される熱の伝達を抑止する熱伝達抑止構造が形成されている。このため、トンネルの内側が高温となった場合に、孔部を介して伝達される熱量を少なくすることができる。その結果、火災等によってトンネルの内側が高温となった場合に、セグメント本体の奥深くまでの温度上昇を防止し、セグメント本体の補修部分の増加を防止することができる。
【0011】
ここで、熱伝達抑止構造は、孔部に封入された耐熱性部材を備える態様とすることができる。
【0012】
このように、孔部に耐熱性部材が備えられる態様とすることにより、高い耐熱性を発揮することができる。
【0013】
また、耐熱性部材が、有害物質非発生材料からなる態様とすることができる。
【0014】
このように、耐熱性部材が有害物質非発生材料であることにより、耐熱性部材が高温となった場合でも、有害物質の発生を防止することができる。
【0015】
さらに、耐熱性部材が、低熱伝導性材料からなる態様とすることができる。
【0016】
このように、耐熱性部材が低熱伝導性材料からなることにより、孔部における温度の伝達を好適に防止することができる。
【0017】
また、熱伝達抑止構造は、蓋部材を貫通し、孔部とトンネルの内側とを通風可能とする貫通孔と、蓋部材が所定の温度未満のときに貫通孔を封鎖し、蓋部材が所定の温度以上となったときに貫通孔を通風可能とする封鎖部材とを備える態様とすることができる。
【0018】
本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける熱伝達抑止構造は、熱伝達抑止構造として蓋部材が所定の温度未満のときに貫通孔を封鎖し、蓋部材が所定の温度以上となったときに貫通孔を通風可能とする封鎖部材によって貫通孔が封鎖されている。このため、常時は、蓋部材としての機能を発揮させることができ、火災などが生じた場合に、封鎖部材が溶融し、貫通孔を介して孔部とトンネルの内部とが通風可能となる。その結果、孔部の圧力を低減することができるので、蓋部材の損傷を防止することができるとともに、孔部内における熱の伝達を遅くすることができる。したがって、火災等によってトンネルの内側が高温となった場合に、セグメント本体の奥深くまでの温度上昇を防止し、セグメント本体の補修部分の増加を防止することができる。
【0019】
ここで、封鎖部材は、貫通孔に充填され、所定の温度以上となったときに溶融する溶融材料である態様とすることができる。
【0020】
このように、封鎖部材としては、貫通孔に設けられ、所定の温度以上となったときに溶融する溶融材料を好適に用いることができる。
【0021】
さらには、封鎖部材は、貫通孔を塞ぎ、孔部の圧力が所定値以上となったときに、孔部の圧力によって破壊される壁部材である態様とすることができる。
【0022】
このように、封鎖部材としては、貫通孔を塞ぎ、孔部の圧力が所定値以上となったときに、孔部の圧力によって破壊される壁部材も好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るトンネル用セグメントによれば、火災等によってトンネルの内側が高温となった場合に、セグメント本体の奥深くまでの温度上昇を防止し、セグメント本体の補修部分の増加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るトンネル用セグメントの側断面図、(b)は、その要部拡大側断面図である。
【図2】蓋部材の斜視図である。
【図3】従来の把持部材における熱および空気の流れを示す模式図である。
【図4】本実施形態に係る把持部材における熱および空気の流れを示す模式図である。
【図5】第2の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける把持部材および蓋部材の側断面図、(b)は、蓋部材の斜視図である。
【図6】第3の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材および詰物の側断面図である。
【図7】突起部材の温度に応じた色の変化を示す図である。
【図8】グラウト注入孔に蓋部材が取り付けられた状態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0026】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係るトンネル用セグメントの側断面図、(b)は、その要部拡大側断面図、図2は、蓋部材の斜視図である。
【0027】
図1に示すように、トンネル用セグメント1は、地山Tの構築されるシールドトンネルに用いられる。このトンネル用セグメント1は、定型に形成されたコンクリート層10を備えている。また、トンネル用セグメント1と地山Tとの間には、裏込め注入層Uが形成されている。トンネル用セグメント1におけるコンクリート層10には、トンネル用セグメント1を組み立てる際に、図示しないエレクタに把持される把持部材11が形成されている。
【0028】
把持部材11は、金属またはアルミナ、ジルコニア、ムライト、コーディライト、ステアタイト等のセラミックスによって構成されている。また、把持部材11は、円筒形状をなしており、その内側面におけるトンネル内面側端部に雌ネジ部12が形成されている。把持部材11における雌ネジ部12よりもトンネル外側は、中空の円筒部13とされており、底部が底板14によって塞がれている。こうして、把持部材11には、円筒部13の内側に孔部が形成されている。
【0029】
また、把持部材11には、セラミックス製の蓋部材20が取り付けられている。蓋部材20は、ボルト状をなしており、雄ネジ部21と、雄ネジ部21の一端側に接続された頭部22とを備えている。これらの雄ネジ部21と頭部22とは一体的に形成されており、たとえばアルミナ、ジルコニア、ムライト、コーディライト、ステアタイト等のセラミックスによって構成されている。
【0030】
雄ネジ部21におけるネジ山は幅広とされている。この雄ネジ部21は、把持部材11に形成された雌ネジ部12に対してねじ込み可能とされている。頭部22は円盤状をなしており、把持部材11における雌ネジ部12に対して蓋部材20の雄ネジ部21を最大にねじ込むと、頭部22の一面がコンクリート層10の内面側および把持部材11の表面にほぼ当接する。
【0031】
さらに、蓋部材20における雄ネジ部21の先端部には、円筒状の詰物23が取り付けられている。詰物23は、把持部材11における円筒部13の内径よりも若干小さい径をなしている。また、その高さは、円筒部13の高さと略同一とされている。
【0032】
このため、蓋部材20の雄ネジ部21が把持部材11の雌ネジ部12に完全にねじ込まれると、把持部材11の底板14に詰物23が略当接する。さらに、円筒部13と詰物23との間には、わずかな隙間が形成された状態となっている。
【0033】
詰物23は、耐熱性および低熱伝導性を有するとともに、加熱によって有害物質を発することがない有害物質非発生材料、具体的には、ブランケット(綿)、耐火モルタル、軽石、ケイ酸カルシウム、多孔質セラミックスなどによって構成される。
【0034】
次に、本実施形態に係るトンネル用セグメント1の作用効果について説明する。本実施形態に係るトンネル用セグメント1においては、トンネル用セグメント1の組立が終了した後、把持部材11に蓋部材20を取り付け、その後は、把持部材11に蓋部材20を取り付けた状態として維持しておく。この蓋部材20は、シールドトンネルの施工が完了した後も、把持部材11に取り付けられた状態となっている。
【0035】
ここで、たとえば、トンネルに火災などが発生し、トンネル内が高温環境となると、把持部材11および蓋部材20も温度が上昇する。さらには、コンクリート層10についても温度が上昇する。このとき、コンクリート層10は、ある程度の温度、たとえば300度程度まで上昇した場合でも、補修の必要は生じないが、たとえば500度以上の温度まで上昇した場合には、補修の必要が生じる。
【0036】
トンネル内の温度上昇が生じた場合のコンクリート層10の温度上昇は、トンネル内から直接的に受ける熱量によるものと、蓋部材20および把持部材11を通じて受ける熱量によるものとがある。このうちの蓋部材20および把持部材11を通じて受ける熱量による温度上昇により、コンクリート層10における深い位置での温度上昇が見られることとなる。
【0037】
いま、詰物23が設けられていない場合を想定すると、図3に示すように、トンネル内の温度上昇に伴い、蓋部材20を介して把持部材11内の温度が上昇する。このとき、把持部材11内には、広い内側空間が形成されていることから、把持部材11内を空気Rが対流する。この空気Rの対流により、把持部材11内の温度が均等に上昇する。把持部材11内の温度が上昇すると、コンクリート層10における浅い部分と深い部分とで均等に熱Fが伝達され、温度上昇が生じることから、コンクリート層10の深い部分についても高温化するという事態が生じる。
【0038】
この点、本実施形態に係るトンネル用セグメント1においては、把持部材11の内側空間に詰物23が設けられている。このため、図4に示すように、把持部材11の内側空間における空気の対流が抑制され、コンクリート層10における深い部分までの熱の伝達を防止している。したがって、たとえばコンクリート層10における浅い部分では、500度程度まで温度が上昇したとしても、コンクリート層10における深い部分では300度程度までしか温度が上昇しない。このように、火災等によってトンネルの内側が高温となった場合に、コンクリート層10の奥深くまでの温度上昇を防止し、コンクリート層10の補修部分の増加を防止することができる。
【0039】
また、本実施形態に係るトンネル用セグメント1では、詰物23において耐熱性を有する材料が用いられている。このため、高い耐熱性を発揮することができ、詰物23の損傷等を防止することができる。また、詰物23は、高い低熱伝導性を有するので、円筒部13内における熱の伝導をより好適に防止することができる。さらに、詰物23としては、有害物質非発生材料が用いられている。このため、耐熱性部材が高温となった場合でも、有害物質の発生を防止することができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5(a)は、第2の実施形態に係るトンネル用セグメントにおける把持部材および蓋部材の側断面図、(b)は、蓋部材の斜視図である。
【0041】
図5に示すように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材20においては、雄ネジ部21の内側に第1肉抜き部24が形成されるとともに、頭部22の内側に、第2肉抜き部25が形成されており、さらには、第1肉抜き部24と第2肉抜き部25との間に貫通孔26が形成されている。この貫通孔26は、蓋部材20を貫通しており、トンネルの内側と把持部材11の内側とを通風可能としている。
【0042】
また、詰物23は多孔質セラミックスで形成されていることから、空気の流通が可能とされている。このため、把持部材11の内側において、空気の流通が円滑に行われている。さらに、詰物23における蓋部材20側には、蓋部材20に形成された第1肉抜き部24に嵌め込まれる突起部が形成されている。詰物23における突起部が第1肉抜き部24に嵌め込まれることにより、蓋部材20と詰物23とが一体化されている。こうして、蓋部材20と詰物23とが一体化されていることにより、蓋部材20が把持部材11とともに振動した際、詰物23のがたつきを防止することができる。また、詰物23の突起部と第1肉抜き部24との間に接着用の樹脂を配することで、さらなる一体化を図ることもできる。
【0043】
さらに、第1肉抜き部24における貫通孔26が形成された面である底面には、所定温度、たとえば300度以上となったときに溶融する溶融材料が塗布されて封止層27が形成されている。第1肉抜き部24の底面に封止層27が形成されていることにより、貫通孔26が封鎖され、トンネルの内部と把持部材11の内側とが非貫通状態とされている。本実施形態に係るトンネル用セグメントにおけるその他の点については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0044】
以上の構成を有する本実施形態に係るトンネル用セグメントにおいては、上記第1の実施形態と同様、トンネル用セグメントの組立が終了した後、把持部材11に蓋部材20を取り付け、その後は、把持部材11に蓋部材20を取り付けた状態として維持しておく。この蓋部材20は、トンネルの施工が完了した後も、把持部材11に取り付けられた状態となっている。
【0045】
いま、火災などが生じていない常時は、第1肉抜き部24に封止層27が形成されていることから、貫通孔26が非貫通状態とされ、把持部材11の内部は密封された状態となっている。ここで、たとえば、トンネル内で火災などが発生し、トンネル内が高温環境となると、把持部材11および蓋部材20が高温状態となる。このままでは、把持部材11内の空気の温度が上昇し、この空気の対流によってコンクリート層10の深い部分まで高温となってしまう。
【0046】
この点、本実施形態に係るトンネル用セグメントでは、把持部材11および蓋部材20が高温となると、封止層27を形成する溶融材料が溶融し、貫通孔26が開放される。貫通孔26が開放されると、把持部材11の内側とトンネルの内部とか通風可能となる。その結果、把持部材11の内側の圧力を低減することができるので、蓋部材20の損傷を防止することができるとともに、把持部材11の内側における熱の伝達を遅くすることができる。
【0047】
こうして、把持部材11の内側における圧力が低下するとともに、熱の伝達を遅くすることにより、コンクリート層10における深い部分が高温化しないようにすることができる。したがって、火災等によってトンネルの内側が高温となった場合に、コンクリート層10の奥深くまでの温度上昇を防止し、コンクリート層10の補修部分の増加を防止することができる。
【0048】
さらに、本発明の第3の実施形態について説明する。図6は、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材および詰物の側断面図である。
【0049】
図6に示すように、本実施形態に係るトンネル用セグメントにおける蓋部材20は、上記第1の実施形態と同様、中実の雄ネジ部21および頭部22を備えている。また、雄ネジ部21の先端部には、棒状の突起部材28が取り付けられている。さらに、突起部材28には、温度に応じて色が変化する感温インキが塗布されている。また、この感温インキには、不可逆性色素が用いられている。
【0050】
また、詰物23における蓋部材20側の端面には、突起部材28が挿入される挿入孔が形成されている。この挿入孔が形成されていることにより、詰物23が蓋部材20に隣接する状態で配置される。本実施形態におけるその他の点については、上記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0051】
以上の構成を有する本実施形態にトンネル用セグメントにおいては、上記第1の実施形態と同様、把持部材11内に詰物23が設けられている、このため、火災等によってトンネルの内側が高温となった場合に、コンクリート層10の奥深くまでの温度上昇を防止し、コンクリート層10の補修部分の増加を防止することができる。
【0052】
また、火災等によってトンネル内の温度が上昇すると、コンクリート層10の温度の上昇も避けられない。ここで、上記のように、コンクリート層10の温度が上昇し、たとえば500度程度を超えると、コンクリート層10の補修が必要となるため、コンクリート層10の温度を計測することが求められる。
【0053】
この点、本実施形態では、詰物23に突起部材28が挿入され、突起部材28には感温インキが塗布されている。このため、トンネル内の温度が上昇し、温度が低下した後、把持部材11から蓋部材20を引き出し、詰物23を蓋部材20から取り外すと、たとえば図7に示すように、突起部材28に塗布された感温インキの色が周囲の温度に応じて変化する。
【0054】
図7に示す例では、突起部材28における上端部分28Aが色の変化がない状態となり、高さ方向中央部分28Bが300度を超えた際の色に変化し、下端部分28Cが500度を超えた際の色に変化している。この例では、下端部分28Cが500度を超えた際の色に変化していることから、コンクリート層10における下端部分28Cに対応する深さまでコンクリート層10を補修すればよいことが分かる。このように、突起部材28を設け、この突起部材28に感温インキを塗布しておくことにより、コンクリート層10の温度を容易に確認することができる。しかも、感温インキとして付加逆性色素が用いられていることにより、感温インキが最高温度となった時点での温度に対応する色に変化している。このため、コンクリート層10における最高温度に達した際の温度を計測することができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態においては、蓋部材20を把持部材11に取り付けているが、図8に示すように、グラウト注入孔30に蓋部材20を取り付ける態様とすることもできる。シールドトンネルを施工する際、トンネル用セグメント1の組み立てが終了した後、トンネル用セグメント1の内側からトンネル用セグメント1と地山Tとの間に裏込め注入層Uを形成するために、グラウト材を注入する。このとき、トンネル用セグメント1を貫通するグラウト注入孔30をトンネル用セグメントに形成しておく。
【0056】
そして、グラウト材の注入が終了した後は、蓋部材20によってグラウト注入孔30を封止しておく。このときの蓋部材20としても、本実施形態に係る蓋部材20を用いることができる。
【0057】
また、上記第2の実施形態では、把持部材11の内側に詰物23を設けているが、この詰物23を設けない態様とすることもできる。また、上記各実施形態において、詰物23に吸熱材を混入したり、詰物23とともに吸熱材を把持部材11の内側に設けたりする態様とすることもできる。吸熱材を混入することにより、把持部材11の冷却を図ることもできる。
【0058】
ここで用いられる吸熱材としては、粘土等の無機質の粘着物質、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰などの石灰類、二水石膏、石膏プラスターなどの石膏類、ゼオライトに例示される石膏類と同様に水化度の大きい物質、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ほう砂、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、あるいはガス化合物などを用いることができる。さらには、これらの吸熱材を用いて1次加工した粉末状または骨材状態の人工吸熱材が1種以上混合されたものを使用することができる。
【0059】
さらに、上記第2の実施形態においては、貫通孔26に封鎖部材を設けるために溶融部材を塗布しているが、このような溶融部材を貫通孔26に充填しておく態様とすることもできる。あるいは、封鎖部材として貫通孔26に薄い壁部を形成しておくこともできる。このときの壁部の強度としては、把持部材11の内側における空気の温度が上昇して把持部材11の内圧が高くなり、所定の圧力を超えた場合に、破壊される強度とすることが好適である。他方、上記実施形態に用いられる詰物23としては、ポーラス材料のセラミックに樹脂コーティングしたものを用いることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1…トンネル用セグメント
10…コンクリート層
11…把持部材
12…雌ネジ部
13…円筒部
14…底板
20…蓋部材
21…雄ネジ部
22…頭部
23…詰物
23…ネジ山
24…第1肉抜き部
25…第2肉抜き部
26…貫通孔
27…封止層
28…突起部材
28A…上端部分
28B…高さ方向中央部分
28C…下端部分
30…グラウト注入孔
F…熱
R…空気
T…地山
U…注入層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメント本体の内面側に孔部が形成され、前記孔部を塞ぐ蓋部材が前記孔部に取り付けられているトンネル用セグメントであって、
前記蓋部材がセラミック製であり、
前記トンネルの内側から、前記蓋部および前記孔部を介して前記セグメント本体に伝達される熱の伝達を抑止する熱伝達抑止構造が形成されていることを特徴とするトンネル用セグメント。
【請求項2】
前記熱伝達抑止構造は、前記孔部に封入された耐熱性部材を備える請求項1に記載のトンネル用セグメント。
【請求項3】
前記耐熱性部材が、有害物質非発生材料からなる請求項2に記載のトンネル用セグメント。
【請求項4】
前記耐熱性部材が、低熱伝導性材料からなる請求項2または請求項3に記載のトンネル用セグメント。
【請求項5】
前記熱伝達抑止構造は、吸熱性部材をさらに備える請求項2〜請求項4のうちのいずれか1項に記載のトンネル用セグメント。
【請求項6】
前記熱伝達抑止構造は、前記蓋部材を貫通し、前記孔部と前記トンネルの内側とを通風可能とする貫通孔と、前記蓋部材が所定の温度未満のときに前記貫通孔を封鎖し、前記蓋部材が所定の温度以上となったときに前記貫通孔を通風可能とする封鎖部材とを備える請求項1に記載のトンネル用セグメント。
【請求項7】
前記封鎖部材は、前記貫通孔に設けられ、所定の温度以上となったときに溶融する溶融材料である請求項6に記載のトンネル用セグメント。
【請求項8】
前記封鎖部材は、前記貫通孔を塞ぎ、前記孔部の圧力が所定値以上となったときに、前記孔部の圧力によって破壊される壁部材である請求項6に記載のトンネル用セグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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