説明

トンネル覆工コンクリートの養生装置

【課題】大掛かりな設備を使用することなく、容易且つ高精度に養生シートを覆工コンクリートの表面に貼り付けられる装置を提供する。
【解決手段】トンネル覆工コンクリートの養生装置1を、トンネル21の覆工コンクリート23の内面に沿ってトンネル周方向に延在し、トンネル前後方向に所定の間隔をおいて配置された一対のレール4、4と、一対のレール4、4の間にて覆工コンクリート23の内面との間に所定の間隔をおいて該内面に沿って配置され、トンネル周方向に展開された養生シート2を覆工コンクリート23の内面から離間した仮位置に保持するシート受けフレーム5と、一対のレール4、4に架け渡されるように一対のレール4、4に摺動自在に設けられ、シート受けフレーム5によって仮位置に保持された養生シート2をトンネル径方向内側から覆工コンクリートの内面に押圧するローラ6とを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面の覆工コンクリートの表面を養生するための養生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、打設後に所定期間にわたって養生されることにより、水和反応が促進され、乾燥や外力などによるひび割れの発生も防止される。これまで、山岳トンネルやシールドトンネルでは、トンネル内が高温多湿に保たれるため、一般的に、覆工コンクリートは脱型後に養生されていなかった。ところが、トンネル貫通後や、設備機能の向上などによってトンネル内の換気が十分に行われると、硬化したコンクリートの性質に悪影響を与えるため、近年、様々な覆工コンクリートの養生構造および養生方法が開発されている。
【0003】
例えば、大掛かりな設備を使用しないで施工できるトンネル覆工コンクリートの養生方法として、覆工コンクリートの表面に接着剤を塗布し、ロール状に巻いた保温養生機能と湿潤養生機能とを有する養生シートを、トンネル移動式型枠などを作用足場にしてトンネル周方向の一端側から他端側方向に転がしながら覆工コンクリートの表面に貼り付け、養生の完了後にはロール状に巻き取って回収するようにした発明が提案されている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−156927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の覆工コンクリートの養生方法では、人力によりロール状の養生シートを転がして展開させながら覆工コンクリートの表面に直接貼り付けるため、ロールが太くなると貼り付け作業が困難になる。また、貼り始め(周方向の一端側)の養生シートの方向が少しでもずれると、貼り終わり(周方向の他端側)で養生シートの位置が大きくずれることになり、先に貼り付けた養生シートとのラップ代が大きくなったり、先に貼り付けた養生シートとの間に隙間ができたりしてしまう。養生シートの貼り付け途中でロールの展開方向を変更したり、一旦養生シートを切断したりして展開方向を修正することも可能であるが、このようにすると、養生シートの折り目部分に隙間ができたり、見栄えが悪くなったりする。
【0006】
ここで、養生シートの幅を大きくして貼り始めの方向精度を高めることも考えられるが、養生シートの幅を大きくするとロールが重くなり人力による作業が困難になる。また、トンネル内面にシートを布設する同様な装置として特開2001−059398に記載される防水シート布設装置のようなシート布設装置を用いれば、養生シートを高精度に貼り付けることはできるが、このような大掛かりな装置を用いることはそもそも特許文献1の発明が課題とするところであり、設備コストの増大に繋がるため好ましくない。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、大掛かりな設備を使用することなく、施工が容易であり且つ高精度に養生シートを覆工コンクリートの表面に貼り付けることのできるトンネル覆工コンクリートの養生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、トンネル覆工コンクリートの養生装置(1)であって、トンネル(21)の覆工コンクリート(23)の内面に沿ってトンネル周方向に延在し、トンネル前後方向に所定の間隔をおいて配置された一対のレール(4、4)と、前記一対のレールの間にて前記覆工コンクリートの内面との間に所定の間隔をおいて該内面に沿って配置され、トンネル周方向に展開された養生シート(2)を前記覆工コンクリートの内面から離間した仮位置に保持するシート受けフレーム(5)と、前記一対のレールに架け渡されるように該一対のレールに摺動自在に設けられ、前記シート受けフレームによって仮位置に保持された前記養生シートをトンネル径方向内側から前記覆工コンクリートの内面に押圧するローラ(6)とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、養生シートを予めシート受けフレーム上の仮位置に配置し、覆工コンクリートの内面に沿って展開させた後に、ローラにより覆工コンクリートの内面に押圧することで貼り付けられるため、養生シートの位置を予め調整して高精度に貼り付けることができる。また、ローラを一対のレールに摺動させることで仮位置に配置された養生シートを覆工コンクリートの内面に貼り付けることができるため、養生シートの貼り付け作業も容易である。さらに、一対のレールとシート受けフレームとローラという簡素な構成により装置を構成できるため、専用の架台を用いても大掛かりになることはなく、例えば覆工コンクリートのセントル後方の張出し足場に設けることもできる。
【0010】
また、本発明の一側面によれば、前記シート受けフレームはトンネル幅方向の略中央にて左右に分割され、当該分割された部分が前記養生シートの仮位置への供給部(5a)をなしており、前記シート受けフレームの前記分割された部分の下方に配置され、ロール状とされた前記養生シートを回転可能に保持するシートホルダ(9)を更に備えた構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、ロール状の養生シートを用意してシートホルダに保持させた状態で、シート受けフレームが分割されてなる供給部から養生シートの端部を覆工内面とシート受けフレームとの間に挿入してトンネル左右方向に順に引き出し、養生シートを仮位置に展開させることができるため、ロールを覆工内面に沿って転がす必要がなく、養生シートの展開作業が容易である。
【0012】
また、本発明の一側面によれば、前記シート受けフレームは、前記一対のレールに架け渡されてトンネル前後方向に延在する複数の連結部材(7)と、前記一対のレールの間にて前記複数の連結部材に架け渡されるようにトンネル周方向に延在するロープ(8)とを有する構成とすることができる。
【0013】
この構成によれば、シート受けフレームを複数の連結部材とロープとから構成される簡素な構成にできる。また、ロープを、養生シートを仮位置に展開する際のガイド手段として機能させるとともに、展開された養生シートの弛み防止手段としても機能させることができる。さらに、ロープは位置の変更や撤去が容易であるため、覆工コンクリートの内面に接着剤を塗布する際などに撤去することで他の作業をより効率的に行えるようにすることができる。
【0014】
また、本発明の一側面によれば、前記一対のレールに架け渡されるように該一対のレールに摺動自在に設けられ、前記シートホルダにより保持されたロール状の養生シートの端部を保持するとともに重力を利用してトンネル周方向の一端へ導いて前記養生シートを前記仮位置に展開させる展開手段(15)を更に備えた構成とすることができる。
【0015】
この構成によれば、養生シートの端部を保持した展開手段を一対のレールに沿ってトンネル周方向の一端へ導くだけで養生シートを仮位置に展開できるため、養生シートの配置作業が容易である。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、大掛かりな設備を使用することなく、施工が容易であり且つ高精度に養生シートを覆工コンクリートの表面に貼り付けることのできるトンネル覆工コンクリートの養生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係るトンネル覆工コンクリートの養生装置の背面図
【図2】図1中のII−II断面図
【図3】図2中のIII部拡大図
【図4】図3に示すローラの断面図
【図5】図1に示す養生装置を用いた養生シートの設置手順の説明図
【図6】変形例に係る養生装置の要部斜視図
【図7】第2実施形態に係る養生装置の要部斜視図
【図8】図7に示す養生装置による養生シートの設置手順の説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
≪第1実施形態≫
まず、図1〜図6を参照して本発明に係るトンネル覆工コンクリートの養生装置1(以下、単に養生装置1と記す。)の第1実施形態について説明する。図1に示すように、実施形態に係る養生装置1は、断面上部がアーチ状を呈するトンネル21における覆工コンクリート23用の養生装置として利用される。ここでは、トンネル21は、発破などにより地山20を掘り進む山岳トンネルであるが、覆工コンクリート23を有するものであれば、シールドトンネルなど他の方式のトンネルであってもよい。覆工コンクリート23は、地山20に吹き付けられた吹き付けコンクリート22の内側に、図2に示すセントル17(型枠台車)の型枠支保工18を用いてコンクリートを打設して構築される。
【0020】
図2および図3に併せて示すように、覆工コンクリート23の型枠支保工18は、通常、コンクリートに所定の強度が発現すると即座に脱型される。そこで、覆工コンクリート23の内面に保温性(断熱性)および保湿性のある養生シート2を貼り付けることでコンクリート表面を養生する。養生シート2は、ここでは多数の気泡をシートに設けたビニル製の気泡緩衝材からなり、保温性および保湿性に優れるだけでなく、軽量で加工性に優れ、衝撃吸収性および耐水性を有するという特徴を持つとともに、一般的な養生シートと比較して廉価で入手可能である。なお、気泡緩衝材としては、プチプチ(登録商標)、エアキャップ(登録商標)、エアセルマット(登録商標)など、市販の各製品を使用可能である。また、ここでは気泡の両面にシートが設けられた気泡緩衝材を使用するが、養生性能をさらに高めるべく気泡を複数段に重ね合わせたものを用いてもよい。
【0021】
養生シート2は、覆工コンクリート23の内面に接着剤3を塗布し、その上に直接貼り付けられる。なお、セントル17により打設される覆工コンクリート23は、そのスパン(トンネル軸方向長さ)が10m程度と比較的長いが、養生シート2は、図2および図3に示すように、1m〜1.5m程度の幅のものをトンネル周方向に展開させ、ここでは所定のラップ代をもって重ね合わせてトンネル軸方向に順次貼り足してゆく。この養生シート2の貼り付け作業において図1に示す養生装置1が用いられる。
【0022】
接着材としては、特許文献1と同様に、市販の紙用の糊などを使用することも可能であるが、例えばメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、ウェランガム、デュータンガム或いはグァガムなどの水溶性高分子の粉体を水で希釈したものを用いることができる。
【0023】
図1〜図3に示すように、養生装置1は、覆工コンクリート23の内面に沿ってトンネル周方向に延在し、トンネル軸方向に所定の間隔(ここでは1.5m程度)をおいて配置された一対のレール4と、一対のレール4の間にて覆工コンクリート23の内面との間に所定の間隔(ここでは350mm〜400mm程度)をおいて内面に沿って配置され、トンネル周方向に展開された養生シート2を覆工コンクリート23の内面から離間した仮位置に保持するシート受けフレーム5と、一対のレール4に架け渡さレール4ように一対のレール4に摺動自在に設けられ、シート受けフレーム5によって仮位置に保持された養生シート2をトンネル径方向内側から覆工コンクリート23の内面に押圧するローラ6とを備えている。
【0024】
このように、一対のレール4とシート受けフレーム5とローラ6という簡素な構成により養生装置1が構成されるため、ここではセントル17の後部から後方へ向けて張り出すように設けられた張出し足場19に養生装置1が取り付けられている。なお、図2においては、養生装置1を中心に示すべく張出し足場19を省略して図示している。養生装置1を移動可能に支持するために張出し足場19ではなく専用の架台を用いてもよいが、この場合においても架台を大掛かりにする必要はなく、簡単な構成の架台を用意すればよい。
【0025】
各レール4は、ここではアングル材を曲げ加工して形成され、トンネル幅方向の略中央、すなわち上端部にて分割されて左右に配置された2つのレールピース4a、4bにより構成されている。レールピース4a、4bの互いに隣接する端部は、他の部分に比べて覆工コンクリート23の内面からの距離が大きくなるように湾曲成形され、且つ両レールピース4a、4bは、互いに隣接する端部同士が離間するように、それぞれ張出し足場19に取り付けられた支柱によって支持される。
【0026】
シート受けフレーム5は、一対のレール4に架け渡されてトンネル軸方向に延在する複数の連結部材7と、一対のレール4の間にて複数の連結部材7に架け渡されるようにトンネル周方向に延在するロープ8とから構成されている。ロープ8は、一対のレール4間をトンネル軸方向に均等に3分割するようにトンネル軸方向に2列配置されている。また、各列のロープ8は、左右のレールピース4a、4bにそれぞれ取り付けられた一群の連結部材7のみを連結するように左右に分割されている。つまり、シート受けフレーム5も、トンネル幅方向の略中央にて左右に分割された構成となっており、分割により形成された離間する部分が養生シート2を仮位置へ供給するためのシート供給部5aとなっている。
【0027】
シート受けフレーム5のシート供給部5aの下方には、ロール状とされた養生シート2を回転可能に保持するシートホルダ9が配置されている。シートホルダ9は、回転軸をトンネル軸方向に延在させた状態で張出し足場19に固定される。これにより、シートホルダ9に保持されたロール状の養生シート2の端部を引き出してシート供給部5aを通して覆工コンクリート23の内面とシート受けフレーム5との間に引き延ばすと、養生シート2をトンネル周方向に展開させて覆工コンクリート23の内面から離間した仮位置に配置することができる。このように、ロール状の養生シート2を覆工コンクリート23の内面に沿って転がす必要がないため、養生シート2の展開作業が容易となっている。
【0028】
また、養生シート2をトンネル周方向に展開させる際には、ロープ8が養生シート2のガイド手段として機能する。これによっても、養生シート2の展開作業が容易となっている。さらに、シート受けフレーム5の連結部材7がトンネル周方向に間隔をおいて配置されていることから、養生シート2をトンネル周方向に展開させて仮位置に配置すると、特に養生シート2をロールから切断した後に養生シート2の上側部分が弛み易いが、ロープ8が連結部材7を繋ぐようにトンネル周方向に延在しているため、養生シート2の弛みも防止される。
【0029】
本実施形態では、後述する養生シート2の貼り付け方法で説明するように、養生シート2をトンネル周方向に展開する際には、覆工コンクリート23の内面に接着剤3が塗布された状態となっている。そのため、展開途中に養生シート2が覆工コンクリート23の内面に接触すると、接着して展開させることができなくなる。この問題に対して本実施形態では、シート受けフレーム5を覆工コンクリート23の内面から350mm程度離間した位置に配置することにより、展開途中に養生シート2が覆工コンクリート23に接触し難くしている。
【0030】
図3および図4に示すように、ローラ6は、トンネル軸方向に延在する中心パイプ10と、中心パイプ10の両端にそれぞれ設けられ、一対のレール4に周接するとともに中心パイプ10のトンネル軸方向への移動を規制するガイドスライダ11およびハンドル12と、中心パイプ10の回りに取り付けられたシート密着用の円筒状のローラスポンジ13とを有している。ローラスポンジ13は、クロロプレン重合体を主成分とする合成ゴムからなる弾性体であり、ローラ6がレール4に摺合した状態において所定の押圧力をもって覆工コンクリート23の内面に当接する直径(ここでは300mm程度)とされている。しがたって、仮位置に配置された養生シート2をトンネル内側から押圧する状態でローラ6をレール4に沿ってトンネル周方向の一端(左右の下端)へ移動させることで、養生シート2の全面を覆工コンクリート23の内面に密着させることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、ローラ6をトンネル中央上側からトンネル側方下側へ移動させながら、トンネル21の左半および右半についてそれぞれ養生シート2を貼り付け、トンネル中央上側にて左右の養生シート2をオーバーラップさせる。そして、レール4の分割された上端部が覆工コンクリート23の内面から離間するように湾曲成形されていることにより、押圧力が発生していない状態でローラ6をレール4に係合させることができるようになっており、養生シート2の貼り付け作業の容易化が図られている。
【0032】
このように、養生装置1は、養生シート2を予めシート受けフレーム5上の仮位置に配置して覆工コンクリート23の内面に沿って展開させた後に、養生シート2をローラ6によって覆工コンクリート23の内面に押圧することで貼り付けることができるため、貼り付け前に養生シート2の位置を予め調整して高精度に貼り付けることができる。また、ローラ6を一対のレール4に摺動させることで仮位置に配置された養生シート2を覆工コンクリート23の内面に貼り付けることができるため、養生シート2の貼り付け作業も容易である。
【0033】
次に、図5を参照して養生装置1を用いて行う養生シート2の貼り付け手順について説明する。先ず、(A)に示すように、脱型後の覆工コンクリート23の内面に噴霧器14などを用いて接着剤3を塗布する。この際、ロープ8は容易に移動や撤去を行えるため、移動もしくは一時的に撤去することで接着剤3の塗布作業をより効率的にすることができる。
【0034】
次に、(B)に示すように、養生シート2をロールから引き出してシート受けフレーム5に沿ってトンネル周方向に展開し、覆工コンクリート23の内面から離間した仮位置に配置する。なお、ロール状の養生シート2が長い場合には、トンネル21の中央に至る長さで養生シート2を切断する。この際、仮位置に配置された養生シート2は、覆工コンクリート23に貼り付けられた時に下端の位置が上方へ移動するため、養生シート2の下端を貼り付けようとする位置よりも下方に位置させた状態で切断するようにする。
【0035】
その後(C)に示すように、ローラスポンジ13が養生シート2の下側となるように、トンネル中央のレール4が分割された部位からローラ6をレール4に係合させ、トンネル側方下側へ移動させることで、養生シート2を所定の押圧力をもって覆工コンクリート23の内面に押し付けて貼り付ける。
【0036】
<変形例>
図6に示すように、一対のレール4に架け渡されるように一対のレール4に摺動自在に設けられ、シートホルダ9により保持されたロール状の養生シート2の端部を保持する保持部材15を養生装置1が備える構成とすることもできる。このようにすることにより、重力を利用して保持部材15をレール4の上端側からトンネル側方下部の下端側へ摺動させることにより、養生シート2を容易に仮位置に展開させることができる。
【0037】
≪第2実施形態≫
次に、図7および図8を参照して本発明に係る覆工コンクリート23の養生装置1の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の部材などには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
図7に示すように、本実施形態の覆工コンクリート23の養生装置1では、ローラ6が軸方向の両端にモータ6aを備えた自走式とされており、覆工コンクリート23の内面に沿って下方および上方へ移動可能となっている。また、ローラ6には、接着剤3を覆工コンクリート23の内面に塗布するための噴霧器14が一体に取り付けられている。噴霧器14は、トンネル軸方向に延在するパイプ14aの適所に接着剤3の噴射ノズル14bを設けて形成され、ローラ6の軸方向の両端に設けられてトンネル周方向の一端側へ向けて延在する一対のアーム14cによってシート受けフレーム5と覆工コンクリート23の内面との間に配置される。パイプ14aの一端には図示しない接着剤供給装置に接続されたホース14dが接続されており、ローラ6が自走中に噴射ノズル14bから接着剤3を噴霧することで、覆工コンクリート23の内面における左または右の約半分の領域にて養生シート2の幅にわたって接着剤3が塗布される。
【0039】
ここでは、養生シート2をシート受けフレーム5の上に配置した後に、噴霧器14の噴射ノズル14bを養生シート2よりもトンネル径方向外側に配置し、且つローラ6のローラスポンジ13を養生シート2よりもトンネル径方向内側に配置した状態で、噴射ノズル14bから接着剤3を噴霧させるとともにローラ6をトンネル断面の中央上側から周方向の一端側(側方下側)へ走行させることにより、接着剤3の塗布と養生シート2の貼り付けとを同時に行うことができる。
【0040】
本実施形態の養生装置1によれば、覆工コンクリート23の内面に接着剤3を塗布する前に、覆工コンクリート23の内面から離間した仮位置に配置すべく養生シート2をシート受けフレーム5に沿ってトンネル周方向に展開することになる。そのため、展開作業時に養生シート2が覆工コンクリート23に接触しても付着することがなく養生シート2の展開作業が容易である。
【0041】
なお、第1実施形態の変形例と同様に、図7に想像線で示すように噴霧器14のパイプ14aなどに養生シート2の端部を把持する把持手段としてクリップ16などを取り付けておき、ローラ6を走行させることでロール状の養生シート2をトンネル周方向に展開できるようにしてもよく、これにより養生シート2の展開作業をより容易にすることができる。ただし、このようにする場合には、ローラ6のローラスポンジ13が覆工コンクリート23に圧接していると、覆工コンクリート23との摩擦によって養生シート2を展開させることができないため、ローラスポンジ13を取り外しできる構成としたり、ローラスポンジ13をトンネル径方向内側に退避させる退避手段を設けたりするなどして、養生シート2の展開時にローラスポンジ13が養生シート2を覆工コンクリート23の内面に接触させないようにする。
【0042】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、各部材の具体的形状や、配置、数量などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、覆工コンクリート23の内面に接着剤3を塗布しているが、養生シート2に接着剤3を塗布するようにしてもよい。また、上記実施形態では、シート受けフレーム5を連結部材7とロープ8とを有するように構成しているが、ロープ8の代わりに樹脂板などを設け、養生シート2の弛み防止と手動で展開させる際のガイド手段としての機能を担保させてもよい。他方、上記実施形態に示した本発明に係る養生装置1の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 養生装置
2 養生シート
4 レール
5 シート受けフレーム
5a シート供給部
6 ローラ
7 連結部材
8 ロープ
9 シートホルダ
15 保持部材(展開手段)
17 セントル
19 張出し足場
21 トンネル
23 覆工コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの覆工コンクリートの内面に沿ってトンネル周方向に延在し、トンネル前後方向に所定の間隔をおいて配置された一対のレールと、
前記一対のレールの間にて前記覆工コンクリートの内面との間に所定の間隔をおいて該内面に沿って配置され、トンネル周方向に展開された養生シートを前記覆工コンクリートの内面から離間した仮位置に保持するシート受けフレームと、
前記一対のレールに架け渡されるように該一対のレールに摺動自在に設けられ、前記シート受けフレームによって仮位置に保持された前記養生シートをトンネル径方向内側から前記覆工コンクリートの内面に押圧するローラと
を備えたことを特徴とするトンネル覆工コンクリートの養生装置。
【請求項2】
前記シート受けフレームはトンネル幅方向の略中央にて左右に分割され、当該分割された部分が前記養生シートの仮位置への供給部をなしており、
前記シート受けフレームの前記分割された部分の下方に配置され、ロール状とされた前記養生シートを回転可能に保持するシートホルダを更に備えたことを特徴とする、請求項1に記載のトンネル覆工コンクリートの養生装置。
【請求項3】
前記シート受けフレームは、前記一対のレールに架け渡されてトンネル前後方向に延在する複数の連結部材と、前記一対のレールの間にて前記複数の連結部材に架け渡されるようにトンネル周方向に延在するロープとを有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のトンネル覆工コンクリートの養生装置。
【請求項4】
前記一対のレールに架け渡されるように該一対のレールに摺動自在に設けられ、前記シートホルダにより保持されたロール状の養生シートの端部を保持するとともに重力を利用してトンネル周方向の一端へ導いて前記養生シートを前記仮位置に展開させる展開手段を更に備えたことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のトンネル覆工コンクリートの養生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−49963(P2013−49963A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187385(P2011−187385)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】