説明

ドアレール表面粗し装置

【課題】簡便な構成でエレベータの扉開閉の際の異音発生を抑制する。
【解決手段】ドアレール11の上を転動するローラ23から吊り下げられる扉21の上部に取り付けられ、扉21の開閉に従ってドアレール11上のローラ転動面12に押し付けられてドアレール11のローラ転動面12を摺動し、ドアレール11のローラ転動面12を粗面にする表面粗し部材31を備えるエレベータ100のドアレール表面粗し装置30であって、表面粗し部材31は、ドアレール11の素材よりも硬質の微粉を含有すること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ用のドアレール表面粗し装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのかご扉あるいは乗場側扉は、かご又は乗場の上部に取り付けられたドアレールにローラを介して吊り下げられ、ローラがドアレールの上を転動することによって扉がドアレールに沿って移動し、扉がスライドして開閉するよう構成されている。このようなエレベータの扉では、スムーズな開閉動作を達成するために、ドアレールを適宜清掃し、かつドアレール上に適量の油を給油する場合が多い。そのため、ドアに取り付け可能であり、ドアの開閉移動の度にドアレールを清掃すると共に給油する清掃給油装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、エレベータの昇降路の中にはかごや錘を垂直方向にガイドするガイドレールが設けられている。このガイドレールの表面に異物が付着するとかごに振動が発生し、乗客に不快感を与えてしまう。このため、研磨剤を含む清掃具でガイドレールの表面を清掃して異物を除去することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、シースルーエレベータ等では乗客からエレベータのガイドレールが見えることから、エレベータの清潔感を保つために研磨剤を含む移動体でガイドレールの表面を研磨してガイドレールの表面に発生した錆を除去する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−319078号公報
【特許文献2】特開平10−129952号公報
【特許文献3】特開2010−168182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エレベータの使用を続けていると、ドアレールのローラ転動面が磨耗により鏡面となってくる。このように表面が鏡面となってくると、ローラ転動面の静摩擦係数が大きくなる為、静電摩擦係数と動摩擦係数の差が大きくなり、エレベータの扉の開閉の際にローラとドアレールの間に微小なすべりが生じ、異音の発生の原因となる場合がある。この異音は、特許文献1に記載された従来技術のようにドアレールの表面への給油では解消することができない場合がある。
【0006】
本発明は、エレベータの扉開閉の際の異音発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドアレール表面粗し装置は、ドアレールの上を転動するローラから吊り下げられる扉の上部に取り付けられ、扉の開閉に従ってドアレール上のローラ転動面に押し付けられてドアレールのローラ転動面を摺動し、ドアレールのローラ転動面を粗面にする表面粗し部材を備えるエレベータのドアレール表面粗し装置であって、表面粗し部材は、ドアレールの素材よりも硬質の微粉を含有することを特徴とする。
【0008】
本発明のドアレール表面粗し装置において、表面粗し部材は、アルミナの微粉を含有する弾性体であること、としても好適であるし、弾性体は羊毛フェルトであること、としても好適である。
【0009】
本発明のドアレール表面粗し装置において、表面粗し部材は、砥石またはやすりであり、扉の上部に表面粗し部材をドアレール上のローラ転動面に押し付けるように保持する保持部材を備えること、としても好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、エレベータの扉開閉の際の異音発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるドアレール表面粗し装置を搭載したエレベータの扉の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態におけるドアレール表面粗し装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態におけるドアレール表面粗し装置を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態におけるドアレール表面粗し装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。本発明のドアレール表面粗し装置の説明の前に、エレベータの扉とドアレールの構成について説明する。図1、図2に示すように、エレベータ100のかご又は乗場の扉21は、その上部にそれぞれかご又は乗場に固定されたドアレール11から吊り下げられている。扉21の上部には扉を吊り下げる板状のハンガ22がボルト25で取り付けられている。ハンガ22はドアレール11の側面を通ってドアレール11の上側までのびている。そして、ドアレール11よりも上部のハンガ22の一方の面にはドアレール11の上を転動するローラ23がシャフト24の回りに回転自在となるように取り付けられている。そして、ローラ23の中央部分の溝がドアレール11のローラ転動面12に接触することによって、扉21はローラ23を介してドアレール11から吊り下げられ、ローラ23の転動によって横方向にスライドして開閉するよう構成されている。
【0013】
図1、図2に示すように、ハンガ22のドアレール11側にはドアレール表面粗し装置30が取り付けられている。表面粗し装置30は、ドアレール11の素材よりも硬質の微粉を含有する表面粗し部材31と、表面粗し部材31をハンガ22の面に取り付けるホルダ32とから構成されている。図2に示すように、ホルダ32は、2つの取り付け用の長穴33が設けられた取り付け部分32aと取り付け部分32aからコの字型に伸びて表面粗し部材31をつかむ把持部分32bとを備えている。表面粗し装置30はホルダ32の長穴33にボルト34を挿入して固定される。ホルダ32の上下方向の取り付け位置は、ボルト34の締め付け位置を調整することによって調整できる。ホルダ32の位置を調整することによって表面粗し部材31の下面はドアレール11のローラ転動面12に押し付けられるよう取り付けられる。
【0014】
表面粗し部材31は、例えば、鉄などの金属のドアレール11の素材よりも硬質の微粉を担持体の中に含むもので、ドアレール11のローラ転動面12の上を擦ることによってローラ転動面12に微小な傷をつけて、その表面粗さを大きくするものである。より具体的には、微粉は、アルミナあるいは、セラミックやダイヤモンド、砂などでもよい。微粉の大きさは、10μm〜30μm程度であってもよい。
【0015】
微粉が混入される担持体は、ドアレール11のローラ転動面12に押し付けられる際に適度の反発力があり、ローラ転動面12の形状になじみ、ローラ転動面12への押し付け力を保持することができるものであればよい。具体的には、羊毛フェルトあるいは樹脂などで構成してもよい。羊毛フェルトは織物としたものでも良いし繊維を圧縮したものでもよい。
【0016】
以上のように構成されたドアレール表面粗し装置30の動作について説明する。図2に示すように、ドアレール表面粗し装置30の表面粗し部材31はドアレール11のローラ転動面12に押し付けられるように取り付けられている。そして、エレベータ100の扉21が開閉する際に扉21のハンガ22と共にドアレール11のローラ転動面12の上を擦りながら移動する。この移動によって、ドアレール11のローラ転動面12は表面粗し部材31の含まれている硬質の微粉によって擦られて、表面に細かな傷がつく。このようにローラ転動面12に細かな傷をつけると、ローラ転動面12の表面が粗面となるので、使用につれてローラ転動面12が鏡面となることが抑制され、ローラ23が回転する際にドアレール11のローラ転動面12の上をすべることが抑制され、異音の発生が抑制される。又、本実施形態では、特許文献1に示された従来技術のような給油が不要となる。
【0017】
表面粗し部材31のローラ転動面12への押し付け度合いは、先に説明したように長穴33を締め付けるボルト34の位置を調整することによってもよいし、メンテナンスの際に表面粗し部材31を下方向に押し付けてホルダ32の把持部分32bによって表面粗し部材31がローラ転動面12に押し付けられるように調整してもよい。
【0018】
本実施形態のドアレール表面粗し装置30は、簡便な構成でエレベータの扉開閉の際の異音発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0019】
図3、図4を参照して本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、ホルダ32が箱型となっており、その中に表面粗し部材31をローラ転動面12に押し付けるバネ35が取り付けられている。本実施形態の表面粗し部材31は、先に図1、図2を参照して説明した羊毛フェルトなどのように大きな変形をする弾性体であってもよいが、樹脂などのようにさほど大きな変形をしない弾性体を微粉の担持体とするものであってもよい。また、砥石ややすりであってもよい。ただし、担持体はローラ転動面12との接触によって次第に削られ、常に表面に微粉が現れているようなものであれば他の材質でもかまわない。また、図4に示すように、表面粗し部材31のローラ転動面12への接触面はローラ転動面12の表面形状に従って湾曲した形状としてもよい。本実施形態は先に述べた実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0020】
11 ドアレール、12 ローラ転動面、21 扉、22 ハンガ、23 ローラ、24 シャフト、25 ボルト、30 表面粗し装置、31 表面粗し部材、32 ホルダ、32a 取り付け部分、32b 把持部分、33 長穴、34 ボルト、35 バネ、100 エレベータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアレールの上を転動するローラから吊り下げられる扉の上部に取り付けられ、扉の開閉に従ってドアレール上のローラ転動面に押し付けられてドアレールのローラ転動面を摺動し、ドアレールのローラ転動面を粗面にする表面粗し部材を備えるエレベータのドアレール表面粗し装置であって、
表面粗し部材は、ドアレールの素材よりも硬質の微粉を含有すること、
を特徴とするドアレール表面粗し装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドアレール表面粗し装置であって、表面粗し部材は、アルミナの微粉を含有する弾性体であること、
を特徴とするドアレール表面粗し装置。
【請求項3】
請求項2に記載のドアレール表面粗し装置であって、弾性体は羊毛フェルトであること、
を特徴とするドアレール表面粗し装置。
【請求項4】
請求項1に記載のドアレール表面粗し装置であって、表面粗し部材は、砥石またはやすりであり、
扉の上部に表面粗し部材をドアレール上のローラ転動面に押し付けるように保持する保持部材を備えること、
を特徴とするドアレール表面粗し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−184097(P2012−184097A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49776(P2011−49776)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】