説明

トンネル補修構造

【課題】トンネルの内壁部における漏水とはく離の損傷箇所、さらにその損傷箇所の大きさに関係なく1つの工法で短期間に施工できるトンネル補修構造に関する。
【解決手段】本発明のトンネル補修構造は、導水はく落防止体が、トンネルの内壁部に張設する導水パネルと、導水パネル裏面に重ねて張設する格子状の格子筋と、導水パネルのトンネルの内壁部側に内壁部に沿うように突設した止水パッキン及び/又はリブにより導水パネルとトンネル内壁部との間に形成した導水路と格子筋の格子間に設定して、アンカーボルトにより格子筋と導水パネルとをトンネルの内壁部に敷設固定するための角座金とよりなることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル補修構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両や鉄道車両等のトンネルは、山岳部分をアーチ状にくり抜いて、その開口内の内壁部をコンクリート材で構築した構造であるが、コンクリートの内壁部では、コンクリート材そのものの収縮や外力の作用により、浮きやはく離が生じて、はく離片がトンネル内を通過する車両等に落下することがあった。また、コンクリートの内壁部では、風化によりひび割れ等が生じて、そのひび割れから浸み出した漏水がトンネル内を通過する車両等に滴下することがあった。
【0003】
そこで、トンネルの内壁部の浮きやはく離対策としては、例えば、繊維シートをトンネル内壁部に接着する工法が行われ或は、FRP製のネット部材をトンネル内壁部にアンカーボルトで固定する工法(特許文献1参照)が行われている。
このような浮きやはく離対策のために上記2工法を施したトンネルの内壁部では、施工時に漏水が生じ無くても、施工後にしばらくすると漏水が発生することが度々認められており、漏水による不具合が数多く報告されている。
すなわち、上記繊維シートを接着する工法だけでは、トンネル内壁部から染み出した漏水によって繊維シートがトンネル内壁部からはく離するなどの問題があった。他方、上記ネット部材をアンカーボルトで固定する工法においても、ネット部材の網目から染み出した漏水がトンネル内を通過する車両等に滴下する問題があった。
【0004】
一方、トンネルの内壁部の漏水対策としては、次の2つの工法が行われており、例えば、矩形のプラスチックパネルをトンネル内壁部にアンカーボルトで取り付けて、同内壁部とプラスチックパネルとの間を導水する工法、或は、トンネルの内壁部を溝型に削り取り、この溝に沿って導水する工法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−9266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記漏水対策用の矩形のプラスチックパネルでは、同パネルの寸法の種類に限りがあり、大規模な漏水の損傷箇所を補修できない場合があるほか、漏水とはく離の損傷箇所においては、同パネルの引張り強度が小さいために別途、はく離対策の工法を施す必要があった。
すなわち、漏水とはく離の両方が生じた損傷箇所においては、止水を行ったのちに別途、はく離対策のための繊維シートをトンネル内壁部に接着する工法を施すことが行われており、これら2種類の工法を組み合わせて施工するために、トンネル補修の工期が長期にわたる問題があった。
【0007】
本発明は、トンネルの内壁部における漏水とはく離の損傷箇所、さらにその損傷箇所の大きさに関係なく1つの工法で短期間に施工できるトンネル補修構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のトンネル補修構造は、トンネルの内壁部に導水はく落防止体を敷設固定するトンネル補修構造において、導水はく落防止体は、トンネルの内壁部に張設する導水パネルと、導水パネル裏面に重ねて張設する格子状の格子筋と、導水パネルのトンネルの内壁部側に内壁部に沿うように突設した止水パッキン及び/又はリブにより導水パネルとトンネル内壁部との間に形成した導水路と格子筋の格子間に設定して、アンカーボルトにより格子筋と導水パネルとをトンネルの内壁部に敷設固定するための角座金とよりなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のトンネル補修構造は、請求項1に記載のトンネル補修構造において、角座金は、中央の表裏面に中央凸部と中央凹部を形成し、角座金の周縁部が格子筋の隣接する格子部材に架載され、隣接する格子部材間に中央凸部が嵌入するように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のトンネル補修構造は、請求項1及び請求項2に記載のトンネル補修構造において、導水パネルと格子筋とを重ねて張設するに際し、複数の導水パネル間に格子筋を挟着した多層パネル体を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のトンネル補修構造は、請求項3に記載のトンネル補修構造において、多層パネル体の側縁部は、略コ字状の挟着フランジに嵌着して一体に挟着したことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のトンネル補修構造は、請求項4に記載のトンネル補修構造において、挟着フランジのトンネル内壁部側の面には、止水パッキンを突設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、トンネルの内壁部に導水はく落防止体を敷設固定するトンネル補修構造において、導水はく落防止体は、トンネルの内壁部に張設する導水パネルと、導水パネル裏面に重ねて張設する格子状の格子筋と、導水パネルのトンネルの内壁部側に内壁部に沿うように突設した止水パッキン及び/又はリブにより導水パネルとトンネル内壁部との間に形成した導水路と格子筋の格子間に設定して、アンカーボルトにより格子筋と導水パネルとをトンネルの内壁部に敷設固定するための角座金とよりなるので、1回の取付け作業で導水機能とはく落防止機能を有する導水はく落防止体をトンネルの内壁部に敷設することが出来、すなわち、1つの工法で短時間のうち施工できる効果がある。
【0014】
請求項2の発明によれば、角座金は、中央の表裏面に中央凸部と中央凹部を形成し、角座金の周縁部が格子筋の隣接する格子部材に架載され、隣接する格子部材間に中央凸部が嵌入するように構成したので、格子筋に対する角座金のすわりがよくなり、角座金にアンカーボルトを挿通した際には、支圧力が角座金を介して格子筋に伝達し、導水パネルを挟んで止水パッキンに伝達して、止水パッキンをトンネル内壁部に沿って圧着固定することができる効果がある。
【0015】
請求項3及び請求項4の発明によれば、導水パネルと格子筋とを重ねて張設するに際し、複数の導水パネル間に格子筋を挟着した多層パネル体を形成し、さらに、多層パネル体の側縁部を、略コ字状の挟着フランジに嵌着して一体に挟着したので、導水機能を維持しながら高いはく落防止機能を有する効果がある。
【0016】
請求項5の発明によれば、挟着フランジのトンネル内壁部側の面には、止水パッキンを突設したので、アンカーボルトを挟着フランジに挿通すると、アンカーボルトが挟着フランジを支圧し、同挟着フランジの裏側の止水パッキンを支圧することとなり、トンネル内壁部に導水はく落防止体を確実に密着固定することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態のトンネル補修構造を示す全体斜視図である。
【図2】導水パネル及び格子筋を示す平面図である。
【図3】導水はく落防止体を示す説明図である。
【図4】導水パネル及び格子筋を示す斜視図である。
【図5】本実施形態のトンネル補修構造を示す断面図である。
【図6】パネルを示す分解斜視図である。
【図7】導水はく落防止体を示す全体斜視図である。
【図8】本実施形態の他のトンネル補修構造を示す斜視図である。
【図9】本実施形態の他のトンネル補修構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本発明の実施形態のトンネル補修構造は、トンネルの内壁部に導水はく落防止体を敷設固定するトンネル補修構造において、導水はく落防止体は、トンネルの内壁部に張設する導水パネルと、導水パネル裏面に重ねて張設する格子状の格子筋と、導水パネルのトンネルの内壁部側に内壁部に沿うように突設した止水パッキン及び/又はリブにより導水パネルとトンネル内壁部との間に形成した導水路と格子筋の格子間に設定して、アンカーボルトにより格子筋と導水パネルとをトンネルの内壁部に敷設固定するための角座金とよりなることを特徴としている。
【0020】
また、角座金は、中央の表裏面に中央凸部と中央凹部を形成し、角座金の周縁部が格子筋の隣接する格子部材に架載され、隣接する格子部材間に中央凸部が嵌入するように構成している。
【0021】
また、導水パネルと格子筋とを重ねて張設するに際し、複数の導水パネル間に格子筋を挟着した多層パネル体を形成している。
【0022】
また、多層パネル体の側縁部は、略コ字状の挟着フランジに嵌着して一体に挟着している。
【0023】
また、挟着フランジのトンネル内壁部側の面には、止水パッキンを突設している。
【0024】
本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。
【0025】
本実施形態のトンネル補修構造1は、図1に示すように、車両や鉄道車両や歩行者が通行するトンネルT内におけるトンネル内壁部Wのひび割れ等から漏水が生じている損傷箇所や浮き、はく離の損傷箇所に、導水機能とはく落防止機能を備える矩形状の導水はく落防止体2を湾曲させながら複数張設する構成としている。
【0026】
導水はく落防止体2は、図1から図4に示すように、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に張設する導水パネル10とその表面に重ねて張設する格子筋13とよりなる。そして、所定の大きさとした塩化ビニールなどの透明な素材よりなる矩形状の導水パネル10は、その表面の両側縁、すなわち、張設時にトンネル内壁部W側に当接する面の両側縁に、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に沿う状態に突設した細幅状の止水パッキン11と、導水パネル10の裏面で止水パッキン11の間に、一定間隔で並行に突設した細幅のリブ12とを具備して構成されており、導水パネル10に重ねて張設する格子筋13は繊維補強材などで格子状に形成されており、導水パネル10を天井湾曲面W1に押付け敷設するべく機能すると共に、天井湾曲面W1のはく離片を導水パネル10と共に受止めて、はく離片の落下を防止するべく機能する。
【0027】
具体的に説明すると導水パネル10は、長方矩形状の素材で形成されると共に、アーチ状のトンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に沿って湾曲可能な弾力性とコンクリートの変位に追従する柔軟性の両方を併せ持つ材質で構成されており、例えば、透明な塩化ビニールなどからなる。このような透明な導水パネル10をトンネル内壁部Wに固設した際には、トンネル内壁部Wのはく離状態を同導水パネル10の外部より視認することができ、別途必要な補修の判断を早い段階で行うことができる効果がある。
【0028】
導水パネル10の裏面には、長手方向の両側縁部に一定幅員の長手状の止水パッキン11,11をそれぞれ突設し、さらに、止水パッキン11に平行となるように細幅状のリブ12,・・,12を複数突設している。止水パッキンの幅員は、後述する格子筋の格子部の間隔と同一となるように形成している。
【0029】
特に、止水パッキン11とリブ12とは、図4に示すように、その肉厚を略同一としており、この肉厚分、例えば10mmの肉厚が導水パネル10を天井湾曲面W1に張設した場合に、空洞となり、トンネル内壁部Wから滴下する漏水を導水する導水路Cの機能を果す。
【0030】
トンネル内壁部Wに導水はく落防止体2を取り付けた際には、図5に示すように、導水パネル10裏面の止水パッキン11とリブ12が天井湾曲面W1に密着状態となり、導水パネル10と止水パッキン11、リブ12はトンネル内壁部Wから滴下した漏水を同パネル10の長手方向に導く導水路Cとして機能すると共に、同パネル10両側の止水パッキン11,11は、漏水を同パネル10の左右側部より外方(横方向)への漏水を防止するように機能するものである。また、同パネル10表面に複数設けたリブ12は、トンネル内壁部Wからの漏水を分水して長手方向へ流下させるものである。
【0031】
なお、上述したようにゴム素材のリブ12は、別途成形し導水パネル10に付設する構造であってもよいし、特にリブについては、導水パネルと一体成形した構造であってもよい。
【0032】
なお、止水パッキン11は導水パネル10の大きさや、施工時の状況に応じてその取付位置を変更する場合があるため後付けとする。
【0033】
格子筋13は、図4に示すように、複数の断面矩形状の横部材16と複数の断面矩形状の縦部材17とを上下方向に約50mm間隔の格子状に組合せた格子構造としており、格子筋13の素材は、FRP製の繊維補強材とする。縦部材17の幅員は、横部材16の幅員より幅広に形成すると共に、縦部材17を表側(導水パネルから離隔した側)に横部材16を裏側(導水パネルに当接する側)になるように重ねて格子状に組立て接合している。このように縦部材17の幅員を横部材16の幅員より幅広に形成することで、格子筋13の長手方向の張力を強化することができ、導水はく落防止体2の安全性を向上することができる。なお、格子筋13は、横部材16と縦部材17とを上下方向に組むものではなく、横部材16と縦部材17とを平面状に組合わせたものであってもよい。
【0034】
これは、後述する角座金15を設定する際の角座金15のすわりを良好とするためである。
【0035】
このように、格子筋13は、トンネルT内のアーチ状のトンネル内壁部Wに沿って湾曲可能な弾力性と強固な剛性の両方を併せ持つ構造としており、例えば、格子筋の素材は樹脂とガラス繊維とからなる複合材としている。
【0036】
かかる格子筋13は、上記導水パネル10の表面に敷設するものであり、その大きさは、略導水パネル10と同一としており、導水パネル10表面に格子筋13の横部材16が当接するように重ねて敷設し、格子筋13の周縁の縦部材17,17間に後述する角座金15を設定する。
【0037】
角座金15は、図3及び図5に示すように、平面視四角状に形成すると共に中央を打ち起して表面を中央凹部15a、裏側を中央凸部15bとしており、中央にはアンカーボルトAを挿通するボルト孔22が形成されており、角座金15を格子筋13の縦部材17,17間に設定する場合には、縦部材17,17間に中央凸部15bを嵌入し、周縁部21を縦部材17,17間に架設することにより設定する。
【0038】
角座金15は、導水パネル10の左右端部の止水パッキン11に対向する格子筋13の周縁に一定間隔毎に設けられている。例えば、25〜30cm間隔ごとに設けられている。
【0039】
本実施形態のトンネル補修構造における導水はく落防止体の設置手順について説明する。
【0040】
導水はく落防止体2は、漏水を生じている損傷箇所やはくりの損傷箇所を生じているアーチ状のトンネルT内のトンネル内壁部Wに設置する。すなわち、導水はく落防止体2は、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に沿って張設している。このとき、天井湾曲面W1に導水はく落防止体2の長手方向が沿った状態に張設する。
【0041】
図5に示すように、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1には、導水はく落防止体2を湾曲して張設するため、天井湾曲面W1には、導水パネル10裏側の止水パッキン11とリブ12が密着状態で当接する。
【0042】
次いで、導水はく落防止体2の裏部側の格子筋13の格子14の方形隙間に角座金15の中央凸部15bを嵌入し、角座金15の中央凹部15aのボルト孔22にアンカーボルトAを挿通して、ハンマードリルでアンカーボルトAを押圧すると、そのまま、導水パネル10、止水パッキン11に挿貫して、最終的にトンネル内壁部Wに固設され、アンカーボルトAのナットを強く締め付けることにより、導水はく落防止体2の取付けが完了する。すなわち、アンカーボルトAのナットを締め付けることによる支圧力が角座金15を介して格子筋13の格子14に伝達し、さらに、導水パネル10を挟んで止水パッキン11に伝達して、止水パッキン11をトンネル内壁部Wに沿って圧着固定することができる。30は、トンネル内壁部WにアンカーボルトAを押圧した際に形成されるアンカー孔である。
【0043】
このように、導水はく落防止体2の所定の個所において、アンカーボルトAと角座金15を取り付けることで、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に導水はく落防止体2を確実に密着固定することができる。
【0044】
従って、密着固定した導水はく落防止体2とトンネル内壁部Wとの間には、止水パッキン11とリブ12間の間隙を介して漏水が流下する導水路Cが形成される。このように、導水パネル10裏部側に止水パッキン11やリブ12を設けたことにより大量の漏水を分水すべく同導水パネル10の長手方向に導水路Cが複数形成されることとなる。
【0045】
トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に沿って、導水はく落防止体2を設置するに際しては、導水はく落防止体2は、製造や運搬や施工の便宜のために一定の手軽な大きさ、例えば、横幅1m、縦長さ2m〜3m位に形成しておくため、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1の所定箇所に張設していくためには、所定大きさの導水はく落防止体2を互いに側縁部を突き合わせて多数敷設状態に敷きつめて張設する。このように施工することにより、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1から側壁面W2にかけて、連続した共通の導水路Cを形成することができる。
【0046】
このようにしてトンネルT内のトンネル内壁部Wにおける漏水や浮き・はく離が生じた損傷箇所を補修したトンネル補修構造1が完成することとなる。
【0047】
なお、トンネルT内のトンネル内壁部Wに導水はく落防止体2を設置したのちに、導水パネル10が破損しても、取り付け時とは逆の手順でアンカーボルトAをトンネル内壁部Wから引き抜くことで格子筋13を再利用できるかたちで取り外し、次に露出状態の破損した導水パネル10だけを取外して、新しい導水パネル10と交換することで、従来と同じ導水機能を回復することが出来る効果がある。すなわち、破損した導水パネル10以外の格子筋13等の部材は、そのまま再利用することができ、部品のコストを低減することができる。
【0048】
[導水はく落防止体の他の例]
導水はく落防止体の他の例について説明する。
【0049】
この他の例の導水はく落防止体41は、図6に示すようにはく落防止機能を果す格子筋13の表裏面を2枚の導水パネル10,10で挟着し接着剤で接着した3層構造とし、3層構造の多層パネル体42の長手方向の両側縁には、図7に示すコ字状の挟着フランジ43で挟着して3層構造を一枚のパネル状に固定している。この3層構造の多層パネル体42は、次のようにして構成される。すなわち、二枚の塩化ビニール製のパネル10,10間に、接着剤(図示しない)を介してガラス繊維製の挟着格子筋46を挟むようにして一体に接着して3層構造の多層パネル体42を構成する。なお、この多層パネル体42を天井湾曲面W1に多数敷設するために、多層パネル体42を予め一定の広さにつないでおく場合がある。そのために、各多層パネル体42のつなぎ目の部分には、積層用挟着フランジ44を用いる。積層用挟着フランジ44は、コ字状の挟着フランジ43と基本構造を同一とするように断面略S字型に形成し、略S字の上下方向の開口部がそれぞれ左右方向を向いたコ字状の挟着フランジ機能を果すようにしている。例えば、挟着フランジ43,44の素材としては、塩化ビニールを用いることとしている。
【0050】
すなわち、多層パネル体42を図7に示すように三枚連結する場合には、左右の多層パネル体42−1,42−2の各最外側縁部には、通常のコ字状の挟着フランジ43を取付け縁取りを行い、中央の多層パネル体42−3と左右の多層パネル体42−1,42−2とを連結するに際しては、略面S字型の積層用挟着フランジ44を二個間に介在させる。その際に、二個の積層用挟着フランジ44の略S字型が互いに対向するように用いるものであり、対向する略S字型の上方の開口部に中央の多層パネル体42−3の両側縁を挟着し、互いに反発する方向の下方の開口部に左右の多層パネル体42−1,42−2の側縁部を挟着し、三枚の多層パネル体42−1,42−2,42−3を二個の積層用挟着フランジ44を介して連結するものである。
【0051】
しかも、挟着フランジ43と積層用挟着フランジ44の裏面、すなわち、天井湾曲面W1に当接する面には、細幅状のゴム製のゴムパッキン47を貼着しており、このゴムパッキン47,47の間を導水路Cとしている。
【0052】
各挟着フランジ43と積層用挟着フランジ44には、図7に示すアンカーボルトAを取付ける取付孔50を突設しており、この取付孔50は、各フランジ43,44を挿通して多層パネル体42及びゴムパッキン47にまで突設されており、この取付孔50を挿通するアンカーボルトAを介して多層パネル体42を複数枚ユニットとしてトンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に敷設することができる。なお、上述した挟着フランジ43,44には取付孔50を形成するようにしたが、必ずしも事前に取付孔50を形成する必要はない。挟着フランジ43,44に取付孔50が形成されていない場合には、挟着フランジ43,44にアンカーボルトAを押し当ててハンマードリルで押圧するようにしてもよい。
【0053】
本実施形態のトンネル補修構造における他の例の導水はく落防止体の設置手順について説明する。
【0054】
先ず、3層構造のパネル体42の長手方向にフランジ43,44を装着した導水はく落防止体41を準備する。
【0055】
漏水を生じている損傷箇所やはくりの損傷箇所を生じているアーチ状のトンネル内のトンネル内壁部Wに導水はく落防止体を設置する。すなわち、導水はく落防止体41は、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に沿って張設している。このとき、天井湾曲面W1に導水はく落防止体41の長手方向が沿った状態に張設している。
【0056】
図9に示すように、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1には、導水はく落防止体41を湾曲して張設するため、天井湾曲面W1には、フランジ43,44のゴムパッキン47,47が密着状態で当接する。
【0057】
次いで、フランジ43,44の取付孔50,・・,50にアンカーボルトAを挿通して、ハンマードリルでアンカーボルトAを押圧すると、そのまま多層パネル体42、ゴムパッキン47に挿貫して、最終的にトンネル内壁部Wに固設され、アンカーボルトAのナットを強く締め付けることにより、導水はく落防止体41の取付けが完了する。すなわち、アンカーボルトAのナットを締め付けることで挟着フランジを支圧力し、挟着フランジの裏面のゴムパッキン47に伝達して、ゴムパッキン47をトンネル内壁部Wに沿って圧着固定することができる。
【0058】
このように、導水はく落防止体41の所定の個所において、フランジ43,44にアンカーボルトAを取り付けることで、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に導水はく落防止体41を確実に密着固定することができる。
【0059】
従って、密着固定した導水はく落防止体41とトンネル内壁部Wとの間には、ゴムパッキン47,47同士間の間隙を介して漏水が流下する導水路Cが形成される。このように、導水パネル10裏部側にゴムパッキン47を設けたことにより同導水パネル10の長手方向に導水路Cが形成されることとなる。
【0060】
トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1に沿って、導水はく落防止体41を設置するに際しては、導水はく落防止体41は、製造や運搬や施工の便宜のために一定の手軽な大きさ、例えば、横幅1m、縦長さ2m〜3m位に形成しておくため、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1の所定箇所に張設していくためには、所定大きさの導水はく落防止体41を互いに側縁部を突き合わせて多数敷設状態に敷きつめて張設する。このように施工することにより、トンネル内壁部Wの天井湾曲面W1から側壁面W2にかけて、連続した共通の導水路Cを形成することができる。
【0061】
このようにしてトンネル内のトンネル内壁部における漏水や浮き・はく離が生じた損傷箇所を補修したトンネル補修構造が完成することとなる。
【0062】
したがって、上記導水はく落防止体の設置作業を行う作業者は、短時間で高所作業車を用いながらトンネルの周壁面に導水はく落防止体を固設することができることから、車両や鉄道車両がトンネルを通行しない期間を見計らいつつ固設作業を断続的に行うことも可能となり、トンネルを管理している側にとってもトンネルを通行止めにする必要がなくなる効果がある。
【0063】
なお、導水はく落防止体に設けるアンカーボルトの打設間隔は、トンネル内壁部の壁周面の曲率並びに損傷箇所の漏水の発生状況に応じて決定するが、格子筋の格子部同士の間隔に応じて適宜変更するようにしてもよい。
【0064】
なお、本発明を各実施形態を通して説明したが、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の主旨を逸脱することのない限り、各構成要素の形状や装置のレイアウトなどは適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0065】
A アンカーボルト
C 導水路
T トンネル
W トンネル内壁部
W1 天井湾曲面
W2 側壁面
1 トンネル補修構造
2,41 導水はく落防止体
10 導水パネル
11 止水パッキン
12 リブ
13 格子筋
14 格子
15 角座金
16 横部材
17 縦部材
30 アンカー孔
42 多層パネル体
43 挟着フランジ
44 積層用挟着フランジ
46 挟着格子筋
47 ゴムパッキン
50 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内壁部に導水はく落防止体を敷設固定するトンネル補修構造において、
導水はく落防止体は、
トンネルの内壁部に張設する導水パネルと、
導水パネル裏面に重ねて張設する格子状の格子筋と、
導水パネルのトンネルの内壁部側に内壁部に沿うように突設した止水パッキン及び/又はリブにより導水パネルとトンネル内壁部との間に形成した導水路と格子筋の格子間に設定して、アンカーボルトにより格子筋と導水パネルとをトンネルの内壁部に敷設固定するための角座金とよりなる
ことを特徴とするトンネル補修構造。
【請求項2】
角座金は、中央の表裏面に中央凸部と中央凹部を形成し、角座金の周縁部が格子筋の隣接する格子部材に架載され、隣接する格子部材間に中央凸部が嵌入するように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載のトンネル補修構造。
【請求項3】
導水パネルと格子筋とを重ねて張設するに際し、
複数の導水パネル間に格子筋を挟着した多層パネル体を形成した
ことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載のトンネル補修構造。
【請求項4】
多層パネル体の側縁部は、略コ字状の挟着フランジに嵌着して一体に挟着した
ことを特徴とする請求項3に記載のトンネル補修構造。
【請求項5】
挟着フランジのトンネル内壁部側の面には、止水パッキンを突設したことを特徴とする請求項4に記載のトンネル補修構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−132669(P2011−132669A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290092(P2009−290092)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(595094998)株式会社仲田建設 (2)
【Fターム(参考)】