説明

トンネル用防水シート及びその接合方法

【目的】多くの機材や設備を使用せずとも短時間でかつ容易に止水性の高い接合部を形成する。
【構成】本発明に係るトンネル用防水シート51は、トンネル用防水シートの長手方向の縁部2に沿って重ね幅Wを有する第1の接合領域3を表面に形成するとともに、縁部2と反対側に位置する長手方向の縁部4に沿って同様の重ね幅Wを有する第2の接合領域5を裏面に形成してあり、第1の接合領域3及び第2の接合領域5が互いに平行になるように構成してある。第1の接合領域3の表面近傍には、電熱体として、直線状の電熱線52を該接合領域の縁部2と平行になるように複数本並列配置した状態で埋設してある。第2の接合領域5の表面近傍には、電熱体として、直線状の電熱線52を該接合領域の縁部4と平行になるように複数本並列配置した状態で埋設してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネル工法、シールドトンネル工法、開削トンネル工法等において防水工として用いるトンネル用防水シート及びその接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工法では、ロックボルトを併用しながら吹付けコンクリートを地山に施工して掘削地山の緩みを防止した後、該吹付けコンクリートの上にさらに覆工コンクリートを巻き立ててトンネルの長期安定を図るが、覆工コンクリートの施工に先立ち、所定の防水シートを吹付けコンクリートの凹凸になじませるようにして取り付けてトンネル内への漏水を防止するのが一般的である。
【0003】
また、シールドトンネル工法では、シールドをジャッキで推進しながら掘削するとともに一次覆工としてシールドのテール内でセグメントの組立てを行った後、二次覆工として現場打ちコンクリートの巻き立てを行うが、二次覆工に先立ち、セグメントのピース間やセグメントリング間に生じる若干の隙間を介した漏水を防止するための防水工を施すのが一般的である。
【0004】
さらに、開削トンネル工法では、トンネル躯体を構築した後、その外面を防水シートで被覆し、トンネル躯体の水密性を保持している。
【0005】
ここで、防水シートをトンネルの内外面に施工する際、所定の大きさの防水シートの縁部を重ね合わせて順次接合していくこととなるが、かかる防水シートの接合部は、止水性が確保できるように溶着又は接着によって接合を行っていた。
【0006】
【特許文献1】実願昭56−155869号のマイクロフィルム
【特許文献2】特開平1−315511号公報
【特許文献3】特公平5−87640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の溶着による接合の場合、溶着のための機材が必要であり、接合作業を行う作業員に熟練度が要求されるとともに、機材の設置や撤去等、作業に多大な時間と労力を費やさなければならないという問題を生じていた。
【0008】
また、狭い場所など作業性の悪い場所では、溶着のための機材を使用しての作業が困難になるという問題も生じていた。
【0009】
一方、接着剤による接合の場合、接着不良によって防水シートがはがれる恐れがあるという問題を生じていた。
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、多くの機材や設備を使用せずとも短時間でかつ容易に止水性の高い接合部を形成することが可能なトンネル用防水シート及びその接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るトンネル用防水シートは請求項1に記載したように、所定の縁部に沿って第1の接合領域を表面に形成するとともに、前記縁部と反対側に位置する縁部に沿って第2の接合領域を裏面に形成し、前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせて接合するように構成してなるトンネル用防水シートにおいて、前記第1及び第2の接合領域のうち、少なくともいずれかの接合領域の表面近傍に電熱体を設け、該電熱体への通電によって前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせた状態で熱溶着できるように構成したものである。
【0012】
また、本発明に係るトンネル用防水シートは、前記第1及び第2の接合領域の少なくともいずれかに低融点溶着材を設け、該低融点溶着材を介して前記第1及び第2の接合領域を熱溶着できるように構成したものである。
【0013】
また、本発明に係るトンネル用防水シートは、前記第1及び第2の接合領域のうち、一方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように所定の突条体を設けるとともに、他方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように所定の溝状凹部を設け、前記溝状凹部を前記突条体が該溝状凹部内に嵌着されるように形成するとともに、前記突条体に該突条体の材軸方向に沿って電熱体を埋設したものである。
【0014】
また、本発明に係るトンネル用防水シートの接合方法は請求項4に記載したように、所定の縁部に沿って第1の接合領域を表面に形成するとともに、前記縁部と反対側に位置する縁部に沿って第2の接合領域を裏面に形成してなるトンネル用防水シートを、前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせて接合するトンネル用防水シートの接合方法において、前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせ、かかる状態で前記第1及び第2の接合領域に圧力を載荷しつつ、前記第1及び第2の接合領域のうち、少なくともいずれかの接合領域の表面近傍に設けられた電熱体に通電して前記第1及び第2の接合領域を熱溶着するものである。
【0015】
また、本発明に係るトンネル用防水シートの接合方法は、前記第1及び第2の接合領域の少なくともいずれかに設けられた低融点溶着材を、前記第1及び第2の接合領域とともに溶融させるものである。
【0016】
また、本発明に係るトンネル用防水シートの接合方法は請求項6に記載したように、所定の縁部に沿って第1の接合領域を表面に形成するとともに、前記縁部と反対側に位置する縁部に沿って第2の接合領域を裏面に形成してなるトンネル用防水シートを、前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせて接合するトンネル用防水シートの接合方法において、前記第1及び第2の接合領域のうち、一方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように設けられた所定の突条体を、他方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように設けられた所定の溝状凹部に嵌着し、かかる状態で前記第1及び第2の接合領域に圧力を載荷しつつ、前記第1及び第2の接合領域のうち、少なくともいずれかの接合領域の表面近傍に設けられた電熱体に通電して該接合領域を溶融させるとともに、前記突条体の材軸方向に沿って該突条体に埋設された電熱体に通電して該突条体を溶融させ、前記第1及び第2の接合領域を熱溶着するものである。
【0017】
請求項1の発明に係るトンネル用防水シートにおいては、第1及び第2の接合領域のうち、少なくともいずれかの接合領域の表面近傍に電熱体を設けてあるので、第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせた状態で電熱体へ通電することによって、第1及び第2の接合領域は溶融する。そのため、第1及び第2の接合領域は、従来と同様、熱溶着によって一体化し、トンネル用防水シートの接合領域に高い水密性及び接合力が確保される。
【0018】
電熱体は、第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせた状態で該第1及び第2の接合領域を溶融できるのであればよく、どのように配置するかは任意であり、第1及び第2の接合領域の両方に設けるようにしてもよいし、場合によっては一方の接合領域にだけ設けるようにしてもかまわない。また、電熱体を設けるにあたっては、接合領域の表面近傍に設けられるのであればよく、接合領域に埋設するようにしてもかまわないし、接合領域の表面に貼着するようにしてもかまわない。
【0019】
電熱体の形状も任意であり、例えば、直線状の電熱線を接合領域の縁部と平行になるように複数本並列配置したり、一本の電熱線を千鳥状に平面配置したり、網目状の電熱線やフラットケーブル状の電熱体を接合領域全面にわたって配置したりすることが考えられる。
【0020】
また、トンネル用防水シートの熱溶着作用をさらに向上させたい場合には、第1及び第2の接合領域の少なくともいずれかに低融点溶着材を設け、該低融点溶着材を介して前記第1及び第2の接合領域を熱溶着できるように構成してもかまわない。
【0021】
このようにすると、低融点溶着材が比較的低い温度でも溶融するため、トンネル用防水シート自体の溶融と相まってより確実な熱溶着が可能となる。
【0022】
低融点溶着材は、トンネル用防水シートの融点よりも低い材料で構成してあればよく、第1及び第2の接合領域の両方に設けるか一方に設けるかは問わない。
【0023】
また、低融点溶着材を設ける代わりに、第1及び第2の接合領域のうち、一方の接合領域に所定の突条体を設けるとともに、他方の接合領域に所定の溝状凹部を設け、溝状凹部を突条体が該溝状凹部内に嵌着されるように形成するとともに、突条体に該突条体の材軸方向に沿って電熱体を埋設してもかまわない。
【0024】
このようにすると、第1及び第2の接合領域の少なくともいずれかの表面近傍に設けた電熱体及び突条体内に埋設した電熱体を用いた熱溶着による接合力に加えて、突条体を溝状凹部に嵌着させることによる嵌着力で、トンネル用防水シートの接合領域においては、より高い水密性と接合力が確保される。
【0025】
突条体は、接合領域の縁部と平行になるように設けられ、溝状凹部に嵌着されるように形成するとともに、材軸方向に沿って電熱体を埋設してあるならば、どのように構成するかは任意であり、例えば、先端断面が基部断面よりも大きくなるよう、具体的には先端部を円形断面に基部を該円形の外径よりも小さな幅の矩形断面とすることが考えられる。
【0026】
溝状凹部は、接合領域の縁部と平行になるように設けられ、突条体が該溝状凹部内に嵌着されるように形成するのであれば、どのように構成するかは任意である。なお、溝状凹部は、必ずしもトンネル用防水シートの厚み方向断面内に埋設される形態に限られるものではなく、トンネル用防水シートから突出するように形成してもかまわない。後者の構成においては、第1及び第2の接合領域は互いに非接触となるが、水密性が保持されることについては何ら変わりはない。すなわち、本発明でいう重ね合わせは、第1及び第2の接合領域が接触状態を保持することだけを意味するものではなく、所定の重ね幅で接合される限り、非接触状態をも包摂するものとする。
【0027】
なお、突条体及び溝状凹部をそれぞれ第1及び第2の接合領域のうちどちらに設けるかは任意であり、第1の接合領域に突条体を設けるとともに第2の接合領域に溝状凹部を設けるようにしてもよいし、第1の接合領域に溝状凹部を設けるとともに第2の接合領域に突条体を設けるようにしてもよい。
【0028】
また、突条体及び溝状凹部は互いに同数である必要はあるが、その組数については任意であり、1列ずつ設けてもかまわないし、複数列ずつ設けてもかまわない。
【0029】
また、請求項4の発明に係るトンネル用防水シートの接合方法においては、所定の縁部に沿って第1の接合領域を表面に形成するとともに、前記縁部と反対側に位置する縁部に沿って第2の接合領域を裏面に形成してなるトンネル用防水シートを、第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせて接合するトンネル用防水シートの接合方法に適用されるものであり、まず、第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせる。
【0030】
次に、かかる状態で第1及び第2の接合領域に圧力を載荷しつつ、第1及び第2の接合領域のうち、少なくともいずれかの接合領域の表面近傍に設けられた電熱体に通電し、第1及び第2の接合領域を熱溶着する。
【0031】
ここで、トンネル用防水シートの熱溶着作用をさらに向上させたい場合には、第1及び第2の接合領域の少なくともいずれかに設けられた低融点溶着材を、第1及び第2の接合領域とともに溶融させる。
【0032】
なお、電熱体及び低融点溶着材の構成は、請求項1及び請求項2と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0033】
また、請求項6の発明に係るトンネル用防水シートの接合方法においては、所定の縁部に沿って第1の接合領域を表面に形成するとともに、前記縁部と反対側に位置する縁部に沿って第2の接合領域を裏面に形成してなるトンネル用防水シートを、第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせて接合するトンネル用防水シートの接合方法に適用されるものであり、まず、第1及び第2の接合領域のうち、一方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように設けられた所定の突条体を、他方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように設けられた所定の溝状凹部に嵌着する。
【0034】
嵌着するにあたっては、突条体を溝状凹部に位置合わせし、次いで、突条体を溝状凹部に押し込むようにすればよい。
【0035】
次に、かかる状態で第1及び第2の接合領域に圧力を載荷しつつ、第1及び第2の接合領域のうち、少なくともいずれかの接合領域の表面近傍に設けられた電熱体に通電して該接合領域を溶融させるとともに、突条体の材軸方向に沿って該突条体に埋設された電熱体に通電して該突条体を溶融させ、第1及び第2の接合領域を熱溶着する。
【0036】
突条体、溝状凹部及び電熱体の構成は、請求項1及び請求項3と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0037】
なお、請求項1乃至請求項6の発明に係るトンネル用防水シートを適用可能なトンネルとしては、シールドトンネルをはじめ、山岳トンネルや開削トンネルなど防水が必要となる全てのトンネルに適用することができる。
【0038】
また、請求項1乃至請求項6の発明に係るトンネル用防水シートを接合する形態としては、まず、同一のトンネル用防水シートに形成された第1の接合領域及び第2の接合領域を互いに重ね合わせて、1枚のトンネル用防水シートを環状になるように接合する形態が考えられる。かかる形態の例としては、例えば、比較的小断面のシールドトンネルの内部空間を取り囲むように該シールドトンネルの内面に取り付ける場合が該当する。
【0039】
次に、第2の形態として、第1の接合領域が形成されたトンネル用防水シートに、該トンネル用防水シートとは異なる別のトンネル用防水シートに形成された第2の接合領域を重ね合わせて、2枚のトンネル用防水シートを互いに接合する形態が考えられ、かかる形態は、さらに、トンネル用防水シートがトンネルの内部空間を取り囲むように又はトンネル躯体を取り囲むように接合される場合と、トンネルの軸線方向に沿って接合される場合の二つに大別される。
【0040】
前者の例としては、例えば、シールドトンネルであれ山岳トンネルであれ、大断面のトンネルの内面に該トンネルの内部空間を取り囲むように複数のトンネル用防水シートを次々に接合していく場合が該当する。なお、大断面の山岳トンネルをベンチカット工法で掘削する場合には、所定範囲の掘削終了を待ってトンネル用防水シートを順次接合していくこととなる。
【0041】
後者の例としては、例えば、シールドトンネルであれ山岳トンネルであれ、トンネル掘進速度を考慮しながら、トンネルの軸線方向に沿って複数のトンネル用防水シートを次々に接合していく場合が該当する。
【0042】
また、トンネル用防水シートは、防水性を有する材料で構成してあればよく、どのような形状であるかは問わないが、例えば、矩形平面状の樹脂シートで構成することが考えられる。
【0043】
また、接合領域をどのように設定するかも任意であるが、例えば、トンネル用防水シートが矩形平面状に構成されている場合においては、該トンネル用防水シートの短手方向又は長手方向の縁部に沿って第1及び第2の接合領域が互いに平行になるように形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明に係るトンネル用防水シート及びその接合方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
(第1実施形態)
【0046】
図1は、第1実施形態に係るトンネル用防水シート1を示した図である。同図(a)の平面図に示すように、本実施形態に係るトンネル用防水シート1は、矩形平面状の樹脂シートで構成してなり、該トンネル用防水シートの長手方向の縁部2に沿って重ね幅Wを有する第1の接合領域3を表面に形成するとともに、縁部2と反対側に位置する長手方向の縁部4に沿って同様の重ね幅Wを有する第2の接合領域5を裏面に形成してあり、第1の接合領域3及び第2の接合領域5が互いに平行になるように構成してある。
【0047】
ここで、トンネル用防水シート1は、第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせて接合するように構成してあり、第1の接合領域3には、該接合領域の縁部2と平行になるように突条体6を2列設けてあるとともに、第2の接合領域5には、該接合領域の縁部4と平行になるように溝状凹部7を2列設けてあり、溝状凹部7を突条体6が該溝状凹部内に嵌着されるように形成してある。
【0048】
突条体6は、同図(b)に示した断面図でよく分かるように、溝状凹部7に嵌着されるよう、先端部を円形断面に基部を該円形の外径よりも小さな幅の矩形断面となるように形成してある。
【0049】
溝状凹部7は、同図(c)に示した断面図でよく分かるように、突条体6が溝状凹部7内に嵌着されるように形成してある。ここで、溝状凹部7は、シート厚の都合上、トンネル用防水シート1から突出するように形成してある。
【0050】
突条体6の外面及び溝状凹部7の内面には、図2(a)、(b)に示すように予め工場で接着剤9を塗布するとともに、該塗布面に保護シール8を貼着してある。
【0051】
保護シール8は、トンネル用防水シート1を接合するまでの間、接着剤9の塗布面を保護するためのものであり、接合時には塗布面を露出することができるように剥離可能に構成する。
【0052】
本実施形態に係るトンネル用防水シート1を接合するにあたっては、一枚のトンネル用防水シート1をトンネル内面に沿って環状に取り付け、その両縁部を重ねて接合する場合と、先行施工されたトンネル用防水シート1に別のトンネル用防水シート1を接合する場合があるが、本実施形態では前者の場合について説明する。
【0053】
図3は、本実施形態に係るトンネル用防水シート1をシールドトンネルに適用した様子を示した図であり、(a)はトンネル軸線方向から見た断面図、(b)は(a)のC−C線に沿うトンネル軸線を含む断面図である。同図に示す場合においては、一枚のトンネル用防水シート1がトンネル内周面に沿って環状に取り付けられ、トンネル軸線方向に沿って接合されることとなる。
【0054】
同図に示すようにトンネル用防水シート1を接合するには、まず、地山11をシールド(図示せず)で掘削するとともに一次覆工としてシールドのテール内でセグメント12の組立て及び裏込め材13の注入を行った後、セグメント12の内周面に沿ってトンネル用防水シート1を取り付けるが、その両縁部を重ねて接合するにあたっては、まず、保護シール8をはがして接着剤9を露出させる。
【0055】
次に、図4に示すように、突条体6、6を溝状凹部7、7に位置合わせし、次いで、突条体6、6を溝状凹部7、7に押し込んで両者を嵌着する。
【0056】
なお、突条体6、6を溝状凹部7、7に嵌着すると、第1の接合領域3及び第2の接合領域5は、図4(b)でわかるように互いに非接触となる。また、突条体6、6と溝状凹部7、7をそれぞれ2列ずつ設けてあるので、該突条体を溝状凹部7、7に嵌着した状態では2列間に空間21が生じることとなるが、かかる空間21については、接合検査用の空気圧入溝として使用してもかまわない。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係るトンネル用防水シート1及びその接合方法によれば、第1の接合領域3に突条体6、6を設けるとともに、第2の接合領域5に溝状凹部7、7を設け、該溝状凹部を突条体6、6が該溝状凹部内に嵌着されるように形成してあるので、突条体6、6は、溝状凹部7、7内にしっかりと嵌着されるとともに、突条体6、6と溝状凹部7、7との接触面に予め塗布された接着剤9によって接着される。したがって、従来のような熱溶着設備を使用せずとも、第1の接合領域3と第2の接合領域5とを、高い水密性と接着力で接合することが可能となる。
【0058】
また、突条体6、6の外面及び溝状凹部7、7の内面に接着剤9を塗布するとともに該塗布面に保護シール8を剥離可能に貼着したので、トンネル用防水シート1を製造する際に接着剤9を工場にて塗布しておくことが可能となり、現場での接着剤の塗布作業が不要になるとともに、接着力の信頼性や品質が向上する。
【0059】
本実施形態では、本発明に係るトンネル用防水シート1をシールドトンネルに適用したが、本発明はかかるトンネルに限定されるものではなく、山岳トンネルや開削トンネルなど防水が必要となる全てのトンネルに適用することができる。
【0060】
また、本実施形態では、同一のトンネル用防水シート1に形成された第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせて、1枚のトンネル用防水シート1を環状になるように接合するようにしたが、先行施工されたトンネル用防水シート1に形成された第1の接合領域3に、該トンネル用防水シートとは異なる別のトンネル用防水シート1に形成された第2の接合領域5を重ね合わせて、2枚のトンネル用防水シート1、1を互いに接合するようにしてもかまわない。
【0061】
図5及び図6は、先行施工されたトンネル用防水シート1aにトンネル用防水シート1bを接合する場合を示したものである。なお、トンネル用防水シート1a、1bは、それぞれトンネル用防水シート1と同一の構成であり、以下の説明では、トンネル用防水シート1の各部を示す符号にa、bを付することによって、トンネル用防水シート1aとトンネル用防水シート1bとを区別するものとする。
【0062】
先行施工されたトンネル用防水シート1aにトンネル用防水シート1bを接合するには、上述した実施形態と同様、まず、突条体6a、6aに貼着された保護シール8aをはがして接着剤9aを露出させるとともに、溝状凹部7b、7bに貼着された保護シール8bをはがして接着剤9bを露出させる。
【0063】
次に、トンネル用防水シート1bの溝状凹部7b、7bをトンネル用防水シート1aの突条体6a、6aに押し込んで嵌着する。
【0064】
このようにすれば、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができるが、その説明については、ここでは省略する。
【0065】
また、本実施形態では、第1の接合領域3に突条体6を設けるとともに第2の接合領域5に溝状凹部7を設けるようにしたが、突条体及び溝状凹部をそれぞれ第1及び第2の接合領域のうちどちらに設けるかは任意であり、第1の接合領域に溝状凹部を設けるとともに第2の接合領域に突条体を設けるようにしてもかまわない。
【0066】
また、本実施形態では、溝状凹部7は、トンネル用防水シート1から突出するように形成したが、これに代えて、トンネル用防水シート1の厚み方向断面内に埋設される形態で形成してもかまわない。
【0067】
また、本実施形態では、突条体6の外面及び溝状凹部の内面の両方に接着剤9を塗布するようにしたが、嵌着したときの接着力が確保できるのであれば、接着剤9を塗布するのはいずれか一方でもかまわない。
【0068】
また、本実施形態では、工場にて接着剤9を予め塗布した上、該塗布面を保護シール8で被覆するようにしたが、これに代えて、突条部を溝状凹部に嵌着する直前に接着剤を現場で塗布するようにしてもよい。
【0069】
かかる現場塗布の場合には、接着剤9が予め塗布されたトンネル用防水シート1ではなく、接着剤9及びその塗布面に貼着された保護シール8が省略されたトンネル用防水シート31を使用する。なお、トンネル用防水シート31は、図7に示したように、接着剤9及び保護シール8を省略した点を除き、トンネル用防水シート1と同一の構成であるので、トンネル用防水シート1の各部と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
かかるトンネル用防水シート31を例えばトンネル内面に沿って環状に取り付け、その両縁部を重ねて接合するには、まず、トンネル用防水シート31の突条体6、6の外面及び溝状凹部7、7の内面の少なくともいずれかに接着剤を現場で塗布した後、突条体6、6を溝状凹部7、7に位置合わせし、次いで、突条体6、6を溝状凹部7、7に押し込んで両者を嵌着すればよい。
【0071】
かかる構成による作用効果並びに先行施工されたトンネル用防水シート31に別のトンネル用防水シート31を接合することができる点については、上述の実施形態と実質的に同一であるので、その内容についてはここでは説明を省略する。
【0072】
(第2実施形態)
【0073】
次に、第2実施形態に係るトンネル用防水シート及びその接合方法について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図8は、第2実施形態に係るトンネル用防水シート41を示した図である。同図(a)の平面図に示すように、本実施形態に係るトンネル用防水シート41は、第1実施形態と同様、矩形平面状の樹脂シートで構成してなり、該トンネル用防水シートの長手方向の縁部2に沿って重ね幅Wを有する第1の接合領域3を表面に形成するとともに、縁部2と反対側に位置する長手方向の縁部4に沿って同様の重ね幅Wを有する第2の接合領域5を裏面に形成してあり、第1の接合領域3及び第2の接合領域5が互いに平行になるように構成してある。
【0075】
ここで、トンネル用防水シート41は、第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせて接合するように構成してあり、第1の接合領域3には、該接合領域の縁部2と平行になるように突条体42を2列設けてあるとともに、第2の接合領域5には、該接合領域の縁部4と平行になるように溝状凹部7を2列設けてあり、溝状凹部7を突条体42が該溝状凹部内に嵌着されるように形成してある。
【0076】
突条体42は、同図(b)に示した断面図でよく分かるように、第1実施形態と同様、溝状凹部7に嵌着されるよう、先端部を円形断面に基部を該円形の外径よりも小さな幅の矩形断面となるように形成してある。
【0077】
ここで、突条体42は、内部に硬化剤が充填されるための中空空間43を該突条体の材軸方向に沿って形成するとともに、該中空空間に硬化剤が圧入充填されたときに該硬化剤の内圧によって膨張するように構成してある。
【0078】
溝状凹部7は、同図(c)に示した断面図でよく分かるように、第1実施形態と同様、突条体42が溝状凹部7内に嵌着されるように形成してある。ここで、溝状凹部7は、シート厚の都合上、トンネル用防水シート41から突出するように形成してある。
【0079】
本実施形態に係るトンネル用防水シート41を接合するにあたっては、一枚のトンネル用防水シート41をトンネル内面に沿って環状に取り付け、その両縁部を重ねて接合する場合と、先行施工されたトンネル用防水シート41に別のトンネル用防水シート41を接合する場合があるが、本実施形態では前者の場合について説明する。
【0080】
本実施形態に係るトンネル用防水シート41をシールドトンネルに適用した場合においては、第1実施形態の図3で説明したのと同様、一枚のトンネル用防水シート41がトンネル内周面に沿って環状に取り付けられ、トンネル軸線方向に沿って接合されることとなる。
【0081】
図3と同様に、トンネル用防水シート41を接合するには、まず、地山11をシールド(図示せず)で掘削するとともに一次覆工としてシールドのテール内でセグメント12の組立て及び裏込め材13の注入を行った後、セグメント12の内周面に沿ってトンネル用防水シート41を取り付けるが、その両縁部を重ねて接合するにあたっては、図9(a)に示すように、まず、突条体42、42を溝状凹部7、7に位置合わせし、次いで、突条体42、42を溝状凹部7、7に押し込んで両者を嵌着する。
【0082】
次に、同図(b)に示すように、突条体42、42の材軸方向に沿って該突条体内に形成されている中空空間43に硬化剤44を圧入充填し、該硬化剤の内圧によって突条体42、42を膨張させる。
【0083】
硬化剤44としては、例えばエボキシ樹脂を用いることができる。
【0084】
なお、硬化剤44を注入するにあたっては、ハンドポンプ等を用いて圧入すればよい。
【0085】
次に、かかる状態を保持しつつ硬化剤44を硬化させる。
【0086】
このようにすると、図10に示すように、突条体42は、該突条体の中空空間43に圧入充填された硬化剤44の内圧によって溝状凹部7内で膨張し、かかる状態で硬化剤44が硬化することとなり、突条体42及び溝状凹部7の嵌着力と突条体42の膨張圧力とで、トンネル用防水シート41の第1の接合領域3及び第2の接合領域5に高い水密性と接合力が確保される。
【0087】
なお、突条体42、42を溝状凹部7、7に嵌着すると、第1の接合領域3及び第2の接合領域5は、図9(b)でわかるように互いに非接触となる。また、突条体42、42と溝状凹部7、7をそれぞれ2列ずつ設けてあるので、該突条体を溝状凹部7、7に嵌着した状態では2列間に空間21が生じることとなるが、かかる空間21については、接合検査用の空気圧入溝として使用してもかまわない。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係るトンネル用防水シート41及びその接合方法によれば、突条体42、42内に硬化剤44が充填されるための中空空間43を該突条体の材軸方向に沿って形成するとともに、該中空空間に硬化剤44が圧入充填されたときに該硬化剤の内圧によって膨張するように突条体42、42を構成してあるので、突条体42、42は、該突条体の中空空間43に圧入充填された硬化剤44の内圧によって溝状凹部7、7内で膨張し、かかる状態で硬化剤44が硬化することとなり、かくして従来のような熱溶着設備を使用せずとも、突条体42、42及び溝状凹部7、7の嵌着力と突条体42、42の膨張圧力とで、トンネル用防水シート41の第1の接合領域3及び第2の接合領域5に高い水密性と接合力を確保することができる。
【0089】
本実施形態では、本発明に係るトンネル用防水シート41をシールドトンネルに適用したが、本発明はかかるトンネルに限定されるものではなく、山岳トンネルや開削トンネルなど防水が必要となる全てのトンネルに適用することができる。
【0090】
また、本実施形態では、同一のトンネル用防水シート41に形成された第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせて、1枚のトンネル用防水シート41を環状になるように接合するようにしたが、先行施工されたトンネル用防水シート41に形成された第1の接合領域3に、該トンネル用防水シートとは異なる別のトンネル用防水シート41に形成された第2の接合領域5を重ね合わせて、2枚のトンネル用防水シート41、41を互いに接合するようにしてもかまわない。
【0091】
図11は、先行施工されたトンネル用防水シート41aにトンネル用防水シート41bを接合する場合を示したものである。なお、トンネル用防水シート41a、41bは、それぞれトンネル用防水シート41と同一の構成であり、以下の説明では、トンネル用防水シート41の各部を示す符号にa、bを付することによって、トンネル用防水シート41aとトンネル用防水シート41bとを区別するものとする。
【0092】
先行施工されたトンネル用防水シート41aにトンネル用防水シート41bを接合するには、上述した実施形態と同様、まず、トンネル用防水シート41bの溝状凹部7b、7bをトンネル用防水シート41aの突条体42a、42aに押し込んで嵌着する。
【0093】
次に、突条体42a、42aの材軸方向に沿って該突条体内に形成されている中空空間43aに硬化剤44を圧入充填し、該硬化剤の内圧によって突条体42a、42aを膨張させる。
【0094】
なお、突条体42a内に形成された中空空間43aに硬化剤44を圧入充填するには、例えば、トンネル用防水シート41bの表面からトンネル用防水シート41aの突条体42a内に形成された中空空間43aまで貫通するようにドリル等で穿孔し、かかる穿孔で形成された孔を利用して硬化剤44を圧入するようにすればよい。また、必要に応じて、同様な手順で別の箇所に空気抜き用の孔を穿孔し、充填が確認された後、空気抜き用の孔を塞いで加圧作業を行うようにすればよい。
【0095】
次に、かかる状態を保持しつつ硬化剤44を硬化させる。
【0096】
このようにすれば、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができるが、その説明については、ここでは省略する。
【0097】
また、本実施形態では、第1の接合領域3に突条体42、42を設けるとともに第2の接合領域5に溝状凹部7、7を設けるようにしたが、突条体及び溝状凹部をそれぞれ第1及び第2の接合領域のうちどちらに設けるかは任意であり、第1の接合領域に溝状凹部を設けるとともに第2の接合領域に突条体を設けるようにしてもかまわない。
【0098】
また、本実施形態では、溝状凹部7は、トンネル用防水シート41から突出するように形成したが、これに代えて、トンネル用防水シート41の厚み方向断面内に埋設される形態で形成してもかまわない。
【0099】
(第3実施形態)
【0100】
次に、第3実施形態に係るトンネル用防水シート及びその接合方法について説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0101】
図12は、第3実施形態に係るトンネル用防水シート51を示した図である。同図(a)の平面図に示すように、本実施形態に係るトンネル用防水シート51は、第1実施形態と同様、矩形平面状の樹脂シートで構成してなり、該トンネル用防水シートの長手方向の縁部2に沿って重ね幅Wを有する第1の接合領域3を表面に形成するとともに、縁部2と反対側に位置する長手方向の縁部4に沿って同様の重ね幅Wを有する第2の接合領域5を裏面に形成してあり、第1の接合領域3及び第2の接合領域5が互いに平行になるように構成してある。
【0102】
第1の接合領域3の表面近傍には、同図(b)に示した断面図でよく分かるように、電熱体として、直線状の電熱線52を該接合領域の縁部2と平行になるように複数本並列配置した状態で埋設してある。
【0103】
第2の接合領域5の表面近傍には、同図(c)に示した断面図でよく分かるように、電熱体として、直線状の電熱線52を該接合領域の縁部4と平行になるように複数本並列配置した状態で埋設してある。
【0104】
すなわち、トンネル用防水シート51は、第1の接合領域3及び第2の接合領域5の表面近傍に設けた電熱線52への通電によって第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせた状態で熱溶着できるように構成してある。
【0105】
ここで、第1の接合領域3及び第2の接合領域5には重ね幅Wと同じ幅で低融点溶着材53を積層してあり、該低融点溶着材を介して第1の接合領域3及び第2の接合領域5を熱溶着できるようになっている。
【0106】
低融点溶着材53は、トンネル用防水シート51の融点よりも低い材料で構成してある。
【0107】
本実施形態に係るトンネル用防水シート51を接合するにあたっては、一枚のトンネル用防水シート51をトンネル内面に沿って環状に取り付け、その両縁部を重ねて接合する場合と、先行施工されたトンネル用防水シート51に別のトンネル用防水シート51を接合する場合があるが、本実施形態では前者の場合について説明する。
【0108】
本実施形態に係るトンネル用防水シート51をシールドトンネルに適用した場合においては、第1実施形態の図3で説明したのと同様、一枚のトンネル用防水シート51がトンネル内周面に沿って環状に取り付けられ、トンネル軸線方向に沿って接合されることとなる。
【0109】
図3と同様に、トンネル用防水シート51を接合するには、まず、地山11をシールド(図示せず)で掘削するとともに一次覆工としてシールドのテール内でセグメント12の組立て及び裏込め材13の注入を行った後、セグメント12の内周面に沿ってトンネル用防水シート51を取り付けるが、その両縁部を重ねて接合するにあたっては、図13(a)に示すように、まず、第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせる。
【0110】
次に、第1の接合領域3及び第2の接合領域5の表面近傍に設けられた電熱線52に図示しない電源をつないで通電し、第1の接合領域3及び第2の接合領域5を、第1の接合領域3及び第2の接合領域5に設けられた低融点溶着材53とともに溶融させながら、同図(b)に示すように、第1の接合領域3及び第2の接合領域5に圧力を載荷することによって、第1の接合領域3及び第2の接合領域5を熱溶着させる。
【0111】
なお、圧力を載荷しながら溶着するにあたっては、ハンドローラー等を用いればよい。
【0112】
以上説明したように、本実施形態に係るトンネル用防水シート51及びその接合方法によれば、第1の接合領域3及び第2の接合領域5の表面近傍に電熱線52及び低融点溶着材53を設けたので、第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせた状態で電熱線52へ通電することによって、電熱線52が設けられた接合領域はもちろん、電熱線52から離間しているために加熱温度が低い低融点溶着材53も溶融することとなり、第1の接合領域3及び第2の接合領域5は、両者の溶融作用で確実に一体化し、かくして従来のような熱溶着設備を使用せずとも、トンネル用防水シート51の接合領域に高い水密性及び接合力を確保することができる。
【0113】
本実施形態では、本発明に係るトンネル用防水シート51をシールドトンネルに適用したが、本発明はかかるトンネルに限定されるものではなく、山岳トンネルや開削トンネルなど防水が必要となる全てのトンネルに適用することができる。
【0114】
また、本実施形態では、同一のトンネル用防水シート51に形成された第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせて、1枚のトンネル用防水シート51を環状になるように接合するようにしたが、先行施工されたトンネル用防水シート51に形成された第1の接合領域3に、該トンネル用防水シートとは異なる別のトンネル用防水シート51に形成された第2の接合領域5を重ね合わせて、2枚のトンネル用防水シート51、51を互いに接合するようにしてもかまわない。
【0115】
図14は、先行施工されたトンネル用防水シート51aにトンネル用防水シート51bを接合する場合を示したものである。なお、トンネル用防水シート51a、51bは、それぞれトンネル用防水シート51と同一の構成であり、以下の説明では、トンネル用防水シート51の各部を示す符号にa、bを付することによって、トンネル用防水シート51aとトンネル用防水シート51bとを区別するものとする。
【0116】
先行施工されたトンネル用防水シート51aにトンネル用防水シート51bを接合するには、上述した実施形態と同様、まず、トンネル用防水シート51aの第1の接合領域3aとトンネル用防水シート51bの第2の接合領域5bを互いに重ね合わせる。
【0117】
次に、第1の接合領域3aの表面近傍に設けられた電熱線52a及び第2の接合領域5bの表面近傍に設けられた電熱線52bに図示しない電源をつないで通電し、第1の接合領域3a及び第2の接合領域5bを、第1の接合領域3aに設けられた低融点溶着材53a及び第2の接合領域5bに設けられた低融点溶着材53bとともに溶融させながら、第1の接合領域3a及び第2の接合領域5bに圧力を載荷することによって、第1の接合領域3a及び第2の接合領域5bを熱溶着する。
【0118】
このようにすれば、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができるが、その説明については、ここでは省略する。
【0119】
また、本実施形態では、第1の接合領域3及び第2の接合領域5の表面近傍に、電熱体として電熱線52を埋設するようにしたが、第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせた状態で該第1及び第2の接合領域を溶融できるのであれば、電熱体を設けるのは一方の接合領域だけにしてもかまわない。また、電熱体を設けるにあたっては、接合領域に埋設せずに、接合領域の表面に貼着するようにしてもかまわない。
【0120】
また、本実施形態では、電熱体として、直線状の電熱線52を各接合領域の縁部と平行になるように複数本並列配置するようにしたが、電熱体の形状はこれに限るものではなく、例えば、一本の電熱線を千鳥状に平面配置したり、網目状の電熱線やフラットケーブル状の電熱体を接合領域全面にわたって配置したりしてもかまわない。
【0121】
また、本実施形態では、低融点溶着材53を第1の接合領域3及び第2の接合領域5の両方に設けるようにしたが、第1及び第2の接合領域が十分溶着されるのであれば、低融点溶着材を設けるのはいずれか一方でもかまわない。
【0122】
また、本実施形態では、低融点溶着材53を第1の接合領域3及び第2の接合領域5に設けるようにしたが、電熱体の加熱作用によって第1及び第2の接合領域を十分熱溶着できる場合には、低融点溶着材53を省略してもかまわない。
【0123】
かかる構成による作用効果については、低融点溶着材53を省略した点を除き、上述の実施形態と実質的に同一であるので、その内容についてはここでは説明を省略する。
【0124】
(第4実施形態)
【0125】
次に、第4実施形態に係るトンネル用防水シート及びその接合方法について説明する。なお、第1実施形態乃至第3実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0126】
図15は、第4実施形態に係るトンネル用防水シート61を示した図である。同図(a)の平面図に示すように、本実施形態に係るトンネル用防水シート61は、第1実施形態と同様、矩形平面状の樹脂シートで構成してなり、該トンネル用防水シートの長手方向の縁部2に沿って重ね幅Wを有する第1の接合領域3を表面に形成するとともに、縁部2と反対側に位置する長手方向の縁部4に沿って同様の重ね幅Wを有する第2の接合領域5を裏面に形成してあり、第1の接合領域3及び第2の接合領域5が互いに平行になるように構成してある。
【0127】
第1の接合領域3の表面近傍には、同図(b)に示した断面図でよく分かるように、電熱体として、直線状の電熱線52を該接合領域の縁部2と平行になるように複数本並列配置した状態で埋設してある。
【0128】
第2の接合領域5の表面近傍には、同図(c)に示した断面図でよく分かるように、電熱体として、直線状の電熱線52を該接合領域の縁部4と平行になるように複数本並列配置した状態で埋設してある。
【0129】
すなわち、トンネル用防水シート61は、第1の接合領域3及び第2の接合領域5の表面近傍に設けた電熱線52への通電によって第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせた状態で熱溶着できるように構成してある。
【0130】
ここで、トンネル用防水シート61には、第1の接合領域3に、該接合領域の縁部2と平行になるように突条体62を2列設けてあるとともに、第2の接合領域5には、該接合領域の縁部4と平行になるように溝状凹部7を2列設けてあり、溝状凹部7を突条体62が該溝状凹部内に嵌着されるように形成してある。
【0131】
突条体62は、同図(b)に示した断面図でよく分かるように、溝状凹部7に嵌着されるよう、先端部を円形断面に基部を該円形の外径よりも小さな幅の矩形断面となるように形成してあるとともに、円形断面の中央近傍に材軸方向に沿って電熱体である電熱線52を埋設してある。
【0132】
溝状凹部7は、同図(c)に示した断面図でよく分かるように、第1実施形態と同様、突条体62が溝状凹部7内に嵌着されるように形成してある。ここで、溝状凹部7は、シート厚の都合上、トンネル用防水シート61から突出するように形成してある。
【0133】
本実施形態に係るトンネル用防水シート61を接合するにあたっては、一枚のトンネル用防水シート61をトンネル内面に沿って環状に取り付け、その両縁部を重ねて接合する場合と、先行施工されたトンネル用防水シート61に別のトンネル用防水シート61を接合する場合があるが、本実施形態では前者の場合について説明する。
【0134】
本実施形態に係るトンネル用防水シート61をシールドトンネルに適用した場合においては、第1実施形態の図3で説明したのと同様、一枚のトンネル用防水シート61がトンネル内周面に沿って環状に取り付けられ、トンネル軸線方向に沿って接合されることとなる。
【0135】
同図に示すようにトンネル用防水シート61を接合するには、まず、地山11をシールド(図示せず)で掘削するとともに一次覆工としてシールドのテール内でセグメント12の組立て及び裏込め材13の注入を行った後、セグメント12の内周面に沿ってトンネル用防水シート61を取り付けるが、その両縁部を重ねて接合するにあたっては、図16(a)に示すように、まず、第1の接合領域3に設けられた突条体62、62を、第2の接合領域5に設けられた溝状凹部7、7に位置合わせし、次いで、突条体62、62を溝状凹部7、7に押し込んで両者を嵌着する。
【0136】
次に、第1の接合領域3及び第2の接合領域5の表面近傍に設けられた電熱体52に図示しない電源をつないで通電して該接合領域を溶融させるとともに、突条体62、62の材軸方向に沿って該突条体に埋設された電熱体52に図示しない電源をつないで通電して該突条体を溶融させながら、同図(b)に示すように、第1の接合領域3及び第2の接合領域5に圧力を載荷することによって、第1の接合領域3及び第2の接合領域5を熱溶着させる。
【0137】
なお、圧力を載荷しながら溶着するにあたっては、ハンドローラー等を用いればよい。
【0138】
以上説明したように、本実施形態に係るトンネル用防水シート61及びその接合方法によれば、第1の接合領域3及び第2の接合領域5の表面近傍に電熱線52を設けたので、第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせた状態で電熱線52へ通電することによって、電熱線52が設けられた接合領域は溶融する。そのため、第1の接合領域3及び第2の接合領域5は、熱溶着によって一体化し、かくして従来のように熱溶着設備を使用せずとも、トンネル用防水シート61の接合領域に高い水密性及び接合力を確保することができる。
【0139】
また、第1の接合領域3に突条体62、62を設けるとともに、第2の接合領域5に溝状凹部7、7を設け、溝状凹部を突条体62、62が該溝状凹部内に嵌着されるように形成するとともに、突条体62、62に該突条体の材軸方向に沿って電熱線52を埋設したので、第1の接合領域3及び第2の接合領域5の表面近傍に設けた電熱線52及び突条体62、62内に埋設した電熱線52を用いた熱溶着による接合力に加えて、突条体62、62を溝状凹部7、7に嵌着させることによる嵌着力で、トンネル用防水シート61の接合領域においては、より高い水密性と接合力を確保することが可能となる。
【0140】
本実施形態では、本発明に係るトンネル用防水シート61をシールドトンネルに適用したが、本発明はかかるトンネルに限定されるものではなく、山岳トンネルや開削トンネルなど防水が必要となる全てのトンネルに適用することができる。
【0141】
また、本実施形態では、同一のトンネル用防水シート61に形成された第1の接合領域3及び第2の接合領域5を互いに重ね合わせて、1枚のトンネル用防水シート61を環状になるように接合するようにしたが、先行施工されたトンネル用防水シート61に形成された第1の接合領域3に、該トンネル用防水シートとは異なる別のトンネル用防水シート61に形成された第2の接合領域5を重ね合わせて、2枚のトンネル用防水シート61、61を互いに接合するようにしてもかまわない。
【0142】
図17は、先行施工されたトンネル用防水シート61aにトンネル用防水シート61bを接合する場合を示したものである。なお、トンネル用防水シート61a、61bは、それぞれトンネル用防水シート61と同一の構成であり、以下の説明では、トンネル用防水シート61の各部を示す符号にa、bを付することによって、トンネル用防水シート61aとトンネル用防水シート61bとを区別するものとする。
【0143】
先行施工されたトンネル用防水シート61aにトンネル用防水シート61bを接合するには、上述した実施形態と同様、まず、トンネル用防水シート61bの溝状凹部7b、7bをトンネル用防水シート61aの突条体62a、62aに押し込んで両者を嵌着する。
【0144】
次に、第1の接合領域3aの表面近傍に設けられた電熱体52a及び第2の接合領域5bの表面近傍に設けられた電熱体52bに図示しない電源をつないで通電して該接合領域を溶融させるとともに、突条体62a、62aの材軸方向に沿って該突条体に埋設された電熱体52aに図示しない電源をつないで通電して該突条体を溶融させながら、第1の接合領域3a及び第2の接合領域5bに圧力を載荷することによって、第1の接合領域3a及び第2の接合領域5bを熱溶着する。
【0145】
このようにすれば、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができるが、その説明については、ここでは省略する。
【0146】
また、本実施形態では、第1の接合領域3に突条体62、62を設けるとともに第2の接合領域5に溝状凹部7、7を設けるようにしたが、突条体及び溝状凹部をそれぞれ第1及び第2の接合領域のうちどちらに設けるかは任意であり、第1の接合領域に溝状凹部を設けるとともに第2の接合領域に突条体を設けるようにしてもかまわない。
【0147】
また、本実施形態では、溝状凹部7は、トンネル用防水シート61から突出するように形成したが、これに代えて、トンネル用防水シート61の厚み方向断面内に埋設される形態で形成してもかまわない。
【0148】
また、本実施形態では、第1の接合領域3及び第2の接合領域5の表面近傍に、電熱体として電熱線52を埋設するようにしたが、第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせた状態で該第1及び第2の接合領域を溶融できるのであれば、電熱体を設けるのは一方の接合領域だけにしてもかまわない。また、電熱体を設けるにあたっては、接合領域に埋設せずに、接合領域の表面に貼着するようにしてもかまわない。
【0149】
また、本実施形態では、第1の接合領域3及び第2の接合領域5に直線状の電熱線52を該各接合領域の縁部と平行になるように複数本並列配置するようにしたが、電熱体の形状はこれに限るものではなく、例えば、一本の電熱線を千鳥状に平面配置したり、網目状の電熱線やフラットケーブル状の電熱体を接合領域全面にわたって配置したりしてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】第1実施形態に係るトンネル用防水シートを示した図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面詳細図、(c)は(a)のB−B線に沿う断面詳細図。
【図2】第1実施形態に係るトンネル用防水シートを示した図で、(a)は溝状凹部の断面詳細図、(b)は突条体の断面詳細図。
【図3】第1実施形態に係るトンネル用防水シートをシールドトンネルに適用した様子を示した図であり、(a)はトンネル軸線方向から見た断面図、(b)は(a)のC−C線に沿うトンネル軸線を含む断面図。
【図4】第1実施形態に係るトンネル用防水シートを接合する様子を示した斜視図。
【図5】第1実施形態の変形例に係るトンネル用防水シートをシールドトンネルに適用した様子を示した図であり、(a)はトンネル軸線を含む断面図、(b)は(a)のD−D線に沿うトンネル軸線方向から見た断面図。
【図6】第1実施形態の変形例に係るトンネル用防水シートを接合する様子を示した斜視図。
【図7】第1実施形態の別の変形例に係るトンネル用防水シートを示した図で、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面詳細図、(c)は(a)のF−F線に沿う断面詳細図。
【図8】第2実施形態に係るトンネル用防水シートを示した図で、(a)は平面図、(b)は(a)のG−G線に沿う断面詳細図、(c)は(a)のH−H線に沿う断面詳細図。
【図9】第2実施形態に係るトンネル用防水シートを接合する様子を示した斜視図。
【図10】第2実施形態に係るトンネル用防水シートの作用を示した断面図。
【図11】第2実施形態の変形例に係るトンネル用防水シートを接合する様子を示した斜視図。
【図12】第3実施形態に係るトンネル用防水シートを示した図で、(a)は平面図、(b)は(a)のI−I線に沿う断面詳細図、(c)は(a)のJ−J線に沿う断面詳細図。
【図13】第3実施形態に係るトンネル用防水シートを接合する様子を示した斜視図。
【図14】第3実施形態の変形例に係るトンネル用防水シートを接合する様子を示した斜視図。
【図15】第4実施形態に係るトンネル用防水シートを示した図で、(a)は平面図、(b)は(a)のK−K線に沿う断面詳細図、(c)は(a)のL−L線に沿う断面詳細図。
【図16】第4実施形態に係るトンネル用防水シートを接合する様子を示した斜視図。
【図17】第4実施形態の変形例に係るトンネル用防水シートを接合する様子を示した斜視図。
【符号の説明】
【0151】
1、31、41、51、61 トンネル用防水シート
2、4 縁部
3 第1の接合領域
5 第2の接合領域
6、42、62 突条体
7 溝状凹部
8 保護シール
9 接着剤
43 中空空間
44 硬化剤
52 電熱線(電熱体)
53 低融点溶着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の縁部に沿って第1の接合領域を表面に形成するとともに、前記縁部と反対側に位置する縁部に沿って第2の接合領域を裏面に形成し、前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせて接合するように構成してなるトンネル用防水シートにおいて、
前記第1及び第2の接合領域のうち、少なくともいずれかの接合領域の表面近傍に電熱体を設け、該電熱体への通電によって前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせた状態で熱溶着できるように構成したことを特徴とするトンネル用防水シート。
【請求項2】
前記第1及び第2の接合領域の少なくともいずれかに低融点溶着材を設け、該低融点溶着材を介して前記第1及び第2の接合領域を熱溶着できるように構成した請求項1記載のトンネル用防水シート。
【請求項3】
前記第1及び第2の接合領域のうち、一方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように所定の突条体を設けるとともに、他方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように所定の溝状凹部を設け、前記溝状凹部を前記突条体が該溝状凹部内に嵌着されるように形成するとともに、前記突条体に該突条体の材軸方向に沿って電熱体を埋設した請求項1記載のトンネル用防水シート。
【請求項4】
所定の縁部に沿って第1の接合領域を表面に形成するとともに、前記縁部と反対側に位置する縁部に沿って第2の接合領域を裏面に形成してなるトンネル用防水シートを、前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせて接合するトンネル用防水シートの接合方法において、
前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせ、かかる状態で前記第1及び第2の接合領域に圧力を載荷しつつ、前記第1及び第2の接合領域のうち、少なくともいずれかの接合領域の表面近傍に設けられた電熱体に通電して前記第1及び第2の接合領域を熱溶着することを特徴とするトンネル用防水シートの接合方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の接合領域の少なくともいずれかに設けられた低融点溶着材を、前記第1及び第2の接合領域とともに溶融させる請求項4記載のトンネル用防水シートの接合方法。
【請求項6】
所定の縁部に沿って第1の接合領域を表面に形成するとともに、前記縁部と反対側に位置する縁部に沿って第2の接合領域を裏面に形成してなるトンネル用防水シートを、前記第1及び第2の接合領域を互いに重ね合わせて接合するトンネル用防水シートの接合方法において、
前記第1及び第2の接合領域のうち、一方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように設けられた所定の突条体を、他方の接合領域に該接合領域の縁部と平行になるように設けられた所定の溝状凹部に嵌着し、かかる状態で前記第1及び第2の接合領域に圧力を載荷しつつ、前記第1及び第2の接合領域のうち、少なくともいずれかの接合領域の表面近傍に設けられた電熱体に通電して該接合領域を溶融させるとともに、前記突条体の材軸方向に沿って該突条体に埋設された電熱体に通電して該突条体を溶融させ、前記第1及び第2の接合領域を熱溶着することを特徴とするトンネル用防水シートの接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−152800(P2006−152800A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18717(P2006−18717)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【分割の表示】特願2001−33197(P2001−33197)の分割
【原出願日】平成13年2月9日(2001.2.9)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】