説明

ドア治具

【課題】ドア治具を介した車体に対するドアの係脱をロボットにより操作する場合に、ドア治具の位置検出や把持機構、複雑なロボットのティーチング作業が不要となるドア治具を提供する。
【解決手段】車体wのセンターピラーw1に取り付けられる車体側治具10とドアdに取り付けられるドア側治具30とから構成され、車体側治具10に形成した車体側係合部14とドア側治具30に形成したばね線材からなる弾性部材35とを係合させることにより、車体wに対してドアdを所定の開度で保持するドア治具1とした。車体側係合部14は棒状部材として構成され、弾性部材35は、車体側係合部14を乗り上げるように弾性変形する起立部42と、車体側係合部14に係合する係合凹部24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の製造工程で使用するドア治具に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装工程において車体に塗装を施す場合、車体を載置した台車を搬送しつつ塗装ロボット等により塗装を行う。前記車体はドアが取り付けられた状態で塗装される。これは車体とドアの塗装条件を同じにして、車体とドアの色差を無くすためであるが、塗装工程では車体とドアを係合するためのドアロック機構が未取り付けの状態であるため、搬送過程で車体に取り付けられたドアが開放すると、周辺機器と干渉してデフォームが発生したり、搬送装置の過負荷となるトラブルが発生するおそれがある。
【0003】
これを防止するため特許文献1では、ドア内板にドア治具を取り付け、ドア治具に軸支された仮止め棒のレバーを回動することによりボディ係合部にセンターピラーの端縁部を係合し、車体に対して所定の開度でドアを固定するようにしている。
【0004】
また、特許文献2では、車体のセンターピラーにドア治具を取り付け、ドア治具に軸支された固定アームを回動してドアの外板と内板の間に係脱し、車体に対して所定の開度でドアを固定する構成をとっている。
【0005】
さらに、特許文献3では、サイドシルのフランジ部とサイドシルの孔によりドア治具を車体に固定し、ドア治具に取り付けた磁石によりドアを磁着して保持し、車体に対して所定の開度でドアを固定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−188305号公報
【特許文献2】特開2004−113872号公報
【特許文献3】実開平6−76578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術によると、ボディ係合部とセンターピラーの端縁部とを係脱するためには仮止め棒のレバーを回動する必要があり、ロボットを用いて係脱しようとするとレバーの位置検出、把持機構および複雑なロボットのティーチング作業が必要でありコストと手間がかかる。特許文献2の技術においてもロボットを用いて係脱しようとすると、やはり固定アームの位置検出、把持機構および複雑なロボットのティーチング作業が必要となる。また、特許文献3の技術によると、サイドシルにはドア治具を固定するための孔が必要となり、防錆上、後でこの孔を閉止するため手間がかかる。また、磁力には限界があるため、搬送中に車体が急激に揺動した場合、ドアがドア治具から外れ開放状態になるおそれもある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解消するために創作されたものであり、ドア治具を介した車体に対するドアの係脱をロボットにより操作する場合に、ドア治具の位置検出や把持機構、複雑なロボットのティーチング作業が不要となるドア治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するため、車体に取り付けられる車体側治具とドアに取り付けられるドア側治具とから構成され、車体側治具に形成した車体側係合部とドア側治具に形成したドア側係合部とを係合させることにより、車体に対してドアを所定の開度で保持するドア治具であって、前記車体側係合部と前記ドア側係合部の少なくとも一方は、ばね線材からなる弾性部材として形成されていることを特徴とする。
【0010】
当該ドア治具によれば、ドア治具を介したドアと車体との係脱構造が、ドアの回動操作力に基づく弾性変形を利用した係脱構造となる。したがって、例えばロボットにより係脱操作する場合、ロボット動作としては、ロボットを細かい部品からなるドア治具に一切触れさせることなく、大型部品であるドアを単に回動させるだけの動作とすればよい。これにより、ドア治具の位置検出や把持機構、複雑なロボットのティーチング作業を要することなく、ロボットを利用した車体に対するドアの係脱作業が可能になる。
【0011】
また、本発明は、前記車体側治具は、車体のセンターピラーに開設された開孔に係合する鉤状の第1係合部と、前記センターピラーの縦縁に形成されたドア開口フランジ部に係合する溝状の第2係合部と、を備え、これら第1係合部および第2係合部を介して車体に固定されたときに前記車体側係合部は前記第2係合部よりも車内側に位置する棒状の部材として形成され、前記ドア側治具は、ドアの内板と外板の間に挿入されてドアに固定され、前記弾性部材をドアの内板側において支持する基板を備え、前記ドア側治具の弾性部材は、ドアの閉止方向の回動に伴う前記車体側係合部からの反力により弾性変形した後に前記車体側係合部の周面に係合することを特徴とする。
【0012】
当該ドア治具によれば、車体側治具とドア側治具の各構造が簡単となり、車体に対する車体側治具の取付けおよびドアに対するドア側治具の取り付けを迅速に行える。
【0013】
また、本発明は、前記ドア側治具の弾性部材は、ドアの閉止方向の回動時に最初に前記車体側係合部に当接して弾性変形する起立部と、該起立部が通過した後に前記車体側係合部の周面に係合する係合凹部と、を有することを特徴とする。
【0014】
当該ドア治具によれば、弾性変形する起立部と車体側係合部の周面に係合する係合凹部とを備えることにより、弾性部材の弾性機能と係合機能とを共に向上させることができる。
【0015】
また、本発明は、前記ドア側治具の弾性部材は、前記起立部の弾性を高めるために、基端側および一端側にそれぞれコイル巻きのループ部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
当該ドア治具によれば、車体側治具とドア側治具との係脱がスムースとなり、ドアの回動操作力が小さな力で済む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ドア治具の位置検出や把持機構、複雑なロボットのティーチング作業を要することなく、ロボットを利用した車体に対するドアの係脱作業が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のドア治具における車体側治具の正面図である。
【図2】本発明のドア治具における車体側治具の平面図である。
【図3】本発明のドア治具における車体側治具の側面図である。
【図4】本発明のドア治具における車体側治具の外観斜視図である。
【図5】本発明のドア治具におけるドア側治具の正面図である。
【図6】本発明のドア治具におけるドア側治具の平面図である。
【図7】本発明のドア治具におけるドア側治具の側面図である。
【図8】本発明のドア治具におけるドア側治具の外観斜視図である。
【図9】ドア側治具における弾性部材の正面図である。
【図10】ドア側治具における弾性部材の平面図である。
【図11】ドア側治具における弾性部材の外観斜視図である。
【図12】車内側から見た場合の、車体側治具とドア側治具との係合状態を示す外観斜視図である。
【図13】車外側から見た場合の、車体側治具とドア側治具との係合状態を示す外観斜視図である。
【図14】車外側から見た場合の、車体側治具とドア側治具との係合状態を示す外観斜視図であって、ドアの外板を省略した図である。
【図15】塗装ロボットにより車体側治具とドア側治具とを係脱させる状態を示す外観斜視図である。
【図16】車体側治具に前処理・電着用治具を取り付けた状態を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のドア治具1は、図1ないし図4に示す車体側治具10と、図5ないし図8に示すドア側治具30とから構成される。図1ないし図4を参照して、車体w周りについては適宜に図12を参照して説明すると、車体側治具10は、車体wのセンターピラーw1に取り付けられる部材であって、折り曲げ形成された1本の丸棒部材を備えている。図1の紙面上下を「上下方向」、紙面奥を車外方向、紙面手前を車内方向とすると、前記丸棒部材は、上方向が開口するように略コ字状に折り曲げ形成されて、一対の縦棒11a、11bと車体wの前後方向に略沿うように配置される底部の横棒11cとから構成されたコ字型部11と、一方の縦棒11aの上端から横棒11cの延設方向と直交して車外側に折り曲げられて先端周りが斜め下方に屈曲して鉤状を呈し、車体wのセンターピラーw1のガーニッシュ用孔w2に係合する鉤爪部12(第1係合部22)と、他方の縦棒11bの上端から横棒11cの延設方向と直交して車内側に略直角に折り曲げられた偏倚部13と、偏倚部13の先端からコ字型部11の横棒11cと平行に、横棒11cから離れる方向に折り曲げられた車体側係合部14と、を有した形状からなる。
【0020】
縦棒11bの中程には車外側に向けて支持棒15が溶着され、支持棒15の先端には鉤爪部12に向けて係合溝16が形成された軒樋状部材17(第2係合部23)が溶着されている。両縦棒11a、11b間には上下2本の補強用横棒18、19が掛け渡され、また、本実施例では車体側治具10を前処理・電着用のドア開度固定治具として共用可能とするために、下側の補強用横棒19には、前処理・電着用治具100(図16参照)の固定用として一対の無蓋円筒形状の挿通部20a、20bを有するプレート部材21が車内側に向けて水平状に溶着されている。
【0021】
図16に示すように、前処理・電着用治具100は、その中央延設部が水平状に配置されて、一端側は二股に分岐してそれぞれ下方鉛直状に延設して前記挿通部20a、20bに各上方開口から挿通する二股係止部100a、100bとして形成され、他端側は下方に略U字状に屈曲形成されて、ドアdの内板d1と外板d2の間に両者の上縁間隙から挿入される係止部100cとして形成されている。
【0022】
次に、図5ないし図8を参照して、ドアd周りについては適宜に図12を参照して説明すると、ドア側治具30は、ドアdの内板d1と外板d2の間に両者の上縁間隙から挿入される略縦長平板状の基板31と、内板d1の上縁上方を経て車内側に延設するように、基板31の上端折曲部31aに溶着された支持ロッド32と、支持ロッド32の先端下方に溶着された平板状の弾性部材保持板33と、ドア側係合部としての弾性部材35と、から構成されている。基板31における内板d1に対向する面の下端には雌ねじ部材(ナット)34が溶着されている。基板31が内板d1と外板d2の間に挿通された後、内板d1の内板開孔d3を通して、雌ねじ部34にはボルト部材49が螺合される。基板31の一方の側縁の上下方向中程には、ドアdに略沿うように横方向に延設した後、その先端が内板d1に向けて屈曲形成されたL形ピン48が溶着されている。
【0023】
弾性部材保持板33には、弾性部材35の基端に形成された折り返し部36を係止するための2つのボルト挿通孔33aと、弾性部材35の先端に形成された折曲部45を挿通係止させるための挿通孔33bと、が開設されている。
【0024】
弾性部材35は図9ないし図11に示すように1本のばね線材より構成される。弾性部材35は、基端において横向きの略U字形に形成された折り返し部36と、この折り返し部36から下方に鉛直に延びてその下端に形成される2重コイル巻きの第1ループ部37と、第1ループ部37を基端として一方向(ドアdから離間する横方向)に水平に延設される下縁部38と、下縁部38の先端から上方に鉛直に延びるストッパ部39と、ストッパ部39の上端から前記一方向に水平に延設される係止縁部40と、係止縁部40の先端から前記一方向側で斜め下方に延設する傾斜部41と、傾斜部41の先端から前記一方向側で斜め上方に延設した後に他方向(ドアdに接近する横方向)に戻るようにカーブしてその先端が前記折り返し部36よりも上方に位置する起立部42と、起立部42の先端から前記他方向に水平に延設される上縁部43と、上縁部43の先端に形成される2重コイル巻きの第2ループ部44と、第2ループ部44から下方に鉛直に延びてその先端に形成された折曲部45と、を備えた形状からなる。弾性部材35は、図5ないし図8に示すように、先端の折曲部45が前記挿通孔33bに挿通係止され、基端の折り返し部36が、前記ボルト挿通孔33aを挿通する各一対のボルト46とナット47により締結されることで、弾性部材保持板33に固定される。ストッパ部39と係止縁部40と傾斜部41とは、丸棒部材である車体側係合部14の周面に係合する係合凹部24を構成する。
【0025】
以下、主に図12ないし図16を参照してドア治具1の使用方法の一例について説明する。溶接工程からコンベアにより塗装の初工程に搬送されてきた車体wに対して作業者はまず車体側治具10を取り付ける。車体側治具10を車体wに固定するには、車内側において、車体wのセンターピラーw1の縦長孔状のガーニッシュ用孔w2に鉤爪部12を挿入し、次いで車体側治具10を鉤爪部12を中心に揺動させてセンターピラーw1の縦縁に形成されたドア開口フランジ部w3に軒樋状部材17の係合溝16を係合させる。車体側治具10の自重により、鉤爪部12の基部は縦長孔状のガーニッシュ用孔w2の下縁に引っ掛かり、係合溝16は斜め下方に向いた状態でドア開口フランジ部w3に係合するようになっており、上方向への力が加わらない限り車体側治具10が車体wから外れることはない。
【0026】
そして、本実施形態では、塗装の初工程のうちの前処理・電着工程においてドアdの位置決めを行うべく、図16に示すように車体側治具10への前処理・電着用治具100の取り付けを行い、二股係止部100a、100bを挿通部20a、20bに挿通係止させるとともに、係止部100cをドアdの内板d1と外板d2の間に両者の上縁間隙から挿入係止させる。これにより、ドア治具1および前処理・電着用治具100を介して、ドアdが車体Wに対して比較的大きく回動した状態で位置決めされる。
【0027】
この状態で前処理・電着工程に車体wを移送して車体wを処理槽(図示せず)内の処理液に浸漬させ、車体wに前処理・電着処理を施す。このとき車体wに対してドアdが比較的大きく回動した位置で位置決めされているため、出槽時における処理液の車体w内からの抜けが良くなり、処理液の処理槽外への漏れを低減できる。
【0028】
次いで車体wを乾燥炉(図示せず)内に通過させて車体表面に付着した電着液を硬化させ、出炉した車体wから前処理・電着用治具100を取り外した後、ドア側治具30をドアdに取り付ける。ドアdに対するドア側治具30の固定は、ドアdを開いた状態で、ドアdの内板d1と外板d2の間に基板31を挿入し、基板31の下端の雌ねじ部材34に対し、内板d1の内板開孔d3を通してボルト部材49を螺合することにより行う。このときドア側治具30の上端折曲部31aの下面は内板d1の上縁に当接しているため、ドア側治具30は安定してドアdに位置決め固定される。さらに、図14(外板d2を省略した図)に示すように、ドア側治具30のL形ピン48の先端が内板d1の補強プレートd4に開設された孔部d5に挿入されることにより、ドア側治具30は一層安定してドアdに固定される。
【0029】
以上のようにしてドアdに対するドア側治具30の取り付けを完了し、ドアdを閉止する方向に回動させると、まずドア側治具30の弾性部材35の起立部42が車体側治具10の車体側係合部14に当接する。ドアdのさらなる回動により、車体側係合部14からの反力を受けた起立部42はその弾性をもって上方に変位して車体側係合部14を乗り上げて通過し、ドアdは、ドア側治具30の傾斜部41が車体側係合部14に摺接しつつ回動し、やがてストッパ部39が車体側係合部14に当接することで回動が規制される。このとき、車体側係合部14は、係合凹部24に係合されることで、すなわちストッパ部39、係止縁部40、傾斜部41の三者に当接して位置決めされることで、車体側治具10とドア側治具30との連結位置が定まり、ドアdが車体wに対して一定の開度で保持される。弾性部材35は常に車体側係合部14を下方向に付勢するように作用するので、車体側治具10が上方向、つまり車体wから外れる方向に振れることはない。
【0030】
このとき保持されるドアdの開度は、車体側治具10の偏倚部13の長さまたはドア側治具30の弾性部材35の下縁部38の長さにより決まるものであり、これらは適宜な長さに設定されている。例えば車体側治具10およびドア側治具30は何回も使用されるうちに治具表面に塗料が付着して硬化する。そして、ドア側治具30の弾性部材35の起立部42、傾斜部41、係止縁部40、ストッパ部39が車体側治具10の車体側係合部14に当接したとき、硬化した塗料片が車体側治具10またはドア側治具30の表面から剥離して落下するおそれがあり、もし塗料片がサイドシル上に落下した場合には、その塗料片を付着させたままサイドシルの塗装を施すというおそれがある。これに対して、例えば車体側治具10の偏倚部13の長さを、車体wのサイドシル(図示せず)の直上位置を避けた車室内位置まで延設した長さとすることにより、塗料片がサイドシル上に落下するという事態を防止できる。なお、この場合には剥離した塗料片は外観品質上問題とならない車体wのフロア上に落下する。
【0031】
以降のドアdの開閉動作はロボットにより行い、図15に示すように、本実施形態では塗装ロボットrにより行う。塗装ロボットrは、例えば多関節式のアームロボットであって、先端のアーム部r1には塗装ガンtが備えられている。この塗装ロボットrを利用するにあたり、例えばアーム部r1には、通電することにより磁化する吸着部材r2を配設する。そして、例えば室内側塗装工程においては、塗装ロボットrのアーム動作を経て、磁化した吸着部材r2をドアdのガラス用開口を通して内板d1に当てて両者を磁着させ、塗装ロボットrのアーム動作によりドアdを開放方向に回動させる。傾斜部41を介して車体側係合部14から受ける反力により、ドア側治具30の弾性部材35の起立部42がその弾性をもって上方に変位した後、弾性部材35は車体側治具10の車体側係合部14から分離する。
【0032】
ドアdを大きく開放した後、吸着部材r2の通電を切って塗装ロボットrをドアdから離し、その後は塗装ガンtにより室内側の塗装を行う。室内側の塗装が完了すると、再び磁化した吸着部材r2をドアdの内板d1に磁着させ、塗装ロボットrのアーム動作によりドアdを閉止方向に回動させる。このときの車体側治具10とドア側治具30との係合作用は前記した通りである。すなわち、車体側係合部14からの反力を受けた起立部42はその弾性をもって上方に変位して車体側係合部14を乗り上げて通過し、ドアdは、ドア側治具30の傾斜部41が車体側係合部14に摺接しつつ回動し、やがてストッパ部39が車体側係合部14に当接することで回動が規制される。車体側係合部14が係合凹部24に係合されることで、車体側治具10とドア側治具30との連結位置が定まり、ドアdが車体wに対して一定の開度で保持される。この状態で車体wは例えば次工程に搬送される。
【0033】
本実施形態では車体側治具10の車体側係合部14を棒状部材とし、ドア側治具30のドア側係合部をその棒状部材に係合する弾性部材35としているが、逆にドア側治具30のドア側係合部を棒状部材とし、車体側治具10の車体側係合部14をその棒状部材に係合する弾性部材35とすることも可能である。なお、後者の場合、弾性部材35がドア側係合部から受ける反力によって車体側治具10に上方向の力が加わらないように、つまり車体側治具10が外れないようにするため、弾性部材35が下方向に付勢されるようにする必要がある。ただしこの場合でも、例えば図5等に示した弾性部材35を上下逆にレイアウトして使用すれば足り、容易に実施可能である。
【0034】
以上のように、車体側治具10の車体側係合部14とドア側治具30のドア側係合部の少なくとも一方を、ばね線材からなる弾性部材35として形成すれば、ドア治具1を介したドアdと車体wとの係脱構造が、ドアdの回動操作力に基づく弾性部材35の弾性変形を利用した係脱構造となる。したがって、例えばロボットにより係脱操作する場合、ロボット動作としては、ロボットを細かい部品からなるドア治具1に一切触れさせることなく、大型部品であるドアdを単に回動させるだけの動作とすればよい。これにより、ドア治具1の位置検出や把持機構、複雑なロボットのティーチング作業を要することなく、ロボットを利用した車体wに対するドアdの係脱作業が可能になる。本発明では、係脱構造として弾性部材35の弾性を利用するため、係脱時の衝撃力も緩衝される。
【0035】
また、車体側治具10は、車体wのセンターピラーw1に開設された開孔(ガーニッシュ用孔w2)に係合する鉤爪部12(第1係合部22)と、センターピラーw1の縦縁に形成されたドア開口フランジ部w3に係合する軒樋状部材17(第2係合部23)と、を備え、鉤爪部12および軒樋状部材17を介して車体wに固定されたときに車体側係合部14は軒樋状部材17よりも車内側に位置する棒状の部材として形成され、ドア側治具30は、ドアdの内板d1と外板d2の間に挿入されてドアdに固定され、弾性部材35をドアdの内板d1側において支持する基板31を備え、ドア側治具30の弾性部材35は、ドアdの閉止方向の回動に伴う車体側係合部14からの反力により弾性変形した後に車体側係合部14の周面に係合するように構成すれば、車体側治具10とドア側治具30の各構造が簡単となり、車体wに対する車体側治具10の取付けおよびドアdに対するドア側治具30の取り付けを迅速に行える。
【0036】
さらに、ドア側治具30の弾性部材35として、ドアdの閉止方向の回動時に最初に車体側係合部14に当接して弾性変形する起立部42と、該起立部42が通過した後に車体側係合部14の周面に係合する係合凹部24と、を有する構成とすれば、弾性部材35の弾性機能と係合機能とを共に向上させることができる。
【0037】
また、ドア側治具30の弾性部材35において、起立部42の弾性を高めるために基端側および一端側にそれぞれコイル巻きの第1ループ部37、第2ループ部44を形成すれば、車体側治具10とドア側治具30との係脱がスムースとなり、ドアdの回動操作力が小さな力で済む。
【符号の説明】
【0038】
1 ドア治具
10 車体側治具
12 鉤爪部(第1係合部)
14 車体側係合部
17 軒樋状部材(第2係合部)
22 第1係合部
23 第2係合部
24 係合凹部
30 ドア側治具
31 基板
35 弾性部材(ドア側係合部)
37 第1ループ部(基端側のループ部)
42 起立部
44 第2ループ部(先端側のループ部)
w 車体
w1 センターピラー
w2 ガーニッシュ用孔
d ドア
d1 内板
d2 外板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられる車体側治具とドアに取り付けられるドア側治具とから構成され、車体側治具に形成した車体側係合部とドア側治具に形成したドア側係合部とを係合させることにより、車体に対してドアを所定の開度で保持するドア治具であって、
前記車体側係合部と前記ドア側係合部の少なくとも一方は、ばね線材からなる弾性部材として形成されていることを特徴とするドア治具。
【請求項2】
前記車体側治具は、車体のセンターピラーに開設された開孔に係合する鉤状の第1係合部と、前記センターピラーの縦縁に形成されたドア開口フランジ部に係合する溝状の第2係合部と、を備え、これら第1係合部および第2係合部を介して車体に固定されたときに前記車体側係合部は前記第2係合部よりも車内側に位置する棒状の部材として形成され、
前記ドア側治具は、ドアの内板と外板の間に挿入されてドアに固定され、前記弾性部材をドアの内板側において支持する基板を備え、
前記ドア側治具の弾性部材は、ドアの閉止方向の回動に伴う前記車体側係合部からの反力により弾性変形した後に前記車体側係合部の周面に係合することを特徴とする請求項1に記載のドア治具。
【請求項3】
前記ドア側治具の弾性部材は、
ドアの閉止方向の回動時に最初に前記車体側係合部に当接して弾性変形する起立部と、
該起立部が通過した後に前記車体側係合部の周面に係合する係合凹部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載のドア治具。
【請求項4】
前記ドア側治具の弾性部材は、前記起立部の弾性を高めるために、基端側および一端側にそれぞれコイル巻きのループ部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のドア治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−156515(P2011−156515A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22196(P2010−22196)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】