説明

トンネル面導水工法のグレーチング側溝による流末処理設備

【課題】トンネル内への漏水対策として面導水工法を施工する際、流末処理工において遊離石灰や固形物による目詰まりと排水不良を防止する設備を提供する。
【解決手段】本発明の流末処理設備は、面導水パネル背面とトンネル内壁面との間、およびこのパネル下端部と排水側溝上面との間に間隔を設けて、アルミ積層複合板からなる面導水パネルをトンネル内壁に設置した面導水工法において、この面導水パネルの背面を流下しパネル下端部より排出される漏水を、グレーチング覆工された排水断面の大きい排水側溝にグレーチングの格子隙間から直接流下させ、排水側溝より排水することを特徴とする。そして、上記の流末処理設備における排水側溝の覆工材は、トンネル内壁に設置された面導水パネルの直下に設置された排水側溝において、防錆処理として亜鉛メッキを施したグレーチングを側溝の覆工に使用し、トンネル側壁側に支持用鋼材を溶接固定し、グレーチングを水平に保持することも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設トンネルの漏水対策工のうち面導水工法に適用されるトンネル漏水防止板とグレーチング覆工された排水側溝からなる流末処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設トンネルの面導水工法はトンネル内への漏水の滴下や漏水の凍結によるトンネル内の車輌交通や歩行者への障害を防止するため、トンネル内壁から浮き離れた状態の壁面を構成するトンネル用の漏水防止板を設置している。このような、従来のトンネル漏水防止板は、特許文献1および特許文献2に示されるように、すでに公知である。特許文献1に記載の漏水防止板はトンネル内壁に防水シートを介して張り設置された発泡ポリエチレン等から成る断熱板と、断熱板との間に単層の断熱層を形成して張り設置された表層板を備えたものである。特許文献2では、アルミ等の金属板に断熱材をはさむようにして形成されたパネルとしている。
【0003】
しかしながら、これらの文献には共に、流末処理方法に関しては特別な記述がなく、従来の面導水工法と同様に、角樋等を使用し歩道面等を斫って埋め込むか、数センチ程度の幅の狭い排水溝を斫って設置し、これらにより排水している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−182196号公報
【特許文献2】特公平4−60199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の流末処理方法は、角樋などを歩道面より下部に埋め込む場合、歩道等の大きさにより、作業幅や深さに制限があり、排水断面の大きさが制限されていた。また、角樋の形状や規模によっては、漏水となる湧水を排水する流速が遅くなり、湧水に含まれる遊離石灰などの固形物が堆積しやすく成るため、流速を確保しかつ角樋を埋め込むための斫り作業の面も考慮し、小断面の角樋などが使用されている。また、幅の狭い排水側溝にて排水する場合、湧水が激しく漏水量が多いと、排水が追いつかず排水側溝から溢れ、歩道面だけでなく、車道部にまで排水が流れ出すことが多い。一方、排水側溝の幅を大きくすると、歩行者や自転車などの転落の危険性も増え、通行障害となり安全性に欠ける。
【0006】
湧水に含まれる遊離石灰などは、トンネルの湧水量がその個所それぞれに於いて豊富にあれば、固形物の沈殿が少なく、排水と共に流出してしまうことが多い。しかし、湧水量は雨天等気象条件によって大きく左右され、湧水量の変化は大きく、湧水量が少ない場合には、遊離石灰などの固形物が面導水パネルの背面に付着しやすくなり、時間と共に堆積量が増え排水断面を狭めることとなる。この付着堆積した固形物は降水量の激しい時などに、湧水量が増加すると共に湧水に押し流され排出される。
【0007】
流末処理部から排出される固形物がスムーズに流れない場合は、面導水パネル背面に充満し湧水等の滞留により水頭差が大きくなり、荷重が増加することにより面導水パネルが膨らみ、耐えきれなくなった部分が剥がれる等の異常事態が発生し破壊に至る。また施工ジョイントの水平打ち継ぎ部は逆巻きの施工のため、後打ちのコンクリートが充填不足に成りやすく、隙間が所々大きく成りやすい。そのため、覆工コンクリート裏面の地質状況に依っては周囲の土砂を湧水と共に引っ張ってくることが多い。その影響で湧水中の固形物が急激に増加することにより排水量とのバランスが崩れ、面導水パネルの変形が生じやすい。
【0008】
面導水パネルの背面を定期的に清掃することにより付着による堆積物を除去できるが、角樋等の埋め込みタイプはパネル上部の隙間から清掃するか、パネルを解体してからの作業となる。上部からの作業は、電力線ケーブルや照明設備などが有る場合には、これらの設備が障害物となり難工する。また、排出された固形物が大量に存在すると、一時的な閉塞となり送流障害が発生し角樋内にて堆積し、部分的に排出が悪くなる。小断面排水溝の場合は漏水が流下の際歩道面等に飛散することを防止するため、パネルの下端を排水溝の底盤近くとして、設置することが多い。よって、土砂などが大量に排出された場合は土砂の流動性不良と排水断面不足により、その個所に堆積し歩道に溢れることが多い。そのため、堆積物が歩行者や自転車等の障害となるだけでなく、漏水も歩道面や車路にも溢れ出し通行の障害となる。また、小断面側溝の清掃は容易ではあるが、パネル背面はパネルの上部からの作業となり、上記の障害物が有る場合は作業不良となり清掃方法にも課題がある。
【0009】
これらの問題点を解消するために本発明では、トンネル内への漏水対策として面導水工法を施工する際、流末処理工において遊離石灰や固形物による目詰まりと排水不良を防止する設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の流末処理設備は、面導水パネル背面とトンネル内壁面との間、およびこのパネル下端部と排水側溝上面との間に間隔を設けて、アルミ積層複合板からなる面導水パネルをトンネル内壁に設置した面導水工法において、この面導水パネルの背面を流下しパネル下端部より排出される漏水を、グレーチング覆工された排水断面の大きい排水側溝にグレーチングの格子隙間から直接流下させ、排水側溝より排水することを特徴とする。
【0011】
そして、上記の流末処理設備における排水側溝の覆工は、トンネル内壁に設置された面導水パネルの直下に設置された排水側溝において、防錆処理として亜鉛メッキを施したグレーチングを側溝の覆工に使用し、トンネル側壁側に支持用鋼材を溶接固定し、グレーチングを水平に保持することを特徴とする。
【0012】
本発明では、面導水パネルの流末処理設備を排水断面の大きな排水溝とし、側溝形式にて集水桝に排水する。排水側溝の排水断面の大きさは、深さ10cm以上幅15cm以上と大きくし、また、面導水パネルの下端とグレーチング上面との間隙は約5cmとし、排水側溝の上部はグレーチングにて覆い、蓋をして、グレーチングの格子隙間から漏水を流し込み、そして、面導水パネルは断面剛性の高いアルミ積層複合板にしている。
【0013】
排水側溝では、グレーチングの片側の支持部はトンネルの側壁であり、支持部となるコンクリートを斫り取ってしまうため、受けあご部が無くグレーチングが傾いてしまうので、水平を保持して歩行者などの安全を図るため、支持材として鋼材をトンネル側側壁に溶接して足付けを行い、さらに、グレーチングは防錆のため亜鉛メッキを施しておく。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、排水側溝の排水断面が大きく、かつ面導水パネルの下端とグレーチングの上面との間に適度の間隔が設けられているために、遊離石灰や流動性の悪い土砂などの固形物が相当量排出されても排水路に堆積し閉塞されることが非常に少なく、漏水した湧水は歩道面や路面に溢れることなく排水桝に導かれる。
【0015】
排水側溝の上部はグレーチングにて覆われているため、気象条件により増加した湧水が漏水となって排水側溝に急激に流出しても、漏水が飛散により跳ね返ることも防ぐことができ、路面等への影響は非常に小さい。また、グレーチングは歩行者や自転車が乗り上げても安全なため通行の妨げに成らない。
【0016】
排水側溝に固形物が堆積した場合でも、グレーチングの格子隙間より目視確認が容易であり、グレーチングを取り外すことで清掃作業が速やかに行える。またパネル背面の清掃は上部に障害物が有ると、障害物を移設して作業するかパネルを解体しての作業になるが、パネル下部とグレーチングの間には間隔があるので、その作業空間より作業が行える。また、グレーチングを取り外して、排水側溝と面導水パネルの下端との間隔を広げれば、清掃作業がより容易になりパネル背面に付着物が溜まっても撤去が容易にでき、排水断面が速やかに復旧される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るグレーチング覆工した排水側溝による流末処理工の実施形態を示すものであって、歩道部分の断面図である。
【図2】グレーチング覆工した排水側溝による流末処理工の実施形態を示す、歩車道境界ブロック通路部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るトンネル面導水工法に於けるグレーチング覆工した排水側溝による流末処理設備の実施形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1は歩道部分7の面導水工法施工断面図であり、Bは排水側溝3近辺の拡大断面図である。道路トンネルの覆工コンクリートは、上部半断面アーチ部コンクリート覆工4と下部半断面側壁部コンクリート覆工5とに分割打設されている。その施工ジョイントが水平打継ジョイント6で、湧水の漏出原因部分となり、漏水対策としての主たる部分となる。
【0020】
この部分を主体とした漏水を既設排水路に導水するため、水平打継ジョイント6を覆う形で、面導水パネル1をコンクリート覆工4と5に設置する。面導水パネル1の下端より排水する漏水は、排水側溝3にグレーチング2の格子を通して流下する。排水側溝3を流れた漏水は、集水枡〜排水側溝連結排水溝9にて流入し集水枡8に導水され、既設排水路10に注がれトンネル坑外へ排出される。
【0021】
図2のCは歩道が無い歩車道境界ブロック通路17部分の面導水工法施工断面であり、Dは歩車道境界ブロック通路17側の排水側溝18と配水管14の平面図である。面導水パネル1の直上部に通信ケーブル耐火防護ケース19が存在している。面導水パネル1を、水平打継ジョイント6を覆う形でコンクリート覆工4と5に設置する。面導水パネル1の下端より排水される漏水は、排水側溝18にグレーチング2を通して流下する。排水側溝18に流れた漏水は歩車道境界ブロック17に埋設された排水管14にて道路面11の下部にある既設水路16にグレーチング15を通して導水されトンネル坑外へ排出される。
【0022】
排水側溝3や18は断面の片側をトンネル側壁コンクリート面としており、流未処理工において排水側溝3や18を斫り設置する際、側壁部コンクリート覆工5側の三角形部分20を残さず全体を斫り出す。このことにより、面導水パネル1の背面を流下する漏水は側壁部コンクリート覆工5を伝って、スムーズに排水側溝3や18に導水される。
【0023】
排水側溝3や18の上部を覆うグレーチング2は、側壁部コンクリート覆工5側の部分に支持鋼材12を溶接固定し、水平を保つようにして歩行者などの安全を図る。グレーチング2及び支持鋼材12は亜鉛メッキ処理をして防錆対策をする。
【0024】
支持鋼材12は等辺山形鋼L−30mm×30mm×3mm×所定長を溶接固定して使用することで負荷が掛かった際、荷重が分散され安定した支持力が得られる。また、流水の抵抗となる突起幅は山伏せ状にて千鳥配置する事で、21.2mmとなり影響を小さくできる。
【0025】
グレーチング2にて覆った排水側溝3や18は排水断面を幅15cm以上×深さ10cm以上と大きな断面にすることで15L/m以上の排水能力が確保され、且つ連続して開口部を覆うため歩行者や自転車等の障害とならず安全性が高い。又、排水側溝3や18に固化物が沈殿堆積していれば目視確認でき、グレーチングを外すことで清掃排出作業が簡単に素早く対応できる。
【0026】
面導水パネル1の背面に遊離石灰等が付着して導水能力が減じられた場合、清掃作業となる。面導水パネル1の直上部に、清掃の際に障害となる設備(通信ケーブル耐火防護ケース19など)がある場合は、パネルの下方からの清掃作業となるが、グレーチング2を外すことにより、排水側溝3や18の深さ10cmと、面導水パネル1の下端部とグレーチング2の間隔幅約5cmを加えて15cm以上の作業空間が確保でき、清掃作業用具の使用が容易となる。
【0027】
通常、面導水パネルとしては硬質塩化ビニル(難燃材)素材の製品が多用されている。この材料は材料コストが低く耐久性が高く経済的であるが、端部を開放した場合に断面が少ないと剛性が小さいため、アルミコーナーアングル等を用いて補強していることが多い。歩道部で使用する場合、自転車等の接触により補強材が脱落し変形する可能性が高いので、本発明では、断面剛性の大きいアルミ積層複合板(不燃材)を使用し、恒久的な断面確保と耐衝撃性を増加させて耐久性の向上を図る。
【符号の説明】
【0028】
1.面導水パネル
2.排水側溝用グレーチング
3.排水側溝
4.上部半断面アーチ部コンクリート覆工
5.下部半断面側壁部コンクリート覆工
6.水平打継ジョイント
7.歩道路面
8.集水枡
9.集水枡〜排水側溝連結排水溝
10.既設排水路(歩道側)
11.道路面
12.排水側溝用グレーチング支持鋼材
13.排水側溝底盤モルタル
14.歩車道境界ブロック通路側排水管
15.歩車道境界ブロック通路側既設排水路用グレーチング
16.歩車道境界ブロック通路側既設水路
17.歩車道境界ブロック
18.歩車道境界ブロック通路側排水側溝
19.通信ケーブル耐火防護ケース
20.排水側溝側壁コンクリート部三角形状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面導水パネル背面とトンネル内壁面との間、およびこのパネル下端部と排水側溝上面との間に間隔を設けて、アルミ積層複合板からなる面導水パネルをトンネル内壁に設置した面導水工法において、この面導水パネルの背面を流下しパネル下端部より排出される漏水を、グレーチング覆工された排水断面の大きい排水側溝にグレーチングの格子隙間から直接流下させ、排水側溝により排水することを特徴とする面導水工法の流末処理設備。
【請求項2】
請求項1に記載の流末処理設備において、パネル下端部と排水側溝上面との間の間隔は約5cmであることを特徴とする流末処理設備。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流末処理設備において、溝断面は深さ10cm以上幅15cm以上であることを特徴とする流末処理設備。
【請求項4】
トンネル内壁に設置された面導水パネルの直下に設置された排水側溝において、防錆処理として亜鉛メッキを施したグレーチングを側溝の覆工に使用し、トンネル側壁側に支持用鋼材を溶接固定し、グレーチングを水平に保持することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の流末処理設備における排水側溝の覆工材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−231531(P2011−231531A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103075(P2010−103075)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(593132814)キザイテクト株式会社 (6)
【Fターム(参考)】