説明

トンネル覆工コンクリート打設方法及び打設構造

【課題】材料や施工に無駄を生じることなく、簡易な構成でトンネル冠部の覆工コンクリートを効率良く効果的に締固めることのできるトンネル覆工コンクリート打設方法を提供する。
【解決手段】既設覆工コンクリート15と妻型枠16との間のトンネル覆工用型枠10の外周面に、パイプ挿通孔17を有するガイド片18を複数突設すると共に、棒状バイブレータ20の後端部分に接続されたガイドパイプ19を、パイプ挿通孔17に挿通してガイド片18に支持させつつ、妻型枠16の外側からバイブレータケーブル21を牽引可能な状態とする。トンネル覆工用型枠10と覆工面22との間の覆工空間23にコンクリートを打設すると共に、コンクリート中に埋入された棒状バイブレータ20及びガイドパイプ19を、ガイド片18のパイプ挿通孔17をガイドとして、バイブレータケーブル21による牽引によって妻型枠16側に移動させながらコンクリートの締固めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工用型枠を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリート打設方法、及び該覆工コンクリート打設方法に用いるトンネル覆工コンクリート打設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば山岳トンネル工法等のトンネル工法において、掘削したトンネルの内周面の地山を覆って構築されるトンネル覆工コンクリートを形成するための方法として、トンネル覆工用型枠(コンクリート覆工用型枠)を用いる工法が一般的に採用されている。トンネル覆工用型枠50は、図7(a),(b)に示すように、例えば馬蹄形等のアーチ形状部分52を含む形状のトンネル53の内周面54に沿って、トンネル53の側壁部55から上部に亘って設置されるものであり、設置されたトンネル覆工用型枠50と、トンネル53の内周面54の吹き付けコンクリート56によって覆われる地山との間の空間部61に、好ましくは無筋コンクリートを打設して硬化させることにより、トンネル底部のインバート部51のコンクリートと連続させるようにして、覆工コンクリートが形成されることになる。
【0003】
また、トンネル覆工用型枠50としては、例えばパラセントルと呼ばれる組立式のトンネル覆工用型枠の他、スライドセントルと呼ばれる移動式のトンネル覆工用型枠が知られており、トンネル53の掘削作業の進行に伴なって、例えば10m程度の所定のスパン毎にトンネル覆工用型枠50を据え付け直しながら、トンネル53の掘進方向の後方から前方に向かって、トンネル覆工用型枠50を用いてトンネル53の側部及び上部の覆工コンクリートを順次打設形成して行くことになる。
【0004】
そして、トンネル覆工用型枠50を用いてトンネルの側部及び上部の覆工コンクリートを打設するには、例えば図8(a)〜(d)に示すように、設置したトンネル覆工用型枠50に設けられた検査窓56からコンクリートを打設可能な高さ領域として、例えばトンネル53の側壁部55からアーチ形状部分52の肩部までの領域に対しては、検査窓56を介してコンクリート57を供給すると共に、バイブレータ58を検査窓56から挿入し、供給されたコンクリート57を締固めながらコンクリート57を打設する。しかる後に、検査窓56からコンクリート57を供給しながらバイブレータ58によって締固めることが困難な高さ領域として、トンネル53の冠部(クラウン部)59(図7参照)の領域に対しては、トンネル覆工用型枠50の天端部に設けた吹き上げ口としてのコンクリート打設孔60から、コンクリートを吹き上げ方式で打ち込み、締固めを行うことなく冠部59のコンクリート57を形成するパターンが採用されている。
【0005】
より具体的には、所定位置にトンネル覆工用型枠50を設置した後に、例えば側壁部55の下部より、下段の検査窓56を介してコンクリート57を流し込みながらバイブレータ58を用いて締固める工程(図8(a)参照)と、さらに側壁部55の上部のアーチ形状部分52に向かって、中段の検査窓56を介してコンクリート57を流し込みながらバイブレータ58を用いて締固める工程(図8(b)参照)と、さらにアーチ形状部分52の冠部59の手前まで、上段の検査窓56及び必要に応じてコンクリート打設孔60を介してコンクリート57を流し込みながら、バイブレータ58を用いて締固める工程(図8(c)参照)と、冠部59の既設覆工コンクリート62側の部分からコンクリート打設孔60を介して順次コンクリート57を流し込み、締固めを行うことなく妻型枠63までコンクリートを充填する工程(図8(d)参照)とにより、覆工コンクリートが打設されることになる。
【0006】
上述のような従来のトンネル覆工用型枠50を用いた覆工コンクリートの打設方法では、トンネル冠部(クラウン部)59に打設されたコンクリート57の締固めを行うことができないことから、当該冠部59における覆工コンクリートの品質上の信頼性が低くなり、特に既設覆工コンクリート62の付近では、エア溜まりや空洞が発生しやすくなる。また、吹き上げ口としてのコンクリート打設孔60から集中してトンネル覆工用型枠50と地山との間の空間61にコンクリート57が打設されるので、コンクリート57がコンクリート打設孔60から周囲に流れる際の軌跡が縞模様として覆工コンクリートの表面に残りやすくなり、仕上りが悪くなる。
【0007】
これに対して、トンネル冠部に打設されたコンクリートの締固めを行うことができるようにする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の覆工コンクリート打設方法では、山岳トンネル工法とは異なるシールド工法によってトンネルを築造する際に、セグメントとセントルとの間の空隙のクラウン部に、トンネル軸方向の略全長に亘って延伸する、断面L型のアングルを凹向きに吊り下げ固定してなるガイドレールと、ガイドレールに沿って動く棒状バイブレータとを設置しておき、既設側からクラウン部の空隙にコンクリートを棒状バイブレータで締固めつつ打設し、コンクリートの充填に伴って、棒状バイブレータをガイドレールに沿って既設側から妻板側に向けて移動させるようにしたものである。また、特許文献1の覆工コンクリート打設方法では、ガイドレールは例えば二次覆工コンクリートの段取筋を兼ねて設けられるようになっている。
【特許文献1】特開2002−30893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のトンネルのクラウン部にコンクリートを打設する方法では、棒状バイブレータをトンネル軸方向に案内するL型のアングルからなるガイドレールを、コンクリートの打設箇所におけるトンネルの軸方向の略全長に亘って予め設けておく必要があるため、段取筋等を設置することなく好ましくは無筋コンクリートを用いて覆工コンクリートが形成されるトンネル覆工用型枠による山岳トンネル等においては、その材料や施工に多くの無駄を生じることになる。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、材料や施工に多くの無駄を生じることなく、簡易な構成で、トンネル覆工用型枠を用いて形成される特にトンネル冠部の覆工コンクリートを効率良く効果的に締固めることのできるトンネル覆工コンクリート打設方法及びトンネル覆工コンクリート打設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トンネル覆工用型枠を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリート打設方法において、既に形成された既設覆工コンクリートと妻型枠との間の前記トンネル覆工用型枠の外周面に、パイプ挿通孔を有するガイド片を、トンネルの軸方向に間隔をおいて直列状に配置して複数突設すると共に、前記パイプ挿通孔よりも小径のガイドパイプを、前記パイプ挿通孔よりも小径の棒状バイブレータの後端部分に、後続するバイブレータケーブルを内挿させた状態で接続し、前記棒状バイブレータ及び前記ガイドパイプを前記パイプ挿通孔に挿通して前記ガイド片に支持させつつ、前記棒状バイブレータを前記既設覆工コンクリートに近接配置すると共に、前記バイブレータケーブルを前記妻型枠側に延設させて前記妻型枠を貫通させることにより前記妻型枠の外側から牽引可能な状態とし、前記既設覆工コンクリートの端面と前記妻型枠とによって挟まれる、前記トンネル覆工用型枠の外周面とトンネル内周の覆工面との間の覆工空間に、前記既設覆工コンクリート側からコンクリートを打設すると共に、打設したコンクリート中に埋入された前記棒状バイブレータ及び前記ガイドパイプを、前記ガイド片のパイプ挿通孔をガイドとして、前記バイブレータケーブルによる牽引によって前記妻型枠側に直線状に移動させながらコンクリートの締固めを行うトンネル覆工コンクリート打設方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
また、本発明のトンネル覆工コンクリート打設方法は、前記ガイドパイプが前記棒状バイブレータに回転可能に接続しており、前記覆工空間に打設したコンクリート中に埋入された前記ガイドパイプを、回転させつつ前記妻型枠側に直線状に移動させるようにすることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のトンネル覆工コンクリート打設方法は、前記覆工空間がトンネル冠部の覆工空間であることが好ましい。
【0013】
そして、本発明は、上記トンネル覆工コンクリート打設方法に用いるトンネル覆工コンクリート打設構造であって、既に形成された既設覆工コンクリートと妻型枠との間のトンネル覆工用型枠の外周面に、トンネルの軸方向に間隔をおいて直列状に配置して突設された、パイプ挿通孔を有する複数のガイド片と、前記パイプ挿通孔よりも小径の棒状バイブレータの後端部分に、後続するバイブレータケーブルを内挿させた状態で接続された、前記パイプ挿通孔よりも小径のガイドパイプとからなり、前記棒状バイブレータ及び前記ガイドパイプは、前記既設覆工コンクリートの端面と前記妻型枠とによって挟まれる、前記トンネル覆工用型枠の外周面とトンネル内周の覆工面との間の覆工空間において、前記棒状バイブレータを前記既設覆工コンクリートに向けて配置した状態で、前記ガイドパイプを前記パイプ挿通孔に挿通して少なくとも2箇所の前記ガイド片によって支持され、且つ前記バイブレータケーブルを前記妻型枠側に延設させて前記妻型枠を貫通させることにより前記妻型枠の外側から牽引可能な状態で取り付けられるトンネル覆工コンクリート打設構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0014】
また、本発明のトンネル覆工コンクリート打設構造は、前記ガイド片がトンネルの軸方向に一定の設置間隔をおいて直列状に複数設けられ、前記ガイドパイプは該設置間隔の2倍よりも大きい長さを有していることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明のトンネル覆工コンクリート打設構造は、前記ガイドパイプが前記棒状バイブレータに回転可能に接続していることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明のトンネル覆工コンクリート打設構造は、前記ガイドパイプの外周面に螺旋状の突条が設けられていることが好ましい。
【0017】
また、本発明のトンネル覆工コンクリート打設構造は、前記ガイドパイプの外周面にトンネル軸方向に対して傾斜した回転羽根が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のトンネル覆工コンクリート打設方法又はトンネル覆工コンクリート打設構造によれば、 材料や施工に多くの無駄を生じることなく、簡易な構成で、トンネル覆工用型枠を用いて形成される特にトンネル冠部の覆工コンクリートを効率良く効果的に締固めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリート打設方法は、図1(a)〜(c)に示すように、例えば山岳トンネル工法において、コンクリート覆工用型枠としてのトンネル覆工用型枠10を用いてトンネル12の側部及び上部の覆工コンクリート11を打設形成してゆく際に、特にトンネル12の冠部(クラウン部)13の覆工コンクリート11aを、これより下方の例えばトンネル12の側壁部及びアーチ形状部分の覆工コンクリート11を打設した後に、充分に締固めながら打設してゆくための方法として採用されたものである。
【0020】
ここで、本実施形態では、トンネル覆工用型枠10は、従来技術として公知の例えばスライド移動式のセントルであり、トンネル12の掘削作業の進行に伴なって、例えば10m程度の所定のスパン毎にトンネル12の掘進方向Xの後方から前方に向かって据え付け直しながら、トンネル12の側部及び上部の覆工コンクリート11を順次打設形成してゆくことを可能にするものである。また、本実施形態では、側壁部及びアーチ形状部分の覆工コンクリート11は、例えば従来の工法と同様の方法により、設置したトンネル覆工用型枠10に設けられた検査窓14を介してコンクリートが供給されると共に、振動締固め装置としての棒状バイブレータ14aを検査窓14から挿入して供給されたコンクリートを締固めることによって、当該側壁部及びアーチ形状部分の覆工コンクリート11が、トンネル冠部13の覆工コンクリート11aに先行して打設されることになる。
【0021】
そして、本実施形態のトンネル覆工コンクリート打設方法は、トンネル覆工用型枠10を用いて覆工コンクリート11aを形成するコンクリート打設方法において、図1〜図4に示すように、既に形成された既設覆工コンクリート15と妻型枠16との間のトンネル覆工用型枠10の外周面に、パイプ挿通孔17を有するガイド片18を、トンネル12の軸方向Xに間隔をおいて直列状に配置して複数突設すると共に、パイプ挿通孔17よりも小径のガイドパイプ19を、パイプ挿通孔17よりも小径の棒状バイブレータ20の後端部分に、後続するバイブレータケーブル21を内挿させた状態で接続し、棒状バイブレータ20及びガイドパイプ19をパイプ挿通孔17に挿通してガイド片18に支持させつつ、棒状バイブレータ20を既設覆工コンクリート15に近接配置すると共に、バイブレータケーブル21を妻型枠16側に延設させて妻型枠16を貫通させることにより妻型枠16の外側から牽引可能な状態とする。しかる後に、既設覆工コンクリート15の端面15aと妻型枠16とによって挟まれる、トンネル覆工用型枠10の外周面とトンネル内周の覆工面22との間の覆工空間23に、既設覆工コンクリート15側からコンクリート打設孔24を介してコンクリートを打設すると共に、打設したコンクリート中に埋入された棒状バイブレータ20及びガイドパイプ19を、ガイド片18のパイプ挿通孔17をガイドとして、バイブレータケーブル21による牽引によって妻型枠16側に直線状に移動させながら、打設したコンクリートの締固めを行う。
【0022】
また、本実施形態によれば、上述のトンネル覆工コンクリート打設方法を実施するための手段として、図2〜図4に示すように、既に形成された既設覆工コンクリート15と妻型枠16との間のトンネル覆工用型枠10の外周面に、トンネル12の軸方向Xに間隔をおいて直列状に配置して突設された、パイプ挿通孔17を有する複数のガイド片18と、パイプ挿通孔17よりも小径の棒状バイブレータ20の後端部分に、後続するバイブレータケーブル21を内挿させた状態で接続された、パイプ挿通孔17よりも小径のガイドパイプ19とからなるトンネル覆工コンクリート打設構造が用いられる。このトンネル覆工コンクリート打設構造では、棒状バイブレータ20及びガイドパイプ19は、既設覆工コンクリート15の端面15aと妻型枠16とによって挟まれる、トンネル覆工用型枠10の外周面とトンネル内周の覆工面22との間の覆工空間23において、棒状バイブレータ20を既設覆工コンクリート15に向けて配置した状態で、ガイドパイプ19をパイプ挿通孔17に挿通して少なくとも2箇所のガイド片18によって支持され、且つバイブレータケーブル21を妻型枠16側に延設させて妻型枠16を貫通させることにより妻型枠16の外側から牽引可能な状態で取り付けられている。
【0023】
トンネル覆工用型枠10の外周面に突設されるガイド片18は、例えば矩形形状の鋼製プレートからなり、図5(a),(b)に示すように、例えばトンネル覆工用型枠10を貫通させてトンネル覆工用型枠10に一体接合して取り付けられる。ガイド片18のトンネル覆工用型枠10の外側に突出する部分には、これの中央部分に配置されて、棒状バイブレータ20及びこれと略同径のガイドパイプ19の例えば65mmの外径よりも、僅かに大きな例えば80mmの内径を有する、円形のパイプ挿通孔17が貫通形成されている。またパイプ挿通孔17は、その内周面17aが、ガイド片18の既設覆工コンクリート15側の面、すなわちバイブレータケーブル21の牽引による棒状バイブレータ20及びガイドパイプ19の移動方向X’と対向する面から、これの反対側の面に向けて内径が斜めに縮径されたテーパー形状を有している。パイプ挿通孔17がこのようなテーパー形状を有していることにより、ガイドパイプ19を妻型枠16側に移動させて、妻型枠16側の次のガイド片18のパイプ挿通孔17にガイドパイプ19を挿通支持させる際に、ガイドパイプ19がパイプ挿通孔17の周囲にひっ掛かって挿通され難くなるのを回避することが可能になる。
【0024】
また、本実施形態では、ガイド片18は、トンネルの軸方向Xに一定の設置間隔aとして、例えば1000mmの間隔をおいて直列状に複数設けらている。
【0025】
棒状バイブレータ20は、例えば電磁式振動体やモータの回転力によって振動する振動体等を内部に備える、コンクリート用の締固め装置として汎用されている公知の装置であり、当該棒状バイブレータ20の後端部分に接続される、接続線等が収容されたフレキシブルな動力供給ホースからなるバイブレータケーブル21と一体として構成される。
【0026】
棒状バイブレータ20の後端部分に接続されるガイドパイプ19は、例えば鋼製の中空パイプからなり、ガイド片18の設置間隔aの2倍よりも大きい長さとして、例えば2100〜2500mmの長さを有している。ガイドパイプ19がガイド片18の設置間隔aの2倍よりも大きい長さを有していることにより、バイブレータケーブル21の牽引によってガイドパイプ19を妻型枠16側に移動させる際に、ガイドパイプ19は、常に少なくとも2箇所のガイド片18のパイプ挿通孔17に挿通支持された状態を保持するので、その方向性及び直進性を容易に維持することが可能になる。また、ガイドパイプ19が挿通されているガイド片18の移動方向X’に隣接する次のガイド片18のパイプ挿通孔17にガイドパイプ19を挿通する際に、先行する2箇所のガイド片18に支持されてガイドパイプ19の方向性や直進性が維持されているので、次のパイプ挿通孔17にガイドパイプ19がスムーズに挿通されることになる。
【0027】
また、本実施形態では、ガイドパイプ19は、棒状バイブレータ20に回転可能に接続していることが好ましく、覆工空間23に打設したコンクリート中に埋入されたガイドパイプ19を、回転させつつ妻型枠16側に直線状に移動させることが好ましい。ガイドパイプ19がコンクリート中で回転しつつ移動することにより、流動状態のコンクリートとの周面摩擦によって、移動時の方向性や直進性が安定して保持されることになる。
【0028】
さらに、本実施形態では、図6(a),(b)に示すように、ガイドパイプ19の外周面に、螺旋状の突条25を設けたり、トンネル軸方向Xに対して傾斜した回転羽根26が設けておくことが好ましい。これらの螺旋状の突条25や回転羽根26によって、コンクリート中での移動時に、これらがコンクリートからの抵抗を受けて、ガイドパイプ19に回転力が負荷されることになり、この回転力によってガイドパイプ19が回転して、移動時の方向性や直進性がさらに安定して保持されることになる。
【0029】
本実施形態では、図1(b)に示す、トンネル12の側壁部及びアーチ形状部分の覆工コンクリート11を打設形成した後の、複数のガイド片18とガイドパイプ19とからなるトンネル覆工コンクリート打設構造が設置されたトンネル12の冠部(クラウン部)13の覆工空間23に対して、例えば図1(c)示すように、コンクリートポンプをコンクリート打設孔24に接続して、当該コンクリート打設孔24からコンクリートを打設する。覆工空間23の全体に充填されるまでコンクリートを打設した後に、或いは少なくとも棒状バイブレータ20及びガイドパイプ19がコンクリート中に埋入されるまでコンクリートを打設した後に、コンクリート打設孔24やその他の打設口からコンクリートを追加打設しつつ、棒状バイブレータ20を震動させながら当該棒状バイブレータ20及びガイドパイプ19を、例えばコード巻取り装置27の牽引力によってバイブレータケーブル21を牽引することにより、妻型枠16側に移動させる。ガイドパイプ19が妻型枠16まで移動したら、例えば妻型枠16のケーブル貫通孔からガイドパイプ19及び棒状バイブレータ20を引き抜いて、トンネル覆工用型枠10が設置された当該スパンにおける覆工コンクリート11の打設作業が終了する。
【0030】
そして、本実施形態によれば、材料や施工に多くの無駄を生じることなく、簡易な構成で、トンネル覆工用型枠10を用いて形成される特にトンネル12の冠部13の覆工コンクリート11aを効率良く効果的に締固めることができる。すなわち、本実施形態では、トンネル覆工用型枠10の外周面にパイプ挿通孔17を有するガイド片18を直列状に複数配置し、棒状バイブレータ20の後端部分に接続するガイドパイプ19をパイプ挿通孔17に挿通してガイド片18に支持させながら、打設したコンクリート中に埋入された棒状バイブレータ20及びガイドパイプ19を、ガイド片18のパイプ挿通孔17をガイドとして、バイブレータケーブル21による牽引によって妻型枠16側に移動させながらコンクリートの締固めを行うので、棒状バイブレータを案内するL型のアングル等からなるガイドレールを、トンネル覆工用型枠によるスパンの略全長に亘って予め設置しておく方法と比較して、簡易な方法によって材料や施工に多くの無駄を生じることなく、効率良く覆工コンクリート11aを締固めてゆくことが可能になる。
【0031】
また、本実施形態によれば、棒状バイブレータ20及びガイドパイプ19は、複数のガイド片18によって支持されて、覆工コンクリート11aの肉厚の中央部分を妻型枠16に向けて直線状に移動しながらコンクリートを締固めてゆくので、覆工コンクリート11aを効率良く効果的に締固めてゆくことができ、これによって、十分な締固めがなされた、品質が良く表面の仕上りが良好な覆工コンクリート11aを得ることが可能になる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明は、山岳トンネル以外のその他のトンネルにおける覆工コンクリートを形成するべく採用することもできる。また、トンネル覆工用型枠の外周面との間に覆工空間を形成するトンネルの内周面は、吹き付けコンクリートによって覆われる地山の他、1次覆工を行った後のトンネル内周面による、2次覆工を行うための覆工面であっても良い。さらに、本発明によって締固められる覆工コンクリートは、トンネル冠部の覆工コンクリートである必要は必ずしもなく、例えばトンネルの側壁部や肩部、アーチ形状部分等に複数のガイド片をトンネルの軸方向に直列状に配置して、本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリート打設方法を含む覆工コンクリートの打設作業の作業手順を説明する、一部を断面図として示す側面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリート打設構造の構成を説明する断面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリート打設構造の構成を説明する略示斜視図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリート打設構造の構成を説明する略示拡大側面図である。
【図5】パイプ挿通孔を有するガイド片を説明する、(a)は(b)を右側から見た正面図、(b)は(a)のA−Aに沿った断面図である。
【図6】(a)はガイドパイプの外周面に螺旋状の突条を設けた状態の説明図、(b)はガイドパイプの外周面にトンネル軸方向に対して傾斜した回転羽根を設けた状態の説明図である。
【図7】(a)はコンクリート覆工用型枠をトンネルの内周面に沿って設置した状態を説明するトンネル軸方向から見た断面図、(b)は同側面図である。
【図8】(a)〜(d)は、従来のトンネル覆工コンクリート打設方法の作業手順を説明する、一部を断面図として示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 トンネル覆工用型枠
11 覆工コンクリート
11a 冠部の覆工コンクリート
12 トンネル
13 トンネルの冠部
15 既設覆工コンクリート
15a 既設覆工コンクリートの端面
16 妻型枠
17 パイプ挿通孔
18 ガイド片
19 ガイドパイプ
20 棒状バイブレータ
21 バイブレータケーブル
22 覆工面
23 覆工空間
24 コンクリート打設孔
25 螺旋状の突条
26 回転羽根
27 コード巻取り装置
a ガイド片の設置間隔
X トンネルの軸方向
X’ 棒状バイブレータ及びガイドパイプの移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル覆工用型枠を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリート打設方法において、
既に形成された既設覆工コンクリートと妻型枠との間の前記トンネル覆工用型枠の外周面に、パイプ挿通孔を有するガイド片を、トンネルの軸方向に間隔をおいて直列状に配置して複数突設すると共に、前記パイプ挿通孔よりも小径のガイドパイプを、前記パイプ挿通孔よりも小径の棒状バイブレータの後端部分に、後続するバイブレータケーブルを内挿させた状態で接続し、
前記棒状バイブレータ及び前記ガイドパイプを前記パイプ挿通孔に挿通して前記ガイド片に支持させつつ、前記棒状バイブレータを前記既設覆工コンクリートに近接配置すると共に、前記バイブレータケーブルを前記妻型枠側に延設させて前記妻型枠を貫通させることにより前記妻型枠の外側から牽引可能な状態とし、
前記既設覆工コンクリートの端面と前記妻型枠とによって挟まれる、前記トンネル覆工用型枠の外周面とトンネル内周の覆工面との間の覆工空間に、前記既設覆工コンクリート側からコンクリートを打設すると共に、打設したコンクリート中に埋入された前記棒状バイブレータ及び前記ガイドパイプを、前記ガイド片のパイプ挿通孔をガイドとして、前記バイブレータケーブルによる牽引によって前記妻型枠側に直線状に移動させながらコンクリートの締固めを行うトンネル覆工コンクリート打設方法。
【請求項2】
前記ガイドパイプは前記棒状バイブレータに回転可能に接続しており、前記覆工空間に打設したコンクリート中に埋入された前記ガイドパイプを、回転させつつ前記妻型枠側に直線状に移動させる請求項1に記載のトンネル覆工コンクリート打設方法。
【請求項3】
前記覆工空間は、トンネル冠部の覆工空間である請求項1又は2に記載のトンネル覆工コンクリート打設方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のトンネル覆工コンクリート打設方法に用いるトンネル覆工コンクリート打設構造であって、
既に形成された既設覆工コンクリートと妻型枠との間のトンネル覆工用型枠の外周面に、トンネルの軸方向に間隔をおいて直列状に配置して突設された、パイプ挿通孔を有する複数のガイド片と、
前記パイプ挿通孔よりも小径の棒状バイブレータの後端部分に、後続するバイブレータケーブルを内挿させた状態で接続された、前記パイプ挿通孔よりも小径のガイドパイプとからなり、
前記棒状バイブレータ及び前記ガイドパイプは、前記既設覆工コンクリートの端面と前記妻型枠とによって挟まれる、前記トンネル覆工用型枠の外周面とトンネル内周の覆工面との間の覆工空間において、前記棒状バイブレータを前記既設覆工コンクリートに向けて配置した状態で、前記ガイドパイプを前記パイプ挿通孔に挿通して少なくとも2箇所の前記ガイド片によって支持され、且つ前記バイブレータケーブルを前記妻型枠側に延設させて前記妻型枠を貫通させることにより前記妻型枠の外側から牽引可能な状態で取り付けられるトンネル覆工コンクリート打設構造。
【請求項5】
前記ガイド片は、トンネルの軸方向に一定の設置間隔をおいて直列状に複数設けられ、前記ガイドパイプは該設置間隔の2倍よりも大きい長さを有する請求項4に記載のトンネル覆工コンクリート打設構造。
【請求項6】
前記ガイドパイプは、前記棒状バイブレータに回転可能に接続する請求項4又は5に記載のトンネル覆工コンクリート打設構造。
【請求項7】
前記ガイドパイプの外周面に、螺旋状の突条が設けられている請求項6に記載のトンネル覆工コンクリート打設構造。
【請求項8】
前記ガイドパイプの外周面に、トンネル軸方向に対して傾斜した回転羽根が設けられている請求項6に記載のトンネル覆工コンクリート打設構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate