トンネル防水構造およびその施工方法
【課題】例えばウォータータイトトンネル等のトンネル防水構造およびその施工方法に係り、高性能が求められるウォータータイトトンネルにあっても充分に防水性能を維持することができる耐久性および信頼性のよいトンネル防水構造および施工方法を提供する。
【解決手段】掘削したトンネルTの地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に、防水シート等よりなる防水層と二次覆工5とを設けたトンネル防水構造において、地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材2を介して第1の防水層としての防水シート3を敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工5との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材6を防水シートの内面側に一体的に設け、その区画仕切材6で仕切られた区画領域毎に防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層4を、防水シート3と二次覆工5とに、それぞれ密着させた状態で一体的に設けたことを特徴とする。
【解決手段】掘削したトンネルTの地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に、防水シート等よりなる防水層と二次覆工5とを設けたトンネル防水構造において、地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材2を介して第1の防水層としての防水シート3を敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工5との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材6を防水シートの内面側に一体的に設け、その区画仕切材6で仕切られた区画領域毎に防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層4を、防水シート3と二次覆工5とに、それぞれ密着させた状態で一体的に設けたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばウォータータイトトンネル等のトンネル防水構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウォータータイトトンネル等のトンネル防水構造としては、例えば図17に示すように、掘削したトンネルTの地山Gの内面もしくは該地山内面に形成した吹付コンクリート等よりなる一次覆工1の内面に、緩衝材2を介して防止層としての防水シート3を敷設し、その防水シートの内側に二次覆工5を設けた構成である。
【0003】
上記緩衝材2と防水シート3とは、例えば図18(a)に示すように予め所定の大きさ形状に形成したものを、それぞれ順次接ぎ合わせながら地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に敷設するのが一般的であり、隣り合う緩衝材2は図18(c)のように互いに端部2a・2a同士を重ね合わせてコンクリート釘10等で地山内面もしくは一次覆工1の内面に固定し、隣り合う防水シート3の端部は互いに重ね合わせて溶着等で連結する。
【0004】
また上記緩衝材2は、例えば図18(b)のように、所要箇所を合成樹脂製のシート固定用ディスク11とコンクリート釘10とで地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に固定し、上記ディスク11に、それに隣接する防水シート3の背面を溶着することによって、上記防水シート3を緩衝材2の内側に配置固定する。
【0005】
そして、上記防水シート3の内面側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工5を形成するものであるが、そのとき、上記防水シート3は通常合成ゴムや合成樹脂等で形成されているので、その内側に二次覆工5を形成する際に、往々にして二次覆工5内に埋設される補強鉄筋や作業機械等が上記防水シートに接触して損傷したり破損する等のおそれがある。
【0006】
そこで、例えば下記特許文献1においては、上記のような防水シート3として二次覆工5を形成するコンクリートと接着性を有するものを用いることによって、万一防水シートに破損が生じても、それと同一位置で二次覆工にひび割れ等が発生しない限り漏水しないようにしたものが提案されている。しかし、トンネルの天頂部は常にコンクリートの完全充填が難しく1mmの隙間もなく埋めることは極めて困難で、この種のコンクリート接着性の防水シートを用いても実施工上は、二次覆工との間に非接着の隙間はある、と想定しなければならないが、上記のようなトンネル、特に図17に示すようなウォータータイトトンネルでは、トンネルTの全周に大きな水圧が掛かるため、万一トンネル天頂部位置のシートに小さな傷があった場合には水が簡単に浸入し、防水シートと二次覆工の非接着隙間を介して二次覆工コンクリートのヘアクラックや打継ぎ目位置にまで回り、そこから漏水するおそれがある。
【0007】
また本出願人は先に下記特許文献2に記載のように、万一漏水が生じても防水層と二次覆工との間に後から止水材を注入できるように止水材注入手段を設けることを提案した。しかし、その止水材注入手段によって、漏水が発生したときには補修が可能となるが、実際に水が漏るまでは特許文献1と同様に防水シート背面側から水圧がかかっている状態が続いているため、漏水が発生して補修をしたときには防水シートの破損が拡大していることが予想される。また防止シートは敷設後、鉄筋付設作業や二次覆工の形成作業が行なわれるため、防水シートに少なからず傷が付くことは避けられず、しかも二次覆工の形成作業が終了すれば防水シートに傷があるか否かを確認することはできない。
【0008】
さらに下記特許文献3には、破損の可能性の避けられないシート防水ではなく、スプレーされた防水膜によって防水層を形成することが提案されているが、上記の防水膜を施工する際に、スプレーの厚さを一定にするのは極めて難しく、往々にして薄い部分が生じてその部分が弱くなる。そのため、特にウォータータイトトンネルではこの薄い部分に大きな水圧がかかると破損するおそれがある。
【0009】
【特許文献1】特開2001−355398号公報
【特許文献2】特開2006−188918号公報
【特許文献3】特表2002−521595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、ウォータータイトトンネルにあっても充分に防水性能を維持することができる耐久性および信頼性のよいトンネル防水構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明は以下の構成としたものである。即ち、本発明によるトンネル防水構造は、掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面に、防水シート等よりなる防水層と二次覆工とを設けたトンネル防水構造において、上記の地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材を上記防水シートの内面側に一体的に設け、その区画仕切材で仕切られた区画領域毎に上記防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に設けたことを特徴とする。
【0012】
また本発明によるトンネル防水構造の施工方法は、上記のようなトンネル防水構造を施工するに当たり、掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材を上記防水シートの内面側に予め一体的に固着し、上記防水シートの内面側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工を形成した後、上記区画仕切材で仕切られた区画領域毎に上記防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記のように本発明によるトンネル防水構造は、掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面と、二次覆工との間に、第1の防水層としての防水シートを敷設するだけでなく、その防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に設けたから、上記2つの防水層で、より確実に防水できると共に、上記いずれかの防水層に漏水等の不具合があっても防水状態を良好に維持することができる。しかも上記第2の防水層は、区画仕切材で仕切られた区画毎に形成されるので、万一いずれかの区画に形成した第2の防水層または第1の防水層としての防水シートに破損等による漏水等の不具合があっても、それが他の区画領域にまで波及するのを防ぐことができる。
【0014】
また本発明によるトンネル防水構造の施工方法は、掘削したトンネルの地山内面もしくは該地山内面に形成した一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートの内面側に予め二次覆工を形成した後に、その防水シートと二次覆工との間に、樹脂を所定の圧力で加圧注入して第2の防水層を、防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に形成するようにしたから、上記樹脂の圧力で上記緩衝材が厚さ方向に収縮しながら上記防水シートと二次覆工との間に所定厚さの第2の防水層を容易に形成することが可能となり、水密性および防水性能の優れたトンネル防水構造を容易・安価に施工することができる。
【0015】
しかも、上記第2の防水層を形成するための樹脂を防水シートと二次覆工との間に注入する際には、上記防水シートによって樹脂が地山側に流出して地山クラックに浸入したり、一次覆工表面に沿って広範囲に広がって流失するのを防ぐことができると共に、万一防水シートに傷や破損等があった場合には、それらを上記の樹脂で修復することができる。また上記第1および第2の防水層は、それぞれほぼ均一な厚さが確保できる特質と、隙間充填性に優れる現場注入樹脂の特質を活かして第2の防水層を形成することに加えて、樹脂の加圧注入によって緩衝材を押し潰すことにより、第1の防水層としての防水シートの内外の隙間をなくし、外側は地山または一次覆工内面に、内側は二次覆工にそれぞれしっかりと密着した状態に保持することができる。
【0016】
さらに上記緩衝材は、通常の排水型トンネルでは、地山の水を防水シート背面に沿って下方に導水し、排水管に水を集めるために透水性を持たせる必要があり、一方、ウォータータイト型トンネルでは、第1に水圧の問題を考慮して二次覆工背面の空隙をなるべく無くすことを優先させる必要があるが、本発明においては上記樹脂の注入圧力を調整することによって、通常の排水型トンネルでは上記緩衝材を適度に圧縮させて透水性を維持させたり、ウォータータイト型トンネルでは上記緩衝材を充分に押し潰して空隙を無くし、それによって止水性能を向上させることもできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をウォータータイトトンネルに適用した図の実施形態に基づいて具体的に説明する。図1は本発明によるトンネル防水構造を施工したウォータータイトトンネルの横断正面図、図2はその一部の拡大図である。
【0018】
本実施形態のウォータータイトトンネルは、掘削したトンネルTの地山Gの内面、もしくはその地山内面に形成した吹付コンクリート等よりなる一次覆工1の内面に、不織布や網状体等の透水性材料よりなる緩衝材2と、その内側に第1の防水層としての防水シート3をトンネル周方向およびトンネル軸線方向のほぼ全長に亘って設け、その防水シート3と、その内側に覆工コンクリートを打設して形成される二次覆工5との間に、樹脂を注入して形成される第2の防水層4を設けたものである。なお、上記の一次覆工1を省略して上記地山Gの内面に直接緩衝材2を介して防水シート3を設けることもある。
【0019】
上記緩衝材2と防水シート3の材質や施工方法は適宜であるが、例えば緩衝材2の材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン等の合成繊維よりなる不織布であって単位面積当たりの重量が300〜500g/m2程度のものを用いることができる。また防水シート3の材質としては、例えば厚さ2mm程度のポリエチレン等の合成樹脂や合成ゴム等よりなるシート材を用いることができる。
【0020】
上記緩衝材2と防水シート3とは、前記従来例と同様に、予め所定の大きさ・形状に形成したものを、それぞれ順次接ぎ合わせながら地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に敷設すればよく、図3(a)は上記第2の防水層4を形成する前の状態、(b)は第2の防水層4を形成した後の状態を示し、同図(c)〜(f)はそれぞれ(a)および(b)におけるc〜f部の部分拡大図である。
【0021】
隣り合う緩衝材2は図3(d)および(f)のように互いに端部2a・2a同士を重ね合わせてコンクリート釘10等で地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に固定し、隣り合う防水シート3の端部は同図(d)および(f)のように互いに重ね合わせて溶着等で連結すればよい。特に図の場合は隣り合う防水シート3の端部3a・3aを互いに重ね合わせた状態で、その重ね合わせ部に沿って上記両者を2本の平行な線状に溶着し、その2つの線状の溶着部間に検査用の未溶着部を設けたものである。
【0022】
また上記緩衝材2は、前記従来例と同様に所要箇所を図3(c)および(e)のように合成樹脂製のシート固定用ディスク11とコンクリート釘10とで地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に固定し、上記ディスク11に、それに隣接する防水シート3の背面を溶着することによって、上記防水シート3を緩衝材2の内側に配置固定したものである。
【0023】
上記のようにしてトンネルTの地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に緩衝材2を介して敷設した第1の防水層としての防水シート3の内面側には、前記のように樹脂を注入して形成される第2の防水層4と、二次覆工5とを順に設けるもので、それらの形成手順や形成方法等は適宜であるが、上記防水シート3の内側に二次覆工5を形成した後、その二次覆工5と上記防水シート3との間に、樹脂を所定の圧力で加圧注入して上記第2の防水層4を形成すると、ほぼ一定厚さの防水層4を、上記防水シート3と二次覆工5との間に、それらと良好に密着した状態で容易に一体的に形成することができる。
【0024】
また本発明では上記二次覆工5を形成する際には、上記防水シート3と二次覆工5との間の境界部を複数個の区画領域に仕切らなければならない。これを行なう区画仕切材6は例えば上記防水シート3の内面に一体的に設けると共に、その区画仕切材6で仕切られた区画領域毎に上記境界部内に樹脂を注入するための樹脂注入手段7を上記防水シート3の内面に予め配置しておくのが望ましい。
【0025】
図4はその一実施形態を示すウォータータイトトンネルの斜視図、図5はその縦断側面図、図6は図5のA部の拡大図であり、同図(a)は防水シートと二次覆工との間に第2の防水層を形成する前の状態、同図(b)は第2の防水層を形成した後の状態を示す。また図7(a)は図5のB部の拡大図、同図(b)は(a)のb−b断面図である。なお、上記図4、図5および図7においては、上記区画仕切材6や樹脂注入手段7の配置構成を分かり易くするために二次覆工5を仮想線(二点鎖線)で表している。
【0026】
前記の区画仕切材6として本実施形態においては図4〜図6および図8に示すように二次覆工5側に突出し且つトンネル周方向延びる複数本(図の場合は6本)の突条6aを有する平帯状の区画仕切材6を、防水シート3の内面に溶着等によって一体的に設けたもので、その区画仕切材6は図の場合はトンネル周方向にほぼ全長にわたって設けられ、その区画仕切材6および上記各突条6aはトンネル周方向にリング状に連続するように設けられている。
【0027】
また上記区画仕切材6のトンネル軸線方向の配置位置、すなわち前記区画領域の仕切り位置は、その内面側に二次覆工5を施工した後も、その配置位置がトンネル内から容易に認識できるように、所定の施工スパンS毎に施工される二次覆工5の打継目位置に対応して設けるとよく、本実施形態においては図6に示すように区画仕切材6の幅方向(図6で左右方向)のほぼ中央部に、二次覆工5の打継目Jが位置するようにしたものである。
【0028】
上記のようにして第1の防水層としての防水シート3の内面側に、トンネル周方向に延びる区画仕切材6を、トンネル軸線方向に所定の間隔(本実施形態においては、二次覆工の施工スパンSと等しい間隔)をおいて設けることによって、上記防水シート3と、その内面側に施工される二次覆工5との間の境界部がトンネル軸線方向に所定長さを有する複数の区画領域に仕切られている。
【0029】
上記区画仕切材6の隣り合う突条6a・6a間には、二次覆工5を形成するための覆工コンクリートを打設した際に、上記突条6a・6a間がエア溜りとなって上記コンクリートが未充填となるのを防ぐために、例えば図6に示すように排気ホース61と注入ホース62とを、上記突条6aの長手方向に沿って配置しておくとよい。そして、未充填箇所が生じた場合には、上記注入ホース62からモルタル又はセメントミルク等を注入しながら上記排気ホース61から残留する空気を排出させれば、上記未充填箇所にコンクリート等を簡単確実に充填することができる。
【0030】
なお、上記排気ホース61と注入ホース62のうち、少なくともいずれか一方または両方の代わりに図9に示すような排気注入ホース20を用いてもよい。その排気注入ホース20は、図に示すように、周面に多数の貫通小孔21aを有する有孔管21の外周面にメッシュや布等よりなる編組管を被覆したもので、図の場合は編み方や編組密度等の異なる2種類の編組管22・23が被覆され、二次覆工用のコンクリートを打設する際のコンクリートのノロが入り込まないような構造となっている。
【0031】
また前述のように区画仕切材6で仕切られた区画領域毎に上記防水シート3と二次覆工5との間の境界部に樹脂を注入するための樹脂注入手段7を、上記防水シート3の内面側に設置しておくとよく、その樹脂注入手段7として本実施形態においては、図4、図5および図7に示すように周面に多数の貫通小孔を有する通液性のインジェクションチューブ71と、そのインジェクションチューブ71に、その一端側から樹脂を供給する樹脂注入ホース72とを用いたものである。
【0032】
そのインジェクションチューブ71としては、周面に形成した貫通小孔を介してウレタン系等よりなる樹脂が流通可能で、かつ二次覆工用コンクリートのノロが周面の貫通小孔を塞いで目詰まりを起こすことがない目詰まり防止構造を有するものが望ましく、例えば前記図9に示すような排気注入ホース20を使用することもできる。また樹脂注入ホース72は、上記インジェクションチューブ71にウレタン系等よりなる樹脂を供給し得るものであれば材質等は適宜である。
【0033】
上記インジェクションチューブ71と樹脂注入ホース72とからなる樹脂注入手段7は、本実施形態においては図4および図5に示すように前記各スパンS毎の区画領域内に複数本ずつ設けたもので、その各樹脂注入手段7のインジェクションチューブ71は、図示例においてはその長手方向がトンネル軸線方向とほぼ平行になるように配置され、その各インジェクションチューブ71の長手方向複数箇所を図7に示すように固定用バンド73で防水シート3の内面に取付けた構成であり、その各固定用バンド73は上記防水シート3の内面に溶着等によって固定されている。また上記の樹脂注入ホース72は、その一端を上記インジェクションチューブ71に連通保持させると共に、他端は二次覆工5を施工した後も、その内方に露出(突出)するように長く形成されている。なお、インジェクションチューブ71の配置方向は任意であり、例えば、トンネル周方向に沿って延びるような向きで配置しても構わない。
【0034】
上記ように構成されたトンネル防水構造を施工するに当たっては、所定長さずつ掘削したトンネルTの地山Gの内面、もしくは該地山内面に形成した吹付コンクリート等よりなる一次覆工1の内面に、不織布等よりなる緩衝材2を介して第1の防水層としての防水シート3を敷設し、その防水シート3の内側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工5を形成する。次いで、上記二次覆工5と上記防水シート3との間に、上記各樹脂注入手段7の樹脂注入ホース72からインジェクションチューブ71を介して樹脂を所定の圧力で加圧注入して第2の防水層4を、上記防水シート3と二次覆工5との間に形成するものである。
【0035】
上記第2の防水層4を形成する樹脂の材質は適宜であるが、例えばポリエーテルポリオールからなるA液とイソシアネートからなるB液を所定の重量比で混合したウレタン系の樹脂を用いることができる。特に、混合粘度が常温(23℃)で80±30mPa・s程度の低粘度で高流動性のものが望ましい。また上記樹脂の注入および充填作業に支障を来すことがないように、可使時間が比較的長いもの、例えば60分程度のものが望ましい。なお、本願に用いる樹脂は、硬化した後の止水性や圧送可能であることに加えて、混合状態における低粘度、高流動による微細な隙間への浸透性、作業時間を上回る十分な可使時間、硬化後の柔軟性と弾力性という条件を達成し得るものであれば、上記以外にも例えばアクリル樹脂やエポキシ樹脂等を用いることもできる。
【0036】
上記のように本発明によるトンネル防水構造は、掘削したトンネルTの地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材2と第1の防水層としての防水シート3とを敷設すると共に、その防水シート3の内側の二次覆工5との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層4を設けたから、上記2つの防水層3・4によってトンネルTを、より確実に防水できると共に、上記いずれかの防水層に漏水等の不具合があっても防水状態を良好に維持することができる。しかも上記第2の防水層4は、区画仕切材6で仕切られた区画領域毎(上記実施形態においては二次覆工5の施工スパンS毎)に形成されるので、万一いずれかの区画領域に形成した第1の防水層としての防水シート3または第2の防水層4に漏水等の不具合があっても、その不具合が他の区画にまで波及するのを防ぐことができる。
【0037】
また上記のようなトンネル防水構造を施工する際に、上記地山内面もしくは一次覆工内面に、第1の防水層としての防水シート3を形成した後、その内面側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工5を形成し、その二次覆工5と上記防水シート3との間に、ウレタン等の樹脂を所定の圧力で加圧注入して第2の防水層4を形成すると、上記樹脂の圧力で上記緩衝材2が厚さ方向に収縮しながら上記防水シート3と二次覆工5との間にほぼ一定厚さの第2の防水層4を容易に形成することができると共に、上記第2の防水層4は上記防水シート3の内面と、二次覆工5の背面(外面)とに良好に密着した状態で一体的に固着され、水密性および防止性能に優れたトンネル防水構造を容易・安価に施工することができる。
【0038】
しかも、上記第2の防水層4を形成するための樹脂を防水シート3と二次覆工5との間に注入する際には、区画仕切材6で仕切られた区画領域毎に注入するため樹脂が広範に流れすぎてムラになって非充填箇所が残る懸念がなく、また、防水シート3と二次覆工5との間のすでに閉塞形成された空間に注入を施す形となるため樹脂が地山側に流出して地山クラックに浸入したり、一次覆工1の表面に沿って広範囲に広がって流失するのを防ぐことができる。さらに万一上記防水シート3に傷や破損等があった場合には、それらを上記の樹脂で修復することができる。
【0039】
上記のようにして第1の防水層としての防水シート3と、第2の防水層4とは、それぞれほぼ均一な厚さが確保できる特質と、隙間充填性に優れる現場注入樹脂の特質を活かして第2の防水層4を形成することができるが、この際、樹脂の加圧注入によって緩衝材2を部分的に押し潰すことになったとしても、緩衝材2として十分な厚さと弾性を有するものを用いておけば、押し潰されることによって、上記防水シート3の内外の隙間をなくし、外側は地山Gまたは一次覆工1の内面に、内側は二次覆工5の背面にそれぞれしっかりと密着した状態で一体的に固着することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、インジェクションチューブ71の一端側にのみ樹脂注入ホース72を設けたが、インジェクションチューブ71の両端に樹脂注入ホース72を接続してもよく、その場合にも各樹脂注入ホース72のインジェクションチューブ71と反対側の端部は二次覆工5を施工した後も、その内方に露出させるようにする。
【0041】
図10〜図12は上記のような変更例の一実施形態を示すもので、上記樹脂注入手段7として、前記と同様に構成されたインジェクションチューブ71の両端部に樹脂注入ホース72の一端を接続し、その各樹脂注入ホース72の他端を二次覆工5を施工した後も、その内方に露出するようにしたものである。上記インジェクションチューブ71は図12に示すように前記実施形態と同様に固定用バンド73で防水シート3の内面に取付けた構成であり、その各固定用バンド73は上記防水シート3の内面に溶着等によって固定されている。上記インジェクションチューブ71は前記スパンSの長さよりもやや短く形成され、各スパンS毎の区画領域内においてトンネル軸線方向とほぼ平行な方向に配置した状態でトンネル周方向に所定の間隔をおいて複数本ずつ設けられている。
【0042】
なお、上記図10および図11においては、上記の樹脂注入手段7や区画仕切材6等の配置構成を分かり易くするために前記図4および図5と同様に二次覆工5を仮想線(二点鎖線)で表している。また図12(a)は一次覆工1の内面に敷設した防水シート3と二次覆工5との間に第2の防水層4を形成する前の状態、同図(b)は第2の防水層4を形成した後の状態を示す。
【0043】
上記のように樹脂注入手段7としてインジェクションチューブ71の両端部に樹脂注入ホース72を接続し、若しくは上記両端部の樹脂注入ホース72・72をも含めた樹脂注入手段7の全長をインジェクションチューブ71で構成して、それらの樹脂注入手段7の両端部が二次覆工5を貫通してトンネル空間内に露出するようにしておけば、その一端側から樹脂を注入して他端側から溢れ出るまで注入することで、より完全な樹脂注入と、その状況確認を容易に行うことが可能となる。なお、万一、上記他端側への樹脂の溢れ出しがない場合には、上記他端側からも樹脂を注入することができる。他の構成は前記の実施形態と同様であり、同様の作用効果が得られる。
【0044】
さらに上記各実施形態は、樹脂注入手段7としてインジェクションチューブ71を用いたが、その代わりにグラウトディスクを用いることもできる。図13〜図16はその一実施形態を示すもので、前記各実施形態と同様に防水シート3の内面側に、樹脂注入手段7として円盤状のグラウトディスク75と、そのグラウトディスク75に樹脂を供給するための樹脂注入ホース76とを設けたものである。特に図の場合は上記グラウトディスク75と樹脂注入ホース76とからなる樹脂注入手段7を前記各スパンS毎の区画領域内に複数個ずつ設けたもので、その各グラウトディスク75は、その周囲に前記のような樹脂を吐出自在な形で所定の間隔をおいて前記防水シート3の内面に固着したものである。
【0045】
上記各グラウトディスク75の構成および防水シート3への取付方法は適宜であるが、図16(a)および(b)は平面略円形の中実肉厚なディスク本体75aの周縁に、それと一体的にフランジ部75bを設け、そのフランジ部75bの防水シート3側の周方向複数箇所に上記防水シート3との溶着部75cを設けると共に、その周方向に隣り合う溶着部75c・75c間に非溶着部75dを設けたものである。図中、75eは上記グラウトディスク本体75a内に形成した樹脂流通用の通路である。
【0046】
前記各グラウトディスク75を上記のような構成にすると、防水シート3よりも変形しにくいように中実状をなすグラウトディスク本体75aで、トンネルTの地山内面もしくは一次覆工1の内面に敷設した柔軟な防水シート3が波打っているところに、変形しにくいディスク75の周縁フランジ部75bを部分的に溶着することによって非溶着部75dを防水シート3に対して浮かせ、樹脂が吐出自在な状態とすることができる。
【0047】
上記各グラウトディスク75は、上記以外にも変更可能であり、例えば図16(c)に示すように扁平な伏せ鉢状に形成したディスク本体75aの周縁部に上記と同様のフランジ部75bを一体的に設け、そのフランジ部75bの防水シート3側の周方向複数箇所を上記と同様に防水シート3に溶着して、その周方向に隣り合う溶着部75c・75c間の非溶着部75dから樹脂を吐出させるようにしてもよい。
【0048】
上記のように構成した各グラウトディスク75には、そのディスク本体75a内に連通するようにして前記の樹脂注入ホース76が一体的に設けられ、その注入ホース76のディスク75と反対側の端部は二次覆工5を貫通してトンネル空間内に露出させるもので、その注入ホース76は上記グラウトディスク75内への樹脂の注入口を二次覆工5の内面側に突出させるだけの短いものでよい。
【0049】
以上のように構成したグラウトディスク75と注入ホース76とからなる樹脂注入手段7を用いることによって、前記実施形態と同様の要領で防水シート3と二次覆工5との間に樹脂を注入して第2の防水層4を形成することができるもので、前記とほぼ同様の作用効果が得られる。特に上記実施形態のグラウトディスク75は前記インジェクションチューブ71のように特殊な構造でなくてもよいので構造が簡単で潰れなどが生じるおそれも少なく、容易・安価に製作することができる。他の構成は前記実施形態と同様であり、同様の作用効果が得られる。
【0050】
なお、上記各実施形態は区画仕切材6を、その長手方向がトンネル周方向になるようにしてトンネル軸線方向に所定の間隔、図の場合は二次覆工の施工スパンSと同じ間隔をおいて複数個の区画領域を形成するようにしたが、上記の間隔は適宜であり、また上記の区画仕切材6をトンネル軸線方向と平行な方向に設けてトンネル周方向に複数個の区画領域を形成するようにしてもよい。或いは上記区画仕切材6をトンネル周方向および軸線方向と平行な方向に設けてトンネル軸線方向および周方向にそれぞれ複数個の区画領域を形成するようにしてもよい。
【0051】
また上記実施形態はトンネル全周に防水層を設けるウォータータイト型トンネルに適用した例を示したが、例えばトンネルのインバート部を除くアーチ部にのみ防水層を設けるタイプのトンネルにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように本発明によるトンネル防水構造およびその施工方法は、トンネルTの地山内面もしくは一次覆工1の内面に、緩衝材2を介して第1の防水層としての防水シート3を敷設すると共に、その内側に形成される二次覆工5との間に、樹脂を注入して形成される第2の防水層4を設けるようにしたから、防水性能およびその信頼性、耐久性のよいトンネル防水構造を容易・安価に施工することが可能となり、各種のトンネルの防水構造およびその施工方法として有効であり、産業上も良好に利用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明によるトンネル防水構造を施工したウォータータイトトンネルの横断正面図。
【図2】上記ウォータータイトトンネルの縦断側面図。
【図3】(a)は第2の防水層を形成する前のウォータータイトトンネルの一部の拡大縦断側面図、(b)は第2の防水層を形成した後の状態の同上図、(c)〜(f)はそれぞれ(a)および(b)におけるc〜f部の部分拡大図。
【図4】区画仕切材および樹脂注入手段の配置例を示す一実施形態のウォータータイトトンネルの斜視図。
【図5】上記ウォータータイトトンネルの縦断側面図。
【図6】(a)は第2の防水層を形成する前の図5におけるA部の拡大縦断側面図、(b)は第2の防水層を形成した後の同上図。
【図7】(a)は図5におけるB部の拡大縦断側面図、(b)は(a)におけるb−b断面図。
【図8】区画仕切材の一例を示す斜視図。
【図9】排気注入ホースの一例を示す説明図。
【図10】区画仕切材および樹脂注入手段の配置例を示す他の実施形態のウォータータイトトンネルの斜視図。
【図11】上記ウォータータイトトンネルの縦断側面図。
【図12】(a)は第2の防水層を形成する前の図11におけるC部の拡大縦断側面図、(b)は第2の防水層を形成した後の状態の同上図。
【図13】区画仕切材および樹脂注入手段の配置例を示す他の実施形態のウォータータイトトンネルの斜視図。
【図14】上記ウォータータイトトンネルの縦断側面図。
【図15】図14におけるD部の拡大縦断側面図。
【図16】(a)は上記実施形態で用いた樹脂注入手段の平面図、(b)はその縦断側面図、(c)は変更例の縦断側面図。
【図17】従来のウォータータイトトンネル横断正面図。
【図18】(a)は上記従来ウォータータイトトンネルの一部の拡大縦断側面図、(b)および(c)は(a)におけるb部およびc部の部分拡大図。
【符号の説明】
【0054】
T トンネル
G 地山
1 一次覆工
2 緩衝材
3 防水シート(第1の防水層)
4 第2の防水層
5 二次覆工
6 区画仕切材
6a 突条
7 樹脂注入手段
71 インジェクションチューブ
72、76 樹脂注入ホース
73 固定用バンド
75 グラウトディスク
10 コンクリート釘
11 シート固定用ディスク
S 施工スパン
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばウォータータイトトンネル等のトンネル防水構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウォータータイトトンネル等のトンネル防水構造としては、例えば図17に示すように、掘削したトンネルTの地山Gの内面もしくは該地山内面に形成した吹付コンクリート等よりなる一次覆工1の内面に、緩衝材2を介して防止層としての防水シート3を敷設し、その防水シートの内側に二次覆工5を設けた構成である。
【0003】
上記緩衝材2と防水シート3とは、例えば図18(a)に示すように予め所定の大きさ形状に形成したものを、それぞれ順次接ぎ合わせながら地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に敷設するのが一般的であり、隣り合う緩衝材2は図18(c)のように互いに端部2a・2a同士を重ね合わせてコンクリート釘10等で地山内面もしくは一次覆工1の内面に固定し、隣り合う防水シート3の端部は互いに重ね合わせて溶着等で連結する。
【0004】
また上記緩衝材2は、例えば図18(b)のように、所要箇所を合成樹脂製のシート固定用ディスク11とコンクリート釘10とで地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に固定し、上記ディスク11に、それに隣接する防水シート3の背面を溶着することによって、上記防水シート3を緩衝材2の内側に配置固定する。
【0005】
そして、上記防水シート3の内面側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工5を形成するものであるが、そのとき、上記防水シート3は通常合成ゴムや合成樹脂等で形成されているので、その内側に二次覆工5を形成する際に、往々にして二次覆工5内に埋設される補強鉄筋や作業機械等が上記防水シートに接触して損傷したり破損する等のおそれがある。
【0006】
そこで、例えば下記特許文献1においては、上記のような防水シート3として二次覆工5を形成するコンクリートと接着性を有するものを用いることによって、万一防水シートに破損が生じても、それと同一位置で二次覆工にひび割れ等が発生しない限り漏水しないようにしたものが提案されている。しかし、トンネルの天頂部は常にコンクリートの完全充填が難しく1mmの隙間もなく埋めることは極めて困難で、この種のコンクリート接着性の防水シートを用いても実施工上は、二次覆工との間に非接着の隙間はある、と想定しなければならないが、上記のようなトンネル、特に図17に示すようなウォータータイトトンネルでは、トンネルTの全周に大きな水圧が掛かるため、万一トンネル天頂部位置のシートに小さな傷があった場合には水が簡単に浸入し、防水シートと二次覆工の非接着隙間を介して二次覆工コンクリートのヘアクラックや打継ぎ目位置にまで回り、そこから漏水するおそれがある。
【0007】
また本出願人は先に下記特許文献2に記載のように、万一漏水が生じても防水層と二次覆工との間に後から止水材を注入できるように止水材注入手段を設けることを提案した。しかし、その止水材注入手段によって、漏水が発生したときには補修が可能となるが、実際に水が漏るまでは特許文献1と同様に防水シート背面側から水圧がかかっている状態が続いているため、漏水が発生して補修をしたときには防水シートの破損が拡大していることが予想される。また防止シートは敷設後、鉄筋付設作業や二次覆工の形成作業が行なわれるため、防水シートに少なからず傷が付くことは避けられず、しかも二次覆工の形成作業が終了すれば防水シートに傷があるか否かを確認することはできない。
【0008】
さらに下記特許文献3には、破損の可能性の避けられないシート防水ではなく、スプレーされた防水膜によって防水層を形成することが提案されているが、上記の防水膜を施工する際に、スプレーの厚さを一定にするのは極めて難しく、往々にして薄い部分が生じてその部分が弱くなる。そのため、特にウォータータイトトンネルではこの薄い部分に大きな水圧がかかると破損するおそれがある。
【0009】
【特許文献1】特開2001−355398号公報
【特許文献2】特開2006−188918号公報
【特許文献3】特表2002−521595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、ウォータータイトトンネルにあっても充分に防水性能を維持することができる耐久性および信頼性のよいトンネル防水構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明は以下の構成としたものである。即ち、本発明によるトンネル防水構造は、掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面に、防水シート等よりなる防水層と二次覆工とを設けたトンネル防水構造において、上記の地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材を上記防水シートの内面側に一体的に設け、その区画仕切材で仕切られた区画領域毎に上記防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に設けたことを特徴とする。
【0012】
また本発明によるトンネル防水構造の施工方法は、上記のようなトンネル防水構造を施工するに当たり、掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材を上記防水シートの内面側に予め一体的に固着し、上記防水シートの内面側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工を形成した後、上記区画仕切材で仕切られた区画領域毎に上記防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記のように本発明によるトンネル防水構造は、掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面と、二次覆工との間に、第1の防水層としての防水シートを敷設するだけでなく、その防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に設けたから、上記2つの防水層で、より確実に防水できると共に、上記いずれかの防水層に漏水等の不具合があっても防水状態を良好に維持することができる。しかも上記第2の防水層は、区画仕切材で仕切られた区画毎に形成されるので、万一いずれかの区画に形成した第2の防水層または第1の防水層としての防水シートに破損等による漏水等の不具合があっても、それが他の区画領域にまで波及するのを防ぐことができる。
【0014】
また本発明によるトンネル防水構造の施工方法は、掘削したトンネルの地山内面もしくは該地山内面に形成した一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートの内面側に予め二次覆工を形成した後に、その防水シートと二次覆工との間に、樹脂を所定の圧力で加圧注入して第2の防水層を、防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に形成するようにしたから、上記樹脂の圧力で上記緩衝材が厚さ方向に収縮しながら上記防水シートと二次覆工との間に所定厚さの第2の防水層を容易に形成することが可能となり、水密性および防水性能の優れたトンネル防水構造を容易・安価に施工することができる。
【0015】
しかも、上記第2の防水層を形成するための樹脂を防水シートと二次覆工との間に注入する際には、上記防水シートによって樹脂が地山側に流出して地山クラックに浸入したり、一次覆工表面に沿って広範囲に広がって流失するのを防ぐことができると共に、万一防水シートに傷や破損等があった場合には、それらを上記の樹脂で修復することができる。また上記第1および第2の防水層は、それぞれほぼ均一な厚さが確保できる特質と、隙間充填性に優れる現場注入樹脂の特質を活かして第2の防水層を形成することに加えて、樹脂の加圧注入によって緩衝材を押し潰すことにより、第1の防水層としての防水シートの内外の隙間をなくし、外側は地山または一次覆工内面に、内側は二次覆工にそれぞれしっかりと密着した状態に保持することができる。
【0016】
さらに上記緩衝材は、通常の排水型トンネルでは、地山の水を防水シート背面に沿って下方に導水し、排水管に水を集めるために透水性を持たせる必要があり、一方、ウォータータイト型トンネルでは、第1に水圧の問題を考慮して二次覆工背面の空隙をなるべく無くすことを優先させる必要があるが、本発明においては上記樹脂の注入圧力を調整することによって、通常の排水型トンネルでは上記緩衝材を適度に圧縮させて透水性を維持させたり、ウォータータイト型トンネルでは上記緩衝材を充分に押し潰して空隙を無くし、それによって止水性能を向上させることもできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をウォータータイトトンネルに適用した図の実施形態に基づいて具体的に説明する。図1は本発明によるトンネル防水構造を施工したウォータータイトトンネルの横断正面図、図2はその一部の拡大図である。
【0018】
本実施形態のウォータータイトトンネルは、掘削したトンネルTの地山Gの内面、もしくはその地山内面に形成した吹付コンクリート等よりなる一次覆工1の内面に、不織布や網状体等の透水性材料よりなる緩衝材2と、その内側に第1の防水層としての防水シート3をトンネル周方向およびトンネル軸線方向のほぼ全長に亘って設け、その防水シート3と、その内側に覆工コンクリートを打設して形成される二次覆工5との間に、樹脂を注入して形成される第2の防水層4を設けたものである。なお、上記の一次覆工1を省略して上記地山Gの内面に直接緩衝材2を介して防水シート3を設けることもある。
【0019】
上記緩衝材2と防水シート3の材質や施工方法は適宜であるが、例えば緩衝材2の材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン等の合成繊維よりなる不織布であって単位面積当たりの重量が300〜500g/m2程度のものを用いることができる。また防水シート3の材質としては、例えば厚さ2mm程度のポリエチレン等の合成樹脂や合成ゴム等よりなるシート材を用いることができる。
【0020】
上記緩衝材2と防水シート3とは、前記従来例と同様に、予め所定の大きさ・形状に形成したものを、それぞれ順次接ぎ合わせながら地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に敷設すればよく、図3(a)は上記第2の防水層4を形成する前の状態、(b)は第2の防水層4を形成した後の状態を示し、同図(c)〜(f)はそれぞれ(a)および(b)におけるc〜f部の部分拡大図である。
【0021】
隣り合う緩衝材2は図3(d)および(f)のように互いに端部2a・2a同士を重ね合わせてコンクリート釘10等で地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に固定し、隣り合う防水シート3の端部は同図(d)および(f)のように互いに重ね合わせて溶着等で連結すればよい。特に図の場合は隣り合う防水シート3の端部3a・3aを互いに重ね合わせた状態で、その重ね合わせ部に沿って上記両者を2本の平行な線状に溶着し、その2つの線状の溶着部間に検査用の未溶着部を設けたものである。
【0022】
また上記緩衝材2は、前記従来例と同様に所要箇所を図3(c)および(e)のように合成樹脂製のシート固定用ディスク11とコンクリート釘10とで地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に固定し、上記ディスク11に、それに隣接する防水シート3の背面を溶着することによって、上記防水シート3を緩衝材2の内側に配置固定したものである。
【0023】
上記のようにしてトンネルTの地山Gの内面もしくは一次覆工1の内面に緩衝材2を介して敷設した第1の防水層としての防水シート3の内面側には、前記のように樹脂を注入して形成される第2の防水層4と、二次覆工5とを順に設けるもので、それらの形成手順や形成方法等は適宜であるが、上記防水シート3の内側に二次覆工5を形成した後、その二次覆工5と上記防水シート3との間に、樹脂を所定の圧力で加圧注入して上記第2の防水層4を形成すると、ほぼ一定厚さの防水層4を、上記防水シート3と二次覆工5との間に、それらと良好に密着した状態で容易に一体的に形成することができる。
【0024】
また本発明では上記二次覆工5を形成する際には、上記防水シート3と二次覆工5との間の境界部を複数個の区画領域に仕切らなければならない。これを行なう区画仕切材6は例えば上記防水シート3の内面に一体的に設けると共に、その区画仕切材6で仕切られた区画領域毎に上記境界部内に樹脂を注入するための樹脂注入手段7を上記防水シート3の内面に予め配置しておくのが望ましい。
【0025】
図4はその一実施形態を示すウォータータイトトンネルの斜視図、図5はその縦断側面図、図6は図5のA部の拡大図であり、同図(a)は防水シートと二次覆工との間に第2の防水層を形成する前の状態、同図(b)は第2の防水層を形成した後の状態を示す。また図7(a)は図5のB部の拡大図、同図(b)は(a)のb−b断面図である。なお、上記図4、図5および図7においては、上記区画仕切材6や樹脂注入手段7の配置構成を分かり易くするために二次覆工5を仮想線(二点鎖線)で表している。
【0026】
前記の区画仕切材6として本実施形態においては図4〜図6および図8に示すように二次覆工5側に突出し且つトンネル周方向延びる複数本(図の場合は6本)の突条6aを有する平帯状の区画仕切材6を、防水シート3の内面に溶着等によって一体的に設けたもので、その区画仕切材6は図の場合はトンネル周方向にほぼ全長にわたって設けられ、その区画仕切材6および上記各突条6aはトンネル周方向にリング状に連続するように設けられている。
【0027】
また上記区画仕切材6のトンネル軸線方向の配置位置、すなわち前記区画領域の仕切り位置は、その内面側に二次覆工5を施工した後も、その配置位置がトンネル内から容易に認識できるように、所定の施工スパンS毎に施工される二次覆工5の打継目位置に対応して設けるとよく、本実施形態においては図6に示すように区画仕切材6の幅方向(図6で左右方向)のほぼ中央部に、二次覆工5の打継目Jが位置するようにしたものである。
【0028】
上記のようにして第1の防水層としての防水シート3の内面側に、トンネル周方向に延びる区画仕切材6を、トンネル軸線方向に所定の間隔(本実施形態においては、二次覆工の施工スパンSと等しい間隔)をおいて設けることによって、上記防水シート3と、その内面側に施工される二次覆工5との間の境界部がトンネル軸線方向に所定長さを有する複数の区画領域に仕切られている。
【0029】
上記区画仕切材6の隣り合う突条6a・6a間には、二次覆工5を形成するための覆工コンクリートを打設した際に、上記突条6a・6a間がエア溜りとなって上記コンクリートが未充填となるのを防ぐために、例えば図6に示すように排気ホース61と注入ホース62とを、上記突条6aの長手方向に沿って配置しておくとよい。そして、未充填箇所が生じた場合には、上記注入ホース62からモルタル又はセメントミルク等を注入しながら上記排気ホース61から残留する空気を排出させれば、上記未充填箇所にコンクリート等を簡単確実に充填することができる。
【0030】
なお、上記排気ホース61と注入ホース62のうち、少なくともいずれか一方または両方の代わりに図9に示すような排気注入ホース20を用いてもよい。その排気注入ホース20は、図に示すように、周面に多数の貫通小孔21aを有する有孔管21の外周面にメッシュや布等よりなる編組管を被覆したもので、図の場合は編み方や編組密度等の異なる2種類の編組管22・23が被覆され、二次覆工用のコンクリートを打設する際のコンクリートのノロが入り込まないような構造となっている。
【0031】
また前述のように区画仕切材6で仕切られた区画領域毎に上記防水シート3と二次覆工5との間の境界部に樹脂を注入するための樹脂注入手段7を、上記防水シート3の内面側に設置しておくとよく、その樹脂注入手段7として本実施形態においては、図4、図5および図7に示すように周面に多数の貫通小孔を有する通液性のインジェクションチューブ71と、そのインジェクションチューブ71に、その一端側から樹脂を供給する樹脂注入ホース72とを用いたものである。
【0032】
そのインジェクションチューブ71としては、周面に形成した貫通小孔を介してウレタン系等よりなる樹脂が流通可能で、かつ二次覆工用コンクリートのノロが周面の貫通小孔を塞いで目詰まりを起こすことがない目詰まり防止構造を有するものが望ましく、例えば前記図9に示すような排気注入ホース20を使用することもできる。また樹脂注入ホース72は、上記インジェクションチューブ71にウレタン系等よりなる樹脂を供給し得るものであれば材質等は適宜である。
【0033】
上記インジェクションチューブ71と樹脂注入ホース72とからなる樹脂注入手段7は、本実施形態においては図4および図5に示すように前記各スパンS毎の区画領域内に複数本ずつ設けたもので、その各樹脂注入手段7のインジェクションチューブ71は、図示例においてはその長手方向がトンネル軸線方向とほぼ平行になるように配置され、その各インジェクションチューブ71の長手方向複数箇所を図7に示すように固定用バンド73で防水シート3の内面に取付けた構成であり、その各固定用バンド73は上記防水シート3の内面に溶着等によって固定されている。また上記の樹脂注入ホース72は、その一端を上記インジェクションチューブ71に連通保持させると共に、他端は二次覆工5を施工した後も、その内方に露出(突出)するように長く形成されている。なお、インジェクションチューブ71の配置方向は任意であり、例えば、トンネル周方向に沿って延びるような向きで配置しても構わない。
【0034】
上記ように構成されたトンネル防水構造を施工するに当たっては、所定長さずつ掘削したトンネルTの地山Gの内面、もしくは該地山内面に形成した吹付コンクリート等よりなる一次覆工1の内面に、不織布等よりなる緩衝材2を介して第1の防水層としての防水シート3を敷設し、その防水シート3の内側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工5を形成する。次いで、上記二次覆工5と上記防水シート3との間に、上記各樹脂注入手段7の樹脂注入ホース72からインジェクションチューブ71を介して樹脂を所定の圧力で加圧注入して第2の防水層4を、上記防水シート3と二次覆工5との間に形成するものである。
【0035】
上記第2の防水層4を形成する樹脂の材質は適宜であるが、例えばポリエーテルポリオールからなるA液とイソシアネートからなるB液を所定の重量比で混合したウレタン系の樹脂を用いることができる。特に、混合粘度が常温(23℃)で80±30mPa・s程度の低粘度で高流動性のものが望ましい。また上記樹脂の注入および充填作業に支障を来すことがないように、可使時間が比較的長いもの、例えば60分程度のものが望ましい。なお、本願に用いる樹脂は、硬化した後の止水性や圧送可能であることに加えて、混合状態における低粘度、高流動による微細な隙間への浸透性、作業時間を上回る十分な可使時間、硬化後の柔軟性と弾力性という条件を達成し得るものであれば、上記以外にも例えばアクリル樹脂やエポキシ樹脂等を用いることもできる。
【0036】
上記のように本発明によるトンネル防水構造は、掘削したトンネルTの地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材2と第1の防水層としての防水シート3とを敷設すると共に、その防水シート3の内側の二次覆工5との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層4を設けたから、上記2つの防水層3・4によってトンネルTを、より確実に防水できると共に、上記いずれかの防水層に漏水等の不具合があっても防水状態を良好に維持することができる。しかも上記第2の防水層4は、区画仕切材6で仕切られた区画領域毎(上記実施形態においては二次覆工5の施工スパンS毎)に形成されるので、万一いずれかの区画領域に形成した第1の防水層としての防水シート3または第2の防水層4に漏水等の不具合があっても、その不具合が他の区画にまで波及するのを防ぐことができる。
【0037】
また上記のようなトンネル防水構造を施工する際に、上記地山内面もしくは一次覆工内面に、第1の防水層としての防水シート3を形成した後、その内面側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工5を形成し、その二次覆工5と上記防水シート3との間に、ウレタン等の樹脂を所定の圧力で加圧注入して第2の防水層4を形成すると、上記樹脂の圧力で上記緩衝材2が厚さ方向に収縮しながら上記防水シート3と二次覆工5との間にほぼ一定厚さの第2の防水層4を容易に形成することができると共に、上記第2の防水層4は上記防水シート3の内面と、二次覆工5の背面(外面)とに良好に密着した状態で一体的に固着され、水密性および防止性能に優れたトンネル防水構造を容易・安価に施工することができる。
【0038】
しかも、上記第2の防水層4を形成するための樹脂を防水シート3と二次覆工5との間に注入する際には、区画仕切材6で仕切られた区画領域毎に注入するため樹脂が広範に流れすぎてムラになって非充填箇所が残る懸念がなく、また、防水シート3と二次覆工5との間のすでに閉塞形成された空間に注入を施す形となるため樹脂が地山側に流出して地山クラックに浸入したり、一次覆工1の表面に沿って広範囲に広がって流失するのを防ぐことができる。さらに万一上記防水シート3に傷や破損等があった場合には、それらを上記の樹脂で修復することができる。
【0039】
上記のようにして第1の防水層としての防水シート3と、第2の防水層4とは、それぞれほぼ均一な厚さが確保できる特質と、隙間充填性に優れる現場注入樹脂の特質を活かして第2の防水層4を形成することができるが、この際、樹脂の加圧注入によって緩衝材2を部分的に押し潰すことになったとしても、緩衝材2として十分な厚さと弾性を有するものを用いておけば、押し潰されることによって、上記防水シート3の内外の隙間をなくし、外側は地山Gまたは一次覆工1の内面に、内側は二次覆工5の背面にそれぞれしっかりと密着した状態で一体的に固着することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、インジェクションチューブ71の一端側にのみ樹脂注入ホース72を設けたが、インジェクションチューブ71の両端に樹脂注入ホース72を接続してもよく、その場合にも各樹脂注入ホース72のインジェクションチューブ71と反対側の端部は二次覆工5を施工した後も、その内方に露出させるようにする。
【0041】
図10〜図12は上記のような変更例の一実施形態を示すもので、上記樹脂注入手段7として、前記と同様に構成されたインジェクションチューブ71の両端部に樹脂注入ホース72の一端を接続し、その各樹脂注入ホース72の他端を二次覆工5を施工した後も、その内方に露出するようにしたものである。上記インジェクションチューブ71は図12に示すように前記実施形態と同様に固定用バンド73で防水シート3の内面に取付けた構成であり、その各固定用バンド73は上記防水シート3の内面に溶着等によって固定されている。上記インジェクションチューブ71は前記スパンSの長さよりもやや短く形成され、各スパンS毎の区画領域内においてトンネル軸線方向とほぼ平行な方向に配置した状態でトンネル周方向に所定の間隔をおいて複数本ずつ設けられている。
【0042】
なお、上記図10および図11においては、上記の樹脂注入手段7や区画仕切材6等の配置構成を分かり易くするために前記図4および図5と同様に二次覆工5を仮想線(二点鎖線)で表している。また図12(a)は一次覆工1の内面に敷設した防水シート3と二次覆工5との間に第2の防水層4を形成する前の状態、同図(b)は第2の防水層4を形成した後の状態を示す。
【0043】
上記のように樹脂注入手段7としてインジェクションチューブ71の両端部に樹脂注入ホース72を接続し、若しくは上記両端部の樹脂注入ホース72・72をも含めた樹脂注入手段7の全長をインジェクションチューブ71で構成して、それらの樹脂注入手段7の両端部が二次覆工5を貫通してトンネル空間内に露出するようにしておけば、その一端側から樹脂を注入して他端側から溢れ出るまで注入することで、より完全な樹脂注入と、その状況確認を容易に行うことが可能となる。なお、万一、上記他端側への樹脂の溢れ出しがない場合には、上記他端側からも樹脂を注入することができる。他の構成は前記の実施形態と同様であり、同様の作用効果が得られる。
【0044】
さらに上記各実施形態は、樹脂注入手段7としてインジェクションチューブ71を用いたが、その代わりにグラウトディスクを用いることもできる。図13〜図16はその一実施形態を示すもので、前記各実施形態と同様に防水シート3の内面側に、樹脂注入手段7として円盤状のグラウトディスク75と、そのグラウトディスク75に樹脂を供給するための樹脂注入ホース76とを設けたものである。特に図の場合は上記グラウトディスク75と樹脂注入ホース76とからなる樹脂注入手段7を前記各スパンS毎の区画領域内に複数個ずつ設けたもので、その各グラウトディスク75は、その周囲に前記のような樹脂を吐出自在な形で所定の間隔をおいて前記防水シート3の内面に固着したものである。
【0045】
上記各グラウトディスク75の構成および防水シート3への取付方法は適宜であるが、図16(a)および(b)は平面略円形の中実肉厚なディスク本体75aの周縁に、それと一体的にフランジ部75bを設け、そのフランジ部75bの防水シート3側の周方向複数箇所に上記防水シート3との溶着部75cを設けると共に、その周方向に隣り合う溶着部75c・75c間に非溶着部75dを設けたものである。図中、75eは上記グラウトディスク本体75a内に形成した樹脂流通用の通路である。
【0046】
前記各グラウトディスク75を上記のような構成にすると、防水シート3よりも変形しにくいように中実状をなすグラウトディスク本体75aで、トンネルTの地山内面もしくは一次覆工1の内面に敷設した柔軟な防水シート3が波打っているところに、変形しにくいディスク75の周縁フランジ部75bを部分的に溶着することによって非溶着部75dを防水シート3に対して浮かせ、樹脂が吐出自在な状態とすることができる。
【0047】
上記各グラウトディスク75は、上記以外にも変更可能であり、例えば図16(c)に示すように扁平な伏せ鉢状に形成したディスク本体75aの周縁部に上記と同様のフランジ部75bを一体的に設け、そのフランジ部75bの防水シート3側の周方向複数箇所を上記と同様に防水シート3に溶着して、その周方向に隣り合う溶着部75c・75c間の非溶着部75dから樹脂を吐出させるようにしてもよい。
【0048】
上記のように構成した各グラウトディスク75には、そのディスク本体75a内に連通するようにして前記の樹脂注入ホース76が一体的に設けられ、その注入ホース76のディスク75と反対側の端部は二次覆工5を貫通してトンネル空間内に露出させるもので、その注入ホース76は上記グラウトディスク75内への樹脂の注入口を二次覆工5の内面側に突出させるだけの短いものでよい。
【0049】
以上のように構成したグラウトディスク75と注入ホース76とからなる樹脂注入手段7を用いることによって、前記実施形態と同様の要領で防水シート3と二次覆工5との間に樹脂を注入して第2の防水層4を形成することができるもので、前記とほぼ同様の作用効果が得られる。特に上記実施形態のグラウトディスク75は前記インジェクションチューブ71のように特殊な構造でなくてもよいので構造が簡単で潰れなどが生じるおそれも少なく、容易・安価に製作することができる。他の構成は前記実施形態と同様であり、同様の作用効果が得られる。
【0050】
なお、上記各実施形態は区画仕切材6を、その長手方向がトンネル周方向になるようにしてトンネル軸線方向に所定の間隔、図の場合は二次覆工の施工スパンSと同じ間隔をおいて複数個の区画領域を形成するようにしたが、上記の間隔は適宜であり、また上記の区画仕切材6をトンネル軸線方向と平行な方向に設けてトンネル周方向に複数個の区画領域を形成するようにしてもよい。或いは上記区画仕切材6をトンネル周方向および軸線方向と平行な方向に設けてトンネル軸線方向および周方向にそれぞれ複数個の区画領域を形成するようにしてもよい。
【0051】
また上記実施形態はトンネル全周に防水層を設けるウォータータイト型トンネルに適用した例を示したが、例えばトンネルのインバート部を除くアーチ部にのみ防水層を設けるタイプのトンネルにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように本発明によるトンネル防水構造およびその施工方法は、トンネルTの地山内面もしくは一次覆工1の内面に、緩衝材2を介して第1の防水層としての防水シート3を敷設すると共に、その内側に形成される二次覆工5との間に、樹脂を注入して形成される第2の防水層4を設けるようにしたから、防水性能およびその信頼性、耐久性のよいトンネル防水構造を容易・安価に施工することが可能となり、各種のトンネルの防水構造およびその施工方法として有効であり、産業上も良好に利用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明によるトンネル防水構造を施工したウォータータイトトンネルの横断正面図。
【図2】上記ウォータータイトトンネルの縦断側面図。
【図3】(a)は第2の防水層を形成する前のウォータータイトトンネルの一部の拡大縦断側面図、(b)は第2の防水層を形成した後の状態の同上図、(c)〜(f)はそれぞれ(a)および(b)におけるc〜f部の部分拡大図。
【図4】区画仕切材および樹脂注入手段の配置例を示す一実施形態のウォータータイトトンネルの斜視図。
【図5】上記ウォータータイトトンネルの縦断側面図。
【図6】(a)は第2の防水層を形成する前の図5におけるA部の拡大縦断側面図、(b)は第2の防水層を形成した後の同上図。
【図7】(a)は図5におけるB部の拡大縦断側面図、(b)は(a)におけるb−b断面図。
【図8】区画仕切材の一例を示す斜視図。
【図9】排気注入ホースの一例を示す説明図。
【図10】区画仕切材および樹脂注入手段の配置例を示す他の実施形態のウォータータイトトンネルの斜視図。
【図11】上記ウォータータイトトンネルの縦断側面図。
【図12】(a)は第2の防水層を形成する前の図11におけるC部の拡大縦断側面図、(b)は第2の防水層を形成した後の状態の同上図。
【図13】区画仕切材および樹脂注入手段の配置例を示す他の実施形態のウォータータイトトンネルの斜視図。
【図14】上記ウォータータイトトンネルの縦断側面図。
【図15】図14におけるD部の拡大縦断側面図。
【図16】(a)は上記実施形態で用いた樹脂注入手段の平面図、(b)はその縦断側面図、(c)は変更例の縦断側面図。
【図17】従来のウォータータイトトンネル横断正面図。
【図18】(a)は上記従来ウォータータイトトンネルの一部の拡大縦断側面図、(b)および(c)は(a)におけるb部およびc部の部分拡大図。
【符号の説明】
【0054】
T トンネル
G 地山
1 一次覆工
2 緩衝材
3 防水シート(第1の防水層)
4 第2の防水層
5 二次覆工
6 区画仕切材
6a 突条
7 樹脂注入手段
71 インジェクションチューブ
72、76 樹脂注入ホース
73 固定用バンド
75 グラウトディスク
10 コンクリート釘
11 シート固定用ディスク
S 施工スパン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面に、防水シート等よりなる防水層と二次覆工とを設けたトンネル防水構造において、
上記の地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材を上記防水シートの内面側に一体的に設け、その区画仕切材で仕切られた区画領域毎に上記防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に設けたことを特徴とするトンネル防水構造。
【請求項2】
上記請求項1に記載のトンネル防水構造を施工するに当たり、
掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材を上記防水シートの内面側に予め一体的に固着し、上記防水シートの内面側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工を形成した後、上記区画仕切材で仕切られた区画領域毎に上記防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に形成したことを特徴とするトンネル防水構造の施工方法。
【請求項3】
上記覆工用コンクリートを打設する前に、上記防水シートの内面側に予め樹脂注入手段を配置し、上記覆工用コンクリートを打設して二次覆工を形成した後に、上記樹脂注入手段を介して上記区画領域毎の境界部に樹脂を所定の圧力で加圧注入して上記第2の防水層を形成するようにした請求項2に記載のトンネル防水構造の施工方法。
【請求項1】
掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面に、防水シート等よりなる防水層と二次覆工とを設けたトンネル防水構造において、
上記の地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材を上記防水シートの内面側に一体的に設け、その区画仕切材で仕切られた区画領域毎に上記防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して形成される第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に設けたことを特徴とするトンネル防水構造。
【請求項2】
上記請求項1に記載のトンネル防水構造を施工するに当たり、
掘削したトンネルの地山内面もしくは一次覆工内面に、緩衝材を介して第1の防水層としての防水シートを敷設すると共に、その防水シートと上記二次覆工との間の境界部を複数個の区画領域に仕切る区画仕切材を上記防水シートの内面側に予め一体的に固着し、上記防水シートの内面側に覆工用コンクリートを打設して二次覆工を形成した後、上記区画仕切材で仕切られた区画領域毎に上記防水シートと二次覆工との間に樹脂を注入して第2の防水層を、上記防水シートと二次覆工とに、それぞれ密着させた状態で一体的に形成したことを特徴とするトンネル防水構造の施工方法。
【請求項3】
上記覆工用コンクリートを打設する前に、上記防水シートの内面側に予め樹脂注入手段を配置し、上記覆工用コンクリートを打設して二次覆工を形成した後に、上記樹脂注入手段を介して上記区画領域毎の境界部に樹脂を所定の圧力で加圧注入して上記第2の防水層を形成するようにした請求項2に記載のトンネル防水構造の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−24667(P2010−24667A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185458(P2008−185458)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]