説明

トーチ用燃料及びその燃焼方法

【課題】アセチレンに比べて安全性が高く、取り扱いが容易であり、不完全燃焼が起きにくいトーチ用燃料と、それを用いた燃焼方法を提供する。
【解決手段】溶接トーチまたは切断トーチに供給されて燃焼されるトーチ用燃料であって、主たる成分としてジメチルエーテルを含有する構成であり、好ましくは、さらに脂肪族炭化水素を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーチ用燃料及びその燃焼方法に関し、特に、ジメチルエーテルを含有するトーチ用燃料及びその燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接トーチまたは切断トーチは、例えば、ガス供給路に連結するガス噴射口を備えたトーチボディにガスノズルが取り付けられ、ガス噴射口周辺にオリフィスが設けられた構成となっている。
ガス供給部からは、アセチレンあるいはLPガスなどの燃料ガスと、酸素ガスが供給され、ガス噴出口から噴出されて燃焼され、溶接あるいは切断に供せられる。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2などに、アセチレンと酸素あるいはアセチレンとプロパンガスやLPガスなどの炭化水素ガスと酸素を供給して燃焼させるトーチが開示されている。
【0004】
しかし、上記のトーチにおいては、燃料ガスとして用いられてきたアセチレンは取り扱いに厳重な注意を要するという問題があり、また、酸素が不足した場合には不完全燃焼しやすく、ススが出てしまうなどの不利益があった。
【特許文献1】特開2001−232463号公報
【特許文献2】特開2000−141058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来溶接トーチまたは切断トーチに供給されて燃焼されるトーチ用燃料として広く用いられてきたアセチレンに比べて安全性が高く、取り扱いが容易であり、不完全燃焼が起きにくいトーチ用燃料と、それを用いた燃焼方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトーチ用燃料は、溶接トーチまたは切断トーチに供給されて燃焼されるトーチ用燃料であって、主たる成分としてジメチルエーテルを含有する。
【0007】
本発明のトーチ用燃料は、好適には、さらに脂肪族炭化水素を含有する。
あるいは、好適には、さらに含酸素炭化水素及び不飽和炭化水素からなる群から選ばれる添加剤を含有する。
【0008】
本発明のトーチ用燃料の燃焼方法は、主たる成分としてジメチルエーテルを含有するトーチ用燃料を、溶接トーチまたは切断トーチに供給して燃焼させる。
【0009】
本発明のトーチ用燃料の燃焼方法は、好適には、前記トーチ用燃料が脂肪族炭化水素を含有する。
あるいは、好適には、前記トーチ用燃料がさらに含酸素炭化水素及び不飽和炭化水素からなる群から選ばれる添加剤を含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトーチ用燃料によれば、アセチレンに比べて安全性が高く、取り扱いが容易であり、不完全燃焼が起きにくい。
また、本発明のトーチ用燃料の燃焼方法によれば、アセチレンに比べて安全性が高く、取り扱いが容易である燃料を用いて燃焼させることができ、燃焼時に不完全燃焼が起きにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係るトーチ用燃料及びその燃焼方法の実施の形態について説明する。
【0012】
本実施形態に係る冷トーチ用燃料は、溶接トーチまたは切断トーチに供給されて燃焼されるトーチ用燃料であって、主たる成分としてジメチルエーテルを含有する。
【0013】
上記の本実施形態のトーチ用燃料は、アセチレン及び酸素を使用する溶接トーチまたは切断トーチ、あるいは、LPガス及び酸素を使用する溶接トーチまたは切断トーチにおいて、アセチレンあるいはLPガスにそのまま置き換えて使用することができる。
例えば、本実施形態のトーチ用燃料のトーチへの流量は、アセチレンを用いるトーチでのアセチレンの流量と同程度の値で用いることができる。
【0014】
アセチレンはボンベに充填するときに特殊な方法を用いており、取り扱いに厳重な注意を要する一方で、ジメチルエーテルの燃焼時の酸素消費量はアセチレンとほぼ同じであるにもかかわらず、ジメチルエーテルの燃焼カロリはアセチレンと同等あるいはアセチレンより高く、また、ジメチルエーテルはアセチレンより液化が容易であって持ち運びが簡単である。
【0015】
また、ジメチルエーテルは、LPガスと同等に安全性が高く、LPガスよりも燃焼速度が速いという利点がある。また、ジメチルエーテルは分子内に酸素原子を含んでおり、燃焼時の酸素消費量はLPガスの約1/2であり、燃焼時に酸素供給量が減ってしまってもススが発生しにくく、空気中へのススの拡散やトーチのスス汚れを低減できるという利点がある。
【0016】
本発明のトーチ用燃料は、さらに脂肪族炭化水素を好ましく含有する。
脂肪族炭化水素を含有する場合、例えば、プロパン、プロピレン、シクロプロパン、n−ブタン、i−ブタン、シクロブタン、n−ペンタン、イソ−ペンタン(2−メチルブタン)、ネオ−ペンタン(2,2−ジメチルプロパン)、シクロペンタンなどの炭化水素、あるいは、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの炭素数6〜10の炭化水素など、従来のトーチ用燃料として用いられる炭化水素をそのまま使用することができる。
脂肪族炭化水素は、複数種類の炭化水素化合物の混合物であってもよい。
【0017】
本実施形態のトーチ用燃料において、脂肪族炭化水素を含有する場合、脂肪族炭化水素の重量/ジメチルエーテルの重量の比は、特に限定はないが、例えば1:1程度の混合比率で使用できる。
【0018】
上記の本実施形態に係るジメチルエーテルからなるトーチ用燃料あるいはジメチルエーテル及び炭化水素混合ガスからなるトーチ用燃料は、溶接トーチまたは切断トーチにおいて燃焼されることで、溶接、溶断、及びロウ付けなどに供せられる。例えば、酸素ボンベを用いない加熱や、ロウ付けなどの用いるハンディートーチに燃料として使用することができる。
上記の本実施形態に係るジメチルエーテルからなるトーチ用燃料あるいはジメチルエーテル及び炭化水素混合ガスからなるトーチ用燃料は、LPガスのボンベと同様の圧力容器に収容することが可能であり、取り扱いが容易である。
【0019】
また、本実施形態のトーチ用燃料は、さらに含酸素炭化水素及び不飽和炭化水素からなる群から選ばれる添加剤を好ましく含有することができる。
含酸素炭化水素は、例えば、アセトンなどのケトン類、ブタノール及びプロパノールなどのアルコール類などである。
また、不飽和炭化水素は、例えば、アセチレン及びメチルアセチレンなどのアルキン類、プロパジエンなどのアレン類などである。
上記の添加剤を含有させることにより、燃焼カロリを高めることができる。
さらに、その他の添加剤として、燃焼カロリを高めるなどの目的のためにガソリンを混合させてもよい。
【0020】
本実施形態のトーチ用燃料によれば、アセチレンに比べて安全性が高く、取り扱いが容易であり、不完全燃焼が起きにくい。
【0021】
本実施形態のトーチ用燃料の燃焼方法は、本実施形態に係る、上記の、主たる成分としてジメチルエーテルを含有するトーチ用燃料を、溶接トーチまたは切断トーチに供給して燃焼させる。
【0022】
本実施形態のトーチ用燃料の燃焼方法は、トーチ用燃料に、脂肪族炭化水素を好ましく含有させることができる。
【0023】
また、本実施形態のトーチ用燃料の燃焼方法は、トーチ用燃料に、さらに含酸素炭化水素及び不飽和炭化水素からなる群から選ばれる添加剤を好ましく含有させることができる。
含酸素炭化水素及び不飽和炭化水素は、上述の通りである。
【0024】
本実施形態のトーチ用燃料の燃焼方法によれば、アセチレンに比べて安全性が高く、取り扱いが容易である燃料を用いて燃焼させることができ、燃焼時に不完全燃焼が起きにくい。
【0025】
<実施例>
ジメチルエーテルをLPガス用のトーチに供給して燃焼させた。
トーチではLPガスの場合と同様に問題なく燃焼させることができた。
また、トーチへの酸素供給を停止しても、ススを発生させることなく、問題なく燃焼させることができた。
【0026】
また、本実施形態のトーチ用燃料及びその燃焼方法によれば、以下の利点を享受できる。
(1)従来のアセチレンあるいはLPガスを用いる溶接トーチまたは切断トーチにおいて、アセチレンあるいはLPガスにそのまま置き換えて使用することができる。
(2)燃焼カロリがアセチレンと同等あるいはアセチレンより高い。
(3)液化が容易であって持ち運びが簡単であり、安全性が高い。
(4)燃焼速度が速い。
(5)燃焼時にススが発生しにくい。
【0027】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。
例えば、脂肪族炭化水素を添加する場合に、その種類に特に限定はなく、種々のものを用いることができ、さらに炭化水素の混合物を用いてもよい。その他の添加剤は、必要に応じて種々のものを添加してよい。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のトーチ用燃料は、従来のアセチレンあるいはLPガスを用いる溶接トーチまたは切断トーチの燃料に適用できる。
本発明のトーチ用燃料の燃焼方法は、従来のアセチレンあるいはLPガスを用いる溶接トーチまたは切断トーチの使用に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチまたは切断トーチに供給されて燃焼されるトーチ用燃料であって、
主たる成分としてジメチルエーテルを含有する
トーチ用燃料。
【請求項2】
さらに脂肪族炭化水素を含有する
請求項1に記載のトーチ用燃料。
【請求項3】
さらに含酸素炭化水素及び不飽和炭化水素からなる群から選ばれる添加剤を含有する
請求項1または2に記載のトーチ用燃料。
【請求項4】
主たる成分としてジメチルエーテルを含有するトーチ用燃料を、溶接トーチまたは切断トーチに供給して燃焼させる
トーチ用燃料の燃焼方法。
【請求項5】
前記トーチ用燃料が脂肪族炭化水素を含有する
請求項4に記載のトーチ用燃料の燃焼方法。
【請求項6】
前記トーチ用燃料がさらに含酸素炭化水素及び不飽和炭化水素からなる群から選ばれる添加剤を含有する
請求項4または5に記載のトーチ用燃料の燃焼方法。

【公開番号】特開2009−203271(P2009−203271A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44291(P2008−44291)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(508055191)
【出願人】(508055179)