ドアシール機構
【課題】ルーフにシール部材を設け、ドアの後端にシール部材を設けても、水の浸入を防止し、ラッチ機構に水がかかることを防止したドアシール機構を提供する。
【解決手段】ドアシール機構13は、ドア開口部に取付けられて、ドア25に密着する開口上縁シール部材21と、ドア25に取付けられ、ドア開口部に密着するドアシール部材37と、を備え、ドアシール部材37は、コーナ部48に沿って湾曲しコーナ部48に接合されたドアシール一端湾曲部51と、ドアシール一端湾曲部51に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部52と、を備え、ドアシール一端湾曲部51は、湾曲密着面部54から離れて上方に設けた防水リップ58を備えている。
【解決手段】ドアシール機構13は、ドア開口部に取付けられて、ドア25に密着する開口上縁シール部材21と、ドア25に取付けられ、ドア開口部に密着するドアシール部材37と、を備え、ドアシール部材37は、コーナ部48に沿って湾曲しコーナ部48に接合されたドアシール一端湾曲部51と、ドアシール一端湾曲部51に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部52と、を備え、ドアシール一端湾曲部51は、湾曲密着面部54から離れて上方に設けた防水リップ58を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体とドアとの間に設けたドアシール機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアシール機構には、ルーフの縁にウェザストリップを設けてドアの窓枠との間に介在させたものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、ドアのほぼ全周にドアウェザストリップを取付け、ドアウェザストリップの両端をクリップでドアの穴に係止したものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、ルーフの縁にウェザストリップを前ドア開口から後ドア開口まで連続させて設けた場合、前ドアと後ドアとの見切り部分または前ドアとセンターピラーとの間にもシール部材を追加しないと、前ドアの後部に設けられて、センターピラーに係止するラッチ機構に水がかかってしまう恐れがある。
【0004】
そこで、前ドアの後部に特許文献2のような両端が連結されていないドアウェザストリップを上下方向に延ばし、その両端をクリップ等で固定することが考えられる。
しかし、特許文献1のウェザストリップと特許文献2の上下方向に延ばしたドアウェザストリップの密着面部同士を当接させてしまうと、シール性が悪化する恐れがあるため、互いの密着面部同士を離す必要があるが、その離した部位から水が浸入して、ラッチ機構に水がかかってしまう恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−35506号公報
【特許文献2】特開平5−147441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ルーフに設けたシール部材と、ドア後端に設けたシール部材とを離間させても、水の浸入を防止し、ラッチ機構に水がかかることを防止したドアシール機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ドアシール機構は、ドア開口部の開口上縁に沿って車体に取付けられた開口上縁シール部材と、開口上縁に連続して上下に延びる開口縦部に近接したドアのドア縦一端部に上下に延ばして取付けられ、ドア開口部に密着するドアシール部材と、を備え、ドアシール部材は、ドア上縁とドア縦一端部とで形成されたコーナ部に沿って湾曲しコーナ部に接合されたドアシール一端湾曲部と、ドアシール一端湾曲部に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部と、を備え、ドアシール部材のドアシール密着面部は、ドアシール縦部に形成された縦密着面部と、縦密着面部に連なりドアシール一端湾曲部に形成された湾曲密着面部と、を備え、湾曲密着面部は、ドア開口部に設けた開口上縁シール部材から離して配置され、ドアシール一端湾曲部は、ドアのドア幅方向において湾曲密着面部よりもドア縦一端部側で湾曲密着面部から離れて上下方向へ延び、且つ湾曲密着面部の上縁よりも上方まで延びる防水リップを備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、ドアシール一端湾曲部は、開口上縁シール部材に近接した湾曲の端部に上方へ向かって延びる止水端壁部を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、止水端壁部から防水リップまで延びる連接壁を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、連接壁は、車体から離間していることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、止水端壁部は、連接壁から上方へ延長した上延止水部を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、防水リップは、開口上縁シール部材に設けられた車体へ取付ける取付け部に接触し、取付け部に連なり形成された開口上縁密着面部から離れていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、ドアシール部材は、湾曲密着面部に防水リップを連接させ、且つドアの内パネルに沿って延びるリップ連接部を備え、リップ連接部は、ドアに、湾曲密着面部と防水リップとの間で固定部材によって固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、車両は、ドア開口部の開口周縁に取付けられた環状の車体取付シール部材を備え、ドアは、ドア縦一端部に、車体に設けられた係合部に係合するラッチ機構を備え、ラッチ機構は、車体取付シール部材が密着するドアのドア密着面よりもドアの縁側に配置され、ドアシール部材は、ラッチ機構よりもドアの縁側に取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、ドアシール機構は、車体のドア開口部の開口上縁に取付けられた開口上縁シール部材と、ドアのドア縦一端部に上下に延ばして取付けられ、ドア開口部に密着するドアシール部材と、を備え、ドアシール部材は、ドア縦一端部に連続するコーナ部に接合されたドアシール一端湾曲部と、ドアシール一端湾曲部に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部と、を備え、ドアシール部材のドアシール密着面部は、ドアシール縦部に形成された縦密着面部と、縦密着面部に連なりドアシール一端湾曲部に形成された湾曲密着面部と、を備え、湾曲密着面部は、ドア開口部に設けた開口上縁シール部材から離して配置され、ドアシール一端湾曲部は、ドアのドア幅方向において湾曲密着面部よりもドア縦一端部側で湾曲密着面部から離れて上下方向へ延び、且つ湾曲密着面部の上縁よりも上方まで延びる防水リップを備えているので、開口上縁シール部材に近接したドアシール一端湾曲部の防水リップによって、ドアシール部材(ドアシール一端湾曲部とドアシール縦部を備える)を越えて水が浸入することを抑制できる。
【0016】
また、湾曲密着面部から防水リップが外方へ離れているため、湾曲密着面部を確実に押圧することができ、湾曲密着面部のシール性が低下することを抑制できる。
【0017】
さらに、防水リップが湾曲密着面部よりもドアのドア縦一端部側で湾曲密着面部から離して設けられているので、防水リップを乗り越えて水が浸入した場合でも、乗り越える際に水の勢いが抑えられ、水の勢いを減らして、湾曲密着面部と防水リップから水を落とし、防水リップの下を通して湾曲密着面部に連なる外面溝底で導いて排水することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、ドアシール一端湾曲部は、開口上縁シール部材に近接した湾曲の端部に上方へ向かって延びる止水端壁部を備えているので、ドアシール一端湾曲部のうち外方へ向く外面溝底で水を導いて排水する際に、一部の水が端部へ向かうと、止水端壁部によってせき止めることができる。つまり、ドアシール密着面部の湾曲密着面部よりも室内領域に水が浸入することをより抑制することができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、止水端壁部から防水リップまで延びる連接壁を備えているので、止水端壁部および防水リップの倒れ込みを抑制して、止水端壁部および防水リップの防水性を高めることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、連接壁は、車体から離間しているので、防水リップで止めた水が、止水端壁部へ向かって流れ始めると、連接壁と車体との間から落下して、ドアシール一端湾曲部のうち外方へ向く外面溝底によって導かれ、排水される。従って、連接壁を伝って止水端壁部まで伝わることを抑制できる。
【0021】
請求項5に係る発明では、止水端壁部は、連接壁から上方へ延長した上延止水部を備えているので、連接壁を伝ってきた水を上延止水部によって止めることができ、連接壁を伝ってきた水の浸入を防止することができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、防水リップは、開口上縁シール部材に設けられた車体へ取付ける取付け部に接触し、取付け部に連なり形成された開口上縁密着面部から離れているので、開口上縁密着面部のシール性を確保することができる。
また、取付け部と防水リップとの間のシール性を確保でき、水の浸入経路を開口上縁シール部材の取付け部と開口上縁密着面部との間に限定できるので、より効果的に水の浸入を防止することができる。
【0023】
請求項7に係る発明では、ドアシール部材は、湾曲密着面部に防水リップを連接させ、且つドアの内パネルに沿って延びるリップ連接部を備え、リップ連接部は、ドアに、湾曲密着面部と防水リップとの間で固定部材によって固定されているので、リップ連接部によって湾曲密着面部から防水リップが離れることを防止できる。
また、リップ連接部を湾曲密着面部と防水リップとの間で固定することによって、防水リップが湾曲密着面部に接近することを防止できる。
【0024】
請求項8に係る発明では、車両は、ドア開口部の開口周縁に取付けられた環状の車体取付シール部材を備え、ドアは、ドア縦一端部に、車体に設けられた係合部に係合するラッチ機構を備え、ラッチ機構は、車体取付シール部材が密着するドアのドア密着面よりもドアの縁側に配置され、ドアシール部材は、ラッチ機構よりもドアの縁側に取付けられているので、車体取付シール部材によって、ドア開口部とドアとの間のシール性を確保でき、特にドア開口部の周縁に対してシール性を確保することができる。
また、ラッチ機構が車体取付シール部材よりもドアの縁側に配置されていても、ドアシール部材によってラッチ機構への被水を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係るドアシール機構を採用した車両の中央の側面図である。
【図2】ドアシール機構を採用したドアを車室からみた側面図である。
【図3】ドアシール部材のドアシール一端湾曲部の詳細図である。
【図4】ドアシール機構の水の浸入を防ぐ機構を説明する第1作用図である。
【図5】ドアシール機構の水の浸入を防ぐ機構を説明する第2作用図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8−8線断面図である。
【図9】図3の9−9線断面図である。
【図10】図3の10−10線断面図である。
【図11】ドアを外して車両の外側から見たドアシール部材と開口上縁シール部材との関係を示す斜視図である。
【図12】ドアシール部材と開口上縁シール部材を外したドア開口部との関係を示す斜視図である。
【図13】図3の13−13線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
車両11は、図1、図2に示すように、車体12に実施例に係るドアシール機構13を採用している。
車体12は、床(アンダボデー15)と、左右の側壁(サイドボデー16)と、ルーフ17と、ドア開口部(前ドア開口部)18と、を備える。
【0028】
ドア開口部(前ドア開口部)18には、開口上縁シール部材21および車体取付シール部材22が取付けられている。
ドア開口部(前ドア開口部)18のフロントピラー24にドア(右前ドア)25をヒンジ26で取付けている。
【0029】
ドア(右前ドア)25は、ドアインナパネル28の周縁部31とドアアウタパネル32の周縁部33を接合したドア本体部34と、ドア本体部34に連ね上方に設けられた窓枠部35と、からなる。そして、ドアシール機構13のドアシール部材37のみが取付けられている。
【0030】
次に、ドアシール機構13の主要構成を図1〜図13で説明する。
ドアシール機構13は、車両11の車体12のドア開口部18とドア(右前ドア)25との間に設けられている。
【0031】
また、ドアシール機構13は、ドア開口部18の開口上縁38に沿って車体12に取付けられて、ドア25のドア上縁41に密着する開口上縁密着面部42(図6)を備えた開口上縁シール部材21と、開口上縁38に連続して上下に延びる開口縦部45に近接したドア25のドア縦一端部46に上下に延ばして取付けられ、ドア開口部18の周縁部(開口上縁38、開口縦部45)に密着するドアシール密着面部47を備えたドアシール部材37と、を備える。
【0032】
ドアシール部材37は、ドア上縁41とドア縦一端部46とで形成されたコーナ部48に沿って湾曲しコーナ部48に接合されたドアシール一端湾曲部51と、ドアシール一端湾曲部51に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部52と、を備える。
【0033】
ドアシール密着面部47は、ドアシール縦部52に形成された縦密着面部53と、縦密着面部53に連なりドアシール一端湾曲部51に形成された湾曲密着面部54と、を備える。
湾曲密着面部54は、開口上縁シール部材21から離して配置されている。離した最小距離はB(図7)である。
【0034】
ドアシール一端湾曲部51は、ドア25のドア幅方向(X軸方向)において湾曲密着面部54よりもドア縦一端部46側(後述する止水端壁部62の反対側、図3矢印a4の方向))で湾曲密着面部54から離れて上下方向(図3矢印a1の方向)へ延び、且つ湾曲密着面部54の上縁56よりも上方まで延びる、すなわち、上縁56から外方(図3矢印a1の方向)へ距離Eや距離Emだけ離し、その位置から上方(図8矢印a2、図9矢印a3の方向)へ延びる防水リップ58を備えている。
「ドア25のドア幅方向」とは、サイドドア(右前ドア25)においては、車両前後方向(X軸方向)、テールゲート(図に示していない)においては、車両幅方向である。
また、「防水リップ58が、ドア25のドア幅方向において、湾曲密着面部54よりもドア縦一端部46側で湾曲密着面部54から離れている」とは、防水リップ58が、ドア幅方向での断面視(図13参照)で、湾曲密着面部54よりもドア縦一端部46側で湾曲密着面部54から離れている構成も含まれる。
【0035】
「離れて上下方向へ延び」とは、上下方向のうち湾曲密着面部54から離れる方向(図3矢印a1の方向)ということ。
【0036】
ドアシール一端湾曲部51は、開口上縁シール部材21に近接した湾曲の端部61に上方へ向かって延びる止水端壁部62を備えている。
止水端壁部62から防水リップ58まで延びる連接壁63を備えている。
【0037】
連接壁63は、車体12から距離e(図7、図12)だけ離間している。
また、連接壁63は、開口上縁シール部材21との間に隙間64(図7、図11)を形成する距離Jだけ離間している。
止水端壁部62は、連接壁63から上方へ延長した上延止水部66を備えている。
【0038】
防水リップ58は、開口上縁シール部材21に設けられた車体12へ取付ける取付け部67に接触し(図8)、取付け部67に連なり形成された開口上縁密着面部42から離れている。
【0039】
ドアシール部材37は、湾曲密着面部54に防水リップ58を連接させ、且つドア25の内パネル(ドアインナパネル)28に沿って延びるリップ連接部68を備える。
リップ連接部68は、ドア25に、湾曲密着面部54と防水リップ58との間で固定部材71によって固定されている。
【0040】
車両11は、ドア開口部18の開口周縁73に取付けられた環状の車体取付シール部材22を備える。
ドア25は、ドア縦一端部46に、車体12に設けられた係合部74に係合するラッチ機構75を備える。
【0041】
ラッチ機構75は、車体取付シール部材22が密着するドア25のドア密着面76よりもドア25の縁(周縁部31、周縁部33)側に配置(配置部77)されている。
ドアシール部材37は、ラッチ機構75よりもドア25の縁(周縁部31、周縁部33)側に取付けられている。
【0042】
次に、ドア開口部18を説明する。
ドア開口部18は、開口上縁38、開口縦部45を有する。
開口上縁38は、車両11の前後に延び、ルーフサイドレール81に含まれる。
そして、開口上縁38は、図6〜図8に示す通り、ドア25に近接した断面L字形のL形レール部82が形成され、L形レール部82に連ねドア25に近接して下方へ延長させた板縁83が形成されている。
【0043】
この板縁83には環状の車体取付シール部材22の狭持部84の一部(上部)が取付けられている。
なお、板縁83はドア開口部18の全周に形成され、全周の板縁83に車体取付シール部材22が取付けられて、ドア25を閉じたときに、狭持部84に連なる凸状の縁密着面部85が押されドア25に密着する。
【0044】
開口縦部45は(図10)、センタピラー87に含まれる。そして、ドア開口部18の中央へ向けた板縁83を有し、この板縁83には環状の車体取付シール部材22の狭持部84の一部(縦部)が取付けられている。ドア25を閉じたときに、狭持部84に連なる凸状の縁密着面部85が押されドア25に密着する。
ドア25には、ドア上縁41から窓枠部35の内方へ離して枠シール取付け部88が形成されている。
【0045】
次に、ドアシール機構13を詳しく説明していく。
ドアシール機構13は、既に説明したドアシール部材37(ドアシール一端湾曲部51、ドアシール縦部52を有する)と、開口上縁シール部材21と、車体取付シール部材22と、からなる。
【0046】
開口上縁シール部材21は(図6〜図8)、ルーフサイドレール81およびフロントピラー24に取付ける長さである。ルーフサイドレール81のL形レール部82に接合する扁平管状の開口シール本体部91が形成され、開口シール本体部91の下角に連ねドア25へ向け突出したルーフサイドシール部92が形成され、ドアシール部材37の防水リップ58に接触する(図8)。
【0047】
ドアシール部材37は、ルーフ17からサイドシル94まで形成されている(図1)。そして、ドア25に接合する管状のドアシール本体部95が形成され、このドアシール本体部95のうち、外方へ向いた部位が外面溝底96である。一方、ドアシール本体部95のうち、車体12へ向いた部位がドアシール密着面部47である。
【0048】
ドアシール一端湾曲部51は、車両11側面視(図1、図2の視点)、車両の前後方向へ滑らかに曲がり、この曲がりの半径中心を窓枠部35の内方に設定したものである。
【0049】
止水端壁部62には、ドア25を閉じたときに、ルーフサイドシール部92にほぼ一致する凹部98(図5、図6)が形成されている。その結果、水が止水端壁部62の上に向かって流れると、ルーフサイドシール部92に当たって戻されるので、水を止めることができ、水の浸入を防止できる。
【0050】
連接壁63では、隙間64(図7、図11距離J)が、排水入り口である。その結果、外方から流入した水が防水リップ58を流れて前方へ向かうと、隙間64から下に流れドアシール本体部95上を流れるので、防水リップ58から止水端壁部62へ向かって流れる水の量を減少させることができる。
【0051】
防水リップ58は、ルーフサイドシール部92に接触する第1リップ部101に連ねて第2リップ部102が形成されてコーナ部48に対向するドア開口部18の開口コーナ部103に密着する。
【0052】
次に、ドアシール機構13の作用を説明する(図1、図4、図5、図7、図8、図9、図11、図13)。
ドアシール機構13では、水がドア25と車体12の間に矢印b1のように入り始めると、開口上縁シール部材21に近接したドアシール一端湾曲部51の防水リップ58(特に第1リップ部101)によって流れが矢印b2のように止められるので、ドアシール部材37(ドアシール一端湾曲部51とドアシール縦部52を備える)を越えて水が浸入することを抑制できる。
この結果、ラッチ機構75に水がかかることを防止できる。
【0053】
また、水が防水リップ58を矢印b3のように乗り越えた場合、乗り越える際に水の勢いが抑えられる。
そして、続けて、連接壁63と開口上縁シール部材21との隙間(排水入り口)64から水を矢印b4のように落とす。落ちると、防水リップ58の下を矢印b5のように通して外面溝底96で導いて排水することができる。
【0054】
さらに、ドアシール一端湾曲部51のうち外方へ向く外面溝底96で水を矢印b5のように導いて排水する際に、一部の水が矢印b6のように端部61へ向かうと、止水端壁部62によって矢印b7のようにせき止めることができる。つまり、ドアシール密着面部47のうちの湾曲密着面部54よりも室内領域に水が浸入することをより抑制することができる。
【0055】
その上、防水リップ58で止めた水が、止水端壁部62へ向かって矢印b8のように流れ始めると、連接壁63と開口上縁シール部材21との間に設けた隙間64(排水入り口)から矢印b9のように落下して、ドアシール一端湾曲部51のうち外方へ向く外面溝底96によって導かれ、排水される。従って、連接壁63を伝って止水端壁部62まで伝わることを抑制できる。
【0056】
さらに、水が落下しないで連接壁63を伝って矢印c1のように流れると、水は上延止水部66によって矢印c2のように止められので、連接壁63を伝ってきた水の浸入を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のドアシール機構は、自動車のドアに好適である。
【符号の説明】
【0058】
11…車両、12…車体、13…ドアシール機構、18…ドア開口部、21…開口上縁シール部材、22…車体取付シール部材、28…内パネル(ドアインナパネル)、25…ドア(右前ドア)、37…ドアシール部材、38…開口上縁、41…ドアのドア上縁、42…開口上縁シール部材の開口上縁密着面部、46…ドア縦一端部、47…ドアシール密着面部、48…コーナ部、51…ドアシール一端湾曲部、52…ドアシール縦部、53…縦密着面部、54…湾曲密着面部、58…防水リップ、61…ドアシール一端湾曲部の端部、62…止水端壁部、63…連接壁、64…隙間、66…上延止水部、67…取付け部、68…リップ連接部、71…固定部材、73…開口周縁、74…係合部、75…ラッチ機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体とドアとの間に設けたドアシール機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアシール機構には、ルーフの縁にウェザストリップを設けてドアの窓枠との間に介在させたものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、ドアのほぼ全周にドアウェザストリップを取付け、ドアウェザストリップの両端をクリップでドアの穴に係止したものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、ルーフの縁にウェザストリップを前ドア開口から後ドア開口まで連続させて設けた場合、前ドアと後ドアとの見切り部分または前ドアとセンターピラーとの間にもシール部材を追加しないと、前ドアの後部に設けられて、センターピラーに係止するラッチ機構に水がかかってしまう恐れがある。
【0004】
そこで、前ドアの後部に特許文献2のような両端が連結されていないドアウェザストリップを上下方向に延ばし、その両端をクリップ等で固定することが考えられる。
しかし、特許文献1のウェザストリップと特許文献2の上下方向に延ばしたドアウェザストリップの密着面部同士を当接させてしまうと、シール性が悪化する恐れがあるため、互いの密着面部同士を離す必要があるが、その離した部位から水が浸入して、ラッチ機構に水がかかってしまう恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−35506号公報
【特許文献2】特開平5−147441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ルーフに設けたシール部材と、ドア後端に設けたシール部材とを離間させても、水の浸入を防止し、ラッチ機構に水がかかることを防止したドアシール機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ドアシール機構は、ドア開口部の開口上縁に沿って車体に取付けられた開口上縁シール部材と、開口上縁に連続して上下に延びる開口縦部に近接したドアのドア縦一端部に上下に延ばして取付けられ、ドア開口部に密着するドアシール部材と、を備え、ドアシール部材は、ドア上縁とドア縦一端部とで形成されたコーナ部に沿って湾曲しコーナ部に接合されたドアシール一端湾曲部と、ドアシール一端湾曲部に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部と、を備え、ドアシール部材のドアシール密着面部は、ドアシール縦部に形成された縦密着面部と、縦密着面部に連なりドアシール一端湾曲部に形成された湾曲密着面部と、を備え、湾曲密着面部は、ドア開口部に設けた開口上縁シール部材から離して配置され、ドアシール一端湾曲部は、ドアのドア幅方向において湾曲密着面部よりもドア縦一端部側で湾曲密着面部から離れて上下方向へ延び、且つ湾曲密着面部の上縁よりも上方まで延びる防水リップを備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、ドアシール一端湾曲部は、開口上縁シール部材に近接した湾曲の端部に上方へ向かって延びる止水端壁部を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、止水端壁部から防水リップまで延びる連接壁を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、連接壁は、車体から離間していることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、止水端壁部は、連接壁から上方へ延長した上延止水部を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、防水リップは、開口上縁シール部材に設けられた車体へ取付ける取付け部に接触し、取付け部に連なり形成された開口上縁密着面部から離れていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、ドアシール部材は、湾曲密着面部に防水リップを連接させ、且つドアの内パネルに沿って延びるリップ連接部を備え、リップ連接部は、ドアに、湾曲密着面部と防水リップとの間で固定部材によって固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、車両は、ドア開口部の開口周縁に取付けられた環状の車体取付シール部材を備え、ドアは、ドア縦一端部に、車体に設けられた係合部に係合するラッチ機構を備え、ラッチ機構は、車体取付シール部材が密着するドアのドア密着面よりもドアの縁側に配置され、ドアシール部材は、ラッチ機構よりもドアの縁側に取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、ドアシール機構は、車体のドア開口部の開口上縁に取付けられた開口上縁シール部材と、ドアのドア縦一端部に上下に延ばして取付けられ、ドア開口部に密着するドアシール部材と、を備え、ドアシール部材は、ドア縦一端部に連続するコーナ部に接合されたドアシール一端湾曲部と、ドアシール一端湾曲部に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部と、を備え、ドアシール部材のドアシール密着面部は、ドアシール縦部に形成された縦密着面部と、縦密着面部に連なりドアシール一端湾曲部に形成された湾曲密着面部と、を備え、湾曲密着面部は、ドア開口部に設けた開口上縁シール部材から離して配置され、ドアシール一端湾曲部は、ドアのドア幅方向において湾曲密着面部よりもドア縦一端部側で湾曲密着面部から離れて上下方向へ延び、且つ湾曲密着面部の上縁よりも上方まで延びる防水リップを備えているので、開口上縁シール部材に近接したドアシール一端湾曲部の防水リップによって、ドアシール部材(ドアシール一端湾曲部とドアシール縦部を備える)を越えて水が浸入することを抑制できる。
【0016】
また、湾曲密着面部から防水リップが外方へ離れているため、湾曲密着面部を確実に押圧することができ、湾曲密着面部のシール性が低下することを抑制できる。
【0017】
さらに、防水リップが湾曲密着面部よりもドアのドア縦一端部側で湾曲密着面部から離して設けられているので、防水リップを乗り越えて水が浸入した場合でも、乗り越える際に水の勢いが抑えられ、水の勢いを減らして、湾曲密着面部と防水リップから水を落とし、防水リップの下を通して湾曲密着面部に連なる外面溝底で導いて排水することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、ドアシール一端湾曲部は、開口上縁シール部材に近接した湾曲の端部に上方へ向かって延びる止水端壁部を備えているので、ドアシール一端湾曲部のうち外方へ向く外面溝底で水を導いて排水する際に、一部の水が端部へ向かうと、止水端壁部によってせき止めることができる。つまり、ドアシール密着面部の湾曲密着面部よりも室内領域に水が浸入することをより抑制することができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、止水端壁部から防水リップまで延びる連接壁を備えているので、止水端壁部および防水リップの倒れ込みを抑制して、止水端壁部および防水リップの防水性を高めることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、連接壁は、車体から離間しているので、防水リップで止めた水が、止水端壁部へ向かって流れ始めると、連接壁と車体との間から落下して、ドアシール一端湾曲部のうち外方へ向く外面溝底によって導かれ、排水される。従って、連接壁を伝って止水端壁部まで伝わることを抑制できる。
【0021】
請求項5に係る発明では、止水端壁部は、連接壁から上方へ延長した上延止水部を備えているので、連接壁を伝ってきた水を上延止水部によって止めることができ、連接壁を伝ってきた水の浸入を防止することができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、防水リップは、開口上縁シール部材に設けられた車体へ取付ける取付け部に接触し、取付け部に連なり形成された開口上縁密着面部から離れているので、開口上縁密着面部のシール性を確保することができる。
また、取付け部と防水リップとの間のシール性を確保でき、水の浸入経路を開口上縁シール部材の取付け部と開口上縁密着面部との間に限定できるので、より効果的に水の浸入を防止することができる。
【0023】
請求項7に係る発明では、ドアシール部材は、湾曲密着面部に防水リップを連接させ、且つドアの内パネルに沿って延びるリップ連接部を備え、リップ連接部は、ドアに、湾曲密着面部と防水リップとの間で固定部材によって固定されているので、リップ連接部によって湾曲密着面部から防水リップが離れることを防止できる。
また、リップ連接部を湾曲密着面部と防水リップとの間で固定することによって、防水リップが湾曲密着面部に接近することを防止できる。
【0024】
請求項8に係る発明では、車両は、ドア開口部の開口周縁に取付けられた環状の車体取付シール部材を備え、ドアは、ドア縦一端部に、車体に設けられた係合部に係合するラッチ機構を備え、ラッチ機構は、車体取付シール部材が密着するドアのドア密着面よりもドアの縁側に配置され、ドアシール部材は、ラッチ機構よりもドアの縁側に取付けられているので、車体取付シール部材によって、ドア開口部とドアとの間のシール性を確保でき、特にドア開口部の周縁に対してシール性を確保することができる。
また、ラッチ機構が車体取付シール部材よりもドアの縁側に配置されていても、ドアシール部材によってラッチ機構への被水を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係るドアシール機構を採用した車両の中央の側面図である。
【図2】ドアシール機構を採用したドアを車室からみた側面図である。
【図3】ドアシール部材のドアシール一端湾曲部の詳細図である。
【図4】ドアシール機構の水の浸入を防ぐ機構を説明する第1作用図である。
【図5】ドアシール機構の水の浸入を防ぐ機構を説明する第2作用図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8−8線断面図である。
【図9】図3の9−9線断面図である。
【図10】図3の10−10線断面図である。
【図11】ドアを外して車両の外側から見たドアシール部材と開口上縁シール部材との関係を示す斜視図である。
【図12】ドアシール部材と開口上縁シール部材を外したドア開口部との関係を示す斜視図である。
【図13】図3の13−13線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0027】
車両11は、図1、図2に示すように、車体12に実施例に係るドアシール機構13を採用している。
車体12は、床(アンダボデー15)と、左右の側壁(サイドボデー16)と、ルーフ17と、ドア開口部(前ドア開口部)18と、を備える。
【0028】
ドア開口部(前ドア開口部)18には、開口上縁シール部材21および車体取付シール部材22が取付けられている。
ドア開口部(前ドア開口部)18のフロントピラー24にドア(右前ドア)25をヒンジ26で取付けている。
【0029】
ドア(右前ドア)25は、ドアインナパネル28の周縁部31とドアアウタパネル32の周縁部33を接合したドア本体部34と、ドア本体部34に連ね上方に設けられた窓枠部35と、からなる。そして、ドアシール機構13のドアシール部材37のみが取付けられている。
【0030】
次に、ドアシール機構13の主要構成を図1〜図13で説明する。
ドアシール機構13は、車両11の車体12のドア開口部18とドア(右前ドア)25との間に設けられている。
【0031】
また、ドアシール機構13は、ドア開口部18の開口上縁38に沿って車体12に取付けられて、ドア25のドア上縁41に密着する開口上縁密着面部42(図6)を備えた開口上縁シール部材21と、開口上縁38に連続して上下に延びる開口縦部45に近接したドア25のドア縦一端部46に上下に延ばして取付けられ、ドア開口部18の周縁部(開口上縁38、開口縦部45)に密着するドアシール密着面部47を備えたドアシール部材37と、を備える。
【0032】
ドアシール部材37は、ドア上縁41とドア縦一端部46とで形成されたコーナ部48に沿って湾曲しコーナ部48に接合されたドアシール一端湾曲部51と、ドアシール一端湾曲部51に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部52と、を備える。
【0033】
ドアシール密着面部47は、ドアシール縦部52に形成された縦密着面部53と、縦密着面部53に連なりドアシール一端湾曲部51に形成された湾曲密着面部54と、を備える。
湾曲密着面部54は、開口上縁シール部材21から離して配置されている。離した最小距離はB(図7)である。
【0034】
ドアシール一端湾曲部51は、ドア25のドア幅方向(X軸方向)において湾曲密着面部54よりもドア縦一端部46側(後述する止水端壁部62の反対側、図3矢印a4の方向))で湾曲密着面部54から離れて上下方向(図3矢印a1の方向)へ延び、且つ湾曲密着面部54の上縁56よりも上方まで延びる、すなわち、上縁56から外方(図3矢印a1の方向)へ距離Eや距離Emだけ離し、その位置から上方(図8矢印a2、図9矢印a3の方向)へ延びる防水リップ58を備えている。
「ドア25のドア幅方向」とは、サイドドア(右前ドア25)においては、車両前後方向(X軸方向)、テールゲート(図に示していない)においては、車両幅方向である。
また、「防水リップ58が、ドア25のドア幅方向において、湾曲密着面部54よりもドア縦一端部46側で湾曲密着面部54から離れている」とは、防水リップ58が、ドア幅方向での断面視(図13参照)で、湾曲密着面部54よりもドア縦一端部46側で湾曲密着面部54から離れている構成も含まれる。
【0035】
「離れて上下方向へ延び」とは、上下方向のうち湾曲密着面部54から離れる方向(図3矢印a1の方向)ということ。
【0036】
ドアシール一端湾曲部51は、開口上縁シール部材21に近接した湾曲の端部61に上方へ向かって延びる止水端壁部62を備えている。
止水端壁部62から防水リップ58まで延びる連接壁63を備えている。
【0037】
連接壁63は、車体12から距離e(図7、図12)だけ離間している。
また、連接壁63は、開口上縁シール部材21との間に隙間64(図7、図11)を形成する距離Jだけ離間している。
止水端壁部62は、連接壁63から上方へ延長した上延止水部66を備えている。
【0038】
防水リップ58は、開口上縁シール部材21に設けられた車体12へ取付ける取付け部67に接触し(図8)、取付け部67に連なり形成された開口上縁密着面部42から離れている。
【0039】
ドアシール部材37は、湾曲密着面部54に防水リップ58を連接させ、且つドア25の内パネル(ドアインナパネル)28に沿って延びるリップ連接部68を備える。
リップ連接部68は、ドア25に、湾曲密着面部54と防水リップ58との間で固定部材71によって固定されている。
【0040】
車両11は、ドア開口部18の開口周縁73に取付けられた環状の車体取付シール部材22を備える。
ドア25は、ドア縦一端部46に、車体12に設けられた係合部74に係合するラッチ機構75を備える。
【0041】
ラッチ機構75は、車体取付シール部材22が密着するドア25のドア密着面76よりもドア25の縁(周縁部31、周縁部33)側に配置(配置部77)されている。
ドアシール部材37は、ラッチ機構75よりもドア25の縁(周縁部31、周縁部33)側に取付けられている。
【0042】
次に、ドア開口部18を説明する。
ドア開口部18は、開口上縁38、開口縦部45を有する。
開口上縁38は、車両11の前後に延び、ルーフサイドレール81に含まれる。
そして、開口上縁38は、図6〜図8に示す通り、ドア25に近接した断面L字形のL形レール部82が形成され、L形レール部82に連ねドア25に近接して下方へ延長させた板縁83が形成されている。
【0043】
この板縁83には環状の車体取付シール部材22の狭持部84の一部(上部)が取付けられている。
なお、板縁83はドア開口部18の全周に形成され、全周の板縁83に車体取付シール部材22が取付けられて、ドア25を閉じたときに、狭持部84に連なる凸状の縁密着面部85が押されドア25に密着する。
【0044】
開口縦部45は(図10)、センタピラー87に含まれる。そして、ドア開口部18の中央へ向けた板縁83を有し、この板縁83には環状の車体取付シール部材22の狭持部84の一部(縦部)が取付けられている。ドア25を閉じたときに、狭持部84に連なる凸状の縁密着面部85が押されドア25に密着する。
ドア25には、ドア上縁41から窓枠部35の内方へ離して枠シール取付け部88が形成されている。
【0045】
次に、ドアシール機構13を詳しく説明していく。
ドアシール機構13は、既に説明したドアシール部材37(ドアシール一端湾曲部51、ドアシール縦部52を有する)と、開口上縁シール部材21と、車体取付シール部材22と、からなる。
【0046】
開口上縁シール部材21は(図6〜図8)、ルーフサイドレール81およびフロントピラー24に取付ける長さである。ルーフサイドレール81のL形レール部82に接合する扁平管状の開口シール本体部91が形成され、開口シール本体部91の下角に連ねドア25へ向け突出したルーフサイドシール部92が形成され、ドアシール部材37の防水リップ58に接触する(図8)。
【0047】
ドアシール部材37は、ルーフ17からサイドシル94まで形成されている(図1)。そして、ドア25に接合する管状のドアシール本体部95が形成され、このドアシール本体部95のうち、外方へ向いた部位が外面溝底96である。一方、ドアシール本体部95のうち、車体12へ向いた部位がドアシール密着面部47である。
【0048】
ドアシール一端湾曲部51は、車両11側面視(図1、図2の視点)、車両の前後方向へ滑らかに曲がり、この曲がりの半径中心を窓枠部35の内方に設定したものである。
【0049】
止水端壁部62には、ドア25を閉じたときに、ルーフサイドシール部92にほぼ一致する凹部98(図5、図6)が形成されている。その結果、水が止水端壁部62の上に向かって流れると、ルーフサイドシール部92に当たって戻されるので、水を止めることができ、水の浸入を防止できる。
【0050】
連接壁63では、隙間64(図7、図11距離J)が、排水入り口である。その結果、外方から流入した水が防水リップ58を流れて前方へ向かうと、隙間64から下に流れドアシール本体部95上を流れるので、防水リップ58から止水端壁部62へ向かって流れる水の量を減少させることができる。
【0051】
防水リップ58は、ルーフサイドシール部92に接触する第1リップ部101に連ねて第2リップ部102が形成されてコーナ部48に対向するドア開口部18の開口コーナ部103に密着する。
【0052】
次に、ドアシール機構13の作用を説明する(図1、図4、図5、図7、図8、図9、図11、図13)。
ドアシール機構13では、水がドア25と車体12の間に矢印b1のように入り始めると、開口上縁シール部材21に近接したドアシール一端湾曲部51の防水リップ58(特に第1リップ部101)によって流れが矢印b2のように止められるので、ドアシール部材37(ドアシール一端湾曲部51とドアシール縦部52を備える)を越えて水が浸入することを抑制できる。
この結果、ラッチ機構75に水がかかることを防止できる。
【0053】
また、水が防水リップ58を矢印b3のように乗り越えた場合、乗り越える際に水の勢いが抑えられる。
そして、続けて、連接壁63と開口上縁シール部材21との隙間(排水入り口)64から水を矢印b4のように落とす。落ちると、防水リップ58の下を矢印b5のように通して外面溝底96で導いて排水することができる。
【0054】
さらに、ドアシール一端湾曲部51のうち外方へ向く外面溝底96で水を矢印b5のように導いて排水する際に、一部の水が矢印b6のように端部61へ向かうと、止水端壁部62によって矢印b7のようにせき止めることができる。つまり、ドアシール密着面部47のうちの湾曲密着面部54よりも室内領域に水が浸入することをより抑制することができる。
【0055】
その上、防水リップ58で止めた水が、止水端壁部62へ向かって矢印b8のように流れ始めると、連接壁63と開口上縁シール部材21との間に設けた隙間64(排水入り口)から矢印b9のように落下して、ドアシール一端湾曲部51のうち外方へ向く外面溝底96によって導かれ、排水される。従って、連接壁63を伝って止水端壁部62まで伝わることを抑制できる。
【0056】
さらに、水が落下しないで連接壁63を伝って矢印c1のように流れると、水は上延止水部66によって矢印c2のように止められので、連接壁63を伝ってきた水の浸入を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のドアシール機構は、自動車のドアに好適である。
【符号の説明】
【0058】
11…車両、12…車体、13…ドアシール機構、18…ドア開口部、21…開口上縁シール部材、22…車体取付シール部材、28…内パネル(ドアインナパネル)、25…ドア(右前ドア)、37…ドアシール部材、38…開口上縁、41…ドアのドア上縁、42…開口上縁シール部材の開口上縁密着面部、46…ドア縦一端部、47…ドアシール密着面部、48…コーナ部、51…ドアシール一端湾曲部、52…ドアシール縦部、53…縦密着面部、54…湾曲密着面部、58…防水リップ、61…ドアシール一端湾曲部の端部、62…止水端壁部、63…連接壁、64…隙間、66…上延止水部、67…取付け部、68…リップ連接部、71…固定部材、73…開口周縁、74…係合部、75…ラッチ機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体のドア開口部とドアとの間に設けられたドアシール機構において、
前記ドア開口部の開口上縁に沿って前記車体に取付けられて、前記ドアのドア上縁に密着する開口上縁密着面部を備えた開口上縁シール部材と、
前記開口上縁に連続して上下に延びる開口縦部に近接した前記ドアのドア縦一端部に上下に延ばして取付けられ、前記ドア開口部の周縁部に密着するドアシール密着面部を備えたドアシール部材と、を備え、
前記ドアシール部材は、前記ドア上縁と前記ドア縦一端部とで形成されたコーナ部に沿って湾曲し前記コーナ部に接合されたドアシール一端湾曲部と、該ドアシール一端湾曲部に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部と、を備え、
前記ドアシール密着面部は、前記ドアシール縦部に形成された縦密着面部と、該縦密着面部に連なり前記ドアシール一端湾曲部に形成された湾曲密着面部と、を備え、
前記湾曲密着面部は、前記開口上縁シール部材から離して配置され、
前記ドアシール一端湾曲部は、前記ドアのドア幅方向において前記湾曲密着面部よりも前記ドア縦一端部側で前記湾曲密着面部から離れて上下方向へ延び、且つ前記湾曲密着面部の上縁よりも上方まで延びる防水リップを備えていることを特徴とするドアシール機構。
【請求項2】
前記ドアシール一端湾曲部は、前記開口上縁シール部材に近接した湾曲の端部に上方へ向かって延びる止水端壁部を備えていることを特徴とする請求項1記載のドアシール機構。
【請求項3】
前記止水端壁部から前記防水リップまで延びる連接壁を備えていることを特徴とする請求項2記載のドアシール機構。
【請求項4】
前記連接壁は、前記車体から離間していることを特徴とする請求項3記載のドアシール機構。
【請求項5】
前記止水端壁部は、前記連接壁から上方へ延長した上延止水部を備えていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のドアシール機構。
【請求項6】
前記防水リップは、前記開口上縁シール部材に設けられた車体へ取付ける取付け部に接触し、該取付け部に連なり形成された前記開口上縁密着面部から離れていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のドアシール機構。
【請求項7】
前記ドアシール部材は、前記湾曲密着面部に前記防水リップを連接させ、且つ前記ドアの内パネルに沿って延びるリップ連接部を備え、
前記リップ連接部は、前記ドアに、前記湾曲密着面部と前記防水リップとの間で固定部材によって固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のドアシール機構。
【請求項8】
前記車両は、ドア開口部の開口周縁に取付けられた環状の車体取付シール部材を備え、
前記ドアは、前記ドア縦一端部に、前記車体に設けられた係合部に係合するラッチ機構を備え、
前記ラッチ機構は、前記車体取付シール部材が密着する前記ドアのドア密着面よりも前記ドアの縁側に配置され、
前記ドアシール部材は、前記ラッチ機構よりも前記ドアの縁側に取付けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のドアシール機構。
【請求項1】
車両の車体のドア開口部とドアとの間に設けられたドアシール機構において、
前記ドア開口部の開口上縁に沿って前記車体に取付けられて、前記ドアのドア上縁に密着する開口上縁密着面部を備えた開口上縁シール部材と、
前記開口上縁に連続して上下に延びる開口縦部に近接した前記ドアのドア縦一端部に上下に延ばして取付けられ、前記ドア開口部の周縁部に密着するドアシール密着面部を備えたドアシール部材と、を備え、
前記ドアシール部材は、前記ドア上縁と前記ドア縦一端部とで形成されたコーナ部に沿って湾曲し前記コーナ部に接合されたドアシール一端湾曲部と、該ドアシール一端湾曲部に連なり下方へ延ばしたドアシール縦部と、を備え、
前記ドアシール密着面部は、前記ドアシール縦部に形成された縦密着面部と、該縦密着面部に連なり前記ドアシール一端湾曲部に形成された湾曲密着面部と、を備え、
前記湾曲密着面部は、前記開口上縁シール部材から離して配置され、
前記ドアシール一端湾曲部は、前記ドアのドア幅方向において前記湾曲密着面部よりも前記ドア縦一端部側で前記湾曲密着面部から離れて上下方向へ延び、且つ前記湾曲密着面部の上縁よりも上方まで延びる防水リップを備えていることを特徴とするドアシール機構。
【請求項2】
前記ドアシール一端湾曲部は、前記開口上縁シール部材に近接した湾曲の端部に上方へ向かって延びる止水端壁部を備えていることを特徴とする請求項1記載のドアシール機構。
【請求項3】
前記止水端壁部から前記防水リップまで延びる連接壁を備えていることを特徴とする請求項2記載のドアシール機構。
【請求項4】
前記連接壁は、前記車体から離間していることを特徴とする請求項3記載のドアシール機構。
【請求項5】
前記止水端壁部は、前記連接壁から上方へ延長した上延止水部を備えていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のドアシール機構。
【請求項6】
前記防水リップは、前記開口上縁シール部材に設けられた車体へ取付ける取付け部に接触し、該取付け部に連なり形成された前記開口上縁密着面部から離れていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のドアシール機構。
【請求項7】
前記ドアシール部材は、前記湾曲密着面部に前記防水リップを連接させ、且つ前記ドアの内パネルに沿って延びるリップ連接部を備え、
前記リップ連接部は、前記ドアに、前記湾曲密着面部と前記防水リップとの間で固定部材によって固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のドアシール機構。
【請求項8】
前記車両は、ドア開口部の開口周縁に取付けられた環状の車体取付シール部材を備え、
前記ドアは、前記ドア縦一端部に、前記車体に設けられた係合部に係合するラッチ機構を備え、
前記ラッチ機構は、前記車体取付シール部材が密着する前記ドアのドア密着面よりも前記ドアの縁側に配置され、
前記ドアシール部材は、前記ラッチ機構よりも前記ドアの縁側に取付けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のドアシール機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−112066(P2013−112066A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258034(P2011−258034)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】
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