トール様レセプター14(TLR14)及びそれらの使用
【課題】トール様レセプター活性を有する単離されたポリペプチド又は変異体又はそれらの断片の提供。
【解決手段】特定な配列からなるアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、該ポリペプチドはTLR14活性を示す。TLR14はさまざまなリガンドを認識し、免疫及び炎症性遺伝子の誘導を導く一連のシグナル伝達経路を活性化する。本発明のペプチドと相互作用する又は結合する、及び/又はその生物学的機能又は活性又は別の物質のそれらを妨害するペプチド又は化学化合物のような物質を、スクリーニングする又は探索する方法。
【解決手段】特定な配列からなるアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、該ポリペプチドはTLR14活性を示す。TLR14はさまざまなリガンドを認識し、免疫及び炎症性遺伝子の誘導を導く一連のシグナル伝達経路を活性化する。本発明のペプチドと相互作用する又は結合する、及び/又はその生物学的機能又は活性又は別の物質のそれらを妨害するペプチド又は化学化合物のような物質を、スクリーニングする又は探索する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
序論
トール様レセプター/インターロイキン−1レセプター(TLR)スーパーファミリーは、炎症及び細菌感染への宿主応答に中心的役割を果たしている。TLRファミリーのメンバーは、トール−IL−IR(TIR)ドメインと呼ばれる細胞質ドメイン及び一連のロイシンリッチリピートから成る細胞外領域により特徴付けられる。多様な微生物成分によるトール様レセプターの占拠は、誘導可能シクロオキシゲナーゼ、接着分子及びケモカインのような多数の炎症誘発性タンパク質の発現を導く。ヒトTLRは現在同定されている。最初に発見されたTLR、TLR4は細菌リポ多糖類(LPS)への応答のためには必須である(1、2)。TLR2はTLR1及び6とカップルして、各々ジアシル−及びトリアシル−リポペプチドを認識する。TLR5は細菌フラゲリンを認識し及び応答し(3)、そしてTLR9は、細菌DNA中に存在するメチル化されていないCpGモチーフの認識に必要とされる(4)。TLR11、12及び13は最近マウスにおいて記述されてきたが、ヒトオルソログは見いだされていない(5、6)。適切なリガンドによるTLRの刺激は、転写因子NF−κBの活性化、及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)p38、c−jun N末端キナーゼ(JNK)及びp42/p44の活性化も導く。
【0002】
NF−κBの活性化は、細胞質TIRドメイン含有アダプタータンパク質、MyD88に依存する(7、8、9)。MyD88は、アダプタータンパク質TRIFを動員するTLR3を除く全TLRファミリーに対してアダプタータンパク質として働く(10)。NF−κBを活性化することに加えて、TRIFは転写因子インターフェロン制御因子3(IRF3)に依存する遺伝子の誘導にも必要とされる(11)。この経路は、MyD88依存経路と称され、ウイルス起源の病原体を避けるために重要であることが示されている(12)。別のTIRアダプタータンパク質、MyD88アダプター様(MaI、TIRAPとしても知られている)は、MyD88依存経路に含まれており(13、14)、そしてTLR2及びTLR4仲介シグナル伝達に特異的に必要とされている(15、16)。
【0003】
感染の間、多様なリガンドによるTLRの占拠は、サイトカイン及びケモカインのような炎症性メディエーターの産生及び免疫エフェクター細胞の活性化を導く。この協調化された応答は侵入している病原体を取り除くために計画されているが、多くの例において、細菌産物は宿主由来のメディエーターの制御されていないネットワークを活性化し、それは多器官不全、心血管虚脱及び最終的に死を導くことができる。敗血症と称されるこの状態は、病院の集中治療室における死亡の主原因であり、世界中で増加し続けている。それ故、TLRタンパク質に対するアンタゴニストは、過敏性免疫応答の有害な効果を相殺するために有用な手段であろう。TLR4シグナル伝達の妨害は、LPSの毒性効果を相殺する手段として綿密に試験されている。現在の療法には、TLR4及びその共働レセプターCD14に対する抗体、及び該レセプターへの結合についてLPSと競合する合成リピドA類似体を中和することが含まれる(17、18)。
【0004】
敗血症に加え、療法は、ウイルス感染と戦う手段として他のTLRも目標にしている。例えば、TLR7アゴニスト、イミキモドがヒトパピローマウイルスにより引き起こされる性器ヘルペスの治療に成功裡に使用されてきた(19)。自己免疫疾患の場合において、TLRアゴニストは、適応Th2応答を、アレルギーの発生を防止するであろうTh1免疫応答にシフトさせる手段と考えられている。より長期の目標には、TLRシグナル伝達経路の下流構成要素での薬物療法学の開発が含まれるであろう。それ故、TLRシグナル伝達のすべての側面を完全に理解することが重要である。
【0005】
TLRファミリーのさらなるメンバー、及びTLRシグナル伝達経路の側面の同定は、有益な薬学的可能性を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Poltorak, A. et al. Science 282, 2085-2088 (1998).
【非特許文献2】Qureshi, S.T. et al. J.Exp.Med. 189, 615-625 (1999).
【非特許文献3】Hayashi, F. et al. Nature 410, 1099-1103(2001).
【非特許文献4】Hemmi, H. et al. Nature 408, 740-745 (2000).
【非特許文献5】Zhang, D. et al. Science 303, 1522-1526 (2004).
【非特許文献6】Tabeta, K. et al. PNAS 101, 3516-3521 (2004)
【非特許文献7】Hemmi, H. et al. Nature Immunol. 3, 196-200 (2002).
【非特許文献8】Adachi, O. et al. Immunity 9, 143-150 (1998).
【非特許文献9】Takeuchi, O. et al, J.Immunol. 164, 554-557 (2000).
【非特許文献10】Yamamoto, M. et al. J Immunol. 169, 6668-72 (2002).
【非特許文献11】Kaisho, T. et al. J.Immunol. 166, 5688-5694 (2001).
【非特許文献12】Servant, MJ. et al. J. Biochem. Pharmacol. 64, 985-992 (2002).
【非特許文献13】Fizgerald, K.A. et al. Nature 413, 78-83(2001).
【非特許文献14】Horng, T. et al. Nature Immunol. 2, 835-841 (2001).
【非特許文献15】Yamamoto, M. et al. Nature 420, 324-329 (2002).
【非特許文献16】Horng, T. et al. Nature 420, 329-33(2002).
【非特許文献17】Axtelle, T. & Pribble, J. J. Endotoxin Res. 7, 310-314 (2001).
【非特許文献18】Lynn, M. et al. J Infect Dis. 187, 631-639 (2003).
【非特許文献19】Berman, B. Int. J. Dermatol. 29, 7-11 (2002).
【非特許文献20】Smith, R. et al. Genome Res. 6, 454-462 (1996).
【非特許文献21】Quandt, K. et al. Nucleic Acids Res. 23, 4878-4884 (1995).
【非特許文献22】Xu, Y. et al. Nature 408, 111-5 (2000).
【発明の概要】
【0007】
本発明に従うと、配列番号1のアミノ酸配列又は変異体又はそれらの断片を含む単離されたポリペプチドが提供される。
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列又は変異体又はそれらの断片を含む単離されたポリペプチドも提供する。
【0008】
本発明の一つの態様において、変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む。本発明の別の態様において、変異体は、配列番号1又は2のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0009】
本発明の一つの態様において、変異体は欠失又は挿入修飾を含む。該変異体は、翻訳後修飾も含むことができる。
本発明の一つの態様において、該断片は、配列番号1又は2の少なくとも12の連続したアミノ酸を含むペプチドである。
【0010】
本発明の一つの態様において、本明細書で前に記載したポリペプチドは、トール様レセプター活性を示す。該トール様レセプターはTLR14活性であることができる。
本発明の一つの態様において、該ポリペプチドは免疫調節活性を示す。
【0011】
本発明は、本明細書で前に記載したポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。
本発明はさらに、配列番号3の核酸配列又はその変異体又は断片、又はそれらと相補的な配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0012】
本発明はさらに、配列番号4の核酸配列又はその変異体又は断片、又はそれらと相補的な配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
本発明の一つの態様において、該ポリヌクレオチドは、配列番号3又は4の核酸配列と少なくとも70%同一である核酸配列を含む。
本発明の別の態様において、該断片は配列番号3又は4の少なくとも17の連続した核酸を含む。
【0013】
本発明の一つの態様において、該ポリヌクレオチドは、前記セグメントをコードする天然cDNAと少なくとも80%の同一性を示す。
本発明の一つの態様において、該ポリヌクレオチドは、トール様レセプター又はペプチド又はそれらの融合タンパク質をコードする。
【0014】
本発明は、配列番号3、配列番号4の核酸配列又は変異体又はそれらの断片、又はそれらと相補的な配列を含む組換え核酸も提供する。
本発明はさらに、配列番号1又は2のアミノ酸配列又は変異体又はそれらの断片を含む精製されたタンパク質又はペプチドを提供する。好ましくは、該タンパク質又はペプチドの断片は、配列番号1又は2の少なくとも12の連続するアミノ酸を含む。
【0015】
本発明の一つの態様において、該タンパク質又はペプチドは哺乳類起源である。該タンパク質はヒト起源であることができる。
本発明の一つの態様において、該タンパク質又はペプチドは、少なくとも100kDaの分子量を有する。該タンパク質又はペプチドはグリコシル化形態であることができる。
【0016】
本発明の一つの態様は、配列番号1又は2のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質又はペプチドを提供する。
本発明のタンパク質又はペプチドは、トール様レセプター官能性/活性を示すことができる。
【0017】
本発明は、配列番号1又は2又は変異体又はそれらの断片から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質も提供する。該タンパク質はトール様レセプタータンパク質、特にTLR14であることができる。
【0018】
本発明は、本発明のタンパク質又はペプチドの抗原性断片も提供する。
本発明は、本明細書において前に記載したポリヌクレオチドを含む組換えベクターも提供する。本発明は、該組換えベクターを含む宿主細胞も提供する。本発明はさらに、活性成分として該組換えベクターを含む遺伝子療法剤を提供する。
【0019】
本発明の一つの側面は、本明細書において前に記載したポリヌクレオチドを含むアジュバントを提供する。
本発明は:
配列番号1又は2のアミノ酸配列又はそれらの断片又は変異体を含むタンパク質;及び
検出又は精製タグ;
のいずれか一つ又はそれより多くを含む融合化合物又はキメラ分子も提供する。
【0020】
本発明の一つの態様において、該検出又は精製タグは、FLAG配列、His6配列、Ig配列及び別のレセプタータンパク質の異種ポリペプチドのいずれか一つ又はそれより多くから選択される。
【0021】
本発明は、配列番号1又は2のアミノ酸配列及びTLRリガンドを含む、組換え又は合成的に生成されたタンパク質を含むリガンド/レセプターも提供する。好ましくは、TLRリガンドはCpG核酸である。
【0022】
本発明は、本明細書において前に記載したタンパク質の抗原決定基を含む免疫原も提供する。
本発明はさらに、本明細書において前に記載したポリペプチド又はタンパク質又はペプチドのエピトープに特異的に結合する、モノクローナル又はポリクローナル抗体又はそれらの断片を提供する。該抗体は、固定化された形態で調製することができる。該抗体は、ビーズ、磁性ビーズ、スライド又は容器へのコンジュゲーション又は付着により固定することができる。該抗体は、臭化シアン活性化セファロースへ固定化させる、又はグルタルアルデヒド架橋有り又は無しでポリオレフィン表面へ吸着させることができる。
【0023】
本発明は、トール様レセプター活性を変調する化合物を同定するための方法も提供し、それは:
配列番号1又は2のアミノ酸配列又は変異体又はそれらの断片を含むポリペプチドと試験サンプルを接触させること;
トール様レセプター活性のマーカーについてモニターすること;及び
トール様レセプター活性を変調する化合物を同定すること;
の工程を含む。
【0024】
本発明の一つの態様において、該トール様レセプター活性のマーカーは:
(i)NFカッパB活性化
(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は
(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン
のいずれか一つ以上を含む。
【0025】
一つの態様において、該方法は、各(i)から(viii)の少なくとも2つの、試験サンプルと比べた量の相違を決定する工程を含む。
別の態様において、該方法は、各(i)から(viii)の少なくとも3つの、試験サンプルと比べた量の相違を決定する工程を含む。
【0026】
一つの場合において、試験サンプルのタンパク質と比べた量が決定される。もしくは、核酸マイクロアレイを使用して試験サンプルのmRNAと比べた量が決定される。トール様レセプター活性はTLR14活性であることができる。
【0027】
本発明の一つの態様において、TLR活性を活性化する、又は阻害する化合物は:
(i)NFカッパB活性化
(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は
(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン
の少なくとも一つ以上の、試験サンプルと比較した量、発現、活性又はリン酸化を決定することにより同定される。
【0028】
別の態様において、TLR活性を変調することが可能な化合物は、本明細書において前に記載した方法により同定される。
本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容できる坦体を含む医薬組成物も提供する。
【0029】
本発明は:配列番号1又は2のアミノ酸配列を含むTLR14ポリペプチド又は配列番号3又は4の核酸を含むポリヌクレオチドの活性を変調する試薬又は化合物;及び
薬学的に許容できる坦体;
を含む医薬組成物も提供する。
【0030】
本発明の一つの態様において、試薬はTLR14アゴニスト又はアンタゴニストである。
好ましくは、坦体化合物は、水、塩水及び緩衝液のいずれか一つ以上から選択される水性化合物である。該組成物は経口、経直腸、経鼻、局所又は非経口投与の形態であることができる。
【0031】
本発明の一つの態様において、該化合物又は組成物は、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、心血管疾患、CNS疾患、腫瘍性疾患及び感染性疾患及び/又は免疫仲介障害のいずれか一つ以上の治療のための医薬の製造において使用される。
【0032】
本発明の一つの態様において、障害は、感染、外傷又は損傷、慢性炎症性疾患、移植片拒絶又は移植片対宿主疾患、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、タイプ1糖尿病又は関節リウマチ、喘息又はアトピー疾患及びアレルギー性脳脊髄炎により誘発された敗血症又は急性炎症のいずれか一つ以上から選択される。
【0033】
他の免疫仲介障害には、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、アテローム性動脈硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、シェーグレン症候群に二次的な乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬合反応によるアレルギー応答、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー喘息、皮膚紅斑性狼瘡、硬皮症、鞘膜炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病逆転反応、らい性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、突発性両側性進行性感音性難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、突発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェグナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スチーブンス−ジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス眼症、サルコイド症、原発性胆汁性肝硬変、後部葡萄膜炎、間質性肺線維症、アルツハイマー病又は小児脂肪便症のいずれか一つ以上が含まれる。
【0034】
本発明はさらに、配列番号1又は2のアミノ酸配列を有するTLR14ポリペプチド又は変異体に対するアゴニスト又はアンタゴニストを提供する。
本発明は、細胞と哺乳類TLR14のアゴニスト又はアンタゴニストを接触させることを含む、細胞又は組織培養細胞の生理機能又は発育を変調する方法も提供する。
【0035】
本発明はさらに、NF−κB活性化を阻害する又は促進することが可能な化合物をスクリーニングする方法を提供し:
本明細書において前に記載したタンパク質をコードする遺伝子、及びNF−κBの活性化に付随する検出可能なシグナルを提供する成分を有する細胞を提供すること;
形質転換細胞中の遺伝子の発現を提供する条件下で形質転換細胞を培養すること;
形質転換細胞とスクリーニングのための一つ又はそれより多くの化合物を接触させること;
検出可能なシグナルを測定すること;及び
検出可能なシグナルを測定することにより活性化剤化合物又は阻害剤化合物を単離すること又は同定すること;
の工程を含む。
【0036】
一つの態様において、本発明は、医薬化合物として単離された又は同定された化合物を最適化することの工程を含む。
本発明は、トール様レセプター活性を変調することが可能な化合物をスクリーニングするためのキットも提供し:
本発明のタンパク質をコードする遺伝子、及びNF−κBの活性化により検出可能なシグナルを提供する成分を有する細胞;
検出可能なシグナルを測定するための試薬;
を含む。
【0037】
本発明の一つの態様において、遺伝子はトール様レセプターTLR14をコードする。
本発明は、免疫性又は炎症性障害の治療のための医薬の製造における、配列番号1又は2のアミノ酸配列を有するTLR14の活性を阻害することができる配列番号1又は2のアミノ酸配列の断片又は変異体を含むポリペプチドの使用を提供する。
【0038】
本発明は、アジュバント又はワクチン製剤の製造における、本明細書において前に記載したポリペプチド、ポリヌクレオチド又は化合物の使用も提供する。
本発明は哺乳類レセプター、トール様レセプター14(TLR14)及びその生物学的活性に関する。それは該ポリペプチドをコードする核酸、及びその生産及び使用のための方法を含む。本発明の核酸は、本明細書に含まれているクローン化相補DNA(cDNA)配列とのそれらの類似性により一部特徴付けられる。
【0039】
特定の態様において、本発明は、配列番号1又は2と少なくとも12アミノ酸にわたって同一性を示す実質的に純粋な又は組換えTLR14タンパク質又はペプチド、配列番号1又は2のTLR14の天然配列、TLR14配列組成物を含む融合タンパク質:新規TLR(TLR14)の群より選択される組成物を含む。具体的態様において、組成物は、配列番号1又は2の成熟配列を含むか、又は翻訳後修飾を欠いており、又は組成物は、ヒトのような霊長類を含む哺乳類から選択される温血動物からのものであり、配列番号1又は2の少なくとも一つのポリペプチドを含んでなり;グリコシル化されており、天然のグリコシル化で少なくとも100kDaの分子量を有し、合成ポリペプチドであり;別の化学部分にコンジュゲートされており;天然配列よりも5分の1の置換しかなく又は天然配列からの欠失又は挿入変異体である、タンパク質又はペプチドであることができる。具体的態様において、TLR、TLRの抗原性断片、TLRに対する抗体、TLRに対する抗体断片、TLRリガンドに対する抗体が固定化された形態を含む。固定化は、ビーズ、磁性ビーズ、スライド又は容器へのコンジュゲーション又は付着によるものであることができる。固定化は、当該技術分野では公知の方法による臭化シアン活性化セファロースへの固定化、又はグルタルアルデヒド架橋有り又は無しでのポリオレフィン表面への吸着であることができる。
【0040】
他の態様は、滅菌TLR14タンパク質又はペプチド又はTLR14タンパク質又はペプチド及び担体を含んでなり、担体は水、塩水及び/又は緩衝液を含む水性化合物であり、及び/又は経口、経直腸、経鼻、局所又は非経口投与のために製剤されている。
【0041】
特定の融合タンパク質態様において、本発明は、配列番号1又は2の成熟タンパク質配列、FLAG又はHis6又はIg配列を含む検出又は精製タグ;又は別のレセプタータンパク質配列を含む融合タンパク質を提供する。
【0042】
多様なキット態様は、TLR14タンパク質又はポリペプチド、及び:タンパク質又はポリペプチドを含むコンパートメント(compartment);及び/又はキット中の試薬の使用又は廃棄のための説明書、を含むキットを含む。
【0043】
結合化合物態様は、TLR14タンパク質に特異的に結合する抗体からの抗原結合部位を含むものを含み、該タンパク質は霊長類タンパク質であり;結合化合物はFv、Fab又はFab2断片であり;結合化合物は別の化学部分又は抗体にコンジュゲートされており;配列番号1又は2の成熟ポリペプチドのペプチド配列に対して産生され;成熟TLR14に対して産生され;精製ヒトTLR14に対して産生され;免疫選択されており;ポリクローナル抗体であり;変性TLR14に結合し;少なくとも30μMの抗原に対するKdを示し;ビーズ又はプラスチック膜を含む固体基質に結合されており;滅菌組成物中にあるか又は放射性又は蛍光ラベルを含む検出可能なようにラベルされている。結合組成物キットは多くの場合、結合化合物及び前記結合化合物を含むコンパートメント;及び/又は試薬の使用又は廃棄のための説明書をキット中に含む。多くの場合、キットは定性的又は定量的分析を行うことが可能である。
【0044】
例えば、免疫原性量の霊長類TLR14で免疫系を免疫化することを含む抗体を作製する方法、又はこうした抗体と哺乳類TLR14タンパク質又はペプチドを接触させ、それにより抗原/抗体複合体を形成させることを含む抗原/抗体複合体を産生する方法が提供される。
【0045】
当該技術分野で普通に実践される免疫化法を使用することができ、それは文献に詳しく記載されている。
他の組成物には、滅菌結合化合物又は結合化合物及び担体を含む組成物が含まれ、該担体は水、塩水及び/又は緩衝液を含んでいる水性であり、及び/又は経口、経直腸、経鼻、局所又は非経口投与のために製剤されている。
【0046】
核酸態様には、TLR14又はペプチド又は融合タンパク質をコードする、単離された又は組換え核酸が含まれ、該TLRは哺乳類からのものであり;又は配列番号3又は4の抗原性ペプチド配列をコードし;複数の配列番号3又は4の抗原性ペプチド配列をコードし;配列番号3又は4からの少なくとも17連続するヌクレオチドを含んでなり、前記セグメントをコードする天然cDNAと少なくとも80%の同一性を示し;発現ベクターであり;さらに複製の起点を含んでなり;天然起源であり;放射性ラベル、蛍光ラベル又は免疫原性ラベルのような検出可能なラベルを含んでなり;合成ヌクレオチド配列を含んでなり;6kB未満、好ましくは3kB未満であり;霊長類を含む哺乳類からであり;天然完全長コード配列を含んでなり;前記TLRをコードする遺伝子のためのハイブリダイゼーションプローブであり;又はPCRプライマー、PCR生成物又は変異誘発性プライマーである。こうした組換え核酸を含む細胞、組織又は器官も提供される。好ましくは、細胞は原核細胞;真核細胞;細菌細胞;酵母細胞;昆虫細胞;マウス細胞;哺乳類細胞;霊長類細胞又はヒト細胞である。こうした核酸、及び前記核酸を含むコンパートメント;さらに霊長類TLR14タンパク質又はポリペプチドを含むコンパートメント;及び/又はキットの試薬の使用又は廃棄についての説明書;を含むキットが提供される。多くの場合、キットは定性的又は定量的分析を行うことが可能である。
【0047】
リガンド/レセプター複合体を生成させる方法も提供され、組換え又は合成的に生成されたタンパク質を含む実質的に純粋なTLR14と候補TLRリガンドを接触させることを含んでなり、それにより前記複合体が形成されることを可能にする。
【0048】
TLRリガンドとは、TLRポリペプチド、この場合TLR14ポリペプチドに特異的に結合する分子を指している。ほとんどの場合、TLRリガンドは、適した条件下でTLRと接触させた場合、TLRシグナル伝達も誘導するであろう。
【0049】
本発明は、細胞又は組織培養細胞の生理学的機能又は発育を変調する方法も提供し、該細胞と哺乳類TLR14のアゴニスト又はアンタゴニスト接触させることを含む。
本発明はマーカーとして以下のマーカーの少なくとも一つを使用し、TLR14の活性を変調する試薬を同定する又は評価する方法に関する:(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン。
【0050】
本発明は、(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカインの細胞又は組織における発現、量、活性又はリン酸化を改変する試薬の使用にも関する。
【0051】
本発明は新規TLR14タンパク質の発見、及びTLR14の阻害及び活性化が(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカインの活性化を導くことが可能なシグナル分子の量、発現、活性又はリン酸化を決定することにより検出することが可能であることに基づいている。
【0052】
本発明の一つの態様は、(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカインの、試験サンプルに対するレベルの相違を決定することにより、TLR14活性化又は阻害の効果をモニタリングするための方法を提供する。
【0053】
本明細書で使用される「レベル」には、限定されるわけではないが、タンパク質の量、mRNAの発現量、遺伝子活性、タンパク質活性及びリン酸化の量が含まれる。
試験サンプルは、限定されるわけではないが、ペプチド核酸(PNA)、抗体、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ホルモン及び小分子を含むことができる。試験化合物は、基準免疫賦活性核酸の変異体も含むことができる。これらは天然核酸源、ゲノム核又はミトコンドリアDNA又はcDNAから得られても、又は合成物(例えば、オリゴヌクレオチド合成により生成される)であってもよい。
【0054】
それ故、一つの側面において、本発明はTLR14活性を活性化する又は阻害する試薬を同定する又は評価するための方法に関し、以下のマーカー:(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン;の少なくとも一つの、試験サンプルに対する量、発現、活性又はリン酸化の相違を決定することを含む。
【0055】
別の態様において、こうした方法は、上に定義した(i)〜(viii)の各々の少なくとも二つ、少なくとも三つの、試験サンプルに対する量の相違を決定することを含む。
本発明の一つの態様において、mRNAの試験サンプルに対する量の相違が決定され、及び、例えば、核酸マイクロアレイの使用により決定することが可能である。
【0056】
本発明の一つの態様において、タンパク質の試験サンプルに対する量の相違が決定される。
本発明の別の側面は、TLR14の活性を変調する試薬を同定する又は評価するための方法に関し、前記方法は:(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン、を含む。別の態様において、こうした方法は、上に定義した(i)〜(viii)の各々の少なくとも二つ、少なくとも三つの、試験サンプルに対する量の相違を決定することを含む。
【0057】
TLR14の活性を変調する試薬を同定する又は評価するための方法の好ましい態様において、前記方法は:(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン、を含む。別の態様において、こうした方法は、上に定義した(i)〜(viii)の各々の少なくとも二つ、少なくとも三つの、試験サンプルに対する量の相違を決定することを含む。
【0058】
配列相同性
本発明の特に好ましいヌクレオチド配列は、配列番号1又は配列番号2に示したヒト配列である。配列番号3のDNAによりコードされているアミノ酸の配列は配列番号1に示されている。配列番号4のDNAによりコードされているアミノ酸の配列は配列番号2に示されている。
【0059】
一つより多くのコドンが同一のアミノ酸をコードすることが可能である遺伝子コードの既知の縮重のため、DNA配列は配列番号3に示されたものから変化することが可能であり、そしてそれでもなお配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている。こうした変異体DNA配列はサイレント変異を生じることができるか(PCR増幅の間に生じる)、又は天然配列の計画的な変異誘発の生成物であることが可能である。
【0060】
本発明はそれ故、(a)配列番号1のヌクレオチド配列を含むDNA(b)配列番号3のポリペプチドをコードするDNA(c)中ストリンジェンシー条件下で(a)又は(b)のDNAにハイブリダイゼーション可能な、及び本発明のポリペプチドをコードするDNA;(d)高ストリンジェンシー条件下で(a)又は(b)のDNAにハイブリダイゼーション可能な、及び本発明のポリペプチドをコードするDNA、及び(e)(a)、(b)、(c)又は(d)に定義したDNAに対する遺伝子コードの結果として縮重している及び本発明のポリペプチドをコードするDNA、から選択される、本発明のポリペプチドをコードする単離されたDNA配列を提供する。もちろん、こうしたDNA配列によりコードされているポリペプチドは本発明に包含される。
【0061】
本発明はそれ故、(a)天然哺乳類インターフェロンアルファ14アレルc遺伝子のコード領域から誘導されたDNA;(b)配列番号3のDNA;(c)中ストリンジェンシー条件下で(a)又は(b)のDNAにハイブリダイゼーション可能な、及び生物学的に活性なインターフェロンアルファ14ポリペプチドをコードするDNA;及び(d)(a)、(b)又は(c)に定義したDNAに対する遺伝子コードの結果として縮重している及び生物学的に活性なインターフェロンアルファ14ポリペプチドをコードするDNA;から選択される、生物学的に活性なヒトインターフェロンアルファ14ポリペプチドをコードする均等で単離されたDNAを提供する。
【0062】
本明細書で使用される中ストリンジェントの条件は、例えば、DNAの長さに基づいて当業者は容易に決定することが可能である。基本的条件は、Sambrook et al. Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 2 ed. Vol.1, pp.1.101-104, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989) に示されている。高ストリンジェントの条件も、例えば、DNAの長さに基づいて当業者は容易に決定することが可能である。
【0063】
本発明の態様としてまた含まれるものは、不活性化N−グリコシル化部位(単数又は複数)、不活性化プロテアーゼプロセシング部位(単数又は複数)又は保存的アミノ酸置換(単数又は複数)を含むポリペプチド断片及びポリペプチドをコードするDNAである。
【0064】
別の態様において、本発明の核酸分子は、天然の配列と少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列も含む。核酸分子が、天然の配列と少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、又は少なくとも99.9%同一である配列を含む態様も企図される。
【0065】
パーセント同一性は、目視検査及び数学的計算により決定することができる。もしくは、二つの核酸配列のパーセント同一性は、Devereux et al. (Nucl. Acids Res. 12:387, 1984) により記載され、及びUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group (UWGCG) から入手可能なGAPコンピュータープログラム、バージョン6.0を使用して配列情報を比較することにより決定することが可能である。GAPプログラムのための好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての単項比較マトリックス(同一性に対して1及び非同一性に対して0の値を含んでいる)、及びSchwartz and Dayhoff, eds., Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358, 1979 に記載されているGribskov及びBurgess、Nucl. Acids Res. 14:6745, 1986 、の加重比較マトリックス;(2)各ギャップについて3.0のペナルティー及び各ギャップ中の各シンボルについての追加の0.01ペナルティー;及び(3)末端ギャップについてはペナルティー無し、が含まれる。配列比較の技術分野で当業者により使用されている他のプログラムも使用することができる。
【0066】
本発明は、ポリペプチドの生成において有用な単離された核酸も提供する。こうしたポリペプチドは多数の慣用技術のいずれかにより調製することができる。インターフェロンアルファ14ポリペプチド又はそれらの望まれる断片をコードするDNA配列を、ポリペプチド又は断片の生成のための発現ベクター内にサブクローン化することができる。DNA配列を、適したリーダー又はシグナルペプチドをコードする配列内に都合よく融合する。もしくは、所望の断片を既知の技術を使用して化学的に合成することができる。DNA断片は、完全長クローン化DNA配列の制限エンドヌクレアーゼ消化によっても生成することができ、アガロースゲル上での電気泳動により単離される。必要なら、所望のポイントに5’又は3’末端を再構築するオリゴヌクレオチドを、制限酵素消化により発生したDNA断片に結合させることができる。こうしたオリゴヌクレオチドは、所望のコード配列の上流に制限エンドヌクレアーゼ切断部位をさらに含有し、及びコード配列のN末端に開始コドン(ATG)を位置させることができる。
【0067】
公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法も、所望のタンパク質断片をコードするDNA配列を単離する、又は増幅するために使用することができる。該DNA断片の所望の末端を規定するオリゴヌクレオチドを5’及び3’プライマーとして使用する。オリゴヌクレオチドは、発現ベクター内への増幅されたDNA断片の挿入を容易にするため、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を追加的に含有することができる。PCR技術は、Saiki et al, Science 239:487 (1988); Recombinant DNA Methodology, Wu et al., eds., Academic Press, Inc., San Diego (1989),pp. 189-196; 及びPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, innis et al., eds., Academic Press, Inc. (1990) 、に記載されている。
【0068】
本発明は、天然に存在する又は組換えDNA技術を含む方法のような多様な技術を介して生成されるものを含む多様な形態のポリペプチド及びそれらの断片を包含する。例えば、インターフェロンアルファ14ポリペプチドをコードするDNAは、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発を含むインビトロ変異誘発及びインビトロ核酸合成により配列番号3から誘導することが可能である。こうした形態には、限定されるわけではないが、誘導体、変異体及びオリゴマー、ならびに融合タンパク質又はそれらの断片が含まれる。
【0069】
本発明のポリペプチドは、配列番号1の核酸配列によりコードされる完全長タンパク質を含む。特に好ましいポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。
本発明のポリペプチドは膜に結合されていてもよいし、又は分泌されていても、それ故可溶性であってもよい。可溶性ポリペプチドは、それらが発現される細胞から分泌されていることができる。一般に、可溶性ポリペプチドは、培養培地から所望のポリペプチドを発現する無傷の細胞を分離すること(例えば、遠心分離により)、及び所望のポリペプチドの存在について培地(上清)をアッセイすることにより同定すること(及び非可溶性膜結合対応物と区別すること)ができる。培地中のポリペプチドの存在は、該ポリペプチドが細胞から分泌され、及びそれ故タンパク質の可溶性形であることを示している。
【0070】
異なる長さのポリペプチド断片も本明細書において提供される。天然に存在する変異体ならびにポリペプチド及び断片の誘導された変異体も本明細書において提供される。
本発明はさらに医薬組成物に関する。該組成物は:(a)TLR14ポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性を変調する試薬及び(b)薬学的に許容できる坦体を含む。該試薬はTLR14アゴニスト又はアンタゴニストであることができる。該組成物は、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、心血管疾患、中枢神経系疾患、腫瘍性疾患及び感染性疾患のような疾患を治療するために使用することができる。
【0071】
当業者は、医薬担体の選択には生理学的に適した化合物が含まれること、及び化合物の選択が投与経路及び意図された投与計画に依存することを理解するであろう。
治療/療法
本明細書において使用される用語「治療」とは、ヒト又は非ヒト動物に利益となることが可能であるいずれかの治療法を指す。該治療は、存在している状態に関していてもよいし、又は予防的であってもよい(予防的治療)。治療は、治療的、軽減的又は予防的効果を含むことができる。
【0072】
より具体的には、「療法的」及び「予防的」治療への本明細書での言及は、その最も広い前後関係で考えられるべきである。用語「療法的」は、対象が完全に回復するまで治療されることを必ずしも意味するわけではない。同様に、「予防的」は、対象が最終的に疾患状態にはならないであろうことを必ずしも意味するわけではない。
【0073】
従って、療法的及び予防的治療には、特定状態の徴候の寛解、又は特定状態を発生する危険性を防止する又はさもなくば軽減することが含まれる。用語「予防的」は、特定状態の重度又は発症を軽減することと考えることができる。「療法的」は、存在している状態の重度を軽減することもできる。
【0074】
本発明は、特に示さない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組換え生物学、微生物学、組換えDNA技術及び免疫学の一般に使用される技術を含む方法を記載しており、それらのすべては当該分野で十分に記述されている。
【0075】
本発明はさらに、哺乳類細胞から調製された細胞及び組織抽出物で同定された又は精製された、TLR14の内在性リガンド(単数又は複数)に関する。
本発明はさらに、TLR4シグナル伝達の変調に関し、TLR14はTLR4シグナル伝達を促進する又は阻害する。
【0076】
本発明に従ったペプチドは、該ペプチドの活性又は機能に影響する又は変調する分子のスクリーニングに使用することができる。こうした分子とペプチドの相互作用は、療法的及び予防的状況で有用であることができる。
【0077】
新規薬剤の同定を導く医薬品研究は、先導化合物が発見される前又はさらには後の両方で、非常に多数の候補物質のスクリーニングを含むことがよく知られている。こうした手段は、癌を治療すること及び予防することに有用な可能性を有する物質のスクリーニングに有用である。ポリペプチドの変調剤として同定された物質は、インビボ使用のための療法剤の設計及び研究のための基礎を提供するので、これらの領域の療法における進歩を意味する。
【0078】
多様なさらなる側面において、本発明はスクリーニング及びアッセイ方法、及びそれらにより同定された物質に関する。
それ故、本発明のさらなる側面は、本発明のペプチドと相互作用する又は結合する、及び/又はその生物学的機能又は活性又は別の物質のそれらを妨害するペプチド又は化学化合物のような物質を、スクリーニングする又は探索する及び/又は入手する又は同定することにおける、本発明のペプチド(それらの断片及び誘導体を含む)の使用を提供する。例えば、本発明の一つの側面に従った方法は、本発明のペプチドを提供し、それと物質を接触させると、その接触は該ペプチドと該物質間の結合を生じることができる。結合は、定性的及び定量的の両方で、当業者には公知であろうさまざまな技術により決定することができる。
【0079】
ペプチド機能の変調剤として同定された物質は、天然のペプチド又は非ペプチドであることができる。非ペプチド「小分子」がしばしば多くのインビボ医薬使用に好ましい。従って、物質のミメティック(mimetic)又は模倣体(mimic)を医薬使用のために設計することができる。既知の医薬として活性な化合物について模倣体を設計することは、「先導」化合物に基づいた医薬の開発への既知のアプローチである。このことは、活性化合物を合成するのが困難である又は費用がかかる場合、又は投与の特定の方法に対して適切ではない場合(例えば、ペプチドは消化管中でプロテアーゼにより迅速に分解される傾向があるので、経口組成物の活性剤として適切ではない)に望ましい。模倣剤設計、合成及び試験は、目標とする特性について多数の分子をランダムにスクリーニングすることを避けるために使用することができる。
【0080】
所与の目標特性を有する化合物からの模倣体の設計においては、一般にいくつかの工程がとられる。第一に、目標特性の決定において決定的及び/又は重要である化合物の特定の部分を決定する。ペプチドの場合、このことはペプチド中のアミノ酸残基を系統的に変化させることにより、例えば、各残基を順に置換することにより行うことが可能である。化合物の活性領域を構成するこれらの部分又は残基はその「ファルマコフォア」として知られている。
【0081】
ファルマコフォアが決定されたら、起源範囲からのデータ、例えば、分光学的技術、X線回析データ及びNMRを使用して、その物理学的特性、例えば、立体化学、結合、サイズ及び/又は電荷に従ってその構造をモデル化する。コンピューター分析、類似性マッピング(原子間の結合よりもむしろファルマコフォアの電荷及び/又は容量をモデル化する)及び他の技術も、このモデル化プロセスに使用することが可能である。
【0082】
このアプローチの変法においては、リガンドの三次元構造及びその結合パラメーターをモデル化する。このことは、リガンド及び/又は結合相手が結合によりコンホメーションを変化させる場合に特に有用であり、モデルが模倣体の設計を考慮することを可能にしている。
【0083】
次に鋳型分子が選択され、その上にファルマコフォアを模倣する化学基を接ぎ合わせることが可能である。該鋳型分子及び接ぎ合わされた該化学基は、模倣体を合成するのが容易であるように、薬学的に許容できそうであるように、及びインビボで分解されないように、一方、先導化合物の生物学的活性が残るように都合よく選択することが可能である。このアプローチで見出されたミメティック及び模倣体は、それらが目標特性を有しているか、又それらがどの程度それを示すかどうかを見るためにスクリーニングすることが可能である。インビボ又は臨床試験のための一つ又はそれより多くの最終模倣体に達するため、さらなる最適化又は修飾を実施することが可能である。
【0084】
それ故、本発明のさらなる側面は、本発明の少なくとも一つのペプチドと推定結合分子又は他の試験物質間の結合活性を評価するためのアッセイを提供し、それは、少なくとも一つのペプチドと推定結合分子又は他の試験物質を接触させること、及び少なくとも一つのペプチドと結合分子又は試験物質間の相互作用又は結合を決定すること、の工程を含み、少なくとも一つのペプチドと結合分子間の結合は、少なくとも一つのペプチドの有用性の指標である。
【0085】
本発明のペプチドと相互作用する物質は、その活性を変調させるために、単離する及び/又は精製する、製造する及び/又は使用することができる。
二つの分子間の結合について試験する本発明のアッセイのため、本発明の全ペプチドを使用する必要はない。当業者には既知のいずれか適した方法で、断片を発生させ及び使用することができる。
【0086】
さらに、本発明のアッセイの詳細なフォーマットは、日常の技術及び知識を使用し、当業者が変更することもできる。
詳細な説明
我々は、トール様レセプター/インターロイキン−1レセプター(TLR)ファミリーのメンバーと顕著な相同性を示す新規遺伝子を同定した。細胞に基づいたアッセイにおいて、この新規レセプターは転写因子NF−κB及びIRF3を活性化し、抗ウイルスサイトカイン、RANTESの産生を駆動する。該タンパク質はTLR2、TLR4及び普遍的TLRアダプター、MyD88と相互作用する。我々はレセプターTLR14と名付けた。
【0087】
この推定レセプターの発現は、微生物産物、例えば、LPSにより増強され、それが免疫変調剤として機能することができることを示唆している。このことの裏付けとして、細胞がTLR14を発現するベクターでトランスフェクトされた場合、転写因子NF−κB及びIRF3が活性化された。NF−κB及びIRF3の両方が、細菌及びウイルス病原体の除去における中核であるので、TLR14を阻害する又は活性化することは、炎症性疾患の治療について見込みのある新規アプローチである。加えて、高レベルのTLR14を血清中に見出した。主としてこのレセプターの外部ドメインを含むTLR2の可溶型も、血清及び母乳中で見出された。TLR2のこの形態は、TLR2リガンドに対する活性免疫応答を抑えることにおいて保護的である。完全長TLR14ポリペプチド又はそれ自身の外部ドメインは類似の生物学的特性を有することができ、それ故、潜在的生物療法剤と考えることができる。
【0088】
LPS及びTLR4シグナル伝達経路の構成要素により調節される遺伝子を同定するため、マイクロアレイアプローチを使用した。上記のように、レセプター刺激後、TLR2及びTLR4からシグナルを伝達するためにはアダプター分子、Malが必要とされる。胚性幹細胞中のMalをコードする遺伝子を破壊するため、遺伝子標的化ベクターを使用した。これらの細胞を次ぎにLPSで処理し、ノックアウト及び野生型細胞間の遺伝子発現の相違を測定した。この方法において、トール様レセプター/インターロイキン−1レセプター(TLR)ファミリーのメンバーと顕著な相同性を示す遺伝子を同定した。
【図面の簡単な説明】
【0089】
本発明は、付随する図面に関連して、ほんの一例として与えられたそれらの以下の説明からより明瞭に理解されるであろう。
【図1A】図1Aは、ヒトTLR14の染色体位置の略図である。TLR14は線により示されている染色体7上の7pl5に位置している。それは4.7kbの長さであり、遺伝子CREB5及びCPVLが隣接している。転写の方向は矢印により示されている。TLR14は逆平行方向に転写される。この情報はwww.ncbi.nlm.nih.gov のNCBIウェブサイトから入手可能なヒトゲノムマップビュアーツールを使用して得られた;
【図1B】図1Bは、ヒトTLR14(配列番号1)についてのヌクレオチド配列を示している;
【図1C】図1Cは、マウスTLR14(配列番号2)についてのヌクレオチド配列を示している;
【図1D】図1Dは、ヒト(配列番号3)及びマウス(配列番号4)TLR14の予測タンパク質配列を示している。ヒトTLR14遺伝子の推定ORFは、811アミノ酸タンパク質をコードし、一方、マウスタンパク質は809アミノ酸の長さである。予測N末端シグナル配列及び膜貫通ドメインには下線が付されている。
【図1E】図1Eは、TLR4及びTLR14外側ドメインのアラインメントが示されている。推定TLRとヒトTLR4のアラインメントは、二つのレセプター間の高度な配列類似性を明らかにした。少なくとも六つのロイシンリッチリピートを同定することができ、boxにより強調されている。
【図2A】図2Aは、いくつかの組織において発現されたヒトTLR14のmRNA発現プロフィールである。新規TLRのヒト及びマウス形についての発現プロフィールはHUGEタンパク質データベースから入手可能である。該タンパク質をコードするmRNAの3’非翻訳領域を標的とするプライマーでRT−PCR反応を実行した。発現は試験されたすべての組織で検出され、腎臓;脳及び卵巣において最も高いレベルが生じた。
【図2B】図2Bは、ヒト組織サンプルにおけるTLR14のタンパク質発現プロフィールである。高い発現レベルが脳及び肺で検出された。
【図3】図3は、TLR14とTLRファミリーの他のメンバーの細胞質領域のアラインメントを示している。TLR14と他のTLRファミリーメンバーの細胞質領域のアラインメントは、推定レセプターがTLRに特徴的である類似の領域を共有していることを明らかにしている。特に二つの領域は相同的であり(Box1及び2)、タンパク質を含有するすべてのTlRドメインのシグナチャー配列と考えられる。TLR14のBox2はTLR3のものと同一である。
【図4】図4は、ヒトTLR14の推定プロモーター領域の略図である。TLR14の推定プロモーター領域は、Promoter Inspector及びMat Inspectorを使用して同定した。上記のすべての転写因子は0.8より大きなマトリックススコア*を有している。*マトリックススコアは、転写因子マトリックス内の保存ヌクレオチドに相当するプロモーター内の配列がどれほど近いかを測定している。有意な一致は>0.8である。
【図5】図5は、U373及び初代マウス胚性線維芽細胞においてLPSにより、及びまたLPSで処理したマウスにおいて誘導されたTLR14の発現を示している。(A)U373及びMEFは1μg/ml LPSで示された時間処理した。mRNAを単離し、RT−PCRを本文中に記載したように実施した。(B)マウスにLPSを腹腔内注射し、3時間放置した後に屠殺した。RT−PCRは対照未処理及びLPS処理マウスに対して行った。
【図6】図6は、TLRリガンドでの処理後の細胞におけるTLR14タンパク質の発現を示している。(A)ヒトグリオーマ細胞株、A172を種々の時間、Pam3Cys(1μg/ml)で処理し、TLR14の発現について探索した。(B)TLR4で安定的にトランスフェクトしたヒトHEK−293細胞を種々の時間LPS(1μg/ml)で処理し、TLR14の発現について探索した。(C)タンパク質抽出物を、対照未処理マウス及びLPSを注射してあるマウスの脳から調製した。抽出物はTLR14の発現について探索した。
【図7】図7は、TLR14活性が、HEK293及びU373星状細胞腫細胞においてNF−κB及びISREレセプター遺伝子発現を誘導することを示しているグラフである。TLR14活性はHEK293及びU373星状細胞腫細胞においてNF−κB及びISREルシフェラーゼ活性を駆動する。HEK293細胞をNF−κBレセプター構築物ならびに1、5及び10ngのTLR14でトランスフェクトした(A)。HEK293S(B)及びU373S(C)は、ISREレセプター構築物及び用量を増加させたTLR14(1、10及び100ng)でトランスフェクトした。24時間後、細胞を採取し、相対ルシフェラーゼ活性を決定した。
【図8】図8は、TLR14がU373星状細胞腫細胞においてRantes産生を駆動することを示しているグラフである。RANTES産生は、増加させた用量のTLR14で24時間トランスフェクトされたU373細胞において、酵素結合免疫吸着アッセイにより測定した。データは空ベクターでトランスフェクトした細胞に対しての誘導倍数で表現されている。
【図9】図9は、TLR14とTIR−ドメイン含有タンパク質TLR2、TLR4及びMyD88との相互作用を示している。(A)TLR14をFlag−タグ付けTLR4、TLR2又はレセプターの突然変異形とHEK−293細胞内に同時トランスフェクトした。複合体を抗flagビーズで免疫沈降し、抗TLR14抗体で探索した。(B)TLR14をMyc−タグ付けMyD88とHEK−293細胞内に同時トランスフェクトした。複合体をプロテインAセファロースビーズに結合させた抗myc抗体で免疫沈降し、抗TLR14抗体で探索した。
【図10】図10は、TLR2と内因性TLR14との相互作用を示している。Flag−タグ付けTLR2をHEK−293細胞から免疫沈降し、ウエスタンブロットを抗TLR14抗体で探索して、TLR2と複合体形成した該内因性タンパク質の存在を検出した。
【図11】図11は、TLR14が細胞質中に存在し、血清中にも高レベルで見いだされることを示している。(A)細胞をLPSで刺激した後、細胞質及び膜分画に分離した。分画をTLR14の存在について探索した。(B)10%ウシ胎児血清を含有する細胞培養培地をウエスタンブロッティングにかけ、TLR14の存在について探索した。
【図12】図12は、示された時点についてLPSの(lμg/ml)での細胞刺激に続く、U373培養培地内へのTLR14の分泌を示している。分泌されたタンパク質はTLR14の完全長形態であるようであり、最大分泌は6時間で生じている。
【実施例】
【0090】
示された実施例は例示のためのみであり、本発明の範囲内の多様な変更及び修飾が当業者には明らかになるであろう。
材料及び方法
細胞培養
HEK293及びU373細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)を含み、100単位/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン及び2mM L−グルタミンを補給したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中で培養した。
【0091】
発現プラスミド
キメラTLRレセプターCD4−TLR4はR. Medzhitov (Yale University,New Haven, CT) から贈与された。TLR14 cDNA(KIAA0644)を含有するベクターはKazusa DNA Research Institute から供給され、続いてのPCRクローニングの標的として使用された。使用されたプライマーはHindIII及びEcoRVのための制限部位を含んでおり、以下のものであった:5'-GCAAGCTTATGGAGGCTGCCCGCGCCTTG (センス)(配列番号5);及び5'−GCGATATCGGCCTAAGCGTAGTCTGGGACGTCGTATGGGTAGTCGGCAAATCGC (アンチセンス)(配列番号6)。アンチセンスプライマーはトランスフェクト細胞中の翻訳されたタンパク質産物の発現を検出するため、9アミノ酸ヘマグルチニンエピトープタグをコードする配列を含んでいる。生じたEcoRI−HindIII断片を哺乳類発現ベクターpCDNA3.1(Invitrogen )の多クローニング部位内にライゲートした。
【0092】
Mal欠損胚性幹細胞の発生及びマイクロアレイ解析
Malをコードする遺伝子を欠く胚性幹細胞は相同的組換えにより発生させた。簡単には、マウス胚性幹細胞に、ネオマイシン耐性カセットでMal遺伝子が置き換えられたコード配列のほとんどを700bpエクソンがコードする標的化ベクターを電気穿孔した。標的化細胞をサザンブロッティングにより同定した後、Mal欠失についてホモ接合性クローンを発生させるために2回目の標的化にかける。変異体及び野生型細胞を種々の時間、LPSで刺激し、マイクロアレイ解析のためにRNAを抽出した。
【0093】
プロモーター分析
ヒトRikenクローンKIAA0644及び隣接領域の完全ヌクレオチド配列は、www.ncbi.nlm.nih.gov. のNational Center for Biotechnology Information (NCBI) ウェブサイトから得られた。転写されたヌクレオチド配列及びゲノム配列中のリピート配列の同定は、NIXアプリケーション(http://menu.hgmp.mrc.ac.uk )及びプログラムRepeat−masker(http://searchlauncher.bcm.tmc.edu )を使用して実施した(20)。転写因子結合部位予想はMatlnspector Release Professional(www.genomatix.de/cgi- bin/matinspector/matinspector.pl )を使用して実施した(21)。
【0094】
培養細胞からのmRNA単離
mRNAは、LPS(1μg/ml)で種々の時間処理した後、細胞から抽出した。簡単には、処理した細胞をペレット化し、1mlのTRI試薬(Sigma )で溶解した。クロロホルム(0.2ml)をサンプルに加え、混合物を12,00Ogで15分遠心分離した。RNAを含有する水相を除き、等量のイソプロパノールの添加により、混合物から全RNAを沈澱させた。12,000gで10分遠心分離した後、RNA含有ペレットを500μlの75%エタノールで洗浄した。エタノールのいずれの痕跡も除去し、ペレットを室温で10分放置して乾燥させた。ペレットを30μlのRNAseを含まない水に再懸濁し、−8O℃で保存した。
逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
RT−PCRをPromega ImpromptII RT−PCRキットを使用して実施した。逆転写反応は2工程で実施し、次ぎにPCR反応を合成されたcDNAに対して実施した。
【0095】
工程1:薄壁500μlPCRマイクロ遠心チューブ中で、1μlのランダムプライマーを4μlのRNAに加えた。遠心チューブを70℃で5分及び4℃で5分のサーマルサイクラーに置いた。
【0096】
工程2:成分の第二の組を加えた;1μlのデオキシヌクレオチド混合物(dNTP混合)(各dNTPを500μM)、5.5μlのPCR試薬用水、4.0μlの10X緩衝液、3.0μlの塩化マグネシウム、1μlのRNase阻害剤(1単位/μl)、1μlのRT(1単位/μl)。これでPCRチューブの総容量が20μlとなる。チューブを以下の時間及び温度、25℃で5分、42℃で60分、70℃で15分、のサーマルサイクラーに置いた。
【0097】
以下のものを薄壁500μlPCRマイクロ遠心チューブに加えた:5μlの10X緩衝液、1μlのdNTP(各dNTPを200μM)、1μlのPCRプライマー(各々0.4μl)、2〜5μlの鋳型DNA(cDNA)、1μlのTaq DNAポリメラーゼ混合物(0.05単位/μl)及びPCRチューブ中の総容量を50μlとなすのに十分な量のPCR試薬用水。増幅温度は以下の通りであった、変性/RT不活性化(工程1)94℃で2分、変性(工程2)94℃で15秒、アニーリング(工程3)55℃で30秒、伸長68℃で1分(工程2、3及び4を35回繰り返した)、最終伸長(工程5)68℃で5分。PCR産物を次ぎに1%アガロースゲルで電気泳動し、UVトランスルミナーターで可視化した。
【0098】
タンパク質発現の検出
推定タンパク質のC末端に方向付けられたペプチド抗体は、Eurogentec, Liege Science Park, Belgium で合成された。免疫化に使用されたペプチドは以下のアミノ酸から構成されていた−CGSLRREDRLLQRFAD(配列番号7)。細胞株を、示されたように種々の時間、TLRリガンドで処理した。冷PBSの添加により刺激を停止し、細胞をSDS−PAGEサンプル緩衝液中で溶解した。ウエスタンブロッティングのため、TLR14抗体を、0.5%Tween20を含有するトリス緩衝化塩水中で1:1000に希釈した。
【0099】
ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ
HEK293細胞又はU373細胞を96ウェルプレートに蒔き(ウェル当たり2x104細胞)、次の日、発現ベクター及びレポータープラスミドでトランスフェクトした。「Genejuice(商標)」(Novagen)を、製造元の説明書に従って一過性トランスフェクションに使用した。NF−κB又はIRF3を含んでいる実験については、80ngのNF−κB−又はISR3−ルシフェラーゼレポーター遺伝子(Stratagene )を、40ngのRenillaルシフェラーゼ内部対照プラスミド(Promega )と共に細胞内にトランスフェクトした。24時間後、細胞を受動溶解緩衝液(Promega )に採取し、レポーター遺伝子活性をルミノメーターで測定した。細胞が刺激される場合、LPS(Sigma )を採取に先立った6時間前に、1μg/mlの最終濃度で細胞に加えた。データは対照レベルに対して平均誘導倍数±s.d.で表現されている(代表的実験については3回の別々の実験から、各々3重に実施した)。
【0100】
酵素結合免疫吸着アッセイ
U373細胞を、TLRH発現プラスミドの増加させた用量(1、10及び100ng)でトランスフェクトした。細胞は37℃で24時間インキュベートした。96ウェルマイクロタイタープレートを、40ng/mlの最終濃度の捕獲抗体(マウス抗ヒトRANTES)で被覆した。24時間後、プレートを0.05%Tween20含有PBSで洗浄した。プレートを次ぎに1%BSA及び5%スクロース含有PBS中、室温で1時間ブロックした。細胞上清(100μl)を各ウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。次ぎに検出抗体(ビオチン化ヤギ抗ヒトRANTES)を10ng/mlの最終濃度でウェルに加えた。プレートを再び室温で2時間インキュベートした。洗浄後、100μlのストレプトアビジン−HRPを各ウェルに加え、プレートを覆い、室温で20分インキュベートした。最後に、100μlの基質溶液(R&D Systems 、カタログ番号DY999)を加え、続いて50μlの停止溶液(2N H2SO4)をウェルに加えた。各ウェルの光学密度を、450nmに設定されたマイクロプレートリーダーで測定した。
【0101】
共免疫沈降アッセイ
HEK293細胞を10cmのプレートに、1x105細胞/mlで蒔いた。次の日、細胞を3μgのflagタグ付けTLR2、TLR4又はMyc−タグ付けMyD88でトランスフェクトした。24時間後、1%NP40を含有するヘペス緩衝液中で細胞を溶解した。細胞溶解物は次ぎにM2抗flagアガロースビーズ(Sigma )とインキュベートした。3時間後、ビーズをヘペス緩衝液で3回洗浄し、20μlのSDS−PAGEサンプル緩衝液に再懸濁した。タンパク質サンプルを10%SDS−PAGEゲル上で流し、ウエスタンブロッティングのためにニトロセルロースに移した。生じたブロットを抗TLR14及び抗flag抗体で探索した。
【0102】
局在化研究
LPSでの刺激に先立った24時間前、細胞を10cmディッシュに1x105細胞/mlで蒔いた。膜及び細胞質分画を超遠心により調製し、TLR14の局在化を決定するためSDS−PAGE及びウエスタンブロッティングを行った。10%FCSを含有する培地(DMEM)を、SDS−PAGEに続いてTLR14の存在についてブロットした。
【0103】
TLR14をコードする遺伝子の特徴付け
予備的マイクロアレイ解析は、MaIノックアウト細胞において低発現レベルを示す6つの遺伝子を同定した。該遺伝子の5つはある程度特徴付けられていたが、残りの遺伝子は新規であり、そして本明細書において特徴付けられた。この遺伝子の配列は、Kazusa DNA Research Institute (www.Kazusa.or.jp) でのヒトcDNAプロジェクトの一部として、HUGE(Human Unidentified Gene-Encoded Large Proteins )タンパク質データベースから入手可能である。以下に概説する理由から、この新規遺伝子をTLR14と名付けた。
【0104】
我々は、NCBIから入手可能なMap Viewerツールを使用して、該遺伝子をヒト7番染色体に位置付けした(図1A)。該遺伝子は4.7kbの長さであり、CREB5及びCPVLカルボキシペプチダーゼが隣接していた。ヒト及びマウスTLR14についてのヌクレオチド配列は、それぞれ図1B及び1Cに示されている。予測されたタンパク質は811アミノ酸長であり(図1D)、すべての膜局在化タンパク質に共通する特色である、N末端シグナル配列を含有する。推定タンパク質のN末端も少なくとも6つのロイシンリッチリピートを含有し、いくつかのTLRの細胞外領域と高度に相同的である(TLR4が例として図1Eに与えられている)。
【0105】
発現プロフィールは、図2Aに示されているように、脳、腎臓及び卵巣における遺伝子産物の高い存在量を明らかにした(情報はKazusa DNA Research Institute から得られた)。TLR14のC末端に対するポリクローナル抗体を発生させた。免疫化に使用したペプチドはアミノ酸CGSLRREDDRLLQRFAD (配列番号7)を含む。抗体は、ヒト脳及び肺組織においておよそ81kDaのタンパク質を検出した(図2B)。
【0106】
上記のように、TLRファミリーのメンバーのすべてが細胞質TIRドメインを含有する。このドメインは約200アミノ酸に広がり、ファミリーメンバー間で、さまざまな程度の配列類似性を有している。3つの特定のboxを同定することが可能であり、それはファミリーメンバー間で高度に保存的である。box1はファミリーのシグナチャー(signature)配列と考えられ、一方、box2及び3はシグナル伝達について決定的なアミノ酸を含有する。TLRl及びTLR2のTIRドメインの結晶構造は、box2の周囲を中心とするコア構造要素を明らかにした(22)。BBループと名付けられたこの領域は、暴露された表面パッチ(patch)を形成し、中心的なプロリン又はアルギニン残基を含有する。これらのアミノ酸はループの先端に位置し、下流シグナル伝達成分との接触点を形成する。TLR14の詳細な検査は、それが高度に保存されたbox2及び同一視することができるbox1及び3(図3)を含有することも明らかにし、この新規タンパク質がTLRスーパーファミリーに属することを示唆している。
【0107】
TLR14の発現は、細胞をTLR2及びTLR4リガンドで処理した後に誘導される
上記のように、LPSへの暴露後、Malを欠く細胞においてはTLR14発現が無効にされる。このことは、問題とする遺伝子がLSP及びおそらく他のTLRリガンドにより調節されていることを示している。この問題をさらに追求するため、我々はNIXアプリケーション(http://menu.hgmp.mrc.ac.uk )及びMatInspector Release Professional(www.genomatix.de/cgi-bin/matinspector/ matinspector.pl)を使用して、TLR14のプロモーター領域及び可能な転写因子結合部位を同定した。機能性TLR14プロモーターはエクソン1近位の4kb領域内に含まれているようである。この領域のさらなる分析は、NF−κB、IRF7及びEts−1のようないくつかの転写因子のための推定結合部位を明らかにした(図4)。TLR14 mRNA発現の誘導は、炎症性刺激による細胞の処理に続いてのRT−PCRにより分析した。図5Aに示されたように、TLR14 mRNAの発現は、LPSへの暴露後の時間と共に、脳星状細胞腫細胞(U373)及び初代マウス胎児線維芽細胞(MEF)で誘導された。著しい増加もLPSで処理したマウスの脳から調製されたTLR14 mRNAのレベルで検出された(図5B)。発現の誘導は、図6Aに示されたように、TLR2リガンドPam3Cysでの処理後、ヒトグリオーマ細胞株、A172中のタンパク質レベルでも検出された。類似の効果が、TLP4で安定的にトランスフェクトされたHEK−293細胞で、LPSでの処理後に見られた(図6B)。加えて、図6Cに示されたように、TLR14タンパク質発現の増加が、LPSを注射したマウスの脳で観察された。
【0108】
TLR14は転写因子NF−κB及びIRF3を活性化する
上記のように、NF−κBはTLRスーパーファミリーのほとんどのメンバーにより活性化されるが、一方、IRF3活性化はTLR3及びTLR4に限定されている。TLR14がこれらの因子も活性化し、及び免疫応答を変調することができるかどうかを追求するため、該タンパク質をコードするcDNAを哺乳類発現ベクターpcDNA3.1内にクローン化し、NF−κB及びIRF3が結合するDNAの要素を含有するルシフェラーゼレポーター構築物を使用して機能性アッセイを実施した。該タンパク質はヘマグルチニン(HA)をコードするタグを含有し、発現は抗HA抗体を使用して多様な細胞株で発現を検出した(データは示されていない)。TLR14発現プラスミドがκB及びISREレポーター構築物とともに細胞内にトランスフェクトされた場合、ルシフェラーゼ活性が増強され(図7)、TLR4同様、TLR14がNF−κB及びIRF3の両方を活性化することを示唆している。予備的ELISAも、TLR14でトランスフェクトした細胞においてRANTES産生(IRF3誘導可能サイトカイン)の増加を示した(図8)。
【0109】
TLR14はTLRファミリーの他のメンバーと相互作用する
TIRドメイン含有タンパク質の共通の特色は、他のTIRドメイン含有タンパク質とホモ又はヘテロ二量体形成するそれらの能力である。TLR14が一方又は両方のレセプターと相互作用できるかどうかを決定するため、TLR14及びTIRドメイン含有レセプターTLR2及びTLR4で共免疫沈降実験を実施した。図9Aに示したように、TLR14は過剰発現されたTLR2及びTLR4と強く相互作用することを見出した。TLRのTIRドメイン中の保存的プロリン残基のヒスチジンへの変異はTIR−TIR相互作用を消滅させることが知られている(22)。従って、レセプターの変異体(P/H)形がTLR14と同時発現されると、TLR14とTLR2か又はTLR4との相互作用が著しく減少した。図9Bに示したように、TLR14は普遍的TIRドメイン含有アダプターMyD88とも相互作用することが見出された。このことは、TLR14がTIRドメイン含有タンパク質であるという考えを支持している。最後に、図10に示したように、TLR2及び内在性TLR14間の相互作用を検出することができた。このことを試験するため、HEK293細胞をflagタグ付けTLR2でトランスフェクトした。細胞を次ぎに溶解し、TLR2及びいずれかの相互作用するタンパク質と免疫沈降させるため、抗flagビーズとインキュベートした。ウエスタンブロッティング後、抗TLR14抗体を使用して、TLR14に相当するバンドを検出することができた。
【0110】
TLR14は血清中に高レベルで見出され、可溶性タンパク質として産生することができる
TLR14が原形質膜に局在化されているかどうかを決定するため、細胞分画を調製した。驚いたことに、TLR14は細胞の細胞質分画に見出された(図11A)。加えて、高レベルの該タンパク質がウシ胎児血清中に見出され(図11B)、該タンパク質は可溶性分泌タンパク質であることができることを示唆している。質量分光法的分析は、FCS中に存在するバンドは、ヒトTLR14のウシ相同体であったことを明らかにした(データは示されていない)。予備的実験も、LPSでの刺激後、該タンパク質がU373細胞から分泌されることを示した。分子量が完全長タンパク質の分子量に相当するので、該タンパク質は切断されていないようである。最大分泌は6時間で生じる。
【0111】
本発明は、細部にわたって変更することができる、本明細書で上に記載された態様に制限されない。
【背景技術】
【0001】
序論
トール様レセプター/インターロイキン−1レセプター(TLR)スーパーファミリーは、炎症及び細菌感染への宿主応答に中心的役割を果たしている。TLRファミリーのメンバーは、トール−IL−IR(TIR)ドメインと呼ばれる細胞質ドメイン及び一連のロイシンリッチリピートから成る細胞外領域により特徴付けられる。多様な微生物成分によるトール様レセプターの占拠は、誘導可能シクロオキシゲナーゼ、接着分子及びケモカインのような多数の炎症誘発性タンパク質の発現を導く。ヒトTLRは現在同定されている。最初に発見されたTLR、TLR4は細菌リポ多糖類(LPS)への応答のためには必須である(1、2)。TLR2はTLR1及び6とカップルして、各々ジアシル−及びトリアシル−リポペプチドを認識する。TLR5は細菌フラゲリンを認識し及び応答し(3)、そしてTLR9は、細菌DNA中に存在するメチル化されていないCpGモチーフの認識に必要とされる(4)。TLR11、12及び13は最近マウスにおいて記述されてきたが、ヒトオルソログは見いだされていない(5、6)。適切なリガンドによるTLRの刺激は、転写因子NF−κBの活性化、及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)p38、c−jun N末端キナーゼ(JNK)及びp42/p44の活性化も導く。
【0002】
NF−κBの活性化は、細胞質TIRドメイン含有アダプタータンパク質、MyD88に依存する(7、8、9)。MyD88は、アダプタータンパク質TRIFを動員するTLR3を除く全TLRファミリーに対してアダプタータンパク質として働く(10)。NF−κBを活性化することに加えて、TRIFは転写因子インターフェロン制御因子3(IRF3)に依存する遺伝子の誘導にも必要とされる(11)。この経路は、MyD88依存経路と称され、ウイルス起源の病原体を避けるために重要であることが示されている(12)。別のTIRアダプタータンパク質、MyD88アダプター様(MaI、TIRAPとしても知られている)は、MyD88依存経路に含まれており(13、14)、そしてTLR2及びTLR4仲介シグナル伝達に特異的に必要とされている(15、16)。
【0003】
感染の間、多様なリガンドによるTLRの占拠は、サイトカイン及びケモカインのような炎症性メディエーターの産生及び免疫エフェクター細胞の活性化を導く。この協調化された応答は侵入している病原体を取り除くために計画されているが、多くの例において、細菌産物は宿主由来のメディエーターの制御されていないネットワークを活性化し、それは多器官不全、心血管虚脱及び最終的に死を導くことができる。敗血症と称されるこの状態は、病院の集中治療室における死亡の主原因であり、世界中で増加し続けている。それ故、TLRタンパク質に対するアンタゴニストは、過敏性免疫応答の有害な効果を相殺するために有用な手段であろう。TLR4シグナル伝達の妨害は、LPSの毒性効果を相殺する手段として綿密に試験されている。現在の療法には、TLR4及びその共働レセプターCD14に対する抗体、及び該レセプターへの結合についてLPSと競合する合成リピドA類似体を中和することが含まれる(17、18)。
【0004】
敗血症に加え、療法は、ウイルス感染と戦う手段として他のTLRも目標にしている。例えば、TLR7アゴニスト、イミキモドがヒトパピローマウイルスにより引き起こされる性器ヘルペスの治療に成功裡に使用されてきた(19)。自己免疫疾患の場合において、TLRアゴニストは、適応Th2応答を、アレルギーの発生を防止するであろうTh1免疫応答にシフトさせる手段と考えられている。より長期の目標には、TLRシグナル伝達経路の下流構成要素での薬物療法学の開発が含まれるであろう。それ故、TLRシグナル伝達のすべての側面を完全に理解することが重要である。
【0005】
TLRファミリーのさらなるメンバー、及びTLRシグナル伝達経路の側面の同定は、有益な薬学的可能性を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Poltorak, A. et al. Science 282, 2085-2088 (1998).
【非特許文献2】Qureshi, S.T. et al. J.Exp.Med. 189, 615-625 (1999).
【非特許文献3】Hayashi, F. et al. Nature 410, 1099-1103(2001).
【非特許文献4】Hemmi, H. et al. Nature 408, 740-745 (2000).
【非特許文献5】Zhang, D. et al. Science 303, 1522-1526 (2004).
【非特許文献6】Tabeta, K. et al. PNAS 101, 3516-3521 (2004)
【非特許文献7】Hemmi, H. et al. Nature Immunol. 3, 196-200 (2002).
【非特許文献8】Adachi, O. et al. Immunity 9, 143-150 (1998).
【非特許文献9】Takeuchi, O. et al, J.Immunol. 164, 554-557 (2000).
【非特許文献10】Yamamoto, M. et al. J Immunol. 169, 6668-72 (2002).
【非特許文献11】Kaisho, T. et al. J.Immunol. 166, 5688-5694 (2001).
【非特許文献12】Servant, MJ. et al. J. Biochem. Pharmacol. 64, 985-992 (2002).
【非特許文献13】Fizgerald, K.A. et al. Nature 413, 78-83(2001).
【非特許文献14】Horng, T. et al. Nature Immunol. 2, 835-841 (2001).
【非特許文献15】Yamamoto, M. et al. Nature 420, 324-329 (2002).
【非特許文献16】Horng, T. et al. Nature 420, 329-33(2002).
【非特許文献17】Axtelle, T. & Pribble, J. J. Endotoxin Res. 7, 310-314 (2001).
【非特許文献18】Lynn, M. et al. J Infect Dis. 187, 631-639 (2003).
【非特許文献19】Berman, B. Int. J. Dermatol. 29, 7-11 (2002).
【非特許文献20】Smith, R. et al. Genome Res. 6, 454-462 (1996).
【非特許文献21】Quandt, K. et al. Nucleic Acids Res. 23, 4878-4884 (1995).
【非特許文献22】Xu, Y. et al. Nature 408, 111-5 (2000).
【発明の概要】
【0007】
本発明に従うと、配列番号1のアミノ酸配列又は変異体又はそれらの断片を含む単離されたポリペプチドが提供される。
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列又は変異体又はそれらの断片を含む単離されたポリペプチドも提供する。
【0008】
本発明の一つの態様において、変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む。本発明の別の態様において、変異体は、配列番号1又は2のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0009】
本発明の一つの態様において、変異体は欠失又は挿入修飾を含む。該変異体は、翻訳後修飾も含むことができる。
本発明の一つの態様において、該断片は、配列番号1又は2の少なくとも12の連続したアミノ酸を含むペプチドである。
【0010】
本発明の一つの態様において、本明細書で前に記載したポリペプチドは、トール様レセプター活性を示す。該トール様レセプターはTLR14活性であることができる。
本発明の一つの態様において、該ポリペプチドは免疫調節活性を示す。
【0011】
本発明は、本明細書で前に記載したポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。
本発明はさらに、配列番号3の核酸配列又はその変異体又は断片、又はそれらと相補的な配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0012】
本発明はさらに、配列番号4の核酸配列又はその変異体又は断片、又はそれらと相補的な配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
本発明の一つの態様において、該ポリヌクレオチドは、配列番号3又は4の核酸配列と少なくとも70%同一である核酸配列を含む。
本発明の別の態様において、該断片は配列番号3又は4の少なくとも17の連続した核酸を含む。
【0013】
本発明の一つの態様において、該ポリヌクレオチドは、前記セグメントをコードする天然cDNAと少なくとも80%の同一性を示す。
本発明の一つの態様において、該ポリヌクレオチドは、トール様レセプター又はペプチド又はそれらの融合タンパク質をコードする。
【0014】
本発明は、配列番号3、配列番号4の核酸配列又は変異体又はそれらの断片、又はそれらと相補的な配列を含む組換え核酸も提供する。
本発明はさらに、配列番号1又は2のアミノ酸配列又は変異体又はそれらの断片を含む精製されたタンパク質又はペプチドを提供する。好ましくは、該タンパク質又はペプチドの断片は、配列番号1又は2の少なくとも12の連続するアミノ酸を含む。
【0015】
本発明の一つの態様において、該タンパク質又はペプチドは哺乳類起源である。該タンパク質はヒト起源であることができる。
本発明の一つの態様において、該タンパク質又はペプチドは、少なくとも100kDaの分子量を有する。該タンパク質又はペプチドはグリコシル化形態であることができる。
【0016】
本発明の一つの態様は、配列番号1又は2のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質又はペプチドを提供する。
本発明のタンパク質又はペプチドは、トール様レセプター官能性/活性を示すことができる。
【0017】
本発明は、配列番号1又は2又は変異体又はそれらの断片から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質も提供する。該タンパク質はトール様レセプタータンパク質、特にTLR14であることができる。
【0018】
本発明は、本発明のタンパク質又はペプチドの抗原性断片も提供する。
本発明は、本明細書において前に記載したポリヌクレオチドを含む組換えベクターも提供する。本発明は、該組換えベクターを含む宿主細胞も提供する。本発明はさらに、活性成分として該組換えベクターを含む遺伝子療法剤を提供する。
【0019】
本発明の一つの側面は、本明細書において前に記載したポリヌクレオチドを含むアジュバントを提供する。
本発明は:
配列番号1又は2のアミノ酸配列又はそれらの断片又は変異体を含むタンパク質;及び
検出又は精製タグ;
のいずれか一つ又はそれより多くを含む融合化合物又はキメラ分子も提供する。
【0020】
本発明の一つの態様において、該検出又は精製タグは、FLAG配列、His6配列、Ig配列及び別のレセプタータンパク質の異種ポリペプチドのいずれか一つ又はそれより多くから選択される。
【0021】
本発明は、配列番号1又は2のアミノ酸配列及びTLRリガンドを含む、組換え又は合成的に生成されたタンパク質を含むリガンド/レセプターも提供する。好ましくは、TLRリガンドはCpG核酸である。
【0022】
本発明は、本明細書において前に記載したタンパク質の抗原決定基を含む免疫原も提供する。
本発明はさらに、本明細書において前に記載したポリペプチド又はタンパク質又はペプチドのエピトープに特異的に結合する、モノクローナル又はポリクローナル抗体又はそれらの断片を提供する。該抗体は、固定化された形態で調製することができる。該抗体は、ビーズ、磁性ビーズ、スライド又は容器へのコンジュゲーション又は付着により固定することができる。該抗体は、臭化シアン活性化セファロースへ固定化させる、又はグルタルアルデヒド架橋有り又は無しでポリオレフィン表面へ吸着させることができる。
【0023】
本発明は、トール様レセプター活性を変調する化合物を同定するための方法も提供し、それは:
配列番号1又は2のアミノ酸配列又は変異体又はそれらの断片を含むポリペプチドと試験サンプルを接触させること;
トール様レセプター活性のマーカーについてモニターすること;及び
トール様レセプター活性を変調する化合物を同定すること;
の工程を含む。
【0024】
本発明の一つの態様において、該トール様レセプター活性のマーカーは:
(i)NFカッパB活性化
(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は
(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン
のいずれか一つ以上を含む。
【0025】
一つの態様において、該方法は、各(i)から(viii)の少なくとも2つの、試験サンプルと比べた量の相違を決定する工程を含む。
別の態様において、該方法は、各(i)から(viii)の少なくとも3つの、試験サンプルと比べた量の相違を決定する工程を含む。
【0026】
一つの場合において、試験サンプルのタンパク質と比べた量が決定される。もしくは、核酸マイクロアレイを使用して試験サンプルのmRNAと比べた量が決定される。トール様レセプター活性はTLR14活性であることができる。
【0027】
本発明の一つの態様において、TLR活性を活性化する、又は阻害する化合物は:
(i)NFカッパB活性化
(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド
(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は
(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン
の少なくとも一つ以上の、試験サンプルと比較した量、発現、活性又はリン酸化を決定することにより同定される。
【0028】
別の態様において、TLR活性を変調することが可能な化合物は、本明細書において前に記載した方法により同定される。
本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容できる坦体を含む医薬組成物も提供する。
【0029】
本発明は:配列番号1又は2のアミノ酸配列を含むTLR14ポリペプチド又は配列番号3又は4の核酸を含むポリヌクレオチドの活性を変調する試薬又は化合物;及び
薬学的に許容できる坦体;
を含む医薬組成物も提供する。
【0030】
本発明の一つの態様において、試薬はTLR14アゴニスト又はアンタゴニストである。
好ましくは、坦体化合物は、水、塩水及び緩衝液のいずれか一つ以上から選択される水性化合物である。該組成物は経口、経直腸、経鼻、局所又は非経口投与の形態であることができる。
【0031】
本発明の一つの態様において、該化合物又は組成物は、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、心血管疾患、CNS疾患、腫瘍性疾患及び感染性疾患及び/又は免疫仲介障害のいずれか一つ以上の治療のための医薬の製造において使用される。
【0032】
本発明の一つの態様において、障害は、感染、外傷又は損傷、慢性炎症性疾患、移植片拒絶又は移植片対宿主疾患、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、タイプ1糖尿病又は関節リウマチ、喘息又はアトピー疾患及びアレルギー性脳脊髄炎により誘発された敗血症又は急性炎症のいずれか一つ以上から選択される。
【0033】
他の免疫仲介障害には、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、アテローム性動脈硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、シェーグレン症候群に二次的な乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬合反応によるアレルギー応答、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー喘息、皮膚紅斑性狼瘡、硬皮症、鞘膜炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病逆転反応、らい性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、突発性両側性進行性感音性難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、突発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ヴェグナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スチーブンス−ジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス眼症、サルコイド症、原発性胆汁性肝硬変、後部葡萄膜炎、間質性肺線維症、アルツハイマー病又は小児脂肪便症のいずれか一つ以上が含まれる。
【0034】
本発明はさらに、配列番号1又は2のアミノ酸配列を有するTLR14ポリペプチド又は変異体に対するアゴニスト又はアンタゴニストを提供する。
本発明は、細胞と哺乳類TLR14のアゴニスト又はアンタゴニストを接触させることを含む、細胞又は組織培養細胞の生理機能又は発育を変調する方法も提供する。
【0035】
本発明はさらに、NF−κB活性化を阻害する又は促進することが可能な化合物をスクリーニングする方法を提供し:
本明細書において前に記載したタンパク質をコードする遺伝子、及びNF−κBの活性化に付随する検出可能なシグナルを提供する成分を有する細胞を提供すること;
形質転換細胞中の遺伝子の発現を提供する条件下で形質転換細胞を培養すること;
形質転換細胞とスクリーニングのための一つ又はそれより多くの化合物を接触させること;
検出可能なシグナルを測定すること;及び
検出可能なシグナルを測定することにより活性化剤化合物又は阻害剤化合物を単離すること又は同定すること;
の工程を含む。
【0036】
一つの態様において、本発明は、医薬化合物として単離された又は同定された化合物を最適化することの工程を含む。
本発明は、トール様レセプター活性を変調することが可能な化合物をスクリーニングするためのキットも提供し:
本発明のタンパク質をコードする遺伝子、及びNF−κBの活性化により検出可能なシグナルを提供する成分を有する細胞;
検出可能なシグナルを測定するための試薬;
を含む。
【0037】
本発明の一つの態様において、遺伝子はトール様レセプターTLR14をコードする。
本発明は、免疫性又は炎症性障害の治療のための医薬の製造における、配列番号1又は2のアミノ酸配列を有するTLR14の活性を阻害することができる配列番号1又は2のアミノ酸配列の断片又は変異体を含むポリペプチドの使用を提供する。
【0038】
本発明は、アジュバント又はワクチン製剤の製造における、本明細書において前に記載したポリペプチド、ポリヌクレオチド又は化合物の使用も提供する。
本発明は哺乳類レセプター、トール様レセプター14(TLR14)及びその生物学的活性に関する。それは該ポリペプチドをコードする核酸、及びその生産及び使用のための方法を含む。本発明の核酸は、本明細書に含まれているクローン化相補DNA(cDNA)配列とのそれらの類似性により一部特徴付けられる。
【0039】
特定の態様において、本発明は、配列番号1又は2と少なくとも12アミノ酸にわたって同一性を示す実質的に純粋な又は組換えTLR14タンパク質又はペプチド、配列番号1又は2のTLR14の天然配列、TLR14配列組成物を含む融合タンパク質:新規TLR(TLR14)の群より選択される組成物を含む。具体的態様において、組成物は、配列番号1又は2の成熟配列を含むか、又は翻訳後修飾を欠いており、又は組成物は、ヒトのような霊長類を含む哺乳類から選択される温血動物からのものであり、配列番号1又は2の少なくとも一つのポリペプチドを含んでなり;グリコシル化されており、天然のグリコシル化で少なくとも100kDaの分子量を有し、合成ポリペプチドであり;別の化学部分にコンジュゲートされており;天然配列よりも5分の1の置換しかなく又は天然配列からの欠失又は挿入変異体である、タンパク質又はペプチドであることができる。具体的態様において、TLR、TLRの抗原性断片、TLRに対する抗体、TLRに対する抗体断片、TLRリガンドに対する抗体が固定化された形態を含む。固定化は、ビーズ、磁性ビーズ、スライド又は容器へのコンジュゲーション又は付着によるものであることができる。固定化は、当該技術分野では公知の方法による臭化シアン活性化セファロースへの固定化、又はグルタルアルデヒド架橋有り又は無しでのポリオレフィン表面への吸着であることができる。
【0040】
他の態様は、滅菌TLR14タンパク質又はペプチド又はTLR14タンパク質又はペプチド及び担体を含んでなり、担体は水、塩水及び/又は緩衝液を含む水性化合物であり、及び/又は経口、経直腸、経鼻、局所又は非経口投与のために製剤されている。
【0041】
特定の融合タンパク質態様において、本発明は、配列番号1又は2の成熟タンパク質配列、FLAG又はHis6又はIg配列を含む検出又は精製タグ;又は別のレセプタータンパク質配列を含む融合タンパク質を提供する。
【0042】
多様なキット態様は、TLR14タンパク質又はポリペプチド、及び:タンパク質又はポリペプチドを含むコンパートメント(compartment);及び/又はキット中の試薬の使用又は廃棄のための説明書、を含むキットを含む。
【0043】
結合化合物態様は、TLR14タンパク質に特異的に結合する抗体からの抗原結合部位を含むものを含み、該タンパク質は霊長類タンパク質であり;結合化合物はFv、Fab又はFab2断片であり;結合化合物は別の化学部分又は抗体にコンジュゲートされており;配列番号1又は2の成熟ポリペプチドのペプチド配列に対して産生され;成熟TLR14に対して産生され;精製ヒトTLR14に対して産生され;免疫選択されており;ポリクローナル抗体であり;変性TLR14に結合し;少なくとも30μMの抗原に対するKdを示し;ビーズ又はプラスチック膜を含む固体基質に結合されており;滅菌組成物中にあるか又は放射性又は蛍光ラベルを含む検出可能なようにラベルされている。結合組成物キットは多くの場合、結合化合物及び前記結合化合物を含むコンパートメント;及び/又は試薬の使用又は廃棄のための説明書をキット中に含む。多くの場合、キットは定性的又は定量的分析を行うことが可能である。
【0044】
例えば、免疫原性量の霊長類TLR14で免疫系を免疫化することを含む抗体を作製する方法、又はこうした抗体と哺乳類TLR14タンパク質又はペプチドを接触させ、それにより抗原/抗体複合体を形成させることを含む抗原/抗体複合体を産生する方法が提供される。
【0045】
当該技術分野で普通に実践される免疫化法を使用することができ、それは文献に詳しく記載されている。
他の組成物には、滅菌結合化合物又は結合化合物及び担体を含む組成物が含まれ、該担体は水、塩水及び/又は緩衝液を含んでいる水性であり、及び/又は経口、経直腸、経鼻、局所又は非経口投与のために製剤されている。
【0046】
核酸態様には、TLR14又はペプチド又は融合タンパク質をコードする、単離された又は組換え核酸が含まれ、該TLRは哺乳類からのものであり;又は配列番号3又は4の抗原性ペプチド配列をコードし;複数の配列番号3又は4の抗原性ペプチド配列をコードし;配列番号3又は4からの少なくとも17連続するヌクレオチドを含んでなり、前記セグメントをコードする天然cDNAと少なくとも80%の同一性を示し;発現ベクターであり;さらに複製の起点を含んでなり;天然起源であり;放射性ラベル、蛍光ラベル又は免疫原性ラベルのような検出可能なラベルを含んでなり;合成ヌクレオチド配列を含んでなり;6kB未満、好ましくは3kB未満であり;霊長類を含む哺乳類からであり;天然完全長コード配列を含んでなり;前記TLRをコードする遺伝子のためのハイブリダイゼーションプローブであり;又はPCRプライマー、PCR生成物又は変異誘発性プライマーである。こうした組換え核酸を含む細胞、組織又は器官も提供される。好ましくは、細胞は原核細胞;真核細胞;細菌細胞;酵母細胞;昆虫細胞;マウス細胞;哺乳類細胞;霊長類細胞又はヒト細胞である。こうした核酸、及び前記核酸を含むコンパートメント;さらに霊長類TLR14タンパク質又はポリペプチドを含むコンパートメント;及び/又はキットの試薬の使用又は廃棄についての説明書;を含むキットが提供される。多くの場合、キットは定性的又は定量的分析を行うことが可能である。
【0047】
リガンド/レセプター複合体を生成させる方法も提供され、組換え又は合成的に生成されたタンパク質を含む実質的に純粋なTLR14と候補TLRリガンドを接触させることを含んでなり、それにより前記複合体が形成されることを可能にする。
【0048】
TLRリガンドとは、TLRポリペプチド、この場合TLR14ポリペプチドに特異的に結合する分子を指している。ほとんどの場合、TLRリガンドは、適した条件下でTLRと接触させた場合、TLRシグナル伝達も誘導するであろう。
【0049】
本発明は、細胞又は組織培養細胞の生理学的機能又は発育を変調する方法も提供し、該細胞と哺乳類TLR14のアゴニスト又はアンタゴニスト接触させることを含む。
本発明はマーカーとして以下のマーカーの少なくとも一つを使用し、TLR14の活性を変調する試薬を同定する又は評価する方法に関する:(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン。
【0050】
本発明は、(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカインの細胞又は組織における発現、量、活性又はリン酸化を改変する試薬の使用にも関する。
【0051】
本発明は新規TLR14タンパク質の発見、及びTLR14の阻害及び活性化が(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカインの活性化を導くことが可能なシグナル分子の量、発現、活性又はリン酸化を決定することにより検出することが可能であることに基づいている。
【0052】
本発明の一つの態様は、(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカインの、試験サンプルに対するレベルの相違を決定することにより、TLR14活性化又は阻害の効果をモニタリングするための方法を提供する。
【0053】
本明細書で使用される「レベル」には、限定されるわけではないが、タンパク質の量、mRNAの発現量、遺伝子活性、タンパク質活性及びリン酸化の量が含まれる。
試験サンプルは、限定されるわけではないが、ペプチド核酸(PNA)、抗体、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ホルモン及び小分子を含むことができる。試験化合物は、基準免疫賦活性核酸の変異体も含むことができる。これらは天然核酸源、ゲノム核又はミトコンドリアDNA又はcDNAから得られても、又は合成物(例えば、オリゴヌクレオチド合成により生成される)であってもよい。
【0054】
それ故、一つの側面において、本発明はTLR14活性を活性化する又は阻害する試薬を同定する又は評価するための方法に関し、以下のマーカー:(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン;の少なくとも一つの、試験サンプルに対する量、発現、活性又はリン酸化の相違を決定することを含む。
【0055】
別の態様において、こうした方法は、上に定義した(i)〜(viii)の各々の少なくとも二つ、少なくとも三つの、試験サンプルに対する量の相違を決定することを含む。
本発明の一つの態様において、mRNAの試験サンプルに対する量の相違が決定され、及び、例えば、核酸マイクロアレイの使用により決定することが可能である。
【0056】
本発明の一つの態様において、タンパク質の試験サンプルに対する量の相違が決定される。
本発明の別の側面は、TLR14の活性を変調する試薬を同定する又は評価するための方法に関し、前記方法は:(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン、を含む。別の態様において、こうした方法は、上に定義した(i)〜(viii)の各々の少なくとも二つ、少なくとも三つの、試験サンプルに対する量の相違を決定することを含む。
【0057】
TLR14の活性を変調する試薬を同定する又は評価するための方法の好ましい態様において、前記方法は:(i)NFカッパB活性化(ii)NFカッパBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iii)IRF3タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(iv)p38タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(v)IKKタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vi)RANTESタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド(vii)TLR4タンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチド又は(viii)いずれかの炎症誘発性又は抑制性サイトカイン、を含む。別の態様において、こうした方法は、上に定義した(i)〜(viii)の各々の少なくとも二つ、少なくとも三つの、試験サンプルに対する量の相違を決定することを含む。
【0058】
配列相同性
本発明の特に好ましいヌクレオチド配列は、配列番号1又は配列番号2に示したヒト配列である。配列番号3のDNAによりコードされているアミノ酸の配列は配列番号1に示されている。配列番号4のDNAによりコードされているアミノ酸の配列は配列番号2に示されている。
【0059】
一つより多くのコドンが同一のアミノ酸をコードすることが可能である遺伝子コードの既知の縮重のため、DNA配列は配列番号3に示されたものから変化することが可能であり、そしてそれでもなお配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている。こうした変異体DNA配列はサイレント変異を生じることができるか(PCR増幅の間に生じる)、又は天然配列の計画的な変異誘発の生成物であることが可能である。
【0060】
本発明はそれ故、(a)配列番号1のヌクレオチド配列を含むDNA(b)配列番号3のポリペプチドをコードするDNA(c)中ストリンジェンシー条件下で(a)又は(b)のDNAにハイブリダイゼーション可能な、及び本発明のポリペプチドをコードするDNA;(d)高ストリンジェンシー条件下で(a)又は(b)のDNAにハイブリダイゼーション可能な、及び本発明のポリペプチドをコードするDNA、及び(e)(a)、(b)、(c)又は(d)に定義したDNAに対する遺伝子コードの結果として縮重している及び本発明のポリペプチドをコードするDNA、から選択される、本発明のポリペプチドをコードする単離されたDNA配列を提供する。もちろん、こうしたDNA配列によりコードされているポリペプチドは本発明に包含される。
【0061】
本発明はそれ故、(a)天然哺乳類インターフェロンアルファ14アレルc遺伝子のコード領域から誘導されたDNA;(b)配列番号3のDNA;(c)中ストリンジェンシー条件下で(a)又は(b)のDNAにハイブリダイゼーション可能な、及び生物学的に活性なインターフェロンアルファ14ポリペプチドをコードするDNA;及び(d)(a)、(b)又は(c)に定義したDNAに対する遺伝子コードの結果として縮重している及び生物学的に活性なインターフェロンアルファ14ポリペプチドをコードするDNA;から選択される、生物学的に活性なヒトインターフェロンアルファ14ポリペプチドをコードする均等で単離されたDNAを提供する。
【0062】
本明細書で使用される中ストリンジェントの条件は、例えば、DNAの長さに基づいて当業者は容易に決定することが可能である。基本的条件は、Sambrook et al. Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 2 ed. Vol.1, pp.1.101-104, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989) に示されている。高ストリンジェントの条件も、例えば、DNAの長さに基づいて当業者は容易に決定することが可能である。
【0063】
本発明の態様としてまた含まれるものは、不活性化N−グリコシル化部位(単数又は複数)、不活性化プロテアーゼプロセシング部位(単数又は複数)又は保存的アミノ酸置換(単数又は複数)を含むポリペプチド断片及びポリペプチドをコードするDNAである。
【0064】
別の態様において、本発明の核酸分子は、天然の配列と少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列も含む。核酸分子が、天然の配列と少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、又は少なくとも99.9%同一である配列を含む態様も企図される。
【0065】
パーセント同一性は、目視検査及び数学的計算により決定することができる。もしくは、二つの核酸配列のパーセント同一性は、Devereux et al. (Nucl. Acids Res. 12:387, 1984) により記載され、及びUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group (UWGCG) から入手可能なGAPコンピュータープログラム、バージョン6.0を使用して配列情報を比較することにより決定することが可能である。GAPプログラムのための好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての単項比較マトリックス(同一性に対して1及び非同一性に対して0の値を含んでいる)、及びSchwartz and Dayhoff, eds., Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358, 1979 に記載されているGribskov及びBurgess、Nucl. Acids Res. 14:6745, 1986 、の加重比較マトリックス;(2)各ギャップについて3.0のペナルティー及び各ギャップ中の各シンボルについての追加の0.01ペナルティー;及び(3)末端ギャップについてはペナルティー無し、が含まれる。配列比較の技術分野で当業者により使用されている他のプログラムも使用することができる。
【0066】
本発明は、ポリペプチドの生成において有用な単離された核酸も提供する。こうしたポリペプチドは多数の慣用技術のいずれかにより調製することができる。インターフェロンアルファ14ポリペプチド又はそれらの望まれる断片をコードするDNA配列を、ポリペプチド又は断片の生成のための発現ベクター内にサブクローン化することができる。DNA配列を、適したリーダー又はシグナルペプチドをコードする配列内に都合よく融合する。もしくは、所望の断片を既知の技術を使用して化学的に合成することができる。DNA断片は、完全長クローン化DNA配列の制限エンドヌクレアーゼ消化によっても生成することができ、アガロースゲル上での電気泳動により単離される。必要なら、所望のポイントに5’又は3’末端を再構築するオリゴヌクレオチドを、制限酵素消化により発生したDNA断片に結合させることができる。こうしたオリゴヌクレオチドは、所望のコード配列の上流に制限エンドヌクレアーゼ切断部位をさらに含有し、及びコード配列のN末端に開始コドン(ATG)を位置させることができる。
【0067】
公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法も、所望のタンパク質断片をコードするDNA配列を単離する、又は増幅するために使用することができる。該DNA断片の所望の末端を規定するオリゴヌクレオチドを5’及び3’プライマーとして使用する。オリゴヌクレオチドは、発現ベクター内への増幅されたDNA断片の挿入を容易にするため、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を追加的に含有することができる。PCR技術は、Saiki et al, Science 239:487 (1988); Recombinant DNA Methodology, Wu et al., eds., Academic Press, Inc., San Diego (1989),pp. 189-196; 及びPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, innis et al., eds., Academic Press, Inc. (1990) 、に記載されている。
【0068】
本発明は、天然に存在する又は組換えDNA技術を含む方法のような多様な技術を介して生成されるものを含む多様な形態のポリペプチド及びそれらの断片を包含する。例えば、インターフェロンアルファ14ポリペプチドをコードするDNAは、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発を含むインビトロ変異誘発及びインビトロ核酸合成により配列番号3から誘導することが可能である。こうした形態には、限定されるわけではないが、誘導体、変異体及びオリゴマー、ならびに融合タンパク質又はそれらの断片が含まれる。
【0069】
本発明のポリペプチドは、配列番号1の核酸配列によりコードされる完全長タンパク質を含む。特に好ましいポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。
本発明のポリペプチドは膜に結合されていてもよいし、又は分泌されていても、それ故可溶性であってもよい。可溶性ポリペプチドは、それらが発現される細胞から分泌されていることができる。一般に、可溶性ポリペプチドは、培養培地から所望のポリペプチドを発現する無傷の細胞を分離すること(例えば、遠心分離により)、及び所望のポリペプチドの存在について培地(上清)をアッセイすることにより同定すること(及び非可溶性膜結合対応物と区別すること)ができる。培地中のポリペプチドの存在は、該ポリペプチドが細胞から分泌され、及びそれ故タンパク質の可溶性形であることを示している。
【0070】
異なる長さのポリペプチド断片も本明細書において提供される。天然に存在する変異体ならびにポリペプチド及び断片の誘導された変異体も本明細書において提供される。
本発明はさらに医薬組成物に関する。該組成物は:(a)TLR14ポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性を変調する試薬及び(b)薬学的に許容できる坦体を含む。該試薬はTLR14アゴニスト又はアンタゴニストであることができる。該組成物は、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、心血管疾患、中枢神経系疾患、腫瘍性疾患及び感染性疾患のような疾患を治療するために使用することができる。
【0071】
当業者は、医薬担体の選択には生理学的に適した化合物が含まれること、及び化合物の選択が投与経路及び意図された投与計画に依存することを理解するであろう。
治療/療法
本明細書において使用される用語「治療」とは、ヒト又は非ヒト動物に利益となることが可能であるいずれかの治療法を指す。該治療は、存在している状態に関していてもよいし、又は予防的であってもよい(予防的治療)。治療は、治療的、軽減的又は予防的効果を含むことができる。
【0072】
より具体的には、「療法的」及び「予防的」治療への本明細書での言及は、その最も広い前後関係で考えられるべきである。用語「療法的」は、対象が完全に回復するまで治療されることを必ずしも意味するわけではない。同様に、「予防的」は、対象が最終的に疾患状態にはならないであろうことを必ずしも意味するわけではない。
【0073】
従って、療法的及び予防的治療には、特定状態の徴候の寛解、又は特定状態を発生する危険性を防止する又はさもなくば軽減することが含まれる。用語「予防的」は、特定状態の重度又は発症を軽減することと考えることができる。「療法的」は、存在している状態の重度を軽減することもできる。
【0074】
本発明は、特に示さない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組換え生物学、微生物学、組換えDNA技術及び免疫学の一般に使用される技術を含む方法を記載しており、それらのすべては当該分野で十分に記述されている。
【0075】
本発明はさらに、哺乳類細胞から調製された細胞及び組織抽出物で同定された又は精製された、TLR14の内在性リガンド(単数又は複数)に関する。
本発明はさらに、TLR4シグナル伝達の変調に関し、TLR14はTLR4シグナル伝達を促進する又は阻害する。
【0076】
本発明に従ったペプチドは、該ペプチドの活性又は機能に影響する又は変調する分子のスクリーニングに使用することができる。こうした分子とペプチドの相互作用は、療法的及び予防的状況で有用であることができる。
【0077】
新規薬剤の同定を導く医薬品研究は、先導化合物が発見される前又はさらには後の両方で、非常に多数の候補物質のスクリーニングを含むことがよく知られている。こうした手段は、癌を治療すること及び予防することに有用な可能性を有する物質のスクリーニングに有用である。ポリペプチドの変調剤として同定された物質は、インビボ使用のための療法剤の設計及び研究のための基礎を提供するので、これらの領域の療法における進歩を意味する。
【0078】
多様なさらなる側面において、本発明はスクリーニング及びアッセイ方法、及びそれらにより同定された物質に関する。
それ故、本発明のさらなる側面は、本発明のペプチドと相互作用する又は結合する、及び/又はその生物学的機能又は活性又は別の物質のそれらを妨害するペプチド又は化学化合物のような物質を、スクリーニングする又は探索する及び/又は入手する又は同定することにおける、本発明のペプチド(それらの断片及び誘導体を含む)の使用を提供する。例えば、本発明の一つの側面に従った方法は、本発明のペプチドを提供し、それと物質を接触させると、その接触は該ペプチドと該物質間の結合を生じることができる。結合は、定性的及び定量的の両方で、当業者には公知であろうさまざまな技術により決定することができる。
【0079】
ペプチド機能の変調剤として同定された物質は、天然のペプチド又は非ペプチドであることができる。非ペプチド「小分子」がしばしば多くのインビボ医薬使用に好ましい。従って、物質のミメティック(mimetic)又は模倣体(mimic)を医薬使用のために設計することができる。既知の医薬として活性な化合物について模倣体を設計することは、「先導」化合物に基づいた医薬の開発への既知のアプローチである。このことは、活性化合物を合成するのが困難である又は費用がかかる場合、又は投与の特定の方法に対して適切ではない場合(例えば、ペプチドは消化管中でプロテアーゼにより迅速に分解される傾向があるので、経口組成物の活性剤として適切ではない)に望ましい。模倣剤設計、合成及び試験は、目標とする特性について多数の分子をランダムにスクリーニングすることを避けるために使用することができる。
【0080】
所与の目標特性を有する化合物からの模倣体の設計においては、一般にいくつかの工程がとられる。第一に、目標特性の決定において決定的及び/又は重要である化合物の特定の部分を決定する。ペプチドの場合、このことはペプチド中のアミノ酸残基を系統的に変化させることにより、例えば、各残基を順に置換することにより行うことが可能である。化合物の活性領域を構成するこれらの部分又は残基はその「ファルマコフォア」として知られている。
【0081】
ファルマコフォアが決定されたら、起源範囲からのデータ、例えば、分光学的技術、X線回析データ及びNMRを使用して、その物理学的特性、例えば、立体化学、結合、サイズ及び/又は電荷に従ってその構造をモデル化する。コンピューター分析、類似性マッピング(原子間の結合よりもむしろファルマコフォアの電荷及び/又は容量をモデル化する)及び他の技術も、このモデル化プロセスに使用することが可能である。
【0082】
このアプローチの変法においては、リガンドの三次元構造及びその結合パラメーターをモデル化する。このことは、リガンド及び/又は結合相手が結合によりコンホメーションを変化させる場合に特に有用であり、モデルが模倣体の設計を考慮することを可能にしている。
【0083】
次に鋳型分子が選択され、その上にファルマコフォアを模倣する化学基を接ぎ合わせることが可能である。該鋳型分子及び接ぎ合わされた該化学基は、模倣体を合成するのが容易であるように、薬学的に許容できそうであるように、及びインビボで分解されないように、一方、先導化合物の生物学的活性が残るように都合よく選択することが可能である。このアプローチで見出されたミメティック及び模倣体は、それらが目標特性を有しているか、又それらがどの程度それを示すかどうかを見るためにスクリーニングすることが可能である。インビボ又は臨床試験のための一つ又はそれより多くの最終模倣体に達するため、さらなる最適化又は修飾を実施することが可能である。
【0084】
それ故、本発明のさらなる側面は、本発明の少なくとも一つのペプチドと推定結合分子又は他の試験物質間の結合活性を評価するためのアッセイを提供し、それは、少なくとも一つのペプチドと推定結合分子又は他の試験物質を接触させること、及び少なくとも一つのペプチドと結合分子又は試験物質間の相互作用又は結合を決定すること、の工程を含み、少なくとも一つのペプチドと結合分子間の結合は、少なくとも一つのペプチドの有用性の指標である。
【0085】
本発明のペプチドと相互作用する物質は、その活性を変調させるために、単離する及び/又は精製する、製造する及び/又は使用することができる。
二つの分子間の結合について試験する本発明のアッセイのため、本発明の全ペプチドを使用する必要はない。当業者には既知のいずれか適した方法で、断片を発生させ及び使用することができる。
【0086】
さらに、本発明のアッセイの詳細なフォーマットは、日常の技術及び知識を使用し、当業者が変更することもできる。
詳細な説明
我々は、トール様レセプター/インターロイキン−1レセプター(TLR)ファミリーのメンバーと顕著な相同性を示す新規遺伝子を同定した。細胞に基づいたアッセイにおいて、この新規レセプターは転写因子NF−κB及びIRF3を活性化し、抗ウイルスサイトカイン、RANTESの産生を駆動する。該タンパク質はTLR2、TLR4及び普遍的TLRアダプター、MyD88と相互作用する。我々はレセプターTLR14と名付けた。
【0087】
この推定レセプターの発現は、微生物産物、例えば、LPSにより増強され、それが免疫変調剤として機能することができることを示唆している。このことの裏付けとして、細胞がTLR14を発現するベクターでトランスフェクトされた場合、転写因子NF−κB及びIRF3が活性化された。NF−κB及びIRF3の両方が、細菌及びウイルス病原体の除去における中核であるので、TLR14を阻害する又は活性化することは、炎症性疾患の治療について見込みのある新規アプローチである。加えて、高レベルのTLR14を血清中に見出した。主としてこのレセプターの外部ドメインを含むTLR2の可溶型も、血清及び母乳中で見出された。TLR2のこの形態は、TLR2リガンドに対する活性免疫応答を抑えることにおいて保護的である。完全長TLR14ポリペプチド又はそれ自身の外部ドメインは類似の生物学的特性を有することができ、それ故、潜在的生物療法剤と考えることができる。
【0088】
LPS及びTLR4シグナル伝達経路の構成要素により調節される遺伝子を同定するため、マイクロアレイアプローチを使用した。上記のように、レセプター刺激後、TLR2及びTLR4からシグナルを伝達するためにはアダプター分子、Malが必要とされる。胚性幹細胞中のMalをコードする遺伝子を破壊するため、遺伝子標的化ベクターを使用した。これらの細胞を次ぎにLPSで処理し、ノックアウト及び野生型細胞間の遺伝子発現の相違を測定した。この方法において、トール様レセプター/インターロイキン−1レセプター(TLR)ファミリーのメンバーと顕著な相同性を示す遺伝子を同定した。
【図面の簡単な説明】
【0089】
本発明は、付随する図面に関連して、ほんの一例として与えられたそれらの以下の説明からより明瞭に理解されるであろう。
【図1A】図1Aは、ヒトTLR14の染色体位置の略図である。TLR14は線により示されている染色体7上の7pl5に位置している。それは4.7kbの長さであり、遺伝子CREB5及びCPVLが隣接している。転写の方向は矢印により示されている。TLR14は逆平行方向に転写される。この情報はwww.ncbi.nlm.nih.gov のNCBIウェブサイトから入手可能なヒトゲノムマップビュアーツールを使用して得られた;
【図1B】図1Bは、ヒトTLR14(配列番号1)についてのヌクレオチド配列を示している;
【図1C】図1Cは、マウスTLR14(配列番号2)についてのヌクレオチド配列を示している;
【図1D】図1Dは、ヒト(配列番号3)及びマウス(配列番号4)TLR14の予測タンパク質配列を示している。ヒトTLR14遺伝子の推定ORFは、811アミノ酸タンパク質をコードし、一方、マウスタンパク質は809アミノ酸の長さである。予測N末端シグナル配列及び膜貫通ドメインには下線が付されている。
【図1E】図1Eは、TLR4及びTLR14外側ドメインのアラインメントが示されている。推定TLRとヒトTLR4のアラインメントは、二つのレセプター間の高度な配列類似性を明らかにした。少なくとも六つのロイシンリッチリピートを同定することができ、boxにより強調されている。
【図2A】図2Aは、いくつかの組織において発現されたヒトTLR14のmRNA発現プロフィールである。新規TLRのヒト及びマウス形についての発現プロフィールはHUGEタンパク質データベースから入手可能である。該タンパク質をコードするmRNAの3’非翻訳領域を標的とするプライマーでRT−PCR反応を実行した。発現は試験されたすべての組織で検出され、腎臓;脳及び卵巣において最も高いレベルが生じた。
【図2B】図2Bは、ヒト組織サンプルにおけるTLR14のタンパク質発現プロフィールである。高い発現レベルが脳及び肺で検出された。
【図3】図3は、TLR14とTLRファミリーの他のメンバーの細胞質領域のアラインメントを示している。TLR14と他のTLRファミリーメンバーの細胞質領域のアラインメントは、推定レセプターがTLRに特徴的である類似の領域を共有していることを明らかにしている。特に二つの領域は相同的であり(Box1及び2)、タンパク質を含有するすべてのTlRドメインのシグナチャー配列と考えられる。TLR14のBox2はTLR3のものと同一である。
【図4】図4は、ヒトTLR14の推定プロモーター領域の略図である。TLR14の推定プロモーター領域は、Promoter Inspector及びMat Inspectorを使用して同定した。上記のすべての転写因子は0.8より大きなマトリックススコア*を有している。*マトリックススコアは、転写因子マトリックス内の保存ヌクレオチドに相当するプロモーター内の配列がどれほど近いかを測定している。有意な一致は>0.8である。
【図5】図5は、U373及び初代マウス胚性線維芽細胞においてLPSにより、及びまたLPSで処理したマウスにおいて誘導されたTLR14の発現を示している。(A)U373及びMEFは1μg/ml LPSで示された時間処理した。mRNAを単離し、RT−PCRを本文中に記載したように実施した。(B)マウスにLPSを腹腔内注射し、3時間放置した後に屠殺した。RT−PCRは対照未処理及びLPS処理マウスに対して行った。
【図6】図6は、TLRリガンドでの処理後の細胞におけるTLR14タンパク質の発現を示している。(A)ヒトグリオーマ細胞株、A172を種々の時間、Pam3Cys(1μg/ml)で処理し、TLR14の発現について探索した。(B)TLR4で安定的にトランスフェクトしたヒトHEK−293細胞を種々の時間LPS(1μg/ml)で処理し、TLR14の発現について探索した。(C)タンパク質抽出物を、対照未処理マウス及びLPSを注射してあるマウスの脳から調製した。抽出物はTLR14の発現について探索した。
【図7】図7は、TLR14活性が、HEK293及びU373星状細胞腫細胞においてNF−κB及びISREレセプター遺伝子発現を誘導することを示しているグラフである。TLR14活性はHEK293及びU373星状細胞腫細胞においてNF−κB及びISREルシフェラーゼ活性を駆動する。HEK293細胞をNF−κBレセプター構築物ならびに1、5及び10ngのTLR14でトランスフェクトした(A)。HEK293S(B)及びU373S(C)は、ISREレセプター構築物及び用量を増加させたTLR14(1、10及び100ng)でトランスフェクトした。24時間後、細胞を採取し、相対ルシフェラーゼ活性を決定した。
【図8】図8は、TLR14がU373星状細胞腫細胞においてRantes産生を駆動することを示しているグラフである。RANTES産生は、増加させた用量のTLR14で24時間トランスフェクトされたU373細胞において、酵素結合免疫吸着アッセイにより測定した。データは空ベクターでトランスフェクトした細胞に対しての誘導倍数で表現されている。
【図9】図9は、TLR14とTIR−ドメイン含有タンパク質TLR2、TLR4及びMyD88との相互作用を示している。(A)TLR14をFlag−タグ付けTLR4、TLR2又はレセプターの突然変異形とHEK−293細胞内に同時トランスフェクトした。複合体を抗flagビーズで免疫沈降し、抗TLR14抗体で探索した。(B)TLR14をMyc−タグ付けMyD88とHEK−293細胞内に同時トランスフェクトした。複合体をプロテインAセファロースビーズに結合させた抗myc抗体で免疫沈降し、抗TLR14抗体で探索した。
【図10】図10は、TLR2と内因性TLR14との相互作用を示している。Flag−タグ付けTLR2をHEK−293細胞から免疫沈降し、ウエスタンブロットを抗TLR14抗体で探索して、TLR2と複合体形成した該内因性タンパク質の存在を検出した。
【図11】図11は、TLR14が細胞質中に存在し、血清中にも高レベルで見いだされることを示している。(A)細胞をLPSで刺激した後、細胞質及び膜分画に分離した。分画をTLR14の存在について探索した。(B)10%ウシ胎児血清を含有する細胞培養培地をウエスタンブロッティングにかけ、TLR14の存在について探索した。
【図12】図12は、示された時点についてLPSの(lμg/ml)での細胞刺激に続く、U373培養培地内へのTLR14の分泌を示している。分泌されたタンパク質はTLR14の完全長形態であるようであり、最大分泌は6時間で生じている。
【実施例】
【0090】
示された実施例は例示のためのみであり、本発明の範囲内の多様な変更及び修飾が当業者には明らかになるであろう。
材料及び方法
細胞培養
HEK293及びU373細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)を含み、100単位/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン及び2mM L−グルタミンを補給したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中で培養した。
【0091】
発現プラスミド
キメラTLRレセプターCD4−TLR4はR. Medzhitov (Yale University,New Haven, CT) から贈与された。TLR14 cDNA(KIAA0644)を含有するベクターはKazusa DNA Research Institute から供給され、続いてのPCRクローニングの標的として使用された。使用されたプライマーはHindIII及びEcoRVのための制限部位を含んでおり、以下のものであった:5'-GCAAGCTTATGGAGGCTGCCCGCGCCTTG (センス)(配列番号5);及び5'−GCGATATCGGCCTAAGCGTAGTCTGGGACGTCGTATGGGTAGTCGGCAAATCGC (アンチセンス)(配列番号6)。アンチセンスプライマーはトランスフェクト細胞中の翻訳されたタンパク質産物の発現を検出するため、9アミノ酸ヘマグルチニンエピトープタグをコードする配列を含んでいる。生じたEcoRI−HindIII断片を哺乳類発現ベクターpCDNA3.1(Invitrogen )の多クローニング部位内にライゲートした。
【0092】
Mal欠損胚性幹細胞の発生及びマイクロアレイ解析
Malをコードする遺伝子を欠く胚性幹細胞は相同的組換えにより発生させた。簡単には、マウス胚性幹細胞に、ネオマイシン耐性カセットでMal遺伝子が置き換えられたコード配列のほとんどを700bpエクソンがコードする標的化ベクターを電気穿孔した。標的化細胞をサザンブロッティングにより同定した後、Mal欠失についてホモ接合性クローンを発生させるために2回目の標的化にかける。変異体及び野生型細胞を種々の時間、LPSで刺激し、マイクロアレイ解析のためにRNAを抽出した。
【0093】
プロモーター分析
ヒトRikenクローンKIAA0644及び隣接領域の完全ヌクレオチド配列は、www.ncbi.nlm.nih.gov. のNational Center for Biotechnology Information (NCBI) ウェブサイトから得られた。転写されたヌクレオチド配列及びゲノム配列中のリピート配列の同定は、NIXアプリケーション(http://menu.hgmp.mrc.ac.uk )及びプログラムRepeat−masker(http://searchlauncher.bcm.tmc.edu )を使用して実施した(20)。転写因子結合部位予想はMatlnspector Release Professional(www.genomatix.de/cgi- bin/matinspector/matinspector.pl )を使用して実施した(21)。
【0094】
培養細胞からのmRNA単離
mRNAは、LPS(1μg/ml)で種々の時間処理した後、細胞から抽出した。簡単には、処理した細胞をペレット化し、1mlのTRI試薬(Sigma )で溶解した。クロロホルム(0.2ml)をサンプルに加え、混合物を12,00Ogで15分遠心分離した。RNAを含有する水相を除き、等量のイソプロパノールの添加により、混合物から全RNAを沈澱させた。12,000gで10分遠心分離した後、RNA含有ペレットを500μlの75%エタノールで洗浄した。エタノールのいずれの痕跡も除去し、ペレットを室温で10分放置して乾燥させた。ペレットを30μlのRNAseを含まない水に再懸濁し、−8O℃で保存した。
逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
RT−PCRをPromega ImpromptII RT−PCRキットを使用して実施した。逆転写反応は2工程で実施し、次ぎにPCR反応を合成されたcDNAに対して実施した。
【0095】
工程1:薄壁500μlPCRマイクロ遠心チューブ中で、1μlのランダムプライマーを4μlのRNAに加えた。遠心チューブを70℃で5分及び4℃で5分のサーマルサイクラーに置いた。
【0096】
工程2:成分の第二の組を加えた;1μlのデオキシヌクレオチド混合物(dNTP混合)(各dNTPを500μM)、5.5μlのPCR試薬用水、4.0μlの10X緩衝液、3.0μlの塩化マグネシウム、1μlのRNase阻害剤(1単位/μl)、1μlのRT(1単位/μl)。これでPCRチューブの総容量が20μlとなる。チューブを以下の時間及び温度、25℃で5分、42℃で60分、70℃で15分、のサーマルサイクラーに置いた。
【0097】
以下のものを薄壁500μlPCRマイクロ遠心チューブに加えた:5μlの10X緩衝液、1μlのdNTP(各dNTPを200μM)、1μlのPCRプライマー(各々0.4μl)、2〜5μlの鋳型DNA(cDNA)、1μlのTaq DNAポリメラーゼ混合物(0.05単位/μl)及びPCRチューブ中の総容量を50μlとなすのに十分な量のPCR試薬用水。増幅温度は以下の通りであった、変性/RT不活性化(工程1)94℃で2分、変性(工程2)94℃で15秒、アニーリング(工程3)55℃で30秒、伸長68℃で1分(工程2、3及び4を35回繰り返した)、最終伸長(工程5)68℃で5分。PCR産物を次ぎに1%アガロースゲルで電気泳動し、UVトランスルミナーターで可視化した。
【0098】
タンパク質発現の検出
推定タンパク質のC末端に方向付けられたペプチド抗体は、Eurogentec, Liege Science Park, Belgium で合成された。免疫化に使用されたペプチドは以下のアミノ酸から構成されていた−CGSLRREDRLLQRFAD(配列番号7)。細胞株を、示されたように種々の時間、TLRリガンドで処理した。冷PBSの添加により刺激を停止し、細胞をSDS−PAGEサンプル緩衝液中で溶解した。ウエスタンブロッティングのため、TLR14抗体を、0.5%Tween20を含有するトリス緩衝化塩水中で1:1000に希釈した。
【0099】
ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ
HEK293細胞又はU373細胞を96ウェルプレートに蒔き(ウェル当たり2x104細胞)、次の日、発現ベクター及びレポータープラスミドでトランスフェクトした。「Genejuice(商標)」(Novagen)を、製造元の説明書に従って一過性トランスフェクションに使用した。NF−κB又はIRF3を含んでいる実験については、80ngのNF−κB−又はISR3−ルシフェラーゼレポーター遺伝子(Stratagene )を、40ngのRenillaルシフェラーゼ内部対照プラスミド(Promega )と共に細胞内にトランスフェクトした。24時間後、細胞を受動溶解緩衝液(Promega )に採取し、レポーター遺伝子活性をルミノメーターで測定した。細胞が刺激される場合、LPS(Sigma )を採取に先立った6時間前に、1μg/mlの最終濃度で細胞に加えた。データは対照レベルに対して平均誘導倍数±s.d.で表現されている(代表的実験については3回の別々の実験から、各々3重に実施した)。
【0100】
酵素結合免疫吸着アッセイ
U373細胞を、TLRH発現プラスミドの増加させた用量(1、10及び100ng)でトランスフェクトした。細胞は37℃で24時間インキュベートした。96ウェルマイクロタイタープレートを、40ng/mlの最終濃度の捕獲抗体(マウス抗ヒトRANTES)で被覆した。24時間後、プレートを0.05%Tween20含有PBSで洗浄した。プレートを次ぎに1%BSA及び5%スクロース含有PBS中、室温で1時間ブロックした。細胞上清(100μl)を各ウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。次ぎに検出抗体(ビオチン化ヤギ抗ヒトRANTES)を10ng/mlの最終濃度でウェルに加えた。プレートを再び室温で2時間インキュベートした。洗浄後、100μlのストレプトアビジン−HRPを各ウェルに加え、プレートを覆い、室温で20分インキュベートした。最後に、100μlの基質溶液(R&D Systems 、カタログ番号DY999)を加え、続いて50μlの停止溶液(2N H2SO4)をウェルに加えた。各ウェルの光学密度を、450nmに設定されたマイクロプレートリーダーで測定した。
【0101】
共免疫沈降アッセイ
HEK293細胞を10cmのプレートに、1x105細胞/mlで蒔いた。次の日、細胞を3μgのflagタグ付けTLR2、TLR4又はMyc−タグ付けMyD88でトランスフェクトした。24時間後、1%NP40を含有するヘペス緩衝液中で細胞を溶解した。細胞溶解物は次ぎにM2抗flagアガロースビーズ(Sigma )とインキュベートした。3時間後、ビーズをヘペス緩衝液で3回洗浄し、20μlのSDS−PAGEサンプル緩衝液に再懸濁した。タンパク質サンプルを10%SDS−PAGEゲル上で流し、ウエスタンブロッティングのためにニトロセルロースに移した。生じたブロットを抗TLR14及び抗flag抗体で探索した。
【0102】
局在化研究
LPSでの刺激に先立った24時間前、細胞を10cmディッシュに1x105細胞/mlで蒔いた。膜及び細胞質分画を超遠心により調製し、TLR14の局在化を決定するためSDS−PAGE及びウエスタンブロッティングを行った。10%FCSを含有する培地(DMEM)を、SDS−PAGEに続いてTLR14の存在についてブロットした。
【0103】
TLR14をコードする遺伝子の特徴付け
予備的マイクロアレイ解析は、MaIノックアウト細胞において低発現レベルを示す6つの遺伝子を同定した。該遺伝子の5つはある程度特徴付けられていたが、残りの遺伝子は新規であり、そして本明細書において特徴付けられた。この遺伝子の配列は、Kazusa DNA Research Institute (www.Kazusa.or.jp) でのヒトcDNAプロジェクトの一部として、HUGE(Human Unidentified Gene-Encoded Large Proteins )タンパク質データベースから入手可能である。以下に概説する理由から、この新規遺伝子をTLR14と名付けた。
【0104】
我々は、NCBIから入手可能なMap Viewerツールを使用して、該遺伝子をヒト7番染色体に位置付けした(図1A)。該遺伝子は4.7kbの長さであり、CREB5及びCPVLカルボキシペプチダーゼが隣接していた。ヒト及びマウスTLR14についてのヌクレオチド配列は、それぞれ図1B及び1Cに示されている。予測されたタンパク質は811アミノ酸長であり(図1D)、すべての膜局在化タンパク質に共通する特色である、N末端シグナル配列を含有する。推定タンパク質のN末端も少なくとも6つのロイシンリッチリピートを含有し、いくつかのTLRの細胞外領域と高度に相同的である(TLR4が例として図1Eに与えられている)。
【0105】
発現プロフィールは、図2Aに示されているように、脳、腎臓及び卵巣における遺伝子産物の高い存在量を明らかにした(情報はKazusa DNA Research Institute から得られた)。TLR14のC末端に対するポリクローナル抗体を発生させた。免疫化に使用したペプチドはアミノ酸CGSLRREDDRLLQRFAD (配列番号7)を含む。抗体は、ヒト脳及び肺組織においておよそ81kDaのタンパク質を検出した(図2B)。
【0106】
上記のように、TLRファミリーのメンバーのすべてが細胞質TIRドメインを含有する。このドメインは約200アミノ酸に広がり、ファミリーメンバー間で、さまざまな程度の配列類似性を有している。3つの特定のboxを同定することが可能であり、それはファミリーメンバー間で高度に保存的である。box1はファミリーのシグナチャー(signature)配列と考えられ、一方、box2及び3はシグナル伝達について決定的なアミノ酸を含有する。TLRl及びTLR2のTIRドメインの結晶構造は、box2の周囲を中心とするコア構造要素を明らかにした(22)。BBループと名付けられたこの領域は、暴露された表面パッチ(patch)を形成し、中心的なプロリン又はアルギニン残基を含有する。これらのアミノ酸はループの先端に位置し、下流シグナル伝達成分との接触点を形成する。TLR14の詳細な検査は、それが高度に保存されたbox2及び同一視することができるbox1及び3(図3)を含有することも明らかにし、この新規タンパク質がTLRスーパーファミリーに属することを示唆している。
【0107】
TLR14の発現は、細胞をTLR2及びTLR4リガンドで処理した後に誘導される
上記のように、LPSへの暴露後、Malを欠く細胞においてはTLR14発現が無効にされる。このことは、問題とする遺伝子がLSP及びおそらく他のTLRリガンドにより調節されていることを示している。この問題をさらに追求するため、我々はNIXアプリケーション(http://menu.hgmp.mrc.ac.uk )及びMatInspector Release Professional(www.genomatix.de/cgi-bin/matinspector/ matinspector.pl)を使用して、TLR14のプロモーター領域及び可能な転写因子結合部位を同定した。機能性TLR14プロモーターはエクソン1近位の4kb領域内に含まれているようである。この領域のさらなる分析は、NF−κB、IRF7及びEts−1のようないくつかの転写因子のための推定結合部位を明らかにした(図4)。TLR14 mRNA発現の誘導は、炎症性刺激による細胞の処理に続いてのRT−PCRにより分析した。図5Aに示されたように、TLR14 mRNAの発現は、LPSへの暴露後の時間と共に、脳星状細胞腫細胞(U373)及び初代マウス胎児線維芽細胞(MEF)で誘導された。著しい増加もLPSで処理したマウスの脳から調製されたTLR14 mRNAのレベルで検出された(図5B)。発現の誘導は、図6Aに示されたように、TLR2リガンドPam3Cysでの処理後、ヒトグリオーマ細胞株、A172中のタンパク質レベルでも検出された。類似の効果が、TLP4で安定的にトランスフェクトされたHEK−293細胞で、LPSでの処理後に見られた(図6B)。加えて、図6Cに示されたように、TLR14タンパク質発現の増加が、LPSを注射したマウスの脳で観察された。
【0108】
TLR14は転写因子NF−κB及びIRF3を活性化する
上記のように、NF−κBはTLRスーパーファミリーのほとんどのメンバーにより活性化されるが、一方、IRF3活性化はTLR3及びTLR4に限定されている。TLR14がこれらの因子も活性化し、及び免疫応答を変調することができるかどうかを追求するため、該タンパク質をコードするcDNAを哺乳類発現ベクターpcDNA3.1内にクローン化し、NF−κB及びIRF3が結合するDNAの要素を含有するルシフェラーゼレポーター構築物を使用して機能性アッセイを実施した。該タンパク質はヘマグルチニン(HA)をコードするタグを含有し、発現は抗HA抗体を使用して多様な細胞株で発現を検出した(データは示されていない)。TLR14発現プラスミドがκB及びISREレポーター構築物とともに細胞内にトランスフェクトされた場合、ルシフェラーゼ活性が増強され(図7)、TLR4同様、TLR14がNF−κB及びIRF3の両方を活性化することを示唆している。予備的ELISAも、TLR14でトランスフェクトした細胞においてRANTES産生(IRF3誘導可能サイトカイン)の増加を示した(図8)。
【0109】
TLR14はTLRファミリーの他のメンバーと相互作用する
TIRドメイン含有タンパク質の共通の特色は、他のTIRドメイン含有タンパク質とホモ又はヘテロ二量体形成するそれらの能力である。TLR14が一方又は両方のレセプターと相互作用できるかどうかを決定するため、TLR14及びTIRドメイン含有レセプターTLR2及びTLR4で共免疫沈降実験を実施した。図9Aに示したように、TLR14は過剰発現されたTLR2及びTLR4と強く相互作用することを見出した。TLRのTIRドメイン中の保存的プロリン残基のヒスチジンへの変異はTIR−TIR相互作用を消滅させることが知られている(22)。従って、レセプターの変異体(P/H)形がTLR14と同時発現されると、TLR14とTLR2か又はTLR4との相互作用が著しく減少した。図9Bに示したように、TLR14は普遍的TIRドメイン含有アダプターMyD88とも相互作用することが見出された。このことは、TLR14がTIRドメイン含有タンパク質であるという考えを支持している。最後に、図10に示したように、TLR2及び内在性TLR14間の相互作用を検出することができた。このことを試験するため、HEK293細胞をflagタグ付けTLR2でトランスフェクトした。細胞を次ぎに溶解し、TLR2及びいずれかの相互作用するタンパク質と免疫沈降させるため、抗flagビーズとインキュベートした。ウエスタンブロッティング後、抗TLR14抗体を使用して、TLR14に相当するバンドを検出することができた。
【0110】
TLR14は血清中に高レベルで見出され、可溶性タンパク質として産生することができる
TLR14が原形質膜に局在化されているかどうかを決定するため、細胞分画を調製した。驚いたことに、TLR14は細胞の細胞質分画に見出された(図11A)。加えて、高レベルの該タンパク質がウシ胎児血清中に見出され(図11B)、該タンパク質は可溶性分泌タンパク質であることができることを示唆している。質量分光法的分析は、FCS中に存在するバンドは、ヒトTLR14のウシ相同体であったことを明らかにした(データは示されていない)。予備的実験も、LPSでの刺激後、該タンパク質がU373細胞から分泌されることを示した。分子量が完全長タンパク質の分子量に相当するので、該タンパク質は切断されていないようである。最大分泌は6時間で生じる。
【0111】
本発明は、細部にわたって変更することができる、本明細書で上に記載された態様に制限されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1又は2のアミノ酸配列及びTLRリガンドを含む、組換え又は合成的に生成されたタンパク質を含む、リガンド/レセプター複合体。
【請求項1】
配列番号1又は2のアミノ酸配列及びTLRリガンドを含む、組換え又は合成的に生成されたタンパク質を含む、リガンド/レセプター複合体。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−121888(P2012−121888A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−6608(P2012−6608)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【分割の表示】特願2008−507261(P2008−507261)の分割
【原出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(507345000)ザ・プロヴォスト,フェローズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホーリー・アンド・アンディヴァイデッド・トリニティー・オブ・クイーン・エリザベス,ニア・ダブリン (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【分割の表示】特願2008−507261(P2008−507261)の分割
【原出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(507345000)ザ・プロヴォスト,フェローズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホーリー・アンド・アンディヴァイデッド・トリニティー・オブ・クイーン・エリザベス,ニア・ダブリン (7)
【Fターム(参考)】
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