説明

トンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造

【課題】湿潤養生部材を連設配置する作業を容易に行えるようにすることができると共に、湿潤養生層の水分が湿潤養生部材の連設箇所から逃げ難いようにすることができるトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造を提供する。
【解決手段】湿潤養生部材11は、四角形状の基板層14の表面に、四角形状の湿潤養生マット層15を、これらの位置をずらすことで、四角形状の一辺部16aにおいて基板層14が食み出た状態となるように重ね合わせて形成されている。湿潤養生部材11は、棒状支柱部材13と覆工コンクリート22の内周面22aとの間に差し込まれることで、湿潤養生マット層15を覆工コンクリート22の内周面22aに密着させて、湿潤養生層12を形成する。湿潤養生部材11は、トンネル20のアーチ形状部分において、周方向の下部から上部に向けて、基板層14が食み出た一辺部16aを上方側に配置した状態で連設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの覆工コンクリートの内周面を覆って湿潤養生層を形成する湿潤養生部材を取り付けるためのトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル等のトンネル工事においては、例えばトンネルを掘削した後のトンネルの内壁面にコンクリートを吹き付けて一次覆工を行った後に、トンネル覆工型枠を設置して、設置したトンネル覆工型枠とトンネルの内壁面との間の空間にコンクリートを打設することで、所定の厚さの覆工コンクリートを形成するのが一般的である。
【0003】
また、トンネルの内壁面を覆って形成された覆工コンクリートは、脱型後にそのまま放置すると乾燥収縮によるひび割れが発生し、品質が低下してしまうため、形成された覆工コンクリートの内周面を湿潤状態に保持して養生を行うことで、覆工コンクリートが乾燥しないようにして、ひび割れを防止できるようにする技術が種々開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1や特許文献2の技術では、覆工コンクリートの内周面を覆って配置されて湿潤養生層を形成する、保水シートからなるシート材や、保水性部材からなる養生シートは、例えば塩化ビニル製の可撓性パイプ部材を用いて形成された、トンネルのアーチ形状部分の内周面に沿うように弾性変形可能な支保材や支持フレームの外側に取り付けられて、これらの可撓性パイプ部材の弾性付勢力によって覆工コンクリートの内周面に沿って押し付けられることで、簡易に且つ安価に湿潤養生層を形成できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−127322号公報
【特許文献2】特開2010−180589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、覆工コンクリートの内周面を覆う湿潤養生層を形成するためのさらに簡易な工法として、トンネルのアーチ形状部分の覆工コンクリートの内周面に沿って周方向に延設する、好ましくは可撓性パイプ部からなる棒状支柱部材を、トンネルの延長方向に間隔をおいて複数設置しておき、設置した棒状支柱部材と覆工コンクリートの内周面との間にシート状の湿潤養生部材を差し込んで、縦横に複数連設配置すると共に、連設配置された複数の湿潤養生部材を棒状支柱部材によって支持させることで、覆工コンクリートの内周面を覆う湿潤養生層を形成する工法が採用される場合がある。
【0007】
トンネルの延長方向に間隔をおいて複数設置された棒状支柱部材と覆工コンクリートの内周面との間に湿潤養生部材を差し込んで湿潤養生層を形成する工法の場合、差し込み作業を行いやすい大きさ及び形状に分断した複数の湿潤養生部材を縦横に連設配置して、覆工コンクリートの内周面を連続して覆う湿潤養生層を形成するものであることから、これらの複数の湿潤養生部材を差し込んで隙間無く連設させる作業を容易にすると共に、湿潤養生層の水分が連設箇所から逃げ難いようにする工夫が必要である。
【0008】
本発明は、トンネルの延長方向に間隔をおいて複数設置された棒状支柱部材と覆工コンクリートの内周面との間に湿潤養生部材を差し込んで湿潤養生層を形成する工法において、湿潤養生部材を縦横に隙間無く連設配置する作業を容易に行えるようにすることができると共に、湿潤養生層の水分が湿潤養生部材の連設箇所から逃げ難いようにすることのできるトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、トンネルのアーチ形状部分に形成された覆工コンクリートの内周面に沿って周方向に延設すると共に、トンネルの延長方向に間隔をおいて設置される複数本の棒状支柱部材に支持させて、覆工コンクリートの内周面を覆って縦横に複数連設配置されることにより湿潤養生層を形成する湿潤養生部材の取付け構造であって、前記湿潤養生部材は、四角形状の基板層の表面に、同様の大きさの四角形状の湿潤養生マット層を、これらの位置をずらすことで、四角形状の少なくとも一辺部において前記基板層が食み出た状態となるように重ね合わせて形成されており、前記湿潤養生部材は、各々、保形層となる前記基板層の内側に配設して、前記棒状支柱部材と前記覆工コンクリートの内周面との間に差し込まれていることにより、前記湿潤養生マット層を前記覆工コンクリートの内周面に密着させて前記湿潤養生層を形成しており、且つ前記湿潤養生部材は、トンネルのアーチ形状部分において、周方向の下部から上部に向けて、前記基板層が食み出た一辺部を上方側に配置した状態で連設されているトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明のトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造は、前記湿潤養生部材が、前記基板層が食み出た一辺部と隣接する一方の辺部においても前記基板層が食み出た状態となるように、前記基板層と前記湿潤養生マット層とを重ね合わせて形成されており、前記基板層が食み出た隣接する一方の辺部を、トンネルの延長方向の前方側に配置した状態で連設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造によれば、トンネルの延長方向に間隔をおいて複数設置された棒状支柱部材と覆工コンクリートの内周面との間に湿潤養生部材を差し込んで湿潤養生層を形成する工法において、湿潤養生部材を縦横に隙間無く連設配置する作業を容易に行えるようにすることができると共に、湿潤養生層の水分が湿潤養生部材の連設箇所から逃げ難いようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造を用いて覆工コンクリートの内周面に湿潤養生層が形成されたトンネルの略示断面図である。
【図2】図1のA−Aに沿った略示断面図である。
【図3】(a)は湿潤養生部材の正面図、(b)は拡大断面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造の構成を説明するトンネルの内周面の拡大略示正面図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造の構成を説明する、図4のB−Bに沿った拡大略示断面図である。
【図6】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造の構成を説明する、図4のC−Cに沿った拡大略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造10は、図1に示すように、例えば山岳トンネルを構築するためのトンネル工事において、例えばトンネル20の坑内を移動可能な公知の移動式セントル(図示せず)を用いて設置されたトンネル覆工型枠(図示せず)と、好ましくは吹付けコンクリートによる一次覆工21によって覆われたトンネル20の内壁面20aとの間の空間に、コンクリートを打設することで形成されたトンネル20のアーチ形状部分の覆工コンクリート22を、トンネル覆工型枠を脱型した後に湿潤養生する際に、覆工コンクリート22の内周面22aを覆う保湿養生層12を、図3(a),(b)に示す湿潤養生部材11を用いて簡易に且つ効率良く形成してゆくための湿潤養生部材11の取付け構造として採用されたものである。
【0014】
そして、本実施形態のトンネル覆工コンクリートの保湿養生層取付け構造は、図1〜図4に示すように、トンネル20のアーチ形状部分に形成された覆工コンクリート22の内周面22aに沿って周方向に延設すると共に、トンネル20の延長方向に間隔をおいて設置される複数本の棒状支柱部材13(図1、図2参照)に支持させて、覆工コンクリート22の内周面22aを覆って縦横に複数連設配置されることにより湿潤養生層12を形成する湿潤養生部材11(図3(a),(b))の取付け構造であって、湿潤養生部材11は、四角形状の基板層14の表面に、同様の大きさの四角形状の湿潤養生マット層15を、これらの位置をずらすことで、四角形状の少なくとも一辺部16aにおいて基板層14が食み出た状態となるように重ね合わせて形成されている。
【0015】
図5及び図6にも示すように、湿潤養生部材11は、各々、保形層となる基板層14をトンネル20の内側に配設して、棒状支柱部材13と覆工コンクリート22の内周面22aとの間に差し込まれていることにより、湿潤養生マット層15を覆工コンクリート22の内周面22aに密着させて湿潤養生層12を形成しており、且つ湿潤養生部材11は、トンネル20のアーチ形状部分において、周方向の下部から上部に向けて、基板層14が食み出た一辺部16aを上方側に配置した状態で連設されている(図4、図5参照)。
【0016】
また、本実施形態では、湿潤養生部材11は、基板層14が食み出た一辺部16aと隣接する一方の辺部16bにおいても基板層14が食み出た状態となるように、基板層14と湿潤養生マット層15とを重ね合わせて形成されており(図3(a)参照)、基板層15が食み出た隣接する一方の辺部16bを、トンネルの延長方向Xの前方側に配置した状態で連設されている(図4、図6参照)。
【0017】
本実施形態では、棒状支柱部材13は、例えば太さが35mm程度の好ましくは弾性変形可能な可撓性を備える塩化ビニル製のパイプ部材からなり、例えばトンネル20のアーチ形状部分の覆工コンクリート22の内周面22aに沿った形状に弾性変形させることで、内周面22aの周方向に延設させて容易に設置することが可能な部材である(図1参照)。また、棒状支柱部材13は、トンネル20のアーチ形状部分の覆工コンクリート22の内周面22aに沿った形状に予め湾曲加工しておいてから、覆工コンクリート22の内周面22aの周方向に延設させて設置することもできる。さらに、予め湾曲加工した棒状支柱部材13を、例えば上部と両側の一対の側部とに分割して、これらをヒンジ連結部を介して折れ曲がり可能に、且つ周方向に連設させた状態で固定可能に連結しておくことで、棒状支柱部材13の設置作業をさらに容易に行うことが可能になる。
【0018】
また、本実施形態では、棒状支柱部材13は、トンネル20の延長方向に例えば1000mm程度のピッチで、間隔をおいて複数設置されると共に、これらの複数本の棒状支柱部材13は、周方向に間隔をおいて配置された、例えば棒状支柱部材13と同様の塩化ビニル製のパイプ部材からなる複数本の棒状連結部材17を介して連結されて一体化されている(図2参照)。
【0019】
さらに、本実施形態では、各棒状支柱部材13の下端部13aには、当該下端部13aとトンネル20の底盤部20bとの間に介在させて、棒状支柱部材13を覆工コンクリート22の内周面22aに沿わせた状態で固定する、例えば伸縮可能なジャッキ機能を備える公知のパイプサポートからなる固定サポート部材18が取り付けられている(図1、図2参照)。固定サポート部材18は、各棒状支柱部材13の両側の下端部13aと、トンネル20の底盤部20bにおける両側の側縁部に各々設置された、例えばH形鋼からなる支圧台23との間に介在させて、各々着脱可能に取り付けられている。
【0020】
各棒状支柱部材13の下端部13aとトンネル20の底盤部20bとの間に介在させて、伸縮可能なジャッキ機能を備える固定サポート部材18が取り付けられていることにより、例えば設置した棒状支柱部材13と覆工コンクリート22の内周面22aとの間に、湿潤養生部材11を挿入可能な間隔を保持した状態で、これらの間に湿潤養生部材11を差し込んで、覆工コンクリート22の内周面22aを覆って縦横に複数連設配置した後に、固定サポート部材18をジャッキアップすることによって、一体となった複数の棒状支柱部材13の全体を容易に押し上げることが可能になる。これによって、湿潤養生部材11の湿潤養生マット層15を覆工コンクリート22の内周面22aに押し付けて、当該湿潤養生マット層15によって形成される湿潤養生層12を、覆工コンクリート22の内周面22aに安定した状態で密着させることが可能になる。また、ジャッキアップした固定サポート部材18を収縮させることで、固定状態を開放させて、棒状支柱部材13や湿潤養生部材11による湿潤養生層12を、容易に取り外すことが可能になる。
【0021】
本実施形態では、棒状支柱部材13と覆工コンクリート22の内周面22aとの間に差し込まれる湿潤養生部材11は、図3(a)、(b)に示すように、四角形状の平面形状として、例えば縦幅が1000mm程度、横幅が2000mm程度の大きさの横長矩形形状を備えている。また、湿潤養生部材11は、保形剛性を付与するための保形層となる、例えば4mm程度の厚さを備えると共に同様の大きさの横長矩形形状を有する基板層14と、基板層14の外側に配置される、例えば12mm程度の厚さを備えると共に同様の大きさの横長矩形形状を有する湿潤養生マット層15とからなる。
【0022】
基板層14は、好ましくはプラスチックダンボールからなり、例えば横長矩形形状の横幅方向には、湾曲し難い相当の保形剛性を備えると共に、縦幅方向には、トンネル20のアーチ形状部分に沿った形状に湾曲しやすい相当の可撓性を備えている。これによって、棒状支柱部材13と覆工コンクリート22の内周面22aとの間の、アーチ状に湾曲した形状となっている隙間に、湿潤養生部材11を、これの可撓性によってスムーズに差し込んでゆくことが可能になると共に、間隔をおいて設置された隣接する棒状支柱部材13の間の部分において、湿潤養生部材11が、これの保形剛性によって撓まないようにして、湿潤養生層12の覆工コンクリート22の内周面22aへの密着状態を損うことがないようにすることが可能になる。基板層14を構成するプラスチックダンボールとしては、例えば商品名「プラベニヤ」(株式会社秋本勇吉製)を用いることができる。
【0023】
湿潤養生マット層15は、好ましくは独立気泡や連続気泡等の空隙を内部に有するスポンジ等の発泡部材からなる例えば10mm程度の厚さの保温層15aと、保温層15aのさらに外側に配置される例えば2mm程度の厚さの保湿マット15bとを含んで形成されている。保湿マット15bとしては、水分を吸収可能であり、且つ吸収した水分を保持可能な物性を備える、公知の各種の保湿マットを使用することができる。保温層15aと保湿マット15bとからなる湿潤養生マット層15として、好ましくは、市販のコンクリート保温・保湿養生用マットである商品名「うるおんマット」(フジモリ産業株式会社製)を使用することができる。
【0024】
本実施形態では、湿潤養生部材11は、横長矩形形状の基板層14の表面に、同様の大きさの横長矩形形状の湿潤養生マット層15を、これらの位置をずらした状態で、重ね合わせて接合することによって形成されている。すなわち、湿潤養生部材11は、横長矩形形状の一方の長辺部を、四角形状の少なくとも一辺部16aとして、当該一辺部16aにおいて基板層14を例えば50mm程度食み出させた状態で、湿潤養生マット層15と重ね合わせて形成されている。また、湿潤養生部材11は、横長矩形形状の一方の短辺部を、四角形状の少なくとも一辺部16aと隣接する一方の辺部16bして、当該辺部16bにおいて基板層14を例えば60mm程度食み出させた状態で、湿潤養生マット層15と重ね合わせて形成されている。
【0025】
本実施形態では、トンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造10は、図4及び図5に示すように、保形層となる基板層14をトンネル20の内側に配設して、複数の湿潤養生部材11を棒状支柱部材13と覆工コンクリート22の内周面22aとの間に差し込んで縦横に連設配置して行く際に、トンネル20のアーチ形状部分において、周方向の下部から上部に向けて、基板層14が食み出た一辺部16aを上方側に配置した状態で湿潤養生部材11を連設することによって構成されている。すなわち、基板層14が食み出た一辺部16aを上方側に配置した下段の湿潤養生部材11の上方に、湿潤養生マット層15が下方に食み出た上段の湿潤養生部材11を、下段の湿潤養生部材11の食み出た部分の基板層14と覆工コンクリート22の内周面22aとの間のポケット部分24aに、下方に食み出た湿潤養生マット層15を挿入しながら上方に連設配置してゆく。なお、下段の湿潤養生部材11の上方に上段の湿潤養生部材11を連設配置したら、下段の湿潤養生部材11の基板層14の上端部と上段の湿潤養生部材11の基板層14の下端部との連設箇所を覆うようにして、止水テープ19を接合する。
【0026】
また、本実施形態では、トンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造10は、図4及び図6に示すように、保形層となる基板層14をトンネル20の内側に配設して、複数の湿潤養生部材11を棒状支柱部材13と覆工コンクリート22の内周面22aとの間に差し込んで、トンネルの延長方向Xに連設して行く際に、基板層14が食み出た辺部16bを、トンネルの延長方向Xの前方側に配置した状態で湿潤養生部材11を連設することによって構成されている。すなわち、基板層14が食み出た辺部16bを前方側に配置した後部の湿潤養生部材11の前方に、湿潤養生マット層15が後方に食み出た前部の湿潤養生部材11を、後部の湿潤養生部材11の食み出た部分の基板層14と覆工コンクリート22の内周面22aとの間のポケット部分24bに、後方に食み出た湿潤養生マット層15を挿入しながら前方に連設配置してゆく。なお、後部の湿潤養生部材11の前方に前部の湿潤養生部材11を連設配置したら、後部の湿潤養生部材11の基板層14の前端部と前部の湿潤養生部材11の基板層14の後端部との連設箇所を覆うようにして、止水テープ19を接合する。
【0027】
そして、上述の構成を備える本実施形態のトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造10によれば、トンネルの延長方向Xに間隔をおいて複数設置された棒状支柱部材13と覆工コンクリート22の内周面22aとの間に湿潤養生部材11を差し込んで湿潤養生層12を形成する工法において、湿潤養生部材11を縦横に隙間無く連設配置する作業を容易に行えるようにすることが可能になると共に、湿潤養生層12の水分が湿潤養生部材11の連設箇所から逃げ難いようにすることが可能になる。
【0028】
すなわち、本実施形態のトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造10によれば、複数の湿潤養生部材11を棒状支柱部材13と覆工コンクリート22の内周面22aとの間に差し込んで縦横に連設配置して行く際に、トンネル20のアーチ形状部分において、周方向の下部から上部に向けて、基板層14が食み出た一辺部16aを上方側に配置した状態で湿潤養生部材11を連設することによって構成されているので、上段の湿潤養生部材11を連設してゆく際に、下段の湿潤養生部材11の食み出た部分の基板層14と覆工コンクリート22の内周面22aとの間のポケット部分24aをガイドとして、当該ポケット部分24aに上段の湿潤養生部材11の下方に食み出た部分の湿潤養生マット層15を上方から嵌め込むようようにして挿入してゆくことで、湿潤養生部材11を隙間無く上下に連設配置する作業をスムーズに行うことが可能になる。
【0029】
また、下段の湿潤養生部材11と上段の湿潤養生部材11との連設箇所には、下段の湿潤養生部材11の一辺部16aから上方に食み出た基板層14によって、覆工コンクリート22の内周面22aとの間には上方に向けて開口するポケット部分24aが形成されているので、例えば下段の湿潤養生部材11の湿潤養生マット層15の上端面と上段の湿潤養生部材11の湿潤養生マット層15の下端面との間の隙間を介して漏出しようとする湿潤養生層12の水分を、このポケット部分24aで受け止めることによって、当該連設箇所からトンネル20の内側に湿潤養生層12の水分が漏れ出るのを効果的に遮断することが可能になる。
【0030】
さらに、本実施形態によれば、トンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造10は、湿潤養生部材11をトンネルの延長方向Xに連設して行く際に、基板層14が食み出た辺部16bを、トンネルの延長方向Xの前方側に配置した状態で湿潤養生部材11を連設することによって構成されているので、前部の湿潤養生部材11を連設してゆく際に、後部の湿潤養生部材11の食み出た部分の基板層14と覆工コンクリート22の内周面22aとの間のポケット部分24bをガイドとして、当該ポケット部分24bに前部の湿潤養生部材11の後方に食み出た部分の湿潤養生マット層15を前方から嵌め込むようようにして挿入してゆくことで、湿潤養生部材11を隙間無くトンネルの延長方向Xに連設配置する作業をスムーズに行うことが可能になる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、湿潤養生部材は、基板層が食み出た一辺部と隣接する一方の辺部においても、基板層が食み出た状態となるように形成する必要は必ずしもない。また、基板層が食み出た一辺部と隣接する、基板層を食み出させた一方の辺部を、トンネルの延長方向の後方側に配置した状態で湿潤養生部材を連設することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10 トンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造
11 湿潤養生部材
12 保湿養生層
13 棒状支柱部材
13a 棒状支柱部材の下端部
14 湿潤養生部材の基板層
15 湿潤養生部材の湿潤養生マット層
16a 四角形状の少なくとも一辺部
16b 基板層が食み出た一辺部と隣接する一方の辺部
17 棒状連結部材
18 固定サポート部材
19 止水テープ
20 トンネル
20a トンネルの内壁面
20b トンネルの底盤部
21 一次覆工
22 覆工コンクリート
22a 覆工コンクリートの内周面
23 支圧台
24a,24b ポケット部分
X トンネルの延長方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルのアーチ形状部分に形成された覆工コンクリートの内周面に沿って周方向に延設すると共に、トンネルの延長方向に間隔をおいて設置される複数本の棒状支柱部材に支持させて、覆工コンクリートの内周面を覆って縦横に複数連設配置されることにより湿潤養生層を形成する湿潤養生部材の取付け構造であって、
前記湿潤養生部材は、四角形状の基板層の表面に、同様の大きさの四角形状の湿潤養生マット層を、これらの位置をずらすことで、四角形状の少なくとも一辺部において前記基板層が食み出た状態となるように重ね合わせて形成されており、
前記湿潤養生部材は、各々、前記基板層をトンネルの内側に配設して、前記棒状支柱部材と前記覆工コンクリートの内周面との間に差し込まれていることにより、前記湿潤養生マット層を前記覆工コンクリートの内周面に密着させて前記湿潤養生層を形成しており、
且つ前記湿潤養生部材は、トンネルのアーチ形状部分において、周方向の下部から上部に向けて、前記基板層が食み出た一辺部を上方側に配置した状態で連設されているトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造。
【請求項2】
前記湿潤養生部材は、前記基板層が食み出た一辺部と隣接する一方の辺部においても前記基板層が食み出た状態となるように、前記基板層と前記湿潤養生マット層とを重ね合わせて形成されており、前記基板層が食み出た隣接する一方の辺部を、トンネルの延長方向の前方側に配置した状態で連設されている請求項1記載のトンネル覆工コンクリートの湿潤養生部材取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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