説明

ドアミラー制御装置

【課題】時定数回路部が備えるコンデンサの放電を早期に終了させることにより、ドアミラーが再作動しないといった事態を抑制する。
【解決手段】ドアミラー制御装置は、抵抗R5とコンデンサC3と抵抗R6との直列回路で構成される時定数回路部2の放電を行う第1および第2の放電回路部を備えている。ここで、第1の放電回路部8は、抵抗R5とコンデンサC3との直列回路に対して並列的に設置される、ダイオードD1と抵抗R7(<抵抗R5,R6)との直列回路を含み、第2の放電回路部9は、抵抗R6とコンデンサC3との直列回路に対して並列的に設置される、ダイオードD2と抵抵抗R8(<抵抗R5,R6)との直列回路を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアミラー制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、起立位置と格納位置との間で車両用ドアミラーを駆動制御するドアミラー制御装置が知られている。例えば、特許文献1には、ドアミラーが起立位置から格納位置に向かう方向に駆動モータを駆動させる第1の制御回路部と、ドアミラーが格納位置から起立位置に向かう方向に駆動モータを回動させる第2の制御回路部とを含むドアミラー制御装置が開示されている。このドアミラー制御装置では、駆動モータに印加する直流電圧の極性を切り替えることにより、ドアミラーを起立位置と格納位置との間で駆動制御する。また、このドアミラー制御装置は、第1または第2の制御回路部においてロック電流が検出されない場合、設定時間(時定数)の経過後に駆動モータの駆動を停止するための時定数回路部を備えている。ここで、時定数回路部は、一対の抵抗と、これらの抵抗の間に配置されるコンデンサとの直列回路で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−127824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されている手法では、時定数回路部が備えるコンデンサの放電に時間がかかってしまう虞がある。このような事態は、設定時間(時定数)を大きく設定する程、顕著となる傾向にある。そのため、外的要因によりドアミラーの作動が所定位置(格納位置または起立位置)へと至る手前で停止され、これを再始動させるようなケースでは、放電しきれずにコンデンサに残留する電荷の影響で、ドアミラーが作動しないといった事態も考えられる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、時定数回路部が備えるコンデンサの放電を早期に終了させることにより、ドアミラーが再作動しないといった事態を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明は、駆動モータとそれぞれ接続する第1および第2の出力端子を有し、直流電源から駆動モータに印加される直流電圧の極性を切り替える切替部と、第1の出力端子と駆動モータとの間に配置され、オン状態においてドアミラーの起立方向に駆動モータを駆動させる第1の駆動回路部と、第2の出力端子と駆動モータとの間に配置され、オン状態においてドアミラーの格納方向に駆動モータを駆動させる第2の駆動回路部と、切替部と駆動モータとの間に配置され、第1の駆動回路部または第2の駆動回路部のオン状態が所定の設定時間を経過した場合に、当該駆動回路部をオフ状態に切り替える時定数回路部と、時定数回路部の放電を行う第1および第2の放電回路部とを有するドアミラー制御装置を提供する。ここで、時定数回路部は、第1の出力端子側に位置する第1の抵抗と、第2の出力端子側に位置する第2の抵抗と、第1および第2の抵抗の間に配置されるコンデンサとの直列回路で構成されている。また、第1の放電回路部は、第1の抵抗とコンデンサとの直列回路に対して並列的に設置される、第1のダイオードと第1または第2の抵抗よりも抵抗値が小さい第3の抵抗との直列回路を含み、第2の放電回路部は、第2の抵抗とコンデンサとの直列回路に対して並列的に設置される、第2のダイオードと第1または第2の抵抗よりも抵抗値が小さい第4の抵抗との直列回路を含む。
【0007】
本発明において、切替部は、一方の極性を選択する第1の位置と、当該一方の極性に対して反転した他方の極性を選択する第2の位置と、第1の位置と第2の位置との中間に位置するニュートラル位置とに切り替え可能に構成されることが好ましい。
【0008】
また、本発明において、第1の駆動回路部は、切替部により一方の極性が選択されることによりオン状態となり、当該オン状態において駆動モータにモータ駆動電流を供給することにより、ドアミラーの起立方向に駆動モータを駆動させ、第2の駆動回路部は、切替部により他方の極性が選択されることによりオン状態となり、当該オン状態において駆動モータにモータ駆動電流を供給することにより、ドアミラーの格納方向に駆動モータを駆動させることが好ましい。
【0009】
また、本発明において、第1および第2の駆動回路部は、オン状態において電流の流れを許容し、オフ状態において電流の流れを遮断するスイッチング素子をそれぞれ含み、時定数回路は、切替部によりいずれかの極性が選択されると、コンデンサの放電を通じて、選択された極性に対応する駆動回路部のスイッチング素子を設定期間だけオンすることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、第1の駆動回路部は、ソース端子が切替部の第1の出力端子と接続され、ドレイン端子が駆動モータの一方の端子に接続され、ゲート端子が第5の抵抗を介して時定数回路部のコンデンサと第1の抵抗との接続点に接続されている第1のFETと、アノード端子が切替部の第1の出力端子に接続され、カソード端子が第2のFETのゲート端子に接続されている第1のツェナーダイオードとを有し、第2の駆動回路部は、ソース端子が切替部の第2の出力端子と接続され、ドレイン端子が駆動モータの他方の端子に接続され、ゲート端子が第6の抵抗を介して時定数回路部のコンデンサと第2の抵抗との接続点に接続されている第2のFETと、アノード端子が切替部の第2の出力端子に接続され、カソード端子が第2のFETのゲート端子に接続されている第2のツェナーダイオードとを有することが好ましい。
【0011】
また、本発明において、第1の放電回路部は、第1のツェナーダイオードと、第5の抵抗とをさらに含み、第2の放電回路部は、第2のツェナーダイオードと、第6の抵抗とをさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、時定数回路のコンデンサの電荷放出にともなう電流が、放電回路部へと優先的に流れることになるので、コンデンサの放電を早期に終了することができる。これにより、ドアミラーが再作動しないといった事態を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ドアミラー制御装置の構成を模式的に示すブロック図
【図2】ドアミラー制御装置の具体的な構成を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態にかかるドアミラー制御装置の構成を模式的に示すブロック図であり、図2は、当該ドアミラー制御装置の具体的な構成を示す回路図である。このドアミラー制御装置は、起立位置と格納位置との間で車両用ドアミラー(図示せず)を駆動制御する装置である。ここで、格納位置は、ドアミラーが折り畳まれて収納された状態の位置であり、起立位置は、ドアミラーとしての通常的な使用状態の位置をいう。
【0015】
ドアミラー制御装置は、これを機能的に捉えた場合、切替部1と、時定数回路部2と、第1および第2のモータ駆動回路部3,4と、第1および第2の電流検出回路部5,6と、モータユニット7と、第1および第2の放電回路部8,9とを有している。このドアミラー制御装置は、切替部1、時定数回路部2、第1および第2のモータ駆動回路部3,4、第1および第2の電流検出回路部5,6および第1および第2の放電回路部8,9を通じて、車両に搭載される直流電源Eからモータユニット7を構成する駆動モータMに直流電圧を印加することにより、駆動モータMの回転制御を行う。具体的には、所定極性(以下「正の極性」という)の直流電圧が駆動モータMに印加されると、駆動モータMが正転し、これにより、ドアミラーは格納位置へと向かう方向(格納方向)に作動する。一方、正の極性に対して反転させた極性(以下「負の極性」という)の直流電圧が駆動モータMに印加されると、駆動モータMが逆転(正転方向とは反対方向の向き)し、ドアミラーは起立位置へと向かう方向(起立方向)に作動する。これにより、起立位置と格納位置との間でドアミラーが駆動制御される。
【0016】
切替部1は、車両に搭載される直流電源Eより出力される直流電圧、すなわち、モータユニット7に印加される直流電圧の極性を切り替える機能を担っている。この切替部1による極性の反転は、操作者の直接的な操作(例えば、手動操作)、あるいは、操作者の間接的な操作(例えば、リモコン操作)を通じて切替部1を格納切替位置(第2の位置)または起立切替位置(第1の位置)へと切り替えることにより、実行可能となっている。
【0017】
具体的には、切替部1は、互いに連動して動作する一対のスイッチSW1,SW2で構成されている。切替部1を格納切替位置へと切り替えた場合、すなわち、正の極性の直流電圧を駆動モータMに印加する場合、スイッチSW1は、直流電源Eの正極側の接点x1と駆動モータM側の接点z1(第1の出力端子)とを接続し(SW1:x1−z1)、スイッチSW2は、直流電源Eの負極側の接点x2と駆動モータM側の接点z2(第2の出力端子)とを接続する(SW2:x2−z2)。一方、切替部1を起立切替位置へと切り替えた場合、すなわち、負の極性の直流電圧を駆動モータMに印加する場合、スイッチSW1は、直流電源Eの負極側の接点y1と駆動モータM側の接点z1とを接続し(SW1:y1−z1)、スイッチSW2は、直流電源Eの正極側の接点y2と駆動モータM側の接点z2とを接続する(SW2:y2−z2)。
【0018】
本実施形態において、この切替部1は、前述の2つのケースのような極性の切り替え(反転)のみならず、第3のケースとして、格納切替位置と起立切替位置との間の中立的な位置であるニュートラル位置に切り替えることができる。この第3のケースでは、スイッチSW1は、直流電源E側の接点x1,y1の中立的な位置であるニュートラル位置Nに設定され(SW1:N−z1)、スイッチSW2は、直流電源E側の接点x2,y2の中立的な位置であるニュートラル位置Nに設定される(SW2:N−z2)。
【0019】
時定数回路部2は、第1または第2のモータ駆動回路部3,4がオフ状態からオン状態へと切り替わると、オン状態の継続時間が所定の設定時間(時定数)に到達したことを条件に、当該モータ駆動回路部3,4をオフ状態へ切り替える。具体的には、時定数回路部2は、スイッチSW1,SW2の後段に設けられており、抵抗R5(第1の抵抗)と、抵抗R6(第2の抵抗)と、これらの抵抗R5,R6との間に配置されるコンデンサC3との直列回路で構成されている。時定数回路部2に設定される設定時間は、コンデンサC3の容量および抵抗R5,R6の抵抗値に応じて決定される。
【0020】
第1および第2のモータ駆動回路部3,4は、切替部1、時定数回路部2あるいは第1および第2の電流検出回路部5,6によりオンオフ状態が切り替えられることにより、モータユニット7へのモータ駆動電流の供給または遮断を切り替える機能を担っている。
【0021】
第1のモータ駆動回路部3は、負の極性の直流電圧を駆動モータMに印加する起立切替位置に切替部1が設定された場合(SW1:y1−z1,SW2:y2−z2)にオン状態となり、このオン状態においてモータユニット7にモータ駆動電流を供給する。また、第1のモータ駆動回路部3は、後述する第1の電流検出回路部5または時定数回路部2により必要に応じてオフ状態へと切り替えられ、このオフ状態においてモータユニット7へのモータ駆動電流を遮断する。
【0022】
具体的には、第1のモータ駆動回路部3は、スイッチング素子、例えば電界効果トランジスタ(FET)Q1(第1のFET)と、ツェナーダイオードZD1(第1のツェナーダイオード)とで構成されている。FETQ1のソース端子は、スイッチSW1の接点z1と接続され、そのドレイン端子は、後述する抵抗R1を介して駆動モータMの一方の電圧印加端子M1に接続されている。また、FETQ1のゲート端子は、後述する抵抗R9を介して、時定数回路部2を構成するコンデンサC3と抵抗R5との接続点に接続されている。一方、ツェナーダイオードZD1のアノード端子は、スイッチSW1の接点z1に接続され、そのカソード端子は、FETQ1のゲート端子に接続されている。
【0023】
これに対して、第2のモータ駆動回路部4は、正の極性の直流電圧を駆動モータMに印加する格納切替位置に切替部1が設定された場合(SW1:x1−z1,SW2:x2−z2)にオン状態となり、このオン状態においてモータユニット7にモータ駆動電流を供給する。また、第2のモータ駆動回路部4は、後述する第2の電流検出回路部6または時定数回路部2により必要に応じてオフ状態へと切り替えられ、このオフ状態においてモータユニット7へのモータ駆動電流を遮断する。
【0024】
具体的には、第2のモータ駆動回路部4は、スイッチング素子、例えば電界効果トランジスタ(FET)Q2(第2のFET)と、ツェナーダイオードZD2(第2のツェナーダイオード)とで構成されている。FETQ2のソース端子は、スイッチSW2の接点z2と接続され、そのドレイン端子は、後述する抵抗R2を介して駆動モータMの他方の電圧印加端子M2に接続されている。また、FETQ2のゲート端子は、後述する抵抗R10を介して、時定数回路部2を構成するコンデンサC3と抵抗R6との接続点に接続されている。一方、ツェナーダイオードZD2のアノード端子は、スイッチSW2の接点z2に接続され、そのカソード端子は、FETQ2のゲート端子に接続されている。
【0025】
第1および第2の電流検出回路部5,6は、駆動モータMのロック電流を検出した場合、第1または第2のモータ駆動回路部3,4をオフ状態へ切り替える機能を担っている。
【0026】
第1の電流検出回路部5は、第1のモータ駆動回路部3がオン状態である場合に、駆動モータMのロック電流を検出したことを条件に、第1のモータ駆動回路部3をオフ状態へ切り替える。
【0027】
具体的には、第1の電流検出回路部5は、抵抗R1と、抵抗R9(第5の抵抗)と、スイッチング素子である半導体トランジスタQ3と、抵抗R3と、コンデンサC1とで構成されている。抵抗R1は、FETQ1のドレイン端子と駆動モータMの電圧印加端子M1との間に設置され、抵抗R9は、FETQ1のゲート端子とコンデンサC3との間に設置されている。半導体トランジスタQ3のエミッタ端子はスイッチSW1の接点z1に接続され、そのコレクタ端子はFETQ1のゲート端子と抵抗R9との接続点に接続されている。抵抗R3は、半導体トランジスタQ3のベース端子と駆動モータMの電圧印加端子M1との間に設置されている。また、スイッチSW1の接点z1と半導体トランジスタQ3のベース端子との間には、コンデンサC1が設置されている。
【0028】
これに対して、第2の電流検出回路部6は、第2のモータ駆動回路部4がオン状態である場合に、駆動モータMのロック電流を検出したことを条件に、第2のモータ駆動回路部4をオフ状態へ切り替える。
【0029】
具体的には、第2の電流検出回路部6は、抵抗R2と、抵抗R10(第6の抵抗)と、スイッチング素子である半導体トランジスタQ4と、抵抗R4と、コンデンサC2とで構成されている。抵抗R2は、FETQ2のドレイン端子と駆動モータMの電圧印加端子M2との間に設置され、抵抗R10は、FETQ2のゲート端子とコンデンサC3との間に設置されている。半導体トランジスタQ4のエミッタ端子はスイッチSW2の接点z2に接続され、そのコレクタ端子はFETQ2のゲート端子と抵抗R10との接続点に接続されている。抵抗R4は、半導体トランジスタQ4のベース端子と駆動モータMの電圧印加端子M2との間に設置されている。また、スイッチSW2の接点z2と半導体トランジスタQ4のベース端子との間には、コンデンサC2が設置されている。
【0030】
第1および第2の放電回路部8,9は、時定数回路部2のコンデンサC3の放電を行う機能を担っている。
【0031】
第1の放電回路部8は、負の極性の直流電圧を駆動モータMに印加する起立切替位置からニュートラル位置へと切替部1が切り替えられた場合に、時定数回路部2のコンデンサC3の放電を行う機能を担っている。
【0032】
具体的には、第1の放電回路部8は、ダイオードD1と抵抗R7(第3の抵抗)とを主体に構成されている。ダイオードD1のアノード端子は、時定数回路部2のコンデンサC3と抵抗R6との接続点と接続され、そのカソード端子は、抵抗R7と接続されている。抵抗R7の他方の端部は、スイッチSW1の接点z1に接続されている。すなわち、ダイオードD1と抵抗R7との直列回路は、時定数回路部2のうちのコンデンサC3と抵抗R5との直列回路に対して並列的に設置されている。また、第1のモータ駆動回路部3を構成するツェナーダイオードZD1、第1の電流検出回路部5を構成する抵抗R9も、この第1の放電回路部8の一部として機能する。
【0033】
これに対して、第2の放電回路部9は、正の極性の直流電圧を駆動モータMに印加する格納切替位置からニュートラル位置へと切替部1が切り替えられた場合に、時定数回路部2のコンデンサC3の放電を行う機能を担っている。
【0034】
具体的には、第2の放電回路部9は、ダイオードD2と抵抗R8(第4の抵抗)とを主体に構成されている。ダイオードD2のアノード端子は、時定数回路部2のコンデンサC3と抵抗R5との接続点と接続され、そのカソード端子は、抵抗R8と接続されている。抵抗R8の他方の端部は、スイッチSW2の接点z2に接続されている。すなわち、ダイオードD2と抵抗R8との直列回路は、時定数回路部2のうちのコンデンサC3と抵抗R6との直列回路に対して並列的に設置されている。また、第2のモータ駆動回路部4を構成するツェナーダイオードZD2、第2の電流検出回路部6を構成する抵抗R10も、この第2の放電回路部9の一部として機能する。
【0035】
ここで第1および第2の放電回路部8,9の抵抗R7,R8は、時定数回路部2の抵抗R5,R6に対して、以下に示す関係が成立する。
(数式1)
R5=R6>R7=R8
【0036】
このような構成のドアミラー制御装置において、以下、その動作について説明する。
【0037】
(動作1−1)
起立位置にあるドアミラーを格納位置へと作動させる場合、切替部1がニュートラル位置(あるいは起立切替位置)から格納切替位置へと切り替えらる。これにより、スイッチSW1が接点x1と接点z1とを接続し、スイッチSW2が接点x2と接点z2とを接続する。
【0038】
(動作1−2)
スイッチSW1,SW2の切り替えに伴い直流電源Eから正の極性の直流電圧が印加されると、電流がツェナーダイオードZD1、抵抗R9を流れ、これにより、このコンデンサC3に電荷が蓄積される。このコンデンサC3に蓄積された電荷は、抵抗R10を介してFETQ2にゲート電流として放電される。そして、ツェナーダイオードZD2の作用により所定の電圧がFETQ2のゲート端子に印加されることにより、FETQ2のゲート電圧がハイレベルとなり、FETQ2がオンする。ゲート電圧のハイレベルな状態、すなわち、FETQ2のオンは、時定数回路部2により設定された設定時間だけ継続される。すなわち、FETQ2は設定時間の経過後にオフする。
【0039】
(動作1−3)
FETQ2がオンすると、ドレイン−ソース間に電流が流れることが可能となり、直流電源Eからの電流は、FETQ1の寄生ダイオード(図示せず)、抵抗R1、駆動モータM、抵抗R2、FETQ2の順番で流れ、駆動モータMにモータ駆動電流が供給される。これにともない、駆動モータMは正転するため、ドアミラーは格納方向へと作動する。
【0040】
(動作1−4)
ドアミラーが格納位置へと到達すると、ドアミラーの作動が機械的に制限される。そのため、駆動モータMの負荷が大きくなり、駆動モータMにロック電流が流れると、抵抗R2の両端電圧が上昇する。これにともない、抵抗R4を通じてコンデンサC2の時定数で、半導体トランジスタQ4のベース端子に電流が流れ、半導体トランジスタQ4がオンする。
【0041】
(動作1−5)
半導体トランジスタQ4がオンすると、FETQ2のゲート電圧がローレベルとなるため、FETQ2がオフする。これにより、駆動モータMは回転を停止する。
【0042】
(動作1−6)
FETQ2がオフすると、直流電源Eからの電流は、FETQ1の寄生ダイオード(図示せず)、抵抗R1、駆動モータM、抵抗R4を経由して、半導体トランジスタQ4のベース端子に流れ続ける。このため、半導体トランジスタQ4はオンしたままとなり、FETQ2はオフし続けることとなる。
【0043】
このような起立位置から格納位置へのドアミラーの作動において、例えばドアミラーが障害物と機械的に干渉したり、異物を挟み込んだりするといったように、外的要因により格納位置へと至る前にドアミラーの作動が停止されることがある。この場合でも、ドアミラー制御装置の動作は、前述の如く、(動作1−4)〜(動作1−6)の状態を経ることとなる。そのため、ドアミラーは格納位置へと至る手前で停止した状態となる。
【0044】
この場合、操作者が障害物とドアミラーとの干渉を排除した上で、途中で停止したままのドアミラーを格納位置へと作動させる必要が生じる。ここで、ドアミラー制御装置は、前述の(動作1−6)の状態にあるため、時定数回路部2のコンデンサC3はフル充電の状態となっている。
【0045】
(動作2−1)
そこで、切替部1を一旦ニュートラル位置に切り替える。これにより、コンデンサC3の電荷は、ダイオードD2、抵抗R8、ツェナーダイオードZD2、抵抗R10を通じて放電される。
【0046】
(動作2−2)
その後、切替部1がニュートラル位置から格納切替位置へと切り替える。これにより、スイッチSW1が接点x1と接点z1とを接続し、スイッチSW2が接点x2と接点z2とを接続する。よって、ドアミラー制御装置は前述の(動作1−1)から(動作1−6)の各状態を経ることとなり、その結果、ドアミラーは再作動し、途中で停止した位置から格納位置へと作動する。
【0047】
以上、起立位置から格納位置へのドアミラーの作動について、時定数回路部2、第2のモータ駆動回路部4、第2の電流検出回路部6および第2の放電回路部9の構成を中心に説明した。また、格納位置から起立位置へのドアミラーの作動についても、時定数回路部2、第1のモータ駆動回路部3、第1の電流検出回路部5および第1の放電回路部8の構成を中心に動作が行われることとなり、その基本的な動作の流れは同じであるため、その説明は省略する。
【0048】
このように本実施形態によれば、ドアミラー制御装置は、抵抗R5とコンデンサC3と抵抗R6との直列回路で構成される時定数回路部2の放電を行う第1および第2の放電回路部8,9を備えている。ここで、第1の放電回路部8は、抵抗R5とコンデンサC3との直列回路に対して並列的に設置される、ダイオードD1と抵抗R5,R6よりも抵抗値が小さい抵抗R7との直列回路を含み、第2の放電回路部9は、抵抗R6とコンデンサC3との直列回路に対して並列的に設置される、ダイオードD2と抵抗R5,R6よりも抵抗値が小さい抵抗R8との直列回路を含んでいる。
【0049】
時定数回路部2は、第1または第2の電流検出回路部5,6においてロック電流が検出されない場合に駆動モータMの駆動を停止するためのフェールセーフ機能として設けられている。すなわち、通常は、このフェールセーフ機能が働く前に、ロック電流が検出され、これにより、駆動モータMへのモータ駆動電流が遮断される。そのため、時定数回路部2による設定時間(時定数)は、ドアミラーが格納位置と起立位置との間を回動するために必要な時間よりも長く設定する必要がある。
【0050】
ところで、外的要因によりドアミラーの作動が格納位置(または起立位置)へと至る手前で停止した場合には、この外的要因を排除した上で、切替部1を再度操作し、ドアミラーを再作動させる。ここで、切替部1にニュートラル位置が存在するタイプでは、ドアミラーを再作動させる場合、操作者は、切替部1を一旦ニュートラル位置へ戻した上で、再度格納切替位置(または起立切替位置)へと切り替えることとなる。切替部1を一旦ニュートラル位置に切り替えることにより、(動作2−1)に示すように、時定数回路部2のコンデンサC3は放電される。
【0051】
しかしながら、前述のような都合から、時定数回路部2の時定数は大きな値に設定される傾向にあるため、時定数回路部2が備える抵抗R5,R6の抵抗値が大きいため、第1および第2の放電回路部8,9を備えない構成である場合には、コンデンサC3の放電に時間がかかってしまうという問題がある。そのため、操作者が切替部1を再度格納切替位置(または起立切替位置)へと切り替えたとしても、コンデンサC3の放電が終了しておらず、コンデンサC3に残留する電荷により、FETQ2(またはFETQ1)がオンしない、すなわち、ドアミラーが再作動しない場合がある。
【0052】
この点、本実施形態によれば、例えば、格納位置へ向けて再作動する場合であっても、ダイオードD2、抵抗R8、さらには、ツェナーダイオードZD2、抵抗R10を通じて電流が流れることにより、コンデンサC3の電荷が放出され、これにより、コンデンサC3が放電される。前述のように、抵抗R7,R8は、時定数回路部2が備える抵抗R5,R6よりも抵抗値が小さいという関係があるため、コンデンサC3の電荷放出にともなう電流が、第2の放電回路部(ダイオードD2、抵抗R8、ツェナーダイオードZD2および抵抗R10)へと優先的に流れることとなる。そのため、コンデンサC3の放電を早期に終了することができる。これにより、操作者が切替部1をニュートラル位置から再度格納切替位置(または起立切替位置)へと切り替えたとしても、ドアミラーが回動しない、すなわち、FETQ2(またはFETQ1)がオンしないといった事態を抑制することができる。
【0053】
なお、本実施形態によれば、ニュートラル位置を備える切替部1について説明したが、極性の反転を交互に切り替えるような切替部を備える構成であっても、上述した第1および第2の放電回路部8,9を備える構成としてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施形態にかかるドアミラー制御装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 切替部
2 時定数回路部
3 第1のモータ駆動回路部
4 第2のモータ駆動回路部
5 第1の電流検出回路部
6 第2の電流検出回路部
7 モータユニット
8 第1の放電回路部
9 第2の放電回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータとそれぞれ接続する第1および第2の出力端子を有し、直流電源から前記駆動モータに印加される直流電圧の極性を切り替える切替部と、
前記第1の出力端子と前記駆動モータとの間に配置され、オン状態においてドアミラーの起立方向に前記駆動モータを駆動させる第1の駆動回路部と、
前記第2の出力端子と前記駆動モータとの間に配置され、オン状態においてドアミラーの格納方向に前記駆動モータを駆動させる第2の駆動回路部と、
前記切替部と前記駆動モータとの間に配置され、前記第1の駆動回路部または第2の駆動回路部のオン状態が所定の設定時間を経過した場合に、当該駆動回路部をオフ状態に切り替える時定数回路部と、
前記時定数回路部の放電を行う第1および第2の放電回路部とを有し、
前記時定数回路部は、前記第1の出力端子側に位置する第1の抵抗と、前記第2の出力端子側に位置する第2の抵抗と、前記第1および第2の抵抗の間に配置されるコンデンサとの直列回路で構成されており、
前記第1の放電回路部は、前記第1の抵抗と前記コンデンサとの直列回路に対して並列的に設置される、第1のダイオードと前記第1または第2の抵抗よりも抵抗値が小さい第3の抵抗との直列回路を含み、
前記第2の放電回路部は、前記第2の抵抗と前記コンデンサとの直列回路に対して並列的に設置される、第2のダイオードと前記第1または第2の抵抗よりも抵抗値が小さい第4の抵抗との直列回路を含むことを特徴とするドアミラー制御装置。
【請求項2】
前記切替部は、一方の極性を選択する第1の位置と、当該一方の極性に対して反転した他方の極性を選択する第2の位置と、前記第1の位置と第2の位置との中間に位置するニュートラル位置とに切り替え可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載されたドアミラー制御装置。
【請求項3】
前記第1の駆動回路部は、前記切替部により一方の極性が選択されることによりオン状態となり、当該オン状態において前記駆動モータにモータ駆動電流を供給することにより、ドアミラーの起立方向に前記駆動モータを駆動させ、
前記第2の駆動回路部は、前記切替部により他方の極性が選択されることによりオン状態となり、当該オン状態において前記駆動モータにモータ駆動電流を供給することにより、ドアミラーの格納方向に前記駆動モータを駆動させることを特徴とする請求項2に記載されたドアミラー制御装置。
【請求項4】
前記第1および第2の駆動回路部は、オン状態において電流の流れを許容し、オフ状態において電流の流れを遮断するスイッチング素子をそれぞれ含み、
前記時定数回路は、前記切替部によりいずれかの極性が選択されると、前記コンデンサの放電を通じて、選択された極性に対応する駆動回路部のスイッチング素子を前記設定期間だけオンすることを特徴とする請求項2または3に記載されたドアミラー制御装置。
【請求項5】
前記第1の駆動回路部は、
ソース端子が前記切替部の第1の出力端子と接続され、ドレイン端子が前記駆動モータの一方の端子に接続され、ゲート端子が第5の抵抗を介して前記時定数回路部のコンデンサと第1の抵抗との接続点に接続されている第1のFETと、
アノード端子が前記切替部の第1の出力端子に接続され、カソード端子が前記第2のFETのゲート端子に接続されている第1のツェナーダイオードとを有し、
前記第2の駆動回路部は、
ソース端子が前記切替部の第2の出力端子と接続され、ドレイン端子が前記駆動モータの他方の端子に接続され、ゲート端子が第6の抵抗を介して前記時定数回路部のコンデンサと第2の抵抗との接続点に接続されている第2のFETと、
アノード端子が前記切替部の第2の出力端子に接続され、カソード端子が前記第2のFETのゲート端子に接続されている第2のツェナーダイオードとを有することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載されたドアミラー制御装置。
【請求項6】
前記第1の放電回路部は、前記第1のツェナーダイオードと、前記第5の抵抗とをさらに含み、
前記第2の放電回路部は、前記第2のツェナーダイオードと、前記第6の抵抗とをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載されたドアミラー制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−148694(P2012−148694A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9561(P2011−9561)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】