説明

トンネル用型枠

【課題】トンネルの内壁面に覆工コンクリートを打設するときに、検査が必要な打設空間内におけるコンクリートの充填状況を、トンネルの内側から直接目視できるトンネル用型枠を提供することを目的とする。
【解決手段】トンネル10の内壁面に覆工コンクリート12を打設する打設空間13を形成するために用いられるトンネル用型枠20であって、覆工コンクリート12が坑口から逐次打設されるものであり、トンネル10の肩口から天頂にあたる部位にあり、かつ、オーバーラップ部28と打設口26との間にある目視による検査が必要な打設空間20に接する要検査部位のみに、透明素材からなりトンネルの内側から打設空間13を目視できる透明検査窓30を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内壁面に覆工コンクリートを打設するための型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル内壁面をコンクリートで覆工する場合に、特許文献1記載のようなセントル台車に設けられているアーチ形状の型枠を用い、坑口から逐次、型枠が設けられた区間毎に、覆工コンクリートの打設を行うことがある。
このような型枠を用いて覆工コンクリートを打設する場合、トンネル内壁の側部から肩部にかけては、型枠の外周の状態等を確認するために、トンネル内壁の側部等にあたる部位の型枠に開口している開閉式(開閉蓋を有する)のオール検査窓から生コンクリートを流し込み、覆工コンクリートを立ち上げている。そして、オール検査窓の位置よりも上方にあたるトンネル内壁の天頂部は、打設空間に生コンクリートを流し込むために、型枠の最頂部に設けられている打設口に生コンクリートを圧送するための管を取り付け生コンクリートを流し込んで行っている。
【0003】
しかし、打設口は、既設の覆工コンクリートの端面から0.5〜1.0mくらい離れたところに設けられているため、既設の覆工コンクリートの端面から打設口にかけてのトンネル内壁の天頂部は、空気が残り易くコンクリートの充填不良が起こり易い。その上、天頂部においてトンネルの内側は打設空間の下方になるため、開閉式の検査窓を設けても開閉蓋を開けてコンクリートの充填状況を確認することができない。そのため、確認する手段としては、打設空間内の空気を抜くために設けられているエアー抜き金具からの生コンクリートの漏れ具合や、打設口への生コンクリートの圧送の停止等による、間接的な方法で確認するしかなく、経験と勘が必要となる。そのため、コンクリートの充填状況に応じて、バイブレータの挿入等の適切な対応を取ることが難しかった。
【特許文献1】特開2000−303795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、トンネルの内壁面に覆工コンクリートを打設するときに、検査が必要な打設空間内におけるコンクリートの充填状況を、トンネルの内側から直接目視できるトンネル用型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のトンネル用型枠は、トンネルの内壁面に覆工コンクリートを打設する打設空間を形成するために用いられるトンネル用型枠であって、目視による検査が必要な打設空間に接する要検査部位のみに、透明素材からなりトンネルの内側から打設空間を目視できる透明検査窓を設けたことを特徴とする。
【0006】
覆工コンクリートとしては、特に限定はされないが、掘削された岩盤面に直に接する一次覆工コンクリートであってもよいし、一次覆工コンクリートの内側(トンネル側)に設けられる二次覆工コンクリートであってもよい。また、坑口から逐次打設されることが好ましい。また、補強用鉄筋を内部に有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0007】
要検査部位は、特に限定はされないが、型枠の外周面(打設空間と接する面)が湾曲していることで型枠に開口している既存の開閉式の検査窓からの検査が難しい、トンネルの肩口から天頂にあたる部位や、覆工コンクリートが坑口から逐次打設され場合には、既設の覆工コンクリートの端面から打設空間内に生コンクリートを流し込んでいる打設口までの間において、コンクリートの充填不良が起こり易いことから、既設の覆工コンクリートのトンネル内面を覆うため、トンネル用型枠の坑口側の端部に設けられているオーバーラップ部と、打設空間内に生コンクリートを流し込むため、トンネル用型枠に設けられている打設口との間等にある。
【0008】
透明素材としては、特に限定はされないが、透明な樹脂等が好ましく、具体的には、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等が例示できる。
【0009】
透明検査窓の態様としては、特に限定はされないが、トンネル用型枠に着脱不能に設けられている態様でもよいし、トンネル用型枠に着脱可能に設けられている態様でもよい。充填不良時等にバイブレータ等の挿入が容易であることから、トンネルの内側へ外せるように取付けられている態様が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トンネルの内壁面に覆工コンクリートを打設するときに、検査が必要な打設空間内におけるコンクリートの充填状況を、トンネルの内側から直接目視できるトンネル用型枠を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
トンネルの内壁面に覆工コンクリートを打設する打設空間を形成するために用いられるトンネル用型枠であって、
覆工コンクリートが坑口から逐次打設されるものであり、
トンネルの肩口から天頂にあたる部位にあり、かつ、既設の覆工コンクリートのトンネル内面を覆うため、トンネル用型枠の坑口側の端部に設けられているオーバーラップ部と、打設空間内に生コンクリートを流し込むため、トンネル用型枠に設けられている打設口との間にある目視による検査が必要な打設空間に接する要検査部位のみに、透明素材からなりトンネルの内側から打設空間を目視できる透明検査窓をトンネルの内側へ外せるように取付けられていることを特徴とするトンネル用型枠。
【実施例1】
【0012】
以下、本実施例のトンネル用型枠20を図面に基づいて説明する。
図1〜4に示すように、地山を掘削して形成された略蒲鉾状の掘削孔であるトンネル10の内面には、コンクリートを吹き付けることにより一次覆工コンクリート11が形成されている。この一次覆工コンクリート11の内側には、二次覆工コンクリート12が坑口から逐次打設されるようになっている。二次覆工コンクリート12は、一次覆工コンクリート11の内面と、セントル台車40によって支持された本実施例のトンネル用型枠20の外周面とによって囲まれるようにして形成された打設空間13に、生コンクリートを流し込むことにより打設される。なお、二次覆工コンクリート12は、坑口から逐次打設されるため、打設空間13のトンネル長さ方向の一端(坑口側)は既設の二次覆工コンクリート12の端面12bで塞がれ、他端(切羽側)は流し込んだ生コンクリートの流出を防止するために設けられている妻型枠14で塞がれている。
【0013】
図2に示すように、セントル台車40は、作業者が作業等を行うための足場となる台面41と、トンネルの床面に敷設された床レール42上に設置され、床レール42上を転動する車輪43と、本実施例のトンネル用型枠20を保持するターンパックル45と、本実施例のトンネル用型枠20を昇降するジャッキ46とを備えている。
【0014】
図1〜3に示すように、本実施例のトンネル用型枠20は、台面41に突設している支柱47によって支えられ、トンネル10の肩口から天頂にあたる部位を覆い、トンネル径方向断面形状が略円弧状の天頂部21と、天頂部21のトンネル周方向両端に連結され、トンネル10の肩口から下方の部位を覆い、トンネル径方向断面形状が略円弧状の一対の側部22と、既設の二次覆工コンクリート12のトンネル内面を覆うため、本実施例のトンネル用型枠20の坑口側の端部に設けられているオーバーラップ部28とを有する。また、天頂部21と側部22は、共に略この断面形状のままトンネル長さ方向に延びている。
【0015】
天頂部21及び側部22は、それぞれ打設空間13と接する表層部23と、表層部23を補強するため、表層部23の打設空間13に接する面と反対の面に着接されたスチフナー24と、を有する。
【0016】
側部22には、外周の状態等を確認するため、複数の開閉式のオール検査窓25が開口している。各オール検査窓25には、生コンクリート充填時等に生コンクリートの流出を防止するための開閉蓋25aが設けられている。
【0017】
天頂部21には、打設空間13に流し込む生コンクリートを圧送するための管の先端を取り付け、そこから打設空間13内に生コンクリートを流し込むための打設口26が最頂部に二ヶ所開口している。また、トンネル長さ方向に位置を変えた最頂部には、複数の開閉式の天検査窓27が開口している。各天検査窓27には、オール検査窓25と同じく、生コンクリート充填時等に生コンクリートの流出を防止するための開閉蓋27aが設けられている。
【0018】
さらに、オーバーラップ部28と、既設の二次覆工コンクリート12の端面12bに一番近い打設口26との間には、透明検査窓30がトンネル径方向の同一断面上に4つ設けられている。
【0019】
図4に示すように、透明検査窓30は、略正方形の板状のポリカーボネート樹脂からなる窓板31と、窓板31の周囲の四辺を取り囲んで補強し、窓板31が嵌合している枠状の窓フレーム32とを有する。窓フレーム32は、透明検査窓30の設置場所として天頂部21に設けられた四箇所の開口にそれぞれトンネルの内側へ外せるよう、四隅がボルト34及び固定片35を介してスチフナー24に固定されている。なお、窓フレーム32をトンネルの内側へ外せるよう開口に固定する方法は、ボルトを用いる方法以外のフレーム等を着脱可能に固定する一般的な方法でもよい。
【0020】
本実施例のトンネル用型枠20によれば、次の(a)〜(e)の効果が得られる。
(a)既設の二次覆工コンクリート12の端面12bから打設口26にかけての天頂部21に透明検査窓30を設けることにより、トンネルの内壁面に二次覆工コンクリート12を打設するときに、空気が残りコンクリートの充填不良が起こり易い打設空間13内の充填状況をトンネルの内側から直接目視できる。
(b)充填不良が起こり易い部位を直接目視できることにより、バイブレータの挿入等の充填不良への対応が適切に行える。
(c)窓フレーム32により補強された窓板31を透明検査窓30として、コンクリートの充填不良が起こり易いため検査が必要な天頂部21の一部のみに設けることで、窓板31を薄くでき、かつ、透明な樹脂であるポリカーボネート樹脂の使用量を少なくできる。
(d)透明な窓板31が嵌合している窓フレーム32を、天頂部21の開口にそれぞれボルト34により固定していることで、繰り返し使用することにより透明な窓板31が劣化(曇り)した場合等に容易に交換することができる。
(e)透明検査窓30をトンネルの内側へ外せるように取付けられていることから、充填不良時等に透明検査窓30を外し、そこからバイブレーター等の挿入を行える。
【実施例2】
【0021】
図5、6に示すように、本実施例のトンネル用型枠50は、実施例1のトンネル用型枠20の態様と比べ、透明検査窓51の態様が異なる以外は、同じである。従って、実施例1と異なる透明検査窓51についてのみ説明する。
【0022】
透明検査窓51は、オーバーラップ部28と既設の二次覆工コンクリート12の端面12bに一番近い打設口26との間の天頂部21に、端面12bに沿うよう、最頂部付近から肩口部にかて帯状に設けられている。
【0023】
透明検査窓51には、略矩形であり、打設空間13に接する面の反対の面に略「目」の字状のリブ52cを有するポリカーボネートからなる窓板52を、この窓板52の長手方向に沿い、リブ52cを有する面から当接して補強する箱状の窓フレーム53に、ネジ54により取着させたものが嵌合している。
【0024】
本実施例のトンネル用型枠50によれば、上記(a)〜(d)の効果に加え、さらに次の(f)の効果が得られる。
(f)透明検査窓51が最頂部付近から肩口部にかて帯状に設けられることで、打設空間13内におけるコンクリートの充填状況をトンネルの内側から直接目視できる範囲が広くなる。
【0025】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1のトンネル用型枠の斜視図である。
【図2】同トンネル用型枠を用いたセントル台車の正面図である。
【図3】同トンネル用型枠を用いたトンネルの最頂部付近の長さ方向の断面図である。
【図4】同トンネル用型枠の透明検査窓の拡大図である。
【図5】本発明の実施例2のトンネル用型枠の斜視図である。
【図6】同トンネル用型枠の透明検査窓の拡大図である。
【符号の説明】
【0027】
10 トンネル
12 二次覆工コンクリート
13 打設空間
20 トンネル用型枠
21 天頂部
26 打設口
28 オーバーラップ部
30 透明検査窓
31 窓板
50 トンネル用型枠
51 透明検査窓
52 窓板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内壁面に覆工コンクリートを打設する打設空間を形成するために用いられるトンネル用型枠であって、
目視による検査が必要な前記打設空間に接する要検査部位のみに、透明素材からなりトンネルの内側から該打設空間を目視できる透明検査窓を設けたことを特徴とするトンネル用型枠。
【請求項2】
前記要検査部位がトンネルの肩口から天頂にあたる部位にある請求項1記載のトンネル用型枠。
【請求項3】
前記覆工コンクリートが坑口から逐次打設されるものであり、前記要検査部位が既設の覆工コンクリートのトンネル内面を覆うため、前記トンネル用型枠の坑口側の端部に設けられているオーバーラップ部と、前記打設空間内に生コンクリートを流し込むため、該トンネル用型枠に設けられている打設口との間にある請求項1又は2記載のトンネル用型枠。
【請求項4】
前記透明検査窓がトンネルの内側へ外せるように取付られている請求項1〜3のいずれか一項に記載のトンネル用型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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