説明

ドアトリム

【課題】 衝突エネルギー吸収性、吸音性を備えながら、低コストに製造できるドアトリムを提供する。
【解決手段】
ドアトリムは、車内側のトリム本体10と車外側の裏パネル20とを互いに連結することにより構成されている。裏パネル20は、繊維を含有した多孔質層を有し、吸音性を備えている。裏パネル20には、凹凸形状をなしてエネルギー吸収部21がプレス成形により一体に形成されている。このエネルギー吸収部21は車両衝突時に乗員とドアとの間に生じる衝撃エネルギーを吸収して乗員を保護する。さらに裏パネル20には、トリム本体10のドアポケット12に連なるポケット用凹部25と、トリム本体10が開口11を塞ぐ加飾部26を、プレス成形により一体に有している。加飾部26の車内側の面には、装飾用の表皮27が貼られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアトリムに関し、特に衝突時のエネルギー吸収性と吸音性を有するドアトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたドアトリムは、トリム本体と、その裏面に取り付けられたエネルギー吸収部材を備えている。このエネルギー吸収部材は、トリム本体の裏面において、車両の側面衝突時に乗員の腰部等が当たる箇所に取り付けられており、車両衝突の際に乗員の腰部がドアに当たった時に、その衝撃のエネルギーを吸収して乗員を保護する役割を担う。
上記特許文献1の図7の従来例では、エネルギー吸収部材としてウレタンパッド等の発泡樹脂が用いられ、図1〜図6の実施例では樹脂製スプリングが用いられている。
【0003】
他方、ドアには外部の騒音を吸収する吸音性も求められる。そのため、一般的には上記ドアトリム本体の裏面にフェルト状の吸音材を貼り付けている。
【特許文献1】特開2004−50862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成のドアトリムでは、衝撃エネルギー吸収性、吸音性を得るためには、エネルギー吸収部材と吸音材とを別々にトリム本体に装着する必要があり、部品点数が多く、組立工数が多いため、製造コストが高くなる欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、ドアパネルにおいて、車内側のトリム本体と車外側の裏パネルとを互いに連結することにより構成され、この裏パネルが繊維を含有した多孔質層を有し、裏パネルの少なくとも一部が凹凸形状をなしてエネルギー吸収部として提供されることを特徴とする。
上記構成によれば、裏パネルの多孔質層により、車両外部の騒音を吸収することができる。また、裏パネルのエネルギー吸収部により衝突時の衝撃エネルギーを吸収して乗員の保護を図ることができる。この際、裏パネルの多孔質層では衝撃で砕片となって一気に崩壊せずに繊維がつなぎとめるので、エネルギー吸収量を増大させることができる。
このように裏パネルが吸音性とエネルギー吸収性を兼ね備えているので、部品点数、組み立て工数を少なくでき、製造コストを低減できる。
【0006】
好ましくは、上記裏パネルは多孔質のみからなり、その車内側の面にフィルムが添着されている。これによれば、裏パネルの多孔質層で吸音されて減衰した外部騒音が車内へ伝達されるのを、フィルムで遮断することができる。このように、裏パネルによる吸音、フィルムによる遮音により、外部騒音の車内への伝達をより一層確実に防止できる。
【0007】
好ましくは、上記トリム本体がドアポケットを有し、上記裏パネルがこのドアポケットに連なるポケット用凹部を一体に有している。これによれば、ポケット用凹部を有する部材を別途トリム本体に装着せずに済み、これにより部品点数、組立工数をより一層低減できる。
【0008】
好ましくは、上記トリム本体が開口を有し、上記裏パネルがこの開口を塞ぐ加飾部を一体に有し、この加飾部の車内側の面に、装飾用の表皮を添着させる。これによれば、加飾部を有する部材を別途トリム本体に装着せずに済み、これにより部品点数、組立工数をより一層低減できる。
【0009】
上記エネルギー吸収部および、必要に応じて設けられるポケット用凹部、加飾部等は、裏パネルのプレス成形により同時に成形することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、衝突エネルギー吸収性、吸音性を備えながら、部品点数、組立工数が少ない低コストのドアトリムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、ドアトリムは車内側のトリム本体10と、車外側の裏パネル20とを備えている。図2に示すように裏パネル20は、トリム本体10と車体のドアパネル30との間に配置されている。
【0012】
図1に示すように、トリム本体10はポリプロピレンの射出成形品からなり、その上部には前後方向に延びる開口11が形成され、その下側にはドアポケット12が形成されている。また、開口11の下縁部の前寄りには、パワーウインドウ操作部を支持するための支持部13が形成されている。
【0013】
図2に示すように、上記裏パネル20は、全域にわたって第1層21、第2層22を含む積層基材からなる。第1層21、第2層22ともガラス繊維(他にポリエステル、ビニロンの繊維でも可)を含有するポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂からなり、多孔質層(発泡層)をなしている。ただし、第1層21の発泡倍率は1.5〜8倍であり、第2層の発泡倍率は10〜30倍である。発泡倍率が低い方の第1層21が車内側に配置され、発泡倍率の高い方の第2層22が車外側に配置されている。
【0014】
上記裏パネル20は多孔質層(発泡層)ではあるが、柔軟ではなく所定の剛性および保形性を有している。
上記裏パネル20の車内側の面の全域にはポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン(商品名)等からなる非通気性のフィルム23が貼られている。
【0015】
図1に示すように、上記裏パネル20の下部の後側部は、凹凸形状をなし、これによりエネルギー吸収部24が提供されている。このエネルギー吸収部24は、本実施形態では車外方向へ突出する4つ(複数)の凸部24aを有しているが、1つの凸部により構成してもよいし、車内側に突出するようにしてもよい。
【0016】
図2に示すように、上記凸部24aの頂面(車外側の面)はドアパネル30に当接し、裏パネル20において凸部24aに隣接する部位の車内側の面はトリム本体10に当接している。
【0017】
上記裏パネル20の下部の前側部は、車内側から見て凹んで形成され、これにより、上記ドアポケット12に連なるポケット用凹部25が提供されている。
【0018】
上記裏パネル20の上部は上記トリム本体10の開口11を塞いでおり、加飾部26として提供されている。この加飾部26の車内に臨む面の全域に、上記フィルム23に重ねるようにして、ファブリック等からなる装飾用表皮27が貼り付けられている。なお、加飾部26の後側の下縁部は車内に突出しており、アームレスト26aとして提供される。
【0019】
上記裏パネル20の加飾部26とポケット用凹部25との間には開口28が形成されており、この開口28にはトリム本体10の支持部13が入り込むようになっている。
【0020】
上記裏パネル20の周縁には多数の取付鍔29が一体に形成されている。これら取付鍔29に対応してトリム本体10の裏面にはボス部(図示しない)が突設されており、このボス部を取付鍔29の穴に挿入して熱かしめ等を行うことにより、裏パネル20がトリム本体10に組み付けられている。
【0021】
上記裏パネル20は、上記発泡成形された第1層21、第2層22およびフィルム23の積層シートをコールドプレスすることにより得られ、図1に示すようなエネルギー吸収部24、ポケット用凹部25、加飾部26、開口28、取付鍔29が同時に一体に成形される。
その後で加飾用表皮27を上記加飾部26に貼り付ける。
【0022】
上記構成をなすドアトリムにおいて、車両が側面衝突すると乗員の腰部がドアに衝突する。この際、トリム本体10とドアパネル30の間に配置された上記エネルギー吸収部24が圧縮加重を受けて座屈変形し、衝撃エネルギーを吸収する。このエネルギー吸収部24は多孔質であり凹凸形状の座屈によりエネルギーを吸収し、ガラス繊維がエネルギー吸収部24の座屈により生じる砕片をつなぎとめる役割をなすので、効率良く大きな衝撃エネルギーを吸収できる。しかも衝撃荷重のピーク波形を作らないで済む。その結果、乗員を保護することができる。
【0023】
外部からの騒音は、多孔質をなす裏パネル20により吸収することができる。特に、発泡倍率の高い第2層22により吸音効果をより一層高めることができる。第1層21は所定の強度を維持する役割をも担う。
【0024】
また、裏パネル20の車内側の面にはフィルム23を貼られているため、裏パネル20で吸音されて減衰した外部騒音が車内へ伝達されるのを、フィルム23で遮断することができる。
【0025】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。例えば、トリム本体10は車内に露出させているが、表皮で覆ってもよい。裏パネル20のフィルム23は省略してもよい。裏パネルは全域にわたる樹脂製のソリッド層を含んでいてもよい。
裏パネル20のポケット用凹部25や加飾部26は省いてもよいし、他の機能を有する部位を裏パネル20に一体に形成してもよい。
裏パネル21の第1層21と第2層22は逆に配置してもよい。
トリム本体と裏パネルはホットメルト等の手段で連結してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態をなす車両用ドアトリムの分解斜視図である。
【図2】同ドアトリムの裏パネルにおけるエネルギー吸収部を拡大して示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 トリム本体
20 裏パネル
21 第1層
22 第2層
23 フィルム
24 エネルギー吸収部
25 ポケット用凹部
26 加飾部
27 装飾用表皮

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内側のトリム本体と車外側の裏パネルとを互いに連結することにより構成され、この裏パネルが繊維を含有した多孔質層を有し、裏パネルの少なくとも一部が凹凸形状をなしてエネルギー吸収部として提供されることを特徴とするドアトリム。
【請求項2】
上記裏パネルが多孔質層のみからなり、その車内側の面にフィルムが添着されていることを特徴とする請求項1に記載のドアトリム。
【請求項3】
上記トリム本体がドアポケットを有し、上記裏パネルがこのドアポケットに連なるポケット用凹部を一体に有していることを特徴とする請求項1または2に記載のドアトリム。
【請求項4】
上記トリム本体が開口を有し、上記裏パネルがこの開口を塞ぐ加飾部を一体に有し、この加飾部の車内側の面に、装飾用の表皮を添着させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドアトリム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−74123(P2008−74123A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252114(P2006−252114)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】