説明

トンネル用換気設備

【課題】主排気送風機翼を回転駆動するための駆動機器の動力アップが必要なく、補機故障により換気設備の主機能に影響を及ぼすことが少なく信頼性の高いトンネル用換気設備を提供すること。
【解決手段】主排気送風機102を備えたトンネル用換気設備であって、主排気送風機翼5を駆動する電動機2により直接駆動される冷却用ファン7を備え、電動機2を排気流路101内の主排気送風機翼5より上流側に設置すると共に、電動機2を電動機保護カバー6で覆い、電動機保護カバー6の主排気送風機翼5の反対側側部に外部冷却空気導入口8、主排気送風機翼5側の側部に外部冷却空気放出口9を設け、外部冷却空気導入ダクト10を通って電動機保護カバー6内に導入された外部冷却空気を排気流路101内に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル、特に車道用トンネルの換気設備として好適なトンネル用換気設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1はこの種の従来の車道用のトンネル内の排気を行うトンネル用換気設備の概略を説明するための図である。車道用のトンネル100には排気流路(換気塔)101が連通しており、該排気流路101に主排気送風機(例えば軸流送風機)102が配置され、該主排気送風機102を起動することにより、該主排気送風機102により誘引される主排気流(排気)103は排気流路101を通って外部に放出される。104は車道用のトンネル100内に設置されたジェットファンである。
【0003】
上記トンネル用換気設備においては、集中換気を行うため換気用送風機である主排気送風機102はその容量が大きなものとなる。主排気送風機102の容量が大きくなると、駆動する電動機等の駆動機の容量も大きくなり、発熱量も大きくなることから、駆動機の冷却が必要となる。トンネル100から誘引される主排気流(排気)中には粉塵を多く含むため、駆動機の冷却には粉塵を含まないフレッシュな空気が必要となる。該フレッシュな空気を得るため従来は、主排気送風機102の吸込側に集塵機を設ける方法や、図2(a)、(b)に示すように、外部からフレッシュな空気を強制的に給気する給気設備を設ける方法等の対策が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−307468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、主排気送風機102の吸込側に集塵機を設ける方法は、集塵機で完全に粉塵を除去することは難しく、粉塵の除去率を上げると、流体圧損が大きくなり、下流側に設けた主排気送風機102の安定運転に影響を及ぼすという課題がある。また、主排気送風機102には、流体圧損を補填する為の性能を付加する必要があり、主排気送風機翼を回転駆動するための駆動機の動力アップ等が経済的な課題となる。
【0006】
また、図2(a)に示す換気設備は、給気ファン1を設け、該給気ファン1で外気導入ダクト105を通して冷却用の外部冷却空気107を強制的に主排気送風機102のケーシング3内に導き、該ケーシング3内の電動機2等を冷却した後の外部冷却空気107を排気ダクト106を通して外部に排気する構成である。このように主排気送風機102の運転に影響する因子(冷却等)を補機である給気ファン1に委ねる構成は、余分な動力が必要になるとともに、その補機の故障が主排気送風機102の故障・運転停止を引き起こすため、換気設備の主機能に影響を及ぼす機器の増加により、故障の確率が増加し、信頼性が低下するという課題がある。
【0007】
また、図2(b)に示す換気設備は、主排気送風機102の電動機2で駆動される電動機外扇4を設けると共に、換気ファン室(図示せず)と排気流路101とをダクト110とダクト111で連結し、電動機外扇4の回転により、換気ファン室の空気112をダクト110を通してケーシング3内に導き、該ケーシング3内の電動機2等を冷却し、冷却した後の空気112をダクト111を通して換気ファン室に戻す構成である。この方法は換気ファン室の室温が上昇するため、換気ファン室の空調設備が必要となるという課題がある。
【0008】
本発明は上述の点を鑑みてなされたもので、主排気送風機翼を回転駆動するための駆動機器の動力アップが必要なく、補機故障により換気設備の主機能に影響を及ぼすことが少なく信頼性の高いトンネル用換気設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、主排気送風機を備え、トンネル内の換気を行うトンネル用換気設備であって、主排気送風機翼を駆動する駆動機により直接駆動される冷却用ファンを備え、前記駆動機を前記主排気送風機翼により誘引される主排気流の通る排気流路内の前記主排気送風機翼より上流側に設置すると共に、前記駆動機を前記主排気流から隔離するための駆動機保護カバーで覆い、前記駆動機保護カバーの前記主排気送風機翼側の反対側側部に外部冷却空気導入口を設けると共に、該外部冷却空気導入口に外部冷却空気を導入する外部冷却空気導入ダクトを接続し、前記駆動機保護カバーの前記主排気送風機翼側側部に前記外部冷却空気導入ダクトを通って前記駆動機保護カバー内に導入された前記外部冷却空気を外部と前記排気流路内の気圧差を利用して前記排気流路内に放出する外部冷却空気放出口を設けたことを特徴とする。
【0010】
トンネル用換気設備を上記構成とすることにより、外部冷却空気導入ダクトを通って駆動機保護カバー内に導入されたフレッシュな外部冷却空気は駆動機を冷却した後、主排気送風機翼より誘引される主排気流の通る排気流路内に放出されるから、トンネル内の粉塵・塵埃から駆動機を完全に保護することができる。
【0011】
また、駆動機保護カバー内に導入された外部冷却空気を外部冷却空気放出口から排気流路内に放出するようにしたので、主排気送風機の運転により主排気送風機翼より上流側に設置された外部冷却空気放出口の開口部は負圧となり、駆動機保護カバー内の外部冷却空気に吸引力が作用し、駆動機冷却後の外部冷却空気を格別の機器を設けることなく排気流路内に放出(排出)することが可能となる。また、負圧による吸気で不足する吸引力(冷却換気力)については、駆動機により直接駆動される冷却用ファンにより補填することが可能となる。
【0012】
また、駆動機冷却後の外部冷却空気を排気流路内に放出するので、該外部冷却空気は主排気送風機により送風される本排気流に合流させて排出することになり、冷却後の外部冷却空気を排気するための排気ダクトが不要となる。
【0013】
また、本発明は、上記トンネル用換気設備において、主排気送風機を排気流路内に立て置きに設置し、主排気流が地側から天側に流れるように設置され、駆動機保護カバーを外部冷却空気導入口が地側に外部冷却空気放出口が天側に位置するように配置したことを特徴とする。
【0014】
トンネル用換気設備を上記構成とすることにより、駆動機を冷却することにより暖められた外部冷却空気はドラフト効果により天側(上方)に向かって流れるため、外部冷却空気は駆動機を冷却しながら天側の外部冷却空気放出口に向って流れる。
【0015】
また、本発明は、上記トンネル用換気設備において、前記駆動機保護カバーの前記排気流路の主排気流方向に直交する断面は円形状であり、前記外部冷却空気導入口を前記駆動機保護カバーの断面円形の接線上に配置し、前記外部冷却空気導入口から流入する前記外部冷却空気に旋回力を与えることを特徴とする。
【0016】
上記のように、外部冷却空気導入口を駆動機保護カバーの断面円形の接線上に配置し、外部冷却空気導入口から流入する外部冷却空気に旋回力を与える構成とすることにより、駆動機の局部的な冷却を無くし均一に冷却することが可能になると共に、外部冷却空気が駆動機に接する時間が長くなる。
【0017】
また、本発明は、上記トンネル用換気設備において、前記駆動機保護カバーの前記外部冷却空気放出口を所定角度θ(θ<90°)前記主排気送風機翼方向に傾けて設けたことを特徴とする。
【0018】
上記のように駆動機保護カバーの外部冷却空気放出口を所定角度θ(θ<90°)主排気送風機翼方向に傾けて設けたことにより、外部冷却空気放出口から放出される外部冷却空気の流れは主排気送風機による主排気気流と同じ方向となり、主排気気流からの逆流を防止し、且つエゼクタ効果を上げることが可能となる。また、外部冷却空気は、駆動機保護カバー下部より取り入れ、ドラフト効果も利用した上昇流であることから、上昇流を効率よく外部に放出することにも寄与する。
【0019】
また、本発明は、主排気送風機を備え、トンネル内の換気を行うトンネル用換気設備であって、主排気送風機翼を駆動する駆動機により直接駆動される冷却用ファンと、前記主排気送風機翼の翼角を制御する翼角制御装置とを備え、前記駆動機を前記主排気送風機翼より誘引される主排気流の通る排気流路内の前記主排気送風機翼より下流側に設置し、前記翼角制御装置を前記主排気送風機翼より誘引される主排気流の通る排気流路内の前記主排気送風機翼より上流側に設置し、前記駆動機を前記主排気流から隔離するための駆動機保護カバーで覆い、前記駆動機保護カバーの前記主排気送風機翼側の反対側側部に外部冷却空気導入口を設けると共に、該外部冷却空気導入口に外部冷却空気を導入する外部冷却空気導入ダクトを接続し、前記主排気送風機翼側側部に前記外部冷却空気導入ダクトを通って前記駆動機保護カバー内に導入された前記外部冷却空気を排気する外部冷却空気放出口を設け、前記外部冷却空気放出口に接続された排気ダクトの排気口を前記排気流路内の前記主排気送風機翼の上流側に配置すると共に、前記排気ダクトの排気口には、前記主排気送風機翼からの逆流旋回流を防止する逆流旋回流防止板を設けたことを特徴とする。
【0020】
上記のように駆動機保護カバーの外部冷却空気放出口に接続された排気ダクトの排気口を排気流路内の前記主排気送風機翼の上流側に配置すると共に、排気ダクトの排気口には、主排気送風機翼からの逆流旋回流を防止する逆流旋回流防止板を設けたことにより、主排気送風機が翼角制御装置付きの特殊な構造の送風機の場合でも、負圧及び気流による誘引効果を効率よく利用することが可能となる。
【0021】
また、本発明は、主排気送風機を備え、トンネル内の換気を行うトンネル用換気設備であって、主排気送風機翼を駆動する駆動機により直接駆動される冷却用ファンと、前記主排気送風機翼の翼角を制御する翼角制御装置とを備え、前記駆動機を前記主排気送風機翼より誘引される主排気流の通る排気流路内の前記主排気送風機翼より下流側に設置すると共に、前記駆動機を前記主排気流から隔離するための駆動機保護カバーで覆い、前記駆動機保護カバーの前記主排気送風機翼の反対側側部に外部冷却空気導入口を設けると共に、該外部冷却空気導入口に外部冷却空気導入ダクトを接続し、前記主排気送風機翼側側部に前記外部冷却空気導入ダクトを通って前記駆動機保護カバー内に導入された前記外部冷却空気を前記流路内に放出する外部冷却空気放出口を該外部冷却空気放出口から放出される外部冷却空気の流れが前記主排気送風機翼より誘引される主排気流の流れと略平行になるように設けたことを特徴とする。
【0022】
上記のように、駆動機を排気流路内の主排気送風機翼より下流側に設置し、駆動機保護カバーの主排気送風機翼側側部に外部冷却空気導入口を設け、主排気送風機翼側側部に外部冷却空気放出口から放出される外部冷却空気の流れが排気流路内の主排気流と略平行になるように設けたことにより、外部冷却空気放出口は主排気送風機翼の下流側となるが、主排気流は流速が速いことから排気流路内は負圧となり、冷却後の外部冷却空気はエゼクタ効果により効率よく、排気流路内に放出される。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、主排気送風機翼を駆動する駆動機により直接駆動される冷却用ファンを備え、駆動機を排気流路内の主排気送風機翼より上流側に設置し、駆動機を駆動機保護カバーで覆い、外部冷却空気導入ダクトを通って該駆動機保護カバー内に導入された外部冷却空気を排気流路内に放出する外部冷却空気放出口を設けたことにより、下記のような効果が得られる。
・主排気送風機翼を駆動する駆動機をトンネル内の粉塵・塵埃から完全に保護することができ、信頼性の高いトンネル用換気設備とすることが可能となる。
・主排気送風機を運転することにより、外部冷却空気放出口を設置した排気流路内が負圧となり、この負圧により外部冷却空気は吸気されるので、経済的なトンネル用換気設備となる。
・また、負圧による吸気で不足する吸引力(冷却換気力)については、駆動機により直接駆動される冷却用ファンにより補填することで、従来必要であった別置きの給気ファンを設ける必要がなく、故障率の軽減、経済性、維持管理性の向上(管理機器の低減)したトンネル用換気設備となる。
・また、駆動機冷却後の外部冷却空気を排気流路内の本排気流に合流させて排出するので、外部冷却空気を排気するための排気ダクトが不要になり、トンネル用換気設備の構造が単純化され、経済的で、且つ信頼性の高いトンネル用換気設備となる。
【0024】
また、本発明によれば、主排気送風機を排気流路内に立て置きに設置し、駆動機保護カバーを外部冷却空気導入口が地側に外部冷却空気放出口が天側に位置するように配置したことにより、より経済的、効率的なトンネル用換気設備となる。
【0025】
また、本発明によれば、外部冷却空気導入口を駆動機保護カバーの断面円形の接線上に配置し、外部冷却空気導入口から流入する外部冷却空気に旋回力を与える構成とすることにより、駆動機の局部的な冷却を無くし均一に冷却することが可能になると共に、外部冷却空気が駆動機に接する時間が長くなり、駆動機を効率良く冷却できるトンネル用換気設備となる。
【0026】
また、本発明によれば、駆動機保護カバーの外部冷却空気放出口を所定角度θ(θ<90°)主排気送風機翼方向に傾けて設けたことにより、外部冷却空気放出口から放出される外部冷却空気の流れは主排気送風機による主排気気流と同じ方向となり、主排気気流からの逆流を防止し、且つエゼクタ効果を上げることが可能なトンネル用換気設備となる。また、外部冷却空気は、駆動機保護カバー下部より取り入れ、ドラフト効果も利用した上昇流であることから、上昇流を効率よく外部に放出することにも寄与するトンネル用換気設備となる。
【0027】
また、本発明によれば、駆動機保護カバーの外部冷却空気放出口に接続された排気ダクトの排気口を排気流路内の主排気送風機翼の上流側に配置すると共に、該排気口には、主排気送風機翼からの逆流旋回流を防止する逆流旋回流防止板を設けたことにより、主排気送風機が翼角制御装置付きの特殊な構造の送風機の場合でも、負圧及び気流による誘引効果を効率よく利用し、経済的且つ、信頼性の高いトンネル用換気設備となる。
【0028】
また、本発明によれば、駆動機を排気流路内の主排気送風機翼より下流側に設置し、駆動機保護カバーの主排気送風機翼の反対側側部に外部冷却空気導入口を設け、主排気送風機翼側側部に外部冷却空気放出口から放出される外部冷却空気の流れが排気流路内の排気流と略平行になるように設けたことにより、外部冷却空気放出口は主排気送風機翼の下流側となるが、主排気流は流速が速いことから排気流路内は負圧となり、冷却後の外部冷却空気はエゼクタ効果により効率よく、排気流路内に放出することができ、経済的且つ、信頼性の高いトンネル用換気設備となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の車道用のトンネル内の換気を行うトンネル用換気設備の概略構成を示す図である。
【図2】従来のトンネル用換気設備の概略構成例を示す図である。
【図3】本発明に係るトンネル用換気設備の概略構成例を示す図である。
【図4】本発明に係るトンネル用換気設備の他の概略構成例を示す図である。
【図5】本発明に係るトンネル用換気設備の他の概略構成例を示す図である。
【図6】本発明に係るトンネル用換気設備の他の概略構成例を示す図である。
【図7】本発明に係るトンネル用換気設備の他の概略構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態例について、詳細に説明する。なお本実施形態では車道用のトンネル内の排気を行うトンネル用換気設備を例に説明するが、本発明に係るトンネル用換気設備は車道用のトンネルのみではなく、列車用等、他のトンネル内の換気設備としても採用することが可能である。また、本実施例では、主排気送風機102を駆動する駆動機を電動機2としているが、主排気送風機102を駆動できるものであれば、電動機に限定されるものでなく、例えば減速機を介したガスタービンやエンジン等の駆動機でもよい。図3は本発明(請求項1〜3に記載の発明)に係るトンネル用換気設備の概略構成を示す図である。図3において、図1及び図2と同一符号を付した部分は同一又は相当部分を示す。また、他の図面においても同様とする。
【0031】
図3(a)に示すように、本トンネル用換気設備は、トンネル100(図1参照)に連通する主排気流103が地側から天側に流れる排気流路(換気塔)101に、主排気送風機102が立て置きに設置されている。主排気送風機102は主排気送風機翼5と該主排気送風機翼5を駆動する電動機2を備え、電動機2は排気流路101内の主排気送風機翼5より主排気流103の上流側に配置されている。電動機2は粉塵・塵埃を含む主排気流103から隔離するための電動機保護カバー6で覆われている。該電動機保護カバー6内には電動機2の軸端に設けられ、該電動機2により直接駆動される冷却用ファン7が配置されている。
【0032】
電動機保護カバー6の主排気送風機翼5側の反対側側部に外部冷却空気導入口8が設けられ、外部冷却空気導入口8に外部冷却空気を導入する外部冷却空気導入ダクト10が接続されている。また、電動機保護カバー6の主排気送風機翼5側の側部には電動機保護カバー6内の電動機2を冷却した後に外部冷却空気を排気流路101内に放出する外部冷却空気放出口9が設けられている。外部冷却空気導入ダクト10により電動機保護カバー6内に導入された外部冷却空気は電動機2を冷却した後、外部冷却空気放出口9から主排気送風機102内に放出される。
【0033】
外部冷却空気放出口9を主排気送風機翼5の上流側の負圧となる領域Aの電動機2の軸端付近に設けることにより、主排気送風機102の運転により主排気送風機翼5が回転すると、主排気送風機翼5の上流側の領域Aが負圧となる。この領域A内の圧力と外部圧力(大気圧)の圧力差を利用して、外部冷却空気107が外部冷却空気導入ダクト10を通って電動機保護カバー6内に導入され、電動機2を冷却した後の暖まった外部冷却空気107は外部冷却空気放出口9から主排気送風機102内に誘導される。これにより、効率的(経済的)なトンネル用換気設備とすることができる。
【0034】
また、領域Aの負圧による吸気で不足する吸引力(冷却換気力)については、電動機2の軸端に設けた小型の冷却用ファン7により補填することで、図2に示すように従来のトンネル用換気設備で必要であった、別置きの給気ファン1が必要なくなり、故障率の軽減、経済性、維持管理性の向上した(管理機器が低減した)トンネル用換気設備となる。また、電動機2の冷却後の外部冷却空気を排気流路101内に放出するので、冷却空気を排気するための排気ダクトが不要となり、構造が単純化されたトンネル用換気設備となる。
【0035】
また、上記のように主排気送風機102が配置される部分の排気流路101を地側から天側に主排気流103が流れるように設置し、主排気送風機102を排気流路101内に立て置きに設置し、電動機保護カバー6を外部冷却空気導入口8が地側に外部冷却空気放出口9が天側に位置するように配置した。これにより、電動機2を冷却することにより暖められた外部冷却空気107はドラフト効果により天側(上方)に向かって流れるため、外部冷却空気107は電動機2を冷却しながら外部冷却空気放出口9に向って効率的に流れるようになる。
【0036】
また、上記トンネル用換気設備において、電動機保護カバー6の排気流路101の主排気流103の流れ方向に直交する断面は、図3(b)に示すように円形状であり、外部冷却空気導入口8を電動機保護カバー6の断面円形の接線上に配置した。これにより外部冷却空気導入口8から流入する外部冷却空気107に旋回力が与えられ旋回流となるから、電動機2の局部的な冷却がなくなり、均一に冷却することが可能になる。また、外部冷却空気107が電動機2の外壁面に接する時間が長くなり、電動機2は効率よく冷却される。
【0037】
また、上記トンネル用換気設備において、図4(c)に示すように、電動機保護カバー6の外部冷却空気放出口9を所定角度θ(θ<90°)主排気送風機翼5の方向に傾けて設けている。このように電動機保護カバー6の外部冷却空気放出口を所定角度θ(θ<90°)主排気送風機翼5の方向に傾けて設けたことにより、外部冷却空気放出口9から放出される外部冷却空気107の流れは主排気送風機102による主排気流103と同じ方向となり、主排気流103からの逆流を防止し、且つエゼクタ効果を上げることが可能となる。また、外部冷却空気107は、電動機保護カバー6下部より取り入れ、ドラフト効果も利用した上昇流であることから、上昇流を効率よく外部に放出することにも寄与し、総合的に効率のよいトンネル用換気設備となる。
【0038】
また、電動機保護カバー6の外部冷却空気放出口9の冷却用ファン7の停止時においても、排気流路101内の主排気流103が電動機保護カバー6内に流入しないように、図4(b)に示すように逆流防止弁13を設けてもよい。なお、図4(a)は本発明(請求項4に記載の発明)に係るトンネル用換気設備の概略構成を示す図で、図4(b)、(c)はそれぞれ、図4(a)のC部分の拡大図である。
【0039】
図5は本発明(請求項5に記載の発明)に係るトンネル用換気設備の概略構成を示す図である。本トンネル用換気設備は、主排気送風機翼5を駆動する電動機2により直接駆動される冷却用ファン7と、主排気送風機翼5の翼角を制御する翼角制御装置12とを備えている。電動機2を排気流路101内の主排気送風機翼5より下流側に設置し、外周を電動機保護カバー6で覆い、電動機保護カバー6の主排気送風機翼5側の反対側側部に外部冷却空気導入口8を設けている。そして外部冷却空気導入口8に外部冷却空気を導入する外部冷却空気導入ダクト10を接続し、主排気送風機翼5側の側部に外部冷却空気導入ダクト10を通って電動機保護カバー6内に導入された外部冷却空気107を排気する外部冷却空気放出口9を設けている。
【0040】
外部冷却空気放出口9に接続された排気ダクト15の排気口は排気流路101内の主排気送風機翼5の上流側に開口配置している。排気ダクト15の排気口には、図5(b)に示すように、主排気送風機翼5からの逆流旋回流を防止する逆流旋回流防止板17が設けられている。なお、図5(b)は図5(a)のA−A断面(領域D部分の拡大)図である。このように、電動機保護カバー6の外部冷却空気放出口9に接続された排気ダクト15の排気口18を排気流路101内の主排気送風機翼5の上流側に開口配置し、排気口18には逆流旋回流防止板17を設けたことにより、主排気送風機102が翼角制御装置付きの特殊な構造の送風機の場合でも、領域Aに発生する負圧、及び気流による誘引効果を効率よく利用することが可能となる。
【0041】
なお、逆流旋回流防止板17は図5(b)に示すように、排気口18を覆うように屈曲部を設けているが、屈曲部を設けることなく単なる板体にて構成してもよい。また、上記例では排気口18を1個としたが、排気流路101内を流れる主排気流103との流体バランスを考慮して、複数としても構わない。
【0042】
図5(c)は 図5(a)のE部分の拡大図であり、主排気流103の流れ状態の断面を表したものであるが、逆流分103aには、主排気送風機翼5の回転による水平の旋回流成分も含んでいる。
【0043】
車道用トンネルの主排気送風機では、交通量等を鑑み、吐出量制御を行う場合がある。吐出量制御の一手法として、送風機翼角を制御する翼角制御を行う場合がある。現状の翼角制御方式の場合、翼角制御装置12として油圧装置が用いられているが、このような場合、翼角制御装置12からの油漏れの影響(駆動機等への流出による故障、外部への飛散等)を最小限とするため、油圧装置である翼角制御装置12を主排気送風機翼5より下方に設置し、万が一、油漏れが生じたとしても、下部に設けられた油溜部に漏れた油を貯留する方式が用いられている。
【0044】
上記のように油圧装置である翼角制御装置12を主排気送風機翼5より下方に設置し、下部の油溜部に漏れた油を貯留する方式では、電動機2を排気流路101内の主排気送風機翼5の上流側に設置できないため、図5(a)に示すように排気ダクト15を設けて、外部冷却空気107を排出する排気口18を主排気送風機翼5より上流側に設置する構成を採用することにより、電動機2を冷却するための冷却装置の簡素化を行う。但し、このような構成の場合は、外部冷却空気107を排出する排気ダクト15は主排気送風機102の外側となるため、主排気送風機翼5の部分に発生する入口逆流(旋回流)が影響し、効率よく負圧流に吸引されない場合がある。
【0045】
そのような場合は、図5(b)に示すように、排気口18には逆流旋回流防止板17を設ける。これにより請求項1〜4に係る発明と同様の効果が得られる。
【0046】
図6は本発明(請求項6に記載の発明)に係るトンネル用換気設備の概略構成を示す図である。本トンネル用換気設備は、主排気送風機翼5を駆動する電動機2により直接駆動される冷却用ファン7と、主排気送風機翼5の翼角を制御する油圧制御装置である翼角制御装置12とを備えている。電動機2を主排気送風機翼5より誘引される主排気流103の通る排気流路101内の主排気送風機翼5より下流側に設置し、電動機2を主排気流103から隔離するための電動機保護カバー6で覆っている。
【0047】
前記のように、電動機保護カバー6の主排気送風機翼5の反対側の側部に外部冷却空気導入口8を設け、外部冷却空気導入口8に外部冷却空気導入ダクト10を接続し、主排気送風機翼5の反対側側部に外部冷却空気導入ダクト10を通って電動機保護カバー6内に流入した外部冷却空気107を排気流路101内に放出する外部冷却空気放出口9を設けている。該外部冷却空気放出口9は放出される外部冷却空気107の流れが排気流路101内を流れる主排気流103の流れと略平行になるように設けている。
【0048】
上記構成とすることにより、外部冷却空気放出口9は主排気送風機翼5の下流側となるが、車道用トンネルの主排気送風機102では、一般的に主排気送風機翼5の下流側の圧力損失が小さく、領域下の主排気流103の流速が速い(=動圧大)ことから、排気流路101の外部冷却空気放出口9が開口している領域Fの静圧は負圧となるため、排気流路101に面して開口のみを設けておけば、電動機保護カバー6内の冷却後の外部冷却空気107は排気流路101内に排出が可能である。なお、開口である外部冷却空気放出口9に金網を設けてもよい。
【0049】
図7は本発明(請求項6に記載の発明)に係るトンネル用換気設備の他の概略構成を示す図である。図7に示すトンネル用換気設備が図6のトンネル用換気設備と異なる点は、図6では外部冷却空気導入口8が外部冷却空気放出口9より主排気流103の上流側に位置しているのに対して、図7では外部冷却空気導入口8が外部冷却空気放出口9より主排気流103の下流側に位置している、即ち、外部冷却空気導入口8と外部冷却空気放出口9の位置が図6と図7は逆になっている点である。このように構成することにより、図7のトンネル用換気設備では、図6のトンネル用換気設備のように、外部冷却空気放出口9の開口領域の静圧が負圧となることにより、大きなドラフト効果は期待できないが、ある程度のドラフト効果は期待できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用効果を奏する以上、本願発明の技術範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、主排気送風機翼を駆動する電動機により直接駆動される冷却用ファンを備え、電動機を排気流路内の主排気送風機翼より上流側に設置し、電動機を電動機保護カバーで覆い、外部冷却空気導入ダクトを通って該電動機保護カバー内に導入された外部冷却空気を排気流路内に放出する外部冷却空気放出口を設けたことにより、主排気送風機翼を駆動する電動機をトンネル内の粉塵・塵埃から完全に保護することができ、信頼性の高いトンネル用換気設備として利用することが可能である。
【0052】
また、主排気送風機を運転することにより、外部冷却空気放出口が開口する排気流路内が負圧となり、この負圧により外部冷却空気は吸気されるので、外部冷却空気を給気するため別置きの機器を設ける必要がなく経済的であり、故障率の軽減、経済性、維持管理性の向上(管理機器の低減)したトンネル用換気設備として利用することが可能である。
【0053】
また、電動機冷却後の外部冷却空気を排気流路内の本排気流に合流させて排出するので、外部冷却空気を排気するための排気ダクトが不要になり、トンネル用換気設備の構造が単純化され、経済的で、且つ信頼性の高いトンネル用換気設備となる。
【符号の説明】
【0054】
2 電動機
5 主排気送風機翼
6 電動機保護カバー
7 冷却用ファン
8 外部冷却空気導入口
9 外部冷却空気放出口
10 外部冷却空気導入ダクト
12 翼角制御装置
15 排気ダクト
17 逆流旋回流防止板
18 排気口
100 トンネル
101 排気流路(換気塔)
102 主排気送風機
103 主排気流
107 外部冷却空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主排気送風機を備え、トンネル内の換気を行うトンネル用換気設備であって、
主排気送風機翼を駆動する駆動機により直接駆動される冷却用ファンを備え、
前記駆動機を前記主排気送風機翼により誘引される主排気流の通る排気流路内の前記主排気送風機翼より上流側に設置すると共に、前記駆動機を前記主排気流から隔離するための駆動機保護カバーで覆い、
前記駆動機保護カバーの前記主排気送風機翼側の反対側側部に外部冷却空気導入口を設けると共に、該外部冷却空気導入口に外部冷却空気を導入する外部冷却空気導入ダクトを接続し、前記駆動機保護カバーの前記主排気送風機翼側側部に前記外部冷却空気導入ダクトを通って前記駆動機保護カバー内に導入された前記外部冷却空気を外部と前記排気流路内の気圧差を利用して前記排気流路内に放出する外部冷却空気放出口を設けたことを特徴とするトンネル用換気設備。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル用換気設備において、
前記主排気送風機を前記排気流路内に立て置きに設置し、前記主排気流が地側から天側に流れるように設置され、前記駆動機保護カバーを前記外部冷却空気導入口が地側に前記外部冷却空気放出口が天側に位置するように配置したことを特徴とするトンネル用換気設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトンネル用換気設備において、
前記駆動機保護カバーの前記排気流路の主排気流方向に直交する断面は円形状であり、前記外部冷却空気導入口を前記駆動機保護カバーの断面円形の接線上に配置し、
前記外部冷却空気導入口から流入する前記外部冷却空気に旋回力を与えることを特徴とするトンネル用換気設備。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトンネル用換気設備において、
前記駆動機保護カバーの前記外部冷却空気放出口を所定角度θ(θ<90°)前記主排気送風機翼方向に傾けて設けたことを特徴とするトンネル用換気設備。
【請求項5】
主排気送風機を備え、トンネル内の換気を行うトンネル用換気設備であって、
主排気送風機翼を駆動する駆動機により直接駆動される冷却用ファンと、
前記主排気送風機翼の翼角を制御する翼角制御装置とを備え、
前記駆動機を前記主排気送風機翼より誘引される主排気流の通る排気流路内の前記主排気送風機翼より下流側に設置し、前記翼角制御装置を前記主排気送風機翼より誘引される主排気流の通る排気流路内の前記主排気送風機翼より上流側に設置し、
前記駆動機を前記主排気流から隔離するための駆動機保護カバーで覆い、
前記駆動機保護カバーの前記主排気送風機翼側の反対側側部に外部冷却空気導入口を設けると共に、該外部冷却空気導入口に外部冷却空気を導入する外部冷却空気導入ダクトを接続し、前記主排気送風機翼側側部に前記外部冷却空気導入ダクトを通って前記駆動機保護カバー内に導入された前記外部冷却空気を排気する外部冷却空気放出口を設け、
前記外部冷却空気放出口に接続された排気ダクトの排気口を前記排気流路内の前記主排気送風機翼の上流側に配置すると共に、前記排気ダクトの排気口には、前記主排気送風機翼からの逆流旋回流を防止する逆流旋回流防止板を設けたことを特徴とするトンネル用換気設備。
【請求項6】
主排気送風機を備え、トンネル内の換気を行うトンネル用換気設備であって、
主排気送風機翼を駆動する駆動機により直接駆動される冷却用ファンと、
前記主排気送風機翼の翼角を制御する翼角制御装置とを備え、
前記駆動機を前記主排気送風機翼より誘引される主排気流の通る排気流路内の前記主排気送風機翼より下流側に設置すると共に、前記駆動機を前記主排気流から隔離するための駆動機保護カバーで覆い、
前記駆動機保護カバーの前記主排気送風機翼側側部に外部冷却空気導入口を設けると共に、該外部冷却空気導入口に外部冷却空気導入ダクトを接続し、前記主排気送風機翼の反対側側部に前記外部冷却空気導入ダクトを通って前記駆動機保護カバー内に導入された前記外部冷却空気を前記流路内に放出する外部冷却空気放出口を該外部冷却空気放出口から放出される外部冷却空気の流れが前記主排気送風機翼より誘引される主排気流の流れと略平行になるように設けたことを特徴とするトンネル用換気設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79606(P2013−79606A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220141(P2011−220141)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】