説明

トンネル用ライニングセグメント

【課題】耐用年数を長くし、走流性能を高めるとともに、セグメント製作コスト及びトンネル施工コストを低減し、見栄えを良好にする。
【解決手段】トンネル用ライニングセグメント100において、セグメント本体11と、樹脂製シート基材13の背面15に厚さ0.3〜1.0mm,密度80〜160とされる不織布17が積層形成され不織布17がセグメント本体11のコンクリート打設時のコンクリート19に埋入されてセグメント本体11の内周面21を覆う被覆シート23と、を設けた。ライニングセグメント100は、開口部27がセグメント本体11の内周面21に開口してセグメント本体11に埋設されると共に一側面29がセグメント本体11の連結面31に配置される連結箱33と、連結箱33の開口部27の位置に形成され被覆シート23の縁部から切り込んだ切込部によって開口部27を開閉可能とするフラップ部39と、を備えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法に用いられるトンネル用ライニングセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法による例えば下水管路の敷設においては、一次覆工の腐食を防ぐために、一次覆工の内部に二次覆工を行って一次覆工を保護するのが一般的である。ところが、トンネル内の必要内空を確保した上で、二次覆工を行うと必然的にトンネル外径が大きくなり、トンネル施工のコストアップを招く。そこで、二次覆工を省略する工法として、例えばセグメントの内面に防食性の合成樹脂等の物質を吹き付けたり塗布したりしてセグメント内面に防食層を設けることが知られている(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
ここで開示されている防食ライニングセグメントは、トンネル内の汚水によるセグメント内部の腐食を防止する防食層が内周面に設けられる。より具体的には、防食層より外周側に設けられた透水層と、透水層からトンネルの内部、又はトンネルの端部への排水をするための排水手段と、を備える。この構成によれば、下水管路の敷設において、二次覆工を省略するとともに、下水による一次覆工の腐食を保護する防食層が地下水の水圧で剥離したり破壊されたりしなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4076270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、防食層には継手部材を表出させるための切欠部を複数箇所に形成しなければならず、セグメント同士の連結後には、蓋や充填剤(モルタル)等の閉塞部材を用いて継手部材の開口部を覆い、その表面を防食層にて覆わなければならなかった。このため、防食層の複数箇所に後付防食層が生じ、耐用年数を短縮させた。また、この接続部は、走流性能を低下させた。さらに、別体の蓋部材を用いれば、部品点数が増え、セグメント製作コストが増大するとともに、閉塞作業も煩雑となり、トンネル施工コストも増大した。また、防食層に複数の後付防食層が表出することは、トンネル内周面の見栄えを低下させた。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、耐用年数が長くなり、走流性能が向上するとともに、セグメント製作コスト及びトンネル施工コストを低減でき、しかも、見栄えを良好にできるトンネル用ライニングセグメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のトンネル用ライニングセグメントは、セグメント本体11と、
樹脂製シート基材13の背面15に不織布17が積層形成され該不織布17が前記セグメント本体11のコンクリート打設時のコンクリート19に埋入されて前記セグメント本体11の内外の少なくともいずれか一方の周面21を覆う被覆シート23と、
を具備し、
前記被覆シート23の不織布17は、厚さが0.3〜1.0mm、密度が80〜160とされることを特徴とする。
【0008】
このトンネル用ライニングセグメントでは、不織布がコンクリート19に埋入することで、アンカー効果により、被覆シート23がセグメント本体11に高い接着力で被着される。特に不織布17を、厚さ0.3〜1.0mmとし、目付量(g/m2 )を厚さ(mm)で除した値を密度として、その数値を80〜160としたことで良好なアンカー効果を発揮し、コンクリート硬化とともに一体化する。セグメント本体11の内周面およびまたは外周面が被覆シート23によって覆われることで、トンネル外周面およびまたはトンネル内表面に、異素材シートや、同種別体のシートが混在して被覆されなくなる。これにより、セグメント本体11が確実に被覆され、トンネルの外周面である地山側の周面が覆われる構成とすれば、例えば酸性土壌などの場合に対する腐食防止となり、また、トンネル内表面を構成する場合では一定の粗度係数となる。また、別体シートが貼られることによる位置ズレによる段部や、隙間による凹部が発生しなくなる。
【0009】
請求項2記載のトンネル用ライニングセグメントは、セグメント本体11と、
樹脂製シート基材13の背面15に不織布17が積層形成され該不織布17が前記セグメント本体11のコンクリート打設時のコンクリート19に埋入されて前記セグメント本体11の内周面21を覆う一枚の被覆シート23と、
を具備し、
前記被覆シート23の不織布17は、厚さが0.3〜1.0mm、密度が80〜160とされるトンネル用ライニングセグメント100であって、
開口部27が前記セグメント本体11の内周面21に開口して該セグメント本体11に埋設されるとともに一側面29が前記セグメント本体11の連結面31に配置される連結箱33と、
前記連結箱33の前記開口部27の位置に形成され前記被覆シート23の縁部35から切り込んだ切込部37によって前記開口部27を開閉可能とするフラップ部39と、
を具備することを特徴とする。
【0010】
このトンネル用ライニングセグメントでは、不織布がコンクリート19に埋入することで、アンカー効果により、被覆シート23がセグメント本体11の内周面21に高い接着力で被着される。特に不織布17を、厚さ0.3〜1.0mmとし、目付量(g/m2 )を厚さ(mm)で除した値を密度として、その数値を80〜160としたことで良好なアンカー効果を発揮し、コンクリート硬化とともに一体化する。セグメント本体11の内周面21が一枚の被覆シート23によって覆われることで、トンネル内表面に、異素材シートや、同種別体のシートが混在して被覆されなくなる。これにより、セグメント本体11が確実に被覆され、トンネル内表面が一定の粗度係数となる。そして、このトンネル用ライニングセグメントでは、連結箱33の開口部27に位置する切込部37を境に、フラップ部39が切込部以外の連続部分をヒンジとして開閉可能となり、フラップ部39が蓋部材として作用するようになる。
【0011】
請求項3記載のトンネル用ライニングセグメントは、請求項2記載のトンネル用ライニングセグメント100であって、
前記フラップ部39が、前記連結箱33に充填される充填材41に前記不織布17を埋入して前記連結箱33の前記開口部27を覆って貼着されることを特徴とする。
【0012】
このトンネル用ライニングセグメントでは、フラップ部39が捲られ、連結箱33の内部においてボルト締結作業が完了した後、連結箱33に充填材41が充填される。その直後に捲ったフラップ部39が元に戻されることで、フラップ部39の不織布17が充填材41に埋入し、フラップ部39が充填材41に一体となって貼着される。
【0013】
請求項4記載のトンネル用ライニングセグメントは、請求項1,2,3のいずれか1つに記載のトンネル用ライニングセグメント100であって、
前記被覆シート23の樹脂製シート基材13は、前記不織布17の積層形成される背面15と反対側の表面43がトンネル内面色用に着色されていることを特徴とする。
【0014】
このトンネル用ライニングセグメントでは、被覆シート23の表面43に着色が施されることで、セグメントの連結後にトンネル内周面が着色面となる。また、所望のセグメントの被覆シート23のみが着色されて、例えば千鳥配列に連結されてもよい。
【0015】
請求項5記載のトンネル用ライニングセグメントは、請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載のトンネル用ライニングセグメント100であって、
前記被覆シート23の樹脂製シート基材13は、前記表面43に凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
このトンネル用ライニングセグメントでは、被覆シート23の表面43に凹凸部が形成されることで、セグメントの連結後にトンネル内周面が凹凸面となる。また、所望のセグメントの被覆シート23のみに凹凸部が形成されて、例えば千鳥配列に連結されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る請求項1記載のトンネル用ライニングセグメントによれば、セグメント本体と、背面に不織布が積層形成され不織布がセグメント本体に埋入されてセグメント本体の内外周面の少なくともいずれか一方の周面を覆う被覆シートと、を具備するので、セグメントの耐用年数が長くなり、セグメント製作コスト及びトンネル施工コストを低減できる。また、不織布を、厚さ0.3〜1.0mmとし、目付量(g/m2 )を厚さ(mm)で除した値を密度として、その数値を80〜160としたことにより、被覆シートとの密着性が良好になるとともに、コンクリートが不織布に適度に含浸し、良好なアンカー効果を発揮して十分な付着力を得ることができ、コンクリート硬化とともに一体化することとなる。そして、このトンネル用ライニングセグメントによれば、セグメント本体の外周面を被覆シートで覆う構成とすれば、トンネルの外周面である地山側の周面が覆われることとなり、例えば酸性土壌などの場合に対する腐食防止となり、セグメント本体の内周面を被覆シートで覆う構成とすれば、走流性能が向上するとともに見栄えを良好にできる。
【0018】
請求項2記載のトンネル用ライニングセグメントによれば、セグメント本体と、背面に不織布が積層形成され不織布がセグメント本体に埋入されてセグメント本体の内周面を覆う一枚の被覆シートと、を具備するので、耐用年数が長くなり、走流性能が向上するとともに、セグメント製作コスト及びトンネル施工コストを低減でき、しかも、見栄えを良好にできる。また、不織布を、厚さ0.3〜1.0mmとし、目付量(g/m2 )を厚さ(mm)で除した値を密度として、その数値を80〜160としたことにより、被覆シートとの密着性が良好になるとともに、コンクリートが不織布に適度に含浸し、良好なアンカー効果を発揮して十分な付着力を得ることができ、コンクリート硬化とともに一体化することとなる。また、セグメント本体に埋設される連結箱と、連結箱の開口部に形成され被覆シートの縁部から切り込んだ切込部によって開口部を開閉可能とするフラップ部と、を具備するので、フラップ部が連結箱の開口部を開閉する蓋部となり、従来、別体で必要であった多数の蓋部材が不要となる。この結果、部品点数が削減でき、部材コストや部品管理労力を低減できる。
【0019】
請求項3記載のトンネル用ライニングセグメントによれば、フラップ部が、連結箱に充填される充填材に不織布を埋入して貼着されるので、連結箱を覆う際に、セグメント本体の表面を被覆シートで覆うことが可能となる。この結果、作業性、走流性、見栄えを向上させることができる。
【0020】
請求項4記載のトンネル用ライニングセグメントによれば、不織布の積層形成される背面と反対側の被覆シート表面がトンネル内面色用に着色されるので、セグメント表面が着色被覆シートで覆われ、着色にて意匠性を持たせて、トンネル内周面の見栄えを良好にできる。
【0021】
請求項5記載のトンネル用ライニングセグメントによれば、被覆シート表面に凹凸部が形成されているので、セグメント表面が凹凸表面の被覆シートで覆われ、凹凸面にて意匠性を持たせて、トンネル内周面の見栄えを良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るトンネル用ライニングセグメントの斜視図である。
【図2】図1に示したセグメント本体の斜視図である。
【図3】連結箱が四辺に配置されたセグメント本体の斜視図である。
【図4】図3のセグメント本体に被覆シートを被着したトンネル用ライニングセグメントの斜視図である。
【図5】(a)はフラップ部の斜視図、(b)はフラップ部の平面図である。
【図6】連結箱及びフラップ部の拡大断面図である。
【図7】充填材にフラップ部が被着した連結箱の拡大断面図である。
【図8】トンネル用ライニングセグメントの製造手順を表した工程説明図である。
【図9】(a)は切込部をT字形としたフラップ部の斜視図、(b)はその平面図である。
【図10】(a)は切込部をL字形としたフラップ部の斜視図、(b)はその平面図である。
【図11】(a)は切込部を直線形としたフラップ部の斜視図、(b)はその平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るトンネル用ライニングセグメントの斜視図である。
トンネル用ライニングセグメント(以下、単に「セグメント」とも称す。)100は、シールド工法に用いられ、鉄筋コンクリート(RC)製セグメントや、コンクリート中詰め鋼製セグメントとして好適に用いられる。セグメント100は、セグメント本体11と、被覆シート23と、を具備する。セグメント本体11は、トンネル覆工の所定長を円周方向に複数分割した弧状板に形成される。したがって、セグメント100は、凸曲面側が地山側となり、凹曲面側がトンネルの内側(坑内側)となる。被覆シート23は、トンネルの内側となるセグメント本体11の凹面側に被着される。
【0024】
セグメント100の中央部にはグラウト注入穴51が穿設される。グラウト注入穴51は、セグメント100の外面と地山との間隙部分にグラウト材(図示せず)を注入・充填するためのものであり、グラウト材注入後に閉塞される。セグメント100にはグラウト注入穴51の無いものもあるが、本実施の形態では、グラウト注入穴51の穿設されるセグメント100を例とする。本発明に係るセグメント100は、グラウト注入穴51が無いものであっても勿論よい。
【0025】
セグメント100は、複数が円周方向に連結されて環体に形成されつつ、環体の軸線方向にも連結されて管状のトンネル内空を形成する。したがって、セグメント100の側面である連結面31にはボルト等の締結具を挿通するための複数の連結用穴55が設けられる。
【0026】
図2は図1に示したセグメント本体の斜視図である。
連結面31に設けられる連結用穴55は、ボルトを挿通するのみの透孔55aと、ボルトと螺合するナットを埋設したナット穴55bの二種に分けられる。セグメント100では、連結配置された際に、一方のセグメント100の連結面31に透孔55aが配置されると、他方のセグメント100の連結面31にはナット穴55bが配置される。透孔55aは、セグメント本体11に連結箱33に形成される。すなわち、連結箱33は、開口部27がセグメント本体11の内周面21に開口してセグメント本体11に埋設されるとともに一側面29がセグメント本体11の連結面31に配置される。連結箱33の開口部27から透孔55aに挿通されたボルトは、相手側セグメント100のナット穴55bに螺合され、セグメント100の連結面31同士を締結する。
【0027】
セグメント100は、連結がボルトとナット穴55bによる連結面同士の締結によって行われるが、この他、セグメントには、ナット穴55bを有さず、相手連結箱33に貫通したボルト先端に、ナットを螺合して連結するタイプもある。
図3は連結箱が四辺に配置されたセグメント本体の斜視図である。
この種のセグメント本体11Aでは、図3に示すように、複数の連結箱33が四辺の全てに配設されることとなる。
【0028】
図4は図3のセグメント本体に被覆シートを被着したトンネル用ライニングセグメントの斜視図である。
四辺に連結箱33が配設されるセグメント本体11Aの場合にも、その内周面21には図4に示すように、被覆シート23が被着されて、セグメント100Aが構成されることになる。このようにセグメント100とセグメント100Aでは連結構造のみが異なるので、以下の説明においては主にセグメント100を代表例に説明する。
【0029】
図5(a)はフラップ部の斜視図、(b)はフラップ部の平面図である。
被覆シート23には連結箱33の開口部27の位置にフラップ部39が形成される。フラップ部39は、被覆シート23の縁部35から切り込んだ例えば一対の平行な直線状の切込部37,37によって形成され、開口部27を開閉可能とする。フラップ部39は、被覆シート23を捲るためのものであり、ボルト結合作業時のみに、連結箱33を開放する。
【0030】
セグメント100では、連結箱33の開口部27に位置する切込部37,37を境に、フラップ部39が切込部以外の連続部分39aをヒンジとして開閉可能となり、フラップ部39が蓋部材として作用するようになる。このように、被覆シート23にフラップ部39を形成することで、フラップ部39が連結箱33の開口部27を開閉する蓋部となり、従来、別体で必要であった多数の蓋部材が不要となる。この結果、部品点数が削減でき、部材コストや部品管理労力を低減できる。
【0031】
図6は連結箱及びフラップ部の拡大断面図である。
被覆シート23は、樹脂製シート基材13に、軟質或いは硬質のPVC(ポリ塩化ビニル)が好適に用いられる。本実施の形態では、軟質の樹脂製シート(PVCシート)基材13が用いられる。なお、樹脂製シート基材13は、軟質PVCシートの他に、ポリエチレン系樹脂シート、ポリプロピレン系樹脂シートなどとしても良い。被覆シート23は、樹脂製シート基材13の背面15に不織布17が積層形成されている。なお、不織布17は、樹脂製シート基材13の背面15に、例えばラミネート加工して積層形成される。不織布17は接着剤によって樹脂製シート基材13に貼り合わせても良い。このようにして背面15に不織布17の設けられた被覆シート23は、不織布17がセグメント本体11のコンクリート打設時のコンクリート19に埋入されてセグメント本体11の内周面21を覆う。つまり、被覆シート23は、コンクリート付着側に不織布17をラミネート加工し、アンカー効果を持たせている。不織布17は、上記したフラップ部39の背面15にも連続して設けられている。連結箱33に挿通されたボルト57は、相手側セグメント100のナット穴55bに螺合される。
【0032】
図7は充填材にフラップ部が被着した連結箱の拡大断面図である。
セグメント100は、フラップ部39が、連結箱33に充填される充填材41に不織布17を埋入して連結箱33の開口部27を覆って貼着される。ボルト57の締結後は、内部空間33aに充填材41が充填され、フラップ部39の不織布17が充填材41に埋入されることで、フラップ部39が連結箱33の開口部27に被着される。これにより、セグメント本体11の内周面21は、他部材を必要とせずに、一枚の被覆シート23のみによって全面が被覆されることになる。なお、充填材41としては例えばモルタルが使用される。フラップ部39の不織布17はこの充填材41に埋入されるが、硬化後の充填材41に接着剤にて接着されても良い。
【0033】
被覆シート23の樹脂製シート基材13は、不織布17の積層形成される背面15と反対側の表面43がトンネル内面色用に着色されていてもよい。被覆シート23の表面43に着色が施されることで、セグメント100の連結後にトンネル内周面21が着色面となる。また、所望のセグメント100の被覆シート23のみが着色されて、例えば千鳥配列に連結されてもよい。このように、被覆シート23の表面43がトンネル内面色用に着色されることで、セグメント本体11の内周面21が着色被覆シート23で覆われ、着色にて意匠性を持たせて、トンネル内周面21の見栄えを良好にできる。
【0034】
また、被覆シート23の樹脂製シート基材13は、表面43に凹凸部が形成されていてもよい。被覆シート23の表面43に凹凸部が形成されることで、セグメント100の連結後にトンネル内周面21が凹凸面となる。また、所望のセグメント100の被覆シート23のみに凹凸部が形成されて、例えば千鳥配列に連結されてもよい。このように、被覆シート23の表面43に凹凸部が形成されることで、セグメント本体11の内周面21が凹凸面の被覆シート23で覆われ、凹凸面にて意匠性を持たせて、トンネル内周面21の見栄えを良好にできる。
【0035】
次に、上記構成を有するトンネル用ライニングセグメント100の作用を説明する。
図8はトンネル用ライニングセグメントの製造手順を表した工程説明図である。
セグメント100を製造するには、予め連結箱33に相当する位置で被覆シート23に切込部37,37を入れておく。被覆シート23は、背面15に不織布17が貼着されている。グラウト注入穴51は、必要に応じて穿設する。なお、グラウト注入穴51の形成においても、透孔とせず、円周方向の一部分を連続部分として切り残すことで、連結部分をヒンジとした円形のフラップ部39とすることができる。
【0036】
このようにして切込部37、グラウト注入穴51を形成した被覆シート23を、表面43が下側となるようにして型枠59の底部59aに敷き置く。これより、被覆シート23は、不織布17(図6参照)の設けられた背面15が上側に配置される。被覆シート23の上側には、セグメント本体11の形状に応じて配筋した鉄筋61を載置する。鉄筋61の所定位置には、連結箱33を固定しておく。また、グラウト注入穴51を設ける場合には、鉄筋61に注入管(図示せず)を固定しておく。
【0037】
鉄筋61に固定した連結箱33は、鉄筋61が型枠59に載置されることで、切込部37の入れられたフラップ部39に、開口部27(図6参照)が押圧配置される。これにより、型枠59に注入されたコンクリート19が連結箱33の内部空間33a(図6参照)に進入しなくなる。
【0038】
鉄筋61が所定位置に位置決めされたなら、型枠59にコンクリート19を注入する。コンクリート19の注入後、バイブレーターにより振動を付与してコンクリート19を締固める。被覆シート23の不織布17は、このコンクリート19に埋入されることとなる。これにより、内面側に設けた不織布17がコンクリート19に対してアンカー効果を発揮し、被覆シート23はコンクリート硬化と共にセグメント本体11と一体化する。内周面21に被覆シート23を一体化したセグメント100は、強度が増し、クラックの発生も減少する。
【0039】
なお、被覆シート23の構成として、厚さ0.75mm、目付量84g/m2 とされる密度112の不織布17を用い、軟質PVCシートの表面に不織布を一体化、例えばPVCシート製造時に熱ラミネーションで一体化、或いはPVCシートに接着剤を用いて貼付し一体化して構成し、この不織布17をコンクリート19に埋入して貼り付けた被覆シート23の付着力を測定した結果、0.9MPaの付着力を確認した。ここで、上記密度の算出は、目付量(g/m2 )を厚さ(mm)で除して得られる数値とされる。
【0040】
コンクリート19の打設が完了した後、所定の時間、養生することでコンクリート19を硬化させる。コンクリート19が硬化したなら、型枠59を取り外し、セグメント100の製造が完了する。
【0041】
このようにして製造されたセグメント100では、フラップ部39が捲られ、連結箱33の内部においてボルト締結作業が完了した後、連結箱33に充填材41が充填される。その直後に捲ったフラップ部39が元に戻されることで、フラップ部39の不織布17が充填材41に埋入し、図7に示したように、フラップ部39が充填材41に一体となって貼着される。したがって、フラップ部39が、連結箱33に充填される充填材41に不織布17を埋入して貼着されるので、連結箱33を覆う際に、セグメント本体11の内周面21の全てを一枚の被覆シート23で覆うことが可能となる。この結果、作業性、走流性、見栄えを向上させることができる。
【0042】
なお、軟質PVCシートに不織布17を貼着した被覆シート23に代え、硬質PVCプレートに不織布17をラミネートすれば、高強度タイプのセグメント100を得ることができる。
【0043】
このセグメント100では、不織布17がコンクリート19に埋入することで、アンカー効果により、被覆シート23がセグメント本体11に高い接着力で被着される。セグメント本体11の内周面21が一枚の被覆シート23によって覆われることで、トンネル内表面43に、異素材シートや、同種別体のシートが混在して被覆されなくなる。これにより、セグメント本体11が確実に被覆され、トンネル内表面43が一定の粗度係数となる。また、別体シートが貼られることによるシートの重なり段部や、シート同士の隙間による凹部が発生しなくなる。
【0044】
したがって、本実施の形態に係るセグメント100によれば、防食効果が向上し耐用年数が長くなり、走流性能が向上するとともに、セグメント製作コスト及びトンネル施工コストを低減でき、しかも、見栄えを良好にできる。
【0045】
また、パネルの貼着や、塗膜形成(塗布)に比べて、容易に被覆シート23が得られ、安価に製造できる。特に不織布17を用いることで、接着性が良好で、防食層の成形が確実となる。さらに、PVCシートのクッション性(柔軟性)により、セグメント本体11への衝撃を和らげる効果が得られ、トンネル躯体の耐久性が向上する。
【0046】
なお、上述した実施の形態では、セグメント本体11の内周面21を被覆シート23にて覆う構成とした例について述べたが、この被覆シート23がセグメント本体11の外周面を覆う構成としても良く、また内外両周面を覆う構成としても良い。セグメント本体11の外周面を被覆シート23にて覆う構成とすることで、トンネルの外周面である地山側の周面が覆われることとなり、例えば地山側の土壌が酸性土壌などの場合に対する腐食防止効果を得られる。
【0047】
次に、異なる形状のフラップ部を有するトンネル用ライニングセグメントの変形例について説明する。
図9(a)は切込部をT字形としたフラップ部の斜視図、(b)はその平面図である。
図9に示すフラップ部39Aは、T字状の切込部37Aが連結箱33に相当する被覆シート23の位置に形成されている。したがって、フラップ部39Aは、左右の片部63,63が観音開きとなる。この変形例によれば、フラップ部39Aの面積に対して連続部分39aが大きくなり、フラップ部39Aを剥がれにくくできる。
【0048】
図10(a)は切込部をL字形としたフラップ部の斜視図、(b)はその平面図である。
図10に示すフラップ部39Bは、L字状の切込部37Bが連結箱33に相当する被覆シート23の位置に形成されている。したがって、フラップ部39Bは、セグメント100の円周方向に沿う方向aで捲られる。この構成では、フラップ部39Bは、凹曲面に沿って変形する。これにより、トンネル長手方向bに捲られる構成に比べ、連続部分39aに応力集中による残留歪みが発生しにくく、閉鎖時に充填材41との間に隙間が生じず、良好な貼着が可能となる。
【0049】
図11(a)は切込部を直線形としたフラップ部の斜視図、(b)はその平面図である。
図10に示すフラップ部39Cは、丸孔65を終端とした直線状の一本の切込部37Cが連結箱33に相当する被覆シート23の位置に形成されている。したがって、フラップ部39Cは、切込部37Cの始端側となる両裾部分67,67が両側に開閉される。この構成では、切込部37Cを最小にしてフラップ部39Cを剥がれにくくできる。
【実施例】
【0050】
次に、上記実施の形態による樹脂製シート基材13に一体化される不織布17について、目付量、厚さ、密度の異なる不織布を型枠にセットし、コンクリートを充填して硬化後の不織布の裏面のコンクリートの含浸状態を観察し、次の基準で評価した。
評価基準
○…裏面までコンクリートが充填されている。
×…裏面に、コンクリートが充填されていない部分がある。
結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
上記表中「ボランス」は東洋紡績株式会社製のスパンボンド不織布の商品名であり、「シンテックス」は三井化学株式会社製のスパンボンド不織布の商品名である。
【0053】
次に、各不織布を樹脂製基材シートとして軟質PVCシートを用い、ウレタン系ドライラミネート用接着剤で貼り合わせ、型枠にセットし、コンクリートを充填して硬化後、付着力を測定した。
実施例のNo.1〜7の不織布を積層した基材シートの付着力は0.9〜1.1N/mm2 であったが、比較例No.8〜12の不織布を積層した基材シートの付着力は、0.3〜0.6N/mm2 であった。特にNo.9とNo.10の不織布では、密度が大きくコンクリートの含浸が少なく、またNo.12の不織布では、厚さが不足し十分な付着力が得られなかった。
【符号の説明】
【0054】
11…セグメント本体
13…樹脂製シート基材
15…背面
17…不織布
19…コンクリート
21…内周面
23…被覆シート
27…開口部
29…一側面
31…連結面
33…連結箱
35…縁部
37…切込部
39…フラップ部
41…充填材
43…表面
100…トンネル用ライニングセグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメント本体と、
樹脂製シート基材の背面に不織布が積層形成され該不織布が前記セグメント本体のコンクリート打設時のコンクリートに埋入されて前記セグメント本体の内外の少なくともいずれか一方の周面を覆う被覆シートと、
を具備し、
前記被覆シートの不織布は、厚さが0.3〜1.0mm、密度が80〜160とされることを特徴とするトンネル用ライニングセグメント。
【請求項2】
セグメント本体と、
樹脂製シート基材の背面に不織布が積層形成され該不織布が前記セグメント本体のコンクリート打設時のコンクリートに埋入されて前記セグメント本体の内周面を覆う一枚の被覆シートと、
を具備し、
前記被覆シートの不織布は、厚さが0.3〜1.0mm、密度が80〜160とされるトンネル用ライニングセグメントであって、
開口部が前記セグメント本体の内周面に開口して該セグメント本体に埋設されるとともに一側面が前記セグメント本体の連結面に配置される連結箱と、
前記連結箱の前記開口部の位置に形成され前記被覆シートの縁部から切り込んだ切込部によって前記開口部を開閉可能とするフラップ部と、
を具備することを特徴とするトンネル用ライニングセグメント。
【請求項3】
請求項2記載のトンネル用ライニングセグメントであって、
前記フラップ部が、前記連結箱に充填される充填材に前記不織布を埋入して前記連結箱の前記開口部を覆って貼着されることを特徴とするトンネル用ライニングセグメント。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか1つに記載のトンネル用ライニングセグメントであって、
前記被覆シートの樹脂製シート基材は、前記不織布の積層形成される背面と反対側の表面がトンネル内面色用に着色されていることを特徴とするトンネル用ライニングセグメント。
【請求項5】
請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載のトンネル用ライニングセグメントであって、
前記被覆シートの樹脂製シート基材は、前記表面に凹凸部が形成されていることを特徴とするトンネル用ライニングセグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−241661(P2011−241661A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117469(P2010−117469)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】