説明

ドアパネル

【課題】軽量でかつ空調用コンデンサの設置に耐え得る十分な剛性を確保できるドアパネルを提供する。
【解決手段】クーリングユニットを設置するクーリングユニット設置空間S(ラジエタ室)にサイドドア17を設ける。このサイドドア17のドアパネル20は、外側板21の内側面に、外側板21に対し凹凸状にプレス成形された内側板23を一体化したものである。内側板23の複数の補強用凸部29b,29cに掛け渡して空調用コンデンサ81を配置し、下側の2つのコンデンサ取付具82と、上側の2つのコンデンサ取付具83とにより、この空調用コンデンサ81を内側板23の補強用凸部29b,29cに固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側板と内側板を備えたドアパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建設機械のサイドドアは、1.6mmの鉄板に補強材を溶接で固着することにより、機械的強度を補強するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、作業機械のサイドドアとしては、外側板と内側板とを接着およびヘミング加工により一体化した2重構造のカバー体構造がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、空調用コンデンサを、クーリングパッケージに臨むメンテナンスドア(サイドドア)に取付けたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3457804号公報(第1−2頁、図1)
【特許文献2】特開平9−228412号公報(第2−3頁、図1−7)
【特許文献3】特許第4183584号公報(第6頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2のサイドドアは、強度が十分でなく、他のコンポーネントを設置することは難しい。特に、酷暑仕様としてドアパネルに大きな通気用開口部を設ける場合や、このドアパネルが大型化すると、強度不足を生じやすく、十分な剛性を確保することが難しい。
【0007】
このため、特許文献3に示されるように空調用コンデンサをサイドドアに取付けることを実現することは容易でなく、十分な剛性を確保する場合は、ドアパネルが重く高価なものになる問題がある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、軽量でかつ空調用コンデンサの設置に耐え得る十分な剛性を確保できるドアパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、外側板と、この外側板の内側面に一体化され、外側板から離反する方向に膨出成型された角枠状の補強用凸部とその左右両側部間で外側板から離反する方向に膨出成型された複数の横梁状の補強用凸部とを備えた内側板と、この内側板の複数の補強用凸部にそれぞれ設けられたコンデンサ取付具と、これらのコンデンサ取付具により固定された空調用コンデンサとを具備したドアパネルである。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のドアパネルにおいて、外側板と内側板の左右一側部に柱状に膨出成型された補強用凸部との間に設けられた一側の内部補強板と、外側板と内側板の左右他側部に柱状に膨出成型された補強用凸部との間に設けられた他側の内部補強板とを具備したドアパネルである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のドアパネルにおける外側板が、通気用開口部を有し、内側板は、角枠状の補強用凸部および横梁状の補強用凸部の間に外側板の通気用開口部に対応する通気用開口部を有するドアパネルである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のドアパネルにおけるコンデンサ取付具が、最下部に位置する角枠状の補強用凸部から突出された複数のネジとこれらのネジに螺合するナットにより取付けられて空調用コンデンサの下端部を係止した下端係止具と、横梁状の補強用凸部から突出された複数のネジとこれらのネジに螺合するナットにより取付けられて空調用コンデンサの上端部を係止した上端係止具とを具備したドアパネルである。
【0013】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のドアパネルにおけるコンデンサ取付具が、複数の横梁状の補強用凸部にわたって上下方向に掛け渡して取付けられ空調用コンデンサの左右一側部および他側部を受けた一側受け具および他側受け具と、これらの一側受け具および他側受け具にそれぞれ複数取付けられ空調用コンデンサの左右一側部および他側部を係止した一側係止具および他側係止具とを具備したドアパネルである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された発明によれば、外側板の内側面に、外側板から離反する方向に膨出成型された角枠状の補強用凸部および複数の横梁状の補強用凸部を備えた内側板が一体化され、この内側板の複数の補強用凸部に設けられたコンデンサ取付具により、空調用コンデンサを固定したので、中空の角枠状および横梁状の補強用凸部によって、軽量でかつ空調用コンデンサの設置に耐え得る十分な剛性を確保できる。さらに、従来のクーリングユニットのようにラジエタと一体化していた空調用コンデンサをサイドドア側に設置することで、空調用コンデンサをラジエタと一体化するための大型ブラケットなどを省略でき、コストダウンを図れるとともに、クーリングユニット設置空間を有効に使えるので、コンポーネントの配置、レイアウトが容易になる。
【0015】
請求項2に記載された発明によれば、外側板と、内側板の左右一側部および左右他側部にそれぞれ柱状に膨出成型された補強用凸部との間に、一側および他側の内部補強板をそれぞれ設けたので、ドアパネル高が増加しても、これらの一側および他側の内部補強板によって、十分なドアパネル剛性を確保でき、空調用コンデンサを強固に支えることができる。
【0016】
請求項3に記載された発明によれば、内側板は、角枠状の補強用凸部および横梁状の補強用凸部の間に外側板の通気用開口部に対応する通気用開口部を有するので、ドアパネルの剛性を損なうことなく大きな通気用開口部を確保できるとともに、これらの通気用開口部により、空調用コンデンサの熱交換効率を向上できる。
【0017】
請求項4に記載された発明によれば、コンデンサ取付具は、最下部に位置する角枠状の補強用凸部にネジとナットにより取付けられた下端係止具と、横梁状の補強用凸部にネジとナットにより取付けられた上端係止具とにより、空調用コンデンサの下端部および上端部を係止したので、空調用コンデンサに取付穴などを加工することなく、空調用コンデンサを簡単に取付けることができる。
【0018】
請求項5に記載された発明によれば、空調用コンデンサの左右一側部および他側部を係止した一側係止具および他側係止具の取付母材である一側受け具および他側受け具が、複数の横梁状の補強用凸部にわたって上下方向に掛け渡して取付けられたので、これらの受け具が複数の補強用凸部間を連結する補強材としても機能し、ドアパネルの剛性を向上させることができるとともに、一側係止具および他側係止具により、空調用コンデンサに取付穴などを加工することなく、空調用コンデンサを簡単に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るドアパネルの一実施の形態を作業機械に取付けた状態を示す斜視図である。
【図2】同上ドアパネルの内面図である。
【図3】同上ドアパネルの分解斜視図である。
【図4】同上ドアパネルの図2IV-IV線断面図である。
【図5】同上ドアパネルの図2V-V線断面図である。
【図6】同上ドアパネルの図2VI-VI線断面図である。
【図7】同上ドアパネルのヒンジ取付部分の断面図である。
【図8】同上ドアパネルの下部に位置する空調用コンデンサ取付部の斜視図である。
【図9】同上ドアパネルの上部に位置する空調用コンデンサ取付部の斜視図である。
【図10】同上ドアパネルを備えた作業機械の平面図である。
【図11】本発明に係るドアパネルの他の実施の形態を示す内面図である。
【図12】同上ドアパネルのコンデンサ取付具における一側受け具および他側受け具の斜視図である。
【図13】同上ドアパネルの一側のコンデンサ取付具の斜視図である。
【図14】同上ドアパネルの一側のコンデンサ取付具の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、図1乃至図10に示された一実施の形態、図11乃至図14に示された他の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図10は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。
【0022】
図1は、ラジエータおよびオイルクーラなどのクーリングユニットを設置するクーリングユニット設置空間S(ラジエタ室)に設けられたサイドドア17を示し、このサイドドア17は、ヒンジ54により機体側フレーム18に開閉自在に取付けられ、反対側の機体側フレームに取付けられたストライカ19sと係脱操作可能なラッチ装置19rにより、閉じ状態が保持される。
【0023】
図2乃至図6は、サイドドア17のドアパネル20を示し、このドアパネル20は、外側板21と、この外側板21に対し凹凸状にプレス成形されて外側板21の内側面に凹部を固定されるとともに凸部と外側板21との間に空間22を形成する内側板23と、これらの外側板21と内側板23との間の空間22に充填された発泡材24とを具備している。外側板21および内側板23には、4列の通気用開口部25が設けられている。
【0024】
外側板21には、ヒンジ取付側の板部26aと、最上段および最下段の横方向に成形された板部26bと、上から第2段、第3段および第4段の横方向に成形された板部26cと、ラッチ取付側の板部26dとの間に、通気用開口部25aが開口されている。
【0025】
この外側板21は、内側板23の1.2〜5.0倍の板厚にする。言い換えれば、内側板23は、外側板21より薄い板厚の鉄板を用いる。例えば、外側板21を1.2mmの鉄板とした場合、内側板23は、相反する強度と加工性とを満足するために、0.6mm、0.8mmなどの鉄板を用いることが望ましい。
【0026】
発泡材24は、外側板21または内側板23の内面に貼付された未発泡状態のシート状の発泡素材を、外側板21と内側板23との間の空間22内で加熱して発泡させ、成形する。発泡素材は、20倍程度の体積膨張率を有する高発泡性のゴム系吸音材が望ましい。発泡素材の加熱は、焼付塗装用加熱炉を用いて、焼付塗装と同時に行なうことが望ましい。
【0027】
図2および図3に示されるように、内側板23は、外側板21に接合された開口側の接合部27および外周側の接合部28と、これらの接合部27,28に対し膨出成型された凸部29とを具備している。
【0028】
この内側板23の凸部29は、ヒンジ取付側の補強用凸部29aと、最上段および最下段の横方向に成形された太い横梁状の補強用凸部29bと、上から第2段、第3段および第4段の横方向に成形された小型断面の補強用凸部29cと、ラッチ取付側の補強用凸部29dとで構成されている。
【0029】
すなわち、内側板23のヒンジ取付側の補強用凸部29aと、最上段および最下段の横方向に成形された太い横梁状の補強用凸部29bと、ラッチ取付側の補強用凸部29dとによって、角枠状の補強用凸部29a,29b,29b,29dが外側板21から離反する方向に膨出成型され、この角枠状の補強用凸部29a,29b,29b,29dの左右両側部間に、複数の横梁状の補強用凸部29cが外側板21から離反する方向に膨出成型されている。
【0030】
太い横梁状の補強用凸部29bには、縦方向に凹状の強化用凹部30が形成されている。小型断面の補強用凸部29cは、通気用開口部25の開口面積を確保するために、補強用凸部29bより小幅かつ低く形成され、補強用凸部29bの強化用凹部30が形成されていない。
【0031】
図4乃至図6に示されるように、内側板23の接合部27には、外側板21に開口された4列の通気用開口部25aと対応して、これらの外側板21の通気用開口部25aよりやや大きな通気用開口部25bがそれぞれ穴加工により設けられている。すなわち、内側板23は、角枠状の補強用凸部29a,29b,29b,29dおよび横梁状の補強用凸部29cの間に外側板の通気用開口部25aに対応する通気用開口部25bを有する。
【0032】
外側板21の外周縁部は、内側板23の周縁部を包みこむように折返し平坦に押しつぶして形成したヘミング加工部33により、内側板23の周縁部を咬込み結合する。内側板23の接合部27,28は、接着剤34により外側板21に接着され、この接着剤34により外側板21と内側板23の接合部27,28とを接合するとともにシールする。接着剤34は、粘性と熱硬化性を有するペーストタイプ構造用接着剤が望ましい。
【0033】
図3は、サイドドア17の分解斜視図を示し、外側板21と、この外側板21に対し位置決めされて外側板21の内側面に固定された内側板23の左側部に柱状に膨出成型された補強用凸部29aとの間で挟まれるようにして、ヒンジ取付用の内部補強板41が固定されている。
【0034】
この内部補強板41は、中央部に凹状補強部42が細長く設けられ、この凹状補強部42の一端側および他端側にヒンジ取付凸部43,44がそれぞれ平面状に成形され、これらのヒンジ取付凸部43,44に複数のボルト挿入孔50がそれぞれ穿設され、また、各ヒンジ取付凸部43,44の中央部であって2つのボルト挿入孔50,50の間に、位置決め用嵌合部45がそれぞれ凹状に形成されている。
【0035】
この内部補強板41に対し、内側板23のヒンジ取付側の補強用凸部29aの中央部には、内部補強板41の凹状補強部42と嵌合される凹状補強部47が細長く設けられ、この凹状補強部47の一端側および他端側にヒンジ取付面部48,49がそれぞれ平面状に成形され、これらのヒンジ取付面部48,49に複数のボルト挿入孔48h,49hがそれぞれ穿設され、また、各ヒンジ取付面部48,49の中央部であって2つのボルト挿入孔48h,48hの間および2つのボルト挿入孔49h,49hの間に、一方の位置決め用嵌合部51および他方の位置決め用嵌合部52がそれぞれ下方へ突出する凸状に形成されている。
【0036】
そして、内側板23のヒンジ取付面部48,49に設けられた位置決め用嵌合部51,52と、内部補強板41のヒンジ取付凸部43,44にそれぞれ設けられた位置決め用嵌合部45とが、相互に嵌合して、内側板23に対し内部補強板41を位置決めする。この位置決めにより、内部補強板41の凹状補強部42と内側板23の凹状補強部47とが嵌合されるとともに、内部補強板41のボルト挿入孔50と内側板23のボルト挿入孔48h,49hとが正確に位置決めされる。
【0037】
図7に示されるように、内側板23のヒンジ取付面部48,49上には、複数のボルト挿入孔54hをそれぞれ有するヒンジ54が当接される。これらのヒンジ54は、内側板23のヒンジ取付面部48,49上に固定される一側のプレートP1に対して、軸部材54sにより、他側のプレートP2が回動自在に連結され、この他側のプレートP2に、このサイドドア17を機体フレーム側に取付けるためのボルトを挿入する長穴Hが穿設されている。
【0038】
そして、ワッシャ55wを通してヒンジ54のボルト挿入孔54hに挿入されたボルト55bを、内部補強板41のヒンジ取付凸部43,44の裏面に各ボルト挿入孔50と同心状にそれぞれ溶接されたナット55nに螺入し締付けることにより、ヒンジ54を取付ける。
【0039】
図4乃至図6に示されるように、内側板23は、外側板21に密着された接合部27,28に沿って膨出成型された凸部29の中間部に段差状の補強変形部56が形成され、この段差状の補強変形部56により外側板21に対し凸部29の十分な高さを確保するとともに強度を確保している。
【0040】
特に、太い横梁状の補強用凸部29bは、補強変形部56および強化用凹部30により、断面二次モーメントなどの断面性能に優れ、曲げ応力などに対して変形しにくい特性を有する。
【0041】
一方、小型断面の補強用凸部29cは、補強用凸部29bより小幅に形成されているため、通気用開口部25の開口面積を大きく形成することができ、かつ、ヒンジ取付側の補強用凸部29aおよびラッチ取付側の補強用凸部29dと接続される箇所の突出部57より低く形成されているため、容易に絞り加工できる。
【0042】
図5に示されるように、ドアパネル20の上部は、その下側のほぼ垂直部分よりも機体側に折曲されているが、この折曲加工をする際に内側面23のヒンジ取付側の補強用凸部29aおよびラッチ取付側の補強用凸部29dの各上部に皺が発生しやすい。そこで、図2、図3、図5および図6などに示されるように、内側板23のヒンジ取付側の補強用凸部29aおよびラッチ取付側の補強用凸部29dを折曲加工する場所に、折曲加工の際に皺の発生を防止する皺発生防止凹部58,59が形成されている。
【0043】
図3および図6に示されるように、内部補強板41にも、内側板23の一方の皺発生防止凹部58と嵌合する凹部60が形成され、皺発生防止凹部58との干渉を防止している。
【0044】
図2および図3に示されるように、内側板23の他方の皺発生防止凹部59の下側に位置する補強用凸部29dには、制振凹部62およびラッチ取付穴63が設けられ、制振凹部62は、ドアパネル20の振動防止に利用され、図1に示されるように、ラッチ装置19rと係合するストライカ19sが設けられた機体側フレームには制振凸部65が突設され、この制振凸部65が、閉じ状態にあるドアパネル20の制振凹部62に嵌合して、ドアパネル20の上下方向の振動を抑えることができる。
【0045】
図3に示されるように、一側の内部補強板41と同様の部品を加工して、他側の内部補強板71を用意し、外側板21と内側板23の右側部に柱状に膨出成型された補強用凸部29dとの間にこの内部補強板71を設ける。この内部補強板71は、内部補強板41と同様の凹状補強部42、ヒンジ取付凸部43,44、位置決め用嵌合部45および凹部60に加えて、内部補強板71の凹状補強部42に穴72を開け、ヒンジ取付凸部44に切欠部73を加工したもので、穴72は、内側板23の制振凹部62と嵌合し、切欠部73は、内側板23のラッチ取付穴63と嵌合する。
【0046】
図2に示されるように、角枠状の上下の補強用凸部29bおよび横梁状の補強用凸部29cには、微細メッシュの除塵スクリーン(図示せず)を取付けるためのネジ76が突出されているとともに、スクリーン位置決め凸部77が突出されている。
【0047】
図1および図2に示されるように、内側板の複数の補強用凸部29b,29cに掛け渡して空調用コンデンサ81が配置され、下側の2つのコンデンサ取付具82と、上側の2つのコンデンサ取付具83とにより、この空調用コンデンサ81が、内側板23の補強用凸部29b,29cに固定されている。空調用コンデンサ81に対する冷媒循環用の配管は、少なくともドアパネル20の開閉動作に対応する箇所にフレキシブルホースなどを用いる。
【0048】
図8に示されるように、下側のコンデンサ取付具82は、最下部に位置する角枠状の補強用凸部29bから突出された2つのネジ76と、これらのネジ76に螺合するナット84により、ワッシャ85を介して取付板86がそれぞれ固定され、これらの取付板86にボルト87およびナット(図示せず)により2つの下端係止具88がそれぞれ取付けられ、これらの下端係止具88により空調用コンデンサ81の下端部が係止されている。
【0049】
取付板86は、図4に示されるように、角枠状の補強用凸部29bの高さと横梁状の補強用凸部29cの高さとの間の高低差を解消して、空調用コンデンサ81をパネル面と平行に設置できるように、補強用凸部29bに対する取付面部86aと、空調用コンデンサ81を取付けるコンデンサ取付面部86bとの間に、段差部86cが形成されている。
【0050】
下端係止具88は、図8に示されるように、取付板86にボルト87およびナットにより取付けられた取付面部88aと、この取付面部88aの上部に直角に一体成型された受け面部88bと、この受け面部88bの先端部より斜め上方へ一体に突出成型されたコンデンサ下縁押え部88cと、取付面部88aから受け面部88bにわたってそれらの左右両側部に沿って一体成型されたリブ88dとを備えている。
【0051】
図9に示されるように、上側のコンデンサ取付具83は、上側の横梁状の補強用凸部29cから突出された2つのネジ76と、これらのネジ76に螺合するナット91により、ワッシャ92を介して2つの上端係止具93がそれぞれ取付けられ、これらの上端係止具93により空調用コンデンサ81の上端部が係止されている。
【0052】
上端係止具93は、図9に示されるように、横梁状の補強用凸部29cにネジ76およびナット91によりワッシャ92を介して押圧固定された取付面部93aと、この取付面部93aの下部に直角に一体成型された押圧面部93bと、この押圧面部93bの先端部より斜め下方へ一体に突出成型されたコンデンサ上縁押え部93cと、取付面部93aから押圧面部93bにわたってそれらの左右両側部に沿って一体成型されたリブ93dとを備えている。
【0053】
次に、このドアパネル20の製造方法を説明する。
【0054】
内側板23の補強用凸部29aの中に内部補強板41を設置し、内側板23のヒンジ取付面部48,49に設けられた位置決め用嵌合部51,52と、内部補強板41のヒンジ取付凸部43,44に設けられた位置決め用嵌合部45とを相互に嵌合させて、内側板23に対し内部補強板41を位置決めし、ボルトおよびナットなどにより仮止め固定する。
【0055】
同様に、内側板23の補強用凸部29dの中に内部補強板71を設置し、その穴72を内側板23の制振凹部62に嵌合させるとともに、切欠部73を内側板23のラッチ取付穴63の凸状周縁部と嵌合することで、内側板23に対し内部補強板71を位置決めし、ボルトおよびナットなどにより仮止め固定する。
【0056】
内側板23および内部補強板41,71と外側板21とを、外側板21の周縁部のヘミング加工と、図示しない固定治具により固定した状態で焼付塗装用加熱炉に入れて、これらの間に塗布されている熱硬化性の接着剤を硬化させ、外側板21と内側板23と内部補強板41,71とを接着する。
【0057】
このとき、外側板21または内側板23の内面に貼付された発泡素材を、焼付塗装用加熱炉の加熱により発泡させて、空間22内に発泡材24を充填し、さらに、焼付塗装用加熱炉の加熱により、外側板21および内側板23の外表面に予め吹付けられた塗料を焼付ける。
【0058】
例えば、接着剤34の熱硬化は、150℃で5分間の加熱をし、発泡材24の発泡は、150℃で20分間の加熱をし、焼付塗装は、180℃〜200℃で20分間の加熱をする。これらの加熱は、既存の焼付塗装用加熱炉を用いて行なうことができる。
【0059】
加熱硬化後は、図7に示されるように、ワッシャ55wを通してヒンジ54のボルト挿入孔54hと、内側板23のヒンジ取付面部48,49のボルト挿入孔48h,49hとに挿入したボルト55bを、内部補強板41のヒンジ取付凸部43,44の裏面に一体化されたナット55nに螺合して、これらのボルト55bおよびナット55nによりヒンジ54を締着固定する。
【0060】
さらに、図4に示されるように、最下部に位置する角枠状の補強用凸部29bに取付板86を介して下端係止具88をそれぞれ取付け、また、横梁状の補強用凸部29cに上端係止具93をそれぞれ取付け、これらの下端係止具88および上端係止具93により空調用コンデンサ81の下端部および上端部をパネル側へ押圧係止して、空調用コンデンサ81をパネル面と平行に設置する。
【0061】
次に、この図1乃至図10に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0062】
クーリングユニット設置空間Sには、エンジンなどにより駆動される冷却ファンにより冷却されるクーリングユニット(図示せず)が設置され、このクーリングユニットと対向してドアパネル20に空調用コンデンサ81が設置されているので、ドアパネル20を閉じたときは、空調用コンデンサ81もクーリングユニットの一部として冷却ファンによる冷却作用を受け、また、ドアパネル20を開けたときは、空調用コンデンサ81がクーリングユニットから分離されるので、これらの清掃などのメンテナンスが容易になる。
【0063】
外側板21と内側板23との間に充填された発泡材24は、振動を吸収するので、ドアパネル20自体から発生する音なども効果的に減衰させ、低騒音化を図れるとともに、クーリングユニットの冷却ファンや空調用コンデンサ81から発生する騒音を、発泡材24により吸収することができる。
【0064】
外側板21とこの外側板21より薄い内側板23とで形成された中空の閉断面構造により軽量化を図れるとともに、内側板23とこれより厚い(内側板23の1.2〜5.0倍の板厚を有する)外側板21とで形成された十分な高さをもった中空の閉断面構造により、外側からの衝撃に対して十分な強度を確保できるドアパネル20は、これに他のコンポーネントを取付ける場合に適し、特に、外側板21の内側面に、この外側板21から離反する方向に膨出成型された角枠状の補強用凸部29a,29b,29b,29dおよび複数の横梁状の補強用凸部29cを備えた内側板23が一体化され、この内側板23の複数の補強用凸部29b,29cに掛け渡して配置された空調用コンデンサ81を、コンデンサ取付具82,83によって補強用凸部29b,29cに固定したので、中空の角枠状および横梁状の補強用凸部29a,29b,29b,29c,29dによって、軽量でかつ空調用コンデンサ81の設置に耐え得る十分な剛性を確保できる。
【0065】
さらに、従来のクーリングユニットのようにラジエタと一体化していた空調用コンデンサ81をサイドドア17側に設置することで、空調用コンデンサ81をラジエタと一体化するための大型ブラケットなどを省略でき、コストダウンを図れるとともに、クーリングユニット設置空間Sを有効に使えるので、コンポーネントの配置、レイアウトが容易になる。
【0066】
外側板21と内側板23の補強用凸部29aとの間に固定された一側の内部補強板41と、外側板21と内側板23の補強用凸部29dとの間に固定された他側の内部補強板71とにより両側部を補強したので、上下方向のドアパネル高が増加しても、両側の内部補強板41,71により十分なドアパネル剛性を確保でき、空調用コンデンサ81を強固に支えることができる。
【0067】
複数の横梁状の補強用凸部29cを介して一側に柱状に膨出成型された補強用凸部29aと他側に柱状に膨出成型された補強用凸部29dとの間に通気用開口部25bを有する内側板23により、ドアパネル20に大きな通気用開口部25を設けることができる。すなわち、内側板23は、角枠状の補強用凸部29a,29b,29b,29dおよび横梁状の補強用凸部29cの間に外側板の通気用開口部25aに対応する通気用開口部25bを有するので、ドアパネル20の剛性を損なうことなく大きな通気用開口部25を確保できるとともに、これらの通気用開口部25により、空調用コンデンサ81の熱交換効率を向上できる。
【0068】
コンデンサ取付具82は、最下部に位置する角枠状の補強用凸部29bにネジ76とナット84により取付けられた下端係止具88と、横梁状の補強用凸部29cにネジ76とナット91により取付けられた上端係止具93とにより、空調用コンデンサ81の下端部および上端部を係止したので、空調用コンデンサ81に取付穴などを加工することなく、空調用コンデンサ81を簡単に取付けることができる。
【0069】
次に、図11乃至図14は、他の実施の形態を示す。なお、図1乃至図10に示された実施の形態と同様の構造には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0070】
図11に示されるように、このドアパネル20は、外側板21と、この外側板21の内側面に一体化され、外側板21から離反する方向に膨出成型された角枠状の補強用凸部29a,29b,29b,29dとその左右両側部間で外側板21から離反する方向に膨出成型された複数の横梁状の補強用凸部29cとを備えた内側板23と、この内側板23の複数の補強用凸部29c,29cに掛け渡して配置された空調用コンデンサ81と、この空調用コンデンサ81を内側板23の補強用凸部29c,29cに固定したコンデンサ取付具101とを具備したものである。
【0071】
このコンデンサ取付具101は、複数の横梁状の補強用凸部29cにわたって上下方向に掛け渡して取付けられ空調用コンデンサ81の左右一側部および他側部を受けた一側受け具102および他側受け具103と、これらの一側受け具102および他側受け具103にそれぞれ複数取付けられ空調用コンデンサ81の左右一側部および他側部を係止した一側係止具104および他側係止具105とを具備している。
【0072】
図12に示されるように、一側受け具102および他側受け具103は、横梁状の補強用凸部29c,29cに対する取付板部111,112と、一側係止具104および他側係止具105を取付けるための取付板部113,114とが、段差部115,116を介して一体に形成されている。取付板部111,112から段差部115,116にわたって、それらの一側部(パネル下側部)には切欠部117,118が設けられ、これらの切欠部117,118により、パネル上側に取付けられる取付穴119,120が設けられた取付板部111,112と、パネル下側に取付けられる取付穴121,122が設けられた取付板部111a,112aとの間には、段差が設けられている。この段差は、ドアパネル20の上下方向の湾曲に対して、空調用コンデンサ81を垂直に設置するためのものである。取付板部113,114には、一側係止具104および他側係止具105を取付けるための取付穴123,124がそれぞれ設けられている。
【0073】
取付板部111,112の取付穴119,120および取付板部111a,112aの取付穴121,122は、横梁状の補強用凸部29c,29cから突出された対応箇所の各ネジ76に嵌着され、これらのネジ76と螺合するナットにより、取付板部111,112および取付板部111a,112aが固定される。
【0074】
図13および図14に示されるように、一側係止具104および他側係止具105は、一側受け具102および他側受け具103の取付板部113,114にボルト125およびナットにより取付けられた取付面部126と、この取付面部126の一側部に直角に一体成型された受け面部127と、この受け面部127の先端部より空調用コンデンサ81側へ斜めに突出成型されたコンデンサ側縁押え部128と、取付面部126から受け面部127にわたってそれらの左右両側部に沿って一体成型されたリブ129とを備えている。
【0075】
そして、図11に示されるように、一側受け具102および他側受け具103の取付板部111,112に空調用コンデンサ81の左右一側部および他側部を載せるとともに、取付板部113,114にボルト125およびナットにより取付けられた一側係止具104および他側係止具105により、空調用コンデンサ81の左右一側部および他側部を挟持する。このとき、一側係止具104および他側係止具105のコンデンサ側縁押え部128により、空調用コンデンサ81の左右側縁を一側受け具102および他側受け具103の取付板部111,112に押付けるようにして固定する。
【0076】
このように、空調用コンデンサ81の左右一側部および他側部を係止した一側係止具104および他側係止具105の取付母材である一側受け具102および他側受け具103が、複数の横梁状の補強用凸部29c,29cにわたって上下方向に掛け渡して取付けられたので、これらの受け具102,103が複数の補強用凸部29c,29c間を連結する補強材としても機能し、ドアパネル20の剛性を向上させることができるとともに、一側係止具104および他側係止具105により、空調用コンデンサ81に取付穴などを加工することなく、この空調用コンデンサ81を簡単に取付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、油圧ショベル、ローダ、ブルドーザなどの空調装置を備えた作業機械に利用可能なドアパネルである。
【符号の説明】
【0078】
20 ドアパネル
21 外側板
23 内側板
25a 通気用開口部
25b 通気用開口部
29a 補強用凸部
29b 補強用凸部
29c 補強用凸部
29d 補強用凸部
41 内部補強板
71 内部補強板
76 ネジ
81 空調用コンデンサ
82,83 コンデンサ取付具
84 ナット
88 下端係止具
91 ナット
93 上端係止具
101 コンデンサ取付具
102 一側受け具
103 他側受け具
104 一側係止具
105 他側係止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側板と、
この外側板の内側面に一体化され、外側板から離反する方向に膨出成型された角枠状の補強用凸部とその左右両側部間で外側板から離反する方向に膨出成型された複数の横梁状の補強用凸部とを備えた内側板と、
この内側板の複数の補強用凸部にそれぞれ設けられたコンデンサ取付具と、
これらのコンデンサ取付具により固定された空調用コンデンサと
を具備したことを特徴とするドアパネル。
【請求項2】
外側板と内側板の左右一側部に柱状に膨出成型された補強用凸部との間に設けられた一側の内部補強板と、
外側板と内側板の左右他側部に柱状に膨出成型された補強用凸部との間に設けられた他側の内部補強板と
を具備したことを特徴とする請求項1記載のドアパネル。
【請求項3】
外側板は、通気用開口部を有し、
内側板は、角枠状の補強用凸部および横梁状の補強用凸部の間に外側板の通気用開口部に対応する通気用開口部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載のドアパネル。
【請求項4】
コンデンサ取付具は、
最下部に位置する角枠状の補強用凸部から突出された複数のネジとこれらのネジに螺合するナットにより取付けられて空調用コンデンサの下端部を係止した下端係止具と、
横梁状の補強用凸部から突出された複数のネジとこれらのネジに螺合するナットにより取付けられて空調用コンデンサの上端部を係止した上端係止具と
を具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のドアパネル。
【請求項5】
コンデンサ取付具は、
複数の横梁状の補強用凸部にわたって上下方向に掛け渡して取付けられ空調用コンデンサの左右一側部および他側部を受けた一側受け具および他側受け具と、
これらの一側受け具および他側受け具にそれぞれ複数取付けられ空調用コンデンサの左右一側部および他側部を係止した一側係止具および他側係止具と
を具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のドアパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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