説明

ドアパネルの製造方法

【課題】十分な剛性を確保するための高剛性充填材を自動的に施工することができるドアパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】充填材注入穴35または36からノズルを斜めに奥深く挿入して、外側板21と内側板23の凸条状に突出された補強用凸部29cまたは29dとの間に、液状の高剛性充填材31または32を注入する。これらの高剛性充填材31または32を2液常温発泡硬化反応により硬化させることで外側板21と内側板23の補強用凸部29cまたは29dとの間に長尺の高剛性構造材を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側板と内側板を備えた2重構造のドアパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械のカバー体構造としては、外側板および内側板からなる2重構造のものがあり、その内側板は複数の凹部を有し、外側板にこの内側板の凹部を接着するとともに、外側板の周縁部をヘミング加工することにより、外側板と内側板とを固定している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のカバー体構造を改良した層状ドアパネルの補強用凸部の内部には、ドア自体に衝撃が加わった際に内部空間で音が反響するのを防ぐため、内部空間にゴム系発泡材を充填している。
【特許文献1】特開平9−228412号公報(第2−3頁、図2−8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴム系発泡材は発泡率が高く(10倍から20倍発砲)、内部空間を満たす量でも安価で済むが、強度に寄与することは殆どなく、例えばラジエータ室のドアパネルのように開口を大きくとる必要がある場合は、パネル剛性が下がってしまう。
【0005】
また、強度向上のためにはシート状の高剛性発泡充填材を用いることも有効ではあるが、このシート状の高剛性充填材はゴム系発泡材のように手作業で貼り付けるものであり、作業を自動化することは困難である。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、十分な剛性を確保するための高剛性充填材を自動的に施工することができるドアパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、外側板と、外側板の内側面に固定され、外側板から離反する方向に凸条状に膨出成形された補強用凸部を有する内側板と、内側板の補強用凸部に穿設された充填材注入穴を備えたドアパネルの製造方法であって、充填材注入穴からノズルを挿入して、外側板と内側板の補強用凸部との間に液状の高剛性充填材を注入し、この高剛性充填材を硬化させることで外側板と内側板の補強用凸部との間に長尺の高剛性構造材を形成するドアパネルの製造方法である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のドアパネルの製造方法において、内側板は、外枠状の補強用凸部およびこの外枠状の補強用凸部の内部に一体成形された横梁状の補強用凸部を備え、横梁状の補強用凸部の両端部内に横方向の充填材注入空間を形成する仕切板を設けるとともに、ラッチ取付部が設けられたパネル自由端側に位置する外枠状の補強用凸部内であってラッチ取付部より上側に縦方向の充填材注入空間を形成する仕切板を設け、これらの仕切板により囲まれた外側板と内側板の補強用凸部との間の限られた領域に高剛性充填材を注入する方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、充填材注入穴からノズルを挿入して、外側板と内側板の凸条状に突出された補強用凸部との間に、液状の高剛性充填材を注入し、この高剛性充填材を硬化させることで外側板と内側板の補強用凸部との間に長尺の高剛性構造材を形成するので、従来の高発泡率の充填材を貼り付ける場合が手作業に頼らざるをえないのに対して、ノズルの挿入および液状の高剛性充填材の注入は、自動化が容易であり、硬化によって長尺の高剛性構造材を形成する高剛性充填材によりパネル剛性を上げることができ、外側板などの材料厚を薄肉化することも可能となる。
【0010】
請求項2に記載された発明によれば、横梁状の補強用凸部の両端部内に設けられた仕切板により形成された横方向の充填材注入空間に、高剛性充填材を硬化させた横梁状高剛性構造材を形成できるとともに、ドアパネルの中で最も変形しやすいラッチ取付部の上方域に、仕切板により縦方向の充填材注入空間を形成し、この縦方向の充填材注入空間に注入された高剛性充填材を硬化させて縦柱状高剛性構造材を形成でき、これらの高剛性構造材によりパネル剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を、図1乃至図8に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図7は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。
【0013】
図8は、ラジエータ室に設けられたサイドドア17を示し、このサイドドア17は、後述するヒンジ54により機体側フレーム18に開閉自在に取付けられ、反対側の機体側フレームに取付けられたストライカ19sと係脱操作可能なラッチ装置19rにより、閉じ状態が保持される。
【0014】
図1乃至図5は、サイドドア17のドアパネル20を示し、このドアパネル20は、外側板21と、この外側板21に対し凹凸状にプレス成形されて外側板21の内側面に凹部を固定されるとともに凸部と外側板21との間に空間22を形成する内側板23と、これらの外側板21と内側板23との間の空間22に充填された発泡材24とを具備している。外側板21および内側板23には、4列の通気用開口部25が設けられている。
【0015】
外側板21は、内側板23の1.2〜5.0倍の板厚にする。言い換えれば、内側板23は、外側板21より薄い板厚の鉄板を用いる。例えば、外側板21を1.2mmの鉄板とした場合、内側板23は、相反する強度と加工性とを満足するために、0.6mm、0.8mmなどの鉄板を用いることが望ましい。
【0016】
図2に示されるように、外側板21には、ヒンジ取付側の板部26aと、最上段および最下段の横方向に成形された板部26bと、上から第2段、第3段および第4段の横方向に成形された板部26cと、ラッチ取付側の板部26dとの間に、通気用開口部25aが開口されている。
【0017】
内側板23は、外側板21に接合された開口側の接合部27および外周側の接合部28と、これらの接合部27,28に対し外側板21から離反する方向に膨出成形された凸部29とを具備している。
【0018】
この内側板23の凸部29は、ヒンジ取付側の縦方向に成形された大型断面の補強板収納凸部29aと、最上段および最下段の横方向に成形された大型断面の補強用凸部29bと、上から第2段、第3段および第4段の横方向に成形された小型断面の横梁状の補強用凸部29cと、ラッチ取付側の縦方向に成形された大型断面の補強用凸部29dとで構成されている。
【0019】
ヒンジ取付側の補強板収納凸部29aと、最上段および最下段の横方向に成形された補強用凸部29bと、ラッチ取付側の補強用凸部29dとにより、内側板23の周囲を外側板21から離反する方向に膨出させて形成した外枠状の補強用凸部29a,29b,29dが構成されている。3本の横梁状の補強用凸部29cは、この外枠状の補強用凸部29a,29b,29dの枠内で横方向に一体成形されている。
【0020】
発泡材24は、最上段および最下段の横方向に成形された大型断面の補強用凸部29bと、上から第4段の横方向に成形された小型断面の補強用凸部29cとにおいて、外側板21または内側板23の内面に貼付された未発泡状態のシート状の発泡素材を、外側板21と内側板23との間の空間22内で加熱して発泡させ、成形する。発泡素材は、20倍程度の体積膨張率を有する高発泡性のゴム系吸音材が望ましい。発泡素材の加熱は、焼付塗装用加熱炉を用いて、焼付塗装と同時に行なうことが望ましい。
【0021】
最上部および最下部の太い補強用凸部29bには、縦方向に凹状の強化用凹部30が形成されている。小型断面の横梁状の補強用凸部29cは、通気用開口部25の開口面積を確保するために、補強用凸部29bより小幅かつ低く形成され、補強用凸部29bの強化用凹部30が形成されていない。
【0022】
図3乃至図5に示されるように、内側板23の接合部27には、外側板21に開口された4列の通気用開口部25aと対応して、これらの外側板21の通気用開口部25aよりやや大きな通気用開口部25bがそれぞれ穴加工により設けられている。
【0023】
図1に示されるように、内側板23の上から2段目および3段目に位置する横梁状の補強用凸部29c内には、高剛性充填材31が充填設置され、また、外枠状の補強用凸部29a,29b,29dのうちヒンジで拘束されないパネル自由端側に設けられたラッチ側の補強用凸部29d内には、高剛性充填材32が充填設置されている。これらの高剛性充填材31,32は、2液常温硬化型高剛性発泡充填材(商品名OROTEX・RF−30)が適している。
【0024】
前記発泡材24が、20倍程度の体積膨張率を有する高発泡性のゴム系吸音材であり、剛性を殆ど有さないのに対して、この2液常温硬化型高剛性発泡充填材は、ポリオールとイソシアネートとを混合させたウレタン系高剛性樹脂であり、これらの2液が常温で反応して発泡硬化する。粘性を有するため高圧吐出機を用いてノズルより吐出させて充填対象空間に供給する。常温硬化した後は、発泡倍率の調整で変化可能な優れた圧縮強度(8〜35MPa)および曲げ強度を有する。
【0025】
外側板21の外周縁部は、内側板23の周縁部を包みこむように折返し平坦に押しつぶして形成したヘミング加工部33により、内側板23の周縁部を咬込み結合する。内側板23の接合部27,28は、接着剤34により外側板21に接着され、この接着剤34により外側板21と内側板23の接合部27,28とを接合するとともにシールする。接着剤34は、粘性と熱硬化性を有するペーストタイプ構造用接着剤が望ましい。
【0026】
内側板23の上から2段目および3段目に位置する横梁状の補強用凸部29cには、横方向に配列された複数の充填材注入穴35がそれぞれ穿設され、また、ラッチ取付部63が設けられたヒンジで拘束されないパネル自由端側に位置する外枠状の補強用凸部29d内であってラッチ取付部63より上方域には、縦方向に配列された複数の充填材注入穴36が穿設されている。
【0027】
さらに、内側板23の上から2段目および3段目に位置する横梁状の補強用凸部29cの両端部内には、横方向の充填材注入空間を形成する仕切板37が設けられ、また、ラッチ取付部63が設けられたパネル自由端側に位置する外枠状の補強用凸部29d内であってラッチ取付部63より上側に縦方向の充填材注入空間を形成する仕切板38が設けられている。
【0028】
そして、高剛性充填材31,32の充填方法は、各充填材注入穴35,36から図4および図5に示されるようにノズル39を挿入して、上記仕切板37,38により囲まれた外側板21と内側板23の補強用凸部29c,29dとの間の限られた領域に液状の高剛性充填材31,32を注入し、この高剛性充填材31,32を硬化させることで外側板21と内側板23の補強用凸部29c,29dとの間に長尺の高剛性構造材を形成する。
【0029】
このように、横梁状や縦柱状の補強用凸部29c,29dの内部に、従来のゴム系発泡材の替りに液状の高剛性充填材31,32を注入するため、高剛性充填材31,32を効果的に充填できると思われるドアパネル20の内側板23の補強用凸部29c,29d上に、直径10mm程度の充填材注入穴35,36をそれぞれ所定間隔で開けておいて、そして、本液状の高剛性充填材31,32は配合にもよるが、概して粘性があるので、綺麗に充填するためには、図4および図5に示されるように注入用のノズル39を充填材注入穴35,36から充填材注入空間の奥まで届くように斜めに挿入し、高剛性充填材31,32を吐出しながらノズル39を引き出すようにする。このような作業をするには、直径10mm程度の大きさの充填材注入穴35,36が必要となる。
【0030】
図5に示されるように、外側板21と、この外側板21に対し位置決めされて外側板21の内側面に固定された内側板23との間で挟まれるようにして、ヒンジ取付用の内部補強板41が固定されている。
【0031】
この内部補強板41は、図2に示されるように中央部に凹状補強部42が細長く設けられ、この凹状補強部42の一端側および他端側にヒンジ取付凸部43,44がそれぞれ平面状に成形され、これらのヒンジ取付凸部43,44に1対のボルト挿入孔50がそれぞれ穿設され、また、各ヒンジ取付凸部43,44の中央部であって2つのボルト挿入孔50の間に、位置決め用嵌合部45がそれぞれ凹状に形成されている。
【0032】
この内部補強板41に対し、内側板23のヒンジ取付側の補強板収納凸部29aの中央部には、内部補強板41の凹状補強部42と嵌合される凹状補強部47が細長く設けられ、この凹状補強部47の一端側および他端側にヒンジ取付面部48,49がそれぞれ平面状に成形され、これらのヒンジ取付面部48,49に複数のボルト挿入孔48h,49hがそれぞれ穿設され、また、各ヒンジ取付面部48,49の中央部であって2つのボルト挿入孔48h,49hの間に、一方の位置決め用嵌合部51および他方の位置決め用嵌合部52がそれぞれ下方へ突出する凸状に形成されている。
【0033】
そして、内側板23のヒンジ取付面部48,49に設けられた位置決め用嵌合部51,52と、内部補強板41のヒンジ取付凸部43,44に設けられた位置決め用嵌合部45とが、相互に嵌合して、内側板23に対し内部補強板41を位置決めする。この位置決めにより、内部補強板41の凹状補強部42と内側板23の凹状補強部47とが嵌合されるとともに、内部補強板41のボルト挿入孔50と内側板23のボルト挿入孔48h,49hとが正確に位置決めされる。
【0034】
図6に示されるように、内側板23のヒンジ取付面部48,49上には、複数のボルト挿入孔54hをそれぞれ有するヒンジ54が当接される。これらのヒンジ54は、内側板23のヒンジ取付面部48,49上に固定される一側のプレートP1に対して、軸部材Sにより、他側のプレートP2が回動自在に連結され、この他側のプレートP2に、このサイドドア17を機体側フレーム18に取付けるためのボルトを挿入する長穴Hが穿設されている。
【0035】
そして、ワッシャ55wを通してヒンジ54のボルト挿入孔54hに挿入されたボルト55bを、内部補強板41のヒンジ取付凸部43,44の裏面にそれぞれ溶接されたナット55nに螺入し締付けることにより、ヒンジ54を取付ける。
【0036】
図3乃至図5に示されるように、内側板23は、外側板21に密着された接合部27,28に沿って膨出成形された凸部29の中間部に段差状の補強変形部56が形成され、この段差状の補強変形部56により外側板21に対し凸部29の十分な高さを確保するとともに強度を確保している。
【0037】
図3乃至図5に示されるように、太い外枠状の補強用凸部29a,29b,29dは、断面二次モーメントなどの断面性能に優れ、補強変形部56および強化用凹部30などの補強構造もあることから、曲げ応力などに対して変形しにくい特性を有する。
【0038】
相対的に、横梁状の補強用凸部29cの断面積は、外枠状の補強用凸部29a,29b,29dの断面積より小さく、かつ小幅に形成されているため、通気用開口部25の開口面積を大きく形成することができる。
【0039】
図4に示されるように、横梁状の補強用凸部29cの一端側および他端側に位置する外枠状の補強用凸部29a,29dは、最上部に位置する外枠状の補強用凸部29bを内側に傾けるように内側に曲げ加工されている。
【0040】
すなわち、ドアパネル20の上部は、その下側のほぼ垂直部分よりも機体側に曲げ加工されているが、この曲げ加工をする際に内側面23のヒンジ取付側の補強板収納凸部29aおよびラッチ取付側の補強用凸部29dの各上部に皺が発生しやすい。
【0041】
そこで、図1、図2、図4および図5に示されるように、内側板23のヒンジ取付側の補強板収納凸部29aおよびラッチ取付側の補強用凸部29dが曲げ加工される内側の面に、曲げ加工の際に皺の発生を防止する皺発生防止凹部58,59が形成されている。
【0042】
図2および図5に示されるように、内部補強板41にも、内側板23の一方の皺発生防止凹部58と嵌合する凹部60が形成され、皺発生防止凹部58との干渉を防止している。
【0043】
図3および図4に示されるように、横方向に成形された外枠状の補強用凸部29bおよび横梁状の補強用凸部29cには、発泡材24を充填する。一方、図5に示されるように、縦方向に成形されたヒンジ取付側の補強板収納凸部29aおよびラッチ取付側の補強用凸部29dには、発泡材を充填しない。これにより、発泡材24による振動減衰効果を維持しつつ、発泡材24の量およびその貼付などの施工時間を節約できる。
【0044】
図1および図2に示されるように、内側板23の他方の皺発生防止凹部59の下側には、制振凹部62およびラッチ取付部63が設けられている。制振凹部62は、ドアパネル20の振動防止に利用され、図8に示されるように、ラッチ取付部63に取付けられたラッチ装置19rと係合するストライカ19sが設けられた機体側フレームには制振凸部65が突設され、この制振凸部65が、閉じ状態にあるドアパネル20の制振凹部62に嵌合して、ドアパネル20の上下方向の振動を抑えることができる。
【0045】
次に、このドアパネル20の製造方法を説明する。
【0046】
内側板23および内部補強板41と外側板21とを、外側板21の周縁部のヘミング加工と、図示しない固定治具により固定した状態で焼付塗装用加熱炉に入れて、これらの間に塗布されている熱硬化性の接着剤を硬化させ、外側板21と内側板23とを内部補強板41を介して接着する。
【0047】
このとき、外側板21または内側板23の内面に貼付された発泡素材を、焼付塗装用加熱炉の加熱により発泡させて、空間22内に発泡材24を充填し、さらに、焼付塗装用加熱炉の加熱により、外側板21および内側板23の外表面に予め吹付けられた塗料を焼付ける。
【0048】
例えば、接着剤34の熱硬化は、150℃で5分間の加熱をし、発泡材24の発泡は、150℃で20分間の加熱をし、焼付塗装は、180℃〜200℃で20分間の加熱をする。これらの加熱は、既存の焼付塗装用加熱炉を用いて行なうことができる。
【0049】
このようにして外側板21と内側板23とを内部補強板41を介して接着した後、図4に示されるように、充填材注入穴35からノズル39を斜めに奥深く挿入して、外側板21と内側板23の凸条状に突出された補強用凸部29cとの間に、液状の高剛性充填材31を注入し、これらの高剛性充填材31を2液常温発泡硬化反応により硬化させることで外側板21と内側板23の補強用凸部29cとの間に長尺の高剛性構造材を形成し、また、図5に示されるように、充填材注入穴36からノズル39を斜めに奥深く挿入して、外側板21と内側板23の凸条状に突出された補強用凸部29dとの間に、液状の高剛性充填材32を注入し、これらの高剛性充填材32を2液常温発泡硬化反応により硬化させることで外側板21と内側板23の補強用凸部29dとの間に長尺の高剛性構造材を形成する。
【0050】
最後に、図6に示されるようにヒンジ54のボルト挿入孔54hと、内側板23のヒンジ取付面部48,49のボルト挿入孔49hとに挿入したボルト55bを、内部補強板41のヒンジ取付凸部43,44の裏面に一体化されたナット55nに螺合して、これらのボルト55bおよびナット55nによりヒンジ54を締着固定する。
【0051】
次に、図1乃至図8に示された実施の形態の効果を説明する。
【0052】
外側板21とこの外側板21より薄い内側板23とで形成された中空の閉断面構造により軽量化を図ることができるとともに、内側板23とこれより厚い(内側板23の1.2〜5.0倍の板厚を有する)外側板21とで形成された十分な高さをもった中空の閉断面構造により、外側からの衝撃に対して十分な強度を確保できる強固なドアパネルを安価に提供できる。
【0053】
外側板21と内側板23との間に充填された発泡材24および高剛性充填材31,32により振動を吸収して、ドアパネル自体から発生する音を効果的に減衰させることができ、すなわち音の減衰効果が高く、低騒音化を図ることができる。
【0054】
外側板21から離反する方向に膨出形成された外枠状の補強用凸部29a,29b,29dと、その枠内に形成された複数の横梁状の補強用凸部29cとが設けられた内側板23を外側板21の内側面に接合し、最上部に位置する外枠状の補強用凸部29bを内側に傾けるように、横梁状の補強用凸部29cの一端側および他端側に位置する外枠状の補強用凸部29a,29dを内側に曲げ加工したので、外枠状の補強用凸部29a,29b,29dの枠内で複数の横梁状の補強用凸部29cの間を切欠くことで、パネル剛性を損なうことなく、必要に応じてドアパネル20に大きな通気用開口部25を設けることが可能であるとともに、外枠状の補強用凸部29a,29dを内側に曲げ加工することで、パネル剛性を向上させることができる。
【0055】
外側板21から離反する方向に膨出形成された内側板23の一側の補強板収納凸部29aを含む外枠状の補強用凸部29a,29b,29dと、その枠内に形成された複数の横梁状の補強用凸部29cとの間に通気用開口部25が設けられ、一側の補強板収納凸部29aと外側板21との間に固定された一側の内部補強板41を、ヒンジ54により、機体側フレーム18に取付けるようにし、横梁状の補強用凸部29cの断面積は、外枠状の補強用凸部29a,29b,29dの断面積より小さく形成されたので、小断面積の横梁状の補強用凸部29cによりドアパネル20に大きな通気用開口部25を設けることができるとともに、相対的に大断面積の外枠状の補強用凸部29a,29b,29dと、補強板収納凸部29a内の内部補強板41とにより、十分なパネル剛性を確保できる。
【0056】
外枠状の補強用凸部29a,29b,29dのうち補強板収納凸部29aが設けられた一側部とは反対側の下部に設けられて機体側フレーム18に係脱可能なラッチ装置19rと、このラッチ装置19rと対応する高さ位置のヒンジ取付面部49上と、複数の横梁状の補強用凸部29cのうち最上部に位置する横梁状の補強用凸部29cと交差する高さ位置のヒンジ取付面部48上とで内部補強板41に取付けられたヒンジ54とによって、ドアパネル20を3点支持するが、このような3点支持では、ラッチ装置19rと対角線上に位置する場所に最も大きな負荷がかかるので、補強板収納凸部29a上で第2段の横梁状の補強用凸部29cと交差することで強度のある場所にヒンジ取付面部48を設置して、ヒンジ54の上部を接続することにより、十分なヒンジ取付強度を確保できる。
【0057】
充填材注入穴35,36からノズル39を挿入して、外側板21と内側板23の凸条状に突出された補強用凸部29c,29dとの間に、液状の高剛性充填材31,32を注入し、これらの高剛性充填材31,32を硬化させることで外側板21と内側板23の補強用凸部29c,29dとの間に長尺の高剛性構造材を形成するので、シート状の高剛性発泡充填材を貼り付ける場合が手作業に頼らざるをえないのに対して、ノズル39の挿入および液状の高剛性充填材31,32の注入は、自動化が容易であり、硬化によって長尺の高剛性構造材を形成する高剛性充填材31,32によりパネル剛性を上げることができ、外側板などの材料厚を薄肉化することも可能となる。
【0058】
横梁状の補強用凸部29cの両端部内に設けられた仕切板37により形成された横方向の充填材注入空間に、高剛性充填材31を硬化させた横梁状高剛性構造材を形成できるとともに、ドアパネル20の中でヒンジやラッチの拘束を受けずに最も変形しやすいラッチ取付部63の上方域に、仕切板37,38により縦方向の充填材注入空間を形成し、この縦方向の充填材注入空間に注入された高剛性充填材32を硬化させて縦柱状高剛性構造材を形成でき、これらの高剛性構造材によりパネル剛性を向上させることができる。
【0059】
高剛性充填材31,32は高強度であり、また粘りもあるので衝撃に強く、材料費は高強度にしては比較的安価であり、ノズル39を用いた自動化に適する。これにより、外側板21などの薄肉化により金属材料を減らし、高剛性充填材31,32の比率を上げることで、パネル重量を軽くすることが可能である。
【0060】
本発明は、油圧ショベル、ローダ、ブルドーザなどの作業機械の例えばラジエータ室、バッテリ室またはポンプ室などのサイドドアなどに利用可能なドアパネルの製造方法に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る製造方法により製造されたドアパネルの一実施の形態を示す内面側の正面図である。
【図2】同上ドアパネルの分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】同上ドアパネルにヒンジを締着した状態を示す断面図である。
【図7】同上ドアパネルを備えた作業機械の平面図である。
【図8】同上ドアパネルを作業機械に取付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
20 ドアパネル
21 外側板
23 内側板
29a,29b,29d 外枠状の補強用凸部
29c 横梁状の補強用凸部
31,32 高剛性充填材
35,36 充填材注入穴
37,38 仕切板
39 ノズル
63 ラッチ取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側板と、
外側板の内側面に固定され、外側板から離反する方向に凸条状に膨出成形された補強用凸部を有する内側板と、
内側板の補強用凸部に穿設された充填材注入穴を備えたドアパネルの製造方法であって、
充填材注入穴からノズルを挿入して、外側板と内側板の補強用凸部との間に液状の高剛性充填材を注入し、
この高剛性充填材を硬化させることで外側板と内側板の補強用凸部との間に長尺の高剛性構造材を形成する
ことを特徴とするドアパネルの製造方法。
【請求項2】
内側板は、外枠状の補強用凸部およびこの外枠状の補強用凸部の内部に一体成形された横梁状の補強用凸部を備え、
横梁状の補強用凸部の両端部内に横方向の充填材注入空間を形成する仕切板を設けるとともに、ラッチ取付部が設けられたパネル自由端側に位置する外枠状の補強用凸部内であってラッチ取付部より上側に縦方向の充填材注入空間を形成する仕切板を設け、
これらの仕切板により囲まれた外側板と内側板の補強用凸部との間の限られた領域に高剛性充填材を注入する
ことを特徴とする請求項1記載のドアパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−59755(P2010−59755A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229398(P2008−229398)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】