説明

トンネル覆工装置及び覆工コンクリート形成方法

【課題】経済的かつ簡単に覆工コンクリートのひび割れを少なくできるトンネル覆工装置などに関する。
【解決手段】トンネル空洞部2の内壁面3と対向するように設置されトンネル空洞部2の断面径方向の外側に位置してトンネルの覆工コンクリート14を形成するための型枠面となる外面9とトンネル空洞部2の断面径方向の内側に位置する内面10とを有したアーチ形状のセントル5を備えたトンネル覆工装置1において、セントル5の内面10に、断熱塗料により形成された断熱層7を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経済的かつ簡単に覆工コンクリートのひび割れを少なくできるトンネル覆工装置及び覆工コンクリート形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの覆工コンクリートを形成する際、コンクリートの養生中にコンクリートが温度の低いセントルと触れて覆工コンクリートにひび割れが生じることを防止するため、セントルをバルーンで覆い、バルーン内に温風を入れて暖めることが知られている(特許文献1など参照)。即ち、セントルは鋼製のため、外気温に影響されやすく、冬期間のコンクリート養生中にコンクリート表面が冷却され、覆工コンクリートのひび割れの原因となる。この冷却の影響を防止するため、セントルをバルーン等で覆っているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−090146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記バルーンは高価であり、また、バルーンの設置作業及び解体作業も煩雑であるという問題点があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、経済的かつ簡単に外気温の影響を低減し、覆工コンクリートのひび割れを少なくできるトンネル覆工装置などに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るトンネル覆工装置は、トンネル空洞部の内壁面と対向するように設置されトンネル空洞部の断面径方向の外側に位置してトンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となる外面とトンネル空洞部の断面径方向の内側に位置する内面とを有したアーチ形状のセントルを備えたトンネル覆工装置において、セントルの内面に、断熱塗料により形成された断熱層を備えたので、断熱層を安価かつ簡単に形成できて、当該断熱層によりトンネル空洞部の冷気がセントルに伝達されにくくなり、当該セントルの外面とトンネル空洞部の内壁面との間のコンクリート打設空間に打設されたコンクリートがセントルによって冷却されるようなことを防止できるので、外気温の影響を低減し、覆工コンクリートのひび割れを少なくできる。
本発明に係る覆工コンクリート形成方法は、トンネル空洞部の断面径方向の外側に位置してトンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となる外面とトンネル空洞部の断面径方向の内側に位置する内面とを有したアーチ形状のセントルを用い、当該セントルの外面がトンネル空洞部の内壁面と対向するようにセントルを設置して、当該セントルの外面とトンネル空洞部の内壁面との間の空間により形成されたコンクリート打設空間内にコンクリートを打設することによりトンネルの覆工コンクリートを形成する覆工コンクリート形成方法において、コンクリート打設空間内にコンクリートを打設する前に、セントルの内面に断熱塗料を塗布して断熱層を形成したので、断熱層を安価かつ簡単に形成できて、当該断熱層によりトンネル空洞部の冷気がセントルに伝達されにくくなり、当該セントルの外面とトンネル空洞部の内壁面との間のコンクリート打設空間に打設されたコンクリートがセントルによって冷却されるようなことを防止できるので、外気温の影響を低減し、覆工コンクリートのひび割れを少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】トンネル空洞部内部に設置されたトンネル覆工装置を示す断面図。
【図2】トンネル覆工装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態によるトンネル覆工装置1は、トンネル空洞部2の内壁面3に覆工コンクリート14を形成するための装置である。ここで、トンネル空洞部2の内壁面3とは、例えば、図外の掘削装置によって地山15を掘削して形成された掘削孔の内壁面、あるいは、当該掘削孔の内壁面に支保工及び防水加工を行った後の内壁面のことを言う。支保工は、例えば、圧縮空気を用いて掘削孔の内壁面に吹付けた吹付けコンクリート及びロックボルトなどを用いたNATM工法による支保工、あるいは、鋼材支保材及び矢板などを用いた矢板工法による支保工のことを言う。
【0008】
図1;図2に示すように、トンネル覆工装置1は、トンネル空洞部2を走行可能に構成された架構部4と、セントル5と、セントル支持部6と、セントル5の内面10に設けられた断熱層7とを備える。
【0009】
架構部4は下端に車輪11を備え、この車輪11がトンネル空洞部2の延長方向に沿ってトンネル空洞部2の地面12に設置されたレール13上に滑走可能に設けられたことで、架構部4は図外の駆動手段または牽引手段によってトンネル空洞部2内をトンネル空洞部2の延長方向に沿って往復移動可能である。
【0010】
セントル5は、上述したトンネル空洞部2の内壁面3と対向するように設置されて当該内壁面3に覆工コンクリート14を形成するための型枠である。セントル5は、鋼板により形成され、トンネル空洞部2の延長方向に沿った方向の長さが例えば10.5mに形成され、トンネル空洞部2の延長方向と直交する断面形状がアーチ形状に形成される。セントル5は、トンネル空洞部2の断面径方向の外側に位置して覆工コンクリート14を形成するための型枠面となる外面9と、トンネル空洞部2の断面径方向の内側に位置する内面10とを有し、当該セントル5の内面10に断熱層7が設けられる。即ち、セントル5において、外面9よりもトンネル空洞部2の横断面(トンネル空洞部2の延長方向と直交する断面)の中心に近い内面10が断熱層形成面となる。トンネル空洞部2の内壁面3とセントル5の外面9(型枠面)との間に形成される空間によりコンクリート打設空間21が形成される。セントル5は、1枚の鋼板により形成されたり、あるいは、図1に示すように複数枚の鋼板により形成される。
【0011】
セントル5は、複数の窓孔22を備える。窓孔22は、セントル5の内面10と外面9とに跨って貫通する貫通孔23により形成される。窓孔22は図外のヒンジにより開閉する開閉蓋24で開閉可能に構成される。当該開閉蓋24を開け、図外のコンクリート圧送管でセントル5の内側からコンクリート打設空間21にコンクリートを打設することで、トンネル空洞部2の内壁面3に覆工コンクリート14が形成される。
【0012】
セントル支持部6は、トンネル空洞部2の内壁面3に沿って対向するようにセントル5を支持するものであり、セントル5が複数枚の鋼板で形成されている場合には、図1に示すように鋼板をトンネル空洞部2の径方向に移動可能に支持するジャッキなどにより形成され、セントルが1枚の鋼板で形成されている場合には、当該鋼板を支持する図外の支持棒などにより形成される。セントル支持部6は、一端部25が架構部4に固定され、他端部26がセントル5の内面10に固定される。よって、トンネル覆工装置1は、セントル5がセントル支持部6を介して架構部4に支持されて、架構部4がトンネル空洞部2内を往復移動することで、セントル5がトンネル空洞部2内をトンネル空洞部2の延長方向に沿って往復移動可能となるように構成される。
【0013】
断熱層7は、セントル5の内面10の全面に、不燃性、不透水性を有した断熱塗料(例えば、株式会社日進産業製、商品名「GAINA(ガイナ)」)を塗布することにより形成される。
セントル5の内面10に断熱層7を形成する際は、セントル5の内面に下地処理剤(シーラー、プライマー)などを用いてから塗布することが望ましい。
【0014】
次にトンネル施工方法を説明する。尚、ここでは、NATM工法によるトンネル施工方法を説明する。まず、図外の削岩機などの掘削装置によって地山15を掘削し、掘削後の掘削孔の内壁面3にコンクリートを吹付けて吹付けコンクリート層を形成する(一次覆工)。一次覆工が終わったら、掘削孔(トンネル空洞部2)の内側から吹付けコンクリート層及び地山15に孔を開けて孔内にロックボルトを打ち込む。その後、吹付けコンクリート層の表面に防水加工を施す(例えば、防水シートを敷設する)。そして、防水加工を行った後のトンネル空洞部2の内壁面3と対向するようにセントル5を設置する。そして、トンネル空洞部2の内壁面3とセントル5の外面9との間のコンクリート打設空間21にコンクリートを打設する。尚、コンクリート打設空間21にコンクリートを打設する前に、セントル5の内面10に断熱層7を形成しておく。よって、冬期の打設において、断熱層7によりトンネル空洞部2の冷気がセントル5に伝達されにくくなり、コンクリート打設空間21に打設されたコンクリートがセントル5によって急激に冷却されるようなことを防止できるので、覆工コンクリート14のひび割れを少なくできる。
【0015】
実施形態によれば、断熱層7は、セントル5の内面10に断熱塗料を塗布するだけなので、安価かつ簡単に形成できる。よって、安価かつ簡単な当該断熱層7によりトンネル空洞部2の冷気がセントル5に伝達されにくくなり、当該セントル5の外面9とトンネル空洞部2の内壁面3との間のコンクリート打設空間21に打設されたコンクリートがセントル5によって冷却されるようなことを防止できるので、外気温の影響を低減し、覆工コンクリート14のひび割れを少なくできる。
【0016】
尚、断熱層7は、セントル5の内面10に断熱性能を有した発泡ウレタンを取り付けることにより形成してもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 トンネル覆工装置、2 トンネル空洞部、3 内壁面、5 セントル、
7 断熱層、9 外面、10 内面、14 覆工コンクリート、
21 コンクリート打設空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル空洞部の内壁面と対向するように設置されトンネル空洞部の断面径方向の外側に位置してトンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となる外面とトンネル空洞部の断面径方向の内側に位置する内面とを有したアーチ形状のセントルを備えたトンネル覆工装置において、セントルの内面に、断熱塗料により形成された断熱層を備えたことを特徴とするトンネル覆工装置。
【請求項2】
トンネル空洞部の断面径方向の外側に位置してトンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となる外面とトンネル空洞部の断面径方向の内側に位置する内面とを有したアーチ形状のセントルを用い、当該セントルの外面がトンネル空洞部の内壁面と対向するようにセントルを設置して、当該セントルの外面とトンネル空洞部の内壁面との間の空間により形成されたコンクリート打設空間内にコンクリートを打設することによりトンネルの覆工コンクリートを形成する覆工コンクリート形成方法において、コンクリート打設空間内にコンクリートを打設する前に、セントルの内面に断熱塗料を塗布して断熱層を形成したことを特徴とする覆工コンクリート形成方法。

【図1】
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【図2】
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