説明

トンネル覆工の施工方法

【課題】コンクリートをトンネル覆工用の型枠内に高密度に充填でき、耐久性に優れたトンネル覆工が形成可能な施工方法を提供する。
【解決手段】トンネル内に型枠を設置して覆工用のコンクリートを打設する工程において、圧力測定手段15、16によって型枠1内におけるコンクリートの充填圧を計測して、コンクリート9の充填圧を型枠1の変形または破壊が生じない範囲に調整する。型枠1で仕切られた空間のラップ側24に設けた天端部第1吹上げ口11からコンクリートを圧入し、コンクリートを型枠1内に充填した後、バイブレータ8によるコンクリート9の締め固め作業を実施する。その後、型枠の妻側25に設けた天端部第2吹上げ口11cからコンクリートをさらに圧入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル覆工の施工方法に関し、特にコンクリートの高密度充填が可能なコンクリート打設方法を含むものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル工事では、各種掘削重機や発破作業による地山掘削が所定区間行われた後に、コンクリート吹付け作業を掘削壁面に対し実施することで、一次覆工が施される。
次に、適宜間隔をおいてトンネル地山内壁面に沿うように、セントルフォームと呼ばれる可動式のトンネル覆工用型枠(以下、型枠)を用いて、掘削壁面と型枠との間に覆工コンクリートを打設し、二次覆工が施される。
前記セントルフォームは、トンネル内壁面に適応する断面を備え、フォーム自体がトンネル断面方向に適宜、分割可動する構造となっている。
【0003】
前記セントルフォームの頂部(天端部付近に対応)には、フォーム外方(トンネル一次覆工面と型枠の間)へのコンクリート注入用の注入口が設けられており、この注入口にコンクリートポンプ等と接続されたコンクリート供給管を接続し、セントルフォームとトンネル一次覆工面との間の二次覆工領域へコンクリートを打設していた。前記コンクリート注入口からセントルフォーム外方の二次覆工領域に流入したコンクリートは、フォーム外方を左右のトンネル壁面方向に分岐して流下して型枠内に充填される。
【0004】
このセントルフォームの頂部の注入口からのコンクリート注入は、天端部に覆工を形成するためのものである。天端部に至る型枠下部(アーチ部等)内へのコンクリート打設は、作業窓からコンクリートを注入することで終了しているため、天端部へのコンクリート打設は覆工施工において最終的な作業となる。
【0005】
打設したコンクリートに対してはバイブレータを使用して締め固めをするが、使用するコンクリートの流動性はあまり高くないので、覆工コンクリートを天端部の間隙内部に均一に打設し難いことに鑑み、バイブレータの振動によって、コンクリートの締め固めをして、型枠内に流入したコンクリートを均一に広げるようにしている。
【0006】
そして、コンクリートをラップ側のコンクリート注入口から注入し、それが妻側の開口
部(図示せず)から排出されるのを確認したときは、充填作業を終了していた。その理由は、型枠内にコンクリートが一応行き渡たり充填がされたものと考えられ、これ以上コンクリートの注入作業を続行すると型枠に大きな荷重負担を強いる場合があり、その結果、型枠が変形する等の不都合が生じる虞があるからである。
【0007】
しかし、上記のような場合、ラップ側に比べて妻側の覆工の品質が低下した状態となり易く、その結果、妻側付近に空隙やクラックが生じやすい等の不都合が予想される。
【0008】
そこで、コンクリートを加圧することで、コンクリートを少しでも型枠内の隅々まで充填させるようにしたものがある(特許文献1及び特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−81892号公報
【特許文献2】特開平11−247600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような加圧による方法でよっても、全体に均一なコンクリートの高密度充填の達成は容易ではなく、また、特許文献1,2に記載の発明では、型枠を含むコンクリート打設装置が大がかりになる問題がある。
【0010】
特に、トンネルの天端部の覆工形成では、コンクリート打設時に充填状態を視認することが困難である反面、トンネルの耐久性や安全性向上のため、天端部の覆工に対してはきわめて高品質な施工が求められる。したがって、覆工施工では、コンクリートを容易かつ確実に、高密度充填することが可能な、さらなる技術の提供が望まれている。
【0011】
本発明は上記のような事情に鑑みてされたものであり、トンネル覆工において、コンクリートを型枠内に高密度充填でき、耐久性に優れたトンネル覆工が形成可能な施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を達成するために次のような構成とした。すなわち、トンネル内に型枠を設置して覆工用のコンクリートを打設する工程において、
圧力測定手段によって型枠内におけるコンクリートの充填圧を計測して、コンクリートの前記充填圧を型枠の変形または破壊が生じない範囲に調整しつつ、前記型枠で仕切られた空間のラップ側に設けた天端部第1吹上口からコンクリートを圧入し、コンクリートを型枠内に充填した後、コンクリートの締め固め作業を実施し、その後、さらに型枠の妻側に設けた天端部第2吹上口からコンクリートを圧入することで、少なくともトンネル最上部である天端部の覆工を形成することを特徴とする。
【0013】
本発明は、覆工施工において、目視できない空間に向けて下方からコンクリートを充填する天端部の覆工に適している。型枠内に密充填圧入されたコンクリートは、圧力を開放するとコンクリート量が増大することから、コンクリートをできるだけ加圧して充填度を高くすれば型枠内の隅々にコンクリートが行き渡る。したがって、コンクリート品質が向上し、ひび割れの発生等が抑制できる。
【0014】
圧力測定手段としては、天端部第1吹上口及び第2吹上口の近傍にそれぞれ設置した土圧計を使用することができる。また、コンクリートの充填圧力は、型枠の変形等の支障が生じない範囲で、最大限高い圧力とすることが望ましい。
【0015】
この場合、天端部以外の側部及びアーチ部の覆工は、従来の方法によって形成してもよいが、次のような方法で施工することが好ましい。
すなわち、型枠のアーチ部に複数箇所のコンクリートの吹上口を設け、型枠の天端部付近に設けた作業窓から目視可能な高さまで、コンクリートを前記吹上口から上方に噴き上げて打設することで、吹上口より上方までコンクリートを打設する。すなわち、アーチ部に設けられている吹上口から供給されたコンクリートの打設面を、前記天端部の最上位付近まで到達させて、天端部のコンクリートが未打設の空間ができるだけ小さくなるようにする。前記アーチ部に設けられている吹上口は、天端部を囲繞するように複数配置し、コンクリート打設面をできるだけ水平にすることが好ましい。
【0016】
上記の方法によれば、覆工の天端部以外のアーチ部のコンクリート充填が短時間に、確実に行われるので充填密度が向上する。それに加え、その後に施工する天端部のコンクリートの打設量、打設時間が大幅に減少するので、天端部の施工が容易になる。
【0017】
天端部は、コンクリートを下方から充填するので充填密度が疎になりやすいが、上記の方法によって天端部への打設量を少なくし、打設時間を短くした上で、本発明の方法を併せて使用すれば、型枠内の全体に、高密度にコンクリートを充填することができる。
【0018】
なお、天端部に打設したコンクリートの締固め作業は、次の方法によることが望ましい。すなわち、長尺な牽引部の先端に振動部を備え、牽引に適した素材からなる振動部材を、型枠とトンネル内壁面との間に、その基端を巻揚機構に装着して型枠の長さ方向に沿わせて配設する。次に、型枠とトンネル内壁面との間へのコンクリートを打設後またはコンクリートの打設時に、振動部材を振動させる。このとき、巻揚機構を介して振動部材を巻揚、繰出すことにより、型枠の長さ方向に沿わせて移動させる。
【0019】
このような締固め作業によって高密度に充填されたコンクリートは密度が均一化する。締固めにより、偏って密となっている部分の圧力が開放されると、コンクリートが型枠内の空間の隅々に拡がる。なお、高密度に充填されているため締固めによって打設面が低下することはない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トンネル覆工において、コンクリートを型枠内に高密度充填できるので、耐久性に優れたトンネル覆工を形成することができる。
【0021】
特に、天端部へのコンクリート打設では、目視できない空間に下方からコンクリートを充填する必要があるが、高密度充填によって地山とコンクリートとの間に空隙が生じるのを抑制しつつ、密度が均一な高品質な覆工が得られる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係るトンネル覆工の実施形態を説明する。
なお、一次覆工の施工は従来工法により施工されるので、所定の型枠とトンネル内壁面との間へ二次覆工用のコンクリートを打設する方法を以下に詳述する。
【0023】
まず、公知の施工順序に従い、型枠をトンネル内の所定位置、すなわち覆工を施すべき位置まで移動させ、型枠のラップ側24をラップ板(図示せず)により、妻側25を妻板(図示せず)によりそれぞれ被覆する。このようなラップ板と妻板による被覆によってコンクリートが打設される空間が画定される。
【0024】
型枠1は、一般的には9〜12m程度の長さのものが用いられ、図1、図9に示すように、側面に複数の開閉自在な作業窓(検査窓)5が設けられる。この作業窓5は、検測やコンクリートの打込み状況の確認のほか、バイブレータ8による締固め作業、型枠清掃作業等のため使用されるもので、通常、型枠1の強度等を考慮しつつ可能な限り多く設けることが望ましい。ただし、アーチ部付近の覆工については、後述するように、これら作業窓5を利用せずに、トンネルのアーチ部13に対応する型枠アーチ部13aして設けた合計4個の吹上口40(図2)を使用してコンクリート打設する方法を採用することもできる(この方法は、他の実施の形態において述べる)。
【0025】
また、型枠1の最上部には、ラップ側24に天端部第1吹上口11が設けられる一方、妻側25に天端部第2吹き上げ口11aが設けられる。それぞれの天端部第1吹上口11及び天端部第2吹上口11aの近傍には、それぞれ土圧計15、16が設置されている。
【0026】
本実施の形態では、図4等に示すように、型枠1の妻側外方の巻揚機構28に、振動部材であるバイブレータ8の牽引部の基端を装着させ、型枠1内の別の巻揚機構(図示せず)に、牽引材を介してバイブレータ8の先端を装着させて、このバイブレータ8を型枠1の長さ方向に沿わせて複数配設している(図9)。このように、天端部10の締固めのために、長尺棒状のバイブレータ8を移動可能に設置することで、締固め不足に起因する品質低下を抑制している。
【0027】
コンクリートの打設は、図1に示すように、トンネルの下方の両側壁部から順次、上方の天端部10に向けて実施する。最初に型枠1とトンネル内壁面3との間へ、コンクリート9を打設する。このとき、型枠1の各コンクリート打設口である作業窓5からコンクリート9を、型枠1とトンネル内壁面3との間へ打設する。このような作業は周知であり、コンクリートの圧送管から分岐した複数の注入管7(図3)の先端部を、開閉可能に形成された複数の作業窓5のうち、下方に位置する作業窓5に挿入して打設を開始する。
【0028】
さらに、コンクリートの注入管7が挿入された作業窓5とは別の作業窓5からバイブレータ8を挿入し、打設されたコンクリート9を締固める。
この際、型枠1に設けた複数の作業窓5を介してトンネル内側から、コンクリートの打設状況を視認することができる。ここで、コンクリートの打設状況とは、例えば、どの程度の高さまで打設がされたのか、コンクリートが充填されていない箇所があるか否か、または、バイブレータによる締固めが不充分な箇所があるか否か等である。
【0029】
コンクリートが一定高さまで打設されたことを確認し、その作業窓5からの打設が完了したと判断したら注入管7を当該作業窓5から取り出して、その作業窓5を閉じる。そして、その作業窓5よりも上方(天端部側)に位置する別の作業窓5に再び注入管7を挿入し、前記と同様にしてコンクリートを打設を続行する。
【0030】
上記作業を繰り返し、打設位置を上方に移動させてトンネルの天端部10を残し、図3に示すように、アーチ部13の上方までコンクリート打設が進んだら上記作業を終了する。
このとき、符号Aで示す範囲は、最上位にある窓部5よりも高い位置になるため、注入管7による流し込みによるコンクリート打設はできない。符号Tは、型枠1の天井面のレベルを示すが、このレベルが注入管7による打設の限界となる。
そして、符号Tが示すレベルより上部の天端部10のコンクリート打設は次のような方法によって実施する。
なお、Cは正中線であり、天端部10及び型枠天端部10aの最上部を通過し、天端部第1吹上口11及び天端部第2吹上口11aの中心を通る。
【0031】
まず、図4に示されるように、天端部10に対応する型枠天端部10aに設けた天端部第1吹上口11に注入管7を接続して、所定の圧力を付加しながら天端部10へのコンクリート9を打設する。この際、土圧計15によって土圧計近辺の型枠内のコンクリート充填圧力を測定する。そして、型枠1に過度の圧力負荷が生じないように前記充填圧力をコントロールしながら打設作業を続ける。なお、クラウン窓5cは作業開始前に閉じられ、コンクリートの打設状況の視認はできない。。
【0032】
一般的に、型枠1の耐荷重は1m2/10t程度である。そのような場合は、コンクリ
ートの充填作業において、土圧計15によって型枠1内のコンクリート充填圧を管理し、それが10トンを超えることがないようにして充填作業を進める。
【0033】
第1吹上口11からの打設により、天端部10にコンリートが充填されるが、型枠1が耐え得る範囲において最も高い圧力でコンクリート打設を行うことが好ましい。このようにすれば、コンクリートが型枠1内に高密度に充填される。このとき、妻側25に、第1吹上口11から打設されたコンクリートが排出された時点で、一旦、打設作業を中止する。この場合の型枠1内の充填圧は、図5に示すように、第1吹上口11付近が最も高く、妻側25に向かうに従って低くなる。しかし、締固め前の圧力は、図5中の点線(締固め前)で示されるように、第1吹上口11から妻側25に向かって急激に低下した後、再びわずかに上昇してから徐々に低下している。
【0034】
そして、バイブレータ8による締固め作業を実施すると、コンクリートが均されるので、図5中の実線で示す曲線(締固め後)で示されるような圧力分布となる。なお、コンクリート充填圧の測定は、型枠1内においてラップ側24から妻側25向けて所定間隔で設置した複数の土圧計により、計測されたものである。
【0035】
第1吹上口11のみからの充填では、型枠1内のラップ側24の充填圧力が妻側25に比べて高く、ラップ側24にコンクリートが密に充填され、妻側25に向かうにつれて充填度が低下していることが理解される。
この状態では、ラップ側24に比べ妻側25のコンクリート品質が低下しているため、妻側25に近い覆工にクラック等が生じるおそれがある。
【0036】
そこで続いて、第2吹上口11aにコンクリートの注入管7を接続し、所定の充填圧でコンクリート打設を実施する。この場合、加圧してコンクリートを妻側24の型枠1内に圧入する。
なお、従来は第2吹上口11aが設けられる場合でも、通常は、これを利用した打設作業は実施されることはなかった。第2吹上口11aは、あくまで非常用のものと位置付けられ、第1吹上口11からの打設に何らかの不都合が生じたような場合(コンクリートの詰まりの発生等)に、初めて使用されるものであった。
【0037】
本実施の形態の方法では、第2吹上口11aからの打設を追加的に実施することで、妻側24のコンクリートの充填密度を上昇させることができる。第2吹上口11aからの打設を実施すると、図7に示すように、型枠1内部の圧力分布が変化する。すなわち、第2吹上口11a近傍のコンクリート充填圧が上昇し、型枠1内において妻側24の充填密度がラップ側25のそれに近づく。したがって、第1吹上口11からの充填時における充填密度のアンバランスが解消され、型枠1内全体のコンクリートの充填度が上昇し、高密度充填が実現される。
【0038】
上記のようなコンクリート打設の完了後、図4、図6、図9に示すように、バイブレータ8を振動させると共に、巻揚機構28を介して巻揚げることにより、各バイブレータ22を型枠1の妻側24へ順次移動させる。
【0039】
ここで、前記バイブレータ8には巻揚機構28及びシリンダ29により張力が付与されているため、バイブレータ8が、打設完了後のコンクリート内の中間部位に保持された状態となり、この状態のまま妻側25に順次移動するので、締固めたコンクリートが流動することなく、打設コンクリート全体を均一に振動させて締固めると共に、バイブレータ8の型枠1とトンネル内壁面3との間に配設した補強材への衝突(不快音の発生)あるいは接触(不快音の発生、補強材と打設コンクリートとの密着低下、補強材の結束緩み)を防止することができる。しかもバイブレータ8の損傷をも防止できるため、打設コンクリートの強度、品質が向上する。
【0040】
このような構成によって、天端部10の締固めを確実に実施し、従来のような狭隘部での苦渋作業である締固めを自動化によって排除した。
【0041】
なお、打設コンクリートの締固め完了後は、バイブレータ8を巻揚機構28により妻部25の外方まで巻揚後、バイブレータ8を取外す。
【0042】
以上のようにして、コンクリート打設を実施して、所定期間の養生の後に脱型を行う。
その後、掘削機構によって前方の地山を掘削する掘削工程と、走行レール上を前方に移動させたセントルの型枠にコンクリートを打設するコンクリート打設工程とを繰り返して
、断続的にトンネルを覆工していく。
【0043】
(他の実施の形態)
天端部を除くアーチ部までの覆工を形成するには、上述した従来の方法の他、次のような方法によってもよい。覆工全体のコンクリートの充填性を向上させるには、この方法による施工を併用することが好ましい。以下、天端部10を除くアーチ部までの覆工の施工について説明する。
【0044】
図2に示すように、型枠天端部10aよりも下方に位置する左右の型枠アーチ部13aに、コンクリート9を高圧で噴出する吹上口40を型枠天端部10aの左右両側に2つずつ、合計四箇所に設けている。
図8に示すように、吹上口40から供給されるコンクリート9は加圧され、その重力に抗して、型枠1Aの上方へ噴出する(吹上口40から上方に向かう矢印a)。
【0045】
これら4つの吹上口40からコンクリートを噴出させるにあたり、天端部10の周辺において、コンクリートがほぼ均一に充填されるように噴出量を調整する。4つの吹上口40は、それらが同時にコンクリートを供給するものではなく、この実施の形態では、切り替えによって1つずつ別個にコンクリートを噴出する。
【0046】
本実施形態に係る覆工の施工は、次のようにして行う。
トンネルの下方の側壁部(アーチ部13よりも下部)については、流下するコンクリートの分離防止のため、吹上口40を使用せずに下方の作業窓5からコンクリートの注入管7を型枠内に入れ、コンクリートを充填した後、必要な締固め作業を実施する。
側壁部への充填がされた後、アーチ部13への打設では、吹上口40から供給されるコンクリート9を、天端部10の最上位付近まで打設する(図8参照)。
【0047】
前記吹上口40から供給されたコンクリート9による打設面が、天端部10の最上位付近に到達したことを、天端部のクラウン窓5cから確認する。
【0048】
上述のように、吹上口40からコンクリート9を噴出させる場合は、4つの吹上口40を切り替えて、型枠1内にコンクリート9がほぼ均一に供給されるようにする。複数の吹上口40から同時にコンクリートを供給してもよいが、この例では、使用する吹上口40を切り替え、一つずつの吹上口40からコンクリートを供給している。この場合、打設面が水平になるように、それぞれの吹上口40から吐出されるコンクリート9の噴出量及び/又は噴出時間を調整しながら吐出する。
【0049】
コンクリート9による打設面が、図8に示すように型枠1の天井面付近に達したときは、型枠天端部10aのクラウン窓5cから、当該打設部分にバイブレータ8を挿入して締固めをする。このとき、コンクリート打設面は、図3に示す符号Tのレベルを超えているので、未打設の天端部10の空間は、図3に示す例よりも小さくなる。
【0050】
すなわち、この実施の形態では、型枠アーチ部13aに設けられている吹上口40から吐出されるコンクリート9は、重力に抗して上方に噴出するので、型枠1の最上部に近いレベルまでコンクリートを打設することが可能である。したがって、最終的に施工される天端部10の空間がわずかになるまで、コンクリートを充填することができる。
【0051】
上記のような施工により、天端部10の周辺において、それぞれの吹上口40から吐出されるコンクリート9は、作業者がクラウン窓5cから一望したときに、型枠1の最上部付近まで、ほぼ水平に充填されていることを容易に確認できる(図8参照)。そして、この状態が確認できれば、一応、その下方の型枠1内にはコンクリート9が全て充填されて
いるものと判断できる。
【0052】
上記のように、加圧したコンクリートを噴出する吹上口40を設けたことで、型枠1の吹上口40の下方のみならず上方にもコンクリートを打設できるので、この方法による打設可能範囲が大きく広がる。
その結果、打設状態が視認できない天端部へのコンクリート打設量が減少し(従来工法に比べて、1/3程度まで打設量を減少させることが可能)、かつ打設時間も短縮される。
これらを実現することで、天端部へのコンクリートの充填性が大きく向上する。よって、天端部が高品質なコンクリートで形成されるので、トンネルの安全性、耐久性が向上し、かつ、天端部の仕上がりにむらが生じにくく、美観にも優れたものとなる。
【0053】
また、従来のコンクリートの自然流下による流し込みによる打設に比較して、傾斜角度が緩やかなアーチ部上方においてもコンクリートの打設時間が短縮され、かつコンクリートの充填性も向上する。
【0054】
以上のように、本実施の形態の方法によって天端部以外の覆工を形成し、この上で天端部について、天端部第1吹上口からコンクリートを圧入してコンクリートを型枠内に充填した後、さらに天端部第2吹上口からコンクリートを圧入する本発明の方法を実施すれば、天端部のコンクリートの充填性が著しく向上する。したがって、覆工全体のコンクリートの充填密度が高くなり、覆工の品質を格段に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のトンネル覆工の施工方法において、アーチ部までの覆工状態を示すトンネル断面図である。
【図2】型枠の平面図であり、コンクリートの吹上口等の配置状態を示す図である。
【図3】覆工のアーチ部上方までの施工状態を示す断面図である。
【図4】天端部の施工において、第1吹上口からコンクリートを打設する状態を示す概略図である。
【図5】天端部第1吹上口からコンクリートを打設した場合の型枠内のコンクリートの充填圧の分布を示す図である。
【図6】天端部の施工において、天端部第2吹上口からコンクリートを打設する状態を示す概略図である。
【図7】天端部第2吹上口からコンクリートを追加して打設した場合の型枠内のコンクリートの充填圧の分布を示す図である。
【図8】別の実施の形態による覆工のアーチ部上方までの施工状態を示す図である。
【図9】コンクリート打設後にバイブレータを移動させる状態を示す型枠の斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 型枠
5 作業窓
7 コンクリート供給管
8 バイブレータ
9 コンクリート
10 天端部
10a 型枠天端部
11 天端部第1吹上口
11a 天端部第2吹上口
13 アーチ部
13a 型枠アーチ部
15、16 土圧計(圧力測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に型枠を設置して覆工用のコンクリートを打設する工程において、
圧力測定手段によって型枠内におけるコンクリートの充填圧を計測して、コンクリートの前記充填圧を型枠の変形または破壊が生じない範囲に調整しつつ、前記型枠で仕切られた空間のラップ側に設けた天端部第1吹上げ口からコンクリートを圧入し、コンクリートを型枠内に充填した後、型枠の妻側に設けた天端部第2吹上げ口からコンクリートをさらに圧入することで、少なくともトンネル最上部である天端部の覆工を形成することを特徴とするトンネル覆工の施工方法。
【請求項2】
型枠のアーチ部に複数箇所のコンクリートの吹上口を設け、天端部付近に設けた型枠の作業窓から目視可能な高さまで加圧したコンクリートを前記吹上口から噴出させ、前記吹上口の下方及び上方にコンクリートを打設し、前記アーチ部の覆工を形成することを特徴とする請求項1に記載のトンネル覆工の施工方法。
【請求項3】
コンクリート打設後の締固め作業は、長尺な牽引部の先端に振動部を備え、牽引に適した素材からなる振動部材を、型枠とトンネル内壁面との間に、その基端を巻揚機構に装着して型枠の長さ方向に沿わせて配設し、次に、型枠とトンネル内壁面との間へのコンクリートを打設後またはコンクリートの打設時に振動部材を振動させ、巻揚機構を介して振動部材を巻揚、繰出すことにより、型枠の長さ方向に沿わせて移動させることを特徴とする請求項1または2に記載のトンネル覆工の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−88696(P2008−88696A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270631(P2006−270631)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000158725)岐阜工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】