説明

ドア用養生具、その養生具が装着されたドア、及びそのドアを備える建物

【課題】装着時の作業性を向上できると共に、安定性を確保できるドア用養生具、その養生具が装着されたドア、及びそのドアを備える建物を提供する。
【解決手段】養生具1では、ドア2に対し、ドア2の縦方向に帯材4,5を巻き付け、この帯材4,5に対し被覆材6,7を着脱自在に取り付ける。よって、ドア2に帯材4,5を巻き付けた後に被覆材6,7を取り付けるだけで養生具1の装着が済み、装着時の作業性を高めている。また、被覆材6,7を帯材4,5に着脱自在に取り付けるため、被覆材6,7がズレ落ちたりすることがなく、安定性が確保されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア用養生具、その養生具が装着されたドア、及びそのドアを備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献に記載されるように、ドアの搬送中やドアを備える建物の建設中において、そのドアを保護するためのドア用養生具が知られている。これらの養生具は、ドアの外側の面部を覆う被覆材とドアの内側の面部を覆う被覆材とを有している。例えば、下記特許文献1に記載の養生具では、両面の被覆材が上部で連結されて一体化されると共に、両面の被覆材の側端部同士が、ドアの戸先部および戸尻部を横切るように設けられた係止片によって、面ファスナで連結される。また、特許文献2の養生具では、両面の被覆材は、上部では連結されず別体となっている。各被覆材はドアに対して両面テープで仮止めされると共に、特許文献1に記載の養生具と同様にして、その側端部同士が固定バンドによって連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−097848号公報
【特許文献2】特開2007−247304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の養生具では、両面の被覆材が上部で一体化されているため、この一体化された被覆材によって一度にドアを覆う必要があり、装着時の作業性が良くない。また、上記特許文献2に記載の養生具では、上部は連結されず側端部のみが連結される構造のため、両面テープを用いた固定が十分でない場合には、被覆材がズレ落ちてしまい、安定性に欠ける。
【0005】
そこで本発明は、装着時の作業性を向上できると共に、安定性を確保できるドア用養生具、その養生具が装着されたドア、及びそのドアを備える建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るドア用養生具は、ドアに対し当該ドアの縦方向に巻き付けられる帯材と、帯材に対し着脱自在に取り付けられる被覆材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このドア用養生具によれば、ドアに対し、そのドアの縦方向に帯材が巻き付けられ、この帯材に対し被覆材が着脱自在に取り付けられる。よって、ドアに帯材を巻き付けた後に被覆材を取り付けるだけで養生具の装着が済み、装着時の作業性が向上する。また、被覆材は帯材に着脱自在に取り付けられるため、被覆材がズレ落ちたりすることがなく、安定性が確保される。
【0008】
ここで、被覆材は、ドアの縦方向に並設される複数の板材で構成されると、同じ領域を覆う場合に板材1枚あたりのサイズが小さくなる。そして、帯材に対し各板材を順に取り付ければよいため、装着時の作業性がより一層向上する。さらには、被覆材の一部が破損した場合であっても、被覆材の全体を交換する必要はなく、破損した一部の板材を交換すればよいため、経済性に優れる。
【0009】
また、帯材は、ドアの横方向に離間して複数設けられると、幅寸法の異なるドアに対しても同じ帯材を用いることができ、汎用性が高められる。しかも、被覆材は横方向の複数の位置で帯材によって支持されるため、被覆材を安定して取付けることができる。
【0010】
また、帯材のドアに面する部分には、硬質の補強板が帯材に沿って固定されると、ドアの一方の面に沿う補強板がその裏面側に移動することがなく、帯材のズレを防止することができる。さらには、建物に取り付けられたドアに帯材を巻き付ける際、作業者は、脚立などを使用しなくとも、補強板を持ちながら帯材をドアの上端部に引っ掛けることができ、帯材の巻き付けが一層容易になる。
【0011】
また、上記のドア用養生具が取り付けられたドアによれば、そのドアの搬送中であっても、そのドアが取り付けられた建物の建設中であっても、養生具によってドアが適切に保護され、ドアの損傷を防止することができる。
【0012】
また、上記のドアを備えた建物によれば、建設中におけるドアの損傷を適切に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装着時の作業性を向上できると共に、安定性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る養生具が装着されたドアの正面図である。
【図2】図1中の養生具の分解斜視図である。
【図3】図1のドアを備える建物の正面図である。
【図4】(a)及び(b)は、養生具の装着手順を示す図である。
【図5】従来の養生具を用いた場合におけるドアの戸先部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、養生具1は、例えば玄関のドア2に装着されて、ドア2を保護するためのドア用養生具である。養生具1は、建物A(図3参照)の建設中におけるドア2の養生に用いられる。また養生具1は、ドア2の搬送中におけるドア2の梱包材として用いることもできる。図1に示す例では、ドア2は、ドア枠3に取り付けられた開きドアである。ドア2には、錠部2bおよびハンドル2aが設けられている。
【0017】
図1及び図2に示すように、養生具1は、ドア2に対してドア2の縦方向(図1の上下方向)に巻き付けられる2本の帯材4,5を備えている。帯材4,5は、ドア2の横方向(図1の左右方向)に離間して設けられている。
【0018】
帯材4,5の表面には、面ファスナの雌部(又は雄部)が全面にわたって設けられている。帯材4,5の一端部(例えば図2に示す帯材5の一端部5a)は、ドア2の下端部付近において、面ファスナの雄部(又は雌部)が裏面に設けられた他端部(例えば図2に示す帯材5の他端部5b)と係合可能になっている。これにより、帯材4,5は、ドア2に対して着脱可能に巻き付けられる。一方の帯材4は、ドア2の戸尻側の端部寄りに配置され、他方の帯材5は、ドア2の戸先側の端部寄りに配置される。
【0019】
帯材4の裏面側には、帯材4に沿って2枚の硬質の補強板8a,8bが固定されている。補強板8aは、ドア2の外側(屋外側)の面部に面する部分の上端寄りに添えられており、補強板8bは、ドア2の内側(室内側)の面部に面する部分の上端寄りに添えられている。各補強板8a,8bの長さは、例えば、ドア2の縦寸法の半分程度とされる。ドア2の上端縁2c(図4参照)に引っ掛かる帯材4の中間部4cには、補強板は設けられていない。
【0020】
帯材5の裏面側には、帯材5に沿って2枚の硬質の補強板9a,9bが固定されている。補強板9aは、ドア2の外側(屋外側)の面部に面する部分の上端寄りに添えられており、補強板9bは、ドア2の内側(室内側)の面部に面する部分の上端寄りに添えられている。各補強板9a,9bの長さは、例えば、ドア2の縦寸法の半分程度とされる。ドア2の上端縁2c(図4参照)に引っ掛かる帯材5の中間部5cには、補強板は設けられていない。
【0021】
これらの補強板8a,8b及び補強板9a,9bは、例えばプラスチックダンボール製であってもよいし、他の硬質の材料からなってもよい。
【0022】
養生具1は、ドア2の外側の面部を保護するための被覆材6と、ドア2の内側の面部を保護するための被覆材7と、を備えている。被覆材6,7のそれぞれは、上記の帯材4,5の表面側に着脱可能に取り付けられるよう構成されている。
【0023】
被覆材6は、ドア2の縦方向に並設される6枚の板材6a〜6eからなる。すなわち、被覆材6は、上下方向に分割されている。被覆材7は、ドア2の縦方向に並設される6枚の板材7a〜7eからなる。すなわち、被覆材7は、上下方向に分割されている。板材6a〜6e及び板材7a〜7eの縦方向および横方向のサイズ(高さ寸法および幅寸法)は、ほぼ等しくなっている。板材6a〜6e及び板材7a〜7eのそれぞれは、隣り合う板材と多少重なり合っている。板材6a〜6e及び板材7a〜7eは、プラスチックダンボール製である。
【0024】
ハンドル2a及び錠部2bに対応する位置に設けられる板材6b,6cには、ハンドル2a及び錠部2bの領域に切り欠き16b,16cが形成されている。ハンドル2a及び錠部2bに対応する位置に設けられる板材7b,7cには、ハンドル2a及び錠部2bの領域に切り欠き17b,17cが形成されている。これにより、例えば建物Aの建設中におけるドア2の開閉操作およびドア2の施錠・開錠が支障なく行われる(図3参照)。
【0025】
各板材6a〜6eの裏面側には、帯材4,5に対応する位置において、上下方向に長い2枚の係止片10,10が固定されている。各係止片10,10は、各板材6a〜6eの幅方向(左右方向)の両端寄りに配置される。各係止片10,10は、帯材4,5に対面するように設けられた、雄部(又は雌部)を有する面ファスナである。
【0026】
各板材7a〜7eの裏面側には、帯材4,5に対応する位置において、上下方向に長い2枚の係止片11,11が固定されている。各係止片11,11は、各板材7a〜7eの幅方向(左右方向)の両端寄りに配置される。各係止片11,11は、帯材4,5に対面するように設けられた、雄部(又は雌部)を有する面ファスナである。
【0027】
上記の係止片10及び係止片11が帯材4及び帯材5にそれぞれ係合することにより、被覆材6,7のそれぞれは、帯材4,5に対して着脱可能に取り付けられる。面ファスナの採用により、板材6a〜6e,7a〜7eは、帯材4,5に対して確実かつ容易に取り付けられる。
【0028】
次に、養生具1の装着手順について説明する。図4(a)に示すように、作業者20は、補強板8a,8bが添えられた部分を両手で持ちながら、帯材4をドア2の上端縁2cに引っ掛け、帯材4の一端部にその他端部を留める。また、作業者20は、補強板9a,9bが添えられた部分を両手で持ちながら、帯材5をドア2の上端縁2cに引っ掛け、帯材5の一端部5aにその他端部5bを留める。この作業により、作業者20は、帯材4,5を容易に巻き付けることができる。
【0029】
続いて、図4(b)に示すように、作業者20は、帯材4,5に対して下から順に、外側の板材6a,6b,6c…を取り付ける。同様して、作業者20は、内側の板材7a〜7e(図2参照)を取り付ける。この作業により、作業者20は、被覆材6及び被覆材7を容易に取り付けることができる。このように、養生具1の装着作業は、少ない手間で完了する。ここで、板材6a〜6e及び板材7a〜7eはプラスチックダンボール製であるので、ドア2のサイズに合わせて現場で板材を加工することも容易になっている。
【0030】
以上説明した養生具1によれば、ドア2に対し、ドア2の縦方向に帯材4,5が巻き付けられ、この帯材4,5に対し被覆材6,7が着脱自在に取り付けられる。よって、ドア2に帯材4,5を巻き付けた後に被覆材6,7を取り付けるだけで養生具1の装着が済み、装着時の作業性が高められている。また、被覆材6,7は帯材4,5に着脱自在に取り付けられるため、被覆材6,7がズレ落ちたりすることがなく、安定性が確保されている。
【0031】
図5は、従来の養生具を用いた場合におけるドアの戸先部の拡大断面図である。図5に示すように、従来の養生具40をドア31に装着すると、ドア31の戸先側端部31aは、外側被覆材42と内側被覆材43とを連結するための連結ベルト44で覆われることとなる。また、ドア31の戸先側端部31aには、デッドボルトを覆い隠すために戸先側端部31aから突出したドアエッジ32が取り付けられることもあり、連結ベルト44は、戸先側端部31aのみならずドアエッジ32をも覆うことになる。そのため、連結ベルト44は戸先側端部31aから浮いた状態となり、この浮き上がった部分が戸先側のドア枠33に干渉し、ドア31が閉まり難かった。
【0032】
しかしながら、本実施形態の養生具1によれば、ドア2の縦方向に帯材4,5が巻き付けられるのみであって、ドア2の戸先側端部やドアエッジに干渉する部品はなく、ドア2が閉まり難くなるといった問題は生じず、建物Aの建設中においても支障なくドア2を開閉することができる。
【0033】
また、ドア2に帯材4,5を巻き付けるだけでよいため、例えばドア2の搬送のために梱包を行う際には、ドア2全体を持ち上げるといった労力を要することなく養生具1を装着できる。また、被覆材6,7は帯材4,5に対して着脱自在なので、ドアの寸法に合わせた被覆材を用いることによって異なるサイズのドアに対応可能となり、汎用性が高められている。
【0034】
また、被覆材6,7は、ドア2の縦方向に並設される複数の板材6a〜6e,7a〜7eを有するため、同じ領域を覆う場合に板材1枚あたりのサイズが小さくなる。そして、帯材4,5に対し各板材6a〜6e,7a〜7eを順に取り付ければよいため、装着時の作業性がより一層向上する。さらには、被覆材6,7の一部が破損した場合であっても、被覆材6,7の全体を交換する必要はなく、破損箇所の板材(板材6a〜6e,7a〜7eのうち破損した一枚または数枚)を交換すればよいため、経済性に優れている。建物Aの建設中においては、資材の運搬などによってドア2の中央部を覆う養生具が傷み易いが、養生具1では、分割された板材を交換すればよいため、従来の一体化された養生具に比して、経済性の観点から有利である。しかも、運搬や保管にも都合がよく、さらには、枚数の調整や一部の板材の寸法調整によって高さ寸法の異なるドアに対応可能となり、汎用性がより一層高められている。
【0035】
また、ドア2の横方向に離間して複数の帯材4,5が設けられるため、幅寸法の異なるドアに対しても同じ帯材4,5を用いることができ、汎用性が高められている。しかも、被覆材6,7は横方向の2箇所で帯材4,5によって支持されるため、被覆材6,7を安定して取付けられる。
【0036】
また、帯材4,5には硬質の補強板8a,8b,9a,9bが帯材4,5に沿って固定されるため、ドア2の一方の面に沿う補強板がその裏面側に移動することがなく、帯材4,5のズレが防止される。さらには、建物Aに取り付けられたドア2に帯材4,5を巻き付ける際、作業者20は、脚立などを使用しなくとも、これらの補強板8a,8b,9a,9bを持ちながら帯材4,5をドア2の上端縁2cに引っ掛けることができ、帯材4,5の巻き付けが一層容易になっている。
【0037】
硬質の補強板8a,8b,9a,9bが設けられるため、例えば、この補強板8a,8b,9a,9b及び帯材4,5を利用して作業者を管理するためのボックス状の装置(例えばタイムレコーダ等)を取り付けることができる。よって、装置を取り付けるためのパネル等を別途用意する必要がない。なお、ボックス状の装置を取り付ける場合、装置が取り付けられる箇所の被覆材を切り欠く(くり抜く)ようにしてもよい。
【0038】
また、養生具1が取り付けられたドア2によれば、ドア2の搬送中であっても、ドア2が取り付けられた建物Aの建設中であっても、養生具1によってドア2が適切に保護され、ドア2の損傷が防止される。
【0039】
また、養生具1が取り付けられたドア2を備えた建物Aによれば、建設中におけるドア2の損傷が適切に防止される。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、ドア2の両面に被覆材6及び被覆材7が設けられる場合について説明したが、被覆材は、いずれか一方の面にのみ設けてもよい。また、上記実施形態では、補強板8a,8bおよび補強板9a,9bがドア2の外側および内側の両面に面する部分に設けられる場合について説明したが、外側および内側の面部のいずれか一方に面する部分のみに設けられてもよい。
【0041】
また、帯材は、1本であってもよく、3本以上であってもよい。また、例えば幅寸法の大きいドアに適用する場合、被覆材は、横方向に分割されてもよい。ドアは、開きドアである場合に限られず、例えばスライドドアや、その他のドアであってもよい。また、被覆材は、板状である場合に限られず、例えば、丸みを帯びたクッション材であってもよく、横向きに取り付けられた棒状の部材であってもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、被覆材に設ける係止片として、上下方向に長い面ファスナを用いる場合について説明したが、係止片として、横方向に長い面ファスナを用いてもよい。この場合、各板材の高さ寸法に比して幅が広い面ファスナを使用すれば、上下方向の1箇所に係止片(1本の係止片)を設けるのみでよい。また、幅が狭い面ファスナであっても、上下方向の2箇所に係止片(2本の係止片)を配置してもよい。このように、横方向に長い面ファスナを用いることにより、帯材の横方向の位置を厳密に調整する必要がなくなり、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0043】
1…養生具(ドア用養生具)、2…ドア、4,5…帯材、6…被覆材、6a〜6e…板材、7…被覆材、7a〜7e…板材、8a,8b…補強板、9a,9b…補強板、A…建物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアに対し当該ドアの縦方向に巻き付けられる帯材と、
前記帯材に対し着脱自在に取り付けられる被覆材と、
を備えることを特徴とするドア用養生具。
【請求項2】
前記被覆材は、前記ドアの縦方向に並設される複数の板材で構成されることを特徴とする請求項1記載のドア用養生具。
【請求項3】
前記帯材は、前記ドアの横方向に離間して複数設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のドア用養生具。
【請求項4】
前記帯材の前記ドアに面する部分には、硬質の補強板が前記帯材に沿って固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のドア用養生具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載のドア用養生具が装着されたことを特徴とするドア。
【請求項6】
請求項5に記載のドアを備えたことを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202139(P2012−202139A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68515(P2011−68515)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)